特許第6647767号(P6647767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647767
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】帯電防止性樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20200203BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20200203BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20200203BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   C08L101/02
   C08K5/10
   C08K5/42
   C09K3/16 108D
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-227756(P2013-227756)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-111737(P2014-111737A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年10月28日
【審判番号】不服2018-9517(P2018-9517/J1)
【審判請求日】2018年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-243405(P2012-243405)
(32)【優先日】2012年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 文子
(72)【発明者】
【氏名】林 虎雄
【合議体】
【審判長】 近野 光知
【審判官】 大▲わき▼ 弘子
【審判官】 佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−067275(JP,A)
【文献】 特開2010−150396(JP,A)
【文献】 特開2010−070678(JP,A)
【文献】 特開2010−065217(JP,A)
【文献】 特開2010−189489(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128597(WO,A1)
【文献】 特開2005−306937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/16
C09D1/00-201/10
C09J1/00-201/10
CA(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)含フッ素イミド化合物のアルカリ金属塩と、(B)カルボキシル基、リン酸基、およびスルホン酸基から選ばれる酸性官能基を有し、酸価が20〜60mgKOH/gの樹脂(水酸基含有モノマー構成単位を含むものを除く)と、該(B)成分と架橋する(C)架橋剤と、を少なくとも含み、
前記酸性官能基の量(前記(C)成分との架橋反応での使用分を除く)が、前記(A)成分1モルに対し、1.2〜7.0モルとなるように、前記(B)成分を配合したことを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(D)下記一般式(1)で表わされる化合物が含まれることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Xは炭素数1〜9の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、芳香族を含む2価の炭化水素基、または2価の脂環式炭化水素基、Aは同一または異なり、炭素数2〜4のアルキレン基、Rは同一または異なり、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基を示し、nは同一または異なり、1〜7の整数である。)
【請求項3】
前記(D)成分が前記(A)成分100質量部あたり、200〜1000質量部の範囲で含まれることを特徴とする請求項2記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の帯電防止性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性樹脂組成物及びこれらを用いた成形品に関する。より詳細には、帯電防止剤のブリードアウトを防止することにより、被着体と接触した際の被着体の汚染を防止することを可能とする帯電防止性樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に高分子材料は、電気絶縁性に優れているため帯電しやすく、それを用いた加工品に埃が付着し外観を損ねるとともにフィルム、繊維などの製造時には静電気による様々な問題が生じる場合がある。また、電気製品に用いられる場合は、蓄積した静電気により誤動作を引き起こす場合や、部品の破損などが生じる場合がある。
【0003】
従来、これらの欠点を解決する手段としてアニオン、カチオン、ノニオン等種々の界面活性剤を添加する方法、金属過酸化物を添加する方法が提案されている。しかしながら界面活性剤を添加する方法は、成形品製造直後の短期間における帯電防止性には優れるが、成形品表面にブリードアウトした界面活性剤が摩擦、水洗等によって失われてしまうために長期に渡って帯電防止性を維持することが困難であるという欠点を有している。一方、金属過酸化物を使用した場合にも、成形品表面にブリードアウトする場合があり、この成形品を組み入れた製品の腐食を引き起こすという欠点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−278400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このブリードアウトの現象については、光学部材の外周部を「ベゼル」と呼ばれるステンレス、アルミ等の金属製の固定枠で固定された液晶モジュールに使用する粘着シート、電子部品が実装されたフレキシブルプリント基板(FPC)を保管・搬送させる際にこの電子部品表面の保護やFPCの傷つき防止を目的とした保護フィルム、FPC製造工程における裏打ち用シート、半導体ウェハの切断工程、及び積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程における仮止めシート等、電気・電子業界において広く用いられている再剥離粘着シートにおいても大きな問題となっている。
【0006】
なぜなら、再剥離粘着シートを、ベゼルに用いた場合は腐食によりベゼルが変質したり、電子部品が実装されたFPCの搬送や、表面の保護用フィルムとして用いた場合には、基板中の銅等の導電体により形成された回路面や端子めっきによる金メッキ処理面等(以下、金属類と呼ぶことがある)と粘着剤層面が接触することにより、前記回路面等の表面を汚染したり腐食したりして接続信頼性が大幅に低下するからである。
【0007】
このため、金属類に粘着面が直接接触しても腐食の発生がなく、帯電防止性の優れた帯電防止性粘着剤組成物及びこれを利用した粘着シートが提案されている(例えば、特開2005−306937号公報で開示)。
【0008】
しかしながら、特開2005−306937号公報で開示された粘着シートは、アルミ箔に対する腐食を防止することはできるが、金属類、特に金めっき処理面に対する変色や腐食防止といった点ではいまだ不十分であった。
【0009】
本発明は、上述した従来の帯電防止剤が有する欠点を克服し、帯電防止剤のブリードアウトによる被着体への汚染のない帯電防止性樹脂組成物及び成形品を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意検討した結果、特定のアルカリ金属塩と当該アルカリ金属塩と分子間相互作用を及ぼす官能基を有する樹脂からなる帯電防止性樹脂組成物を用いることにより、表面に帯電防止剤がブリードアウトしない帯電防止性樹脂組成物及び成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す構成の帯電防止性樹脂組成物及びこれらを用いた成形品を提供するものである。
【0012】
[1](A)含フッ素イミド化合物のアルカリ金属塩、(B)前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を有する樹脂からなり、前記(B)成分は前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を前記(A)成分1モルに対し1.2〜7.0モル含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。
【0013】
[2]また、(A)含フッ素イミド化合物のアルカリ金属塩、(B)前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を有する樹脂及び(C)架橋剤からなり、前記(B)成分は、前記(C)成分と架橋後、前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を前記(A)成分1モルに対し1.2〜7.0モル含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。
【0014】
[3]更に、(D)下記一般式(1)で表わされる化合物が含まれることを特徴とする[1]又は[2]に記載の帯電防止性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Xは炭素数1〜9の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、芳香族を含む2価の炭化水素基、または2価の脂環式炭化水素基、Aは同一または異なり、炭素数2〜4のアルキレン基、Rは同一または異なり、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基を示し、nは同一または異なり、1〜7の整数である。)
【0015】
[4]前記(D)成分が前記(A)成分100質量部あたり、200〜1000質量部の範囲で含まれることを特徴とする[1]から[3]いずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物。
【0016】
[5][1]から[4]いずれかに記載の帯電防止性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【発明の効果】
【0017】
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、樹脂表面にブリードアウトすることがないものであり、本発明の帯電防止性樹脂組成物及び成形品は、表面がべたつくこともなく被着体を汚染しないものとすることができる。このため、電子部品が実装されたFPCの搬送や、表面の保護用フィルムとして用いた場合にも、金属類、特に金めっき処理面を汚染したり、腐食することがない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の帯電防止性樹脂組成物及び成形品の各形態について具体的に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
【0019】
[帯電防止性樹脂組成物]
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、(A)含フッ素イミド化合物のアルカリ金属塩、(B)前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を有する樹脂からなるものである。各成分について以下に詳細に説明する。
【0020】
<(A)成分>
本発明に用いられる(A)含フッ素イミド化合物のアルカリ金属塩として具体的には、LiN(CF3SO22、KN(CF3SO22、NaN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(C49SO2)(CF3SO2)、LiN(C817SO2)(CF3SO2)、LiN(CF3CH2OSO22、LiN(CF3CF2CH2OSO22、LiN(HCF2CF2CH2OSO22、LiN((CF32CHOSO22等をあげることができる。イオン半径が小さいためリチウム塩を使用したものが好ましく、その中でもフルオロアルキル基の炭素数が1〜4である含フッ素イミド化合物のリチウム塩が特に好ましい。これらの含フッ素イミド化合物のアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
<(B)成分>
本発明に用いられる(B)成分としては、前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を有する樹脂であれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂等の各種の樹脂が包含され特に制限されず使用することができる。よって、(B)成分は(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基と(A)成分と分子間相互作用を及ぼさない官能基の両方を有するものであっても良い。ここで、前記(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基としては、具体的にはカルボキシル基、リン酸基、水酸基、エチレンオキサイド基等の弱酸性官能基、スルホン酸基等の強酸性官能基等をあげることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂等をあげることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をあげることができる。感光性樹脂としては、光分解型、光二量化型、光重合型、光硬化型等の各種のものをあげることができる。これらの官能基や樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。なお、(メタ)アクリル系樹脂はアクリル樹脂又はメタクリル樹脂のことを意味する。また、(A)成分と分子間相互作用を及ぼさない官能基としては、ハロゲン基等があげられる。
【0022】
(メタ)アクリル系樹脂の場合、前記カルボキシル基が含まれる単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸カルボキシエチル、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ブチル等をあげることができる。
【0023】
前記水酸基が含まれる単量体としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、アクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、メタクリル酸8‐ヒドロキシオクチル、アクリル酸10−ヒドロキシデシル、メタクリル酸10−ヒドロキシデシル、アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、メタクリル酸12−ヒドロキシラウリル、アクリル酸(4−ヒドロキシメチルヘキシル)−メチル、アクリル酸クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸クロロ−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジエチレングリコール、メタクリル酸ジエチレングリコール、カプロラクトン変性アクリル酸類、カプロラクトン変性メタクリル酸類、ポリエチレングリコールアクリル酸類、ポリエチレングリコールメタクリル酸類、ポリプロピレングリコールアクリル酸類、ポリプロピレングリコールメタクリル酸類等をあげることができる。
【0024】
前記スルホン酸基が含まれる単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等をあげることができる。
【0025】
(メタ)アクリル系樹脂は前記したカルボキシル基、水酸基及びスルホン酸基を有する単量体と共重合可能な単量体を共重合させることにより製造することができる。前記共重合可能な単量体として(メタ)アクリル酸アルキルエステルをあげることができる。具体的には(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、2エチルヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、オクチルエステル等をあげることができる。
【0026】
(メタ)アクリル系樹脂は、前記(A)成分と反応し得る官能基を有する単量体と前記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる共重合体をあげることができるが、これらに加えて任意的な他の単量体成分からなる共重合体とすることもできる。任意的な他の単量体成分としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル及びN−ビニルピロリドン等をあげることができる。その使用量は単量体全量に対して0〜30質量%、好ましくは0〜10質量%の範囲で用いられる。これらを使用することにより凝集力を所望の範囲内に制御しやすくなるからである。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂は、前記の単量体成分をラジカル共重合させることによって得ることができる。この場合の共重合法としては、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、光重合法等通常用いられている公知の共重合法の中から任意に選ぶことができる。
【0028】
帯電防止性樹脂組成物における(B)成分の(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基量は、未結合の状態で前記(A)成分1モル当たり1.2〜7.0モルの範囲で含まれている必要がある。1.2モル未満であると(A)成分と相互作用をする割合が少ないために(A)成分のブリードアウトを抑止する効果が低下するからである。7.0モルを超える場合には、前記(A)成分と(B)成分総量に対する(A)成分の比率が低くなり帯電防止効果が低下する場合があるからである。ブリードアウトの抑止効果と帯電防止性の観点から好ましい範囲は、2.2〜5.0モルであり、特に好ましい範囲は、2.5〜3.5モルである。
【0029】
<(C)成分>
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、更に(C)成分として架橋剤を含有させることが好ましい。(C)成分を含有させることにより、帯電防止性樹脂組成物の凝集力を調整しやすくすることができる。
【0030】
また、架橋剤は、上述した(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基、(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼさない官能基及び後述する所望により添加される(B)成分に該当しない樹脂の有する官能基に応じて適宜選択することができるが、(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基と架橋反応する架橋剤を選択することが好ましい。架橋剤を(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基と架橋反応させることにより、(B)成分における(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基を所望の量に調整しやすくすることができる。このように架橋剤を(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基と架橋反応させる場合には、架橋剤によって当該(B)成分の官能基が架橋反応に使われてしまうため、(B)成分は、架橋後の(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基が前記(A)成分1モルに対し1.2〜7.0モル含有するものでなくてはならない。
【0031】
例えば、(B)成分の有する(A)成分と相互作用を及ぼす官能基がカルボキシル基である場合、架橋剤としてイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物等をあげることができる。また、(B)成分の有する(A)成分と相互作用を及ぼす官能基が水酸基である場合は、架橋剤としてアミノ化合物、イソシアネート化合物等をあげることができる。これらの化合物等は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
イソシアネート化合物としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)等のイソシアネート付加物等をあげることができる。
【0033】
エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD−X、三菱ガス化学社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名:TETRAD−C、三菱ガス化学社製)等をあげることができる。
【0034】
メラミン系樹脂としては、具体的にはヘキサメチロールメラミン等をあげることができる。アジリジン誘導体としては、具体的には、市販品としての商品名:HDU(相互薬工社製)、商品名:TAZM(相互薬工社製)、商品名:TAZO(相互薬工社製)等をあげることができる。
【0035】
金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケル等、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチル等をあげることができる。
【0036】
架橋剤の配合量は、凝集力や架橋後の(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基の量が所望のものとなるように調整すればよく、特に制限されるものではない。ただし、帯電防止性樹脂組成物中に架橋剤と反応する官能基が(B)成分の有する(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基のみである場合には、架橋剤の配合量は、(B)成分の0.2〜0.8当量、さらには0.3〜0.7当量とすることが好ましい。0.2当量以上とすることにより凝集力を向上させやすくすることができ、0.8当量以下とすることにより(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基の量を十分に確保しやすくすることができる。(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基の量を確保することにより、帯電防止剤のブリードアウトを防止することができる。
【0037】
<(D)成分>
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、更に(D)成分として下記一般式(1)で表わされる化合物(相溶化剤)を加えることが好ましい。(D)成分を含有させることにより、上述した(A)成分の溶解性、解離安定性を向上させることができるため、更に帯電防止性を向上させることができる。
【0038】
【化1】
【0039】
(式中、Xは炭素数1〜9の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、芳香族を含む2価の炭化水素基、または2価の脂環式炭化水素基、Aは同一または異なり、炭素数2〜4のアルキレン基、Rは同一または異なり、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基を示し、nは同一または異なり、1〜7の整数である。)
【0040】
前記(D)成分は、例えば、炭素数1〜9の直鎖、または分岐脂肪族アルコールに、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを1〜7モル付加して得られるアルコールと、二塩基酸とを原料として、一般的なエステル化合物の製造方法によって製造することができる。具体的には、上記アルコールと上記二塩基酸とを、酸触媒を用いて、温度120〜210℃で20〜22時間反応させることにより製造される。
【0041】
ここで、上記アルコールの例としては、プロパノールにエチレンオキシド1〜7モルまたはプロピレンオキシド1〜4モルまたはブチレンオキシド1〜3モル、ブタノールにエチレンオキシド1〜6モルまたはプロピレンオキシド1〜3モル、ヘキサノールにエチレンオキシド1〜2モル、ペンタノールにエチレンオキシド1〜5モルまたはプロピレンオキシド1〜3モルまたはブチレンオキシド1〜2モル、ノナノールにエチレンオキシド1〜4モルまたはプロピレンオキシド1〜2モルまたはブチレンオキシド1〜2モルを付加させたヒドロキシル化合物をあげることができる。
【0042】
なお、これらの化合物の中で、ブタノール1モルにエチレンオキシド2モルを付加させた2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、およびブタノール1モルにエチレンオキシド1モルを付加させた2−ブトキシエタノールをエステル部位とする化合物が、前記(A)成分を溶解する溶解性が特に良い。前記一般式(1)に係わる二塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのカルボン酸およびこれらのカルボン酸無水物などをあげることができる。
【0043】
前記(D)成分として、更に好ましくは、前記一般式(1)において、Rが末端にヒドロキシル基を有さないアルキル基であるものであり、特に好ましくは、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、フタル酸ビス(2−ブトキシエチル)である。
【0044】
前記(D)成分の配合量は、前記(B)成分及び後述する所望により添加される(B)成分に該当しない樹脂の総量100質量部に対し、10〜100質量部の範囲であることが好ましい。10質量部以上とすることにより、剥離帯電防止性を向上させることができ、100質量部以下とすることによりこの成分自身が可塑剤としても寄与することから後述する帯電防止性樹脂組成物や成形品に加工した際に物理的特性を維持させやすいからである。剥離帯電防止性と物理的特性低下防止の観点から好ましくは10〜50質量部の範囲である。
【0045】
また、前記(D)成分の配合量は、前記(A)成分100質量部に対し、200〜1000質量部の範囲であることが好ましい。200質量部以上とすることにより、(D)成分の解離安定性と剥離帯電防止性を向上させることができ、1000質量部以下とすることにより帯電防止性樹脂組成物及び後述する成形品に加工した際の取り扱い性を満足させることができる。解離安定性と取り扱い性の観点から特に好ましくは400〜1000質量部の範囲である。
【0046】
前記(D)成分は、上述したように合成したものを用いることもできるが、市販品を使用することもできる。市販品としてはBXA−N(大八化学工業社製)等をあげることができる。更に前記(A)成分と前記(D)成分を混合した市販品を使用することもできる。具体的には、商品名:0862−20R(三光化学工業社製)等をあげることができる。
【0047】
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、上述した帯電防止性樹脂組成物に加えて、(B)成分に該当しない樹脂や、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、粘着付与樹脂、架橋促進剤、安定剤、着色剤、導電剤、可塑剤、金属酸化物、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、補強剤、滑剤、発泡剤、耐候(光)剤、金属粉等の添加剤を適宜含有させることができる。
【0048】
ここで(B)成分に該当しない樹脂とは、(B)成分以外の樹脂であれば全て当てはまるものであり、官能基を有していない樹脂や(A)成分と分子間相互作用を及ぼさない官能基のみを有する樹脂をあげることができ、前記(B)成分と相溶するものであれば特に制限なく使用することができる。
【0049】
[成形品]
本発明の成形品は本発明の帯電防止性樹脂組成物を成形してなるものである。この場合、帯電防止性樹脂組成物は、固体状又は液体状のいずれでもよく、その特性に応じて、各種の成形方法を採用することができる。このような成形方法には、例えば、トランスファー成形、射出成形、インモールド成形、押出成形、注型成形、圧縮成形、ディッピング成形等シート成形、フィルム成形、真空成形等を利用することができる。この成形品は、その表面に帯電防止剤がブリードアウトすることがないのでベタツキもなく、機械的物性の低下もなく、帯電防止性が有効に発揮される。
【0050】
本発明の成形品として、具体的には、プリンター、パソコン、キーボード、スマートフォン、電話機、複写機、FAX、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務機器、OA機器、電子レンジ、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器;TV、ビデオカメラ、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器;コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、半導体封止材料、LED封止材料、プリント基板、電線、ケーブル、トランス、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器;粘着剤、粘着シート、ボトル、食品用容器、食品包装用フィルム、製品包装フィルム、農業用フィルム、農業用シート等に用いることができる。
【0051】
本発明の成形品に対する帯電防止性に関する評価方法は、その使用用途に応じて適宜選択することができる。長期に渡る帯電防止性を評価する場合には、表面抵抗率や半減期を測定すればよく、電子部品が実装されたFPC等の搬送用、保護用フィルムである場合には、摩擦帯電圧や剥離帯電圧を測定することにより、帯電防止性を評価することが可能である。
【0052】
本発明の成形品の一態様として、上述したように帯電防止性粘着シート(以下、単に粘着シートという場合がある)をあげることができる。このような帯電防止性粘着シートは、基材の少なくとも一方の面に、本発明の帯電防止性樹脂組成物又は帯電防止性樹脂組成物が含まれる粘着剤組成物を帯電防止性樹脂層(以下、単に粘着剤層という場合がある)として設けたものである
【0053】
粘着シートはその構成要素として、基材と、粘着剤層とを備える。以下、構成要素ごとに説明する。
【0054】
<基材>
本発明でいう基材とは、粘着剤層を支持するための部材であって、フィルム状ないしシート状を呈するものである。本発明でいうフィルム状ないしシート状とは、厚さ4〜250μm程度のものをいう。
【0055】
基材の構成材料については特に限定されず、従来、粘・接着シート用の基材として用いられてきた材料の中から、シートの用途に応じて適宜選択することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、若しくはポリスルホン等の合成樹脂、不織布、織布、紙、ガラス、金属又はセラミック等の中から選択することができる。なお、基材は透明であっても、着色したものであってもよい。着色は、基材の構成材料に各種顔料や染料を配合する方法等により行うことができる。また、基材の表面は平滑であるものに限定されず、その表面がマット状に加工されているもの、プライマー処理されているもの、難燃処理されているものであってもよい。
【0056】
当該構成材料中に、従来公知の添加剤、具体的には、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤等が含まれるものであってもよい。また、後述する粘着剤層との密着性を向上させることを目的として、表面処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理・グロー放電処理等の放電処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理・電子線処理・放射線処理等の電離活性線処理、サンドマット処理・アンカー処理・ヘアライン処理、エンボス加工等の粗面化処理、化学薬品処理、易接着層塗布処理等をあげることができる。
【0057】
<粘着剤層(帯電防止性樹脂層)>
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、2〜100μmとすることが好ましく、5〜60μmとすることが更に好ましく、7〜50μmとすることが特に好ましい。粘着剤層の厚さを2μm以上とすることに被着体に対する十分な粘着力がより得られやすくなり、100μm以下とすることに経済性、生産性がより向上しやすくなる。
【0058】
粘着剤層は、例えば、上述した樹脂組成物を適当な溶剤に溶解し、或いは分散させて、固形分濃度を20〜50質量%程度の粘着剤層用塗工液とし、この粘着剤層用塗工液を常法に従って、基材の少なくとも一方の面を被覆するように塗布し、これを乾燥し、必要に応じてエイジングすることにより得ることができる。
【0059】
この際、粘着剤層用塗工液には、従来慣用されている各種添加剤、例えば、粘着付与樹脂、架橋剤、架橋促進剤、酸化防止剤、安定剤、粘度調整剤又は有機ないしは無機の充填剤等を添加してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤等を、有機充填剤としては、アクリル系ないしウレタン系の球状微粒子等を、無機充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ等を好適に用いることができる。
【0060】
塗布の方法については特に制限はなく、ワイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等を用いた従来公知の塗布方法を利用することができる。なお、粘着剤層の形成には塗工液を基材に直接塗布、または離型性を有するフィルムに塗布後基材に転写しても良い。また基材や離型性を有するフィルム(以下、基材等という場合がある)の面には、必要に応じて予め表面処理を施しておいてもよい。
【0061】
乾燥方法についても特に制限はなく、熱風乾燥、減圧乾燥等の従来公知の乾燥方法を利用することができる。乾燥条件については、ベースポリマーの種類や塗工液で使用した溶剤の種類、粘着剤層の膜厚等に応じて適宜設定すればよいが、60〜180℃程度の温度で乾燥を行うことが一般的である。この加熱により原料組成物を架橋させることができる。
【0062】
なお、粘着剤層中に残存する揮発分の量(以下、「残存揮発分量」と記す)によっては、粘着剤層と基材等との密着性や冷却後の剥離性に悪影響を及ぼす場合がある。従って、粘着剤層中の残存揮発分量は、4質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることが更に好ましい。なお、所望とする残存揮発分量とするためには、粘着剤層形成塗工液を調製するための溶剤の量や、塗工後の乾燥時間等を調整すればよい。
【0063】
粘着剤層のガラス転移温度(Tg)は、−60〜0℃の範囲に有することが好ましい。ガラス転移温度が0℃以下とすることにより、粘着シートに加工した際に室温付近において被着体と十分な密着力を得ることができ、ガラス転移温度が−60℃以上とすることにより高温使用時でも糊残りを生じない帯電防止性樹脂組成物とすることができる。粘着力の低下と金めっき処理面の汚染防止との観点からは、ガラス転移温度(Tg)は、−60℃〜−10℃であることが特に好ましい。
【0064】
粘着シートの耐湿性試験後及び耐熱性試験後における変色度(ΔE)は1.5以下であることが好ましい。変色度(ΔE)が1.5を超えた場合には被着体の表面を汚染、又は腐食するので被着体がFPCである場合には接続信頼性等が大幅に低下することにつながるからである。なお、耐湿性試験及び耐熱性試験の方法及び変色度(ΔE)の測定方法については後述する。
【0065】
粘着シートをFPC等の搬送用、保護用フィルムとして用いる再剥離性シートとして使用する場合には、求められる特性として、粘着力、剥離帯電防止性、糊残り防止性をあげることができる。前記再剥離性シートの金めっきシートに対する粘着力は耐湿性試験後において0.02〜2.0N/25mmの範囲であることが好ましい。0.02N/25mm以上とすることにより金めっきシートと粘着シートの密着性をより十分なものとすることができ、2.0N/25mm以下とすることにより、金めっきシートから本発明の粘着シートをダメージなく容易に剥離することができる。金めっきシートに対する密着性と剥離性との観点から0.03〜1.0N/25mmであることが特に好ましい。
【0066】
前記再剥離性シートのポリイミドに対する剥離帯電圧は0.2kV以下であることが好ましく、0.1kV以下であることが更に好ましい。0.2kVを超えた場合には蓄積した静電気により、基板に設置された電子部品の誤作動を起こす場合や静電破壊を引き起こすことがあるからである。
【0067】
前記再剥離シートの糊残りを防止するためには、本発明の帯電防止性樹脂組成物の25℃における引張弾性率が105〜109Paの範囲であることが好ましい。
【0068】
以上のような本発明の帯電防止性樹脂組成物は、樹脂表面にブリードアウトすることがないものであり、本発明の帯電防止性樹脂組成物及び成形品は、表面がべたつくこともなく被着体を汚染しないものである。このため特に、電子部品が実装されたFPCの搬送や、表面の保護用フィルムとして用いた場合には、金属類、特に金めっき処理面を汚染したり腐食することがないため、このような用途に用いる粘着シートとして、本発明技術は有用である。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の帯電防止剤、帯電防止性樹脂組成物及び成形品につき実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り質量基準である。
【0070】
実施例及び比較例の成形品について、帯電防止剤の耐ブリードアウト性について、耐湿性試験及び耐熱性試験を行い以下の方法により測定又は評価した。また剥離帯電圧を以下の方法により測定した。
【0071】
[耐ブリードアウト性]
<試験片の作製>
50mm×50mmサイズの金めっきシート(金めっき面:CCLの銅表面にNi層を3μm、金めっき層を0.1μm、がこの順で積層されているもの、表面粗さRa=0.48μm)に、40mm×40mmのサイズに切り出した各例の成形品(粘着シート)を粘着剤層側が金めっきシートの金めっき面と接触するように載せ、試験片とした。
【0072】
<耐湿性試験(目視)>
上記試験片について、温度40℃、湿度90%R.H.の恒温恒湿槽に24時間入れ耐湿性試験を行った。試験終了後、金めっきシートから各例の成形品(粘着シート)を剥離し、金めっきシートの状態を目視にて観察した。評価は、帯電防止剤の金めっきシートへの移行が全く見られないものを◎、帯電防止剤の金めっきシートへの移行が金めっきシート貼り合わせ面の外側端部に見られるものを○、帯電防止剤の金めっきシートへの移行がシートの全面に見られるものを×とした。
【0073】
<耐湿性試験(変色度ΔE)>
上記試験片について、上述した耐湿性試験を行う前に、予め、金めっきシートの帯電防止性樹脂層(粘着剤層)と接触する面について、L***表色系による明度指数、クロマティネクス指数を分光測色計(SPECTROPHOTOMETER CM−5:コニカミノルタ社製)を用いて測定した。次いで、上記耐湿性試験後の金めっきシートの帯電防止性樹脂層(粘着剤層)と接触した面について、上記と同様にしてL***表色系による明度指数、クロマティネクス指数を測定した。次いで、金めっき処理面の変色度をJIS Z8730に規定するL***表色系による色差に準拠して算出した。
【0074】
<耐熱性試験(変色度ΔE)>
耐熱性試験を行う試験片について、当該試験を行う前に、予め、金めっきシートの帯電防止性樹脂層(粘着剤層)と接触する面について、上記耐湿性試験(変色度ΔE)と同様にしてL***表色系による明度指数、クロマティネクス指数を測定した。次に、上記試験片について、温度85℃のオーブンに24時間入れ耐熱性試験を行い、金めっきシートの帯電防止性樹脂層(粘着剤層)と接触した面について、上記と同様にしてL***表色系による明度指数、クロマティネクス指数を測定し、変色度を算出した。
【0075】
[剥離帯電圧]
25mm×300mmサイズのCCLのポリイミド面に、各例の成形品(粘着シート、25mm×250mm)を貼り合わせ、温度25℃、湿度50%R.H.(恒温恒湿槽)の環境下で、この成形品を100mm/secの速度で剥離した際のポリイミド面側の剥離帯電圧をハンディ型静電気測定器(商品名:FMX−003、シムコ製、除電用イオナイザー使用)を用いて測定した。
【0076】
[剥離力]
ポリイミドフィルム(商品名:カプトン100V、東レ・デュポン社製、厚さ25μm)の表面に、25mm×250mmサイズに切った各例の成形品(粘着シート)を貼付し、温度23℃、湿度65%R.H.の環境下に0.5時間放置した後、同じ環境化で180°剥離力を測定した。
【0077】
[糊残り]
上記剥離力の測定を行った後、ポリイミドフィルムの表面の糊残りの状態を目視で観察し、付着物または帯電防止性樹脂層(粘着剤層)の転写が全くないものを○、付着物または帯電防止性樹脂層(粘着剤層)の転写が見られるものを×として評価した。
【0078】
実施例及び比較例で用いた(A)成分、(B)成分、(C)成分及びその他の成分は以下のとおりである。
【0079】
(A1)成分:LiN(CF3SO22(商品名:EF−N115、三菱マテリアル電子化成社製)
【0080】
(A2)成分:LiN(C25SO22(試薬、キシダ化学製)
【0081】
(B1)成分:アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体(質量平均分子量51万、酸価46mgKOH/g、ガラス転移温度−31℃)
【0082】
(B2)成分:アクリル酸ブチルとアクリル酸との重合体(質量平均分子量58万、酸価60mgKOH/g、ガラス転移温度−24℃)
【0083】
(B3)成分:アクリル酸ブチル、アクリル酸、アクリル酸エチルとの共重合体(質量平均分子量30万、酸価40mgKOH/g、ガラス転移温度13℃)
【0084】
(B4)成分:アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸、酢酸ビニルとの共重合体(質量平均分子量27.6万、酸価20mgKOH/g、ガラス転移温度−22℃)
【0085】
(C)成分:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD−X、エポキシ当量100、三菱ガス化学社製)
【0086】
(D)成分:アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(商品名:BXA−N、大八化学社製)
【0087】
架橋促進剤:ジブチルチンジラウレートのメチルイソブチルケトン1%溶液
【0088】
(D)成分に該当しない相溶化剤:トリエチレングリコールジメチルエーテル
【0089】
含フッ素イミド化合物ではないアルカリ金属塩:過塩素酸リチウム
【0090】
界面活性剤系の帯電防止剤:4級アンモニウム塩含有アクリルポリマー(商品名:エレコンドPQ−50B、綜研化学社製)
【0091】
[(A)成分と分子間相互作用を及ぼす(B)成分の官能基の量]
JIS K2501に準拠する方法により、実施例及び比較例の帯電防止性樹脂層(粘着剤層)の酸価を測定した。次いで、式(2)に基づき、(A)成分と分子間相互作用を及ぼす(B)成分の官能基の量として、(A)成分1モルに対する(B)成分の官能基の量(モル)を算出した。
【0092】
[実施例及び比較例の帯電防止性樹脂層(粘着剤層)の酸価]をa、[水酸化カリウムの分子量]をb、[(B)成分及び(B)成分に該当しない樹脂の総量100質量部あたりの(A)成分の配合量]をc、[(A)成分の分子量]をd、としたとき、式(2)は以下のとおりである。
a/b×100/c×d・・・・(2)
なお、式(2)のa値は、1から架橋度を減じた値を(B)成分の酸価に乗じることで算出される値である(a=(B)成分の酸価×(1−架橋度))。
また、a値算出に用いる架橋度は、(B)成分の酸価でb値を除した値で、(B)成分の配合量に(C)成分のエポキシ当量を乗じた値を除し、これにより算出される値で、さらに(C)成分の配合量を除することで算出される値である(架橋度=(C)成分の配合量/(((B)成分の配合量×(C)成分のエポキシ当量)/(b/(B)成分の酸価)))。
【0093】
実施例及び比較例の帯電防止性樹脂組成物及び成形品を以下のように作製した。
【0094】
[実施例1]
表1に示すように、(A1)4質量部、(B1)100質量部、架橋剤3.7質量部及び架橋促進剤1質量部からなる組成の帯電防止性樹脂組成物に、メチルイソブチルケトンを加え、撹拌、混合することにより固形分が18%の帯電防止性樹脂層用塗工液を調製した。
次に、この塗工液を、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、ベーカー式アプリケーターを用いて塗布し、140℃で2分乾燥することにより膜厚15μmの帯電防止性樹脂層(粘着剤層)を形成した。この帯電防止性樹脂層の表面に厚さ50μmの剥離フィルム(未処理ポリエチレンフィルム)を貼着し、40℃で2日間養生することにより実施例1の成形品(帯電防止性粘着シート)を作製した。実施例1の成形品を用いて、上述した評価方法により評価した結果を表1に示す。
【0095】
[実施例2〜12、比較例1〜3]
表1〜4に示す組成の帯電防止性樹脂組成物をそれぞれ用い、実施例1と同様にして実施例及び比較例の成形品(帯電防止性粘着シート)を作製した。これらの評価結果も合わせて表1〜4に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
表1〜4に示すように、実施例1〜13の成形品(帯電防止性粘着シート)は、いずれも耐ブリードアウト性を有していることがわかる。実施例1を見ると、(D)成分を添加していない場合でも帯電防止剤の析出がないことが理解できる。
【0101】
また、実施例1と2を比較すると(D)成分を添加したことにより剥離帯電圧が低下していることも理解できる。
【0102】
実施例2〜4、実施例13と比較例1を比較すると、比較例1は(A)成分と分子間相互作用を及ぼす(B)成分の(A)成分と分子間相互作用を及ぼす官能基の量が少ないものであり、(A1)成分の析出が多く、耐ブリードアウト性を満足しないものであることが理解できる。
【0103】
実施例2と実施例9〜11を比較すると(D)成分の添加量が多いほど剥離帯電圧が低い値を示していることも理解できる。実施例11において耐湿性試験における変色度がやや高い値を示しているのは糊残りのためであると推測できる。
【0104】
実施例12においては、(D)成分に該当しない相溶化剤を使用しているものであり、実施例2と比較して剥離帯電圧が高い値を示していることが理解できる。
【0105】
これに対し、表4に示すように、比較例2、3では(A)成分を使用していないものであり、耐ブリードアウト性が著しく劣ることが理解できる。