特許第6647630号(P6647630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647630
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】空気潤滑式船舶の空気供給システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/38 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   B63B1/38
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-532449(P2016-532449)
(86)(22)【出願日】2015年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2015003507
(87)【国際公開番号】WO2016006258
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-143416(P2014-143416)
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592250540
【氏名又は名称】株式会社大島造船所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲吾
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−228679(JP,A)
【文献】 特開2013−216321(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0083361(US,A1)
【文献】 特開2012−171582(JP,A)
【文献】 特開2013−091376(JP,A)
【文献】 特開2013−129406(JP,A)
【文献】 特開2014−076783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の周囲に空気を放出して摩擦抵抗を低減する空気潤滑式船舶の空気供給システムであって、
主機関から排出される排ガスにより駆動され前記主機関に加圧空気を供給する過給機と、
前記過給機と前記主機関との間から前記加圧空気又は前記排ガスの一部を取り出す取出手段と、
前記取出手段により取り出した前記加圧空気又は前記排ガスを供給する空気供給経路と、
前記空気供給経路を経て供給される取り出した前記加圧空気又は前記排ガスを放出する前記船体の船底に設けた空気供給口と、
前記加圧空気又は前記排ガスの供給時に前記過給機の回転を加勢するモータ手段と
を備えたことを特徴とする空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項2】
前記主機関の負荷を判定する負荷判定手段を備え、前記負荷判定手段の判定結果に従って前記モータ手段を運転したことを特徴とする請求項1に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項3】
前記負荷判定手段として前記主機関の回転数を検出する回転数検出手段を有し、前記回転数検出手段の検出結果に従って前記モータ手段を運転したことを特徴とする請求項2に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項4】
前記過給機から前記加圧空気を供給する前記主機関までの間の経路に空気冷却機を設け、前記空気冷却機より下流側の掃気を前記加圧空気として取り出すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項5】
前記空気供給経路が複数に分岐した分岐路を有し、複数に分岐した前記分岐路のそれぞれに前記空気供給口を接続したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項6】
前記分岐路の途中に前記分岐路を開閉する開閉バルブを設けたことを特徴とする請求項5に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項7】
前記空気供給経路に、取り出した前記加圧空気を更に加圧するアシストブロワを備えたことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項8】
前記空気供給経路から分岐し前記アシストブロワをバイパスして再び前記空気供給経路に合流するバイパス経路と、前記空気供給経路と前記バイパス経路を選択するバイパス経路選択手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項9】
前記アシストブロへ大気から空気を吸い込む大気吸込経路と、前記空気供給経路と前記大気吸込経路を選択する大気吸込経路選択手段を設け、前記大気吸込経路が選択された場合に大気からの空気を前記アシストブロで加圧して供給したことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項10】
前記過給機が前記加圧空気の加圧特性を改善する可変ノズルを有したことを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項11】
前記過給機と前記主機関までの間の前記加圧空気を供給する経路にトラップを設け、前記空気供給経路を前記トラップの下部に接続したことを特徴とする請求項4から請求項10のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【請求項12】
前記モータ手段を、電動モータ又は油圧モータとしたことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の空気潤滑式船舶の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航行中の船舶の喫水線以下の船体の外面に沿う水の摩擦抵抗を低減させるための空気潤滑式船舶の空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航行中の船舶では、一般に船体の没水表面に水の摩擦抵抗を受けており、特に大型船の場合には、船体抵抗の大部分が没水表面における外水の相対流により生じる摩擦抵抗で占められている。
船体の周囲に空気を放出して摩擦抵抗を低減する空気潤滑による船体摩擦抵抗の軽減は省エネ効果が大きく、船舶からのCO排出削減に有効な手段である。
空気潤滑式船舶の空気供給方法には、主として電動ブロワで空気を送る方法と掃気バイパスによる方法がある。
【0003】
特許文献1は、電動ブロワで空気を送る方法と掃気バイパスによる方法とを併用する空気供給システムを提案している(図2及び図3に示す実施の形態)。
なお、エンジン低負荷時に同過給機を電気や油圧でアシストし、エンジンの起動や低負荷性能を改善する電動機付ターボチャージャは既に提案されている(例えば特許文献2)。
また、可変ノズルを備えた過給機も既に提案されており、特許文献3は、燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出する場合は可変ノズルを絞り、かつ、燃焼用空気を抽気して船体外表面に放出しない場合は可変ノズルを開くように制御する船舶の圧縮空気供給システムを提案している。
特許文献3では、抽気して船底に空気を送る場合には、タービンノズルを絞って過給機タービンの出力を増加させて気泡放出に必要な空気量を確保し、さらに、船底に空気を送る必要がない場合には、タービンノズルを開いて抽気しない場合の掃気圧力上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−193624号公報
【特許文献2】特開2008−240585号公報
【特許文献3】特開2012−171582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動ブロワで空気を送る方法では、高性能の電動ブロワ(ターボ式)が必要であることに加え、エアクーラも必要である。
また、掃気バイパスによる方法では、船舶の減速運転時には主機関の負荷が低く、排ガスエネルギーが低くいために過給機から十分に空気を取り出せない場合がある。近年では、減速運転を採用することが多いため、過給機から十分に空気を取り出せない場合が多くなる。
特許文献1では、主機関の負荷が低い場合には過給機から十分に空気を取り出せない。
特許文献2のように電動機付ターボチャージャは多く提案され、また特許文献3のように可変ノズルを備えた過給機も既に提案されているが、掃気等の加圧空気の取り出しに応じて過給機を加勢するものはない。
【0006】
そこで、本発明は、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができる空気潤滑式船舶の空気供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載に対応した空気潤滑式船舶の空気供給システムにおいては、船体の周囲に空気を放出して摩擦抵抗を低減する空気潤滑式船舶の空気供給システムであって、主機関から排出される排ガスにより駆動され主機関に加圧空気を供給する過給機と、過給機と主機関との間から加圧空気又は排ガスの一部を取り出す取出手段と、取出手段により取り出した加圧空気又は排ガスを供給する空気供給経路と、空気供給経路を経て供給される取り出した加圧空気又は排ガスを放出する船体の船底に設けた空気供給口と、加圧空気又は排ガスの供給時に過給機の回転を加勢するモータ手段とを備えたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、取出手段による加圧空気又は排ガスの供給時にモータ手段によって過給機の回転を加勢することで、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気又は排ガスを過給機から効率よく供給することができる。また例えば、主機関に排気再循環を行う場合に循環経路が開いて加圧空気量又は排ガス量が減少したり、加圧空気圧又は排ガス圧が低下しても、モータ手段で過給機の回転を加勢することにより量や圧を回復することができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、主機関の負荷を判定する負荷判定手段を備え、負荷判定手段の判定結果に従ってモータ手段を運転したことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、主機関の負荷に応じてモータ手段を運転することで、主機関の低負荷運転時においても、モータ手段を運転して過給機から十分な加圧空気を供給することができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、負荷判定手段として主機関の回転数を検出する回転数検出手段を有し、回転数検出手段の検出結果に従ってモータ手段を運転したことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、主機関の回転数を検出してモータ手段を運転することで、過給機から十分な加圧空気を供給することができる。例えば、回転数検出手段で検出した回転数から主機関が低負荷運転であることを判定し、この判定結果に従ってモータ手段を運転して過給機の回転を加勢することができる。
【0010】
請求項4記載の本発明は、過給機から加圧空気を供給する主機関までの間の経路に空気冷却機を設け、空気冷却機より下流側の掃気を加圧空気として取り出すことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、空気冷却機より下流側の掃気を空気潤滑に用いることで、エネルギー効率を更に高められる。また、塗膜劣化も防止することができる。
【0011】
請求項5記載の本発明は、空気供給経路が複数に分岐した分岐路を有し、複数に分岐した分岐路のそれぞれに空気供給口を接続したことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、複数の空気供給口を設けることで、船体の周囲に放出する空気を多くでき、また必要に応じて任意の空気供給口から取り出した加圧空気を放出することにより、更に摩擦抵抗を効率よく低減できる。
【0012】
請求項6記載の本発明は、分岐路の途中に分岐路を開閉する開閉バルブを設けたことを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、開閉バルブの操作によって、空気を放出する空気供給口を選択することができ、また空気潤滑を行わないときには開閉バルブで分岐路を閉成し、水の逆流を防ぐことができる。
【0013】
請求項7記載の本発明は、空気供給経路に、取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワを備えたことを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、アシストブロワによって空気潤滑に適した圧力まで取り出した加圧空気を更に加圧することができる。
【0014】
請求項8記載の本発明は、空気供給経路から分岐しアシストブロワをバイパスして再び空気供給経路に合流するバイパス経路と、空気供給経路とバイパス経路を選択するバイパス経路選択手段を設けたことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、取り出した加圧空気を更に加圧する必要がないときなどは、アシストブロワをバイパスする経路を選択し取り出した加圧空気のみを供給することができる。
【0015】
請求項9記載の本発明は、アシストブロへ大気から空気を吸い込む大気吸込経路と、空気供給経路と大気吸込経路を選択する大気吸込経路選択手段を設け、大気吸込経路が選択された場合に大気からの空気をアシストブロで加圧して供給したことを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、大気からの空気を加圧して用いることで、取り出した加圧空気とは別に、大気からの空気を船底に放出することができる。例えば喫水圧が低い場合には、大気からの空気を直接船底に設けた空気供給口に供給し、エネルギー効率や省エネ効果を更に高めることができる。
【0016】
請求項10記載の本発明は、過給機が加圧空気の加圧特性を改善する可変ノズルを有したことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、可変ノズルによって加圧空気の加圧特性を改善することができる。
【0017】
請求項11記載の本発明は、過給機と主機関までの間の加圧空気を供給する経路にトラップを設け、空気供給経路をトラップの下部に接続したことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、加圧空気をトラップに通過させることで、加圧空気に含まれる水分を分離し加圧空気を取り出しやすくすることができる。
【0018】
請求項12記載の本発明は、モータ手段を、電動モータ又は油圧モータとしたことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、利用することが容易な電動モータ又は油圧モータをモータ手段として用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、取出手段による加圧空気又は排ガスの供給時にモータ手段によって過給機の回転を加勢することで、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気又は排ガスを過給機から効率よく供給することができる。また例えば、主機関に排気再循環を行う場合に循環経路が開いて加圧空気量又は排ガス量が減少したり加圧空気圧又は排ガス圧が低下しても、モータ手段で過給機の回転を加勢することにより量や圧を回復することができる。
【0020】
また、主機関の負荷を判定する負荷判定手段を備え、負荷判定手段の判定結果に従ってモータ手段を運転した場合には、主機関の負荷に応じてモータ手段を運転することで、主機関の低負荷運転時においても、モータ手段を運転して過給機から十分な加圧空気を供給することができる。
【0021】
また、負荷判定手段として主機関の回転数を検出する回転数検出手段を有し、回転数検出手段の検出結果に従ってモータ手段を運転した場合には、主機関の回転数を検出してモータ手段を運転することで、過給機から十分な加圧空気を供給することができる。例えば、回転数検出手段で検出した回転数から主機関が低負荷運転であることを判定し、この判定結果に従ってモータ手段を運転して過給機の回転を加勢することができる。
【0022】
また、過給機から加圧空気を供給する主機関までの間の経路に空気冷却機を設け、空気冷却機より下流側の掃気を加圧空気として取り出す場合には、空気冷却機より下流側の掃気を空気潤滑に用いることで、エネルギー効率を更に高められる。また、塗膜劣化も防止することができる。
【0023】
また、空気供給経路が複数に分岐した分岐路を有し、複数に分岐した分岐路のそれぞれに空気供給口を接続した場合には、複数の空気供給口を設けることで、船体の周囲に放出する空気を多くでき、また必要に応じて任意の空気供給口から取り出した加圧空気を放出することにより、更に摩擦抵抗を効率よく低減できる。
【0024】
また、分岐路の途中に分岐路を開閉する開閉バルブを設けた場合には、開閉バルブの操作によって、空気を放出する空気供給口を選択することができ、また空気潤滑を行わないときには開閉バルブで分岐路を閉成し、水の逆流を防ぐことができる。
【0025】
また、空気供給経路に、取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワを備えた場合には、アシストブロワによって空気潤滑に適した圧力まで取り出した加圧空気を更に加圧することができる。
【0026】
また、空気供給経路から分岐しアシストブロワをバイパスして再び空気供給経路に合流するバイパス経路と、空気供給経路とバイパス経路を選択するバイパス経路選択手段を設けた場合には、取り出した加圧空気を更に加圧する必要がないときなどは、アシストブロワをバイパスする経路を選択し取り出した加圧空気のみを供給することができる。
【0027】
また、アシストブロへ大気から空気を吸い込む大気吸込経路と、空気供給経路と大気吸込経路を選択する大気吸込経路選択手段を設け、大気吸込経路が選択された場合に大気からの空気をアシストブロで加圧して供給した場合には、大気からの空気を加圧して用いることで、取り出した加圧空気とは別に、大気からの空気を船底に放出することができる。例えば喫水圧が低い場合には、大気からの空気を直接船底に設けた空気供給口に供給し、エネルギー効率や省エネ効果を更に高めることができる。
【0028】
また、過給機が加圧空気の加圧特性を改善する可変ノズルを有した場合には、可変ノズルによって加圧空気の加圧特性を改善することができる。
【0029】
また、過給機と主機関までの間の加圧空気を供給する経路にトラップを設け、空気供給経路をトラップの下部に接続した場合には、加圧空気をトラップに通過させることで、加圧空気に含まれる水分を分離し加圧空気を取り出しやすくすることができる。
【0030】
また、利用することが容易な電動モータ又は油圧モータをモータ手段として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態による空気供給システムを搭載した空気潤滑式船舶の概略構成図
図2】同空気潤滑式船舶の空気供給システムの概略構成図
図3】同主機関と過給機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施形態による空気潤滑式船舶の空気供給システムについて説明する。
図1は本発明の実施形態による空気供給システムを搭載した空気潤滑式船舶の概略構成図、図2は同空気潤滑式船舶の空気供給システムの概略構成図、図3は同主機関と過給機の概略構成図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の空気潤滑式船舶は、船体1の船首部2の船底3には、空気供給口4が設けられている。空気供給口4は、船体1の喫水下に設けている。空気供給口4から船体1の船底3に加圧空気を気泡として放出し、海面S.L.よりも下の船底3の広い領域に気泡を供給して空気潤滑することにより、高い摩擦抵抗低減効果を得ることができる。なお、空気供給口4は、船底3の船首部のみならず、中央部や複数の部位に組み合わせて設けてもよい。
【0034】
船体1の船尾5側には、プロペラ6を駆動する駆動源7を備えている。
駆動源7は、内燃機関である主機関10と過給機20を有する。過給機20は、主機関10からの排ガスにより駆動され、主機関10に加圧空気を供給する。
主機関10に供給される前の加圧空気の一部は、空気供給経路31を通って空気供給口4に送られる。
【0035】
次に、図2及び図3を用いて同空気潤滑式船舶の空気供給システムの構成について説明する。
過給機20は、主機関10の排気経路に設けられ排ガスから動力を取り出すタービン21と、このタービン21によって動作するコンプレッサー22と、タービン21の排ガス導入側に配置される可変ノズル23とを有する。
可変ノズル23は、ノズル翼の向きや角度あるいは排ガス通路を変化させて主機関10から供給される排ガスの流速を調整して加圧空気の加圧特性を改善することができる。
なお、可変ノズル23を用いずに空気供給システムを構成することもできる。
過給機20から主機関10までの間の経路には空気冷却機24を有している。
コンプレッサー22で加圧され高温となった空気は、空気冷却機24で冷却されて主機関10に導入される。
【0036】
空気供給経路31の一端は、過給機20と主機関10との間に接続されており、過給機20と主機関10との間から加圧空気の一部が取り出される。空気冷却機24より下流側の掃気を加圧空気として取り出すことが好ましいが、上流側の給気を加圧空気として取り出してもよい。空気冷却機24より下流側の掃気を空気潤滑に用いることで、エネルギー効率を高められる。また、高温の空気が供給されることによる船体の塗膜劣化も防止することができる。なお、本実施形態においては、過給機20と主機関10までの間の経路にトラップ25を設け、空気供給経路31をトラップ25の下部に接続している。このように加圧空気をトラップ25に通過させることで、加圧空気を取り出しやすくすることができる。特に、空気冷却機24により冷却されたことによる結露水や外来の水滴が加圧空気中に存在する場合に、トラップ25で分離することができる。トラップ25の最下部には水が溜まっていることがあり得るので、空気供給経路31はトラップ25の下部であっても水の溜り部を避けた部位に接続することが好ましい。
取り出された加圧空気は、空気供給経路31を通って空気供給口4に供給される。
空気供給経路31には、過給機20と主機関10との間から加圧空気の一部を取り出す取出バルブ32と、空気供給経路31の取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワ33とを設けている。取出バルブ32は通常の開閉バルブで構成され、加圧空気の供給が必要な場合は取出バルブ32を開成し、不要となった場合は取出バルブ32を閉成することにより、空気潤滑の実行、停止が選択できる。また、過給機20で加圧された加圧空気を取り出した後にアシストブロワ33で更に加圧することにより、載荷量が多く喫水圧が高くなった場合や多くの空気を供給することにより圧力が不足した場合に対応ができる。
このアシストブロワ33は、喫水圧の変動があっても空気量の変動が少ないルーツ型等の容積型ブロワであることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態による空気供給システムは、空気供給経路31から分岐しアシストブロワ33をバイパスして再び空気供給経路31に合流するバイパス経路35と、空気供給経路31とバイパス経路35のいずれかを選択するバイパス経路選択手段36を設けている。このようにバイパス経路選択手段36を設けることで、取り出した加圧空気を更に加圧する必要がないときなどは、バイパス経路選択手段36でバイパス経路35側を選択し、アシストブロワ33をバイパスすることができる。
【0038】
また、アシストブロ33へ大気から空気を吸い込む大気吸込経路37と、空気供給経路31と大気吸込経路37を選択する大気吸込経路選択手段38を設けている。大気からの空気をアシストブロで加圧して供給した場合には、大気からの空気を加圧して用いることで、取り出した加圧空気とは別に、大気からの空気を船底3から放出することができる。例えば喫水圧が低い場合には、大気からの空気を直接、船底3に設けた空気供給口4に供給し、エネルギー効率や省エネ効果を更に高めることができる。
【0039】
本実施形態による空気供給システムは、過給機20の回転を加勢するモータ手段34を備えている。
モータ手段34は外付け型として過給機20のタービン21とコンプレッサー22の駆動軸を直接駆動してもよいが、駆動軸上に直接ロータを形成し周囲に設けたステータとによって駆動することも可能である。また、加勢が不要な場合はモータ手段34を発電機として利用し、回生電力を得ることも可能である。更に、コンプレッサー22側だけを加勢しタービン21より回転速度を高める目的で、駆動軸にワンウェイクラッチ的な機構を装備することもできる。
なお、モータ手段34としては、空気モータや水圧モータ等もあり得るが、電動モータ又は油圧モータを用いる方が、利用の容易性の面から好適である。
本実施形態によれば、空気潤滑が必要になった場合に取出バルブ32を開成して加圧空気を取り出し、空気供給経路31を経て空気供給口4に供給する。この取出バルブ32による加圧空気の供給時に、モータ手段34によって過給機20の回転を加勢することで、主機関10の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機20から効率よく取り出すことができる。
このモータ手段34による過給機20の回転の加勢は、主機関10に排気再循環を行う場合に循環経路が開いて加圧空気量が減少したり、加圧空気圧が低下しときの量や圧の回復にも対応が可能である。
取出バルブ32を開成して加圧空気を取り出す場合、モータ手段34以外に可変ノズル23を利用することもできる。すなわち取出バルブ32の開度や加圧空気の取り出し量等の加圧空気の取り出し状況に応じて可変ノズル23のノズル翼の向きや角度等を変化させて加圧空気の加圧特性を改善することができる。
また、モータ手段34や可変ノズル23によっても、喫水圧が高くなり加圧空気が不足する場合には、空気供給経路31の取り出した加圧空気を更に加圧するアシストブロワ33により補うことができる。
【0040】
主機関10の負荷は、負荷判定手段43で検出する。なお、負荷判定手段43は、主機関10の回転数を検出する回転数検出手段を含む。負荷判定手段43の回転数検出手段で検出される主機関10の回転数から、主機関10の負荷を推定する。更に、主機関10のトルクを検出し回転数と組み合わせると、より確実に主機関10の負荷を判定できる。
負荷判定手段43で判定された主機関10の負荷が高い場合は、過給機20も高速で回転し加圧空気の量や圧も十分な場合が多いが、負荷が低い場合は、加圧空気の量や圧が不足しがちである。このような場合に、モータ手段34で過給機20の回転を加勢することにより補うことができる。
また、主機関10の始動時に負荷判定手段43で負荷の立ち上がりを判定し、モータ手段34で主機関10の始動にも対応することが可能である。
このように、立ち上がり時や定常時において主機関10で要求される空気量を確実に供給するようにモータ手段34で過給機20の回転を加勢することができる。
【0041】
また、本実施形態による空気供給システムは、空気供給経路31が複数に分岐した分岐路39を有し、複数に分岐した分岐路39のそれぞれに空気供給口4を接続している。このように、複数の空気供給口4を設けることで、船体1の周囲に放出する空気を多くできる。また必要に応じて取り出した加圧空気を任意の空気供給口4から放出することにより、更に摩擦抵抗を効率よく低減できる。
また、分岐路39の途中に分岐路39を開閉する開閉バルブ40を設けている。開閉バルブ40の操作によって、空気を放出する空気供給口4を選択することができる。例えば、貨物を載荷していないバラスト状態の場合に、図2において開閉バルブ40を操作して、取り出した加圧空気を中央部の2つの空気供給口4から放出し、左右両側の空気供給口4からの取り出した加圧空気の放出を止めたりすることができる。また、波浪中において船体1が傾き、図2において右側が持ち上がった場合、空気潤滑にあまり寄与しない右側の端にある開閉バルブ40を閉じて、右側の端にある空気供給口4からの取り出した加圧空気の放出を止めて、無駄に取り出した加圧空気が消費されることを防止できる。
また、空気潤滑を行わないときに開閉バルブ40の操作により分岐路39を閉成することで、空気供給口4からアシストブロワ33や主機関10への水の逆流を防ぐことができる。
開閉バルブ40の操作による空気供給口4の増減に伴う、加圧空気圧の変動に対しては、状況に応じ可変ノズル23、アシストブロワ33、又はモータ手段34を適宜、調節あるいは運転して対応することが可能である。
【0042】
以上のように本実施形態によれば、喫水圧変動の影響を対策するため余力を持たせたことにより高価である高性能な電動ブロワ(ターボ式)を装備することなく、主機関10の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機20から効率よく取り出すことができる。
【0043】
なお、上記の実施形態においては、過給機20と主機関10との間から加圧空気の一部を取り出す例を示したが、過給機20と主機関10との間から排ガスの一部を取り出すことにも本発明は適用できる。すなわち、排ガスを取り出すことによりタービン21に加わる排ガスの圧力やタービン21を通過する排ガスの量が減少する。この結果、タービン21とコンプレッサー22は同軸で駆動されるためコンプレッサー22の圧力が低くなり、主機関10で必要な加圧空気量が不足する。このような場合に、モータ手段34で過給機20を加勢することにより、主機関10で必要な加圧空気量を確保した上で、排ガスを用いて摩擦抵抗を低減する空気潤滑が実現できる。
排ガスを空気潤滑に使用した場合は、空気供給口4から放出される高温の排ガスによる塗膜劣化の対策が必要ではあるが、排ガスが高温であることから水の摩擦係数が低くなり空気潤滑の効果を更に高めることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の空気潤滑式船舶の空気供給システムは、高性能な電動ブロワ(ターボ式)を装備することなく、主機関の低負荷運転時においても、空気潤滑に必要な加圧空気を過給機から効率よく取り出すことができるため、大型から小型の船舶に広く適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 船体
4 空気供給口
10 主機関
20 過給機
23 可変ノズル
24 空気冷却機
25 トラップ
31 空気供給経路
32 取出バルブ(取出手段)
33 アシストブロワ
34 モータ手段
35 バイパス経路
36 バイパス経路選択手段
37 大気吸込経路
38 大気吸込経路選択手段
39 分岐路
40 開閉バルブ
43 負荷判定手段(回転数検出手段)
図1
図2
図3