特許第6647710号(P6647710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647710
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】被覆剥ぎコマ
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20200203BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20200203BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H02G1/12 065
   B26B27/00 G
   B26D3/00 603Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-29985(P2016-29985)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-147907(P2017-147907A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年1月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 申請の原因:特許出願に係る発明の公開 公開した日:平成27年10月29日、及び10月30日(2日間) 発表会、公開場所:電力東神会、有馬グランドホテル(兵庫県神戸市北区有馬町1304−1) 公開者:東神電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221409
【氏名又は名称】東神電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219820
【氏名又は名称】株式会社トーエネック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】別宮 正博
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−98639(JP,A)
【文献】 特開平9−103013(JP,A)
【文献】 特開2000−288271(JP,A)
【文献】 特開2013−192430(JP,A)
【文献】 特開2011−223875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26B 27/00
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の被覆を一方のコマ分割体と他方のコマ分割体とで両側から挟持し、いずれか一方のコマ分割体に装着された被覆剥取刃で前記被覆を環状に剥ぎ取る被覆剥ぎコマであって、
当該被覆剥ぎコマは、外部動力により電線の軸周りに回転させるコマ駆動工具に取り付け可能であり、
前記一方のコマ分割体と前記他方のコマ分割体の挟持面により、前記電線を挟持した状態で、前記被覆剥取刃は、前記電線の被覆に臨むように取り付けられており、
さらに、当該被覆剥取刃の後方には、互いの間隔が、当該被覆剥取刃の幅よりも狭い2枚の保持板からなる被覆脱落防止部を備えたことを特徴とする被覆剥ぎコマ。
【請求項2】
前記保持板の一方は、他方の前記保持板に向けて傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の被覆剥ぎコマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば電柱間等に架設されている架空配電線の間接活線工法に関する。詳しくは、上記架空配電線の絶縁被覆部分を、その導線部分から軸方向に一定長さだけ剥離し、剥離した後の電線の被覆が路上等に落下するのを防止する被覆剥ぎコマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空配電線の間接活線工法として、作業員が高所作業用バケットに搭乗し、絶縁操作棒(いわゆるホットスティック)等の上端に装備した切削刃を電線の中間部または端部において、その電線の周囲を周回させることにより、絶縁被覆を螺旋状に切削して剥離し、任意の長さだけ剥離する工法が採用されている。
【0003】
そして、特許文献1に示す電線被覆屑の脱落防止工具は、切断された被覆が路上に落下して通行人や車両等に当たったり、路上に散乱して汚したりするのを防止するために、剥離された被覆を巻き付けて保持する巻付棒を備えている。具体的には、この特許文献1に示す電線被覆屑の脱落防止工具は、電線の軸方向に移動しながら何度も周回しつつ、被覆を螺旋状に切削してゆき、所定の長さに剥離できるまで続けるものである。そして、螺旋状に切削された被覆は、巻付棒に送り出されて順次巻き付くので、脱落することがないのである。
【0004】
しかしながら、予め決められた所定の長さだけ電線の被覆を剥離したい場合、この特許文献1の電線被覆屑の脱落防止工具では、電線の軸方向に移動しながら何度も周回しなければならず、作業が面倒である。
【0005】
そこで、決められた所定の長さだけ電線の被覆を剥離したい場合などは、電線の周囲を一度周回するだけで作業が完了すること、つまり一括で被覆剥ぎができることが望ましい。ただ、電線の周囲を一周だけ周回して被覆を剥離する場合は、剥離された被覆が環状になるので、従来の巻付棒に上手く巻きつくことができず、脱落する可能性がある。そこで、このような一括で被覆剥ぎができる工具において、剥離された被覆が脱落しないように、最適な構造を備えた被覆剥ぎ工具の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−192430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本願発明は、上記問題に鑑み、一括で被覆剥ぎを行う場合に、剥離された被覆が脱落しないように、最適な構造を備える被覆剥ぎコマを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明の被覆剥ぎコマは、電線の被覆を一方のコマ分割体と他方のコマ分割体とで両側から挟持し、いずれか一方のコマ分割体に装着された被覆剥取刃で前記被覆を環状に剥ぎ取る被覆剥ぎコマであって、当該被覆剥ぎコマは、外部動力により電線の軸周りに回転させるコマ駆動工具に取り付け可能であり、前記一方のコマ分割体と前記他方のコマ分割体の挟持面により、前記電線を挟持した状態で、前記被覆剥取刃は、前記電線の被覆に臨むように取り付けられており、さらに、当該被覆剥取刃の後方には、互いの間隔が、当該被覆剥取刃の幅よりも狭い2枚の保持板からなる被覆脱落防止部を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記特徴によれば、被覆脱落防止部の後端側保持部と先端側保持部の間隔が、被覆剥取刃の幅よりも狭くなっているという簡単で最適な構造により、剥ぎ取られて被覆剥取刃の後方へ送り出された被覆を圧縮して、脱落しないように保持することができる。
【0010】
さらに、本願発明の被覆剥ぎコマは、前記保持板の一方は、他方の前記保持板に向けて傾斜していることを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、被覆剥取刃の後方へ順次送り出されてくる被覆を、その傾斜に沿って、徐々にスムーズに圧縮することができる。
【0012】
さらに、本願発明の被覆剥ぎコマは、前記一方のコマ分割体と前記他方のコマ分割体を互いに連結する連結部は、前記被覆剥ぎコマを前記コマ駆動工具へ取り付けるための取付部とは反対の先端側に備えられていることを特徴とする。
【0013】
電線の被覆を被覆剥取刃で剥離する際に、被覆剥取刃は被覆から大きな抵抗力を受けるが、上記特徴によれば、コマ分割体及びコマ分割体とが閉じた状態をより強力に維持できる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の被覆剥ぎコマによれば、一括で被覆剥ぎを行う場合に、最適な構造により、剥離された被覆が脱落しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本願発明の被覆剥ぎコマを取り付けるためのコマ駆動工具の正面図、(b)は当該コマ駆動工具の側面図である。
図2】コマ駆動工具のコマフォルダ周辺を拡大した正面図である。
図3】(a)は本願発明の被覆剥ぎコマの正面図、(b)は当該被覆剥ぎコマの側面図、(c)は当該被覆剥ぎコマの平面図である。
図4】本願発明の被覆剥ぎコマを開いた状態の平面図である。
図5】(a)は本願発明の被覆剥ぎコマをコマ駆動工具に取り付けた状態の正面図、(b)は被覆剥ぎコマをコマ駆動工具に取り付けた状態の側面図である。
図6】(a)は本願発明の被覆剥ぎコマをコマ駆動工具に取り付けた状態で、電線の被覆の剥離を実施している様子を示した正面図、(b)は当該様子を示す側面図、(c)は剥離作業が完了した様子を示した正面図である。
図7】(a)は本願発明の変形例に係る被覆剥ぎコマの正面図、(b)は当該被覆剥ぎコマの側面図、(c)は当該被覆剥ぎコマの平面図である。
図8】(a)は本願発明の変形例に係る被覆剥ぎコマをコマ駆動工具に取り付けた状態で、電線の被覆の剥離を実施している様子を示した正面図、(b)は剥離作業が完了した様子を示した正面図である。
【符号の説明】
【0016】
100 コマ駆動工具
200 コマ分割体
220 挟持面
250 被覆剥取刃
260 被覆脱落防止部
261 保持板(先端側保持部)
262 保持板(後端側保持部)
300 コマ分割体
320 挟持面
400 被覆剥ぎコマ

【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本願発明に係る被覆剥ぎコマ400を取り付けるためのコマ駆動工具100について説明するが、このコマ駆動工具100は外部動力により電線の軸周りに被覆剥ぎコマ400を回転させるものであり、コマ駆動工具100自体は既に公知のものであるので(例えば特許文献1にも開示されている)、ここでは簡単に説明する。
【0018】
<コマ駆動工具100について>
図1及び図2に示すように、このコマ駆動工具100は、大別して、駆動部110と、回転駆動部120と、この回転駆動部120に内蔵されているコマフォルダ130とで構成される。駆動部110は、図示しない下方の電動又は手動の正逆転可能な外部動力と連結され、その外部動力からの駆動力を上方の回転駆動部120のコマフォルダ130に伝達するものである。さらに、外部動力と連結される連結軸114が下方に設けられ、その連結軸114の中間部115は、筒状ケーシング116内に装着されたベアリング117によって回転自在に軸支されている。
【0019】
この回転駆動部120は、連結軸114からの駆動力を受けてコマフォルダ130を正逆方向に回動させるもので、上部の部分傘歯車121と下部の部分傘歯車122とを備え、それぞれの内側端部が枢支ピン123で連結されている。また、下部の部分傘歯車122は、連結軸114と連結しており、連結軸114が回転すると部分傘歯車121と部分傘歯車122は、一体となって筒状ケーシング116の内面を摺動しつつ回動することができる。さらに、それぞれの部分傘歯車121及び部分傘歯車122は、それぞれの内周面に、図3に示すコマ分割体300を取り付けるためのコマフォルダ分割体131と、図3に示すコマ分割体200を取り付けるためのコマフォルダ分割体132とを保持できるスペースを備えている。
【0020】
また、図2に示すように、コマフォルダ130は、コマフォルダ分割体131及びコマフォルダ分割体132から構成されており、このコマフォルダ分割体131及びコマフォルダ分割体132は、二つ割りの半円状のもので、それぞれの端部が枢支ピン123で開閉自在に枢支されている。
【0021】
なお、フック140は、コマフォルダ130が正転中(図の矢印方向)に口を開かないようにするものであり、全体がコマフォルダ分割体131側のピン141に枢支され、コマフォルダ130が正転中は、コマフォルダ分割体132側のピン142に先端143が掛け止めされている。
【0022】
<被覆剥ぎコマ400について>
次に、図3を参照して、本願発明の被覆剥ぎコマ400について説明する。この被覆剥ぎコマ400は、金属性のコマ分割体200とコマ分割体300とから構成されている。このコマ分割体200及びコマ分割体300は、いずれも、筒体を中央面Fを境目にして半割り状にした形状で、連結部210及び連結部310によって、互いに分離及び連結できるようになっている。
【0023】
そして、このコマ分割体200の連結部210は貫通孔を備えた筒型形状で、コマ分割体200の先端側に形成されている。一方のコマ分割体300の連結部310も、貫通孔を備えた筒型形状で、コマ分割体300の先端側に形成されている。そして、軸部材Pを、連結部210及び連結部310の両方の貫通孔に挿通させることで、コマ分割体200とコマ分割体300は互いに、軸部材Pを中心として開閉可能に連結されることになる。
【0024】
また、コマ分割体200及びコマ分割体300のそれぞれには、断面が半円形状の挟持面220及び挟持面320が、被覆剥ぎコマ400の先端側から後端側まで連続するように形成されている。この挟持面220及び挟持面320は、中央面Fに対して対称な形状をしているので、図3(a)に示すように、コマ分割体200とコマ分割体300とを中央面Fで互いに閉じた状態では、円筒状になる。そして、この円筒状になった挟持面220と挟持面320で、電線の周囲を囲むように挟持することができる。
【0025】
また、コマ分割体200及びコマ分割体300のそれぞれの後端側には、フランジ部230及びフランジ部330が形成され、そのフランジ部230及びフランジ部330のそれぞれには貫通孔231及び貫通孔331が形成されている。
【0026】
さらに、当該フランジ部230及びフランジ部330の後端側には、半円状の挿入部240及び挿入部340が形成されている。この挿入部240及び挿入部340の内面には、それぞれ挟持面220及び挟持面320が連続して形成されている。また、挿入部240及び挿入部340のそれぞれの外径は、コマフォルダ130のコマフォルダ分割体131及びコマフォルダ分割体132の内径以下となっており、挿入部240及び挿入部340のそれぞれをコマフォルダ分割体131及びコマフォルダ分割体132の内側に差し込むように、取り付けることができる。
【0027】
また、コマ分割体200には、平面視略長方形の被覆剥取刃250が取り付けられており、被覆剥取刃250の先端251は、図3(a)に示すように、挟持面220の内側表面から突出している。そのため、被覆剥ぎコマ400が電線を挟持した状態では、先端251が電線の被覆に臨むように取り付けられることになり、後述するように、被覆剥ぎコマ400が回動すれば、先端251が被覆に切り込み、被覆を剥ぎ取ることができるのである。
【0028】
また、図3(a)に示すように、コマ分割体300の挟持面320の端部323は、コマ分割体200とコマ分割体300を閉じた状態で、被覆剥取刃250の先端251から離間している。そのため、後述するように、被覆剥取刃250により剥ぎ取られた被覆を、先端251と端部323の間を介して、被覆剥取刃250の後方へ送り出すことができる。さらに、端部323から連続するように傾斜面322が形成されているので、剥ぎ取られた被覆を被覆剥取刃250の後方へ向けて案内しやすくなっている。なお、被覆剥取刃250及びその先端251は、被覆剥ぎコマ400が電線を挟持した状態で、当該電線の軸(図6に示す軸Zを参照)と平行になるように配置されている。
【0029】
また、被覆剥取刃250の後方には、被覆脱落防止部260が取り付けられている。この被覆脱落防止部260は、互いに相対するように配置された後端側保持部261及び先端側保持部262から構成されている。そして、この後端側保持部261は、被覆剥取刃250に対して略直角に立設した板部材である。一方、先端側保持部262は、先端側が被覆剥取刃250に対して傾斜した板部材である。
【0030】
なお、「後方」とは、被覆剥ぎコマ400が電線を挟持した状態で、被覆剥取刃250を基準として、電線が位置する側を「前方」と定義した場合に、被覆剥取刃250を挟んで、その「前方」の反対側のことを意味する。詳しくは後述するが、被覆剥取刃250の前方側で、被覆剥取刃250により電線の被覆が剥ぎ取られ、その剥ぎ取られて後方に送り出された被覆を、被覆脱落防止部260が保持する。
【0031】
次に、図4には、コマ分割体200とコマ分割体300を開いた状態での平面図を示す。被覆脱落防止部260の先端側保持部262は、相対する後端側保持部261に向けて傾斜しているので、被覆脱落防止部260の幅L1は、被覆剥取刃250の幅L2よりも狭い。言い換えると、後端側保持部261と先端側保持部262との間隔は、被覆剥取刃250の幅よりも狭くなっている。
【0032】
また、コマ分割体200及びコマ分割体300の内面には、先端から後端側まで、それぞれ挟持面220及び挟持面320が連続して形成されている。そして、当該挟持面220と挟持面320には、それぞれ複数の突条(線状に連続した突起部)221及び突条321が、半円周分づつ形成されている。具体的には、複数の突条221は、挟持面220の表面から突出し、互いに所定間隔で平行に形成されている。さらに、突条221は、被覆剥取刃250に直交するように形成されている。
【0033】
一方、複数の突条321も同様に、挟持面320の表面から突出し、互いに所定間隔で平行に形成されている。さらに、突条321は、被覆剥取刃250に直交するように形成されている。そのため、コマ分割体200とコマ分割体300を閉じた状態では、突条221と突条321はそれぞれ電線の周方向に連続したリング状となる。
【0034】
特に、電線の周囲に雪が着きにくくするためのヒレK(突起)が形成された「ヒレつき電線(難着雪電線)」の被覆を剥ぐ場合、この突条221及び突条321の内径は、当該電線のヒレKが形成された被覆部分の外径よりも僅かに小さくなっているので、被覆剥ぎコマ400により電線を挟持すると、電線の被覆のヒレKに突条221及び突条321が食い込むことになる。
【0035】
では、次に、本願発明の被覆剥ぎコマ400をコマ駆動工具100に取付け、電線の被覆を剥ぎ取る作業について、図5及び図6を参照して説明する。なお、図6では、説明の都合上、コマフォルダ130を一点鎖線で表し、詳細な構造を省略している。
【0036】
まず、図5に示すように、被覆剥ぎコマ400をコマ駆動工具100の正面側から取り付ける。具体的には、コマフォルダ130のコマフォルダ分割体132の内面に、コマ分割体200の挿入部240を差し込む様に宛がい、一方、コマフォルダ130のコマフォルダ分割体131の内面に、コマ分割体300の挿入部340を差し込む様に宛がう。その際に、コマ分割体200の貫通孔231を、コマフォルダ分割体132の表面に設けられたフック受けピン133に嵌め込む。同様に、コマ分割体300の貫通孔331を、コマフォルダ分割体131の表面に設けられたフック受けピン133に嵌め込む。これにより、被覆剥ぎコマ400のコマフォルダ130への取付けが完了する。
【0037】
なお、この嵌め込みが外れないように、フック134をフック受けピン133に掛けておく。一方、被覆剥ぎコマ400をコマフォルダ130から取り外す際は、フック134をフック受けピン133から外し、被覆剥ぎコマ400を正面側に引き抜けばよい。また、以下では、コマフォルダ130と被覆剥ぎコマ400との連結箇所である、貫通孔231とフック受けピン133からなる部分を取付部234と呼び、同様に、貫通孔331とフック受けピン133からなる部分を取付部334と呼ぶ。
【0038】
次に、図5に示すようにコマフォルダ分割体131とコマフォルダ分割体132が開いた状態で、その開口部Oから電線Wを通す。そして、コマフォルダ分割体131とコマフォルダ分割体132を互いに閉じると、コマ分割体200及びコマ分割体300も閉じ、図6に示すように、電線Wの周囲を挟持面220と挟持面320で挟持することができる。
【0039】
この状態で、外部動力により、コマ駆動工具100の連結軸114を正転又は逆転させると、その動力がコマフォルダ130に伝わり、コマフォルダ130が電線Wの周方向に正転又は逆転することになる。
【0040】
そして、図6(a)及び(b)に示すように、外部動力により連結軸114を正転させると、コマフォルダ130が時計回りに回転し、コマフォルダ130に取り付けられた被覆剥ぎコマ400も同様に、電線Wの周囲を時計周りに回転していく。そして、被覆剥取刃250の先端251は挟持面220から突出し、電線Wの被覆Gに接触しているので、被覆剥ぎコマ400の回転に伴い、被覆Gを剥離していくことができる。なお、被覆剥ぎコマ400は電線Wの軸Z方向に移動せずに、電線Wを挟持した場所で、そのまま電線Wの周方向に回転するだけであり、これにより、決められた所定の長さ、つまり被覆剥取刃250の長さ分だけ(図4に示す幅L2だけ)、被覆を一括で剥ぎ取るのである。なお、被覆剥取刃250の長さは、一括で剥離したい被覆の軸方向の長さに応じて、適宜変更すればよく、本実施例では、剥ぐ被覆の軸方向の長さは、40mmを想定している。
【0041】
その際、図6(a)及び(b)に示すように、剥ぎ取られた被覆Gは順次、被覆剥取刃250の後方へ送り出されることになるが、被覆Gの先端H側は、後端側保持部261と先端側保持部262に挟まれて、電線Wの軸Z方向に圧縮されることなる。
【0042】
さらに、そのまま、被覆剥ぎコマ400を時計回りに回転させ、被覆剥ぎコマ400が電線Wの周囲を一周すると、図6(c)に示す状態となる。被覆剥取刃250が電線Wの周囲の被覆Gを全て剥ぎ取ったため電線Wの導線部分Fだけが残り、被覆Gは環状に剥ぎ取られて、被覆脱落防止部260内に保持されている。
【0043】
このように、本願発明の被覆剥ぎコマ400によれば、被覆脱落防止部260の後端側保持部261と先端側保持部262の間隔が、被覆剥取刃250の幅よりも狭くなっているので、被覆剥取刃250の後方へ送り出された被覆Gを圧縮して、脱落しないように保持することができる。具体的には、被覆剥取刃250で剥ぎ取られた被覆Gの幅(電線Wの軸Z方向の長さ)は、被覆剥取刃250の幅(軸Z方向の長さ)と同じになるので、当該幅より狭い間隔の後端側保持部261と先端側保持部262とで挟まれて、圧縮されることになる。したがって、剥ぎ取られた被覆Gは、図6(c)に示すように、被覆脱落防止部260内に確実に保持される。
【0044】
なお、従来のように被覆Gが螺旋上に剥ぎ取られると、圧縮方向以外に自由に伸縮できてしまい、剥ぎ取られた被覆Gは被覆脱落防止部260外へ飛び出してしまう可能性がある。しかし、本願発明の場合は、環状に剥ぎ取られた被覆Gを対象としており、環状に剥ぎ取られた被覆Gは圧縮方向以外へは伸縮し難いため、圧縮された場所に留まりやすく、被覆脱落防止部260内に保持される。そのため、一括で被覆剥ぎを行い、環状に被覆が剥ぎ取られる場合には、本願の被覆脱落防止部260の構造は簡単かつ最適な構造となる。また、剥ぎ取られた被覆Gが環状に丸まるのは、被覆脱落防止部260の働きによるものではなく、被覆Gの弾性復元力により、元の形状に戻ろうとしたためである。
【0045】
また、図6(b)に示すように、連結部210及び連結部310は、取付部234及び取付部334とは反対の先端側に位置しているが、当該配置に限定されることはなく、取付部234及び取付部334から先端までの間の任意の場所に配置しても良い。ただ、図6(b)に示しように、連結部210及び連結部310を取付部234及び取付部334とは反対の先端側に位置させることで、コマ分割体200及びコマ分割体300とが閉じて、電線Wを挟持した状態をより強力に維持できる。
【0046】
詳しく説明すると、まず、電線Wの被覆Gを被覆剥取刃250で剥離する際は、被覆剥取刃250は被覆Gから大きな抵抗力を受けるため、その抵抗力により、コマ分割体200及びコマ分割体300には、互いに開く方向へ力がかかることになる。そして、取付部234及び取付部334側は、コマフォルダ130と直接固定されているので開きにくいが、コマフォルダ130と直接固定されていない、取付部234及び取付部334の反対側の先端側ほど、コマ分割体200及びコマ分割体300が互いに開きやすくなる。
【0047】
そこで、取付部234及び取付部334とは反対の先端側に、連結部210及び連結部310を配置することで、コマ分割体200及びコマ分割体300とが閉じた状態をより強力に維持できるのである。特に、本願の被覆剥ぎコマ400では、所定の長さだけ被覆を一括で剥離するため、その剥離したい被覆の長さに応じて、被覆剥取刃250の幅が長くなる場合もある。すると、被覆を剥離する際に受ける抵抗力は、その長くなった分大きくなる。よって、このような場合に、取付部234及び取付部334とは反対の先端側に、連結部210及び連結部310を配置することが、特に有効に働くのである。
【0048】
また、図6(b)に示すように、被覆脱落防止部260の先端側保持部262は、後端側保持部261に向けて傾斜している。そして、被覆剥取刃250の後方へ順次送り出されてくる被覆Gの先端Hは、先端側保持部262の傾斜に沿って後方へ徐々に進んで行く。そのため、被覆Gの先端Hを、その傾斜に沿って、徐々にスムーズに圧縮させることができるのである。
【0049】
なお、本実施例では、後端側保持部261は被覆剥取刃250に対して略直角に立設し、先端側保持部262は被覆剥取刃250に対して傾斜するように立設することで、互いの間隔が、被覆剥取刃250の幅よりも狭くなる構造であるが、これに限定されることはなく、後端側保持部261と先端側保持部262の間隔が被覆剥取刃250の幅より狭くなることで、被覆剥取刃250と同じ幅に剥ぎ取られた被覆を圧縮して、脱落を防止できる構造であればよい。例えば、互いの間隔が被覆剥取刃250の幅より狭ければ、後端側保持部261及び先端側保持部262は互いに平行であってもよい。ただ、図6(b)に示す先端側保持部262のように傾斜していると、徐々に互いの間隔が狭くなるので、剥ぎ取られた被覆をよりスムーズに圧縮することができる。当然ながら、先端側保持部262ではなく、後端側保持部261を傾斜させてもよいし、また、先端側保持部262及び後端側保持部261の両方を互いに傾斜させてもよい。
【0050】
また、図6(b)に示すように、コマ分割体200及びコマ分割体300のそれぞれの挟持面には、複数の突条221及び突条321が、電線Wの軸Z周りの周方向に形成されている。そして、被覆Gを剥ぎ取る際は、この突条221及び突条321が被覆GのヒレKに食い込みながら、被覆剥ぎコマ400が回転するので、電線Wは被覆剥ぎコマ400の中心に強く保持される共に、被覆剥ぎコマ400が電線Wの周方向へ向けて回転する強力な推進力も発生する。
【0051】
また、剥ぎ取られた被覆Gは、その推進力により、被覆剥取刃250の後方の被覆脱落防止部260へと、強力な力で押し出されていく。さらに、突条221及び突条321は、被覆剥取刃250に直交するように配置されていることから、剥ぎ取られた被覆Gの進む向きは、この突条221及び突条321により、被覆剥取刃250の後方の被覆脱落防止部260に向けて方向付けられる。すると、被覆Gは、相対する先端側保持部262及び後端側保持部261の間に向けて強く押し出されるので、この先端側保持部262及び後端側保持部261によって効果的に圧縮されるのである。
【0052】
なお、当該効果は、被覆GのヒレKに突条221及び突条321が食い込むことで発揮されると説明しているが、被覆GにヒレKがない場合であっても、当該効果と同様の発揮は発揮される。具体的には、図6(a)に示すように、被覆剥取刃250の先端251は、挟持面220の表面から、相対する挟持面320に向けて突出しているので、被覆Gを剥ぎ取る際は、この先端251が、ヒレのない被覆Gを挟持面320に押し当てている。そのため、挟持面320の突条321が、ヒレのない被覆Gに食い込みながら、被覆剥ぎコマ400は電線Wの周方向へ向けて回転することになる。その結果、剥ぎ取られた被覆Gは、被覆脱落防止部260へと、強力な力で押し出されていく。そして、突条321は、被覆剥取刃250に直交するように配置されていることから、剥ぎ取られた被覆Gの進む向きは、被覆脱落防止部260に向けて方向付けられる。すると、被覆Gは、相対する先端側保持部262及び後端側保持部261の間に向けて強く押し出されるので、この先端側保持部262及び後端側保持部261によって効果的に圧縮されるのである。
【0053】
<変形例について>
では、次に、図7及び図8を参照して、本願発明の被覆剥ぎコマ400の変形例である被覆剥ぎコマ400Aについて説明する。なお、図7及び図8に示すように、被覆剥ぎコマ400Aは、電線WA(図8参照)の外径に合わせて、挟持面220A及び挟持面320Aの内径を小さくした点、及び、係止部材350Aを設けた点、並びに、被覆剥取刃250Aに突出部252Aを設けた点が、図3に示す被覆剥ぎコマ400とは異なるが、他の点においては、被覆剥ぎコマ400と同じ構成なので詳細な説明は省略する。なお、図8では、説明の都合上、コマフォルダ130を一点鎖線で表し、詳細な構造を省略している。
【0054】
まず、図7に示すように、被覆剥ぎコマ400Aが対象とする電線WAは、図6に示す電線Wより外径が小さいため、その外径に合わせて、電線WAをしっかりと挟持できるように、挟持面220A及び挟持面320Aの内径を小さくしている。
【0055】
また、電線WAの被覆GAを剥ぎ取る際は、図5及び図6を参照して説明したのと同様に、コマ分割体200Aとコマ分割体300Aとが開いた状態で、その開口部Oから電線WAを被覆剥ぎコマ400Aの中心に通す。ただ、電線WAは外径が小さいので、被覆剥ぎコマ400Aの中心に上手く通すことが困難な場合もある。そこで、略U字状の係止部材350Aを、挟持面320Aの両端部に設けた。そして、この係止部材350Aを電線WAに引っ掛けるようにすれば、電線WAは係止部材350Aに案内されて、被覆剥ぎコマ400Aの中心に簡単に誘導されるのである。
【0056】
次に、図8(a)に示すように、被覆剥ぎコマ400Aをコマ駆動工具100のコマフォルダ130に取付け、外部動力により、被覆剥ぎコマ400Aを時計回りに回転させる。すると、被覆剥取刃250Aの先端251Aは、電線WAの被覆GAに接触しているので、被覆剥ぎコマ400Aの回転に伴い、被覆GAを剥離していく。
【0057】
ただ、電線WAは外径が小さいので、剥ぎ取られた被覆GAの先端HA側は、被覆剥取刃250Aの先端251Aに近い位置で丸まってしまう可能性がある。すると、先端251A側で被覆GAが丸まってしまい、被覆脱落防止部260A内で、被覆GAを上手く保持できない虞がある。
【0058】
そこで、先端251Aの後方に、被覆剥取刃250Aの上面から突出する突出部252Aを設けた。すると、図8(a)に示すように、被覆GAの先端HAが突出部252Aに引っ掛かり、その突出部252Aに引っ掛かった部分を起点に、先端251Aの後方の被覆脱落防止部260A内で、被覆GAは丸まろうとする。そして、そのまま、被覆剥ぎコマ400Aを時計回りに回転させ、被覆剥ぎコマ400Aが電線WAの周囲を一周すると、図8(b)に示す状態となる。被覆剥取刃250Aが電線WAの周囲の被覆GAを全て剥ぎ取ったため、電線WAの導線部分FAだけが残り、被覆GAは環状に剥ぎ取られて、被覆脱落防止部260A内で圧縮されて保持されている。
【0059】
なお、図7(c)に示すように、被覆剥取刃250Aの突出部252Aは、被覆剥取刃250Aの全長にわたり直線状に、かつ断面略三角形状に形成されているが、これに限定されない。突出部252Aは、先端251Aの後方に設けられると共に、剥離された電線WAの先端HAが引っ掛かるように被覆剥取刃250Aの表面から突出していれば、どのような形状であってもよい。
【0060】
なお、本願発明の被覆剥ぎコマは、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8