(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ヒータを収容するための管体は、握持部への熱伝達を抑制するために、非常に薄い管壁を有する。作業者が、加熱工具を加工対象物に当接させると、薄い管壁を有する管体は、加工対象物からの反力によって、弾性的に変形されやすい。管体の変形(たとえば、曲げ変形)は、作業者の労力を増大させることもある。管体の変形の結果、作業者の力が加工対象物に十分に伝わらないこともある。たとえば、ワイヤストリッパを操作する作業者は、ケーブルの被覆部を剥離する際、力が逃げ、ケーブルに伝わらないため、強い力で握持部を握る必要がある。したがって、従来の加熱工具は、非生産的な作業を作業者に強いることになっている。
【0006】
本発明は、作業者が効率的な作業を行うことを可能にする加熱工具に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る加熱カートリッジは、加工対象物に、熱エネルギを与える。加熱カートリッジは、前記熱エネルギを発生させるヒータと、前記ヒータの少なくとも一部が収容され
ているとともに前記加工対象物から物理的な力を受ける第1区間と、前記第1区間から延設された第2区間と、を含む収容筒と、を備えている。
前記第1区間は、前記第2区間よりも少なくとも部分的に薄肉であ
る。前記収容筒は、前記第1区間及び前記第2区間に亘って延びる第1筒と、前記第1筒に挿入され、前記第2区間を形成する第2筒と、を含んでいる。
【0008】
上記構成によれば、第1区間は、第2区間よりも少なくとも部分的に薄肉であるので、第2区間へ伝わる熱は、低いレベルに維持される。収容筒は、第1区間よりも、第2区間において厚肉であるので、収容筒の変形は生じにくい。したがって、作業者は、作業を、効率的に行うことができる。
【0010】
第2区間は、第1筒内への第2筒の挿入によって形成されるので、収容筒は、容易に製造される。
【0011】
上記構成において、前記第2筒には、前記第2区間の延設方向に延びるスリットが形成されてもよい。前記スリットは、前記第1筒に圧入された前記第2筒の径方向の弾性変形を許容してもよい。
【0012】
上記構成によれば、第2区間の延設方向に延びるスリットは、第2筒の径方向の弾性変形を許容するので、第2筒は、第1筒内へ容易に挿入される。スリットは、第1筒に圧入された第2筒の弾性変形を許容するので、第2筒は、第1筒の内面に密接される。したがって、第1筒及び第2筒は、第2区間における収容筒の高い剛性に貢献することができる。
【0013】
上記構成において、前記スリットは、波形であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、波形のスリットが形成された一般的なスプリングピンが、第2筒として利用可能となる。
【0015】
上記構成において、加熱カートリッジは、前記ヒータへ電力を供給する電力線を更に備えてもよい。前記第2筒は、前記ヒータから離れた位置において、前記電力線を取り囲んでもよい。
【0016】
上記構成によれば、第2筒は、ヒータから離れた位置において、電力線を取り囲むので、温度上昇は、収容筒の第2区間に生じにくくなる。
【0017】
上記構成において、前記収容筒は、前記電力線へ前記電力を供給するための電気的接点を含むコネクタ部が形成された第3区間を含んでもよい。前記第2区間は、前記第1区間と前記第3区間との間に位置してもよい。
【0018】
上記構成によれば、第2区間は、第1区間と第3区間との間に位置するので、加熱カートリッジを設計する設計者は、一般的な加熱カートリッジに用いられるヒータ及びコネクタ部の位置関係を、第1区間内のヒータと第3区間に形成されたコネクタ部との間の位置関係に適用することができる。したがって、加熱カートリッジは、既存の加熱工具に取り付けられやすくなる。
【0019】
上記構成において、加熱カートリッジは、前記第1区間において、前記収容筒に接続された加工部を更に備えてもよい。前記加工部は、前記熱エネルギを前記加工対象物に与えてもよい。
【0020】
上記構成によれば、加工部は、第1区間において、収容筒に接続されるので、加工部は、ヒータによって十分に加熱される。したがって、作業者は、熱エネルギを、加工対象物に適切に与えることができる。このとき、第1区間が、物理的な力を、加工対象物から受けても、収容筒は、第1区間よりも、第2区間において厚肉であるので、収容筒の変形は生じにくい。したがって、作業者は、作業を、効率的に行うことができる。
【0021】
上記構成において、前記加工対象物は、芯線と、前記芯線を被覆する被覆部と、を有するケーブルであってもよい。前記加工部は、前記被覆部を選択的に剥離するブレードであってもよい。
【0022】
上記構成によれば、収容筒は、第1区間よりも、第2区間において厚肉であるので、収容筒の変形は生じにくい。したがって、作業者は、被覆部を効率的に剥離することができる。
【0023】
上記構成において、前記加工対象物は、半田であってもよい。前記加工部は、半田ごてのこて先であってもよい。
【0024】
上記構成によれば、収容筒は、第1区間よりも、第2区間において厚肉であるので、収容筒の変形は生じにくい。したがって、作業者は、半田付け作業を、効率的に行うことができる。
【0025】
上記構成において、加熱カートリッジは、前記第1区間において、前記収容筒を覆うスカート部を更に備えてもよい。前記スカート部は、前記加工部まで延びてもよい。前記スカート部と前記収容筒との間に空気層が形成されてもよい。
【0026】
上記構成によれば、スカート部と収容筒との間に空気層が形成されるので、スカート部へ伝達される熱量は、低いレベルに維持される。したがって、作業者が、誤って、加工対象物などをスカート部に接近或いは接触しても、スカート部から加工対象物へ伝達される熱量も低くなる。加えて、空気層により、ヒータが発生させた熱エネルギが逃げにくく、熱エネルギの大半は、加工部へ伝わることとなる。したがって、加熱カートリッジは、ヒータが発生させた熱エネルギを効率的に利用することができる。
【0027】
上記構成において、前記第1筒は、前記加工部に接続される第1部分と、前記第1部分と前記第2筒との間で延びる第2部分と、を含んでもよい。前記第2部分は、前記第1部分よりも薄肉であってもよい。
【0028】
上記構成によれば、第2部分は、前記第1部分よりも薄肉であるので、第2筒によって形成される第2区間へ伝わる熱は、低いレベルに維持される。第1部分は、第2部分より厚いので、ヒータから加工部への熱的損失は低いレベルに抑えられる。
【0029】
本発明の他の局面に係る加熱工具は、上述の加熱カートリッジと、使用者によって握持される握持部と、を備える。前記収容筒の前記第2区間の一部は、前記握持部に嵌め込まれる。
【0030】
上記構成によれば、使用者が、加熱カートリッジを加工対象物に押し当てると、加工対象物からの反力は、握持部に嵌め込まれた収容筒の第2区間に集中的に作用しやすい。収容筒は、第1区間よりも、握持部に嵌め込まれる第2区間において厚肉であるので、収容筒の変形は生じにくい。したがって、作業者は、作業を、効率的に行うことができる。
【0031】
本発明の更に他の局面に係る加熱工具は、加工対象物に熱エネルギを与える。加熱工具は、使用者によって握持される握持部と、前記熱エネルギを発生させるヒータと、前記ヒータの少なくとも一部が収容される第1区間と、前記第1区間から延設された第2区間と、を含む収容筒と、を備える。前記第1区間は、前記加工対象物から物理的な力を受ける。前記第2区間は、前記握持部に接続される。前記第1区間は、前記第2区間よりも少なくとも部分的に薄肉である。
【0032】
上記構成によれば、収容筒は、握持部に接続される第2区間よりも、ヒータが収容される第1区間において少なくとも部分的に薄肉であるので、握持部へ伝わる熱は、低いレベルに維持される。収容筒は、第1区間よりも、第2区間において厚肉であるので、収容筒の変形は生じにくい。したがって、作業者は、作業を、効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
上述の技術によって得られる加熱カートリッジ及び加熱工具は、作業者が効率的な作業を行うことを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
従来の加熱工具に関して、ヒータから作業者の手へ伝達される熱エネルギを低いレベルに維持するために、ヒータが収容される収容筒の肉厚は、可能な限り小さな値に設定されている。この場合、作業者の手へ伝達される熱エネルギは低いレベルに維持される一方で、収容筒は、加工対象物からの反力によって弾性的に変形(曲げ及び撓み)されるので、作業効率が低下する。作業効率の低下の課題に対応して、収容筒の肉厚を全体的に大きな寸法値にすると、作業者の手へ伝達される熱エネルギは増大する。したがって、作業者へ伝達される熱エネルギの低減と作業効率の向上とは、相反する関係にある。本発明者等は、相反する関係にあるこれらの課題に取り組み、改善された加熱工具を開発した。第1実施形態において、例示的な加熱工具が説明される。
【0036】
図1は、第1実施形態の加熱工具100の概念図である。
図1を参照して、加熱工具100が説明される。
【0037】
加熱工具100は、熱エネルギを利用して所定の加工を行う様々な工具として形成され得る。たとえば、加熱工具100は、ワイヤストリッパ又は半田ごてであってもよい。本実施形態の原理は、加熱工具100の特定の用途に限定されない。
【0038】
加熱工具100は、握持部200と、ヒータ300と、収容筒400と、加工部500と、を備える。握持部200は、加熱工具100を使用する使用者によって握持される。握持部200は、ヒータ300への電力供給を担う回路、ヒータ300への供給される電力量を制御する回路や収容筒400を固定或いは保持するための保持構造を内蔵する筐体として機能してもよい。設計者は、加熱工具100の用途に適合するように、握持部200に様々な形状及び構造を与えることができる。本実施形態の原理は、握持部200の特定の形状及び構造に限定されない。
【0039】
収容筒400は、握持部200から延設される。収容筒400は、握持部200から分離可能に形成されてもよい。この場合、設計者は、収容筒400、ヒータ300及び加工部500を1つのカートリッジとして設計することができる。代替的に、収容筒400は、握持部200に一体的に形成されてもよい。本実施形態の原理は、収容筒400が、握持部200から分離可能か否かによっては何ら限定されない。
【0040】
収容筒400は、第1区間と、第2区間と、に概念的に区分される。第1区間は、加工部500から延びる所定の長さ区間である。第2区間は、第1区間から、握持部200へ向けて延びる所定の長さ区間である。
【0041】
加工部500は、第1区間において、収容筒400に接続される。ヒータ300の全部又は一部は、収容筒400の第1区間内に収容される。ヒータ300及び加工部500はともに第1区間に接続されるので、加工部500は、ヒータ300が発生させた熱エネルギを効率的に受け取ることができる。
【0042】
握持部200は、第2区間において、収容筒400に接続される。収容筒400は、第1区間において、肉厚W1を有する。収容筒400は、第2区間において、肉厚W2を有する。肉厚W1は、肉厚W2よりも小さい。したがって、ヒータ300が発生させた熱エネルギは、第2区間へ伝わりにくくなる。この結果、過度の昇温は、握持部200に生じない。
【0043】
加熱工具100を設計する設計者は、収容筒400に様々な構造を与えることができる。設計者は、第1区間と第2区間とに亘って延びる直管と、直管に挿入され、第2区間を形成する挿入管と、を用いて、収容筒400を形成してもよい。この場合、設計者は、挿入管として、スプリングピンを用いてもよい。代替的に、設計者は、第1区間と第2区間とに亘って延びる直管と、直管よりも太く、且つ、短い基端管と、を用いて、収容筒400を形成してもよい。基端管に挿入された直管の部分は、第2区間を形成する。更に代替的に、設計者は、単一の管体を用いて、収容筒400を形成してもよい。単一の管体は、第1区間及び第2区間に亘って、一定の外径を有する一方で、第1区間において、大きな内径を有し、且つ、第2区間において、小さな内径を有してもよい。あるいは、単一の管体は、第1区間及び第2区間に亘って、一定の内径を有する一方で、第1区間において、小さな外径を有し、第2区間において、大きな外径を有してもよい。本実施形態の原理は、収容筒400の特定の構造及び形状に限定されない。
【0044】
ヒータ300は、加工部500の近くに配置される。ヒータ300は、第1区間と第2区間との間の境界に重ならないように、第1区間内に配置されてもよい。ヒータ300は、一般的な発熱部品であってもよい。したがって、本実施形態の原理は、ヒータ300として用いられる特定の発熱部品に限定されない。
【0045】
加工部500は、加熱工具100の用途に適合するように設計される。加熱工具100が、半田を溶融する半田ごてであるならば、加工部500は、半田ごてのこて先であってもよい。加熱工具100がワイヤストリッパであるならば、加工部500は、ケーブルの芯線を被覆する被覆部を選択的に剥離するように形成されたブレードであってもよい。本実施形態の原理は、加工部500の特定の形状及び構造に限定されない。
【0046】
加熱工具100を使用する使用者は、半田やケーブルといった加工対象物(図示せず)に加工部500を当接させ、熱エネルギを加工対象物に与える。このとき、加工部500は、加工対象物と加工部500との当接に起因して生じた反力を受ける。加工対象物からの反力は、加工部500を通じて、収容筒400の第1区間へ伝わる。加工対象物からの反力によって引き起こされる収容筒400の第1区間の曲げ変形が、無視できる程小さな量となるように、且つ、ヒータ300から第2区間へ伝わる熱が充分に小さくなるように、加熱工具100を設計する設計者は、第1区間の長さを決定する。
【0047】
<第2実施形態>
設計者は、第1実施形態に関連して説明された設計原理に基づいて、様々な種類の加熱工具を設計することができる。第2実施形態において、加熱工具として設計された例示的なワイヤストリッパが説明される。
【0048】
図2は、第2実施形態のワイヤストリッパ100Aの概略的な斜視図である。
図1及び
図2を参照して、ワイヤストリッパ100Aが説明される。
【0049】
ワイヤストリッパ100Aは、ハンドル200Aと、2つのブレードカートリッジ600と、を備える。ハンドル200Aは、
図1を参照して説明された握持部200に対応する。2つのブレードカートリッジ600それぞれは、ヒータ300(
図1を参照)、収容筒400(
図1を参照)及び加工部500(
図1を参照)からなる組立体に対応する。本実施形態において、加熱カートリッジは、2つのブレードカートリッジ600のうち一方によって例示される。
【0050】
ハンドル200Aは、略Y字型の保持筐体210と、略U字型の操作片220と、調整ゲージ230と、を含む。保持筐体210は、2つのブレードカートリッジ600を保持する。使用者は、操作片220を操作し、2つのブレードカートリッジ600の先端が離間した基準位置(
図2に示される2つのブレードカートリッジ600の位置)から2つのブレードカートリッジ600の先端が当接する剥離位置へ、2つのブレードカートリッジ600を変位させ、ケーブルCBLの被覆部CVLを部分的に剥離することができる。この結果、ケーブルCBLの芯線CRLが部分的に露出する。使用者は、芯線CRLの露出長さを予め設定するために、調整ゲージ230を利用することができる。
【0051】
保持筐体210は、第1保持体211と、第2保持体212と、ヒンジ部213と、ケーブルコネクタ214と、を含む。第1保持体211は、ヒンジ部213から2つのブレードカートリッジ600のうち一方に向けて延びる。第2保持体212は、ヒンジ部213から第1保持体211と同方向に延びる。2つのブレードカートリッジ600のうち一方は、第1保持体211に部分的に嵌め込まれる。2つのブレードカートリッジ600のうち他方は、第2保持体212に部分的に嵌め込まれる。第1保持体211及び第2保持体212は、ブレードカートリッジ600を保持するためのチャック機構(図示せず)を内蔵する。設計者は、既知のワイヤストリッパに用いられる様々な構造をチャック機構に適用することができる。本実施形態の原理は、ブレードカートリッジ600を保持するための特定の構造に限定されない。
【0052】
使用者が、操作片220を押圧すると、第1保持体211及び第2保持体212は、ヒンジ部213周りに回動する。この結果、2つのブレードカートリッジ600は、基準位置から剥離位置へ変位することができる。設計者は、第1保持体211及び第2保持体212の回動を許容する様々な既知の構造をヒンジ部213に与えることができる。本実施形態の原理は、ヒンジ部213の特定の構造に限定されない。
【0053】
ケーブルコネクタ214は、第1保持体211及び第2保持体212とは反対方向に、ヒンジ部213から突出する。ケーブルコネクタ214は、操作片220を貫通し、主電力線MEWに接続される。主電力線MEWは、保持筐体210内で、2つのブレードカートリッジ600それぞれに電気的に接続される。この結果、ブレードカートリッジ600に内蔵されたヒータ(図示せず)は、熱を発することができる。保持筐体210及び2つのブレードカートリッジ600内には、ヒータへの電力供給及びヒータの温度制御のための様々な電気部品が配置される。設計者は、既知のワイヤストリッパに用いられる様々な電気的な技術を、保持筐体210及び2つのブレードカートリッジ600内に組み込むことができる。また、これらの電機部品を含む電気的な技術は、主電力線MEWの先(図示せず)に別途設けられてもよい。したがって、本実施形態の原理は、保持筐体210及び2つのブレードカートリッジ600内で構築された特定の電気的構造に限定されない。
【0054】
操作片220は、第1押圧片221と、第2押圧片222と、略U字型の弾性アーム223と、を含む。第1押圧片221は、ヒンジ部213から離れた第1保持体211の先端部に取り付けられる。第2押圧片222は、ヒンジ部213から離れた第2保持体212の先端部に取り付けられる。弾性アーム223は、第1押圧片221から第2押圧片222へ湾曲しながら延び、第1保持体211、第2保持体212及びヒンジ部213を取り囲む。弾性アーム223には、ケーブルコネクタ214の貫通を許容する開口部が形成される。
【0055】
使用者が、第1押圧片221及び第2押圧片222を押圧すると、弾性アーム223は変形する。この結果、第1押圧片221が、第2押圧片222に接近するように、第1保持体211及び第2保持体212は、ヒンジ部213周りに回動する。この結果、2つのブレードカートリッジ600は、基準位置から剥離位置へ変位することができる。加えて、弾性アーム223は、弾性変形する。使用者が、第1押圧片221及び第2押圧片222の押圧を止めると、弾性アーム223の復元力によって、第1押圧片221が、第2押圧片222から離間するように、第1保持体211及び第2保持体212は、ヒンジ部213周りに回動する。この結果、2つのブレードカートリッジ600は、基準位置に復帰することができる。
【0056】
調整ゲージ230は、ロッド231と、当接板232と、保持ピン233と、抓部234と、を含む。ロッド231は、2つのブレードカートリッジ600と並んで延びる。ロッド231は、第2保持体212に取り付けられた保持ピン233に接続される。保持ピン233は、ロッド231の延設方向におけるロッド231の変位を許容する。抓部234は、ロッド231から突出する。使用者は、抓部234を抓み、ロッド231を変位させることができる。当接板232は、ロッド231の先端に取り付けられる。使用者は、ロッド231を操作し、当接板232を適切な位置に位置決めした後、加工対象のケーブルCBLの先端を、当接板232に当接させる。その後、使用者は、第1押圧片221及び第2押圧片222を押圧し、2つのブレードカートリッジ600を剥離位置に変位させる。この結果、ケーブルCBLの芯線CRLは、当接板232によって予め設定された長さだけ露出される。
【0057】
ブレードカートリッジ600は、収容筒400Aと、ブレード片500Aと、フランジ610と、を含む。収容筒400Aは、
図1を参照して説明された収容筒400の一部に対応する。
【0058】
フランジ610は、保持筐体210(第1保持体211又は第2保持体212)と収容筒400Aとの間の接続に用いられる。フランジ610は、保持筐体210内のチャック機構に嵌め込まれてもよい。使用者が、ブレードカートリッジ600を引っ張ると、フランジ610は、チャック機構から分離されてもよい。設計者は、既知のワイヤストリッパに用いられる様々な構造を、保持筐体210とフランジ610との間の接続に利用することができる。本実施形態の原理は、保持筐体210とフランジ610との間の特定の接続構造に限定されない。
【0059】
収容筒400Aは、フランジ610からブレード片500Aに向けて延びる。ブレード片500Aは、収容筒400Aの先端に取り付けられる。
【0060】
ブレード片500Aは、ブレード部510と、接続筒520と、を含む。ブレード部510は、切断縁511を含む。切断縁511には、複数の切込部512が形成される。複数の切込部512それぞれは、略半円形である。複数の切込部512は、サイズにおいて互いに相違する。使用者は、ケーブルCBLの芯線CRLの太さを考慮し、複数の切込部512から適切なものを選択することができる。ブレード部510は、
図1を参照して説明された加工部500に対応する。接続筒520は、
図1を参照して説明された収容筒400の一部に対応する。
【0061】
使用者は、ケーブルCBLの被覆部CVLの剥離の前に、当接板232と切断縁511との間の距離を測定することができる。使用者は、当接板232から切断縁511までの距離を適切な値に設定した後、2つのブレードカートリッジ600を剥離位置へ変位させる。この結果、2つのブレードカートリッジ600の切断縁511は、協働して、ケーブルCBLの被覆部CVLを剥離する一方で、切込部512が形成されているので、芯線CRLは切断されない。したがって、ワイヤストリッパ100Aは、ケーブルCBLの被覆部CVLを選択的に剥離することができる。
【0062】
接続筒520は、収容筒400Aの先端に部分的に圧入される。この結果、ブレード片500Aは、収容筒400Aの先端に固定される。
【0063】
図3は、ブレードカートリッジ600の概略的な断面図である。
図1乃至
図3を参照して、ブレードカートリッジ600が説明される。
【0064】
図3に示される如く、収容筒400Aは、先端区間と、中間区間と、基端区間と、に概念的に区分される。収容筒400Aの先端区間及びブレード片500Aの接続筒520の延設区間は、
図1を参照して説明された第1区間に対応する。中間区間は、
図1を参照して説明された第2区間に対応する。中間区間は、先端区間と基端区間との間に位置する。フランジ610は、中間区間において、収容筒400Aに取り付けられる。本実施形態において、第1部分は、ブレード片500Aの接続筒520によって例示される。第2部分は、収容筒400Aの先端区間によって例示される。
【0065】
ブレードカートリッジ600は、収容筒400A、ブレード片500A及びフランジ610に加えて、ヒータ300Aと、接続部321と、2本の副電力線310と、を含む。ヒータ300Aは、収容筒400Aの先端区間とブレード片500Aの接続筒520とに跨って配置される。ブレード片500Aの接続筒520は、収容筒400Aの先端区間よりも厚肉であるので、ヒータ300Aからブレード部510への熱的損失は低いレベルに抑えられる。一方、収容筒400Aの先端区間は、ブレード片500Aの接続筒520よりも薄肉であるので、中間区間へ伝達される熱エネルギは低いレベルに抑えられる。2本の副電力線310は、ヒータ300Aから収容筒400Aの基端区間まで延びる。ヒータ300Aは、
図1を参照して説明されたヒータ300に対応する。
【0066】
ヒータ300Aは、コイル状の電熱線(図示せず)を内蔵する。ヒータ300A内において電熱線と副電力線310とを接続する接続部321は、ヒータ300Aから突出する。
【0067】
ヒータ300Aは、先端部323と、基端部324と、を含む。先端部323は、ブレード片500Aの接続筒520内に配置される。先端部323と反対側の基端部324は、収容筒400Aの先端区間内に位置する。2本の副電力線310それぞれは、接続部321においてヒータ300Aに電気的に接続される。2本の副電力線310は、
図2を参照して説明された主電力線MEWを通じて供給された電力を受け取る。ヒータ300Aは、2本の副電力線310を通じて受け取った電力を熱エネルギに変換する。この結果、ブレード片500Aは加熱される。本実施形態において、電力線は、副電力線310によって例示される。
【0068】
ブレード片500Aの接続筒520は、露出筒521と、挿入筒522と、を含む。露出筒521は、略円筒形状である。露出筒521は、ブレード部510と挿入筒522との間で、収容筒400Aから露出する。露出筒521と同様に、挿入筒522は、略円筒形状である。挿入筒522は、露出筒521よりも細い。挿入筒522は、露出筒521から突出し、収容筒400Aの先端区間へ挿入される。
【0069】
収容筒400Aは、先端部401と、基端部402と、を含む。先端部401は、露出筒521と挿入筒522とによって形成された段部に当接する。2本の副電力線310は、ヒータ300Aの接続部321から先端部401とは反対側の基端部402の近くまで延びる。
【0070】
収容筒400Aは、主筒410と、スプリングピン420と、絶縁部430と、を含む。主筒410は、収容筒400Aの先端部401を形成する。主筒410は、先端部401から延び、基端区間内で終端する。絶縁部430は、基端区間において主筒410に接続される。絶縁部430は、収容筒400Aの基端部402を形成する。本実施形態において、第1筒は、主筒410及びブレード片500Aの接続筒520によって例示される。
【0071】
絶縁部430は、全体的に絶縁材料から形成された棒体である。収容筒400Aの基端区間の一部は、絶縁部430によって形成される。基端区間の残りの部分は、主筒410によって形成される。
【0072】
2本の副電力線310は、絶縁部430内で延びる。絶縁部430は、2本の副電力線310が露出するようにそれぞれ形成された2つの凹部431を含む。電力は、凹部431から露出した2本の副電力線310それぞれの表面を通じて供給される。したがって、絶縁部430及び2本の副電力線310は、協働して、電気的接点を形成する。本実施形態において、第3区間は、基端区間によって例示される。コネクタ部は、絶縁部430によって例示される。
【0073】
略円筒形状のスプリングピン420は、主筒410内に挿入される。スプリングピン420は、先端部421と、基端部422と、を含む。先端区間と中間区間との間の境界は、先端部421によって定められる。中間区間と基端区間との間の境界は、先端部421とは反対側の基端部422によって定められる。
【0074】
スプリングピン420の先端部421の位置は、ヒータ300Aから十分に離れている。したがって、スプリングピン420は、ヒータ300Aから十分に離れた位置において、2本の副電力線310を取り囲む。ヒータ300Aからの熱伝導経路は、長距離に亘って、薄い肉厚の主筒410に制限されるので、中間区間における過度に大きな昇温は生じない。
【0075】
図2を参照して説明された如く、中間区間に配置されたフランジ610は、使用者によって操作されるハンドル200Aに接続される。使用者が、ケーブルCBLの被覆部CVLを剥離するとき、ハンドル200Aとブレードカートリッジ600との接続部位となる中間区間には、先端区間及び基端区間よりも大きな曲げモーメントが発生する。スプリングピン420は、中間区間におけるブレードカートリッジ600の剛性を高めるので、ブレードカートリッジ600は、ほとんど曲がらない。したがって、使用者は、ケーブルCBLの被覆部CVLを効率的に剥離することができる。
【0076】
図4は、スプリングピン420の概略的な斜視図である。
図3及び
図4を参照して、スプリングピン420が説明される。
【0077】
図3に示される如く、スプリングピン420は、フランジ610よりも長い。
図4に示される如く、スプリングピン420には、波形のスリット423が形成される。スリット423は、スプリングピン420の先端部421から基端部422まで延びる。スプリングピン420は、スリット423の幅の範囲で変形することができる。ブレードカートリッジ600を組み立てる作業者は、スリット423の幅を縮小するように、スプリングピン420を弾性的に変形することができる。その後、作業者は、圧縮されたスプリングピン420を、主筒410(
図3を参照)に挿入することができる。作業者は、治具を用いて、主筒410内のスプリングピン420の位置を決定してもよい。この結果、中間区間(
図3を参照)は、主筒410内の適切な位置に形成される。本実施形態において、第2筒は、スプリングピン420によって例示される。設計者は、第2筒に形成されるスリットに様々な形状を与えることができる。たとえば、第2筒に形成されるスリットは、直線状であってもよい。本実施形態の原理は、スプリングピン420に形成されるスリット423の波形形状に限定されない。
【0078】
スリット423の幅が拡がるように、主筒410内のスプリングピン420は弾性的に拡張変形する。この結果、スプリングピン420の外周面は、主筒410(
図3を参照)の内周面に密着する。したがって、スプリングピン420は、主筒410と協働して、中間区間におけるブレードカートリッジ600の高い剛性を達成することができる。
【0079】
<第3実施形態>
設計者は、第2実施形態に関連して説明されたブレードカートリッジに様々な改良を加えることができる。第3実施形態において、改良されたブレードカートリッジが説明される。
【0080】
図5は、第3実施形態のブレードカートリッジ600Bの概略的な斜視図である。
図3及び
図5を参照して、ブレードカートリッジ600Bが説明される。
【0081】
ブレードカートリッジ600Bは、本体部601と、スカート部620と、を備える。
図3を参照して説明されたブレードカートリッジ600は、本体部601として利用可能である。したがって、第2実施形態のブレードカートリッジ600に関する説明は、本体部601に援用される。
【0082】
スカート部620は、先端区間において、主筒410を部分的に取り囲む。スカート部620は、先端部621と基端部622と、を含む。先端部621は、ブレード部510に隣接する。先端部621とは反対側の基端部622は、先端区間内に位置する。
【0083】
スカート部620は、接続筒623と保温筒624とを含む。接続筒623は、スカート部620の基端部622を形成する。接続筒623は、主筒410と相補的な空洞部を形成する。主筒410が、接続筒623に挿入されると、接続筒623の内周面(図示せず)は、主筒410の外周面に当接する。ブレードカートリッジ600Bを組み立てる作業者は、蝋付けや他の適切な固定技術を用いて、接続筒623を主筒410に固定することができる。本実施形態の原理は、接続筒623と主筒410との間の特定の接続技術に限定されない。
【0084】
保温筒624は、スカート部620の先端部621を形成する。保温筒624は、ヒータ300A(
図3を参照)と略等しい長さを有する。あるいは、保温筒624は、ヒータ300Aよりも長い。したがって、保温筒624は、ヒータ300Aを、長さ方向において全体的に取り囲む。
【0085】
保温筒624は、主筒410の外径及びブレード片500Aの接続筒520(
図3を参照)の外径よりも大きな内径を有する。したがって、空気層が、保温筒624と主筒410との間及び保温筒624とブレード片500Aの接続筒520との間に形成される。空気層は、主筒410及びブレード片500Aの接続筒520の外周面からの放熱量を低い水準に抑えることに貢献する。したがって、ヒータ300A(
図3を参照)が発生させた熱エネルギの多くは、ブレード部510へ伝達される。この結果、ヒータ300Aは、ブレード部510を効率的に加熱することができる。
【0086】
ヒータ300Aが、大きな熱エネルギを発生させるならば、ヒータ300Aは、主筒410及びブレード片500Aの接続筒520を赤熱することもある。保温筒624は、赤熱部分を、作業者から隠すので、作業者は、恐怖心を憶えることなく、ケーブル(図示せず)の被覆部(図示せず)の剥離作業を行うことができる。
【0087】
上述の様々な実施形態に関連して説明された設計原理は、様々な加熱工具に適用可能である。上述の様々な実施形態のうち1つに関連して説明された様々な特徴のうち一部が、他のもう1つの実施形態に関連して説明された加熱工具に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・加熱工具
100A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワイヤストリッパ
200・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・握持部
200A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハンドル
300,300A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒータ
310・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・副電力線
400,400A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・収容筒
410・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・主筒
420・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スプリングピン
423・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スリット
430・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶縁部
431・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・凹部
500・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・加工部
500A・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブレード片
600,600B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブレードカートリッジ
620・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スカート部
CBL・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケーブル
CRL・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・芯線
CVL・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・被覆部