(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るUI設計システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るUI設計システムは、UIを評価して設計するためのシステムであり、様々な電気製品のUI評価及び設計に用いることができる。
【0018】
本実施形態に係るUI設計システムは、PC等の情報処理端末1及びこれにインストールされたUI設計プログラムより構成される。
図1は、情報処理端末1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、情報処理端末1は、CPU11、主記憶装置12、補助記憶装置13及びインタフェース14を備えている。補助記憶装置13には、UI設計プログラムがインストールされている。CPU11は、主記憶装置12内のワークエリアを用いてUI設計プログラムを実行することができる。設計者は、インタフェース14に接続されたディスプレイ3の表示画面を視ながらキーボード等の周辺機器2を操作してUI設計システムを動作(UI設計プログラムを情報処理端末1に実行)させることにより、電気製品のUIを評価・設計することができる。
【0019】
本実施形態に係るUI設計システムは、機器操作の一貫性を自動計算によって定量的に評価する。本実施形態に係るUI設計システムによる機器操作の一貫性の評価は、ソフトウェア製品の品質要求及び評価について規定する国際規格ISO/IEC 25000シリーズ: SQuaRE(Software product Quality Requirements and Evaluation)では、品質特性の「使用性(Usability)」における副特性の「運用操作性(Operability)」に関する新たな品質測定量、すなわちソフトウェアメトリクスに相当する。
【0020】
本実施形態に係るUI設計システムは、機器操作の一貫性が保たれていることを評価するソフトウェアメトリクスとして、電気製品に搭載される機能同士の類似度と、個々の機能の操作方法同士の類似度を定量的に評価し、評価結果に基づいて、機器操作の一貫性が保たれていることが疑わしい箇所を設計者に表示等で警告する。設計者は、警告をもとに操作方法の検討及び修正を反復することにより、UI設計の品質を一定水準以上に管理することができる。
【0021】
[UI設計フロー]
図2は、本実施形態に係るUI設計システムにより実行されるUI設計のフローチャートを示す。
【0022】
[
図2のS11(機能の選択)]
電気製品の外面的な振舞いは、「電気製品が実現する機能(Function)」と「UIを介した製品とユーザとの間の対話的な操作方法(Interaction)」との組合せで定義される。そこで、設計者は、機能と操作方法の組合せ表(FIT:Function-Interaction Table)を作成して仕様設計を行う。
【0023】
表1に、FITを例示する。表1に示されるように、FITは、機能と操作方法との組をN組持つテーブルである。Nは、電気製品に搭載される機能の総数である。
【0025】
本処理ステップS11では、要求事項に基づいて機能が選択されて、FITのFunctionフィールドに入力される。
【0026】
機能は、予約語として準備されたキーワードを下記の定型書式に当て嵌めて記述することによって表現される。
【0027】
《機能の定型書式例》
・Who(入力値)
設計者が予め与えておくパラメータ(センサ測定値や機能の発動操作は含まれない。)
・What(制御対象)
機能の発動によって制御されるもの
・When(適用場面)
機能が発動される場面
・Where(設定場所)
入力値の設定を行う場所
・Why(制御目的)
制御した結果得られるもの
・How(制御方法)
機能の発動操作、制御に使用するパラメータ(センサ測定値等)
【0028】
定型書式は、例示的には、新聞記事作成の5W1Hの原則に倣ったものである。このような定型書式を用いることにより、記述内容の粒度を揃える効果が奏される。また、予約語をキーワードとして用いることにより、表記ゆれが防がれるため、機能同士の類似度計算の精度が向上する。また、開発プラットフォームに依存しない抽象度でキーワードが表現されることにより、ハードウェアの仕様変更による機能記述の修正頻度・修正量等が抑えられ、部分的な操作方法の改変や新機能の追加に対して柔軟に対応することができる。
【0029】
より詳細には、本処理ステップS11において機能の選択パターンは3つある。
【0030】
・選択パターン1(機能の再利用)
従来製品で採用実績のある機能は、所定のネットワーク領域又はローカル領域のデータベース(機能リスト)に記述が完了した状態で登録されている。このような実績のある既存機能を新規開発品で採用する場合、本処理ステップS11では、単純に機能リストから選択するだけである。すなわち、本パターン1では、機能単位での再利用が行われる。
【0031】
・選択パターン2(機能を新規登録)
新規開発品で採用する機能が機能リストに登録されていない場合、原則、本パターン2が適用される。具体的には、当該機能は、所定のネットワーク領域又はローカル領域のデータベース(キーワードリスト)に登録されているキーワードを用いて新たに記述され、機能リストに新たに登録される。本処理ステップS11では、このようにして登録された機能が機能リストから選択される。すなわち、本パターン2では、キーワード単位での再利用が行われる。
【0032】
・選択パターン3(キーワード及び機能を新規登録)
新規開発品で採用する機能が機能リストに登録されておらず且つ当該機能を記述するためのキーワードが現キーワードリストでは不足する場合、本パターン3が適用される。具体的には、機能の記述に必要なキーワードがキーワードリストに新たに登録される。次いで、当該機能は、更新後のキーワードリストに登録されているキーワード(少なくとも新規登録されたキーワードを含む。)を用いて新たに記述され、機能リストに新たに登録される。本処理ステップS11では、このようにして登録された機能が機能リストから選択される。
【0033】
図3(a)は、機能の記述例を示す。
図3(a)では、「露出補正」、「Pモード」、「Tvモード」、「Avモード」、「Mモード」を例示として挙げる。例えば、
図3(a)中の機能F
1(露出補正)は、Who(入力値)、What(制御対象)、When(適用場面)、Where(設定場所)、Why(制御目的)、How(制御方法)のそれぞれに、キーワード「Xv値」、「露出」、「撮影」、「撮影待機」、「自動露出」、「測光値及び入力値に基づく」が記述されることによって表現される。
【0034】
[
図2のS12(操作方法の選択)]
本処理ステップS12では、処理ステップS11にて入力された「電気製品が実現する機能」に対応させる「UIを介した製品とユーザとの間の対話的な操作方法」が選択されて、FITのInteractionフィールドに入力される。
【0035】
操作方法は、予め準備された基本操作単位の操作部品及び画面表示要素単位の表示部品を機能記述の定型書式に紐付けられた定型書式に当て嵌めて記述することによって表現される。なお、ここで用いられる定型書式は、例えば、機能記述と同様に、5W1Hの原則に倣ったものであってもよい。
【0036】
下記に例示されるように、操作方法は、機能を実行するためにユーザが予め与えておくパラメータの設定場所(Where)と、機能が発動する適用場面(When)において、操作及び表示の内容を各々の部品を用いて記述することによって表現される。
【0037】
《操作方法の定型書式例》
〔操作部品〕
・Where及びWhen
デフォルト状態、IN操作(Where/Whenに入る。)、OUT操作(デフォルトに戻る。)
・Where
パラメータ変更開始、パラメータ選択、パラメータ初期化、パラメータ変更決定、パラメータ変更取消、戻る(1つ前の手順に戻る。)、サブパラメータ設定
・When
発動操作(ON操作)、発動操作(OFF操作)
〔表示部品〕
・Where及びWhen
基本構成(表示アイテム配置)、背景表示、パラメータ表示、サブパラメータ表示
【0038】
定型書式及び部品を用いて操作方法を記述することにより、機能記述と同様に、記述内容の粒度を揃える効果が奏される。また、表記ゆれが防がれるため、操作方法同士の類似度計算の精度が向上する。また、部品単位、操作方法単位での再利用率が向上することにより、効率的なUI設計が達成される。
【0039】
より詳細には、本処理ステップS12において操作方法の選択パターンは3つある。
【0040】
・選択パターン1(操作方法の再利用)
従来製品で採用実績のある操作方法は、所定のネットワーク領域又はローカル領域のデータベース(操作方法リスト)に記述が完了した状態で登録されている。このような操作方法を採用する場合、本処理ステップS12では、単純に操作方法リストから選択するだけである。すなわち、本パターン1では、操作方法単位での再利用が行われる。
【0041】
・選択パターン2(操作方法を新規登録)
操作方法リストに所望の操作方法が登録されていない場合、原則、本パターン2が適用される。具体的には、操作方法は、所定のネットワーク領域又はローカル領域のデータベース(操作部品リスト及び表示部品リスト)に登録されている部品を用いて新たに記述され、操作方法リストに新たに登録される。本処理ステップS12では、このようにして登録された操作方法が操作方法リストから選択される。すなわち、本パターン2では、部品単位での再利用が行われる。
【0042】
・選択パターン3(部品及び操作方法を新規登録)
操作方法リストに所望の操作方法が登録されておらず且つ当該操作方法を記述するための部品が現部品リストでは不足する場合、本パターン3が適用される。具体的には、操作方法の記述に必要な操作部品や表示部品が各部品リストに新たに登録される。次いで、当該操作方法は、更新後の部品リストに登録されている部品(少なくとも新規登録された部品を含む。)を用いて新たに記述され、操作方法リストに新たに登録される。本処理ステップS12では、このようにして登録された操作方法が操作方法リストから選択される。
【0043】
なお、同一機能を搭載する製品であっても対象ユーザが異なる場合、機能に組み合わせるべき操作方法が異なる。例示的には、主に初級者を対象とするクラスの製品では、多少手順を踏んだとしても確実に操作できるという確実性を重視した操作方法が好まれる。一方、主に上級者を対象とするクラスの製品では、実行したい機能を直接操作できる即応性を重視した操作方法が好まれる。そのため、本実施形態に係るUI設計システムでは、FITを用いて、電気製品の外面的な振舞いが機能と操作方法とに分けて取り扱われている。
【0044】
処理ステップS11(機能の選択)及びS12(操作方法の選択)が実行される毎に、FITに、要求事項に応じた一つのレコードが暫定的に作成される。
【0045】
ここで、情報処理端末1のインタフェース14には、電気製品(例えばカメラ)を接続することができる。インタフェース14とカメラ等の電気製品とが接続されたとき、UI設計プログラムの実行により、当該電気製品に搭載された機能及びその操作方法の値が読み出され、読み出された値を用いて暫定的なFITが自動的に作成されるようにしてもよい。
【0046】
[
図2のS13(暫定的なFITの完成判定)]
本処理ステップS13では、電気製品に搭載される全ての機能に対して処理ステップS11(機能の選択)及びS12(操作方法の選択)が実行されたか否か、すなわち、暫定的なFITが完成したか否かが判定される。暫定的なFITが完成したか否かは、設計者によるFITの完成を示す所定の操作の有無によって判定される。当該操作が行われていないため、暫定的なFITが未完成と判定された場合(S13:NO)は、本フローチャートは、処理ステップS11(機能の選択)に戻る。
【0047】
[
図2のS14(機能及び操作方法の類似度の計算)]
本処理ステップS14は、設計者によるFITの完成を示す所定の操作が行われることにより、暫定的なFITが完成したと判定された場合(S13:YES)に実行される。本処理ステップS14では、暫定的なFITから、電気製品に搭載される機能同士の類似度と、個々の機能の操作方法同士の類似度が自動的に計算される。
【0048】
《機能同士の類似度の計算》
機能同士の類似度の具体的計算例を示す。本計算例では、機能Fをn種類のキーワードwで構成されるn次元ベクトルとして表現する。従って、互いの類似度が計算される機能F
iと機能F
jは、次式により示される。
【0050】
図3(b)に、
図3(a)の機能F
1〜F
5をn次元ベクトルで表現した場合の具体例を示す。例えば機能F
1(露出補正)は、
図3(b)に示されるように、ベクトル(0,1,0,0,0,1,1,1,1,0,1,1)で表現される。
【0051】
機能F
iと機能F
jとの類似度S
function(F
i,F
j)は、次式により示される。
【0053】
右辺の(F
i・F
j)/|F
i||F
j|は、ベクトルF
iとベクトルF
jとがなす角θの余弦(ベクトル内積から求められるスカラー)である。w
ik≧0,w
jk≧0より、0≦(F
i・F
j)/|F
i||F
j|≦1であることから、0≦S
function(F
i,F
j)≦1となる。そのため、機能F
iと機能F
jとが類似するほどS
function(F
i,F
j)の値がゼロに近付き、機能F
iと機能F
jとが非類似であるほどS
function(F
i,F
j)の値が1に近付く。
【0054】
《操作方法同士の類似度の計算》
操作方法同士の類似度の具体的計算例を示す。本計算例では、機能同士の類似度計算の場合と同様に、操作方法Uをm種類の部品cで構成されるm次元ベクトルとして表現する。従って、互いの類似度が計算される操作方法U
iと操作方法U
jは、次式により示される。
【0056】
定型書式で記述された操作方法は、機能と同様に多次元ベクトルで表現することができる。
図4に、
図3(b)と同様の図であって、操作方法U
1〜U
5をm次元ベクトルで表現した場合の具体例を示す。例えば操作方法U
1(露出補正)は、
図4に示されるように、ベクトル(1,1,1,0,1,1,0,1,0,0,1,0,1,1,1,1,1,0,1,0,1,1,1,1,1,1)で表現される。
【0057】
操作方法U
iと操作方法U
jとの類似度S
interaction(U
i,U
j)は、次式により示される。
【0059】
機能同士の類似度計算の場合と同様に、右辺の(U
i・U
j)/|U
i||U
j|は、ベクトルU
iとベクトルU
jとがなす角θの余弦(ベクトル内積から求められるスカラー)である。c
ik≧0,c
jk≧0より、0≦(U
i・U
j)/|U
i||U
j|≦1であることから、0≦S
interaction(U
i,U
j)≦1となる。そのため、操作方法U
iと操作方法U
jとが類似するほどS
interaction(U
i,U
j)の値がゼロに近付き、操作方法U
iと操作方法U
jとが非類似であるほどS
interaction(U
i,U
j)の値が1に近付く。
【0060】
[
図2のS15(機器操作の一貫性の評価)]
電気製品のUI仕様は、電気製品に搭載される機能F
kとその操作方法U
kとの総和(次式参照)とみなすことができる。なお、次式のNは、表1の説明でも述べたように、電気製品に搭載される機能の総数を示す。
【0062】
処理ステップS14(機能及び操作方法の類似度の計算)では、N(N−1)/2通りの全ての組合せについてS
function(F
i,F
j)及びS
interaction(U
i,U
j)の値が計算される。本処理ステップS15では、この計算結果をもとに、階層化クラスタリング法を用いた機能の分類及び操作方法の分類並びに機器操作の一貫性の評価が行われる。各分類及び評価を行う際には、下記の基準1及び2が適用される。
【0063】
基準1:類似した機能は、類似した操作方法で実現されることが好ましい。
基準2:全ての機能は、より少ない操作パターンで実現されることが好ましい。
【0064】
《機能の分類》
図5を用いて、機能の分類について具体例を説明する。ここでは、基準1に従い、総数Nの機能を類似した機能毎に分類するため、S
function(F
i,F
j)を入力として階層化クラスタリングが実行される。これにより、
図5(a)に示される機能の樹形図が得られる。なお、
図5の例では、N=8とする。
【0065】
階層化クラスタリングにおいては、類似する機能同士の操作方法を評価する都合上、単独要素が発生しないようにクラスタの分離が行われる。そこで、
図5(b)に示されるように、樹形図は、q
1、q
2の点まで分離される。これにより、{F
1,F
5}、{F
2,F
6,F
7}、{F
3,F
8,F
4}の3つのクラスタ(機能群)に分離される。
【0066】
機能同士の類似判定基準をαと定義すると、機能F
iと機能F
jは、0≦S
function(F
i,F
j)≦αである場合に類似すると判定され、α<S
function(F
i,F
j)≦1である場合に非類似であると判定される。αの値が小さいほど判定基準が厳しくなる。
【0067】
図5(c)に、分離後の3つの機能群に対して類似判定基準αを適用した結果を示す。
図5(c)に示されるように、類似判定基準αを適用した結果、各機能群内の機能同士で類似・非類似の分類が行われ、具体的には、{F
1|F
5}、{F
2,F
6|F
7}、{F
3,F
8,F
4}が得られる。{F
1|F
5}は、同一機能群に属する機能F
1と機能F
5が非類似であることを示す。{F
2,F
6|F
7}は、同一機能群に属する機能F
2と機能F
6が類似し且つ機能F
2及び機能F
6と機能F
7が非類似であることを示す。{F
3,F
8,F
4}は、同一機能群に属する機能F
3、F
8、F
4が互いに類似することを示す。
【0068】
《操作方法の分類》
図6を用いて、操作方法の分類について具体例を説明する。ここでは、
図5の例に対応させるため、N=8とする。総数Nの操作方法を類似した操作方法毎に分類するため、S
interaction(U
i,U
j)を入力として階層化クラスタリングが実行される。
【0069】
操作方法同士の類似判定基準をβと定義すると、操作方法U
iと操作方法U
jは、0≦S
interaction(U
i,U
j)≦βである場合に類似すると判定され、β<
interaction(U
i,U
j)≦1である場合に非類似であると判定される。βの値が小さいほど判定基準が厳しくなる。
【0070】
図6(a)に、階層化クラスタリングされた操作方法に対して類似判定基準βを適用した結果を示す。
図6(a)に示されるように、類似判定基準βを適用した結果、{U
1,U
6}、{U
2,U
5,U
7}、{U
3,U
4}、{U
8}の4つのクラスタ(4種類の操作群(操作パターン))に分類される。これは、電気製品の操作が4種類の操作パターンで成立している状態を表している。
【0071】
基準2に従い、単独要素のクラスタ{U
8}が近接するクラスタ{U
3,U
4}と併合可能かどうかを検討するように、表示等によって設計者に警告される。ここでは、設計者が検討・修正(例示的には、FITのInteractionフィールドに入力されている操作方法U
8を別の操作方法に変更したり操作方法U
8の記述内容を修正したりする等)した後の操作方法を再分類した結果、
図6(b)に示されるように、クラスタ{U
3,U
4}とクラスタ{U
8}とが併合されて、類似判定基準βで分類されるクラスタ(操作パターン)が、4種類から、{U
1,U
6}、{U
2,U
5,U
7}、{U
3,U
4、U
8}の3種類に減少したものとする。以下、説明の便宜上、操作パターンP
1={U
1,U
6}、操作パターンP
2={U
2,U
5,U
7}、操作パターンP
3={U
3,U
4、U
8}とする。
【0072】
《機器操作の一貫性の評価》
表2に、類似判定基準α適用後の機能群(
図5(c)参照)と、修正後の操作パターン(
図6(b)参照)との対応関係を例示する。
【0074】
本評価においては、基準1や基準2に反する箇所が機器操作の一貫性が保たれていることが疑わしい箇所として検知される。
【0075】
例示的には、表2では、機能F
2と機能F
6は、類似する機能ではあるが、その操作方法U
2、U
6は、それぞれ、異なる操作パターンP
2、P
1に分類されており、非類似となっている。すなわち、類似する機能の操作方法が非類似のため、基準1に反する。従って、操作方法U
2及びU
6は、機器操作の一貫性について疑わしい箇所として検知される。以下、説明の便宜上、検知されたこの箇所を「修正候補箇所1」と記す。
【0076】
基準1及び基準2に従い、修正候補箇所1の中から修正を推奨する操作方法が選定される。
【0077】
ここで、修正候補箇所1の修正方針としては、次の(1)〜(4)が考えられる。
(1)操作方法U
2が操作パターンP
1に含まれるように操作方法を修正する。
(2)操作方法U
6が操作パターンP
2に含まれるように操作方法を修正する。
(3)操作方法U
2及びU
6を見直して別の操作方法を模索する。
(4)操作方法U
2及びU
6を修正しない。
【0078】
開発を短期間で行うという観点に立つと、最小限の修正で機器操作全体の一貫性が保たれることが望ましい。そのため、修正方針(1)及び(2)が候補として絞り込まれる。更に、表2に示されるように、操作方法U
2は、同一機能群に属する操作方法U
7と同一の操作パターンP
2に分類されている。操作パターンをより少なくするという基準2を鑑みると、操作方法U
7と操作パターンが同一の操作方法U
2よりも、操作方法U
7と操作パターンが異なる操作方法U
6を修正すべきである。そのため、修正方針(2)が最終候補として絞り込まれ、操作方法U
6が修正を推奨する操作方法として選定される。
【0079】
また、表2に示されるように、同一機能群に属する機能F
1と機能F
5の操作パターンが異なっている。そのため、その操作方法U
1及びU
5は、基準2に反し、機器操作の一貫性について疑わしい箇所として検知される。以下、説明の便宜上、検知されたこの箇所を「修正候補箇所2」と記す。
【0080】
修正候補箇所2についても修正を推奨する操作方法が選定される。
【0081】
修正候補箇所2の修正方針としては、次の(5)〜(8)が考えられる。
(5)操作方法U
1が操作パターンP
2に含まれるように操作方法を修正する。
(6)操作方法U
5が操作パターンP
1に含まれるように操作方法を修正する。
(3)操作方法U
1及びU
5を見直して別の操作方法を模索する。
(4)操作方法U
1及びU
5を修正しない。
【0082】
修正候補箇所1の場合と同様に、開発を短期間で行うという観点に立つと、最小限の修正で機器操作全体の一貫性が保たれることが望ましい。そのため、修正方針(5)及び(6)が候補として絞り込まれる。ここで、修正候補箇所1について修正方針(2)で修正を行う、すなわち操作方法U
6が操作パターンP
2に含まれるように操作方法を修正すると、操作パターンP
1に分類されている操作方法U
1が単独要素の操作パターンになってしまうことが見込まれる。基準2を鑑みると、この単独要素の操作パターンを、操作パターンの数がより少なくなるように他の操作パターンに併合することが望ましい。修正方針(5)を採用すると、操作パターンが2つとなり、修正方針(6)を採用すると、操作パターンが3つとなる。そのため、修正方針(5)が最終候補として絞り込まれ、操作方法U
1が修正を推奨する操作方法として選定される。
【0083】
[
図2のS16(疑わしい箇所の判定)]
本処理ステップS16では、処理ステップS15(機器操作の一貫性の評価)にて機器操作の一貫性について疑わしい箇所が検知されたか否かが判定される。本処理ステップS16にて、機器操作の一貫性について疑わしい箇所が検知されていないと判定された場合(S16:NO)、本フローチャートは終了する。
【0084】
[
図2のS17(修正を推奨する操作方法の警告)]
本処理ステップS17は、処理ステップS16(疑わしい箇所の判定)にて機器操作の一貫性について疑わしい箇所が検知されたと判定された場合(S16:YES)に実行される。本処理ステップS17では、処理ステップS15(機器操作の一貫性の評価)にて選定された、修正を推奨する操作方法が、設計者に警告される。
【0085】
[
図2のS18(修正完了の操作判定)]
処理ステップS17(修正を推奨する操作方法の警告)にて警告された各操作方法が設計者によって再検討されて、操作方法(FITのInteractionフィールド)が修正されると(S18:NO及びS12)、修正後のFITに基づいて処理ステップS13〜S17が実行される。なお、警告された操作方法の修正は必須ではなく、当該操作方法が敢えて修正されないケースもある。例えば、緊急停止機能等の特殊な機能は、操作方法が標準的なものでなく特殊なものであることが多い。この種の操作方法については、警告が行われた場合であっても修正されないことがあり得る。
【0086】
図7に、操作方法の修正後の樹形図を示す。
図7(a)は、
図6(b)に対して修正方針(2)の修正を加えた状態を示し、
図7(b)は、
図7(a)に対して修正方針(5)の修正を加えた状態を示す。また、表3に、修正方針(2)及び(5)による修正後の機能群と操作パターンとの対応関係を例示する。
【0088】
このように、基準1及び2に従って操作方法を修正したことにより、類似する機能は類似する操作方法(同じ操作パターン)で実現されると共に、電気製品に採用される操作パターンが3種類(P
1〜P
3)から2種類(P
2、P
3)に削減された。この結果、操作方法の修正前と比べて機器操作の一貫性が向上したことが判る。
【0089】
設計者は、処理ステップS17(修正を推奨する操作方法の警告)にて警告された全ての操作方法について再検討の必要が無くなったと判断すると、修正完了の操作を行う。本処理ステップS18では、設計者によって当該操作が行われたか否かが判定される。本処理ステップS18にて当該操作が行われたと判定された場合(S18:YES)、本フローチャートは終了する。
【0090】
本実施形態では、処理ステップS17(修正を推奨する操作方法の警告)における警告をもとに全ての操作方法について再検討の必要が無くなったと設計者が判断するまで、操作方法の分類及び評価並びに修正が繰り返されることにより、機器操作の一貫性が一定水準以上に保たれたUI設計が達成される。なお、一定水準については、類似判定基準αやβを適宜変更することにより、調整することができる。また、本実施形態では、修正を推奨する操作方法(言い換えると、ユーザビリティの低下を招き得る因子)が自動的に抽出される。すなわち、ユーザビリティの低下を招き得る因子が迅速に発見されるため、製品のユーザビリティの改善と同時にライフサイクルに合わせた短期間での開発も達成される。
【0091】
図2に示されるフローチャートの実行により完成したFITを構成する機能と操作方法は、製品の操作概略であるフレームワークに相当する。設計者は、このフレームワークに対し、設定値の内容、表示文字列や表示アイコンのようなリソースデータの定義、詳細な画面レイアウト、漏れ抜けのない状態遷移指定など、必要な情報を補い、製品の外面的な振舞いを詳細設計して、下流工程に引渡す外部設計書を完成させる。
【0092】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本発明の実施形態に含まれる。