特許第6647700号(P6647700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647700
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】干渉計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20200203BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A61B3/10
   G01B9/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-152524(P2019-152524)
(22)【出願日】2019年8月23日
(62)【分割の表示】特願2018-38678(P2018-38678)の分割
【原出願日】2018年3月5日
(65)【公開番号】特開2019-202196(P2019-202196A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2019年8月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】加茂 考史
(72)【発明者】
【氏名】野澤 有司
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−205203(JP,A)
【文献】 特開2018−7924(JP,A)
【文献】 特表2007−522456(JP,A)
【文献】 特開2016−140406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
G01B 9/00 − 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射した光を測定光と参照光とに分割する第1の光分岐部と、
その第1の光分岐部から出射した測定光であって被検物に照射された後にその被検物で反射したものと、前記第1の光分岐部から出射した参照光とを合波して干渉光を生成する第2の光分岐部と、
前記第1の光分岐部から出射した測定光を前記第2の光分岐部に導くためにそれら第1および第2の光分岐部を互いに接続する測定光路であって第1の光ファイバを用いて製作されるとともに測定光路長Xを有するものと、
前記第1の光分岐部から出射した参照光を前記第2の光分岐部に導くためにそれら第1および第2の光分岐部を互いに接続する参照光路であって第2の光ファイバを用いて製作されるとともに参照光路長Yを有するものと、
前記生成された干渉光を受光して差動増幅するバランス検出器と
を含む干渉計であって、
前記参照光が前記参照光路内を前記第1の光分岐部から前記第2の光分岐部に向かって伝播中にそれとは逆向きに後方散乱光が発生し、
前記測定光路および前記参照光路は、前記測定光路長Xと前記参照光路長Yとの間に予め定められた関係を利用することにより、前記参照光路内において発生した後方散乱光が前記第1の光分岐部を経て前記測定光路内に進入することを抑制するように構成され
さらに、前記被検物のうち、選択される測定対象部位が前記被検物の深さ方向に移動するにつれて前記参照光の光路長を変更する光路長変更器を含む干渉計。
【請求項2】
さらに、前記バランス検出器から入力された干渉信号に基づき、前記被検物の各部位の深さ方向位置を特定する演算装置を含む請求項1に記載の干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に光干渉を用いて被検物を測定する光干渉測定機器に用いられる干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光干渉を用いて被検物を測定する光干渉測定機器が提供されている。光学部品の配置の自由度が高いことや長い光路長でもコンパクトに構成できることから、光干渉測定機器では特許文献1に開示されているように干渉光を発生させる干渉計の構成に光ファイバを採用する場合が多い。
【0003】
特許文献1では、波長掃引光源から出力された光を、光ファイバを経由して第1のカプラに導いて測定光と参照光とに分割し、分割した測定光を、光ファイバを経由して被検眼に照射し、被検眼から反射された測定光を第1のカプラを経由して第2のカプラに導き、第1のカプラで分割した参照光を、光ファイバを経由して第2のカプラに導き、第2のカプラに導かれた測定光と参照光とが合波して発生した干渉光を検出器で検出することにより、被検眼の内部の各部位の位置を特定する眼科装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−211732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバを用いた干渉計では、光ファイバ内を光が伝播する際に光の一部が散乱して散乱光が発生する。例えば、特許文献1に開示された眼科装置では、参照光が経由する光ファイバ内で生じた散乱光の内、後方へ散乱する後方散乱光が第1のカプラを経由して測定光路に入り込み、その結果、第2のカプラで生成した干渉光に影響し、正確に被検眼の内部の各部位の位置を特定することができなくなる恐れがある。
【0006】
特に、第1のカプラから第2のカプラまでの参照光路において、第1のカプラから、参照光路における第1のカプラから第2のカプラまでの光路長から測定光路における第1のカプラから第2のカプラまでの光路長を差し引いた光路長の1/2の位置で生じる参照光の後方散乱光と参照光とが強く干渉するため、該位置からの後方散乱光を抑止する必要がある。
【0007】
以上説明した事情を背景とし、本発明は、参照光路と測定光路とを有する干渉計であって、参照光路の光ファイバ内で発生した後方散乱光が測定光路に入り込むことを抑止することができるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、光源から出射した光を測定光と参照光とに分割する第1の光分岐部と、
その第1の光分岐部から出射した測定光であって被検物に照射された後にその被検物で反射したものと、前記第1の光分岐部から出射した参照光とを合波して干渉光を生成する第2の光分岐部と、
前記第1の光分岐部から出射した測定光を前記第2の光分岐部に導くためにそれら第1および第2の光分岐部を互いに接続する測定光路であって第1の光ファイバを用いて製作されるとともに測定光路長Xを有するものと、
前記第1の光分岐部から出射した参照光を前記第2の光分岐部に導くためにそれら第1および第2の光分岐部を互いに接続する参照光路であって第2の光ファイバを用いて製作されるとともに参照光路長Yを有するものと、
前記生成された干渉光を受光して差動増幅するバランス検出器と
を含む干渉計であって、
前記参照光が前記参照光路内を前記第1の光分岐部から前記第2の光分岐部に向かって伝播中にそれとは逆向きに後方散乱光が発生し、
前記測定光路および前記参照光路は、前記測定光路長Xと前記参照光路長Yとの間に予め定められた関係を利用することにより、前記参照光路内において発生した後方散乱光が前記第1の光分岐部を経て前記測定光路内に進入することを抑制するように構成され
さらに、前記被検物のうち、選択される測定対象部位が前記被検物の深さ方向に移動するにつれて前記参照光の光路長を変更する光路長変更器を含む干渉計が提供される。
この干渉計の一例は、さらに、前記バランス検出器から入力された干渉信号に基づき、前記被検物の各部位の深さ方向位置を特定する演算装置を含んでもよい。
また、本発明の別の側面によれば、光源から出射した光を測定光と参照光とに分割する第1の光分岐部であって、当該第1の光分岐部から出射した測定光は被検物に照射された後に前記被検物で反射して当該第1の光分岐部に戻ってその第1の光分岐部から出射するものと、
前記被検物で反射した後に前記第1の光分岐部から出射した測定光と前記第1の光分岐部から出射した参照光とを合波して干渉光を生成する第2の光分岐部と、
前記第1の光分岐部から出射した参照光を前記第2の光分岐部に導くためにそれら第1および第2の光分岐部を互いに接続する光ファイバと、
その光ファイバに接続された光学素子と
を含む干渉計であって、
前記光学素子は、前記光ファイバに、前記測定光が前記光ファイバとは別の経路を経由して前記第1の光分岐部から前記第2の光分岐部に至る測定光路の長さをX、前記参照光が前記光ファイバを経由して前記第1の光分岐部から前記第2の光分岐部に至る参照光路の長さをYとした場合に(Y−X)/2で表される値を超えない距離だけ前記第1の光分岐部から前記第2の光分岐部に向かって離れた位置に接続された干渉計が提供される。
また、本発明のさらに別の側面によれば、干渉計であって、光源から出力された光を、第1の光分岐部に導いて測定光と参照光とに分割し、分割した測定光を被検物に照射し、被検物から反射した測定光を第1の光分岐部を経由して第2の光分岐部に導き、第1の光分岐部で分割した参照光を、光ファイバを経由して第2の光分岐部に導き、第2の光分岐部に導かれた測定光と参照光とが合波して干渉光を生成する干渉計において、参照光が、第1の光分岐部から光ファイバを経由して第2の光分岐部に至る経路に後方散乱光除去部を有するものが提供される。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも一部を光ファイバで構成する参照光路において、光ファイバ内で生じた散乱光の内、後方へ散乱する後方散乱光が測定光路に入り込むことを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第1実施形態の干渉計を用いた眼科装置の光学系の概略構成図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の干渉計を採用した眼科装置の制御系のブロック図である。
図3】第1実施形態に係る眼科装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】干渉光学系で検出した干渉信号をフーリエ変換して被検眼の対象部位を特定する手順を示した図である。
図5】0点調整機構の機能を説明するための図である。
図6】本発明に係る第2実施形態の干渉計を採用した眼科装置の光学系の概略構成図である。
図7】本発明に係る第3実施形態の干渉計を採用した眼科装置の光学系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る干渉計100を用いた眼科装置1について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態では、光干渉を用いて被検眼内部の測定対象部位(例えば、水晶体、網膜など)の位置を特定する眼科装置について詳述するが、本発明にかかる干渉計は、眼科装置1のような眼科装置に限定するものではなく、光干渉を用いて被検物を測定する光干渉測定機器であれば、採用することが可能である。
【0012】
図1は眼科装置1の光学系の概略構成を説明する図である。図1に示すように、眼科装置1の光学系10は、被検眼Eから反射される測定光と参照光とを干渉させる光干渉光学系20と、被検眼Eの前眼部を観察する観察光学系50(図2に図示)と、被検眼Eに対して光学系10を所定の位置関係にアライメントするためのXYZアライメント光学系60(図2に図示)と、被検眼Eを固視させる固視光学系(図示しない)などとから構成される。観察光学系50、XYZアライメント光学系60および固視光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。ここで、図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る干渉計100にバランス検出器120を含めたものを光干渉光学系20と記述する。
【0013】
光干渉光学系20は、光源101と、光源101からの光をビームスプリッタ102により分岐した一方の光を測定光として被検眼Eの内部に照射すると共にその反射光(測定光)をビームスプリッタ102を経由してビームスプリッタ103に導く測定光学系と、光源101からの光をビームスプリッタ102により分岐した他方の光を参照光としてビームスプリッタ103に導く参照光学系と、ビームスプリッタ103に導かれた測定光と参照光とをビームスプリッタ103により合波して発生した干渉光を受光するバランス検出器120とによって構成されている。
【0014】
光源101は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源101から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被験眼Eの各部位から反射される光と参照光との干渉光の強弱が変化する。強弱の変化の周波数は、反射光の反射位置の深さの方向の位置に依存している。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼Eの内部の各部位(すなわち、角膜E0、水晶体E1や網膜E2)の位置を特定することが可能となる。
【0015】
測定光学系は、ビームスプリッタ102と、対物レンズ108と、コリメータレンズ109 と、光ファイバ105と、コリメータレンズ113と、ビームスプリッタ103とによって構成されている。光源101から出射された光は、ビームスプリッタ102で分岐した反射光を測定光として、対物レンズ108を介して被検眼Eに照射される。被検眼Eから反射された測定光 は、再度ビームスプリッタ102に入射し、透過した測定光はコリメータレンズ109、光ファイバ105およびコリメータレンズ113を介してビームスプリッタ103に導かれる。
【0016】
参照光学系は、ビームスプリッタ102と、コリメータレンズ110と、光ファイバ106と、コリメータレンズ111と、0点調整機構30と、コリメータレンズ112と、光ファイバ107と、コリメータレンズ114と、ビームスプリッタ103とによって構成されている。光源101から出射された光は、ビームスプリッタ102で分岐した透過光を参照光として、コリメータレンズ110、光ファイバ106、コリメータレンズ111、0点調整機構30、コリメータレンズ112、光ファイバ107およびコリメータレンズ114を介してビームスプリッタ103に導かれる。
【0017】
ビームスプリッタ103に導かれた測定光と参照光とがビームスプリッタ103において合波し、発生した干渉光は、コリメータレンズ115と光ファイバ117、および、コリメータレンズ116と光ファイバ118を介してバランス検出器120に導かれる。バランス検出器120に導かれた干渉光は、バランス検出器120内で差動増幅されて演算装置80に入力される。本実施形態では、干渉光の検出にバランス検出器120を用いているが、干渉光の検出はこれに限定するものではなく、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0018】
次に、参照光学系に設けられる0点調整機構30について説明する。0点調整機構30は、コーナキューブ104と、コーナキューブ104をコリメータレンズ111、112に対して進退動させる第1駆動装置81(図2に図示)を備えている。第1駆動装置81がコーナキューブ104を図1の矢印Aの方向に駆動することで、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103に至る光路長(すなわち、参照光学系の参照光路長)が変化する。ここで説明する0点とは図5に示すように、参照光路長(詳細には、ビームスプリッタ102〜0点調整機構30〜ビームスプリッタ103)と測定光路長(詳細には、ビームスプリッタ102〜0点〜ビームスプリッタ102〜ビームスプリッタ103)が一致する位置であり、干渉光を用いた測定装置ではこの0点を基準に深さ方向(本実施例では被検眼Eの網膜E2方向)の干渉信号を取得する。すなわち、図5に示すように、測定光路におけるビームスプリッタ102からビームスプリッタ103に至る光路長をX、ビームスプリッタ102から0点までの光路長をdとすると、測定光路長は2d+Xとなる。参照光路長はYであるため、図5においては、Y=2d+Xとなる。
【0019】
本実施形態のように被検眼Eの角膜E0から網膜E2までの測定を行う場合は、通常、図5に示すように、被検眼Eの角膜E0の少し手前の位置(図5に示す被検眼EからΔZ前方の位置) に0点が来るように0点調整機構30により調整される。尚、本実施例における0点調整機構30は、0点の位置を角膜E0表面から網膜E2表面までの距離で移動できるように構成されている。
【0020】
次に、本実施形態の眼科装置1の制御系の構成を説明する。図2に示すように、眼科装置1は演算装置80によって制御される。演算装置80は、(図示しない)CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置80には、光干渉光学系20と、観察光学系50と、XYZアライメント光学系60と、固視光学系(図示しない)と、第1駆動装置81と、モニタ5と、メモリ6と、ジョイスティック7とが接続されている。演算装置80は、光干渉光学系20、観察光学系50、XYZアライメント光学系60や固視光学系(図示しない)の各光学系の光源(光源101など)のオン/オフの制御や、0点調整機構30を駆動する、第1駆動装置81の制御を行う。また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される被検眼Eの前眼部の画像をモニタ5に表示する。さらに、演算装置80は、光干渉光学系20のバランス検出器120が接続され、バランス検出器120で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力される。演算装置80は、バランス検出器120から入力される干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼Eの各部位(角膜E0の前後面、水晶体E1の前後面、網膜E2の表面)の位置を特定し、被検眼Eの眼軸長を算出する。
【0021】
次に、本実施形態の眼科装置1を用いて、被検眼Eの各部位の位置を特定して眼寸法を測定する手順を、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の眼科装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0022】
まず、ステップS10で、被検眼Eに対して光学系10を所定の位置関係にアライメントするXYZアライメントを実施する。XYZアライメントは、XYZアライメント光学系60を用いて実施する。まず、ジョイスティック7を操作して被検眼Eに対して光学系10を粗アライメントし、その後、XYZアライメント光学系60から出力される検出信号に基づいて、図示しないX軸駆動装置、Y軸駆動装置、Z軸駆動装置により、被検眼Eに対して光学系10をXYZ方向にオートアライメントする。
【0023】
次に、ステップS11で、0点位置を調整する。0点位置の調整は、上述のように、0点位置が被検眼EからΔZの前方位置に来るように0点調整機構30を制御する。その後、被検眼Eの測定を開始する。
【0024】
ステップS12で、被検眼Eの干渉信号を取得する。被検眼Eの干渉信号は、上述にように、光干渉光学系20のバランス検出器120で検出し、演算装置80に入力される。
【0025】
ステップS13で、演算装置80に入力された干渉信号をフーリエ変換する。そして、ステップS14で、フーリエ変換されたデータ(「Aスキャン像」と呼ぶ)から、被検眼Eの対象部位(例えば、角膜E0、水晶体E1、網膜E2など)を特定し、各眼寸法値を算出し、ステップS15で、ステップS14で算出した各眼寸法値をモニタ5の表示画面に表示する。尚、図4は、バランス検出器120で検出した干渉信号をフーリエ変換して被検眼Eの対象部位(例えば、角膜E0、水晶体E1、網膜E2など)を特定する手順を示した図である。
【0026】
ここで、本実施形態に係る光干渉光学系20では、上述のように、参照光路には、光ファイバ106および光ファイバ107が用いられているため、光ファイバ内を参照光が伝播する際に光ファイバ内で伝播する参照光の一部が散乱して散乱光を発生させる。参照光が経由する光ファイバ内で生じた散乱光の内、後方へ散乱する後方散乱光がビームスプリッタ102を経由して測定光路に入り込み、その結果、ビームスプリッタ103で生成した干渉光に影響し、被検眼Eの内部の各部位の位置を正確に特定することができなくなる恐れがある。
【0027】
図1に示すように、測定光学系において、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ至る光路長をX、参照光学系において、ビームスプリッタ102から0点調整機構30を介してビームスプリッタ103へ至る光路長をYとした場合、参照光路においてビームスプリッタ102からビームスプリッタ103に向けて(Y−X)/2の位置(P1)は、測定光学系において0点の位置と同一となることから、この位置において光ファイバ内で生じる参照光の後方散乱光がビームスプリッタ102を経由して測定光路に入り込むとビームスプリッタ103で生成した干渉光に大きく影響する。すなわち、参照光路において、P1の位置で発生する後方散乱光を抑止することが重要となる。本実施形態では、図1に示すように、P1の位置に(光ファイバを用いない)フリースペースで構成された0点調整機構30を配置することにより、P1の位置において後方散乱光が発生することを抑止することができる。これにより、ビームスプリッタ103で生成した干渉光において後方散乱光の影響を抑止することができるため、被検眼Eの内部の各部位の位置を正確に特定することができるようになる。
【0028】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る干渉計200を用いた眼科装置2について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図6は、本発明に係る第2実施形態の干渉計200を採用した眼科装置2の光学系11の概略構成図である。干渉計200では、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ至る参照光路には、光ファイバ131と光ファイバ132との間に光アイソレータ130が配置されている。光アイソレータ130は、一方の方向に進む光は透過し、逆方向に進む光を遮断する特性を持つ光学素子である。本実施形態では、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ進む参照光は透過し、逆にビームスプリッタ103からビームスプリッタ102へ進む参照光は遮断するように光アイソレータ130が配置されている。図6に示すように、測定光学系において、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ至る光路長をX、参照光学系において、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ至る光路長をYとした場合、参照光路においてビームスプリッタ102からビームスプリッタ103に向けて(Y−X)/2の位置(P2)を超えない位置に光アイソレータ130が配置されている。これにより、測定光学系において0点の位置と同一となるP2の位置を含む光ファイバ132内で発生する後方散乱光を光アイソレータ130で遮断することから、ビームスプリッタ102を経由して測定光路に入り込むことを抑止することができる。すなわち、ビームスプリッタ103で生成した干渉光において特に影響が大きいP2の位置で発生する後方散乱光の影響を抑止することができるため、被検眼Eの内部の各部位の位置を正確に特定することができるようになる。
【0030】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る干渉計300を用いた眼科装置3について図面を参照しながら説明する。
【0031】
図7は、本発明に係る第3実施形態の干渉計300を採用した眼科装置3の光学系12の概略構成図である。上記第1の実施形態や第2の実施形態では、光を分岐する分岐部材にビームスプリッタ102および103を採用したが、図7に示すように、干渉計300では、ビームスプリッタ102および103の代わりにファイバカプラ201および202を採用する。本発明に係る眼科装置のように光ファイバを用いて干渉計を構成する場合、干渉計300のように、光分岐部にファイバカプラを用いることにより、干渉計を簡易に組み付けることができる。
【0032】
ここで、干渉計100、200および300は干渉計の一例であり、光源101は光源の一例であり、ビームスプリッタ102およびファイバカプラ201は第1の光分岐部の一例であり、ビームスプリッタ103およびファイバカプラ202は第2の光分岐部の一例であり、0点調整機構30はフリースペースの一例であり、光アイソレータ130は光学素子の一例である。
【0033】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0034】
例えば、上記実施形態の干渉計100、200および300では、フーリエドメイン型の光干渉断層計(Optical Coherence Tomography、以下「OCT」と表記する。)の1つである、光源101に波長掃引型光源を用いたSS−OCTを採用したものである。しかしながら、本発明に係る干渉計はSS−OCTに限定するものではなく、他のフーリエドメイン型のOCTであるスペクトルドメインOCT(SD−OCT)であってもよいし、タイムドメイン型のOCTであってもよい。
【0035】
また、上記第2の実施形態に係る干渉計200において、光アイソレータ130を採用したが、参照光路に配置して光ファイバ内で発生する後方散乱光を遮断する光学素子は光アイソレータに限定するものではなく、光減衰器や光サーキュレータなどを採用してもよい。
【0036】
また、2つの光分岐部のうち少なくとも一方を光ファイバ以外で構成してもよい。上記第1の実施形態のように、干渉計の光学系の一部がフリースペースで構成されている場合は光分岐部においても光ファイバで構成しない方が簡易に構成することができるため、コストを安価にすることができる。
【0037】
また、上記第1の実施形態に係る干渉計100において、P1の位置に0点調整機構30を配置したが、本発明の権利範囲は0点調整機構を配置した構成に限定されるものではなく、P1の位置を中心とする所定の範囲がフリースペースとなる別の機構を配置してもよい。
【0038】
また、ビームスプリッタ103で発生する光干渉は0点からコヒーレント長(光源の波長の二乗÷光源の線幅)の距離の範囲で発生することから、所定の範囲を光源101のコヒーレント長とすることにより、適切な位置にフリースペースを設けることができる。これにより、参照光の後方散乱光の影響をより効果的に抑止することができる。尚、所定の範囲は、光源101のコヒーレント長に限定するものではなく、抑止したい後方散乱光に応じて適宜、位置や範囲を設定すればよい。
【0039】
また、上記実施形態の干渉計100、200および300では、測定光路において、ビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ至る光路に光ファイバを用いたが、測定光路の構成によっては、特に、光ファイバを用いる必要がない場合は、フリースペースでビームスプリッタ102からビームスプリッタ103へ至る光路を構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、2、3・・眼科装置
5・・モニタ
10、11、12・・光学系
20・・光干渉光学系
30・・0点調整機構
50・・観察光学系
60・・XYZアライメント光学系
100、200、300・・干渉計
101・・光源
102、103・・ビームスプリッタ
120・・バランス検出器
201、202・・ファイバカプラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7