(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電線検査装置には、ノイズ以外の原因に起因する電線の出力異常を十分に検出できないという問題点がある。その結果、特許文献1に開示された電線検査装置は、波形情報を出力できる電子部品における出力異常の有無を検査できない。
【0006】
本発明は、このような問題を解消するものである。その目的は、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無を検査できる波形判断装置、波形判断方法、および、波形判断プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図面を参照して本発明の波形判断装置、波形判断方法、および、波形判断プログラムを説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、波形判断装置20は、波形情報受付部100と、波形要件判断部102と、判断結果出力部104とを備える。波形情報受付部100は、波形を示す波形情報の入力を受付ける。波形要件判断部102は、波形情報が示す波形が所定の要件を満たすか否かを判断する。判断結果出力部104は、波形要件判断部102による判断の結果を出力する。波形要件判断部102が、特徴値算出部120と、閾値判断部122とを有している。特徴値算出部120は、複数種類の構成波のいずれかを用いて所定の手順により特徴値を算出する。この特徴値は、波形の特徴を示す。構成波は、波形を構成する波である。閾値判断部122は、特徴値が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かを判断する。
【0009】
波形情報受付部100は、波形を示す波形情報の入力を受付ける。特徴値算出部120は、複数種類の構成波のいずれかを用いて所定の手順により特徴値を算出する。特徴値が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かを閾値判断部122が判断する。この特徴値は、波形の特徴を示す。構成波は、波形情報が示す波形を構成する波である。判断結果出力部104は、波形要件判断部102による判断の結果を出力する。これにより、その波形が所定の要件を満たすか否かが構成波のいずれかに基づいて判断されることとなる。そのように判断されるので、波形情報が示す波形の特徴が判断結果に反映され得ることとなる。
【0010】
また、上述された波形情報が、複数の物理量情報を含む。それらの物理量情報は、それぞれが物理量の大きさを示す。それらの物理量情報は、互いの前後の順序が設定されている。この場合、特徴値算出部120が、再現値算出部140と、相関係数算出部142とを有している。再現値算出部140は、複数種類の構成波の所定の一部の構成波に依拠して、少なくとも2個の物理量情報につき、物理量情報が示す物理量の大きさの再現値を算出する。相関係数算出部142は、次に述べられる2種類の物理量の大きさの相関係数を特徴値として算出する。1種類目の物理量の大きさは、再現値算出部140による物理量の大きさの再現値の算出対象となった物理量情報が示すものである。2種類目の物理量の大きさは、再現値算出部140が算出した再現値が示すものである。再現値算出部140が依拠する所定の一部の構成波は、次に述べられる構成波からなる。その構成波は、所定の構成波
、および、順位が所定の構成波の順位より上位である構成
波である。ここで言う所定の構成波とは、複数種類の構成波のいずれかのことである。ここで言う順位とは、複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位である。この場合、閾値判断部122が、相関係数算出部142によって算出された相関係数が閾値以上か否かを判断する。
【0011】
再現値算出部140が算出する再現値は、複数種類の構成波の所定の一部の構成波の振幅と周波数と位相とに依拠するものである。これにより、再現値が依拠しない構成波の影響は再現値から取り除かれることとなる。その影響がその再現値から取り除かれると、その再現値が示す物理量情報と再現値の算出対象となった物理量情報とがそれぞれ示す物理量の大きさには違いが生じることとなる。それらに違いが生じるので、再現値が依拠しない構成波の影響が相関係数に現れ易くなる。検査対象の電子部品において何らかの異常が生じている場合、そうでない場合に比べると、波形には周波数の高い構成波が多く含まれ易くなる。波形に周波数の高い構成波が多く含まれ、再現値が依拠しない構成波の影響が相関係数に現れ易くなり、かつ、その相関係数が閾値以上か否かが判断されると、再現値が依拠しない構成波が波形に及ぼす影響の大きさは判断可能となる。再現値が依拠しない構成波が波形に及ぼす影響の大きさが判断可能になると、波形情報を出力できる電子部品についての再現値が依拠しない構成波に基づく出力異常の有無が判断可能になる。検査対象の電子部品において何らかの異常が生じている場合、そうでない場合に比べると、波形には周波数の高い構成波が多く含まれ易くなるためである。その結果、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無をより明確に検査できる。
【0012】
【0013】
【0014】
本発明の他の局面に従うと、波形判断方法は、波形情報受付工程S200と、波形要件判断工程S202と、判断結果出力工程S204とを備える。波形情報受付工程S200において、波形を示す波形情報の入力をコンピュータ50が受付ける。波形要件判断工程S202において、波形情報が示す波形が所定の要件を満たすか否かをコンピュータ50が判断する。判断結果出力工程S204において、波形要件判断工程S202における判断の結果をコンピュータ50が出力する。波形情報が、それぞれが物理量の大きさを示し互いの前後の順序が設定されている複数の物理量情報を含む。波形要件判断工程S202が、特徴値算出工程S220と、閾値判断工程S222とを有している。特徴値算出工程S220において、複数種類の構成波のいずれかを用いてコンピュータ50が所定の手順により特徴値を算出する。この特徴値は、波形の特徴を示す。この構成波は、波形を構成する波である。閾値判断工程S222において、特徴値が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かをコンピュータ50が判断する。また、上述された波形情報が、複数の物理量情報を含む。それらの物理量情報は、それぞれが物理量の大きさを示す。それらの物理量情報は、互いの前後の順序が設定されている。この場合、特徴値算出工程S220が、再現値算出工程S240と、相関係数算出工程S242とを有している。再現値算出工程S240において、コンピュータ50が、複数種類の構成波の所定の一部の構成波に依拠して、少なくとも2個の物理量情報につき、物理量情報が示す物理量の大きさの再現値を算出する。相関係数算出工程S242において、コンピュータ50が、次に述べられる2種類の物理量の大きさの相関係数を特徴値として算出する。1種類目の物理量の大きさは、再現値算出工程S240において物理量の大きさの再現値の算出対象となった物理量情報が示すものである。2種類目の物理量の大きさは、再現値算出工程S240において算出された再現値が示すものである。再現値算出工程S240において依拠される所定の一部の構成波は、次に述べられる構成波からなる。その構成波は、所定の構成波
、および、順位が所定の構成波の順位より上位である構成
波である。ここで言う所定の構成波とは、複数種類の構成波のいずれかのことである。ここで言う順位とは、複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位である。この場合、閾値判断工程S222が、相関係数算出工程S242において算出された相関係数が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かをコンピュータ50が判断する工程である。
【0015】
本発明にかかる波形判断方法によれば、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無を検査できる。
【0016】
本発明の他の局面に従うと、波形判断プログラムは、波形情報受付工程S200と、波形要件判断工程S202と、判断結果出力工程S204とを備える波形判断方法をコンピュータ50に実行させる。波形情報受付工程S200は、波形を示す波形情報の入力を受付ける工程である。波形要件判断工程S202は、波形情報が示す波形が所定の要件を満たすか否かを判断する工程である。判断結果出力工程S204は、波形要件判断工程S202における判断の結果を出力する工程である。波形要件判断工程S202が、特徴値算出工程S220と、閾値判断工程S222とを有している。特徴値算出工程S220は、複数種類の構成波のいずれかの構成波を用いて所定の手順により特徴値を算出する工程である。この特徴値は、波形の特徴を示す。この構成波は、波形を構成する波である。閾値判断工程S222は、特徴値が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かを判断する工程である。また、上述された波形情報が、複数の物理量情報を含む。それらの物理量情報は、それぞれが物理量の大きさを示す。それらの物理量情報は、互いの前後の順序が設定されている。この場合、特徴値算出工程S220が、再現値算出工程S240と、相関係数算出工程S242とを有している。再現値算出工程S240は、複数種類の構成波の所定の一部の構成波に依拠して、少なくとも2個の物理量情報につき、物理量情報が示す物理量の大きさの再現値を算出する工程である。相関係数算出工程S242は、次に述べられる2種類の物理量の大きさの相関係数を特徴値として算出する工程である。1種類目の物理量の大きさは、再現値算出工程S240において物理量の大きさの再現値の算出対象となった物理量情報が示すものである。2種類目の物理量の大きさは、再現値算出工程S240において算出された再現値が示すものである。再現値算出工程S240において依拠される所定の一部の構成波は、次に述べられる構成波からなる。その構成波は、所定の構成波
、および、順位が所定の構成波の順位より上位である構成
波である。ここで言う所定の構成波とは、複数種類の構成波のいずれかのことである。ここで言う順位とは、複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位である。この場合、閾値判断工程S222は、相関係数算出工程S242において算出された相関係数が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かを判断する工程である。
【0017】
本発明にかかる波形判断プログラムによれば、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無を検査できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無を検査できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
[波形判断装置の構成の説明]
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる波形判断装置20の構成を表す図である。
図1に基づいて、本実施形態にかかる波形判断装置20の構成が説明される。
【0022】
本実施形態にかかる波形判断装置20は、一端電力供給端子30と、他端電力供給端子32と、電源部34と、出力部36とを備える。
【0023】
一端電力供給端子30と他端電力供給端子32とは、検査の対象であるワイヤハーネス400の一端と他端とに接続される。電源部34は、一端電力供給端子30を介してワイヤハーネス400に交流電力を供給する。時系列変化に伴うこの電力の電圧変動が図示されたとすると、その図はパルス状の波形を示すこととなる。出力部36は、次に述べられる電線に対する検査結果を出力する。この電線はワイヤハーネス400を構成するものである。この検査結果はワイヤハーネス400が電源部34によって供給された交流電力の電圧を許容範囲以上に歪ませているか否かを示すものである。
【0024】
本実施形態の場合、出力部36は、周知のコンピュータ50とこれに接続される周知の電圧検知装置52とによって実現される。このコンピュータ50は、情報を処理する。電圧検知装置52は、他端電力供給端子32の対地電圧を検知する。このコンピュータ50は、制御部70と 、記憶部72と、入力装置74と、表示装置76と、I/O(Input/Output)78と、コネクタ80とを有する。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)などによって実現される。制御部70は、記憶部72から読出したプログラムを実行することにより、そのプログラムにおいて定められた手順に従ってコンピュータ50を構成する各装置を制御する。記憶部72は、ROM(Read only memory)およびRAM(Random access memory)などによって実現される。記憶部72は、プログラムとデータとを記憶する。入力装置74は、オペレータの入力に応じて信号を生成する。これにより、オペレータからコンピュータ50に情報が入力される。表示装置76は、画像を表示することにより情報を出力する。I/O78は、電圧検知装置52に接続される。I/O78は、電圧検知装置52が出力した信号を受付ける。この信号は、電圧検知装置52が検知した対地電圧の波形を示す。これにより、I/O78は、電圧検知装置52からその信号が示す波形情報の入力を受付けることとなる。この波形情報は、複数の物理量情報を含む。それらの物理量情報は、それぞれが互いに異なるある瞬間の電圧の大きさを示す。それらの物理量情報は、互いの前後の順序が設定されている。本実施形態の場合、電圧検知装置52は接地されている。この電圧検知装置52の構成は周知なので、ここではその詳細な説明は繰り返されない。コネクタ80にはUSB(Universal Serial Bus)メモリ22が接続される。USBメモリ22に記録されたプログラムおよび情報はコネクタ80を介して制御部70に読み込まれる。
【0025】
[波形判断装置の機能の説明]
図2は、本実施形態にかかる波形判断装置20の機能ブロック図である。
図2に基づいて、本実施形態にかかる波形判断装置20の構成とその機能とが説明される。
【0026】
本実施形態にかかる波形判断装置20は、波形情報受付部100と、波形要件判断部102と、判断結果出力部104とを備える。
【0027】
本実施形態の場合、波形情報受付部100は、一端電力供給端子30と他端電力供給端子32と電源部34と電圧検知装置52とI/O78とによって実現される。波形情報受付部100は、波形情報の入力を受付ける。本実施形態の場合、この波形情報は、ワイヤハーネス400を構成する電線が出力したものである。
【0028】
本実施形態の場合、波形要件判断部102は、制御部70と記憶部72と入力装置74とコネクタ80とによって実現される。波形要件判断部102は、波形情報が示す波形が所定の要件を満たすか否かを判断する。本実施形態におけるこの要件は後述される。
【0029】
本実施形態の場合、判断結果出力部104は、制御部70と記憶部72と表示装置76とによって実現される。判断結果出力部104は、波形要件判断部102による判断の結果を出力する。
【0030】
本実施形態の場合、波形要件判断部102が、特徴値算出部120と、閾値判断部122とを有している。
【0031】
特徴値算出部120は、複数種類の構成波のいずれかを用いて所定の手順により特徴値を算出する。一般に、ある波は複数種類の他の波の合成によって形成できる。このため、前者の波は後者の波によって構成されているとみなし得る。構成波は、波形情報受付部100が受付けた波形情報が示す波を前者の波とする場合の、後者の波を意味する。したがって、構成波は波形情報受付部100が受付けた波形情報が示す波の波形を構成する波である。特徴値算出部120が算出する特徴値は、波形の特徴を示す。本実施形態における特徴値の具体的内容は後述される。
【0032】
閾値判断部122は、特徴値算出部120によって算出された特徴値が閾値以上か否かを判断する。これにより、波形情報受付部100が受付けた波形情報が示す波の波形が所定の要件を満たすか否かが判断される。
【0033】
本実施形態の場合、特徴値算出部120が、再現値算出部140と、相関係数算出部142とを有している。
【0034】
再現値算出部140は、複数種類の構成波の所定の一部の構成波に依拠して、少なくとも2個の物理量情報につき、その物理量情報が示す電圧の大きさの再現値を算出する。再現値算出部140がどの構成波に依拠するかという点は後述される。
【0035】
相関係数算出部142は、次に述べられる2種類の電圧の大きさの相関係数を算出する。1種類目の電圧の大きさは、再現値算出部140による電圧の大きさの再現値の算出対象となった物理量情報が示すものである。2種類目の電圧の大きさは、再現値算出部140が算出した再現値が示すものである。本実施形態の場合、この相関係数が上述された特徴値とみなされる。その結果、閾値判断部122は、この相関係数が閾値以上か否かを判断することとなる。
【0036】
本実施形態の場合、再現値算出部140が、構成波特定部160と、周波数順位特定部162と、低周波依拠算出部164とを有している。
【0037】
構成波特定部160は、複数種類の構成波それぞれの振幅と周波数とを波形情報に基づき特定する。本実施形態の場合、構成波特定部160は、複数種類の構成波それぞれの振幅と周波数とに加え、複数種類の構成波それぞれの位相を波形情報に基づき特定する。本実施形態の場合、それら振幅と周波数と位相とは、高速フーリエ変換によって特定される。
【0038】
周波数順位特定部162は、波形情報受付部100が受付けた波形情報が示す波を構成する複数種類の構成波の中における次に述べられる構成波の周波数の低さの順位を特定する。順位が特定される構成波は、次に述べられる構成波の群のうち周波数の低さの順位が所定の順位の構成波である。その構成波の群は、複数の構成波の組それぞれの最大振幅波の群である。最大振幅波は、周波数の低さの順位が前後し振幅のピークを含む少なくとも3種類の所定の種類数の構成波の組の中で振幅が最も大きい構成波である。
【0039】
低周波依拠算出部164は、複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位が周波数順位特定部162により特定された順位以上である少なくとも2種類の構成波の振幅と周波数と位相とに依拠して、物理量情報が示す電圧の大きさの再現値を算出する。本実施形態の場合、再現値は、逆高速フーリエ変換によって特定される。
【0040】
[プログラムの説明]
上述されたとおり、コンピュータ50の、制御部70と 、記憶部72と、入力装置74と、表示装置76と、I/O78と、コネクタ80とが、本実施形態にかかる波形判断装置20の出力部36を構成する。これは、制御部70が記憶部72から読出した波形判断プログラムを実行することにより実現される。一般的にこうしたプログラムは、USBメモリ22などのコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で流通する。こうしたプログラムは図示されないインターネットを介して流通することもある。こうしたプログラムは、記憶部72にいったん記録される。制御部70が実行するプログラムは、その記憶部72が記憶したものである。したがって、本発明の最も本質的な部分は、USBメモリ22などのコンピュータ読取可能な記録媒体に記録されたプログラムである。
【0041】
[フローチャートの説明]
図3は、本実施形態にかかる波形判断方法の制御の手順を示すフローチャートである。上述されたプログラムは、次に述べられる複数の工程をコンピュータ50に実行させるものである。それら複数の工程は、波形情報受付工程S200、波形要件判断工程S202、および、判断結果出力工程S204である。それら複数の工程はいずれも
図3に示されている。それら複数の工程を実行した結果、本実施形態にかかるコンピュータ50は、それら複数の工程を備える波形判断方法を実施することとなる。以下、これらの各工程の具体的な内容が説明される。
【0042】
波形情報受付工程S200において、波形情報受付部100として動作する電源部34は、一端電力供給端子30を介して、ワイヤハーネス400へ交流電力を供給する。その交流電力は、ワイヤハーネス400および波形情報受付部100として動作する他端電力供給端子32を経由して、同じく波形情報受付部100として動作する電圧検知装置52に供給される。電圧検知装置52は、他端電力供給端子32の対地電圧を検知する。波形情報受付部100として動作するコンピュータ50のI/O78は、電圧検知装置52が出力した信号を受付ける。これにより、コンピュータ50は、電圧検知装置52から波形情報の入力を受付けることとなる。
【0043】
波形要件判断工程S202において、波形情報が示す波形が所定の要件を満たすか否かを波形要件判断部102として動作するコンピュータ50が判断する。この工程における具体的な判断の内容は後述される。
【0044】
判断結果出力工程S204において、波形要件判断工程S202における判断の結果を判断結果出力部104として動作するコンピュータ50が出力する。
【0045】
図4は、本実施形態にかかる波形要件判断工程S202の制御の手順を示すフローチャートである。この制御は、次に述べられる複数の工程を本実施形態にかかる波形判断装置20が備えるコンピュータ50に実行させるものである。それら複数の工程は、特徴値算出工程S220、閾値判断工程S222、合格情報作成工程S224、および、不合格情報作成工程S226である。以下、これらの各工程の具体的な内容が説明される。
【0046】
特徴値算出工程S220において、特徴値算出部120として動作するコンピュータ50は、複数種類の構成波のいずれかを用いて所定の手順により特徴値を算出する。この特徴値は、波形の特徴を示す。特徴値を算出するための本実施形態における手順の具体的な内容は後述される。
【0047】
閾値判断工程S222において、閾値判断部122として動作するコンピュータ50は、特徴値算出工程S220において算出された特徴値が閾値以上か否かを判断する。特徴値が波形情報によって示される波形の特徴を示すので、特徴値が閾値以上か否かが判断されると、次に述べられる所定の要件を満たすか否かが判断されることとなる。その要件は、特徴値によって特徴が示される波形がその特徴値に対して定められた閾値以上であることというものである。特徴値が閾値以上の場合(S222にてYES)、処理はS224へと移される。もしそうでないと(S222にてNO)、処理はS226へと移される。
【0048】
合格情報作成工程S224において、閾値判断部122として動作するコンピュータ50は、検査結果が合格である旨の情報を作成する。
【0049】
不合格情報作成工程S226において、閾値判断部122として動作するコンピュータ50は、検査結果が不合格である旨の情報を作成する。
【0050】
図5は、本実施形態にかかる特徴値算出工程S220の制御の手順を示すフローチャートである。この制御は、次に述べられる複数の工程を本実施形態にかかる波形判断装置20が備えるコンピュータ50に実行させるものである。それら複数の工程は、再現値算出工程S240、および、相関係数算出工程S242である。以下、これらの各工程の具体的な内容が説明される。
【0051】
再現値算出工程S240において、再現値算出部140として動作するコンピュータ50は、複数種類の構成波の所定の一部の構成波に依拠して、少なくとも2個の物理量情報につき、それらの物理量情報が示す電圧の大きさの再現値を算出する。この工程の具体的内容は後述される。
【0052】
相関係数算出工程S242において、相関係数算出部142として動作するコンピュータ50は、次に述べられる2種類の電圧の大きさの相関係数を算出する。1種類目の電圧の大きさは、再現値算出部140による電圧の大きさの再現値の算出対象となった物理量情報が示すものである。2種類目の電圧の大きさは、再現値算出部140が算出した再現値が示すものである。
【0053】
図6は、本実施形態にかかる再現値算出工程S240の制御の手順を示すフローチャートである。この制御は、次に述べられる複数の工程を本実施形態にかかる波形判断装置20が備えるコンピュータ50に実行させるものである。それら複数の工程は、構成波特定工程S260、周波数順位特定工程S262、および、低周波依拠算出工程S264である。以下、これらの各工程の具体的な内容が説明される。
【0054】
構成波特定工程S260において、構成波特定部160として動作するコンピュータ50は、複数種類の構成波それぞれの振幅と周波数と位相とを波形情報に基づき特定する。本実施形態の場合、それら振幅と周波数と位相とは、高速フーリエ変換によって特定される。高速フーリエ変換によってそれら振幅と周波数と位相とを特定するための具体的な手順は周知なのでここではその説明は繰り返されない。
【0055】
周波数順位特定工程S262において、周波数順位特定部162として動作するコンピュータ50は、次に述べられる構成波の複数種類の構成波全体(構成波特定部160が振幅と周波数と位相とを特定した構成波すべて)の中における周波数の低さの順位を特定する。順位が特定される構成波は、次に述べられる構成波の群のうち周波数の低さの順位が所定の順位である構成波である。本実施形態の場合、その順位は、第1位である。その構成波の群は、複数の構成波の組それぞれの最大振幅波の群である。最大振幅波は、周波数の低さの順位が前後し振幅のピークを含む少なくとも3種類の所定の種類数の構成波の組の中で振幅が最も大きい構成波である。本実施形態の場合、その構成波の組は、周波数の低さの順位が前後する3種類の構成波の組であることとする。すなわち、その構成波の組は、その組の中で最も周波数が小さい構成波と、その組の中で周波数が真ん中の構成波と、その組の中で最も周波数が大きい構成波とから構成される。
【0056】
低周波依拠算出工程S264において、低周波依拠算出部164として動作するコンピュータ50は、次に述べられる少なくとも2種類の構成波の振幅と周波数と位相とに依拠して、物理量情報が示す電圧の大きさの再現値を算出する。依拠される構成波は、複数種類の構成波全体の中での周波数の低さの順位が周波数順位特定部162により特定された順位以上の構成波である。再現値の算出に用いられる構成波の種類数は任意である。本実施形態の場合、複数種類の構成波全体の中での周波数の低さの順位が周波数順位特定部162により特定された順位以上の構成波はすべて再現値の算出に用いられる。本実施形態の場合、再現値は、逆高速フーリエ変換によって特定される。逆高速フーリエ変換によって少なくとも2種類の構成波の振幅と周波数と位相とに依拠して再現値を算出するための具体的な手順は周知なのでここではその説明は繰り返されない。
【0057】
[動作の説明]
(波形に歪が生じる場合)
検査者は、一端電力供給端子30と他端電力供給端子32とにワイヤハーネス400を接続する。ワイヤハーネス400が接続されると、検査者は、電源部34を動作させる。電源部34は一端電力供給端子30を介してワイヤハーネス400に交流電力を供給する。
図7は、その交流電力の時系列変化に伴う電圧変動を示す概念図である。
図7に示されるように、この図はパルス状の電圧変動の波形を示す。電圧検知装置52は、他端電力供給端子32の対地電圧を検知する。電圧検知装置52は、検知したその電圧の大きさを示す信号を出力する。この信号が、波形情報となる。本実施形態の場合、この波形情報は、ある瞬間の電圧値を示す情報の集合体である。
【0058】
電圧検知装置52が出力した波形情報の入力をコンピュータ50のI/O78が受付ける(S200)。これが完了すると、コンピュータ50は、複数種類の構成波それぞれの振幅と周波数と位相とを波形情報に基づき特定する(S260)。
図8は、コンピュータ50が特定した構成波の周波数とスペクトル強度との関係を示す概念図である。構成波特定部160として動作するコンピュータ50は、
図7に示されたような波形を示す波形情報から、
図8の概念図を作成可能な振幅と周波数と位相とを特定できる。
【0059】
複数種類の構成波それぞれの振幅と周波数と位相とが特定されると、コンピュータ50は、次に述べられる構成波の複数種類の構成波全体の中における周波数の低さの順位を特定する。順位が特定される構成波は、次に述べられる構成波の群のうち周波数の低さの順位が第1位である構成波である。その構成波の群は、複数の構成波の組それぞれの最大振幅波の群である。最大振幅波は、周波数の低さの順位が前後し振幅のピークを含む3種類の構成波の組の中で振幅が最も大きい構成波である(S262)。その結果、
図8に示される周波数のうちスペクトル強度の左側のピークの順位(第6位)が特定される。
【0060】
順位が特定されると、コンピュータ50は、次に述べられる構成波の振幅と周波数と位相とに依拠して、物理量情報が示す電圧の大きさの再現値を算出する。依拠される構成波は、複数種類の構成波の中での周波数の低さの順位が周波数順位特定部162により特定された順位以上の構成波である(S264)。その結果、
図8に示される周波数のうち周波数の低さの順位が第1位から第6位までの構成波が依拠されることとなる。
【0061】
再現値が算出されると、コンピュータ50は、次に述べられる2種類の電圧の大きさの相関係数を算出する(S242)。1種類目の電圧の大きさは、再現値算出部140による電圧の大きさの再現値の算出対象となった物理量情報が示すものである。すなわち、電圧検知装置52が検知した対地電圧が1種類目の電圧の大きさとなる。2種類目の電圧の大きさは、再現値算出部140が算出した再現値が示すものである。すなわち、再現値算出部140が算出した電圧の大きさの再現値が2種類目の電圧の大きさとなる。上述の通り、本実施形態にかかる波形情報は、ある瞬間の電圧値を示す情報の集合体である。低周波依拠算出部164として動作するコンピュータ50は、その電圧値を示す情報のいずれかについて、再現値を算出できる。その結果、算出された再現値と、その再現値の元となった電圧値とが存在することとなる。これらの値が存在するので、相関係数を算出することが可能になる。算出された相関係数が本実施形態にかかる特徴値となる。
図9は、これら2種類の電圧の相関関係を示す概念図である。
図8に示される周波数のうち周波数の低さの順位が第1位から第6位までの構成波に依拠して再現値が算出され、第7位以下の構成波に依拠せず再現値が算出されたため、これら2種類の電圧の相関性はさほど高くない。
【0062】
相関係数が算出されると、コンピュータ50は、特徴値すなわち相関係数が閾値以上か否かを判断する(S222)。上述された2種類の電圧の相関性はさほど高くない。これにより、算出された特徴値すなわち相関係数は小さな値となる。その結果、特徴値が閾値未満となるので(S222にてNO)、コンピュータ50は、検査結果が不合格である旨の情報を作成する(S226)。
【0063】
検査結果が不合格である旨の情報が作成されると、コンピュータ50は、波形要件判断工程S202における判断の結果を出力する(S204)。
【0064】
[効果の説明]
本実施形態にかかる波形判断装置20によれば、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無をより明確に検査できる。
また、低周波依拠算出部164は、複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位が周波数順位特定部162により特定された順位以上である少なくとも2種類の構成波の振幅と周波数と位相とに依拠して、物理量情報が示す物理量の大きさの再現値を算出する。検査対象の電子部品において何らかの異常が生じている場合、そうでない場合に比べると、波形には周波数の高い構成波が多く含まれ易くなる。複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位が周波数順位特定部162により特定された順位以上である少なくとも2種類の構成波に基づいて再現値が算出されると、その再現値には周波数の高い構成波の影響が現れ難くなる。その再現値にその影響が現れ難くなると、相関係数算出部142が算出する相関係数の値が小さくなる。相関係数の値が小さくなると、出力異常の有無が明確化され易くなる。その結果、電線に加え電線以外の波形情報を出力できる電子部品についてもその出力異常の有無をより明確に検査できる。
【0065】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではない。もちろん、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよい。
【0066】
例えば、物理量情報が示す物理量は電圧に限定されない。本発明における「物理量」とは、物理学における一定の体系の下で次元が確定し、定められた物理単位の倍数として表すことができる量のことである。電圧以外の物理量の例には、電流値および圧力値がある。波形情報が含む物理量情報における互いの前後の順序の設定方法は、時間に対応付けられることに限定されない。
【0067】
また、周波数順位特定工程S262における構成波の組を構成する構成波の種類数は、4種類以上であってもよい。周波数順位特定工程S262において複数種類の構成波全体の中における周波数の低さの順位が特定されるのは、上述された構成波に限定されない。
【0068】
また、所定の構成波と、複数種類の構成波の中における周波数の低さの順位がその所定の構成波の順位より上位である構成波のいずれかとが、再現値算出部140によって依拠される限り、低周波依拠算出工程S264において再現値の算出のために依拠される構成波を特定するための具体的な手順は上述したものに限定されない。例えば、構成波特定部160が振幅と周波数と位相とを特定した構成波のうち周波数の低さの順位を示す値が奇数となるものが依拠されるよう、再現値の算出のために依拠される構成波を特定してもよい。再現値が算出されるための具体的な手順も限定されない。特徴値が算出されるための具体的な手順も限定されない。
【解決手段】波形判断装置20は、波形情報受付部100と、波形要件判断部102と、判断結果出力部104とを備える。波形情報受付部100は、波形を示す波形情報の入力を受付ける。波形要件判断部102は、波形情報が示す波形が所定の要件を満たすか否かを判断する。判断結果出力部104は、波形要件判断部102による判断の結果を出力する。波形要件判断部102が、特徴値算出部120と、閾値判断部122とを有している。特徴値算出部120は、複数種類の構成波のいずれかを用いて所定の手順により特徴値を算出する。この特徴値は、波形の特徴を示す。構成波は、波形を構成する波である。閾値判断部122は、特徴値が閾値以上か否かに基づいて波形が所定の要件を満たすか否かを判断する。