特許第6647777号(P6647777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許66477773次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647777
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20200203BHJP
【FI】
   G06F17/50 612J
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-203757(P2014-203757)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-71818(P2016-71818A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月16日
【審判番号】不服2018-14513(P2018-14513/J1)
【審判請求日】2018年11月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】仲沢 武志
【合議体】
【審判長】 清水 正一
【審判官】 間宮 嘉誉
【審判官】 須田 勝巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−214288(JP,A)
【文献】 特開2008−15635(JP,A)
【文献】 特開2004−287701(JP,A)
【文献】 特開平3−70083(JP,A)
【文献】 特開2003−22289(JP,A)
【文献】 特開2008−217232(JP,A)
【文献】 CADTOOL構造解析で「はりの計算」を体験,CAD&CG magazine,株式会社建築知識,1999年 9月 1日,第1巻,第4号,pp.148−149
【文献】 有限要素法解析ソフト ANSYS 工学解析入門,株式会社オーム社,2013年 9月25日,第2版,pp.95−101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータのプロセッサが、3次元描画データを表示部に表示するステップと、
前記プロセッサが、前記3次元描画データから1次元データである線材及び2次元データである面材に縮約した構造形状データを抽出するステップと、
前記プロセッサが、前記構造形状データにおける1次元データ及び2次元データの接合部に節点を配置し各節点の繋がりからそれぞれ構成される形状要素を定義することによってメッシュモデルを生成するステップと、
前記プロセッサが、前記各節点に拘束条件及び荷重条件を含む境界条件を組み込み、それぞれの記形状要素に厚み及び剛性を含む物性情報を組み込むことにより構造解析データを生成するステップと、
前記プロセッサが、前記構造解析データを前記表示部に表示するステップと、
を備え
前記3次元描画データは建築物の描画データであり、
前記構造形状データを抽出するステップでは、
前記描画データから線材である柱、梁、及び面材である床、壁を認識し、
線材である柱及び梁は芯線化し、
面材である床及び壁は中立面の抽出を行い、
前記芯線化した線材の座標が前記中立面を注出した面材からずれている場合にはずれを修正し、
構造物のコーナー部分において、前記芯線化した線材の座標が前記中立面を抽出した面材の交点からずれている場合にはずれを修正する、
とを特徴とする3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法。
【請求項2】
3次元描画データが、3次元CADソフトウエア又はモデリングソフトウエアを用いて作成されたことを特徴とする請求項1に記載の3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法。
【請求項3】
節点を配置すると共に形状要素を定義するステップの後に、前記プロセッサが、前記節点及び形状要素を増やして解析メッシュを細分化するステップを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一に記載された方法をコンピュータに実行させるプログラムであることを特徴とする3次元描画データを用いた構造解析データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータグラフィックス技術による構造物の設計において、モデリングソフトウエアあるいはCAD(Computer Aided Design)ソフトウエアにより作成された3次元描画データを用いて、当該構造物の変形性や振動特性あるいは強度の検証を実行するための構造解析データを生成する方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、自動車等の輸送機器や、建物等、各種の構造物の設計では、古くは、方眼紙に対象となる形状データ(線や面)あるいは立体要素を描き、節点番号や要素番号を書き入れ座標や構成節点番号を拾い出してアスキーファイルを作成していた。しかし近年では、コンピュータのハードウエアばかりでなくソフトウエアも著しく発達していて、3次元の形状作成ツールや自動メッシュ分割機能を備えたソフトウエアも開発されており、複雑な形状データの作成も、有限要素法などの数値解析のデータ作成のためのアプリケーションソフトウエアであるメッシュジェネレータ等を用いて効率的に作業することができるようになってきている(例えば下記の先行技術文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−290015号公報
【特許文献2】特開平6−119418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のうち方眼紙などを用いたデータ作成は、コンピュータのメモリの記憶容量が飛躍的に増加したことにより、計算資源を有効に生かせる量まで人的に扱えない状況となっている。
【0005】
また、メッシュジェネレータなど専用のソフトウエアを用いた方法でも、数値解析技術者が作業をするには問題ないが、そうではない技術者が作業をするには、空間認識やアプリケーションの使用方法などの問題から、便利とは言えない場合も多い。
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、基本的にはCADやモデリングソフトなど、コンピュータグラフィックスのソフトウエアを用いるが、メッシュジェネレータのような特殊なアプリケーションソフトウエアを使わなくても構造解析データを生成することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
求項1の発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法は、コンピュータのプロセッサが、3次元描画データを表示部に表示するステップと、前記プロセッサが、前記3次元描画データから1次元データである線材及び2次元データである面材に縮約した構造形状データを抽出するステップと、前記プロセッサが、前記構造形状データにおける1次元データ及び2次元データの接合部に節点を配置し各節点の繋がりからそれぞれ構成される形状要素を定義することによってメッシュモデルを生成成するステップと、前記プロセッサが、前記表示部に表示された前記各節点に拘束条件及び荷重条件を含む境界条件を組み込み、それぞれの記形状要素に厚み及び剛性を含む物性情報を組み込むことにより構造解析データを生成するステップと、前記プロセッサが、前記構造解析データを前記表示部に表示するステップと、を備え、前記3次元描画データは建築物の描画データであり、前記構造形状データを抽出するステップでは、前記描画データから線材である柱、梁、及び面材である床、壁を認識し、線材である柱及び梁は芯線化し、面材である床及び壁は中立面の抽出を行い、前記芯線化した線材の座標が前記中立面を注出した面材からずれている場合にはずれを修正し、構造物のコーナー部分において、前記芯線化した線材の座標が前記中立面を抽出した面材の交点からずれている場合にはずれを修正する。
【0008】
請求項2の発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法は、請求項1に記載の構成において、3次元描画データが、3次元CADソフトウエア又はモデリングソフトウエアを用いて作成されたものである。
【0010】
請求項の発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法は、請求項1又は2に記載の構成において、節点を配置すると共に形状要素を定義するステップの後に、前記プロセッサが、前記節点及び形状要素を増やして解析メッシュを細分化するステップを含むものである。
【0011】
請求項の発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成プログラムは、請求項1〜のいずれか一に記載された方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法によれば、構造物の変形性や振動特性、強度特性などの数値解析に必要なデータを、CADソフトウエア又はモデリングソフトウエア等による3次元描画データから、専用の特殊なアプリケーションソフトウエアを使わなくても生成することができるため、作業時間の短縮、作業工数の低減、及び作業自体の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法を実行する処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラムの好ましい実施の形態を示すフローチャートである。
図3】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラムの好ましい実施の形態において、作成された建築物の3次元描画データを示す説明図である。
図4】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラムの好ましい実施の形態において、建築物の3次元描画データから抽出された構造形状データを示す説明図である。
図5】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラムの好ましい実施の形態において、構造形状データの抽出処理を示す説明図である。
図6】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法及びプログラムの好ましい実施の形態において、作成した構造解析データを示す説明図である。
図7】本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法の好ましい実施の形態において、解析メッシュを細分化した構造解析データを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
まず図1は、本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法を実行する処理装置の概略構成を示すもので、すなわちこの処理装置1は汎用のパーソナルコンピュータ等からなるものであって、演算部11と、この演算部11に接続された入力部12、記憶部13、及び表示部14等を備える。
【0016】
演算部11はCPU(Central Processing Unit)で構成され、CADソフトウエア又はモデリングソフトウエア等によるDXF等のファイル形式の3次元描画データの作成、この3次元描画データから1次元データ及び2次元データに縮約した構造形状データの抽出、構造形状データへの節点の配置や形状要素の定義、構造解析データの生成といった各種演算処理を行うものである。なお、DXF(Drawing Exchange Format)は、Autodesk社のCADソフトウエアである「AutoCAD」で使用されているファイル形式で、2次元あるいは3次元のデータを格納するための標準的なフォーマットである。
【0017】
入力部12は、キーボードやマウス等からなり、オペレータが各種の設定やデータの入力、データの処理を操作するための手段である。
【0018】
記憶部13は、本発明による構造解析データ生成方法を処理装置1に実行させるためのプログラム及びそれによって得られたデータ、すなわち演算部11による3次元描画データの作成ステップ、それにより作成された3次元描画データ、この3次元描画データから構造形状データを抽出するための処理ステップ、それにより抽出された構造形状データ、各構造形状データの節点及び各節点の繋がりから構成される形状要素を定義するため処理ステップ、前記各節点に境界条件を入力すると共に前記各形状要素に物性情報を入力することにより自動でメッシュ分割して構造解析データを生成するためのメッシュ自動分割処理ステップ、それによって生成された構造解析データ、などを記憶可能なハードディスクや各種のメモリ等からなる。
【0019】
表示部14は、演算部11によって処理される3次元描画データや、構造形状データ、構造解析データ、記憶部13に記憶されたデータや、入力部12による入力データ等を表示する液晶ディスプレイ等からなるものである。
【0020】
図2は、本発明に係る3次元描画データを用いた構造解析データ生成方法を、建築物の設計に適用した好ましい実施の形態を示すフローチャートで、すなわちこの構造解析データ生成方法では、まず図1に示す処理装置1によって、建築物の3次元の実体モデルを、例えばGoogle SketchUp等のCADソフトウエア又はモデリングソフトウエアを用いてDXF等のファイル形式で描画し、もしくは前記CADソフトウエア又はモデリングソフトウエアにより描画され記憶部13に記録された3次元描画データを読み出す(ステップS101)。
【0021】
図3に示す建築物の3次元描画データ2は、複数の柱21、梁22、床23などの構造要素からなる建築物の完成状況を、視覚的に容易に把握することができるものではあるが、単に完成状況を視覚的に表現しているソリッドモデルであるため、このようなデータに基づいて直接、当該建築物の変形性や振動特性あるいは強度などを技術的に検討することはできない。そこで、前記3次元描画データ2から、図4に示すような1次元データ及び2次元データに縮約した線画状の構造形状データ3を抽出する(ステップS102)。
【0022】
この構造形状データ3は、図3に示す3次元描画データ2によるソリッドモデルから、例えば柱21、梁22、床23、壁(この例では不図示)などを認識し、このうち柱21や梁22については、その芯線や中立軸など1次元的に延びる線状の形状部材(線材31,32)を抽出し、床23や壁については、その図心や中立面など、2次元に広がった薄板状の形状部材(面材33)を抽出する変換を行ったものである。すなわちこの処理ステップS102において抽出される構造形状データ3は、重心や図心、中立軸、中立面などを繋ぎ合わせた、厚さ要素を除去した線と面などの幾何学的形状要素で構成されている。
【0023】
構造形状データ3の抽出に際しては、柱、梁、壁、床などの位置関係を適切に関連付ける必要があるため、例えば図5(A)に示すように、構造物の壁面のフラット部分において、柱の芯線などの検出によって抽出された線材31の座標が、壁の中立面などの検出によって抽出された面材34からずれている場合や、図5(B)に示すように、構造物のコーナー部分において、柱の芯線などの検出によって抽出された線材31の座標が、壁から抽出された面材34の交点からずれているような場合は、構造物に荷重がかかった際に変形を生じるのを抑制するため、線材31や面材34を適正な位置へ移動させるといった修正が行われる。
【0024】
次に、上述のようにして抽出された1次元データ及び2次元データの組み合わせからなる構造形状データ3を、数値解析データに落とし込むために、メッシュ自動分割処理プログラムを用いて、図6に示すように、線材31,32及び面材33の接合部などにそれぞれ節点Nを配置し、互いに隣接する2つの節点Nの座標を直線で結ぶ処理によって構成される線状の要素(トラス要素や梁要素など)や、3つ以上の節点Nの座標を直線で結ぶ処理によって構成される薄板要素など、解析メッシュの形状要素Eを定義することによってメッシュモデル4を作成する(ステップS103)。
【0025】
また、さらに詳細な数値解析を行うことが必要であると判断される場合は(ステップS104=YES)、図7に示すように、節点Nをさらに増やして適切に配置し、これらの節点Nで細分化された形状要素Eも適切な形で定義する(ステップS105)。
【0026】
そして、このようにして作成されたメッシュモデル4において、各節点Nには適切な拘束条件や荷重条件などの境界条件を組み込み、各形状要素Eには厚みや剛性などの材料特性などの情報を組み込むことで(ステップS106)、構造解析ソフトウエアによる数値解析を実施可能なメッシュモデル(構造解析データ)となる。なお、ステップS103において作成したメッシュモデル4は、解析の負荷を低減するため、まず細分化せずに(ステップS104=NO)、ステップS106で境界条件や材料特性などを組み込んで構造解析ソフトウエアによる数値解析を行った後、ステップS104へリターンして、メッシュを細分化することによってより高い精度で詳細に解析することが必要かを判断するようにしても良い。
【0027】
上述したように、本発明によれば、3次元CADソフトウエア又はモデリングソフトウエア等により作成された3次元描画データを、1次元及び2次元に縮約した線画状の構造形状データ3に変換して、専用の特殊なアプリケーションソフトウエアを使わずに数値解析用のメッシュモデル4を生成するものであるため、作業時間の短縮、作業工数の低減、及び作業自体の容易化を図ることができる。
【0028】
なお、上述の実施の形態では、入力する3次元描画データの一例としてDXFファイル形式の描画データを用いるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えばGoogle SketchUp等のモデリングソフトウエアによってモデル化した3次元形状データのSTLフォーマットデータを読み込んでも良く、あるいは前記Google SketchUpなどによるモデリングデータを直接使用しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 処理装置
2 3次元描画データ
3 構造形状データ
31,32 線材
33 面材
N 節点
E 形状要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7