(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647778
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】あと施工アンカーおよびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
E04B1/41 503A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-213259(P2014-213259)
(22)【出願日】2014年10月18日
(65)【公開番号】特開2016-79720(P2016-79720A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英之
(72)【発明者】
【氏名】田畑 卓
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−225000(JP,A)
【文献】
特開2000−265618(JP,A)
【文献】
特開昭59−044464(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00303551(EP,A1)
【文献】
米国特許第04662795(US,A)
【文献】
特開2004−003149(JP,A)
【文献】
特開2013−066927(JP,A)
【文献】
特許第4547309(JP,B2)
【文献】
特開平07−166609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04C 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ方向に所定の溝間隔で周面溝が孔壁に形成されたアンカー孔に、先端を圧接加工して形成されたこぶ状の膨らみ部を整形して形成した先端定着部を有するアンカー筋が、前記アンカー孔の孔底に前記先端定着部が起立保持されるように建て込まれ、前記アンカー孔の前記周面溝内及び前記アンカー筋の周囲を満たすように充填された充填材で前記アンカー孔内に保持されたことを特徴とするあと施工アンカーであって、
前記先端定着部の上面位置から上方に所定角度をなして前記孔壁と交わる位置までの範囲の前記溝間隔を、前記範囲から前記アンカー孔の孔口までの範囲より小さくして前記先端定着部近傍での前記孔壁と前記充填材との付着力を高めたことを特徴とするあと施工アンカー。
【請求項2】
深さ方向に所定の溝間隔で周面溝が孔壁に形成されたアンカー孔に、先端を圧接加工して形成された膨らみ部を整形して形成した先端定着部を有するアンカー筋が、前記アンカー孔の孔底に前記先端定着部が起立保持されるように建て込まれ、前記アンカー孔の前記周面溝内及び前記アンカー筋の周囲を満たすように充填された充填材で前記アンカー孔内に保持されたあと施工アンカーであって、
前記先端定着部の上面位置から上方に角度θ=45〜60°をなして前記孔壁と交わる位置までの範囲の前記溝間隔が、前記範囲から前記アンカー孔の孔口までの範囲より小さいことを特徴とするあと施工アンカー。
【請求項3】
さらに中間定着部が前記アンカー筋の長さ方向の中間位置に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のあと施工アンカー。
【請求項4】
前記先端定着部は、アンカー支持材に補助されて前記孔底に起立保持されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のあと施工アンカー。
【請求項5】
アンカー孔の孔壁に、孔底部から所定の深さ方向の範囲に形成する溝の間隔を、前記範囲から前記アンカー孔の孔口までの範囲より小さくした間隔で周面溝を形成し、先端を圧接加工して形成された膨らみ部を整形した先端定着部が形成されたアンカー筋を、前記先端定着部が前記アンカー孔の孔底に起立保持されるように前記アンカー孔内に建て込み、前記アンカー孔の前記周面溝内及び前記アンカー筋の周囲を充填材で満たすように充填し、前記アンカー筋を孔内に保持させることを特徴とするあと施工アンカーの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はあと施工アンカーおよびその施工方法に係り、施工後、長期間にわたって荷重が作用したり、充填材料の経年劣化が生じた場合でも、その定着力を確保することができるあと施工アンカーおよびあと施工アンカーを効率よく施工する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着系アンカーによってあと施工アンカーを既設コンクリートに施工する工法として、
図5(a)に示したようなあと施工アンカーが知られている。この種のあと施工アンカーの施工では、ハンマードリル等の削孔装置を用いて既設コンクリート51にアンカー筋50の直径よりわずかに大きな直径のアンカー孔52を削孔し、カプセル入りのエポキシ樹脂やセメント系グラウト等の接着材料となる充填材53をアンカー孔52に挿填し、回転と打撃によってアンカー筋50を孔内に建て込み、コンクリート躯体51にアンカー筋50を一体に固着させる。このアンカー筋50の先端50aは、
図5(a)に示したように、片側斜め45度にカットされ、鋭利に仕上げられている。これにより、あらかじめアンカー孔に挿填されているカプセル内のエポキシ樹脂の主剤と硬化剤とが効率よく混合され、接着材料の硬化促進が図られる。
【0003】
ところで、接着材料として使用されるエポキシ樹脂やセメント系グラウト等の充填材は高い付着性能を有しているが、長期間にわたる使用において、アンカー孔内のエポキシ樹脂やグラウトが収縮してしまい、平滑なアンカー孔壁と充填材との間に隙間が生じ、付着性能が低下すると言う問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、深さ方向に沿って複数本の溝を、アンカー孔壁の内周面に形成し、充填材をこれらの溝内まで充填させることにより、充填材とアンカー孔壁との機械的係止によりアンカー孔壁と充填材との付着力を増加させる工法も提案されている(非特許文献1、
図5(b))この工法によれば、充填材53が溝55内まで充填されることで、アンカー孔壁54との間の付着面積が増加するので、従来の平滑なアンカー孔壁54の場合より大きな付着力が発揮される。また、施工後長期間が経過して充填材53が収縮し、アンカー孔壁54と充填材53との間に隙間が生じても、溝55内の充填材53とアンカー孔壁54との間に機械的係止があるので、引抜き等に対する抵抗性が保持される。
【0005】
一方、アンカー筋と充填材との間の応力伝達は、アンカー筋として用いられている異形鉄筋の表面に形成された各種の凹凸形状のパターンと充填材との付着力によって果たされる。鉄筋表面のパターンは鉄筋径に比べて細かいため、単位表面積当たりの付着力がそれほど大きくないので、鉄筋に所定の定着力(引抜き強度)を付与するために、所定の定着長を確保してアンカー孔内に埋設する必要がある。
【0006】
以上のことから、特許文献1に開示された複数本の溝をアンカー孔壁に形成した場合にも、鉄筋と充填材間の付着強度が従来のあと施工アンカーと同等であり、鉄筋の定着長さは鉄筋と充填材間の付着強度で決定される。このため、アンカーの引抜き強度を確保するためにはアンカー筋の定着長さを短くすることができない。その解決策として、アンカー筋(鉄筋)の先端に定着板を取り付けることで、鉄筋と充填材との付着力を増加させ、引き抜き耐力を向上させる方法もとられている。
【0007】
たとえば、鉄筋の先端に定着板を取り付けるアンカー構造として、従来から鉄骨柱脚などの鉄骨部材の取り付けに用いられるアンカーボルトが知られている。この種のアンカーボルトとしては、高力ボルトや雄ねじ部材と両締めナットを用いて円板状の定着板をボルト下端に取り付けたアンカー構造が用いられている(特許文献1)。これらのアンカーボルトはあらかじめ型枠内の所定位置に設置された基台に取り付けられ、その後コンクリートが打設され、コンクリート天端位置に柱のベースプレートが設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−3149号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】田中ダイヤ工業株式会社、“溝を有する孔内に打設されたアンカーボルトの引抜き試験”、[online]、平成25年6月28日、田中ダイヤ工業株式会社ホームページ、平成26年7月1日検索、インターネット<URL: http://www.tanakadaiya.com/license/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、あと施工アンカーの設計において、長期間にわたる充填材の変化を考慮した例はなく、またアンカー筋と充填材との付着力の不足を定着板を用いて解消するという手法はなかった。さらに、実施工において、あと施工アンカーの施工方法で削孔されるアンカー孔には定着板を取り付けたアンカー筋を使用することはできない。加えて、多数のアンカー筋を施工する場合、アンカー筋の先端に定着板を取り付ける材料の作業を簡略化することができれば工期短縮につながるため、この点での要請がある。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、従来のあと施工アンカーより短い定着長さで、長期間応力あるいは繰り返し応力が作用するアンカー筋を確実に躯体側に定着させることができるアンカーと、従来の施工に比べて省力化が図れるアンカーの施工方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のあと施工アンカーは、深さ方向に所定の溝間隔で周面溝が孔壁に形成されたアンカー孔に、先端を圧接加工して形成されたこぶ状の膨らみ部
を整形して形成した先端定着部を有するアンカー筋が、前記アンカー孔の孔底に前記先端定着部が起立保持されるように建て込まれ、前記アンカー孔の前記周面溝内及び前記アンカー筋の周囲を満たすように充填された充填材で前記アンカー孔内に保持されたことを特徴とするあと施工アンカー
であって、前記先端定着部の上面位置から上方に所定角度をなして前記孔壁と交わる位置までの範囲の前記溝間隔を、前記範囲から前記アンカー孔の孔口までの範囲より小さくして前記先端定着部近傍での前記孔壁と前記充填材との付着力を高めたことを特徴とする。
【0014】
さらに中間定着部がアンカー筋の長さ方向
の中間位置に設けることが好ましい。
【0015】
深さ方向に所定の溝間隔で周面溝が孔壁に形成されたアンカー孔に、先端を圧接加工して形成された膨らみ部を整形して形成した先端定着部を有するアンカー筋が、前記アンカー孔の孔底に前記先端定着部が起立保持されるように建て込まれ、前記アンカー孔の前記周面溝内及び前記アンカー筋の周囲を満たすように充填された充填材で前記アンカー孔内に保持されたあと施工アンカーであって、前記先端定着部の上面位置から
上方に角度θ=45〜60°
をなして前記孔壁と交わる位置までの範囲の前記溝間隔が、
前記範囲から前記アンカー孔の孔口までの範囲より小さいことを特徴とする。
【0016】
あと施工アンカーの施工方法の発明として、アンカー孔の孔壁に、
孔底部から所定の深さ方向の範囲に形成する溝の間隔を、前記範囲から前記アンカー孔の孔口までの範囲より小さくした間隔で周面溝を形成し、先端を圧接加工して形成された膨らみ部
を整形した先端定着部が形成されたアンカー筋を、前記先端定着部が前記アンカー孔の孔底に起立保持されるように前記アンカー孔内に建て込み、前記アンカー孔の前記周面溝内及び前記アンカー筋の周囲を充填材で満たすように充填し、前記アンカー筋を孔内に保持させることを特徴とする。
【0017】
前記
あと施工アンカーの先端定着部は、アンカー支持材に補助されて
前記孔底に起立保持されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べたように、本発明によれば、従来のあと施工アンカーより短い定着長さで、長期間応力あるいは繰り返し応力が作用するアンカー筋を確実に躯体側に定着させることができるアンカーを提供でき、また従来の施工に比べて省力化も図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のあと施工アンカーの実施形態(定着部形状)の施工状態を示した説明図。
【
図2】本発明のあと施工アンカーの他の実施形態(溝間隔変化)を示した説明図。
【
図3】本発明のあと施工アンカーの定着部形成方法例を示した説明図。
【
図4】本発明のあと施工アンカーの施工方法の作業手順を示した説明図。
【
図5】従来のあと施工アンカーの形態例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のあと施工アンカーおよびその施工方法の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明のあと施工アンカーを既設のコンクリート躯体1に設置した状態を示している。
図1(a)に示したアンカー筋10は、下端に定着部11が形成されている。この定着部11は、後述するように鉄筋の端部を変形加工して形成した膨らみ部を整形して作られている。また定着部11の端面は平滑な切断面から構成されている。一方、アンカー孔2の底面3は、削孔完了時に平滑面とならないため、直径dのアンカー筋10をアンカー孔2の底面3に起立させる際、
図1(a)に示したように、アンカー支持材12としての充填固化材を介してアンカー筋が起立するように補助して建て込むことが好ましい。アンカー支持材12としては、エポキシ樹脂製パテ、各種樹脂製接着剤、急結モルタル等の充填固化材や、機械的な支持材として底面3に対して所定高さを確保可能な金属製、樹脂製スペーサ等を用いることができる。また定着部11の外形は所定直径(D1)の円形断面を有するように、面取り整形されている。この定着部11を有するアンカー筋10がアンカー孔に収容された際に、定着部11とその周囲のアンカー孔壁4との間には、以下のような関係の隙間が設けられるようにアンカー孔の直径(Dh)が設定されている。
【0021】
アンカー筋10の太さ(直径:d)と定着部11の直径(D1)との関係は、
D1=(1.5〜2.5)×d
定着部11の直径(D1)とアンカー孔の直径(Dh)との関係は、
Dh=D1+Δ
このとき、隙間Δは
図1(a)に示したように、アンカー筋10の定着部11をアンカー孔の底面3に設置できる範囲で小さくすることができる。
【0022】
さらにアンカー孔壁4には、深さ方向に沿ってアンカー孔壁4に水平なリング状の周面溝5が形成されている。この周面溝5は上述した非特許文献1に記載された装置や他の公知の溝形成装置によってアンカー孔壁4に形成することができる。周面溝5は図示したように角溝を例にすると、溝寸法は溝深さGd:約2〜5mm、溝幅Gw:約9〜20mm、アンカー深さ方向の間隔p:50〜100mm程度に設定することができる。具体的な溝寸法は、求められているアンカー筋10の定着力によって適宜設計して設定することが好ましい。たとえば、設計時の角溝の深さと高さの比率としては、1:4〜5とすることが付着力を保持するために好適である。また溝断面形状は、充填材13のせん断耐力に影響を及ぼす溝幅が確保されれば、孔壁4面の切削が容易な形状とすることができ、たとえば略円形溝や三角溝とすることもできる。
【0023】
図1(b)は、変形例の定着部11が先端に取り付けられたアンカー筋10を用いたあと施工アンカーの設置状態を示している。この定着部11は所定直径(D2)の鋼製円板をアンカー筋10の先端にネジ止めして固定したものである。ネジ止めには皿ネジ15を用いて定着部11の底面を平坦にすることが好ましい。アンカー筋10の異形パターンとして雄ネジが形成されている場合には、アンカー筋10の雄ネジに螺合可能な雌ネジが形成されたリング状円板を用いることもできる。この他、一般に市販されている鉄筋用定着板も使用することができる。
【0024】
図2(a)は、定着部11における支圧効果を考慮し、孔壁4に形成する溝ピッチを変更したあと施工アンカーの実施形態の孔壁断面を示した説明図である。アンカー筋10に引抜き力が作用した際、定着部11は充填材13に対して大きな支圧力を発揮する。アンカー全体がこの支圧力に対応した強度(耐力)を発揮できる程度に、充填材13とアンカー孔壁4との間の所定範囲(範囲(a))にわたって付着力を増加させることが好ましい。アンカー筋10に引抜き力が作用した際の定着部11の支圧力の及ぶ範囲を想定して範囲(a)を設定する。具体的には
図2に示したように、定着部11の上面の中心位置から角度θ(θ=45〜60°)をなす範囲内に位置する周面溝5の間隔を密にする。全体の溝間隔のバランスとしては、範囲(a)での溝間隔を
図1(a)に示した溝間隔pより狭い間隔p1(p>p1)とすることが好ましい。この場合、定着部11から範囲(a)で十分なアンカー定着効果が得られるため、定着範囲(a)からアンカー口元までの範囲(b)では、間隔p2をp2>pとすることができる。
【0025】
図2(b)は、アンカー先端の定着部11に加えて、中間定着部14を設けたアンカー筋10を用いたあと施工アンカーの実施形態の孔壁断面を示した説明図である。アンカー付着長さを大きく設計するあと施工アンカーの場合、先端定着部11に加え、中間定着部14を設けることができる。このあと施工アンカーでは、先端定着部11から範囲(a)で溝間隔を狭く(溝間隔:p1)設計するのに加え、中間定着部14位置からアンカー口元に向けても範囲(a)で溝間隔を狭く(溝間隔:p1)設定し、それ以外の範囲(b)については溝間隔p2とすることができる。
【0026】
図3は、鉄筋7の先端の端面7aに膨らみ部7bを形成し、この膨らみ部7bを整形加工して定着部11を有するアンカー筋10とする手順を示した説明図である。このアンカー筋10の製造手順について各図を参照して簡単に説明する。アンカー筋10となる2本の鉄筋7(異形棒鋼)を同軸の一直線状となるように図示しないクランプで保持する(
図3(a))。このとき鉄筋の当接する端面7aに剥離剤を塗布しておく。その後、当接させた鉄筋7の端部を加圧して圧接した状態で圧接部位を赤熱状態となるまで加熱すると、
図3(b)に示したように、圧接境界面に関して対称なこぶ状の膨らみ部7bが形成される。その後、圧接状態にある2個の膨らみ部7bを一体的に回転切削装置(図示せず)によって整形し(
図3(c))、鉄筋7の端部に所定形状の定着部11を形成する。剥離面7cで2本のアンカー筋10を分離することで、それぞれの端部に同形をなす略円錐台形状の定着部11を有する2本のアンカー筋10を得ることができる(
図3(d))。
【0027】
図4は、本発明のあと施工アンカーの施工手順を示した説明図である。本発明のあと施工アンカーの施工は、従来のあと施工アンカーと異なり、アンカー筋を先行建て込みしてアンカー孔内で安定保持し、その後孔内に充填材を充填固化させることでアンカー筋を孔内に固定することを特徴とする。まず、
図4(a)に示したように、既設コンクリート1の所定位置を削孔し、建て込み予定のアンカー筋10の定着部11の直径よりわずかに大きい直径でアンカー孔2を設ける。次に、孔内溝削孔装置により孔内周面に複数本の溝5を形成する。この溝5の寸法、深さ方向の間隔は、使用するアンカー筋10の規格に応じて、上述した
図1(a)に示した範囲内で設計する。周面溝5の形成が終わったら、底面3に溜まったコンクリート片、くり粉を圧縮エア、水等で除去して再度清掃する。本実施形態では、アンカー孔2の底面3には定着部11を起立させるためのアンカー支持材としての一態様としてリング状の鋼製スペーサ16を設置し、その上にアンカー筋10を起立させるようにしている(
図4(b))。これにより、アンカー孔2に挿入されたアンカー筋10は、アンカー定着部11が底面3に設置された鋼製スペーサ16上に据えられることで自立する。さらにアンカー筋10をアンカー孔の断面中心位置に起立させるために、アンカー孔2の口元にスペーサ17を取り付けることも好ましい(
図4(c))。その後、アンカー孔2のアンカー筋10周囲に充填材13としてのセメント系グラウト材を充填する。このグラウト材を充填するために、アンカー孔内にグラウト材充填用ホースを挿通しておき、ホースを引き抜きながら、アンカー孔2内にグラウト材を充填する。充填材13は、セメント系材料以外にエポキシアクリレート樹脂やエポキシ樹脂を主剤としたケミカル系材料としてもよい。所定の養生期間をおくことで所定引き抜き耐力を有するあと施工アンカーとして使用することができる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 既設コンクリート
2 アンカー孔
4 アンカー孔壁
5 周面溝
10 アンカー筋
11 定着部(先端定着部)
12 アンカー支持材
13 充填材
14 中間定着部