特許第6647719号(P6647719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6647719
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】生海苔異物分離装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20200203BHJP
【FI】
   A23L17/60 103C
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-190570(P2018-190570)
(22)【出願日】2018年10月9日
【審査請求日】2019年10月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000218384
【氏名又は名称】渡邊機開工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 功
【審査官】 中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−306832(JP,A)
【文献】 特開2011−172501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
A23L 5/00−5/30
A23P 10/00−30/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物分離槽に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランスを介して吸引室に吸引することで当該クリアランスを通過できない異物を分離する処理が施された後の前記生海苔混合液を、吸引ポンプと複数の移送管とのみ合わせによって前記吸引室から次工程に移送する移送機構を備えている生海苔異物分離装置であって、
前記移送機構は、
前記生海苔異物分離装置が備えている複数の前記吸引室にそれぞれ前記吸引ポンプを介して接続されている複数の第一移送管と、
複数の前記第一移送管の下流側が合流する1本の第二移送管と、
複数の前記第一移送管の下流側と、1本の前記第二移送管の上流側との間に配備されていて、内部に、複数の前記第一移送管を流動してきた前記生海苔混合液が前記第二移送管に流入する前に一時的に滞留する収容空間部を備えている中継器と
を備えている生海苔異物分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海中から採取した海苔の原藻(生海苔)を切断し、海水と混合して得た生海苔と海水との混合液に混入している異物を分離することを目的とした生海苔の異物分離装置に関する。特に、前記のようにして異物を分離する処理が施された後の生海苔と海水との混合液を次の工程に移送する際の移送管の連結構造に改良が加えられている生海苔の異物分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食用に供される乾海苔は、海中に網を張って養殖した海苔の原藻(生海苔)を切断、洗浄、脱水、等した後、所定の形状、大きさに乾燥する、等により製造されている。
【0003】
前記の場合、養殖した海苔の原藻(生海苔)には異物(例えば、藁屑などのごみ、アミ、エビ虫、合成樹脂片、甲殻類の破片、海苔以外の海藻、など)などが付着、混入しているので、海苔の原藻(生海苔)を切断、洗浄、脱水、等するのみでは、このような異物が乾海苔に混入するおそれが高い。
【0004】
乾海苔にほんの少しの異物が混入しているだけでも商品のとしての価値が低下するため、海苔の原藻を切断、洗浄、脱水、等する生海苔(海苔の原藻)の処理工程において、大小の異物を分離・除去するようにしている。しかし、生海苔(海苔の原藻)と異物とは付着状態や、絡みつき状態などになっていることが多く、生海苔(海苔の原藻)の切断、洗浄、脱水、等のみで異物を確実に分離・除去することは容易ではない。
【0005】
そこで、異物分離槽に投入した生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液を回転させつつ、間隔が0.1mm〜0.2mm程度の狭いクリアランスを介して当該生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液を強制的に吸引し、当該クリアランスを通過する生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液から当該クリアランスを通過できない異物を分離する生海苔異物分離装置が提案されている。
【0006】
以下、本明細書において、生海苔異物分離装置による異物分離処理に供する目的で、従来公知のミンチ機などによって、50mm〜300mm程度の所定の長さ、等に細かく切断された生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液のことを生海苔混合液という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−306832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の生海苔異物分離装置においては、生海苔異物分離装置の異物分離槽に投入した生海苔混合液を前記異物分離槽の底面部に配備されている回転体を回転させることで前記異物分離槽内において回転させ、前記回転板の外周面と、前記異物分離槽の底面部に形成されている円形孔の内周面との間の、0.1mm〜0.2mm程度の間隔が狭いクリアランスを介して強制的に吸引室内に吸引し、当該クリアランスを通過する生海苔混合液から当該クリアランスを通過できない異物を分離することが行われている。
【0009】
こうして、吸引室内に吸引された異物分離処理が施された後の生海苔混合液は、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって、前記吸引室から次工程に移送されていく。
【0010】
この発明は、異物分離処理が施された生海苔混合液を吸引室から次工程に移送するにあたり、よりスムーズな移送を実現できる生海苔異物分離装置を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
異物分離槽に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランスを介して吸引室に吸引することで当該クリアランスを通過できない異物を分離する処理が施された後の前記生海苔混合液を、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって前記吸引室から次工程に移送する移送機構を備えている生海苔異物分離装置であって、
前記移送機構は、
前記生海苔異物分離装置が備えている複数の前記吸引室にそれぞれ前記吸引ポンプを介して接続されている複数の第一移送管と、
複数の前記第一移送管の下流側が合流する1本の第二移送管と、
複数の前記第一移送管の下流側と、1本の前記第二移送管の上流側との間に配備されていて、内部に、複数の前記第一移送管を流動してきた前記生海苔混合液が前記第二移送管に流入する前に一時的に滞留する収容空間部を備えている中継器と
を備えている生海苔異物分離装置。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、異物分離槽に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランスを介して吸引室に吸引することで当該クリアランスを通過できない異物を分離する処理が施された後の生海苔混合液を、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって複数の前記吸引室から次工程に移送する移送機構を備えている生海苔異物分離装置において、異物分離処理が施された生海苔混合液を前記吸引室から次工程へスムーズに移送することができる。
【0013】
これによって、異物分離槽から当該異物分離槽に接続されている複数の吸引室のそれぞれに前記クリアランスを介して生海苔混合液の強制的な吸引を行って異物分離処理を行う際に、異物分離処理を施した後の生海苔混合液の各吸引室から次工程への流動、移送にアンバランスが生じることを防止できる。
【0014】
生海苔異物分離装置の異物分離槽に接続されている複数の吸引室のそれぞれに吸引ポンプを介して接続されている第一移送管がその下流側において一本の第二移送管の上流側に合流する際、複数の第一移送管のそれぞれで移送されている生海苔混合液の流量、流速に不釣り合いがあると、流量、流速が劣っている第一移送管内における生海苔混合液の合流部への流動がスムーズに行われず、時には、当該第一移送管を介して前記吸引室への逆流が生じたり、前記吸引室内への生海苔混合液の吸引が、流量、流速が勝っている第一移送管が接続されている他の吸引室内への生海苔混合液の吸引よりも弱くなってしまうことが起こり得る。
【0015】
本発明の異物分離装置によれば、異物分離槽から当該異物分離槽に接続されている複数の吸引室のそれぞれに前記クリアランスを介して生海苔混合液の強制的な吸引を行って異物分離処理を行う際に、異物分離処理を施した後の生海苔混合液の各吸引室から次工程への流動、移送にアンバランスが生じることを防止し、良好で、効率のよい異物分離処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の生海苔異物分離装置の概略構成を説明する一部を省略した断面図。
図2図1図示の生海苔異物分離装置における異物分離槽の平面図。
図3】従来の生海苔異物分離装置に備えられていた、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって吸引室から異物分離処理が施された後の生海苔混合液を次工程に移送する移送機構の一例の構成を説明する概略構成図。
図4】本発明の一実施形態に係る生海苔異物分離装置に備えられている、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって吸引室から異物分離処理が施された後の生海苔混合液を次工程に移送する移送機構の一例の構成を説明する概略構成図。
図5図4図示の移送機構における複数の第一移送管の下流側と、1本の第二移送管の上流側との合流部の実施形態の一例を説明する概略構成図。
図6図4図示の移送機構における複数の第一移送管の下流側と、1本の第二移送管の上流側との合流部の実施形態の他の例を説明する概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態の一例を説明する。
【0018】
図1は、異物分離槽に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランスを介して吸引室に吸引することで当該クリアランスを通過できない異物を分離する処理が施された後の前記生海苔混合液を、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって前記吸引室から次工程に移送する本発明の海苔異物分離装置における移送機構が採用される従来の生海苔異物分離装置の概略構成を説明するものである。
【0019】
図2に図示されているように、周囲を隔壁8で区画されている異物分離槽2の底面10aに、円形孔4(図1)が4個形成されており、モータ49に駆動される回転軸6により回転する回転板5a、5b、5c、5d(総称して「回転板5」ということがある)が、円形孔4の内側に回転自在に遊嵌されている。回転板5は、モータ49によって回転される回転軸6の上端側にそれぞれ取り付けられている。
【0020】
円形孔4の内周壁と、これに対向する回転板5の外周壁との間に平面視で環状のクリアランス3(図1)が形成される。円形孔4の内周壁と、これに対向する回転板5の外周壁との間に形成されるクリアランス3の大きさ(サイズ)・間隔は、0.1mm〜0.2mm程度である。
【0021】
4個の円形孔の下側にはそれぞれ吸引室7a、7b、7c、7d(総称して「吸引室7」ということがある)が配備されている。異物分離槽2に4個の引室7a、7b、7c、7dが接続されている構造である。
【0022】
吸引室7a、7b、7c、7dには、それぞれ、第一移送管51a、51b、51c、51d、51eを介して吸引ポンプ50が接続されている。吸引ポンプ50としては、例えば、モノフレックスポンプを使用することができる。
【0023】
前処理工程から矢印33(図1)のように供送されてきた生海苔(海苔の原藻)と水(海水)との混合液は、ポンプ41により供送パイプ42中を矢印34のようにミンチ機43へ送られる。ミンチ機43には供送パイプ42中を移動する生海苔(海苔の原藻)と水(海水)との混合液の流れに直交するように回転切断刃が配備されており、混合液がここを通過することにより生海苔(海苔の原藻)は細かく切断される。例えば、50mm〜300mm程度の長さを有する生海苔(海苔の原藻)が、20mm〜50mm程度の長さに切断される。
【0024】
こうして細かく切断された生海苔(海苔の原藻)と水(海水)との混合液である生海苔混合液は、引き続き供送パイプ44中を矢印35のように移送され、異物分離槽2内に矢印36のように投入される。
【0025】
モータ49が駆動されて回転軸6が適宜な回転速度、例えば、200rpm〜600rpmで回転されることにより、回転板5が矢印30a、30b、30c、30d(総称して「矢印30」ということがある)方向に回転し、異物分離槽2内の生海苔混合液に対して回転力が付与される。こうして、異物分離槽2内に収容された生海苔混合液が回転板5の回転に応じて異物分離槽2内で回転する。
【0026】
同時に、吸引ポンプ50が作動して吸引を開始することにより、回転板5が回転することによって矢印30方向への回転運動を行っている生海苔混合液がクリアランス3を介して吸引室7内に強制的に吸引される。
【0027】
このようにして異物分離槽2に投入され、回転板5の回転によって回転している生海苔混合液を、微小なクリアランス3(図1)を介して強制的に吸引室7に吸引することにより、クリアランス3を通過する生海苔混合液から、クリアランス3を通過できない異物(例えば、藁屑などのごみ、アミ、エビ虫、合成樹脂片、甲殻類の破片、海苔以外の海藻、など)を分離・除去する。
【0028】
生海苔混合液がこのように回転力を受けつつ、強制的にクリアランス3を通過することにより、クリアランス3を通過する生海苔混合液からクリアランス3を通過できない異物が分離・除去されて、異物分離槽2内に残る。
【0029】
クリアランス3を介して吸引室7内に強制的に吸引された、異物分離処理が施された後の生海苔混合液は、図1図2図示の生海苔異物分離装置1では、第一移送管51a、51b、51c、51d、51eを介して、矢印37eのように吸引され、吸引ポンプ50、第一移送管38を介して、矢印61で示すように、次工程に移送されていく。
【0030】
次工程では、例えば、貯留タンク内に投入され、貯留タンク内において攪拌羽根の回転により緩徐に回転されつつ貯留タンク内に貯留されて、その後、次工程に吸引等によって移送されていくようになる。
【0031】
異物分離槽2に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランス3を介して吸引室7に吸引することでクリアランス3を通過できない異物を分離する処理が施された後の生海苔混合液を、モノフレックスポンプのような吸引ポンプ50と複数の移送管との組み合わせによって吸引室7から次工程に移送する移送機構として、従来の異物分離装置1に採用されていたものの構成は、例えば、図3に図示した構成のものであった。
【0032】
図3において上端側が異物分離槽2にそれぞれ接続されている4個の吸引室7a、7b、7c、7dにはそれぞれ吸引ポンプ50a、50b、50c、50dを介して第一移送管38a、38b、38c、38dの上流側が接続されている。
【0033】
第一移送管38aと第一移送管38bとはそれぞれの下流側において中継器52aを介して大径の第二移送管53aの上流側に接続され、第一移送管38cと第一移送管38dとはそれぞれの下流側において中継器52bを介して大径の第二移送管53bの上流側に接続されている。
【0034】
吸引室7aから吸引ポンプ50aで吸引された生海苔混合液と、吸引室7bから吸引ポンプ50bで吸引された生海苔混合液とが第一移送管38a、38bの下流側で中継器52aにて合流し、第二移送管53aを介して矢印61で示すように次工程へ移送される。
【0035】
吸引室7cから吸引ポンプ50cで吸引された生海苔混合液と、吸引室7dから吸引ポンプ50dで吸引された生海苔混合液とが第一移送管38c、38dの下流側で中継器52bにて合流し、第二移送管53bを介して矢印61で示すように次工程へ移送される。
【0036】
第一移送管38a、38b、38c、38dの内径はそれぞれ同一である。第二移送管53a、53bの内径はそれぞれ同一である。第二移送管53a、53bの内径の方が、第一移送管38a、38b、38c、38dの内径より大きくなっている。
【0037】
第一移送管38a、38bを流動してきた生海苔混合液が中継器52aで合流して大径の第二移送管53a内に流入していく。同様に、第一移送管38c、38dを流動してきた生海苔混合液が中継器52bで合流して大径の第二移送管53b内に流入していく
この際、吸引室7a、7b、7c、7dにおける生海苔混合液の状態、吸引されている状態などは、それぞれ異なる条件になっていることがある。回転板5を介して吸引室7a、7b、7c、7dの上側の異物分離槽2内に存在している生海苔混合液のそれぞれの状態などに影響を受けるためと思われる。
【0038】
このため、吸引室7a〜7dの内径、収容容積、吸引室7a〜7dの上端開口に遊嵌されている回転板5a〜5dのサイズ、回転板5a〜5dの回転速度、回転板5a〜5dの外周面と吸引室7a〜7dの上端開口内周面との間に形成されるクリアランスの大きさ、吸引ポンプ50a〜50dの吸引能力、第一移送管38a〜38dの径や長さ、等、第一移送管38a〜38dを介した生海苔混合液の移送に関する種々の条件を同一にし、吸引ポンプ50a〜50dに対して同一の吸引力で作動するように入力を行っていても、第一移送管38aを介して中継器52aに流入してくる生海苔混合液の流量、流速と、第一移送管38bを介して中継器52aに流入してくる生海苔混合液の流量、流速とが異なってしまうことが起こり得る。
【0039】
例えば、第一移送管38aを介して中継器52aに流入してくる生海苔混合液の流量、流速の方が、第一移送管38bを介して中継器52aに流入してくる生海苔混合液の流量、流速より多く、大きくなることが起こり得る。
【0040】
このような状態が生じると、第一移送管38aを介した中継器52aへの生海苔混合液の流量、流速の方が、第一移送管38bを介した中継器52aへの生海苔混合液の流量、流速より勝ってしまって、吸引室7bからの第一移送管38bを介した中継器52aへの生海苔混合液の移送がスムーズに行われないようになる。ときには、第一移送管38bを介して吸引室7bへの逆流が生じたり、吸引室7b内への生海苔混合液の吸引が、吸引室7a内への生海苔混合液の吸引よりも弱くなってしまうことが起こり得る。
【0041】
このようなアンバランスが生じることは、生海苔異物分離装置1による異物分離処理にとって望ましいものではない。
【0042】
異物分離槽2に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランス3を介して吸引室7に吸引することでクリアランス3を通過できない異物を分離する処理が施された後の生海苔混合液を、モノフレックスポンプのような吸引ポンプ50と複数の移送管との組み合わせによって吸引室7から次工程に移送する移送機構として本発明の生海苔異物分離装置に採用されるものの一例を図4に示す。
【0043】
図3図示の従来の生海苔異物分離装置に採用されていた従来の移送機構と共通する部分には共通する符号をつけてその説明を省略する。
【0044】
また、異物分離槽2に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランス3を介して吸引室7に吸引することでクリアランス3を通過できない異物を分離する処理が施された後の生海苔混合液を、モノフレックスポンプのような吸引ポンプ50と複数の移送管との組み合わせによって吸引室7から次工程に移送する移送機構として図4で説明した構造のものが採用されている以外の点における異物分離装置の構造、構成は、図1図2を用いて説明した従来の異物分離装置の構造、構成と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
図3で説明した形態と同じく、図4において上端側が異物分離槽2にそれぞれ接続されている4個の吸引室7a、7b、7c、7dにはそれぞれ吸引ポンプ50a、50b、50c、50dを介して第一移送管38a、38b、38c、38dの上流側が接続されている。
【0046】
第一移送管38aと第一移送管38bとはそれぞれの下流側において中継器62aを介して大径の第二移送管53aの上流側に接続され、第一移送管38cと第一移送管38dとはそれぞれの下流側において中継器62bを介して大径の第二移送管53bの上流側に接続されている。
【0047】
第一移送管38a、38bの下流側と第二移送管53aの上流側との位置に配備されている中継器62aは、内部に、第一移送管38a、38bを流動してきた生海苔混合液が第二移送管53aに流入する前に一時的に滞留する収容空間部62cを備えている。
【0048】
これによって、第一移送管38aを介して中継器62aに流入してくる生海苔混合液の流量、流速と、第一移送管38bを介して中継器62aに流入してくる生海苔混合液の流量、流速とが異なっている場合であっても、第一移送管38a、38bを流動してきた生海苔混合液は、第二移送管53aに流入する前に、中継器62aの内部に備えられている収容空間部62cに一時的に滞留することができる。
【0049】
そこで、第一移送管38aを介した中継器62aへの生海苔混合液の流量、流速と、第一移送管38bを介した中継器62aへの生海苔混合液の流量、流速との間で、どちらかが他方に対して勝ってしまう状態が生じてしまっていても、流量、流速が劣っている側の第一移送管内での流量、流速が、他方の第一移送管内での流量、流速との間での不均衡によってより低下してしまい、ひいては、流量、流速が劣っている側の第一移送管が接続されている吸引室に向かって逆流が発生したり、流量、流速が劣っている側の第一移送管が接続されている吸引室での吸引効率が低下してしまうような不具合が生じることが無くなる。
【0050】
図4の右側における第一移送管38c、38dの下流側と第二移送管53bの上流側との位置に配備されている中継器62bも、内部に、第一移送管38c、38dを流動してきた生海苔混合液が第二移送管53bに流入する前に一時的に滞留する収容空間部62dを備えている。
【0051】
これによって上述したのと同様の作用、効果を発揮させることができる。
【0052】
これにより、本実施形態によれば、異物分離槽2に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランス3を介して吸引室7に吸引することでクリアランス3を通過できない異物を分離する処理が施された後の生海苔混合液を、吸引ポンプ50と複数の移送管(第一移送管38a、38b、第二移送管53a)との組み合わせによって吸引室7から次工程に移送する移送機構を備えている生海苔異物分離装置において、異物分離処理が施された生海苔混合液を吸引室7から次工程にスムーズに移送することができる。
【0053】
図3で説明した従来の移送機構が採用されている従来の異物分離装置の場合、生海苔異物分離装置1の異物分離槽2に接続されている複数の吸引室7a、7b、7c、7dのそれぞれに吸引ポンプ50を介して接続されている第一移送管がその下流側において一本の第二移送管の上流側に合流する際、複数の第一移送管のそれぞれで移送されている生海苔混合液の流量、流速に不釣り合いが生じることがあった。
【0054】
これは、吸引室7のサイズ、回転板5のサイズ、クリアランスのサイズ、吸引ポンプの吸引能力、第一移送管、第二移送管のサイズ、等、生海苔混合液の移送に関する種々の条件を同一にしていても生じるものであった。回転板5を介して吸引室7a、7b、7c、7dの上側の異物分離槽2内にそれぞれ存在している生海苔混合液の状態(例えば、細かく切断された生海苔(海苔の原藻)のサイズが区々であり、生海苔混合液の中における細かく切断された生海苔(海苔の原藻)の濃度が区々であり、各回転板5の上側における生海苔混合液の流動状態も区々である、等の事情)などに影響を受けるためであると思われる。
【0055】
このような不釣り合い、アンバランスが存在していると、流量、流速が劣っている第一移送管内における生海苔混合液の合流部への流動が、流量、流速が勝っている第一移送管内における生海苔混合液の合流部への流動と比較してスムーズに行われなくなり、時には、当該第一移送管を介して前記吸引室への逆流が生じたり、前記吸引室内への生海苔混合液の吸引が、流量、流速が勝っている第一移送管が接続されている他の吸引室内への生海苔混合液の吸引よりも弱くなってしまうことが起こり得る。
【0056】
図4図示の移送機構が採用されている本発明の異物分離装置によれば、異物分離槽から当該異物分離槽に接続されている複数の吸引室のそれぞれにクリアランスを介して生海苔混合液の強制的な吸引を行って異物分離処理を行う際に、異物分離処理を施した後の生海苔混合液の各吸引室から次工程への流動、移送にアンバランスが生じることを防止し、良好で、効率のよい異物分離処理を行うことができる。
【0057】
図5は、それぞれ吸引ポンプ(不図示)を介して上端側が吸引室(不図示)に接続している第一移送管67a、67b、67c、67dの下流側が立方体形状の中継器66aを介して、第二移送管69の上流側に合流しているものである。
【0058】
第一移送管67a、67b、67c、67dはいずれも内径50mm、第二移送管69は内径65mmとし、中継器66aが内部に備えている、第一移送管67a、67b、67c、67dを流動してきた生海苔混合液が第二移送管69に流入する前に一時的に滞留する収容空間部の大きさは、75mm×75mm×75mmの立方体にすることができる。
【0059】
吸引室(不図示)からそれぞれ吸引ポンプ(不図示)を介して第一移送管67a、67b、67c、67d内を矢印68a、68b、68c、68dのように流動してくる生海苔混合液の流量、流速に相違があっても、中継器66aから第二移送管69に生海苔混合液が流入していく前に、中継器66aの内部の収容空間部で一時的な滞留が行われる。そこで、流量、流速の状態のバランスがとられ、矢印70で示す第二移送管69からの生海苔混合液の流動はスムーズになる。また、第一移送管67a、67b、67c、67dの上流側が接続されている各吸引室(不図示)に向かって逆流が生じたり、第一移送管67a、67b、67c、67dの上流側が接続されている各吸引室(不図示)での吸引状況にアンバランスが生じることを防止できる。
【0060】
図6は、それぞれ吸引ポンプ(不図示)を介して吸引室(不図示)に上流側が接続している第一移送管71a、71b、71c、71dが直方体形状の中継器66bを介して、第二移送管73の上流側に合流しているものである。
【0061】
第一移送管71a、71b、71c、71dはいずれも内径50mm、第二移送管73は内径65mmとし、中継器66bが内部に備えている、第一移送管71a、71b、71c、71dを流動してきた生海苔混合液が第二移送管73に流入する前に一時的に滞留する収容空間部の大きさは、50mm×50mm×350mmの直方体にすることができる。
【0062】
吸引室(不図示)からそれぞれ吸引ポンプ(不図示)を介して第一移送管71a、71b、71c、71d内を矢印72a、72b、72c、72dのように流動してくる生海苔混合液の流量、流速に相違があっても、中継器66bから第二移送管73に生海苔混合液が流入していく前に、中継器66bの内部の収容空間部で一時的な滞留が行われるので、流量、流速の状態のバランスがとられ、矢印74で示す第二移送管73からの生海苔混合液の流動はスムーズになる。また、第一移送管67a、67b、67c、67dの上流側が接続されている各吸引室(不図示)に向かって逆流が生じたり、第一移送管71a、71b、71c、71dの上流側が接続されている各吸引室(不図示)での吸引状況にアンバランスが生じることを防止できる。
【0063】
これによって、異物分離槽2から複数の吸引室7a、7b、7c、7dのそれぞれにクリアランス3を介して生海苔混合液の強制的な吸引を行って異物分離処理を行う際に、異物分離処理を施した後の生海苔混合液の各吸引室7a〜7dから次工程への流動、移送にアンバランスが生じたり、各吸引室7a〜7dに向かって逆流が生じたり、各吸引室7a〜7dへの吸引にアンバランスが生じることを防止し、良好で、効率のよい異物分離処理を行うことができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において、種々の形態に変更することができる。
【0065】
例えば、上記では、異物分離槽に4個の吸引室が接続されている例で説明を行ったが、異物分離槽に2個の吸引室あるいは、6個、8個の吸引室が接続されている場合であっても同様である。
【0066】
異物分離槽に接続されている複数の吸引室のそれぞれに対して吸引ポンプを介して第一移送管が接続され、この複数の第一移送管の下流側と、複数の第一移送管の下流側がその上流側に合流する1本の第二移送管との間に配備されている中継器が、内部に、複数の前記第一移送管を流動してきた前記生海苔混合液が前記第二移送管に流入する前に一時的に滞留する収容空間部を備えている構成にすることで、複数の前記第一移送管内をそれぞれ流動する生海苔混合液の流量、流速の状態のバランスをとり、流量、流速が劣っている第一移送管内における生海苔混合液の合流部への流動がスムーズに行われなくなったり、時には、当該第一移送管を介して前記吸引室への逆流が生じたり、前記吸引室内への生海苔混合液の吸引が、流量、流速が勝っている第一移送管が接続されている他の吸引室内への生海苔混合液の吸引よりも弱くなってしまうことが発生することを防止できる。
【符号の説明】
【0067】
1 生海苔異物分離装置
2 異物分離槽
3 クリアランス
5、5a、5b、5c、5d 回転板
6 回転軸
7、7a、7b、7c、7d 吸引室
38a、38b、38c、38d 第一移送管
49 モータ
51a、51b、51c、51d、51e 第一移送管
50、50a、50b、50c、50d 吸引ポンプ
52a、52b 中継器
53a、53b 第二移送管
62a、62b 中継器
62c、62d 収容空間部
【要約】
【課題】生海苔異物分離装置の異物分離槽に収容されている生海苔混合液を微小なクリアランスを介して前記異物分離槽に接続されている吸引室に吸引することで当該クリアランスを通過できない異物を分離する処理が施された後の生海苔混合液を、吸引ポンプと複数の移送管との組み合わせによって吸引室から次工程に移送する移送機構を備えている生海苔異物分離装置。異物分離処理が施された生海苔混合液を吸引室から次工程にスムーズに移送し、異物分離処理を効率的、効果的に行う。
【解決手段】移送機構は、生海苔異物分離装置が備えている複数の吸引室にそれぞれ吸引ポンプを介して接続されている複数の第一移送管と、複数の第一移送管の下流側が合流する1本の第二移送管と、複数の第一移送管の下流側と、1本の第二移送管の上流側との間に配備されていて、内部に、複数の第一移送管を流動してきた生海苔混合液が第二移送管に流入する前に一時的に滞留する収容空間部を備えている中継器とを備えている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6