(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647790
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】商品陳列什器用支柱部材および商品陳列什器
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20200203BHJP
A47B 55/00 20060101ALI20200203BHJP
A47B 96/14 20060101ALI20200203BHJP
B65G 1/14 20060101ALI20200203BHJP
A47B 47/02 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
A47F5/00 B
A47B55/00
A47B96/14 F
B65G1/14 E
A47B47/02
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-67155(P2015-67155)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185252(P2016-185252A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 康雄
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】松枝 栄次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宗隆
(72)【発明者】
【氏名】高田 良紀
【審査官】
遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−065645(JP,U)
【文献】
実開平01−121446(JP,U)
【文献】
特開昭47−009232(JP,A)
【文献】
実開昭54−183299(JP,U)
【文献】
実開昭57−068664(JP,U)
【文献】
実開平06−052590(JP,U)
【文献】
米国特許第03346124(US,A)
【文献】
米国特許第03512654(US,A)
【文献】
実開昭58−152165(JP,U)
【文献】
特開昭58−206706(JP,A)
【文献】
特開平10−248666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00
A47B 47/02
A47B 55/00
A47B 96/14
B65G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材を組み合わせた接合体からなり、棚板およびブラケットとともに商品陳列什器を構成する支柱部材であって、
該支柱部材は、前記商品陳列什器に組み込んだ状態で見て、
棚板を支持するブラケットの係合固定を可能にするため上下方向に間隔をおいて形成した複数の係止孔を有する前面部および後面部と、
前記前面部および前記後面部の両端をそれぞれ連結する左右1対の側面部と
で、略角管状に構成され、
前記側面部を構成する部分のうち、単一の板材のみからなる部分の厚さ(t1)を、前記前面部および前記後面部を構成する部分の厚さ(t2)よりも減じた構成にし、
前記1対の側面部は、それぞれの中央部に、前記支柱部材の長手方向に沿って延在し、互いに近接する方向に窪ませて内面同士が当接する縦溝を有し、
前記支柱部材は、前記縦溝直下位置での前記1対の側面部の当接部分と、該当接部分を挟んで前後方向の両側に位置する2本の分割管状部分とで構成され、
前記複数の板材は、
前記1対の側面部のそれぞれを構成する2枚の第1の板材と、
前記前面部および後面部のそれぞれを構成する主面部、および該主面部の両側端からそれぞれ前記主面部に対し略直交方向に延在し、前記2枚の第1の板材のそれぞれの側端部に接合されて前記側面部を構成する両腕部からなり、横断面が全体として略U字状をなす2枚の第2の板材と
の合計4枚の板材であることを特徴とする商品陳列什器用支柱部材。
【請求項2】
前記前面部および前記後面部を構成する部分の厚さ(t2)は、全面にわたって同じである請求項1に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【請求項3】
前記2枚の第2の板材は、互いに略U字状が内向きとなる方向に配置され、前記第2の板材の両腕部が、対向する前記2枚の第1の板材のそれぞれの側端部の外面上に重ね合わせて接合される請求項1又は2に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【請求項4】
前記第2の板材の腕部が重ね合わされる、前記第1の板材の前記側端部を、内面側に段下がりさせた段差部として設ける請求項3に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【請求項5】
前記2枚の第2の板材は、互いに略U字状が外向きとなる方向に配置され、前記第2の板材の両腕部が、対向する前記2枚の第1の板材のそれぞれの側端部の内面上に重ね合わせて接合される請求項1又は2に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【請求項6】
前記第1の板材の前記側端部が、前記第2の板材の腕部の両面を包み込むように折り返される折返し部分をさらに有する請求項5に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の支柱部材を有する商品陳列什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の店舗に設置され、商品を陳列販売するための商品陳列什器を構成するのに適した支柱部材、および商品陳列什器に関し、特に強度(特に断面性能)を維持またはさほど低下させることなく、材料使用量を有効に削減した支柱部材(支柱構造)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の商品陳列什器を構成する支柱部材は、通常、1枚の鋼板等の金属板(平板)に連続的な曲げ加工を加えていく冷間ロール成形(ロールフォーミング)により、長方形断面となるように角管状に成形した後、両端突合せ部を溶接し、その後、突合せ溶接部に仕上げ加工(余盛の切削加工、平仕上げ加工)を施してから塗装することによって製造されるのが一般的である。例えば本出願人が提案した特許文献1に記載の支柱もまた、冷間ロール成形により製造したものであって、この冷間ロール成形法は、角管状の支柱部材を、安価に大量製造するのに適した加工方法であるとして広く知られている。
【0003】
また、支柱部材は、その前面部および後面部に形成した係止孔に係合させたブラケットが支持する棚板上に載置される商品の荷重(支柱部材の前面部および後面部のいずれかの片面部に取り付けられた1枚の棚板に負荷される荷重は、例えば400〜800kgf程度)の負荷に耐えうる構造とするには、通常、支柱部材を構成する金属板の板厚を2〜3mm程度にする必要があった。
【0004】
さらに、冷間ロール成形によって1枚の金属板から支柱部材を製造する場合、長方形断面への成形時に、成形された金属板の突合せ端部同士が、スプリングバックによる歪の発生に伴って所定の突合せ位置になるように成形できない場合があり、かかる場合には、その後に行う溶接によって形成した突合せ溶接部の仕上げ加工に手間がかかり作業性が劣るという問題があった。また、スプリングバックは、金属板の板厚が厚くなるほど、金属板の曲げ剛性が増加して顕著に発生する傾向があるため、支柱部材を冷間ロール成形によって製造する観点から、金属板の板厚をできるだけ薄くすることが望ましいと考えられる。
【0005】
さらにまた、近年、商品陳列什器(製品)を構成する部材の材料(例えば鋼材)のコストの上昇に伴って、材料使用量の低減が求められる中、支柱部材に関しても、材料使用量をより一層低減することが必要になってきた。加えて、商品陳列什器は、レイアウト変更等による移動や組立・分解作業の観点等から、軽量化を図ることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−204723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複数の板材を組み合わせて、略角管状をなす支柱部材を構成することを前提とし、支柱部材の前面部、後面部および左右1対の側面部の各部分の厚さを適正に調整することによって、強度(特に断面性能)は維持またはさほど低下させることなく、材料使用量を有効に削減して、材料コストおよび重量の低減を実現した商品陳列什器用支柱部材、および商品陳列什器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)複数の板材を組み合わせた接合体からなり、棚板およびブラケットとともに商品陳列什器を構成する支柱部材であって、該支柱部材は、前記商品陳列什器に組み込んだ状態で見て、棚板を支持するブラケットの係合固定を可能にするため上下方向に間隔をおいて形成した複数の係止孔を有する前面部および後面部と、前記前面部および前記後面部の両端をそれぞれ連結する左右1対の側面部とで、略角管状に構成され、前記側面部を構成する部分のうち、単一の板材のみからなる部分の厚さを、前記前面部および前記後面部を構成する部分の厚さよりも減じた構成にすることを特徴とする商品陳列什器用支柱部材。
【0009】
(2)前記1対の側面部は、それぞれの中央部に、前記支柱部材の長手方向に沿って延在し、互いに近接する方向に窪ませて内面同士が当接する縦溝を有し、前記支柱部材は、前記縦溝直下位置での前記1対の側面部の当接部分と、該当接部分を挟んで前後方向の両側に位置する2本の分割管状部分とで構成される上記(1)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0010】
(3)前記前面部および前記後面部を構成する部分の厚さ(t2)は、全面にわたって同じである上記(1)または(2)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0011】
(4)前記複数の板材は、前記1対の側面部のそれぞれを構成する2枚の第1の板材と、
前記前面部および後面部のそれぞれを構成する主面部、および該主面部の両側端からそれぞれ前記主面部に対し略直交方向に延在し、前記2枚の第1の板材のそれぞれの側端部に接合されて前記側面部を構成する両腕部からなり、横断面が全体として略U字状をなす2枚の第2の板材との合計4枚の板材である上記(1)、(2)または(3)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0012】
(5)前記2枚の第2の板材は、互いに略U字状が内向きとなる方向に配置され、前記第2の板材の両腕部が、対向する前記2枚の第1の板材のそれぞれの側端部の外面上に重ね合わせて接合される上記(4)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0013】
(6)前記第2の板材の腕部が重ね合わされる、前記第1の板材の前記側端部を、内面側に段下がりさせた段差部として設ける上記(5)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0014】
(7)前記2枚の第2の板材は、互いに略U字状が外向きとなる方向に配置され、前記第2の板材の両腕部が、対向する前記2枚の第1の板材のそれぞれの側端部の内面上に重ね合わせて接合される上記(4)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0015】
(8)前記第1の板材の前記側端部が、前記第2の板材の腕部の両面を包み込むように折り返される折返し部分をさらに有する上記(7)に記載の商品陳列什器用支柱部材。
【0016】
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の支柱部材を有する商品陳列什器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の板材を組み合わせて、略角管状をなす支柱部材を構成することを前提とし、前面部、後面部および左右1対の側面部の各部分の厚さを適正に調整することによって、強度(特に断面性能)を維持またはさほど低下させることなく、材料使用量を有効に削減して、材料コストおよび重量の低減を実現した商品陳列什器用支柱部材を提供することができる。特に、本発明の支柱部材は、例えばデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の店舗に設置され、商品を陳列販売するための商品陳列什器を構成するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に従う代表的な商品陳列什器の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に従う支柱部材(第1の実施形態)の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明に従う支柱部材(第2の実施形態)の斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明に従う支柱部材(第3の実施形態)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら以下で説明する。
図1は、本発明に従う代表的な商品陳列什器の外観を示したものであり、
図2は、本発明に従う支柱部材の第1の実施形態を示したものであり、そして
図3は、
図2に示す支柱部材を分解して示したものである。
【0020】
図1に示す商品陳列什器1は、例えばデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の店舗に設置され、前面および後面の両面に、商品を陳列することができる両面陳列タイプの商品陳列什器であって、複数の支柱部材、
図1では3本の支柱部材10と、各支柱部材10の前面部および後面部に連結された複数のブラケット、
図1では片面部当たり4本のブラケット12と、隣接する2本の支柱部材10の同一高さ位置にそれぞれ連結された対をなすブラケット12上に跨って載置固定された棚板14と、隣接する2本の支柱部材10の対向する側面部の中央位置に配置されたバックボード16とを主に具えている。尚、
図1では、ブラケット12の配置状態を示すため、什器1の前面左側の4段目の棚板14を載置固定する前の状態で示している。
【0021】
図2に示す支柱部材10は、
図1に示す商品陳列什器に用いるのに適した構造を有し、
図1に示す商品陳列什器1に組み込んだ状態で見て、棚板14を支持するブラケット12の係合固定を可能にするため上下方向に間隔をおいて形成した複数の係止孔18を有する前面部20および後面部22と、前面部20および後面部22の両端をそれぞれ連結する左右1対の側面部24、26とで、略角管状に構成されている。
【0022】
ここで、支柱部材10の形状を「略角管状」としたのは、横断面が、長方形等の矩形だけの角管形状のものだけではなく、4つの頂点に丸みをもたせて全体形状を楕円等の長円形状のものや、側面部が平面状だけではなく曲面状にしたものを含めるためである。なお、支柱部材10の前面部および後面部は、ブラケット12を係合固定する部分であるため、平面形状とすることが好ましい。
【0023】
そして、本発明の構成上の主な特徴は、商品陳列什器1を構成する支柱部材10を、複数の板材(例えば、
図2に示す支柱部材10では、
図3に分解して示すように、2種類の板材28、30の各2枚の合計4枚の板材28、28、30、30)を組み合わせた接合体32で略角管状に構成するとともに、前面部20、後面部22および左右1対の側面部24、26の各部分の厚さを適正に調整することにあり、より具体的には、支柱部材10は、側面部24、26を構成する部分のうち、単一の板材28のみからなる部分の厚さt1を、前面部20および後面部22を構成する部分の厚さt2よりも減じた構成にすることにあり、この構成を採用することによって、強度(特に断面性能)を維持またはさほど低下させることなく、材料使用量を有効に削減して、材料コストおよび重量を低減することができる。
【0024】
すなわち、本発明の支柱部材10は、棚板14に載置される商品の荷重が作用する部分
である、前面部20および後面部22を構成する部分の厚さt2については減じることなく(厚いままを)維持し、商品の荷重が作用しない部分である左右1対の側面部24および26を構成する部分の厚さt1だけを減じる構成を採用することで、強度(特に断面性能)を実質的に維持しつつ、材料使用量を有効に削減して、材料コストおよび重量を低減することに成功し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0025】
また、前記厚さt1と前記厚さt2との関係は、商品陳列什器1に要求される最大積載荷重によって変化するが、例えば、1枚の棚板に負荷される最大積載荷重が400〜800kgf程度である商品陳列什器1の場合には、前記厚さt1は、前記厚さt2に対し、30〜80%減じることが好ましく、40〜70%減じることがより好ましく、50〜60%減じることが、強度を維持したまま、材料使用量を有効に削減する観点から好ましい。
【0026】
また、本発明の支持部材10は、1対の側面部24、26が、それぞれの中央部に、前記支柱部材10の長手方向Lに沿って延在し、互いに近接する方向に窪ませて内面同士が当接する縦溝34、34を有し、前記支柱部材10は、縦溝34、34の直下位置での1対の側面部24、26の当接部分36と、この当接部分36を挟んで前後方向Fの両側に位置する2本の分割管状部分38、40とで構成されることが、新たな取付部品を追加することなしにバックボード16を1対の側面部24、26の縦溝34、34間に取り付けられるとともに、縦溝34、34位置で1対の側面部24、26の内面同士を当接させることにより、側面部24,26の強度が高まり、引いては支柱部材10の強度が向上する点で好ましい。なお、前記当接部分36は、互いに接触している状態だけであっても、側面部24、26の強度向上効果は得られるが、カシメ接合等の圧接や溶接等によって、線状(連続的)または点状(部分的)に接合することがより好ましい。
【0027】
さらに、前面部20および後面部22を構成する部分の厚さt2は、全面にわたって同じであることが好ましい。このように構成することによって、商品荷重が負荷される部分である、前面部20および後面部22が、全体にわたって均一な強度(剛性)を有するため、商品荷重によって前面部20および後面部22の一部分が、局部的に変形することを抑制でき、前面部20および後面部22の全体(全面)で商品荷重を均一に支持することができる結果、支柱部材10の全体で高い強度(特に断面性能)を発揮することができる。
【0028】
なお、本発明でいう「側面部を構成する部分のうち、単一の板材のみからなる部分の厚さt1」とは、複数の板材28、30が重なり合った部分(例えば板材同士の接合部や前記当接部分36等。)を除く趣旨であって、具体的には、
図2および
図3に示す支柱部材10の場合には、板材28のみで側面部を構成する部分を意味する。
【0029】
また、
図2に示す支柱部材10は、横断面で見て、前後対称および左右対称に構成した場合を示している。これは、ロール成形した板材で支持部材10を製造する場合、前後対称および左右対称に構成することが、スプリングバックによる歪が発生しにくくなる傾向があり、その結果、突合せ溶接部の仕上げ加工が容易になり、あるいは省略できる点で好ましい。
【0030】
さらにまた、本発明の支柱部材10を構成する複数の板材は、1対の側面部24、26のそれぞれを構成する2枚の第1の板材28、28と、前面部20および後面部22のそれぞれを構成する、主面部42、および該主面部42の両側端からそれぞれ主面部42に対し略直交方向に延在し、2枚の第1の板材28、28のそれぞれの側端部に接合されて側面部24、26を構成する両腕部44、44からなり、横断面が全体として略U字状をなす2枚の第2の板材30、30との合計4枚の板材であることが好ましい。このように
構成することによって、前面部20および後面部22の厚さt2と、1対の側面部24、26の厚さt1とをそれぞれ所望の厚さに設定することが容易になり、材料使用量を有効に削減することができる。
【0031】
図2および
図3に示す構造を有する支柱部材10は、第1の実施形態であって、支持部材10の2枚の第2の板材30、30は、互いに略U字状が内向きとなる方向に配置され、第2の板材30の両腕部44、44が、対向する2枚の第1の板材28、28のそれぞれの側端部28a、28aの外面上に重ね合わされて接合する構成を有している。
また、
図2では、第1の板材28と第2の板材30の接合部位置にて支柱部材10の側面部の外面に生じる段差をなく、溶接や塗装後の外観をきれいにする等の観点から、第2の板材30の腕部44が重ね合わされる、第1の板材28の側端部28aを、第2の板材30の厚さ分だけ、内面側に段下がりさせた段差部46として形成した場合を示しているが、かかる構成は必要に応じて採用することができる。
【0032】
なお、第1の板材28と第2の板材30を接合する方法としては、例えばTIG溶接、YAGレーザー溶接、ファイバーレーザ溶接、スポット溶接などの各種溶接技術が挙げられるが、線状(連続的)に溶接部分を形成しても、また、点状(部分的)に溶接部分を形成してもよく、また、他の接合技術を用いてもよい。前記接合方法に挙げられている溶接法のうち、特にファイバーレーザ溶接は、細い部分を深く溶接することができ、また、溶接面がきれいで、溶接速度も速くできることから、自動化した連続ラインで大量製造する場合に好適である。
【0033】
図4および
図5に示す構造を有する支柱部材10Aは、第2の実施形態であって、2枚の第2の板材30、30は、互いに略U字状が外向きとなる方向に配置され、第2の板材30の両腕部44、44が、対向する2枚の第1の板材28、28のそれぞれの側端部28aの内面上に重ね合わせて接合される構成を有している。
【0034】
また、
図4では、第1の板材28と第2の板材30の接合部での接合強度を高めるとともに、美観の向上と、安全確保(棚板14に荷重が負荷される力の方向に対し、第2の板材30が、接合された第1の板材28の端部から引き離されにくい構造にする。)等の観点から、第1の板材28の側端部28aが、第2の板材30の腕部の両面を包み込むように折り返される折返し部分48をさらに有するように構成した場合を示している。
【0035】
図6および
図7に示す構造を有する支柱部材10Bは、第3の実施形態であって、2枚の第3の板材50、50を、横断面で見て、互いに180°回転した向きになるように重ね合わせて接合される構成を有している。この構成によって、支柱部材10Bは、前面部20および後面部22の厚さt2が、2枚の第3の板材50、50が重なり合った部分となるため厚くなり、一方、1対の側面部24、26のうち、1枚の第3の板材50のみからなる部分の厚さt1を、前面部20および後面部22の厚さの半分に設定することができる。
【0036】
以上のように、本発明の支柱部材は、特に、商品の荷重(支柱部材の前面部および後面部のいずれかの片面部に取り付けられた1枚の棚板に負荷される荷重は、例えば400〜800kgf程度)の負荷に耐えうる構造を有しているため、例えばデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の店舗に設置され、商品を陳列販売するための商品陳列什器を構成するのに適している。
【0037】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、上記した実施形態は、2枚または4枚の板材を組み合わせて支柱部材10、10A、10Bを構成した場合を示したが、3枚また
は5枚以上の板材を組み合わせて支柱部材10を構成することもできる。3枚の板材を組み合わせて支柱部材10を構成する例としては、第1の板材をロール成形および突合せ溶接により角管状部材とし、この前面部と後面部に対応する部分に、厚さを厚くするため、第2の板材を重ね合わせて接合する方法が挙げられる。また、本発明の支柱部材10、10A、10Bは、商品陳列什器の棚板14を横並びに配置して棚板上の商品載置面積を拡張することが可能なように、上下方向に複数個の係止孔18を設けた係止孔列を2列設けた場合を示しているが、そのような場合が想定されないのであれば、1列だけ設けてもよい。さらに、本発明の支柱部材10、10A、10Bは、両面陳列タイプの商品陳列什器を構成するのに適しているが、片面陳列タイプの商品陳列什器を構成する場合にも用いることができることは言うまでもない。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に従う支柱部材(発明例1〜3)を試作し、性能評価を行なったので以下で説明する。
(発明例1)
発明例1の支柱部材10は、
図2および
図3に示す構造を有し、第1および第2の板材28、30は鋼板であり、第1の板材28の厚さは1mm、第2の板材30の厚さは2mmであり、前面部20および後面部22を構成する部分の厚さt2を2mmとし、側面部24、26の厚さt1を1mmとし、支柱部材10は、長さ寸法が1200〜3000mmであり、横断面寸法が、26mm(前面部および後面部)および80mm(側面部)であり、縦溝の幅および深さをそれぞれ8mmおよび12mmとし、ロール成形および溶接によって試作した。
【0039】
(発明例2)
発明例2の支柱部材10Aは、
図4および
図5に示す構造を有し、第1および第2の板材28、30は鋼板であり、第1の板材28の厚さは1mm、第2の板材30の厚さは2mmであり、前面部20および後面部22を構成する部分の厚さt2を2mmとし、側面部24、26の厚さt1を1mmとし、支柱部材10Aは、長さ寸法が1200〜3000mmであり、横断面寸法が、26mm(前面部および後面部)および80mm(側面部)であり、縦溝の幅および深さをそれぞれ8mmおよび12mmとし、ロール成形および溶接によって試作した。
【0040】
(発明例3)
発明例3の支柱部材10Bは、
図6および
図7に示す構造を有し、第3の板材50は鋼板であり、第3の板材50の厚さは1mmであり、前面部20および後面部22を構成する部分の厚さt2を2mmとし、側面部24、26の厚さt1を1mmとし、支柱部材10Bは、長さ寸法が1200〜3000mmであり、横断面寸法が、26mm(前面部および後面部)および80mm(側面部)であり、縦溝の幅および深さをそれぞれ8mmおよび12mmとし、ロール成形および溶接によって試作した。
【0041】
(従来例)
従来例の支柱部材100は、
図8に示す構造を有し、厚さ2mmの鋼板をロール成形および溶接することによって、外形寸法が26mm×80mm×1200〜3000mmとなるように試作した。
【0042】
(性能評価)
上記試作した各支柱部材について、断面2次モーメント(cm
4)を算出して、断面性能を評価するとともに、重量(kgf)を測定した。表1に、それらの評価結果を示す。なお、表1中に示す断面性能および重量の数値は、いずれも従来例を100としたときの指数比で示したものであって、断面性能は、数値が大きいほど優れており、また、重量は
数値が小さいほど軽量であることを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示す結果から、発明例1〜3はいずれも、従来例に比べて、断面性能が92.5%以上を維持しつつ、重量が8%以上低減されている。特に、発明例1は、従来例に対して同等以上の断面性能を具備しつつ、重量が9.9%低減されている。加えて、支柱部材間にバックボードを配置する場合には、従来例は、支柱部材間にバックボードを取り付けるため、取付部品(たとえば側サッシュ)のような追加部材が必要となるが、本発明例1〜3はいずれも、支柱部材にバックボードを取り付けるための縦溝が形成されていて、追加部材が不要になるため、従来例に比べてさらに軽量化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、強度(特に断面性能)を維持またはさほど低下させることなく、材料使用量を有効に削減して、材料コストおよび重量の低減を実現した商品陳列什器用支柱部材を提供することができる。特に、本発明の支柱部材は、例えばデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の店舗に設置され、商品を陳列販売するための商品陳列什器を構成するのに適している。
【符号の説明】
【0046】
1 商品陳列什器
10、100、200 支柱部材
12 ブラケット
14 棚板
16 バックボード
18 係止孔
20 前面部
22 後面部
24、26 側面部
28 第1の板材
30 第2の板材
32 接合体
34 縦溝
36 側面部24、26の当接部分
38、40 分割管状部分
42 主面部
44 腕部
46 段差部
48 折返し部
50 第3の板材
t1 側面部24、26を構成する部分のうち、単一の板材のみからなる部分の厚さ
t2 前面部20および後面部22を構成する部分の厚さ