(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2室輸液が、電解質としてさらに少なくともクエン酸を含み、第2室輸液において、クエン酸の濃度(mEq)がカルシウムの濃度(mEq)以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の輸液製剤。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明は、第1室に脂肪乳剤を含む第1室輸液が収納され、第2室にアミノ酸及び電解質を含む第2室輸液が収納される、連通可能な仕切りにより隔てられた2室を有する輸液製剤に係る。
【0013】
第1室輸液
本発明で用いられる第1室輸液は、脂肪乳剤を含み、さらに緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0014】
第1室輸液に配合される脂肪乳剤は、油脂を、乳化剤を用いて水に分散させて調製された水中油型乳剤である。当該脂肪乳剤の調製は常法に準じて行うことができる。例えば、水に油脂および乳化剤を加えた後、撹拌して粗乳化液を調製し、次いで粗乳化液を高圧乳化法などの慣用の方法により乳化することにより調製することができる。
【0015】
油脂としては、食用油を好ましく用いることができる。例えば植物油(大豆油、オリーブ油、綿実油、サフラワー油、トウモロコシ油、ヤシ油、シソ油、エゴマ油など)、魚油(イワシ油など)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(炭素数8〜10の脂肪酸のトリグリセリド)[市販品名:「パナセート」(日本油脂社製)、「ODO」(日清製油社製)、「ココナード」(花王社製)、「ミグリオール」(ミツバ貿易社)など]、化学合成トリグリセリド類[2−リノレオイル−1,3−ジオクタノイルグリセロール(8L8)、2−リノレオイル−1,3−ジデカノイルグリセロール(10L10)など]等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
乳化剤としては例えば製剤学的に許容される各種の乳化剤を用いることができる。例えば卵黄リン脂質(卵黄レシチン)、水素添加卵黄リン脂質、大豆リン脂質(大豆レシチン)、水素添加大豆リン脂質等、また、非イオン性界面活性剤等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
特に好ましい油脂としては大豆油が、特に好ましい乳化剤としては卵黄リン脂質(卵黄レシチン)が、それぞれ挙げられる。特に卵黄レシチン等のレシチンを用いると、後述のとおりリン源にもなり好適である。
【0018】
脂肪乳剤の調製に用いられる油脂および乳化剤の使用割合は、水中油型脂肪乳剤が得られる限り特に限定されない。油脂は、得られる脂肪乳剤中に、好ましくは0.5〜6w/v%程度、より好ましくは1〜5w/v%程度となる割合で用いられる。また、乳化剤は、得られる脂肪乳剤中に、好ましくは0.01〜2w/v%程度、より好ましくは0.1〜1.5 w/v%程度、さらに好ましくは0.2〜1.5w/v%程度となる割合で用いられる。第1室輸液における乳化剤の配合割合がこの範囲内であると、本発明の他の特徴とも相まって、長期保存時の遊離脂肪酸の発生が抑制される。これにより、長期保存時における二液混合後の不溶性異物の発生が抑制される。
【0019】
本発明に特に好適な脂肪乳剤の製法の一具体例は次の通りである。即ち、水に油脂および乳化剤を加えると共にグリセリンおよびブドウ糖から選ばれる少なくとも1種を加え、その後、撹拌して粗乳化液を調製し、次いで粗乳化液を高圧乳化法などの慣用の方法により乳化する。高圧乳化法を採用する場合、該方法は、例えばマントンゴーリンホモジナイザーなどの乳化機を用いて、粗乳化液を20〜700Kg/cm
2程度の条件下に、2〜50回程度、好ましくは3〜20回程度、通過させることにより行うことができる。尚、この方法において、グリセリンおよび/またはブドウ糖は乳化する際に存在すればよく、例えば、油脂と乳化剤とを用いて調製した粗乳化液にグリセリンおよび/またはブドウ糖を添加して乳化を行ってもよい。得られる脂肪乳剤は、グリセリンおよび/またはブドウ糖を、好ましくは5〜70w/v%程度、より好ましくは10〜30w/v%程度含む。
【0020】
第1室輸液は、さらに緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む。第1室輸液における、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸の合計含有割合は、0.15g/L〜0.5g/Lである。なお、緩衝性を有するアミノ酸の合計含有割合は、遊離アミノ酸としてのこれらのアミノ酸の量に基づいて計算する。理論に束縛されないが、本発明者らの検討によれば、長期保存時に生成する遊離脂肪酸は、油脂や乳化剤から分解生成するものと推察される。この分解生成の程度はpHに依存することも判っている。さらに、遊離脂肪酸生成に伴うpH低下によって遊離脂肪酸の生成がさらに促進されると考えられる。これらのことから、二液混合後の不溶性異物の発生を抑えるには、第1室輸液のpHを最適範囲内に保つことが重要と考えられる。このためには、当該最適範囲内のpHにおける第1室輸液の緩衝性を高めることで、第1室輸液のpHを当該最適範囲内に維持する必要があると考えられる。油脂や乳化剤から分解生成する遊離脂肪酸等の生成が抑えられるpH最適範囲は、好ましくは4.5〜6.5、より好ましくは5.0〜6.5、さらに好ましくは5.5〜6.5である。
【0021】
緩衝性を有するアミノ酸としては、油脂や乳化剤から分解生成する遊離脂肪酸等の生成が抑えられるpH範囲における第1室輸液の緩衝性を高めることにより、第1室輸液のpHを当該範囲内に抑えることができるものであれば特に限定されず、例えばヒスチジン、リシン及びアルギニン等が挙げられる。緩衝性を有するアミノ酸によって、油脂や乳化剤から分解生成する遊離脂肪酸等の生成を防ぎ、また、第2室輸液のpHの経時的な低下を抑えることができる。このような緩衝性を有するアミノ酸としては、好ましくはL−ヒスチジン及びL−リシンであり、より好ましくはL−ヒスチジンであり、さらに好ましくはL−ヒスチジンのみから実質的になるか、あるいはL−ヒスチジンのみである。ヒスチジンは、pH調整剤としても機能する。
【0022】
二価の有機酸及び三価の有機酸としては、油脂や乳化剤から分解生成する遊離脂肪酸等の生成が抑えられるpH範囲における第1室輸液の緩衝性を高めることにより、第1室輸液のpHを当該範囲内に抑えることができるものであれば特に限定されず、例えばクエン酸、コハク酸、リンゴ酸及び酒石酸等が挙げられる。二価の有機酸及び三価の有機酸によって、油脂や乳化剤から分解生成する遊離脂肪酸等の生成を防ぎ、また、第2室輸液のpHの経時的な低下を抑えることができる。クエン酸、コハク酸、リンゴ酸及び酒石酸は、pH調整剤としても機能する。
【0023】
第1室輸液が、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を総量で0.15g/L以上含むことにより、第1室輸液における長期保存時の遊離脂肪酸の発生が抑制される。これにより、長期保存時における二液混合後の不溶性異物の発生が抑制される。この効果の点では、第1室輸液が、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を総量で、0.2g/L以上含むことが好ましい。また、第1室輸液における、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種の合計含有割合の上限値は、例えば0.6g/Lであり、好ましくは0.5g/Lである。第1室輸液における、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種の合計含有割合がこの範囲内であると、医薬品添加物としての使用実績及びブドウ糖などの還元糖を配合した場合における着色を防止する観点から好ましい。以上を総合すると、第1室輸液における、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種の合計含有割合としては、0.15g/L〜0.6g/Lが好ましく、0.2g/L〜0.3g/Lがより好ましい。
【0024】
また、必要に応じて、脂肪乳剤中に添加配合できることの知られている各種の添加剤を更に添加配合することもできる。添加剤としては、例えば、pH調整剤を挙げることができる。pH調整剤としては、輸液製剤として公知のものを使用でき、例えば塩酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリの他に有機酸やアミノ酸を用いることができる。有機酸としては酢酸及び乳酸等が例示される。アミノ酸としては、L−リシン等が例示される。これらのうち、油溶性材料は、乳化液を構成する油性成分中に予め混合して利用することができる。水溶性材料は、注射用水に混合するか、または得られる脂肪乳剤の水相中に添加配合することができる。これらの添加配合量は、適宜設定することができ、例えば従来知られているそれらの添加配合量と同様でよい。
【0025】
第1室輸液における脂肪乳剤の配合割合は、油脂量に換算して、例えば0.5〜6w/v%、好ましくは1〜5w/v%、より好ましくは2〜5w/v%である。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液における脂肪乳剤量は、油脂量に換算して、例えば0.25〜6w/v%、好ましくは0.5〜3w/v%、より好ましくは1〜2.5w/v%である。
【0026】
第1室輸液のpHは、好ましくは4.5〜6.5、より好ましくは5.0〜6.5、さらに好ましくは5.5〜6.5である。このようなpH範囲内であれば、第1室輸液において、油脂や乳化剤から分解生成する遊離脂肪酸等の生成を抑え、且つ脂肪乳剤とビタミンB
1の安定化を図ることができる。第1室輸液のpH調整は、pH調整剤を使用して実施できる。先述のL−ヒスチジン及びL−アルギニン、並びにリンゴ酸、クエン酸、コハク酸及び酒石酸等を、pH調整剤として用いることもできるし、塩酸、酢酸、乳酸、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等をpH調整剤として用いてもよい。
【0027】
また、第1室輸液には糖を配合するのが望ましい。配合される糖としては、ブドウ糖、フルクトース、マルトース等の還元糖、キシリトール、ソルビトール、グリセリン等の非還元糖等が挙げられる。これらの中でも、血糖値管理等の点から、第1室輸液には還元糖を配合するのが好ましく、ブドウ糖を配合するのがさらに好ましい。これらの糖は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
第1室輸液における糖の配合割合は、好ましくは70〜150g/Lである。また、仕切り連通により得られる第1室輸液と第2室輸液の混合液における糖の濃度は、好ましくは50〜100g/L、より好ましくは50〜75g/Lである。
【0029】
また、輸液療法施行中のアシドーシス発症を予防するために、第1室輸液にはビタミンB
1を配合するのが望ましい。第1室輸液に配合されるビタミンB
1としては、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝酸塩、プロスルチアミン、オクトチアミン等を使用することができる。
【0030】
第1室輸液におけるビタミンB
1の配合割合は、チアミン量換算で、例えば1.5〜10mg/Lであり、好ましくは2〜8mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、仕切り連通により得られる第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンB
1の濃度は、チアミン量換算で、好ましくは1〜6mg/L、より好ましくは1.5〜4mg/Lである。
【0031】
また、第1室輸液は、ビタミンB
1の安定性を一層向上させるという観点から、滴定酸度を10以下とすることが好ましい。なお、滴定酸度は、溶液100mLをpH7.4まで中和するのに必要な0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液のmL量値である。
【0032】
第1室輸液の溶媒としては、通常、注射用蒸留水を使用することができる。
【0033】
本発明の輸液製剤において、第1室輸液の液量については、該輸液製剤の総液量や第2室輸液の液量等に応じて適宜設定される。
【0034】
第1室輸液は、実質的にカリウムを含まないこともできる。実質的にカリウムを含まないとは、カリウムを含む化合物が配合されないことを意味する。また、第1室輸液は、実質的にカルシウムを含まないことが好ましい。実質的にカルシウムを含まないとは、カルシウムを含む化合物が配合されないことを意味する。
【0035】
第1室輸液の浸透圧比は、2.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.5程度である。ここでの浸透圧比とは、生理食塩水の浸透圧に対する比(すなわち、生理食塩水の浸透圧を1としたときの相対比)である。なお、輸液の浸透圧比は、特に断らない限り生理食塩水の浸透圧に対する比をいう。
【0036】
第2室輸液
本発明で用いられる第2室輸液は、アミノ酸及び電解質としてカルシウムを含む。
【0037】
第2室輸液に配合されるアミノ酸としては、生体への栄養補給を目的とするアミノ酸輸液に使用されているものであればよい。本発明において、アミノ酸は、通常、遊離アミノ酸の状態で用いられるが、薬学的に許容される塩、エステル体、N−アシル誘導体、ジペプチドの形態であってもよい。第2室輸液に配合される遊離アミノ酸の具体例としては、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リシン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−システイン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸等が例示される。また、アミノ酸の塩としては、具体的には、L−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩などの無機酸塩;L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等の有機酸塩等が例示される。アミノ酸のエステル体としては、具体的には、L−チロジンメチルエスエル、L−メチオニンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステル等が例示される。アミノ酸のN−アシル体としては、具体的には、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリン等が例示される。アミノ酸のジペプチドとしては、具体的には、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニン等が例示される。特に、L−システインについては、アセチルシステインとして配合されるのが安定性の点で好適である。これらのアミノ酸は、1種単独で使用してもよいが、栄養補給の観点からは、2種以上を組み合わせて使用することが望ましい。好ましくは、少なくとも全ての必須アミノ酸(即ち、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リシン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−ヒスチジンの9種のアミノ酸)を含むものが例示される。
【0038】
第2室輸液におけるアミノ酸の配合割合は、遊離アミノ酸の総量として、好ましくは40〜120g/L、より好ましくは50〜100g/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるアミノ酸の濃度は、遊離アミノ酸の総量として、好ましくは10〜50g/L、より好ましくは20〜40g/Lである。
【0039】
また、第2室輸液に配合されるアミノ酸の組合せ及び配合割合の好適な一例は、以下の通りである。即ち、遊離アミノ酸換算で、L−ロイシン:5〜15g/L、L−イソロイシン:3〜9g/L、L−バリン:3〜9g/L、L−リシン:3〜12g/L、L−トレオニン:1.2〜6g/L、L−トリプトファン:0.3〜3g/L、L−メチオニン:0.6〜4.8g/L、L−フェニルアラニン:1.8〜9g/L、L−システイン:0.1〜1.8g/L、L−チロシン:0.06〜1.2g/L、L−アルギニン:3〜12g/L、L−ヒスチジン:1.2〜6g/L、L−アラニン:3〜9g/L、L−プロリン:1.2〜6g/L、L−セリン:0.6〜4.2g/L、グリシン:1.2〜6g/L、L−アスパラギン酸:0.12〜1.8g/L、及びL−グルタミン酸:0.12〜1.8g/L。
【0040】
また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるアミノ酸の濃度の好適な一例は、以下の通りである。即ち、遊離アミノ酸換算で、L−ロイシン:3〜9g/L、L−イソロイシン:1.5〜4.5g/L、L−バリン:1.5〜4.5g/L、L−リシン:1.5〜5g/L、L−トレオニン:0.6〜3g/L、L−トリプトファン:0.15〜1.5g/L、L−メチオニン:0.3〜2.4g/L、L−フェニルアラニン:0.85〜4.5g/L、L−システイン:0.03〜0.9g/L、L−チロシン:0.03〜0.6g/L、L−アルギニン:1.5〜5g/L、L−ヒスチジン:0.6〜3g/L、L−アラニン:1.5〜4.5g/L、L−プロリン:0.6〜3g/L、L−セリン:0.3〜2.1g/L、グリシン:0.6〜3g/L、L−アスパラギン酸:0.06〜0.9g/L、及びL−グルタミン酸:0.06〜0.9g/L。
【0041】
第2室輸液に配合される電解質は、輸液分野で用いられる意味での電解質であって、添加剤等ではなく有効成分であることを意味し、具体的には体液(例えば血液、細胞内液)に含まれる電解質(体液電解質)である。生理学上重要な電解質といってもよい。より具体的には、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、リン、亜鉛、塩素等が例示される。なお、本発明の輸液製剤では、これらの電解質は、好ましくは第1室輸液には配合されない。特にカリウムは、高濃度カリウムの投与による危険性を回避するために2室輸液製剤では通常双方の輸液に配合されるが、本発明の輸液製剤では第2室輸液にのみ配合される。
【0042】
カルシウムの供給源としては、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩が例示される。また、カルシウム塩は水和物形態(例えばグルコン酸カルシウム水和物等)であってもよい。カルシウムは、第2室輸液における濃度が、好ましくは、1以上、より好ましくは6〜12mEq/Lとなるよう配合される。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるカルシウムの濃度は1以上、好ましくは1以上9mEq/L以下、より好ましくは3〜6mEq/Lである。
【0043】
カリウム供給源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が例示される。これらの中でも、グリセロリン酸カリウムは、リン供給源にもなるので好適である。これらのカリウム供給源は水和物形態であってもよい。カリウムは、好ましくは、第2室輸液における濃度が40mEq/L以下(好ましくは25〜40mEq/L)となるよう配合される。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるカリウムの濃度は、好ましくは16mEq/L以上であり、より好ましくは16〜25mEq/L、さらに好ましくは16〜20mEq/Lである。
【0044】
ナトリウム供給源としては、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等のナトリウム塩が例示される。また、本発明の輸液製剤に、リンと、カルシウム及び/又はマグネシウムを配合する場合、これらが沈殿を生じるのを防止するために、ナトリウム供給源(の一部)としてクエン酸ナトリウムを用いることが望ましい。また、ナトリウム供給源は水和物形態であってもよい。ナトリウムの第2室輸液への配合割合は、第2室輸液において、例えば50〜100mEq/L、好ましくは40〜80mEq/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるナトリウムの濃度は、例えば25〜50mEq/L、好ましくは30〜40mEq/Lである。
【0045】
マグネシウム供給源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等が例示される。また、マグネシウム供給源は水和物形態であってもよい。マグネシウムの第2室輸液への配合割合は、第2室輸液において好ましくは1〜20mEq/L、より好ましくは5〜15mEq/Lである。また、発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるマグネシウムの濃度は、好ましくは0.5〜10mEq/L、より好ましくは2〜6mEq/Lである。
【0046】
リン供給源としては、無機塩を用いるとリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムの沈殿を生じることがあるため、例えばグリセロリン酸ナトリウム、グリセロリン酸カリウム等の有機塩を用いるのが好ましい。また、第1室に乳化剤としてレシチンを使用する際には、当該レシチンもリン供給源になる。当該レシチン由来のリンのみで必要量のリンをまかなえる場合は、リンを第2室に配合する必要はなく、リン酸カルシウム等の沈殿を生じることがないため好適である。リンの第2室輸液への配合割合は、第2室輸液において、例えば0〜20mmol/Lである。また、発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるリンの濃度は、好ましくは1〜20mmol/L、より好ましくは5〜10mmol/Lである。
【0047】
亜鉛供給源としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等が例示される。また、亜鉛供給源は水和物形態であってもよい。亜鉛の第2室輸液への配合割合は、第2室輸液において例えば2.5〜15μmol/Lである。また、発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液における亜鉛の濃度は、好ましくは1.5〜9μmol/Lである。
【0048】
塩素の供給源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が例示される。塩素の第2室輸液への配合割合は、第2室輸液において、例えば50〜100mEq/L、好ましくは40〜80mEq/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液における塩素の濃度は、好ましくは25〜60mEq/L、より好ましくは30〜40mEq/Lである。
【0049】
第2室輸液は、必要に応じて、pH調整剤により、pHを6.0〜6.8、好ましくは6.2〜6.7に調整することができる。pH調整剤としては、第1室輸液について記載したものと同様のものを用い得る。第2室輸液が上記pH範囲を満たすことにより、L−システイン、L−グルタミン酸等の化学変化を起こしやすいアミノ酸の安定化を図り、更には第1室輸液との混合後の混合液のpHを後述する至適範囲に維持させることが可能になる。
【0050】
また、第2室輸液には、クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸からなる群より選択される少なくとも一種の2塩基酸及び/又は3塩基酸を配合することで、グリセロリン酸の不純物または分解物であるリン酸が生成した際のリン酸カルシウムの析出を抑制することができる。2塩基酸又は3塩基酸としては、特にクエン酸が好ましい。第2室輸液に含まれる、2塩基酸及び3塩基酸の合計濃度(mEq)は、カルシウムの濃度(mEq)以上であることが好ましい。
【0051】
第2室輸液の溶媒についても、通常、注射用蒸留水を使用することができる。
【0052】
本発明の輸液製剤において、第2室輸液の浸透圧比は2.0〜3.5程度、好ましくは2.0〜3.0程度である。
【0053】
また、必要に応じて、本発明の輸液製剤に安定化剤を配合してもよい。本発明の輸液製剤に配合される安定化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩が例示される。亜硫酸塩は、第1室輸液に含まれるビタミンB1の分解を回避するために、第2室輸液に配合される。第2室輸液における亜硫酸塩の配合量は、例えば20〜100mg/Lである。
【0054】
本発明の輸液製剤にはビタミンB
1以外にも多種のビタミンを配合することができる。
3室又は4室輸液製剤とせずとも、2室輸液製剤において多種のビタミンを安定に配合できる点も、本発明の輸液製剤の特徴の一つである。ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがある。本発明の輸液製剤では、脂溶性ビタミンは第1室輸液に配合される。また、水溶性ビタミンは、第1室輸液、第2室輸液のいずれに配合されてもよい。但し、前述の通り、ビタミンB
1は第1室輸液に配合される。
【0055】
本発明の輸液製剤に配合される水溶性ビタミンとしては、ビタミンB群、ビタミンCが挙げられる。ビタミンB群としては、ビタミンB
1(チアミン)の他、ビタミンB
2(リボフラビン)、ビタミンB
3(ナイアシン)、ビタミンB
5(パントテン酸)、ビタミンB
6、ビタミンB
7(ビオチン)、ビタミンB
9(葉酸)、ビタミンB
12(シアノコバラミン)等が挙げられる。また、脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD(特にコレカルシフェロール)、ビタミンE、ビタミンK等が挙げられる。
【0056】
ビタミンC(アスコルビン酸)を配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できるが、第2室輸液に配合されることが好ましい。ビタミンCが第2室輸液に配合される場合、第2室輸液におけるビタミンCの配合割合は、例えば50〜500mg/L、好ましくは100〜400mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンCの濃度は、例えば25〜250mg/L、好ましくは50〜200mg/L、より好ましくは40〜100mg/Lである。
【0057】
ビタミンB
2としては、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、フラビンモノヌクレオチド等を使用することができる。ビタミンB
2を配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できる。但し、ビタミンB
2と葉酸との反応による葉酸の不安定化を回避するため、これらは分別収容されることが好ましい。
例えば、第1室輸液に葉酸が配合される場合には、ビタミンB
2は第2室輸液に配合されることが望ましい。ビタミンB
2が第2室輸液に配合される場合、第2室輸液におけるビタミンB
2の配合割合は、リボフラビンとして、例えば2.5〜15mg/L、好ましくは4〜8mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンB
2の濃度は、リボフラビンとして、例えば0.5〜10mg/L、好ましくは0.5〜3mg/Lである。
【0058】
ビタミンB
6としては、ピリドキシン、ピリドキシン塩酸塩等のピリドキシンの塩等を使用することができる。ビタミンB
6を配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できるが、ビタミンB
6はビタミンB
2と共存することにより光に対して非常に不安定になるためビタミンB
2とは異なる方に配合することが好ましい。
ビタミンB
6を第1室輸液に配合する場合、第1室輸液におけるビタミンB
6の配合割合は、ピリドキシンとして、例えば2〜10mg/L、好ましくは2.5〜6mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンB
6の濃度は、ピリドキシンとして、例えば1〜10mg/L、好ましくは1.5〜4.5mg/Lである。
【0059】
葉酸を配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できるが、第1室輸液に配合することが好ましい。葉酸を第1室輸液に配合する場合、第1室輸液における葉酸の配合割合は、例えば0.1〜0.8mg/L、好ましくは0.2〜0.6mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液及び第2室輸液の混合液における葉酸の濃度は、例えば0.1〜0.7mg/L、好ましくは0.2〜0.4mg/Lである。
【0060】
ビタミンB
12としては、シアノコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン等を使用することができる。ビタミンB
12を配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できるが、第2室に亜硫酸塩を配合する際は第1室輸液に配合されることが好ましい。ビタミンB
12が第1室輸液に配合される場合、第1室輸液におけるビタミンB
12の配合割合は、例えば2〜10μg/L、好ましくは2.5〜6μg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンB
12の濃度は、例えば0.5〜10mg/L、好ましくは0.5〜3mg/Lである。
【0061】
ナイアシンとしては、例えばニコチン酸アミドを好ましく用いることができる。ナイアシンを配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できるが、第2室輸液に配合されることが好ましい。ナイアシンが第2室輸液に配合される場合、第2室輸液におけるナイアシンの配合割合は、例えば10〜100mg/L、好ましくは20〜50mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるナイアシンの濃度は、例えば5〜50mg/L、好ましくは5〜25mg/Lである。
【0062】
パントテン酸としては、パンテノールを好ましく用いることができる。パントテン酸を配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できる。パントテン酸が第1室または第2室輸液に配合される場合、パントテン酸の配合割合は、パンテノールとして、例えば5〜30mg/L、好ましくは10〜20mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるパンテノールの濃度は、例えば2.5〜15mg/L、好ましくは5〜10mg/Lである。
【0063】
ビオチンを配合する場合、第1室輸液及び第2室輸液のいずれか一方又は双方に配合できるが、第2室輸液に配合されることが好ましい。ビオチンが第2室輸液に配合される場合、第2室輸液におけるビオチンの配合割合は、例えば10〜100μg/L、好ましくは20〜80μg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビオチンの濃度は、例えば1〜50μg/L、好ましくは10〜40μg/Lである。
【0064】
ビタミンAとしては、レチノールパルミチン酸エステルを好ましく用いることができる。また、これを油に溶解させたビタミンA油を使用することもできる。ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、第1室輸液に配合される。第1室輸液におけるビタミンAの配合割合は、例えば1000〜5000IU/L、好ましくは2000〜4000IU/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンAの濃度は、例えば500〜2500IU/L、好ましくは1000〜2000IU/Lである。なお、IUはインターナショナル・ユニット(国際単位)である。ビタミンA単位ともいう。
【0065】
ビタミンDとしては、コレカルシフェロール(ビタミンD
3)を好ましく用いることができる。ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、第1室輸液に配合される。第1室輸液におけるビタミンDの配合割合は、例えば2〜10μg/L、好ましくは2.5〜6μg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンDの濃度は、例えば0.5〜10μg/L、好ましくは0.5〜3μg/Lである。
【0066】
ビタミンEとしては、トコフェロール酢酸エステルを好ましく用いることができる。ビタミンEは脂溶性ビタミンであり、第1室輸液に配合される。第1室輸液におけるビタミンEの配合割合は、例えば2〜50mg/L、好ましくは5〜20mg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンEの濃度は、例えば1〜25mg/L、好ましくは2.5〜10mg/Lである。
【0067】
ビタミンKとしては、フィトナジオン(ビタミンK
1)を好ましく用いることができる。
ビタミンKは脂溶性ビタミンであり、第1室輸液に配合される。第1室輸液におけるビタミンKの配合割合は、例えば50〜2500μg/L、好ましくは80〜2000μg/Lである。また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるビタミンKの濃度は、例えば20〜1200μg/L、好ましくは30〜1000μg/Lである。
【0068】
なお、第1室輸液組成及び第2室輸液組成に含まれる有効成分の好ましい1例として、以下の組成を例示できる。なお、緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種は、第1室に別途加えられる。
【0069】
〔第1室輸液〕
精製大豆油:10-50 g/L
ブドウ糖:70-150 g/L
チアミン塩化物塩酸塩:3-10 mg/L
ピリドキシン塩酸塩:3-7 mg/L
シアノコバラミン:2.5-5μg/L
葉酸:0.2-0.5 mg/L
ビタミンA油:2000-4000 IU/L
コレカルシフェロール:2.5-5μg/L
トコフェロール酢酸エステル:5-20 mg/L
フィトナジオン:80-2000μg/L
パンテノール:10-20mg/L
【0070】
〔第2室輸液〕
L-ロイシン:5-15g/L
L-イソロイシン:3-9g/L
L-バリン:3-9g/L
L-リシン塩酸塩:3.5-15g/L
L-トレオニン:1.2-6g/L
L-トリプトファン:0.3-3g/L
L-メチオニン:0.6-4.8g/L
アセチルシステイン:0.13-2.4g/L
L-フェニルアラニン:1.8-9g/L
L-チロシン:0.06-1.2g/L
L-アルギニン:3-12g/L
L-ヒスチジン:1.2-6g/L
L-アラニン:3-9g/L
L-プロリン:1.2-6g/L
L-セリン:0.6-4.2g/L
グリシン:1.2-6g/L
L-アスパラギン酸:0.12-1.8g/L
L-グルタミン酸:0.12-1.8g/L
ナトリウム:40-80mEq/L
カリウム:25-40mEq/L
カルシウム:6-12mEq/L
マグネシウム:5-15mEq/L
塩素:40-80mEq/L
リン:0-20mmoL/L
亜鉛:2.5-15μmol/L
リボフラビンリン酸エステルナトリウム:5-10mg/L
アスコルビン酸:0.1-0.4g/L
ビオチン:20-80μg/L
ニコチン酸アミド:20-50mg/L
【0071】
なお、第1室輸液及び第2室輸液とも、公知の輸液製造方法にならって製造することができる。例えば、上記各輸液成分を注射用蒸留水に溶解させて製造することができる。脂溶性成分は、例えば上述したように乳化時に用いることが好ましい。
【0072】
第1室輸液と第2室輸液の混合液
本発明の輸液製剤は、用時に、第1室輸液と第2室輸液を混合して使用される。第1室輸液と第2室輸液の混合液は、pHが6.53以下であり、好ましくは6.4以下である。混合液のpHがこの範囲内であると、本発明の他の特徴とも相まって、長期保存時における二液混合後の不溶性異物の発生が抑制される。具体的には、まず、本発明の他の特徴により、長期保存時の第1輸液における遊離脂肪酸の発生が抑制される。さらに、混合液のpHを上記範囲内とすることにより、遊離脂肪酸を原因とする混合液中における不溶性異物の発生が抑制される。
【0073】
このように、最終的に不溶性異物の生成を抑制するためには、本発明の他の特徴、特に第1室輸液がヒスチジン等の緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を総量で0.15g/L以上含む、という特徴と、混合液のpHが6.53以下であるという特徴とが効果的に組み合わされることが重要である。この意味では、第1室輸液が緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を総量で0.15g/L以上含み、かつ混合液のpHが6.53以下であればよく、好ましくは、(1)第1室輸液が緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を総量で0.3g/L以上含み、かつ混合液のpHが6.53以下であるか、又は(2)第1室輸液が緩衝性を有するアミノ酸、並びに二価の有機酸及び三価の有機酸からなる群より選択される少なくとも一種を総量で0.2g/L以上含み、かつ混合液のpHが6.4以下である。
【0074】
遊離脂肪酸を原因とする混合液中における不溶性異物の発生は、具体的には遊離脂肪酸がCa
2+と塩を形成することにより起こることを本発明者らは突き止めた。よって、混合液は、最終的に不溶性異物の生成を抑制するために、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるCa
2+含有割合が低減されていることが望ましく、第1室輸液と第2室輸液の混合液におけるCa
2+含有割合が好ましくは3〜6mEq/Lであることが好ましい。
【0075】
本発明の輸液製剤は、滴定酸度が、好ましくは1〜10であり、浸透圧比が、好ましくは2〜3である。
【0076】
また、本発明の輸液製剤において、第1室輸液と第2室輸液の体積比については、前述する第1室輸液と第2室輸液の液量等に応じて適宜設定されるが、含有する各成分の安定性および各室の浸透圧の設定の観点から、例えば、(第1室輸液:第2室輸液)の体積比が(3:2〜3:5)となる体積比が挙げられる。
【0077】
また、当該混合液における熱量は、好ましくは450〜750kcal/L、より好ましくは500〜650kcal/Lである。当該熱量において、脂肪が占める割合は好ましくは40%以下であり、より好ましくは20〜40%である。また、当該熱量において、糖、脂肪、及びアミノ酸が占める割合は、糖:40〜60%、脂肪:20〜40%、アミノ酸:10〜30%であることが好ましく、糖:45〜55%、脂肪:25〜35%、アミノ酸:15〜25%であることがより好ましい。
【0078】
なお、おおよその熱量は、各成分の配合量(g)に対し、糖は4を、脂肪は9を、アミノ酸は4を、それぞれ乗じて得ることができる。つまり、糖1gの熱量は約4kcalであり、脂質1gの熱量は約9kcalであり、アミノ酸1gの熱量は約4kcalであり、これを基に熱量を求めることができる。上記の「当該混合液における熱量」の記載は、この計算により算出した値に基づく。
【0079】
なお、当該混合液における各成分の組成の好ましい1例として、以下の組成を例示できる。
【0081】
輸液製剤の使用態様
本発明の輸液製剤は、経口摂取不十分で軽度の低蛋白血症又は軽度の低栄養状態にある場合や侵襲期の場合、手術前後の患者の栄養管理の目的で使用され、とりわけ手術後や消化器疾患等によるに経口的に栄養補給が困難な患者(好ましくは、消化器切除の手術を受けた患者)の栄養管理の目的で好適に使用される。本発明の輸液製剤を、手術後1〜14日間、好ましくは手術後1〜3日間、患者に投与することにより、患者の栄養状態を健全に保持させることができる。投与量及び投与速度は、各患者の症状や年齢等を考慮した上で適宜設定することができる。特に、本発明の輸液製剤は、上記投与期間、当該輸液製剤のみで、患者の栄養状態を健全に保持させることができる。
【0082】
本発明の輸液製剤は、好ましくは末梢静脈から投与される。すなわち、本発明の輸液製剤は、好ましくは末梢静脈投与用輸液製剤である。通常、末梢静脈から輸液を投与する際、輸液の浸透圧が高すぎると血管痛や静脈炎を引き起こすおそれがあるところ、本発明の輸液製剤であればこのおそれがないことから、末梢静脈から投与される場合に本発明の輸液製剤の当該効果が好ましく発揮される。
【0083】
輸液容器
第1室輸液と第2室輸液を収容する容器としては、連通可能な2室を有するものであれば特に限定されないが、例えば易剥離シールにより隔壁が形成されたもの(特開平2−4671号公報、実開平5−5138号公報等)、室間をクリップで挟むことにより隔壁が形成されたもの(特開昭63−309263号公報等)、隔壁に開封可能な種々の連通手段を設けたもの(特公昭63−20550号公報等)等のように連通可能な隔壁で隔てられた2室容器(輸液バッグ)が挙げられる。これらのうち、隔壁が易剥離シール(イージーピールシール)により形成された輸液バッグが、大量生産に適しており、また連通作業も容易であるので好ましい。また、上記容器の材質としては、医療用容器等に慣用されている各種のガス透過性プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、これら各ポリマーのブレンドや積層体等の柔軟性プラスチックが挙げられる。
【0084】
上記容器への第1室輸液及び第2室輸液の充填、収容は、常法に従って行うことができ、例えば、各輸液を各室に不活性ガス雰囲気下で充填後、施栓し、加熱滅菌する方法が挙げられる。
【0085】
ここで、加熱滅菌は、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌等の公知の方法を採用することができ、必要に応じて二酸化炭素、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、本願発明の輸液製剤は、116℃〜121℃の温度における高圧蒸気滅菌を行った際にも、不溶性異物を生じることがない。
【0086】
更に、上記容器に収容された第1室輸液及び第2室輸液は、変質、酸化等を確実に防止するために、容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋で包装するのが好ましい。とりわけ、容器として隔壁が易剥離シールにより形成された輸液バッグを採用する場合には、当該輸液バッグは、外圧により隔壁が連通しないように易剥離シール部分で折り畳まれた状態、例えば易剥離シール部分で二つ折りにされた状態で包装されているのが好ましい。また、必要に応じて不活性ガス充填包装等を行うこともできる。
【0087】
上記包装に適した酸素バリア性外装袋の材質としては、一般に汎用されている各種材質のフィルム、シート等を使用できる。その具体例としては、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等、またはこれらの少なくとも1種を含む材質からなるフィルム、シート等が挙げられる。
【0088】
また、脱酸素剤としては、公知の各種のもの、例えば水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を有効成分とするものや、低分子フェノールと活性炭を用いたものを使用することができる。その代表的な市販品の商品名としては、「エージレス」(三菱ガス化学社製)、「モジュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)、「タモツ」(王子化工社製)、「キーピット」(ドレンシー社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0090】
輸液製剤の調製
1.
第1室輸液1〜4の調製
表2に示す組成に従い、精製大豆油、精製卵黄レシチン及びブドウ糖を水に加えホモミキサーにより粗乳化後、高圧乳化機(マントンゴーリン)で精乳化し、さらにL−ヒスチジン及び水を加え全量を300mlに調整した。さらに、塩酸を用いてpHを調整した。このようにして得られた第1室輸液の浸透圧比は2.9、滴定酸度は1であった。
【0091】
【表2】
【0092】
2.
第2室輸液A〜Dの調製
表3に示す組成に従って、各アミノ酸、電解質及び安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム)を注射用蒸留水に溶解し、アミノ電解質液を調製した。更に、当該液のpHを氷酢酸で調整し、全量250mLとして、第2室輸液を調製した。このようにして得られた第2室輸液の浸透圧比は2.7であった。また第2室輸液における濃度は、クエン酸としては12.68mEq/L、カルシウムとしては10.00mEq/Lであった。
【0093】
【表3】
【0094】
3.
充填・包装
各室が易剥離シールで仕切られたポリエチレン製2室容器の下室に上記で得られた第1室輸液として製剤1〜4を、上室に第2室輸液として製剤A〜Cをそれぞれ充填し、各室空間部の窒素置換を行い、密封した後、設定温度を116℃、滅菌時間を26分として高圧蒸気滅菌を行った。その後、容器を易剥離シール部で折り畳み、脱酸素剤と共に、ガスバリアフィルムの外装袋に封入し、輸液製剤を得た。なお、同じ輸液製剤はそれぞれ3ケ作成した。
【0095】
第1室輸液として製剤1〜4を、第2室輸液として製剤Aを充填して作成した上記の輸液製剤について、60℃/75%RHの条件下で3週間保存し、その後、第1室輸液と第2室輸液を混合し、混合直後、混合後26時間及び混合後48時間のそれぞれの時点における不溶性異物の生成の有無の確認、及び混合後48時間の時点におけるpHを測定した。結果を表4に示す。
【0096】
なお、遊離脂肪酸の有無の確認は、目視にて、容器内面に不溶性異物の生成を認めなかった場合に○、容器内面に白色の不溶性異物の生成を認めた場合に×として評価した。
【表4】
【0097】
第1室輸液としてL−ヒスチジン量が0.1g/Lである製剤1を充填した輸液製剤は、混合後26時間の時点から、容器内面に白色の不溶性異物の生成が認められた。
【0098】
第1室輸液として製剤1〜4を、第2室輸液として製剤Bを充填して作成した上記の輸液製剤について、60℃/75%RHの条件下で3週間保存し、その後、第1室輸液と第2室輸液を混合し、混合直後、混合後26時間及び混合後48時間のそれぞれの時点における不溶性異物の生成の有無の確認、及び混合後48時間の時点におけるpHを測定した。結果を表5に示す。
【0099】
なお、遊離脂肪酸の有無の確認は、先述の通り行った。
【表5】
【0100】
第1室輸液としてL−ヒスチジン量が0.1g/Lである製剤1を充填した輸液製剤は、混合後26時間の時点から、容器内面に白色の不溶性異物の生成が認められた。また、混合後のpHが6.54もしくは6.55である製剤2と製剤Bを充填した輸液製剤の混合液においても、混合後26時間の時点から、容器内面に白色の不溶性異物の生成が認められた。
【0101】
第1室輸液として製剤1〜4を、第2室輸液として製剤Cを充填して作成した上記の輸液製剤について、60℃/75%RHの条件下で3週間保存し、その後、第1室輸液と第2室輸液を混合し、混合直後、混合後26時間及び混合後48時間のそれぞれの時点における不溶性異物の生成の有無の確認、及び混合後48時間の時点におけるpHを測定した。結果を表6に示す。
【0102】
なお、遊離脂肪酸の有無の確認は、先述の通り行った。
【表6】
【0103】
第2室輸液としてpHが6.9である製剤Cを充填した輸液製剤では、第1室輸液として製剤1〜4の何れの輸液を充填した場合においても混合後48時間の時点におけるpHが6.53を上回るものであり、また、混合後26時間の時点から、容器内面に白色の不溶性異物の生成が認められた。