(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のフロントガラスについて、車の走行中に、他の車のタイヤ等によって道路上の小石が跳ねて、車のフロントガラスやリアウィンドガラス等にあたり、これらの窓ガラスに損傷ができることがある。このフロントガラス等の損傷は、そのまま放置しておいては、自動車の運転に支障をきたし、また、損傷が広がる恐れもある。さらには、フロントガラスの損傷は、車検時に不適合になるので、一刻も早く、その補修が求められている。
【0003】
従来、自動車のフロントガラス等に損傷が生じた場合には、フロントガラス全体を交換することが行われていたが、フロントガラス全体の交換は、フロントガラスが、合わせガラスによって構成されており、高価格であった。そのため近年、損傷した部分のみを補修するガラスリペアシステムが提案されている。
【0004】
特開2000−335383号公報(特許文献1)には、ガラスリペア作業(自動車窓ガラス補修作業)に、例えば、車の所有者自らが、特に熟練を要することなしに、しかも、容易な補修作業を行うのみで、フロントガラス等の自動車窓ガラスの損傷箇所を補修可能な簡便な補修方法と、そのために用いる補修用キットを提供する技術が開示されている。
【0005】
また、特開平10−102009号公報(特許文献2)には、例えば自動車の合わせ板ガラスにひび割れが生じた場合に、そのひび割れの中に透明接着剤を注入してひび割れを補修する板ガラスのひび割れ補修方法とひび割れ補修装置に関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車のフロントガラスについては、前記特許文献1および前記特許文献2で開示されている技術によりガラスの補修を行うことができた。しかし、建物に使われる窓ガラスの表面に部分的に傷ができた場合、従来の方法では、傷を含む窓ガラス全体を交換しなくてはならず、作業コストおよび材料コストがかかるという問題があった。
【0008】
また、建物に使われる窓ガラスに加わる傷にはひび、および欠けといったものがある。従来の方法では、窓ガラス全体を交換することなく、そのようなひび、および欠けを修復することはできないという問題があった。
【0009】
さらに、仮にそのまま放置すれば、前記ガラス傷により美観が損なわれるし、さらに前記ガラス傷に誤って触れた場合に怪我の危険が発生するという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、建物に使われる窓ガラスの表面に部分的に傷ができた場合に、ガラス交換によってかかるはずだったコストを削減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0012】
本発明の一実施の形態のガラス傷の補修方法は、建物に使われる窓ガラスの表面にできた部分的な傷を修復させる方法であって、傷付近の汚れを洗浄する(a)ステップを有する。また、前記傷に光硬化樹脂を充填する(b)ステップを有する。また、充填した前記光硬化樹脂の剰余分を削り取る(c)ステップを有する。また、削り取った後のガラス表面を磨き上げる(d)ステップを有する。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態によれば、建物に使われる窓ガラスの表面に部分的に傷ができた場合に、ガラス交換によってかかるはずだったコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の全体のステップの一例を示すフロー図である。
【
図2】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の裏側に鏡を設置している様子を示す概念図である。
【
図4】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大している様子を示す概念図である。
【
図5】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大している実施例の一部を示す概念図である。
【
図6】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域に洗浄液を散布している様子を示す概念図である。
【
図7】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域に光硬化樹脂を塗布している様子を示す概念図である。
【
図8】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域にクリアフィルムを密着している様子を示す概念図である。
【
図9】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域にクリアフィルムを密着している実施例の一部を示す概念図である。
【
図10】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域に光硬化樹脂用光源を照射している様子を示す概念図である。
【
図11】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域に充填し硬化した樹脂の剰余部分を削り取る様子を示す概念図である。
【
図12】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の傷を拡大した領域に充填し硬化した樹脂の剰余部分を削り取った後に、清掃する様子を示す概念図である。
【
図13】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の削り取った後の補修領域に研磨剤を塗布している様子を示す概念図である。
【
図14】本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法の適用されるガラス表面の削り取った後の補修領域を磨き上げている様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態)
以下では、本発明の一実施の形態のガラス傷の補修方法について説明する。本実施の形態のガラス傷の補修方法は、建物に使われる窓ガラスの表面にできた部分的な傷を修復させる補修方法である。
【0018】
<鏡を設置する方法>
初めに、鏡を設置する方法について説明する。
図1は、実施の形態のガラス傷の補修方法の全体のステップの一例を示すフロー図である。
【0019】
図1に示すガラス傷の補修方法においては、まず、ガラス傷を含むガラス傷付近の裏側に鏡を設置する(
図1のステップS1)。
【0020】
このステップS1におけるガラス傷を含むガラス傷付近の裏側に鏡を設置する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図2で示すようなガラス傷に対して、
図3で示すように、鏡に備えられている吸盤をガラス表面に接着させる。このとき、補修対象となる傷およびクラックがガラスの裏側から確認できるように、鏡の反射面を、例えばガラス表面に対して平行となるように設置する。なお、設置する位置は特に限定されないが、補修対象となる傷およびクラックをガラスの裏側から確認できる範囲であればよい。また、鏡は、ガラス表面と反射面との間でなす角度が平行から垂直までの間の任意の角度で保持できるように可動させることができる。このように鏡を設置することによって、ガラスの表側からは隠れている補修対象の傷およびクラックを発見することができる。また、ガラスの裏側から補修対象の傷およびクラックを確認することができ、作業性を向上させることができる。
【0021】
<傷付近の汚れを洗浄する方法>
次に、傷付近の汚れを洗浄する方法について説明する。
図1に示すガラス傷の補修方法においては、まず、ガラス傷を含むガラス傷付近の表面を削り取ることにより、補修領域を拡大する(
図1のステップS2)。
【0022】
このステップS2におけるガラス傷付近の表面を削り取る具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図2で示すようなガラス傷に対して、
図4で示すようにガラス傷付近の表面をドリルによって削り取ることができる。また、傷によってガラス表面に突起が発生した場合についても、同様にしてドリルによって削り取ることができる。なお、ドリルに代わりサンドペーパーおよび刃物を使用してもよい。このとき、削り取る範囲は特に限定されないが、補修対象となる傷およびクラックを覆い尽くせる範囲以上であればよい。このように補修領域を拡大することによって、補修対象の傷およびクラックに混入した空気やゴミをより確実に除去させ、確実に清掃することができる。また、傷によってガラス表面に突起が発生した場合については、削り取ることによって表面付近をならすことができる。
【0023】
この削り取り方としては、特に限定されないが、例えば、
図5で示すように斜線を入れることによって格子状に削り取るか、スポット状に孔を形成するように削り取ることができる。このように削り取ることによって、ガラス表面と光硬化樹脂の密着性を高めることができ、光硬化樹脂を効率的に充填することができる。
【0024】
図1に示すガラス傷の補修方法においては、次に、補修領域に洗浄液を散布する(
図1のステップS3)。
【0025】
このステップS3における洗浄液を散布する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図6で示すように低圧の噴霧器等を用いて散布する。散布のしかたは、特に限定されないが、噴霧器を補修対象に対してやや上方に向けて、一定の強さで均一的に散布する。このようにやや上方に洗浄液を散布することで、補修領域の汚れを洗い流すことができ、より確実に補修領域を洗浄することができる。なお、散布する範囲については、特に限定されないが、例えば、補修対象の中心から2cmから7cmくらいまでの範囲に行う。このようにして傷の汚れを取り、光硬化樹脂を効率的に接着・充填することができる。
【0026】
洗浄液としては、特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコールを使用することができる。イソプロピルアルコールは揮発性が高く、消毒効果および脱脂効果を有する。イソプロピルアルコールを使用することにより、効果的に補修領域を洗浄することができる。
【0027】
<補修領域に光硬化樹脂を充填する方法>
次に、本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法として、補修領域に光硬化樹脂を充填する方法について説明する。
図1に示すガラス傷の補修方法においては、補修領域に光硬化樹脂を塗布する(
図1のステップS4)。
【0028】
このステップS4における光硬化樹脂を塗布する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図7に示すように、光硬化樹脂を補修領域に対し上方から直接に滴下することができる。
【0029】
光硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば紫外線硬化型エポキシ樹脂を使用することができる。紫外線硬化型エポキシ樹脂は硬化までの速度が速く、作業時間を短縮することができる。また、紫外線を照射しないと硬化しないため、作業工程の制約が少なくすむ。さらに、常温で硬化を行うことができ、補修対象を加熱する必要がなくてすむ。
【0030】
傷が小さい場合は、特に限定されないが、例えば傷の直径が5ミリ以下の場合は、吸引器具を使用する。これによって、光硬化樹脂を充填する場所に余分な空気やゴミが混入しないようにすることができる。
【0031】
傷およびクラックが表面から深いなどの理由により、例えば手が届かないときなどは、例えば注射器によって光硬化樹脂を塗布することができる。
【0032】
図1に示すガラス傷の補修方法においては、次に、補修領域にクリアフィルムを密着させる(
図1のステップS5)。
【0033】
このステップS5における補修領域にクリアフィルムを密着させる具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図8に示すように、光硬化樹脂を充填した補修領域の面に対しクリアフィルムを平行にして、補修領域より大きな範囲に対し直接にクリアフィルムを密着させることができる。これにより、光硬化樹脂を補修領域から外に漏らすことを防ぐことができる。また、光硬化樹脂を補修領域に保持しながら、傷およびクラックの細部まで光硬化樹脂を均一に浸透させることができる。
【0034】
また、
図9で示すように、補修領域の下方にクリアフィルムをあて、クリアフィルムの上辺に光硬化樹脂を溜め込むようにして補修領域に充填することができる。これにより、光硬化樹脂を補修領域から外に漏らすことを防ぐことができる。また、傷およびクラックに対し光硬化樹脂を均一に浸透させることができる。
【0035】
クリアフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル板を使用する。この素材としては、紫外線透過性が高いものを用いる。これにより、クリアフィルムの上から紫外線を照射させても光硬化樹脂を硬化させることができる。また、厚みは1ミリ程度の薄くて軽いものを使用する。これにより、作業工程の制約が少なくすむ。
【0036】
図1に示すガラス傷の補修方法においては、次に、補修領域に光硬化樹脂用光源を照射する(
図1のステップS6)。
【0037】
このステップS6における補修領域に光硬化樹脂用光源を照射する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図10に示すように、光硬化樹脂が充填された補修領域に対して密着させているクリアフィルムの上から、補修領域に対し直接に光硬化樹脂用光源を照射させることができる。このように照射することにより、クリアフィルムで光硬化樹脂を補修領域に保持したままで、補修領域に充填された光硬化樹脂を効果的に硬化させることができる。
【0038】
光硬化樹脂用光源は紫外線である。紫外線を照射することにより、光硬化樹脂が硬化する速度が速くなる。また、照射する時間については、特に限定されないが、例えば、1分間から光硬化樹脂が硬化するまでの間とする。
【0039】
図1に示すガラス傷の補修方法において、必要がある場合にはステップS4からステップS6を繰り返して行うことができる(
図1のステップS7)。
【0040】
必要がある場合とは、特に限定されないが、例えば、ガラス傷の損傷具合が大きく、ステップS4からステップS6を1回行っても光硬化樹脂の充填が不十分な場合である。このような場合にステップS4からステップS6を繰り返して行うことにより、より確実に補修領域に光硬化樹脂を充填することができる。
【0041】
<充填した光硬化樹脂の剰余分を削り取る方法>
次に、本発明の実施の形態のガラス傷の補修方法として、必要がある場合に、充填した光硬化樹脂の剰余分を削り取る方法について説明する(
図1のステップS8)。
【0042】
このステップS8における光硬化樹脂の剰余分を削り取る具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図11で示すように光硬化樹脂の剰余分をドリルによって削り取り遊離させることができる。また、ドリルに代わりサンドペーパーおよび刃物を使用してもよい。このように光硬化樹脂の剰余分を削り取ることによって、ガラス表面を平滑にすることができる。
【0043】
なお、本工程を行う必要がある場合とは、例えば、ステップS7までの工程を行ったあとでガラス傷付近の表面に光硬化樹脂の剰余分がはみ出たような場合および、補修領域の内に傷およびクラックが隠れていたような場合である。このような場合に光硬化樹脂の剰余分を削り取ることにより、ガラス表面を平滑にすることができる。また、補修領域の内に隠れていた傷およびクラックに、光硬化樹脂を充填することができる。
【0044】
その後、
図12で示すように前記遊離した光硬化樹脂の剰余分をさらに工具によって清掃することができる。
【0045】
なお、剰余分とは、光硬化樹脂が硬化した後でガラス傷付近の表面にはみ出た分を意味する。また、前記工具としては特に限定されないが、例えば金尺などがある。
【0046】
<削り取った後のガラス表面を磨き上げる方法>
次に、本実施の形態のガラス傷の補修方法として、削り取った後のガラス表面を磨き上げる方法について説明する。
図1に示すガラス傷の補修方法においては、前記削り取った後の補修領域に研磨剤を塗布する(
図1のステップS9)。
【0047】
このステップS9における前記削り取った後の補修領域に研磨剤を塗布する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図13で示すように研磨剤が内容された薬瓶から補修領域に対し直接に滴下することができる。また、この研磨剤としては、例えば、一般に使用される液体状の油性コンパウンドおよび水性コンパウンドを使用することができる。このようにして、脱脂および清掃を行うことができる。また、ガラス表面の汚れを効果的に落とすことができる。
【0048】
図1に示すガラス傷の補修方法においては、前記研磨剤を塗布した後に、道具によってガラス表面を磨き上げる(
図1のステップS10)。
【0049】
このステップS10における前記研磨剤を塗布した後に、道具によってガラス表面を磨き上げる具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図14で示すように道具によって補修領域を含むガラス表面を直接に磨き上げることができる。なお、道具としては例えば布巾がある。このようにしてガラス傷によって損なわれた美観を回復させることができる。
【0050】
また、前記研磨剤を塗布した後に、防汚コートを塗布することができる。防汚コートを塗布する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、
図13で示すように防汚コートが内容された薬瓶から補修領域に対し直接に滴下することができる。また、この防汚コートとしては、特に限定されないが、例えば、一般に使用されるフッ素化合物を溶剤に溶かした液体状のものを使用することができる。防汚コートは撥水性および撥油性を有するため、防汚コートを塗布することにより、汚れを付きにくくすることができる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0052】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換を行ってもよい。
【解決手段】建物に使われる窓ガラスの表面にできた部分的な傷を補修する方法であって、(a)傷付近の汚れを洗浄するステップと、(b)前記傷に光硬化樹脂を充填するステップと、(c)充填した前記光硬化樹脂の剰余分を削り取るステップと、(d)削り取った後のガラス表面を磨き上げるステップと、を含む補修方法。