(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、大型で強力なマイクロ波発生装置を必要とする他、実際に出願人がテストをした結果、実験条件によっては型枠の変形が認められて、圧縮強度の測定精度に影響が出ることが分かった。また、強力なマイクロ波発生装置は、電源の問題や大きさの問題から現場で運用するには不向きである。さらに、型枠の大きさから作業効率などにも問題があることが分かった。
【0006】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、より効率が良く精度の高いフレッシュコンクリートの品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるフレッシュコンクリートの品質管理方法は、以下のような特徴を有する。
【0008】
(1)耐熱性を有する樹脂よりなる型枠に、フレッシュコンクリートを充填し、前記型枠内で加圧することで前記フレッシュコンクリートの脱水をし、前記型枠の外側からマイクロ波照射手段を用いてマイクロ波を照射し、前記型枠内の温度が前記型枠の変形を抑えられる所定温度以下となる高温・高圧状態で所定時間養生し、前記フレッシュコンクリートを硬化させ、前記型枠から硬化した前記フレッシュコンクリートを脱型して促進養生供試体とし、前記促進養生供試体の圧縮強度を測定すること、を特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載の態様によれば、マイクロ波照射手段を用いてフレッシュコンクリートにマイクロ波を照射して高温・高圧状態での養生を行い、促進養生供試体を作製する。このことで、圧縮強度試験を行うための管理用供試体を作製するのに必要な、フレッシュコンクリートの凝結・硬化に用いる時間を短縮できる。出願人の行った実験においても、マイクロ波を照射しての促進養生試験の結果は、管理用供試体の材齢28日の圧縮強度であるσ28と相関を示していることを確認している。この結果、管理用供試体の作製を早くできる上に、型枠の変形を抑えられるため圧縮強度試験の精度を向上させることが可能となる。その結果、より効率が良く精度の高いフレッシュコンクリートの品質管理方法の提供が可能となる。
【0010】
(2)(1)に記載のフレッシュコンクリートの品質管理方法において、前記型枠の内部に充填される前記フレッシュコンクリートの温度を、温度計測手段を用いて測定し、前記温度の変化を監視して前記所定温度を超える前に前記マイクロ波照射手段によるマイクロ波の照射を終え、前記促進養生供試体を作製すること、が好ましい。
【0011】
上記(2)に記載の態様によれば、温度計測手段を用いて促進養生供試体を作製することが出来るので、フレッシュコンクリートの材料が変化した場合にも対応可能である。これは上記(1)に記載の「所定時間」を決めるにあたり、適切な温度条件になるように事前に実験が必要となる。この為、熱電対などの温度測定手段にて温度を監視しながら促進養生供試体を作製することで、事前実験の時間を短縮することが期待出来る。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載のフレッシュコンクリートの品質管理方法において、前記型枠の前記樹脂にポリフェニレンサルファイドを用い、前記型枠内の温度が200℃以下に設定されていること、が好ましい。
【0013】
上記(3)に記載の態様によれば、樹脂に耐熱性が高く吸水性が低いため寸法安定性の高いポリフェニレンサルファイドを用い、型枠内の温度を200℃以下に保っている。この結果、コンクリートの熱膨張に耐えて、変形を拘束できるので、型枠により作製される管理用供試体の寸法精度を高め、圧縮強度試験の精度を向上させることが可能となる。
【0014】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のフレッシュコンクリートの品質管理方法において、前記型枠の大きさを、前記供試体が75mm以下の立方体となるサイズにすること、が好ましい。
【0015】
上記(4)に記載の態様によれば、型枠の大きさを管理用供試体の一辺の長さが75mm以下とすることで、必要とされるマイクロ波の出力を抑えることができる他、同時に作製できる管理用供試体の数を増やすことが可能となり、圧縮強度試験に要する時間を短縮することが可能となる。
【0016】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のコンクリートの品質管理方法において、事前準備として、試験練りを行って前記フレッシュコンクリートの配合を決定し、前記配合を元に前記促進養生供試体より得られる圧縮強度と、所定材齢の管理用供試体より得られる圧縮強度との相関関係である圧縮強度相関を調べ、実施工の際に、前記促進養生供試体より得られる圧縮強度より、前記圧縮強度相関を用いて所定材齢の管理用供試体の圧縮強度を推定して、前記フレッシュコンクリートが、要求品質を満たす事を確認することが好ましい。
【0017】
上記(5)に記載の態様によれば、圧縮強度試験で得られる結果を、実施工の際の荷卸し時、つまりフレッシュコンクリートの打込み前に推定することが可能となる為、フレッシュコンクリートの品質管理を向上させることができる。また、後に材齢28日の圧縮強度であるσ28の確認を行うので、ダブルチェックにもなる。これによってより一層確実な品質のコンクリートを打込むことができる。
【0018】
(6)(5)に記載のコンクリートの品質管理方法において、前記試験練りでの前記促進養生供試体を作製の際に、加熱時間と温度の相関関係である時間温度相関を調べ、前記実施工の際に行う前記促進養生供試体の作製に、前記時間温度相関を用いて前記所定時間を決定すること、が好ましい。
【0019】
上記(6)に記載の態様により、時間温度相関を用いて促進養生供試体の作製の所定時間を決定できるので、実施工の際に温度を測定しながら促進養生供試体を作製すると言った手間を省くことが可能となる。これにより、使用機器の簡略化やコストダウンに貢献できる。
【0020】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様によるコンクリート構造物製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0021】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のコンクリートの品質管理方法を用いて、コンクリートを打込むこと、を特徴とする。
【0022】
上記(7)に記載の態様によれば、より品質の高いコンクリートを打込めるため、コンクリートの配合ミス等のヒューマンエラーや構造物中の圧縮強度のバラツキを抑制できるため、安心で確実なコンクリート構造物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、促進養生供試体TPを作製する型枠100の斜視図を示す。型枠100は、ガラス繊維で強化したポリフェニレンサルファイド樹脂(以下PPS)が用いられている。型枠100は、5面の板材から構成され、それぞれの板厚は数cm程度とされている。型枠100の上面は開口しており、上蓋101によって塞がれる。型枠100の四隅にはボルト102が設けられている。ボルト102は埋め込み構造でも、型枠100の下面からボルト102を貫通させる構造でも良い。
【0025】
上蓋101の4隅にはボルト102を貫通する穴が設けられている。そして、型枠100に上蓋101を被せた際に、型枠100に設けられたボルト102を上蓋101に貫通させる。その状態で、後述の
図4に示すように蝶ナット103などを用いて締め付けることで、上蓋101の内側で、内部に充填したフレッシュコンクリートFCを加圧し、加圧脱水が可能な構成となっている。型枠100の内寸法は、促進養生供試体TPの一辺が75mmの立方体が形成できるように設計されている。なお、型枠100に用いる素材にはPPSに限らず、マイクロ波を透過可能な耐熱合成樹脂、或いはセラミックス等の耐熱性の高い素材を用いても良い。
【0026】
図2に、圧縮強度試験の作業手順をフローチャートに示す。
図3に、促進養生供試体TPの作製手順をフローチャートに示す。なお、これらのフローチャートは、説明の都合上、手順を簡略化して説明している。
図4に、促進養生供試体TPの作製手順を模式化したものを図に示す。(a)は、フレッシュコンクリートFC充填工程、(b)は、加圧脱水工程、(c)は、促進養生工程、(d)は、脱型工程、(e)は、促進養生供試体TPの採寸工程、(f)は、圧縮強度試験工程を模式的に示している。最初に、圧縮強度試験の作業手順について、
図2を用いながら説明を行う。
【0027】
S10では、試験練りを行い、相関図の作成を行う。試験練りは、水セメント比(
W/C)の異なる3種類以上の配合を使用する。この試験練りにより、後述する促進養生供試体TPの圧縮強度である促進強度(以下、「促進養生供試体TPの圧縮強度」を「促進強度」とする)と管理用供試体の材齢28日の圧縮強度であるσ28(以下、「管理用供試体の材齢28日の圧縮強度」を「σ28」とする)の結果との相関を調べ、促進強度とσ28との圧縮強度相関を示す相関図を作成する。
図8に、σ28と促進強度の関係をグラフに示す。
図8は、試験練りを行いW/Cを変えて作製したσ28と促進強度の関係を示すものであり、相関係数0.986という相関性を示している事が分かる。
図8は、後述する促進養生供試体TPの圧縮強度試験結果から現場で打込むフレッシュコンクリートFCのσ28の推定に用いる。
【0028】
S11では、コンクリートの練り混ぜを行う。骨材(砂利)や水、添加剤を普通ポルトラントセメントに加えて練り混ぜ、フレッシュコンクリートFCを作製する。なお、第1実施形態では普通ポルトラントセメントを使用しているが、早強セメントや高炉セメントなど他の種類のセメントを用いることを妨げない。このフレッシュコンクリートFCは、後述する現場50に建設されるコンクリート構造物に用いる。促進養生供試体TPもこの際に同じフレッシュコンクリートFCを用いて作る。ここで練り混ぜられるフレッシュコンクリートFCは一般的にコンクリート構造物に用いられるものである。
【0029】
S12では、マイクロ波養生法による促進養生供試体TPの作製を行う。第1実施形態ではマイクロ波発生装置として電子レンジ200を用いている。フレッシュコンクリートFCを型枠100内に入れて、電子レンジ200の内部にてマイクロ波Mを照射し、促進養生を行う。具体的には後述する。S13では、S12で作製した促進養生供試体TPの外形寸法を測定する。
図4(e)に相当する。
【0030】
S14では、促進養生供試体TPの寸法が規定範囲内に収まっているかを判断する。寸法や平面度などが規定範囲内に収まらなければ、S12の促進養生供試体TPの作製過程からやり直す。規定寸法内に収まっていればS15に移動する。S15では、圧縮強度試験を行う。
図4(f)に示すように促進養生供試体TPの圧縮強度試験を行って、圧縮強度を調べる。圧縮強度試験に用いる試験器はJISB7721の7(試験機の等級)に規定する1等級以上のものに準じる。ここで、S10で求めた相関図を利用して促進養生供試体TPの圧縮強度試験の結果からフレッシュコンクリートFCのσ28を推定する。
【0031】
S16では、試験結果の評価を行う。S17では、圧縮強度試験の結果が規定範囲内にあるかを判定する。圧縮強度が規定範囲内になければ、S11のコンクリートの練り混ぜからやり直す。規定範囲に収まっていれば、処理を終了する。S11からやり直す場合は、現場での打込みは行わない。
【0032】
次に、促進養生供試体TPの作製手順について、
図3を用いながら説明を行う。S20で、型枠100内にフレッシュコンクリートFCを打込む。
図4(a)に相当する工程である。S21で、型枠100内に流し込まれたフレッシュコンクリートFCに熱電対110を埋め込む。この熱電対110でフレッシュコンクリートFC内の温度を計測する。ただし、熱電対110での温度計測の他に、図示しない放射温度計を用いて型枠100の外面温度を計測する。
【0033】
S22で、型枠100をボルト102で締め込み、加圧脱水する。
図4(b)に相当する工程であり、上述した様に型枠100の四方にはボルト102が設けられ、これを貫通して上蓋101が配置される。そして、上部より蝶ナット103等を用いて閉め込むことで、内部に注入されたフレッシュコンクリートFCに加圧する。これによってフレッシュコンクリートFCが加圧脱水され、数十gの水が脱水される。適度に脱水しておくことで促進強度を適切に高めることができる。
【0034】
S23で、型枠100を電子レンジ200に入れて加熱する。型枠100はマイクロ波Mを透過するので、マイクロ波MはフレッシュコンクリートFC内の水分子を振動させて発熱する。この熱がフレッシュコンクリートFC内の水和反応を促進している。
【0035】
S24で、温度が200℃以下であることを判断する。監視する温度は、型枠100の内部に配置した熱電対110によって計測されるフレッシュコンクリートFCの内部の温度と、型枠100の外表面温度を計測する放射温度計によって計測される温度である。これらの結果を基に、型枠100内のフレッシュコンクリートFCの温度が200度を超えないように監視する。200度を超えそうであればS25に移行し、それまでは加熱を続ける。なお、この温度チェックは後述の
図6に示される棚温度区間を越えてからのチェックとなる。
【0036】
S25で、加熱を終了する。電子レンジ200内部に配置された型枠100に、マイクロ波Mが照射されることでフレッシュコンクリートFC内を加熱するが、マイクロ波Mの照射を止めることで、フレッシュコンクリートFC内の加熱は終了する。試験時間は概ね8分程度を想定しているが、フレッシュコンクリートFCの配合などによって、必要な加熱時間が異なることから、温度による管理が望ましい。
【0037】
S26で、脱型をして促進養生供試体TPを取り出す。
図4(d)に相当する工程で、型枠100の温度が下がったところで、型枠100から硬化したフレッシュコンクリートFCの塊を脱型し、促進養生供試体TPとする。そして処理を終了する。
【0038】
図9に、σ28と促進強度の関係をグラフに示す。
図9は
図8とは別の現場で用いるフレッシュコンクリートFCを対象に行った試験練りの結果より得られた相関図である。相関係数は0.899であり、σ28と促進強度とは高い相関関係を示している事が分かる。この様に、配合によって結果が変化するため、現場毎に
図2に示すような手順での圧縮強度試験を行う必要がある。
【0039】
表1は、コンクリートの品質管理項目について表に示す。
【表1】
この表1では、「品質確認時期」について、左側に「従来方法」を右側に「第1実施形態の方法」について説明している。「工場」は
図5に示されるフレッシュコンクリートを製造する工場でのことであり、「荷卸し時」は
図5に示されるミキサー車に積載されたフレッシュコンクリートを現場に供給する際である。
【0040】
なお、圧縮強度に関しては管理用供試体を製造後28日で、圧縮強度試験を行って調べる。第1実施形態のコンクリートの品質管理方法では、基本的に「荷卸し時」と「工場」での検査を行い、ダブルチェックしている。「塩化物含有量」や「単位水量」は「荷卸し時」に1度検査をすれば足りるので従来と同様としている。
【0041】
図5に、フレッシュコンクリートFCの運搬例を図に示す。フレッシュコンクリートFCは、生コン工場20で製造されて、ミキサー車25でコンクリート構造物を建設する現場50まで運搬される。そして、現場50にてポンプ車30によってフレッシュコンクリートFCが打込まれる。ミキサー車25での運搬時間は30分程度、そして荷卸しに15分程度かかると見込まれていて、生コン工場20から現場50での打込みまで45分程度かかる。
【0042】
第1実施形態のフレッシュコンクリートの品質管理方法は上記構成であるので、以下に示す作用及び効果を奏する。
【0043】
まず、第1実施形態のフレッシュコンクリートの品質管理方法は、耐熱性を有する樹脂よりなる型枠100に、フレッシュコンクリートFCを充填し、型枠100の外側からマイクロ波照射手段である電子レンジ200を用いてマイクロ波Mを照射し、型枠100内の温度が型枠100の変形を抑えられる所定温度以下になる温度設定にて高温・高圧状態で所定時間養生し、フレッシュコンクリートFCを硬化させ、型枠100から硬化したフレッシュコンクリートFCを脱型して促進養生供試体TPとし、促進養生供試体TPの圧縮強度を測定するものである。
【0044】
また、型枠100の素材に用いられる樹脂にPPSを用い、型枠100内の温度が200℃以下に設定されていることが好ましい。また、型枠100の大きさを促進養生供試体TPの一辺の長さが75mm以下とすることが好ましい。
【0045】
型枠100に耐熱性樹脂であるPPSを使用している点で、特許文献1と同様ではあるが、温度管理を行うことで促進養生供試体TPの試験精度を向上させ、現場での使用に耐えうる技術としている点で異なる。PPSの熱変形温度は260℃であり、第1実施形態ではガラス繊維強化PPSを使用しているが、200℃を超える条件で加熱した場合、温度変形による促進養生供試体TPの寸法公差が大きくなることが見込まれる。
図6に、加熱時間と温度の関係をグラフに示す。
図6では、縦軸に型枠100に注入されたフレッシュコンクリートFCの内部温度(℃)を示す。横軸に経過時間(sec)を示す。加熱条件は電子レンジ200の内部に型枠100を1つ置き、750Wで10分間連続加熱している。
【0046】
これによれば、フレッシュコンクリートFCは120℃前後まで温度上昇した後、所定時間温度上昇が止まる棚温度区間が続き、その後、急激な温度上昇が確認されている。出願人は10分間連続加熱後にはフレッシュコンクリートFCの温度が250℃まで上昇していることを確認した。加熱条件を変えてもフレッシュコンクリートFCのこの温度傾向は同じであり、概ね200℃辺りを境にすれば、型枠100が変形する温度に達する前に促進養生供試体TPの作製が可能であることを確認している。また、棚温度区間は、加熱条件として電子レンジ200の出力を高めることで、その時間が短縮される傾向にあることを確認している。
【0047】
型枠100のサイズを一辺が75mmの立方体となるように小型化したことも、有効に作用している。従来は、促進養生供試体TPの1辺は100mmとされていたが、第1実施形態では一辺を75mmとしている。出願人はこのサイズの型枠100を用い必要な促進養生供試体TPの作製が可能であることを確認している。促進養生供試体TPを小型化することで電子レンジ200によって1度に加熱できる個数を2つに増やすことができた。なお、必要な促進養生供試体TPの形成が可能であることを確認している。
【0048】
図7に、出願人が確認した促進強度とσ28との関係を表すグラフを示す。縦軸にσ28の試験結果を、横軸に促進強度の試験結果を示している。このグラフでは、型枠100を電子レンジ200内で加熱し、促進養生をした結果と同じ条件のσ28の相関関係をグラフ化しており、異なる温度条件のデータもグラフのデータとして用いている。この結果、促進強度とσ28の相関係数は0.8程度となった。そして
図7に示される様な信頼区間を設定し、その範囲に入ってくるデータのみを採用することで精度の向上に期待ができる。温度条件が同一なものだけにデータを絞ると、0.9以上の相関係数が得られた事も確認した。この事から、促進強度とσ28には強い相関性が確認できる。つまり、第1実施形態の促進養生を用いることで、適切なフレッシュコンクリートFCの品質管理を行うことが可能となる。
【0049】
また、第1実施形態では型枠100の内部に充填されたフレッシュコンクリートFCの温度を監視しながら、電子レンジ200で加熱することで、型枠100の変形を抑えつつ促進養生を可能としている。更に、一辺を75mmとしたことで、同時に複数の型枠100を処理しやすくなったことに加え、型枠100毎に必要なエネルギー量を低く抑えることができるので、結果的に促進養生における作業効率を向上させている。
【0050】
一般的に、フレッシュコンクリートの性能は材料依存性が高く、ある程度の性能のバラツキは生じやすい。そのため、コンクリート標準示方書では、圧縮強度において「設計基準強度を下回る確率が5%以下であることを、適当な生産者危険率で推定できること」としている。従来は、フレッシュコンクリートFCを用いて管理用供試体を作製し、σ28を確認して、3回の試験の内、1回の試験が呼び強度85%以上、かつ3回の平均値が呼び強度以上という条件を満足するかを判断していた。そして条件が満たされなければ、該当するコンクリート構造物に補強・補修などの手段を講じ、条件を満足すれば、打込まれたコンクリートは生産者危険率が規定を満たすと判断されている。
【0051】
しかし第1実施形態では、圧縮強度試験を、規定日数経過時に加え、フレッシュコンクリートFCの荷卸しの際にも行うことでより好ましい結果が得られる。また、フレッシュコンクリートFCの荷卸し時には、生コン工場20にて促進養生試験を行い、その試験結果次第でフレッシュコンクリートFCの打込みを行うかどうかの判断をすることが望ましい。ミキサー車25にて生コン工場20から現場50までフレッシュコンクリートFCを運搬する間に、促進養生試験を行うことが可能である。促進養生は1回あたり7分〜10分程度の時間で終了するため、圧縮強度試験の実施を含めて30分以内に完了することができる。
【0052】
つまり、生コン工場20からフレッシュコンクリートFCを出荷した後、促進養生を行い、圧縮強度試験を実施した上で、現場50に到着したフレッシュコンクリートFCが、打込みに適するフレッシュコンクリートFCであるかどうかを、現場でフレッシュコンクリートFCを打込む前に判断ができる。フレッシュコンクリートFCの製造にあたっては、配合ミスなどのヒューマンエラーや構造物中の圧縮強度のバラツキは避けられなかったが、第1実施形態の品質管理方法によって、事前に基準に満たないフレッシュコンクリートFCを排除できる。つまり、前述した生産者危険率そのものを排除できることとなるため、結果的に品質向上に貢献することができる。
【0053】
また、別途管理用供試体を用意しσ28を確認してダブルチェックすれば、更なる品質向上に貢献することが可能である。またこうして製造したフレッシュコンクリートFCを用いて打設したコンクリート構造物は、高い品質が維持されるため、結果的にコンクリート構造物の寿命を延ばすことに貢献できる。
【0054】
これは、フレッシュコンクリートFCの性質上、この練り混ぜから荷卸しまでの時間が長くなるほど、フレッシュコンクリートFCのスランプや空気量が低下し、初期ひび割れの発生やコールドジョイントの生成、充填不良などを引き起こす虞が高くなるためである。このため、JISでも練り混ぜから荷卸しまでの時間を90分以内と定めている。しかし、こうしたフレッシュコンクリートFCの性状は、温度依存性の他に骨材などにも影響されるので、練り混ぜから荷卸しまでの時間だけで管理するだけでは、コンクリートの品質を最低限保証できるに過ぎず、品質向上に繋がらなかった。
【0055】
第1実施形態では、表1に示すような運用形態を採ることで、コンクリートの品質に関して検査精度を上げることができる。これが、コンクリート構造物の寿命を延ばすことにも貢献する。また、第1実施形態のフレッシュコンクリートFCの品質管理方法であれば、ミキサー車での移動にあたって品質が変化したかどうかという点もチェックすることができる。こうした品質の変化を監視できれば、予め生コン工場20でのフレッシュコンクリートFC製造工程にて、品質の変化に対応した配合・練り混ぜなどを実施できる可能性がある。
【0056】
また、簡易な検査でフレッシュコンクリートFCの品質のチェックが可能であるため、フレッシュコンクリートFCの品質向上に寄与できる。フレッシュコンクリートFCの品質管理に関してはこれまでも様々な方法が提案されてきたが、時間が掛かったり、手間が掛かったり、といった要因で実際には殆ど行われてこないのが実情である。しかしながら、促進養生供試体TPの1辺を75mmにするなどの工夫により、検査時間の短縮が可能となった。また、熱電対110等を用いて促進養生の温度管理することで、促進養生供試体TPの寸法精度を高めることに貢献でき、圧縮強度試験の信頼性を高めることが可能となった。このことで、よりフレッシュコンクリートFCの品質向上に資することとなった。
【0057】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態と用いる機器や手順はほぼ同じであるが、促進養生供試体TPの作製において時間と温度の相関関係を求め、それを利用する点で異なる。以下に説明する。
【0058】
図10に、第2実施形態の圧縮強度試験の作業手順をフローチャートに示す。
図10は
図2のフローチャートとほぼ同じであるが、S30の記載だけ異なる。S30では、圧縮強度の相関性を示す相関図の他に、促進養生供試体TPを作製するにあたって、加熱時間と温度との相関である時間温度相関を調べて相関図を得る。このS30での温度時間相関は、S32でのマイクロ波養生法にて促進養生供試体TPを作製する際に用いる。
【0059】
図11に、促進養生供試体TPの作製手順をフローチャートに示す。
図11は
図3のフローチャートとほぼ同じであるが、
図2のS21に相当する熱電対を埋め込む手順が不要であり、S24で温度にて判断する手順が、S43に示される様に所定時間を経過したかで判断される。なお、
図10のS30における試験練りの際に作製する促進養生供試体TPに関しては、
図3の手順に基づいて作製され、この際に時間温度相関が調査される。
【0060】
第2実施形態のフレッシュコンクリートの品質管理方法は上記構成であるので、以下に示す作用及び効果を奏する。
【0061】
第2実施形態では第1実施形態とは異なって、S30の試験練りの段階で時間温度相関が調べられた上で、実施工時における促進養生供試体TPの作製には熱電対などの温度計測手段を用いず、時間で管理するようにしている。この結果、促進養生供試体TP作製時における手順の簡略化が図られ、ヒューマンエラーの要因を減らす事が可能となる。さらに、使用機器の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【0062】
以上、本発明に係るフレッシュコンクリートの品質管理方法の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。