特許第6647637号(P6647637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647637養殖魚の養殖方法、養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料の製造方法、及び養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6647637
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】養殖魚の養殖方法、養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料の製造方法、及び養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/80 20160101AFI20200203BHJP
   A23K 10/37 20160101ALI20200203BHJP
   A01K 61/10 20170101ALI20200203BHJP
【FI】
   A23K50/80
   A23K10/37
   A01K61/10
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-46756(P2019-46756)
(22)【出願日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年10月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月2日宮崎県立宮崎海洋高等学校において開催された第35回九州地区水産・海洋高等学校生徒研究発表大会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月9日沖縄県水産会館において開催された沖縄県立沖縄水産高等学校フルーツフィッシュ試食会にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年12月8日沖縄科学技術大学院大学OIST講堂において開催された第7回SCORE! サイエンスin沖縄にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年2月9日ANA ARENA浦添において開催された第41回沖縄青少年科学作品展にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月6日Lowell High School,San Franciscoにて口頭発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519091063
【氏名又は名称】新立 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】中村 信行
(72)【発明者】
【氏名】新垣 佑美茄
(72)【発明者】
【氏名】神谷 力
(72)【発明者】
【氏名】金城 功之介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絵凜南 ドゥエル
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 項羽
(72)【発明者】
【氏名】仲里 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】松田 茉仁
(72)【発明者】
【氏名】新立 孝行
【審査官】 川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−204684(JP,A)
【文献】 特開2014−79249(JP,A)
【文献】 特開2015−221001(JP,A)
【文献】 特開2016−32448(JP,A)
【文献】 [ひたむき高校生](7)/沖縄水産高海洋生物系列/生臭さ抑えた魚研究/フルーツ味 業界も注目,沖縄タイムス 朝刊,日本,2019年 1月27日,23頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖魚の魚肉に柑橘の香りを付ける養殖魚の養殖方法であって、
前記養殖魚として、ハマフエフキ、マダイ、ハタ、又はスギを対象とし、
魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形した搾汁残渣混合成形飼料を、
前記養殖魚の水揚げ前の所定期間給餌する
ことを特徴とする養殖魚の養殖方法。
【請求項2】
前記搾汁残渣を、前記海水魚用配合飼料に対して0.8〜1.2の重量比で混合し、
給餌する前記所定期間を、4日以上で14日未満とした
ことを特徴とする請求項1に記載の養殖魚の養殖方法。
【請求項3】
ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁し、
前記遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を、
魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に混合して成形した
ことを特徴とする養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料の製造方法。
【請求項4】
魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形された
ことを特徴とする養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖魚の魚肉に柑橘の香りを付ける養殖魚の養殖方法、この養殖方法に用いる養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料の製造方法、及び養殖魚に与える養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は世界の漁業・養殖業生産量と今後の予測を示すグラフである。
現在、世界の漁業生産量のうち、50%は養殖業である。天然資源を獲る漁業が頭打ちとなる中、2030年には養殖業が60%を超えると予想されている。つまり、世界的にみると養殖業は成長産業であるが、実は日本の生産高だけは全く伸びていない。
図8は2030年までの漁業生産の変化予測を示すグラフである。
国と地域別の漁業生産の予測によると、2030年までに世界平均では23.6%増加し、いずれの国や地域もプラス成長が予想されている。
しかし、日本のみがマイナス成長である。このことからも、日本漁業の衰退は、世界の中でも特異的だといえる。
図9は沖縄県の漁業生産量の内訳(2017年)を示すグラフである。
そんな中、沖縄県では昨年、養殖業が初めて漁業総生産量の50%を超えている。しかし、養殖生産量の93%はモズクが占めており、魚類はわずかに3%しかなく、沖縄県では魚類養殖自体が衰退傾向にある。
【0003】
ところで、近年、西日本を中心にフルーツフィッシュが注目されている。
フルーツフィッシュとは、餌である配合飼料に柑橘類などの成分を混ぜて育てた養殖魚である。
元々は魚肉の変色を抑えることを目的に高知大学が開発した技術であり、魚嫌いの人が指摘する魚臭さを抑えるだけではなく、果物の香りが感じられるなどのメリットがある。
高知大学が開発した「柚子ぶり」、大分県漁業協同組合の「かぼすブリ」(登録商標)、愛媛県の「みかんフィッシュ」(登録商標)など、現在多くのフルーツフィッシュが存在しており、各地の特産品として商業的に成功している。いずれも養殖魚に柑橘系の果物の果汁や果皮を加えて作った配合飼料を与えて育てている。
非特許文献1は、高知大学が開発した「柚子ぶり」について記載されている。
非特許文献1では、市販飼料にユズ果汁を10%で添加した飼料で30日間ぶりを飼育した結果、ぶりの身に香気成分が移行・蓄積されたことが記載されている。
また、非特許文献1では、ユズ果汁に代えてユズ果皮ペーストを、飼料1.45kg(湿重量)あたり50gを添加した飼料を用いたことが記載されている。なお、ユズ果皮ペーストを用いる場合には、飼料1.45kg(湿重量)あたり100g以下の添加が望ましく、過剰に添加した際には、消化不良による成長低下・環境負荷増大を引き起こしたことが記載されている。
非特許文献2は、大分県農林水産研究指導センターが開発した「かぼすブリ」について記載されている。
非特許文献2では、餌に対してかぼす果汁を1%添加した飼料で30回給餌することで血合筋の褐変に至る時間を最大40時間延ばすことができることが記載されている。
また非特許文献2では、かぼす果皮を乾燥させ粉末にした果皮パウダーを0.5%添加した飼料を用いることで、果汁添加と比較して、血合筋の褐変に至る時間を更に延ばせ、香気成分を更に多く移行させることができることが記載されている。
非特許文献3は、愛媛県農林水産研究所が開発した「みかんフィッシュ」について記載されている。
非特許文献3では、温州ミカン、伊予柑、又はユズの果皮を約10%含む配合飼料でブリを2週間飼育することで、魚臭さや血合肉の褐変が抑えられ、柑橘の香りがするブリが生産できることが記載されている。
また非特許文献3では、果皮を与えることで給餌期間中の成長停滞が見られること、マダイなどの白身魚には香りが付きにくいことから、「果皮から抽出したオイルを使った方法」が適していることが記載されている。
特許文献1は、非特許文献3で記載されている「果皮から抽出したオイルを使った方法」が記載されている。
特許文献1では、「圧搾法により柑橘の果皮から採取して、蒸留することなく粗精製した果皮油を添加したことを特徴とする養殖魚用飼料」が記載されている。ここでの粗精製は、特許文献1の段落番号(0016)に記載のように、伊予柑果汁を搾った残りの果皮及び残液からなる含油泥状液を遠心分離機にかけて取り出している。
また、特許文献1では、粗精製した果皮油(実施例1)に対して、伊予柑果汁を搾った後の残りの果皮をそのまま粉砕して混ぜたものを比較例1とし、8週間にわたって給餌した結果が記載されている。特許文献1によれば、実施例1では果皮油は0.2%とし、比較例1では粉砕果皮10%(含有される果皮油は0.25%)であるが、ぶりの筋肉中に含まれる伊予柑果皮油成分は、比較例1に対して実施例1は2倍以上多く含まれることが記載されている(特許文献1 図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6344563号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】深田陽久、 “フルーツ魚の開発について”、 日本調理科学会誌、2017年、 Vol. 50, No. 3, p.124〜126
【非特許文献2】木藪仁和、 “養殖魚のブランド化に必要な科学的特徴と生産基準の策定(かぼすぶり)”、 第6回瀬戸内海水産フォーラム、 国立研究開発法人水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所 瀬戸内海ブロック水産試験場場長会 2015年10月24日、 p.5−6
【非特許文献3】水野かおり、 “愛育フィッシュの新ブランド「みかんフィッシュ」を売り込め!”、 第6回瀬戸内海水産フォーラム、 国立研究開発法人水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所 瀬戸内海ブロック水産試験場場長会 2015年10月24日、 p.3−4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
養殖魚として新たな地位を確立しているフルーツフィッシュであるが、沖縄県では本格的な生産はされていない。そこで沖縄県立沖縄水産高等学校に所属する発明者らは、低迷する県内魚類養殖における新たなブランド養殖魚として、沖縄県産の柑橘類を用いたフルーツフィッシュを開発し、県内の魚類養殖を活性化し、更には日本の養殖業発展に貢献することを目的として研究に取り組んだ。
予備実験として、ハマフエフキの魚肉にヒラミレモン(シークヮーサーの名称で全国的に知られる沖縄県を代表する柑橘類)の香りや風味が乗るかを検証するため、実験1を行った。
なお、魚種として、ハマフエフキ(地方名:タマン)を使用した。体サイズは商品として流通している体長25cm前後とした。現在その養殖量は減少しているが、県内で古くから養殖の行われている種である。また本校では長年育種に取り組んでおり、成魚の数が揃っていることも選定理由の一つである。
図10は、実験1に用いた材料を示す写真であり、図10(a)はハマフエフキ、図10(b)はヒラミレモン、図10(c)は使用した海水魚用配合飼料、図10(d)は使用した飼育水槽である。
(1)実験1の方法
仕切られたA、Bの2つの水槽(各2トン)において、同密度で飼育しているハマフエフキに2種類の餌を量・回数・時間など全て同じ条件で給餌する。その後、刺身にしたものを試食し、アンケート調査を行う。
(2)給餌飼料
A水槽:一般的な海水魚用配合飼料(商品名:まだい華々5P 坂本飼料株式会社製)
B水槽:海水魚用配合飼料を市販のシークヮーサー100%果汁に12時間浸したもの
(3)給餌方法
1匹当たり一日に5gを午前と午後の2回に分けて与えた。
(4)給餌期間
他県で商品化されているフルーツフィッシュの事例を参考に1ヶ月間とした。
(5)試食アンケート調査
本校職員21名が、異なる餌で飼育した2種類の刺身を試食し、Q1からQ3の質問に答えた。
Q1:柑橘類の香りを強く感じたのはどれ?
Q2:魚臭さを感じたのはどれ?
Q3:美味しいと感じたのはどれ?
図11は実験1についてのアンケート調査結果である。
図11(a)に示すように、シークヮーサー100%果汁に浸した飼料育によるハマフエフキは62%のヒトが柑橘類の香りを強く感じている。
また、図11(b)に示すように、通常配合飼料育によるハマフエフキでは魚臭さを感じたヒトが43%であるのに対して、シークヮーサー100%果汁に浸した飼料育によるハマフエフキは魚臭さを感じたヒトが5%に過ぎない。
また、図11(c)に示すように、通常配合飼料育によるハマフエフキに比べて、シークヮーサー100%果汁に浸した飼料育によるハマフエフキを美味しいと感じたヒトが多い。
味、香りの感じ方に多少の個人差はあったが、ハマフエフキの魚肉本来の味を大きく変えることなく、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑える効果があることを確認できた。
【0007】
ところで非特許文献1によれば、かぼす果汁よりもかぼす果皮を混合した飼料を与えた方がより魚肉に香りの成分が多く含まれるという結果があり、またヒラミレモンの独特な香り成分はリモネンという物質であり、果皮に多く含まれていることが分かった。
そこで、ヒラミレモンの果汁や果肉を混合した飼料を与えるよりも、果皮を混合した飼料を与えた方がよりハマフエフキの魚肉に香り・風味を乗せることができるであろうという仮説を立て、実験2を行った。
なお、給餌方法、給餌期間、試食アンケート調査は実験1と同様である。なお、試食アンケート調査は本校職員27名が回答した。
(1)実験2の方法
仕切られたA、B、C、Dの4つの水槽(各2トン)において、同密度で飼育しているハマフエフキに4種類の餌を量・回数・時間など全て同じ条件で給餌する。その後、刺身にしたものを試食し、アンケート調査を行う。
(2)給餌飼料
A水槽:海水魚用配合飼料
B水槽:海水魚用配合飼料とヒラミレモンの果皮のみを混合し成形したもの
C水槽:海水魚用配合飼料とヒラミレモンの果肉のみを混合し成形したもの
D水槽:海水魚用配合飼料とヒラミレモンの果実を丸ごと混合し成形したもの
(3)混合配合飼料の作成方法
海水魚用配合飼料に果実の各部位を混合した飼料を図12の手順で作成した。モイストペレットのような硬さで成型することを踏まえ、粘度に注意しながら混合比率を調整し、最終的には海水魚用配合飼料と果実の重量比をほぼ1:1とした。
図13は実験2についてのアンケート調査結果である。
図13(a)に示すように、果皮のみ混合した飼料育によるハマフエフキは22%のヒトが柑橘類の香りを強く感じているのに対して、果実丸ごと混合した飼料育によるハマフエフキは52%のヒトが柑橘類の香りを強く感じている。
また、図13(b)に示すように、果皮のみ混合した飼料育によるハマフエフキでは魚臭さを感じたヒトが25%であるのに対して、果肉のみ混合した飼料育と、果実丸ごと混合した飼料育によるハマフエフキは魚臭さを感じたヒトが14%に過ぎない。
また、図13(c)に示すように、果肉のみ混合した飼料育によるハマフエフキに比べて、果皮のみ混合した飼料育と、果実丸ごと混合した飼料育によるハマフエフキを美味しいと感じたヒトが多い。
このように、仮説とは少し異なり、皮のみを混合したものよりも果実を丸ごと混合した餌を与えた方が、より風味・香りが強く、また魚臭さを抑える結果となった。刺身にするためハマフエフキを捌いた際、果実を丸ごと混合した餌で育てた魚体は、切り開いた時にヒラミレモンの香りがするなど、他の餌で育てた魚体とは明らかな違いを感じられた。
ところで、発明者らは、ヒラミレモンの搾汁効率は50%程度であり、搾汁残渣が大量に排出されており、搾汁残渣の処理が問題になっていることを知った。
実験2の結果から、果皮のみ混合した飼料や、果肉のみ混合した飼料に対して、果実丸ごと混合した飼料が、柑橘類の香りを強く感じ、魚臭さを感じず、美味しさを感じることから、搾汁残渣の有効利用を図ることに着目した。
【0008】
本発明は、ヒラミレモンの搾汁残渣を利用して、魚肉本来の味を大きく変えることなく、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑え、美味しさを感じることができる養殖魚の養殖方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明の養殖魚の養殖方法は、養殖魚の魚肉に柑橘の香りを付ける養殖魚の養殖方法であって、
前記養殖魚として、ハマフエフキ、マダイ、ハタ、又はスギを対象とし、
魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形した搾汁残渣混合成形飼料を、
前記養殖魚の水揚げ前の所定期間給餌する
ことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の養殖魚の養殖方法において、前記搾汁残渣を、前記海水魚用配合飼料に対して0.8〜1.2の重量比で混合し、給餌する前記所定期間を、4日以上で14日未満としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明の養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料の製造方法は、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁し、前記遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に混合して成形したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明の養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料は、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒラミレモンの搾汁残渣を利用して、魚肉本来の味を大きく変えることなく、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑え、美味しさを感じることができる養殖魚を養殖できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1による遠心分離式搾汁機、及び遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を示す写真
図2】実験3についてのアンケート調査結果を示すグラフ
図3】実験4に用いた海面生簀を示す写真
図4】実験4についてのアンケート調査結果を示すグラフ
図5】測定に用いたガスクロマトグラフ質量分析計と測定実験を示す写真
図6】ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定した、リモネン、テルピネン、及びシメンの魚肉中の含有量を示すグラフ
図7】世界の漁業・養殖業生産量と今後の予測を示すグラフ
図8】2030年までの漁業生産の変化予測を示すグラフ
図9】沖縄県の漁業生産量の内訳(2017年)を示すグラフ
図10】実験1に用いた材料を示す写真
図11】実験1についてのアンケート調査結果を示すグラフ
図12】配合飼料の作成手順を示す写真
図13】実験2についてのアンケート調査結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施の形態による養殖魚の養殖方法は、養殖魚として、ハマフエフキ、マダイ、ハタ、又はスギを対象とし、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形した搾汁残渣混合成形飼料を、養殖魚の水揚げ前の所定期間給餌するものである。本実施の形態によれば、ヒラミレモンの搾汁残渣を利用して、魚肉本来の味を大きく変えることなく、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑え、美味しさを感じることができる養殖魚を養殖できる。
【0013】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による養殖魚の養殖方法おいて、搾汁残渣を、海水魚用配合飼料に対して0.8〜1.2の重量比で混合し、給餌する所定期間を、4日以上で14日未満としたものである。本実施の形態によれば、短期間の給餌で魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑え、美味しさを感じることができる。
【0014】
本発明の第3の実施の形態による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料の製造方法は、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁し、遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に混合して成形したものである。本実施の形態によれば、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑えることができる飼料を得ることができる。
【0015】
本発明の第4の実施の形態による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料は、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形されたものである。本実施の形態によれば、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑えることができる。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例1による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料は、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形されたものである。
果実は、遠心分離式搾汁機では、遠心分離機下部中央に取り付けられたチョッパーで破砕され、円周部にあるスクリーンで擦り上げられつつ遠心搾汁される。遠心分離式搾汁機には、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま投入される。このため、実施例1で用いられる搾汁残渣は、ヒラミレモンの果汁を絞った後に残る、果皮、じょうのう(果肉を覆う小袋)、じょうのう膜(小袋の薄皮)、砂じょう(果肉)の一部、及び種子であり、精油成分も含まれる。遠心分離式搾汁機では、果皮と果肉の成分の一部が果汁部に混入する。
【0017】
図1は、遠心分離式搾汁機、及び遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を示す写真である。
搾汁機には、遠心分離式搾汁機の他に、例えば圧搾式搾汁機があり、果汁の絞り方や分離方法によって成分含有量に違いがある。例えば文献1(Effect of Extraction Method on Yield and Quality of Citrus depressa Juice Food Science Technology Research, 2007年、 13巻、 4号、 p.281−285)や文献2(宮城一菜、他7名, “シークワシャー果汁の晴好的・官能的特性に及ぼす搾汁機の影響”, 日本食品保蔵科学会誌, 2009年5月, 第35巻, 第3号, p.21−126)では、遠心分離式搾汁機、ベルトプレス搾汁機、及びスクリュープレス搾汁機によって、得られる果汁品質やポリメトキシフラボノイド類含有量に違いがあることが報告されている。
【0018】
比較例1として、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま圧搾式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形されたものを用いた。
非特許文献3及び特許文献1によれば、「果皮から抽出したオイル」が効果的であることから、比較例2及び比較例3を準備した。
比較例2は、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料を、フローラル水に浸したものを用いた。フローラル水は、植物に熱を加え、気化した水蒸気を集めたものであり、微量の精油成分を含んでいる。フローラル水は、主に化粧品や消臭剤などに使用されている。
比較例3は、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンから抽出した精油を添加した。
実施例1、及び比較例1から比較例3で用いた海水魚用配合飼料は、実験2で用いた飼料と同一である。実施例1及び比較例1で用いた搾汁残渣は、搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を冷凍保存し、海水魚用配合飼料との混合時に解凍して用いた。
実施例1及び比較例1では、海水魚用配合飼料と搾汁残渣との混合は実験2と同一の比率で調整した。
比較例2は、実験1と同様に海水魚用配合飼料をフローラル水に12時間浸した。
比較例3は、非特許文献3及び特許文献1で記載されている通り、魚体重1kgあたり0.4gとなるように調整した。
【0019】
実験3では、実施例1、及び比較例1から比較例3の飼料育を行った。
なお、魚種、水槽(区分毎に4つ使用)、給餌方法、給餌期間、試食アンケート調査は実験1及び実験2と同様である。なお、試食アンケート調査は本校職員及び加工業者52名が回答した。
図2は実験3についてのアンケート調査結果である。
図2(a)に示すように、実施例1の飼料育によるハマフエフキは86%のヒトが柑橘類の香りを強く感じているのに対して、比較例1の飼料育によるハマフエフキは4%、比較例2の飼料育によるハマフエフキは2%、比較例3の飼料育によるハマフエフキは8%にすぎない。
また、図2(b)に示すように、比較例1の飼料育によるハマフエフキでは魚臭さを感じたヒトが41%、比較例2の飼料育によるハマフエフキでは魚臭さを感じたヒトが33%、比較例3の飼料育によるハマフエフキでは魚臭さを感じたヒトが26%であり、実施例1の飼料育によるハマフエフキは魚臭さを感じたヒトがいなかった。
また、図2(c)に示すように、実施例1の飼料育によるハマフエフキを美味しいと感じたヒトが58%であった。
このように、実施例1による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料を用いることで、ヒラミレモンの香りを強く感じられ、また魚臭さを消し、美味しさも感じられる効果があることが確認できた。
なお、実施例1では、海水魚用配合飼料と果実の重量比をほぼ1:1としたが、搾汁残渣は、海水魚用配合飼料に対して0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2の範囲内の重量比であればよい。
【0020】
実験4は、他の魚種に対する効果確認と、効果が得られる最短給餌期間の検証を目的に、海面生簀で養殖されているマダイを対象にして、実施例1による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料を用いて行った。
図3は実験4に用いた海面生簀を示す写真である。
実験4では、実施例1による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料による給餌を開始してから3日から4日毎に養殖魚を取り上げ、3日間餌止めした後に試食アンケート調査を実施した。
試食アンケート調査は平均32名、実施例1による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料による給餌を開始してから32日まで、8回実施した。
【0021】
図4は実験4についてのアンケート調査結果である。
アンケートは、「柑橘類の香りを感じたか」に対して、強く感じた、かすかに感じた、感じない、分からない、の4項目とした。
図4に示すように、日数経過に伴う明確な増加傾向は見られなかった反面、4日経過時点で既に42%が香りを感じている。このことから、給餌期間は、4日以上であれば効果が確認でき、14日未満、更には10日以下、更には7日以下でも効果を期待できる。
なお、アンケートでの自由記述では、魚臭さがない(38名)、さっぱりしている(12名)、食べやすい(9名)、食感が良い(8名)と記述され、料理人からも、十分に商品として扱えるとの評価を頂いた。
実験4から、マダイでもヒラミレモンの香りが感じられ、魚臭さを抑制する効果を確認できた。また、給餌開始から4日で効果が現れており、短期間の給餌でも十分な効果が得られる可能性を確認できた。
【0022】
実験2及び実験3における給餌飼料を用いた魚肉中の香料成分含有量の測定結果を以下に説明する。
図5は、測定に用いたガスクロマトグラフ質量分析計と測定実験を示す写真である。
図6は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定した、リモネン、テルピネン、及びシメンの魚肉中の含有量を示している。
実験2で用いた、「海水魚用配合飼料」、「海水魚用配合飼料とヒラミレモンの果皮のみを混合し成形したもの」、及び「海水魚用配合飼料とヒラミレモンの果肉のみを混合し成形したもの」については、リモネン、テルピネン、及びシメンは検出されなかった。
実験2で用いた「海水魚用配合飼料とヒラミレモンの果実を丸ごと混合し成形したもの」、実験3で用いた比較例1、比較例2、比較例3は、図6に示すように、所定レベルで、リモネン、テルピネン、及びシメンの含有量が確認できたが、実施例1では突出した値が検出された。
図6に示す結果から、実験2及び実験3でのアンケート調査結果を裏付けることができた。
【0023】
以上のように、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形した搾汁残渣混合成形飼料を、養殖魚の水揚げ前の所定期間給餌することで、魚肉本来の味を大きく変えることなく、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑え、美味しさを感じることができる養殖魚を養殖できる。
本発明による養殖魚用搾汁残渣混合成形飼料は、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁し、遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に混合して成形することで製造することができ、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑えることができる飼料を得ることができる。
なお、ハマフエフキやマダイ以外の魚種として、脂ののりやすいハタ、スギにも適している。
また、海水魚用配合飼料に混合する搾汁残渣は、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣をそのまま用いる他、低温乾燥させた搾汁残渣、又は更に低温乾燥させた後に粉砕した搾汁残渣を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、ハマフエフキ、マダイ、ハタ、又はスギ以外の養殖魚種にも適用可能である。
【要約】
【課題】ヒラミレモンの搾汁残渣を利用して、魚肉本来の味を大きく変えることなく、魚肉にヒラミレモンの風味・香りが乗り、魚臭さを抑え、美味しさを感じることができる養殖魚の養殖方法を提供すること。
【解決手段】養殖魚として、ハマフエフキ、マダイ、ハタ、又はスギを対象とし、魚粉を主原料とする海水魚用配合飼料に、ヒラミレモンの果実を果皮付きのまま遠心分離式搾汁機により搾汁した後の搾汁残渣を混合して成形した搾汁残渣混合成形飼料を、養殖魚の水揚げ前の所定期間給餌することを特徴とする。
【選択図】 図6
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図13