(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記投影データ発生部は、前記X線管と前記第1検出器と前記第2検出器とを所定の回転軸周りに所定の軌道に沿って回転させて撮影する回転撮影に伴って、前記第1投影データを発生し、被検体に対する前記回転撮影に伴う前記第2検出器からの出力に基づいて第2投影データを発生し、
前記回転撮影における前記撮影方向と前記位置ずれとを用いて、前記第2投影データにおける前記位置ずれを補正する位置ずれ補正部と、
前記補正された第2投影データに基づいて、ボリュームデータを再構成する再構成部とをさらに具備する請求項4または5に記載のX線診断装置。
前記投影データ発生部は、前記X線管と前記第1検出器と前記第2検出器とを所定の回転軸周りに所定の軌道に沿って回転させて被検体を撮影する回転撮影に伴って、前記第1投影データを発生するとともに、前記第2検出器からの出力に基づいて第2投影データを発生し、
前記回転撮影における前記撮影方向と前記位置ずれとを用いて、前記第2投影データを補正する位置ずれ補正部と、
前記補正された第2投影データに基づいて、ボリュームデータを再構成する再構成部とをさらに具備する請求項4または5に記載のX線診断装置。
前記位置ずれ検出部は、前記標識点画像と所定のテンプレート画像とに対して、テンプレートマッチングまたは相互相関を実行することにより、前記位置ずれを検出する請求項13に記載のX線診断装置。
前記第1検出器に関するX線照射範囲から前記第2検出器を待避させた第1状態と、前記第2検出器を前記第1検出器の前面に配置させた第2状態とにおいて、前記第2検出器の重心位置の差異を補償するカウンターウェイトと、
前記カウンターウェイトと前記第2検出器とを移動可能に支持する支持機構と、
をさらに具備する請求項1乃至16のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
前記位置ずれを用いて、X線照射範囲を限定するコリメータの位置または前記X線の線量を減衰させる補償フィルタの位置ずれを、前記撮影方向に応じて補正する位置ずれ補正部をさらに具備する請求項4または5に記載のX線診断装置。
前記3次元画像データは、前記X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置により予め収集されたボリュームデータである請求項19に記載のX線診断装置。
前記投影データ発生部は、前記X線管と前記第1検出器と前記第2検出器とを所定の回転軸周りに所定の軌道に沿って回転させて被検体を撮影する回転撮影に伴って、前記第2検出器からの出力に基づいて第2投影データを発生し、
前記補正された投影方向に沿って前記3次元画像データを投影することにより、第3投影データを発生し、
前記第2投影データに前記第3投影データを重畳した重畳画像を表示する表示部をさらに具備する請求項20に記載のX線診断装置。
【背景技術】
【0002】
従来の平面検出器(以下、検出器Aと呼ぶ)の前面に他の検出器(以下、検出器Bと呼ぶ)を配置可能なシステム(Micro Angiography Fluoroscope System:以下、MAFシステムと呼ぶ)を有するX線診断装置が提案されている。MAFシステムにおける検出器Aは、検出器Bより大きい検出素子サイズおよび/または標準的な空間分解能を有する。
【0003】
MAFシステムにおける検出器Bは、検出器Aの前面に配置される。MAFシステムにおける検出器Bは、検出器Aより小さい検出素子サイズおよび/または高空間分解能を有する。検出器Bは、ホルダ機構によりCアームに取り付けられる。ホルダ機構は、検出器Bを、パーク位置とX線照射範囲との間で自在に移動可能に支持する。
【0004】
Cアームを回転させながら一連の画像を取得する際、正確な3次元再構成画像を得るために、Cアームの振動、およびCアームの回転軌道の不完全性を補正する必要がある。これらの補正は、検出器に対する幾何学的な較正によって達成される。従来の血管造影システムに関して、再構成前に用いられる較正テーブルは、特定の較正ファントムを撮影した一連の画像から生成される。
【0005】
MAFシステムを有するX線診断装置において、検出器Bはホルダにより支持されている。このため、検出器Bを用いた回転撮影において、検出器Bに関する本来の位置に対するダレおよび振動が、検出器Bにおいて発生する。従来技術において、検出器Bに関する幾何学的な位置の修正は、例えば、以下に示す二つの問題がある。
【0006】
はじめに、上記較正テーブルは、Cアームの回転軌道の不完全性およびCアームの振動が毎回繰り返されるという仮定に基づいて、生成される。しかしながら、MAFシステムを有するX線診断装置において、Cアームの振動の特徴(以下、振動特性と呼ぶ)は、パーク位置における検出器Bと、検出器Aの前面に配置された検出器Bとの間の質量の分布の変化のために、変化する。Cアームの振動特性の変化は、Cアームの振動が繰り返され、かつ検出器Bに関する2つの異なる位置で実行される回転においてCアームの振動特性が不変であるという上記仮定を破る。このため、検出器Bに関する幾何学的な位置の修正として、上記較正テーブルが不適であるという問題がある。
【0007】
第2に、検出器Bの視野サイズは検出器Aに対する視野サイズより小さいため、検出器Aに関する幾何学的な位置の較正のための較正ファントムを検出器Bに対して使用することは、不適であるという問題がある。一般に、較正ファントムを用いるとき、高精度で画像データを生成可能にするため、かつ撮像視野を満たすために、適したサイズの検出器が要求される。
【0008】
しかしながら、検出器Bは、典型的には、検出器Aより小さい撮像視野を有する。このため、検出器Bに対して異なる較正ファントムを要求することは、血管造影システムの製造コストを増大させ、および較正手続きの複雑さを増大させる。検出器Bに対するホルダ機構の潜在的に機構的な不安定性によるホルダ機構の付加的な振動のために、検出器Aに対して設計された較正テーブルの検出器Bへの使用は、回転血管造影の投影データを用いた再構成に対して、十分ではない。
【0009】
すなわち、MAFシステムを有するX線診断装置における検出器Bからの出力に基づいたボリュームデータの再構成において、従来の技術では、検出器Bの視野サイズに適したファントムが、ホルダ機構を含んだCアームの幾何学的な変形および振動に対する補正のために必要となる。このとき、検出器Bに対応する専用のファントムの製造には、精度が要求されるため、コストが掛かる問題がある。また、検出器Bに対する較正に時間がかかる問題がある。
【0010】
また、鉛直軸に対するCアームの角度が大きい(例えば、90°など)場合、重力の影響により、検出器Bのダレ量が大きくなる。例えば
図13に示すように、Cアームの角度が90°のときのコリメータ羽根の位置が、Cアームの角度が0°のときのコリメータ羽根の位置(
図14)と同じ場合、検出器Bの位置が鉛直方向に移動するために、X線の照射範囲が不適正となる問題がある。
【0011】
図13は、検出器Aの前面に移動された検出器Bが、被検体(天板)の側面(90°の位置)に配置された様子を示す図である。このとき、検出器Bのダレにより、検出器Bの検出面の上端部分において、X線は検出されない。また、検出器Bのダレにより、検出器Bの検出面の下端部分において、コリメータ羽根のオーバーラップにより、X線は遮断される。
図14は、検出器Aの前面に移動された検出器Bが、被検体(天板)の正面(例えば、0°の位置)に配置された様子を示す図である。このとき、コリメータは、適切にX線照射範囲を限定する。
【0012】
図13に示すように、コリメートされたX線のうち検出器BのX線検出面に到達しないX線は画像化されないため、被検体に対して不要な被爆が発生する問題がある。また、このとき、コリメータ羽根の一部分が検出器Bの検出面の一部に関するX線照射範囲を覆うため、検出器Bの検出面を有効に利用できない問題がある。さらに、検出器Bを非常に狭い視野で使用していた場合、操作者が所望する視野が、コリメータ羽根で遮られることが発生する可能性がある。
【0013】
従来、CアームおよびX線光学系(管球焦点、FPD)の幾何学的情報と、予め収集されたボリュームデータ(Cアームによる3次元血管画像、CT(Computed Tomography)ボリュームデータ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)ボリュームデータ等)とに基づいて、画像処理により仮想的な投影画像(例えば、血管画像、X線画像に類似する画像、3次元ロードマップ画像)を作成することがある。生成された投影画像は、実際に収集されたX線画像に重ねて表示される。
【0014】
X線画像の収集時において、鉛直軸に対するCアームの角度が大きい(例えば、90°など)場合、重力の影響により、検出器Bのダレ量が大きくなる。一方、被検体は天板に載置されている為、被検体の位置は、不変である。このため、例えば、
図14に示すように、X線の照射範囲は、検出器Bのダレにより理想的な照射範囲とは異なる。他方、予め収集されたボリュームデータに基づいて生成された投影画像は、理想的なCアームおよびX線光学系の幾何学的情報に基づいて生成されるため、
図15に示すように、実際に収集されるX線画像との間でずれてしまう問題がある。
【0015】
図15におけるAは、検出器Bのダレが無い理想的な場合を示している。このとき、検出器Aの前面に移動された検出器Bが被検体の側面(90°の位置)に配置された場合において、検出器Bにより得られた画像に関するX線照射範囲と、ボリュームデータの投影画像に関する仮想的なX線照射範囲とは一致する。すなわち、検出器Bのダレがない理想的な場合、検出器Bにより得られた画像と、ボリュームデータの投影画像との位置関係は一致する。
【0016】
図15におけるBは、検出器Bのダレが発生する場合を示している。このとき、検出器Aの前面に移動された検出器Bが被検体の側面(90°の位置)に配置された場合において、検出器Bにより得られた画像に関するX線照射範囲と、ボリュームデータの投影画像に関する仮想的なX線照射範囲とは相違する。すなわち、検出器Bのダレにより、検出器Bにより得られた画像と、ボリュームデータの投影画像との位置関係は相違する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係るX線診断装置は、X線管と第1検出器と少なくとも一つの第2検出器と投影データ発生部と位置ずれ検出部とを有する。X線管は、X線を発生する。第1検出器は、X線を検出する。少なくとも一つの第2検出器は、第1検出器の第1検出面の前面に配置され、第1検出面より狭い第2検出面と第2検出面の背面に設けられた複数の標識点とを有する。投影データ発生部は、第1検出器からの出力に基づいて第1投影データを発生する。位置ずれ検出部は、標識点と第2検出器における複数の検出素子との位置関係を示す所定の位置関係と、第1投影データとを用いて、第1検出器に対する第2検出器の相対的な位置ずれを、撮影方向に応じて検出する。
【0022】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成を示している。本X線診断装置1は、インターフェース部3と、高電圧発生部11と、支持アーム13と、寝台25と、支持アーム駆動部27と、撮影制御部29と、投影データ発生部31と、画像発生部33と、位置ずれ検出部35と、位置ずれ補正部37と、再構成部39と、入力部41と、記憶部43と、表示部45と、システム制御部47とを有する。
【0024】
インターフェース部3は、本X線診断装置1と電子的通信回線(以下、ネットワークと呼ぶ)とを接続する。ネットワークには、図示していない放射線部門情報管理システムおよび図示していない病院情報システムなどが接続される。
【0025】
高電圧発生部11は、システム制御部47による制御のもとで、X線管15に供給する管電流と、X線管15に印加する管電圧とを発生する。高電圧発生部11は、発生した管電流をX線管15に供給し、発生した管電圧をX線管15に印加する。
【0026】
支持アーム13は、X線管15と、照射野限定器(beam limitting device)17と、第1検出器19と、支持機構21とを支持する。支持アーム13は、例えば、Cアームである。なお、支持アーム13は、Cアームの代わりにΩアームなどであってもよい。Cアームは、CアームのC形状に沿う方向(以下、C方向と呼ぶ)にスライド可能に、図示していない支持部により支持される。支持部は、Cアームを支持する支持部分を略中心として、C方向に直交する方向(以下、C直交方向と呼ぶ)に回転可能にCアームを支持する。なお、支持部は、天板の短軸方向と長軸方向とに平行移動可能にCアームを支持することも可能である。
【0027】
X線管15は、高電圧発生部11から供給された管電流と、高電圧発生部11により印加された管電圧とに基づいて、管球焦点においてX線を発生する。管球焦点から発生されたX線は、X線管15の前面に設けられたX線放射窓を介して、被検体Pに照射される。
【0028】
照射野限定器17は、X線管15におけるX線放射窓の前面に設けられる。すなわち、照射野限定器17は、X線管15と第1検出器19との間に設けられる。具体的には、照射野限定器17は、管球焦点で発生されたX線を、操作者が所望する撮影部位(X線照射部位)以外に不要な被爆をさせないために、最大口径の照射範囲(以下、最大照射範囲と呼ぶ)を、被検体Pの体表面にX線を照射する照射面積に応じて限定する。例えば、照射野限定器17は、入力部41により入力された照射範囲の限定指示に従って、複数のコリメータ羽根(第1、第2コリメータ羽根)各々を移動させることにより、照射範囲を限定する。
【0029】
すなわち、照射野限定器17は、操作者が所望する被検体の部位(X線照射部位)にX線を照射するために、X線管15により発生されたX線を制限する。具体的には、照射野限定器17は、例えば、所定の方向に移動可能な複数の第1コリメータ羽根と、所定の方向に直交する方向に移動可能な複数の第2コリメータ羽根とを有する。第1、第2コリメータ羽根各々は、管球焦点で発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。後述するように、第1検出器19の前面の位置に配置された第2検出器23が撮影されるとき、照射野限定器17における第1コリメータ羽根と、第2コリメータ羽根とは、最大照射範囲の位置に配置されてもよい。
【0030】
第1検出器19は、X線管15から発生され、被検体Pまたはファントムを透過したX線を検出する。第1検出器19の検出面(以下、第1検出面とよぶ)は、第2検出器23の検出面(以下、第2検出面と呼ぶ)より広い。また、第1検出器19の空間分解能は、第2検出器23の空間分解能より低い。
【0031】
第1検出器19は、例えば、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)である。FPDは、複数の半導体検出素子(以下、第1検出素子とよぶ)を有する。第1検出素子には、直接変換形と間接変換形とのうちいずれか一方である。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する形式である。
【0032】
X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、投影データ発生部31に出力する。なお、第1検出器19として、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)が用いられてもよい。
【0033】
支持機構21は、第1検出器19の前面の位置(以下、前面位置と呼ぶ)とパーク位置との間で、少なくとも一つの第2検出器23を移動可能に支持する。ここで、パーク位置とは、第1検出器19に関するX線照射範囲(撮像視野)から離れた位置に、第2検出器23を待避させる位置(待避位置)である。すなわち、パーク位置に配置された第2検出器23は、第1検出器19に関する撮像視野から除外される。
【0034】
支持機構21は、操作者の操作により、前面位置からパーク位置へ第2検出器23を移動させる。また、支持機構21は、操作者の操作により、パーク位置から前面位置へ第2検出器23を移動させる。なお、支持機構21は、入力部41を介した操作者の指示により、前面位置からパーク位置へ、またはパーク位置から前面位置へ、第2検出器23を移動してもよい。
【0035】
第2検出器23は、前面位置とパーク位置との間で移動可能に、支持機構21に支持される。第2検出面は、第1検出面より狭い。すなわち、第2検出面の面積は、第1検出面の面積より小さい。第2検出器23の空間分解能は、第1検出器19の空間分解能より大きい。例えば、第2検出器23における複数の検出素子(以下、第2検出素子と呼ぶ)各々のサイズは、第1検出素子各々のサイズより小さい。
【0036】
好ましくは、第2検出器23の背面側、すなわち前面位置に配置された第2検出器23において第1検出器19に直面する面には、複数の標識点(マーカ)が設けられてもよい。複数のマーカ各々は、例えば、X線に対して高減衰な物質(例えば、タングステン、鉛など:以下、X線不透過物質と呼ぶ)で構成される。なお、マーカは、例えば、X線不透過物質のビーズ(溶球)で構成されてもよい。また、マーカは、穴などの構造により、X線を非常によく透過するパターンで構成されてもよい。このとき、パターンは、例えば、透過領域と不透過領域で構成される特徴的なパターンとなる。
【0037】
第2検出器23におけるマーカの背面側は、X線を透過可能である。すなわち、第2検出器23におけるマーカの背面側において、X線不透過部品(例えば、電源回路、鉛シールドなど)は、設けられない。なお、マーカは、任意のパターン形状(例えば、+型、△型、矩形など)を有する。また、マーカは、第2検出素子に対して所定の位置関係となるように、第2検出器23の背面側に設けられてもよい。所定の位置関係は、標識点の位置と第2検出素子(または後述する第2画像の画素)の位置との関係を示す。このとき、所定の位置関係は、記憶部43に記憶される。
【0038】
前面位置に配置された第2検出器23は、被検体Pを透過したX線を検出する。第2検出器23は、例えば、FPDである。第2検出器23へのX線の入射に伴って発生された電気信号は、第2検出器23からA/D変換器に出力され、ディジタルデータに変換される。A/D変換器は、ディジタルデータを、投影データ発生部31に出力する。
【0039】
寝台25は、被検体Pまたはファントムが載置される天板を有する。
【0040】
支持アーム駆動部27は、撮影制御部29による制御のもとで、支持アーム13を駆動する。具体的には、支持アーム駆動部27は、撮影制御部29からの制御信号に応じた駆動信号を支持アーム13に出力して、支持アーム13をC方向にスライド、C直交方向に回転させる。例えば、所定の回転軸周りに支持アーム13を回転させながらX線撮影を実行する回転撮影の指示が入力部41を介して入力されると、支持アーム駆動部27は、回転軸周りの所定の軌道に沿って支持アーム13を回転させるために、支持アーム13を駆動する。ここで、所定の回転軸とは、例えば、天板における載置面に平行な直線である。また、所定の軌道とは、例えば、円軌道である。なお、支持アーム駆動部27は、システム制御部47による制御のもとで、支持アーム13を駆動してもよい。
【0041】
撮影制御部29は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリとを有する。撮影制御部29は、システム制御部47からの指示に応じて、各種撮影に応じて支持アーム13、照射野限定器17、寝台25等を制御する。
【0042】
例えば、撮影制御部29は、パーク位置に第2検出器23を配置した状態で、らせん状に配置されたビーズを有するヘリカルファントムに対する回転撮影を実行するために、支持アーム駆動部27を制御する。この回転撮影により、回転撮影における第1検出器19の回転軌道と理想的な回転軌道との軌道ずれを補正するための対応表(以下、第1対応表と呼ぶ)が作成される。第1対応表とは、例えば、回転撮影における撮影方向に対する軌道ずれの補正(軌道補正)を示す対応表(テーブル)である。第1対応表は、記憶部43に記憶される。
【0043】
撮影制御部29は、ヘリカルファントムに対する回転撮影の実行後、前面位置に第2検出器23を配置した状態で回転撮影を実行するために、支持アーム駆動部27を制御する。この回転撮影の実行後、撮影制御部29は、第1検出器19を用いて、前面位置に配置された第2検出器23に対して回転撮影を実行するために、支持アーム駆動部27を制御する。上記回転撮影は、第2検出面を包含し、かつ第1検出面より狭い領域を包含する撮像視野を維持しながら実行される。
【0044】
撮影制御部29は、上記種々の回転撮影の実行後、寝台25の天板に載置された被検体(患者)に対して回転撮影(以下、被検体撮影と呼ぶ)を実行するために、支持アーム駆動部27を制御する。なお、被検体撮影は、第2検出面に対応する撮像視野を維持して実行される。
【0045】
投影データ発生部31は、回転撮影に伴って、第1検出器19から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。投影データ発生部31は、被検体撮影に伴って、第2検出器23から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、第1検出器19および第2検出器23におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および金属等のX線強吸収体による極端な信号の低下またはデータの脱落に関する補正等である。
【0046】
投影データ発生部31は、上記前処理により、第1検出器19からの出力に対応する第1投影データと、第2検出器23からの出力に対応する第2投影データとを発生する。投影データ発生部31は、第1投影データを、画像発生部33、位置ずれ検出部35、位置ずれ補正部37、記憶部43等に出力する。投影データ発生部31は、第2投影データを、画像発生部33、位置ずれ補正部37、記憶部43等に出力する。
【0047】
なお、投影データ発生部31は、ボリュームデータの再構成に用いられる第2投影データを操作者の指示により選択してもよい。このとき、投影データ発生部31は、選択された第2投影データを、画像発生部33、位置ずれ補正部37、記憶部43等に出力する。
【0048】
第1投影データは、前面位置に配置された第2検出器23に関する投影データである。このとき、第1投影データは、マーカまたはランドマークの投影データを有する。ランドマークは、X線に対して高減衰な第2検出器23の一部分、または第2検出器23に取り付けられた構造物である。
である。この構成物は、例えば、電子回路、第2検出器23のエッジ、ネジなどである。なお、構造物は、X線をほとんど減衰しない穴のような明るい点またはパターンを形成するものでもよい。
【0049】
画像発生部33は、第1投影データに基づいて、第1画像を発生する。第1画像は、前面位置に配置された第2検出器23に関する画像である。このとき、第1画像(標識点画像)は、マーカまたはランドマークの投影像を有する。なお、画像発生部33は、第2投影データに基づいて第2画像を発生してもよい。画像発生部33は、第1画像および第2画像を位置ずれ検出部35に出力する。画像発生部33は、再構成部39により再構成されたボリュームデータに基づいて、所定の画像処理により、表示部45において表示可能な医用画像を発生する。所定の画像処理とは、例えば、レンダリング処理、断面変換処理などである。
【0050】
図2は、前面位置に配置された第2検出器23と、第1画像の一例とを示す図である。
図2に示すように、第1画像は、第2検出器23の投影像を有する。また、第1画像は、第2検出面の背面と側面とのうち少なくとも一方に設けられた+形状のマーカの投影像(マーカ像)と、第2検出器23の構成物(電子回路のパターン)に対応するランドマークの投影像(ランドマーク像)とのうち少なくとも一方を有する。
【0051】
位置ずれ検出部35は、第1投影データと所定の位置関係とを用いて、回転撮影における第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを、撮影方向に応じて検出する。位置ずれ検出部35は、検出した相対的な位置ずれを、位置ずれ補正部37に出力する。以下の記載において、マーカに関する説明は、ランドマークと読み替えてもよい。
【0052】
具体的には、位置ずれ検出部35は、回転撮影における複数の撮影方向φ各々において、第1投影データにおけるマーカの位置(以下、第1マーカ位置と呼ぶ)を検出する。位置ずれ検出部35は、所定の位置関係を用いて、第2検出面におけるマーカの位置(以下、第2マーカ位置と呼ぶ)を特定する。位置ずれ検出部35は、第1マーカ位置と第2マーカ位置とに基づいて、相対的な位置ずれを検出する。
【0053】
なお、位置ずれ検出部35は、第1画像と第2画像とを用いて、相対的な位置ずれを検出してもよい。具体的には、位置ずれ検出部35は、回転撮影における複数の撮影方向φ各々において、第1画像における第1マーカ位置と、第2画像における第2マーカ位置とに基づいて、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを検出する。このとき、第2マーカ位置は、第2画像におけるピクセルの位置と所定の位置関係を満たすように、予め設定される。
【0054】
なお、所定の位置関係は、相対的な位置ずれの検出の前段階で実行される以下の較正により、決定されてもよい。この較正(以下、事前較正と呼ぶ)において、同一の被写体を回転撮影で撮影することにより、第1画像(第1投影データ)と第2画像(第2投影データ)とが発生される。このとき、第1画像は、被写体の投影像とマーカの投影像とを有する。また、第2画像は、被写体の投影像を有する。ここで、被写体とは、例えば、X線を透過しない複数のビーズが埋め込まれたファントムである。事前較正により、第2画像におけるピクセルと第2検出器23に設定されたマーカ位置との関係を較正することができる。
【0055】
具体的には、位置ずれ検出部35は、第1画像において、マーカの投影像のピクセルと、ビーズの投影像のピクセルとに基づいて、マーカの位置とビーズの位置との位置関係(以下、第1位置関係と呼ぶ)を特定する。次いで、位置ずれ検出部35は、第2画像上において、ビーズの位置を検出する。位置ずれ検出部35は、検出されたビーズの位置に対応する第2画像のピクセルを特定する。位置ずれ検出部35は、第2画像において特定されたピクセルとビーズの位置との位置関係(以下、第2位置関係と呼ぶ)を特定する。位置ずれ検出部35は、第1位置関係と第2位置関係とに基づいて、マーカとマーカのピクセル位置との関係を示す上記所定の位置関係を決定する。
【0056】
すなわち、位置ずれ検出部35は、第1位置関係と第2位置関係とに基づいて、第2画像におけるピクセルとマーカとを関連づけることができる。マーカの位置に関する事前較正は、例えば、本X線診断装置1の製造過程で1回行えばよい。なお、第1画像および第2画像におけるビーズの検出は、入力部41を介した操作者の指示により実行されてもよい。また、ビーズの検出精度を高めるために、以下の処理が実行されてもよい。まず、操作者の指示により複数のビーズの中心が指定された後、所定の画素値を閾値として第1画像および第2画像に対して2値化処理が実行される。次いで、2値化処理された第1画像および第2画像各々において、ビーズに対応する円形部分の重心が、ビーズの中心すなわちビーズの位置として決定される。
【0057】
なお、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれは、回転撮影における複数の撮影方向φ各々において、第1画像とテンプレート画像との位置合わせにより、第1画像における第2検出器23のピクセル位置を探索してもよい。上記位置合わせに関する処理は、例えば、相互相関、テンプレートマッチングである。ここで、テンプレート画像は、X線診断装置1の製造過程において、第1検出器19で第2検出器23を撮影した画像である。なお、第2検出器23に設けられたマーカがビーズのようなものであれば、テンプレート画像は、マーカのサイズ、マーカによる画像信号強度などの条件に基づく所定の計算(シミュレーション)により、作成されてもよい。テンプレート画像は、記憶部43に記憶される。テンプレート画像は、第2検出器23におけるマーカ、回路部分などを投影した投影像を有する。
【0058】
具体的には、位置ずれ検出部35は、複数の撮影方向各々における第1画像とテンプレート画像とを用いて、テンプレートマッチング処理を実行する。位置ずれ検出部35は、テンプレートマッチング処理の結果に基づいて、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを、撮影方向ごとに検出する。なお、テンプレートマッチング処理は、マーカが存在する可能性が高い領域(以下、マーカ存在領域と呼ぶ)を、予め事前情報として用いてもよい。
【0059】
この事前情報により、マーカ存在領域に対して重点的にマーカを探索することができ、マーカの探索時間とマーカの検出精度とを向上させることができる。なお、上記テンプレートマッチング処理の代わりに、第1画像とテンプレート画像との間の相互相関を行う相互相関処理が用いられてもよい。次いで、位置ずれ検出部35は、撮影方向(回転角度)各々における第1画像と第2画像とに対して、パターンマッチングなどの各種位置合わせ処理を適用することにより、相対的な位置ずれを検出する。
【0060】
位置ずれ補正部37は、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれに基づいて、複数の撮影方向φごとに相対的な位置ずれを補正する補正テーブル(以下、第2対応表と呼ぶ)を作成する。第2対応表は、例えば、第2検出器23における画素の位置の第1検出器19に対する相対的な位置ずれの補正量を規定するテーブルである。
【0061】
具体的には、位置ずれ補正部37は、回転撮影における複数の撮影方向φ各々における相対的な位置ずれを用いて、第1検出器19の原点(以下、第1原点と呼ぶ)に対する第2検出器23の原点(以下、第2原点と呼ぶ)の平行移動量を示す原点移動ベクトルVφ(VX、VY)を、複数の撮影方向φごとに計算する。ここで、VXは、第1検出器19におけるX方向に沿った第2原点の平行移動量を示す。また、VYは、X方向の直交するY方向に沿った第2原点の平行移動量を示す。
【0062】
複数のマーカを用いて相対的な位置ずれを検出した場合、位置ずれ補正部37は、複数の撮影方向φ各々における相対的な位置ずれを用いて、第1原点に対する第2原点の回転角度θφを計算する。位置ずれ補正部37は、回転角度θφを用いて、第2検出器23における画素の位置(x、y)を回転させる回転行列Rφを、撮影方向φごとに計算する。回転行列Rφは、例えば、以下のような行列で表現することができる。
【0063】
【数1】
位置ずれ補正部37は、第1検出面に第2検出面をX線により投影したときの第2検出面の拡大率を、記憶部43から読み出す。拡大率は、例えば、第1検出器19と線源との間の距離(以下、SID(Source Image Distance)1と呼ぶ)と、第2検出器23と線源との間の距離(以下、SID2と呼ぶ)とにより計算される。具体的には、拡大率M(x、y)は、SID2(x、y)に対するSID1(x、y)の割合(M(x、y)=SID1(x、y)/SID2(x、y))として計算される。
【0064】
位置ずれ補正部37は、原点移動ベクトルVφ(VX、VY)、回転行列Rφ、拡大率M(x、y)を用いて、第2対応表を作成する。具体的には、位置ずれ補正部37は、補正後の座標(第1検出器19における画素の位置)をP1(X、Y)、第2検出器23における画素の位置をP2(x、y)として、P1(X、Y)=Rφ(P2(x、y)×M(x、y))+Vφを計算する。位置ずれ補正部37は、上記計算により、撮影方向φおよび第2検出器23における画素の位置P2(x、y)に応じた補正後の座標P1(X、Y)を示す第2対応表を作成する。位置ずれ補正部37は、作成した第2対応表を記憶部43に出力してもよい。
【0065】
なお、位置ずれ補正部37は、相対的な位置ずれに基づいて、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な3次元的回転、および並進移動を補正する補正量を決定してもよい。このとき、この補正量は、第2対応表に組み込まれる。具体的には、回転行列Rφは、3×3の3次元の回転行列となり、原点移動ベクトルVφは、3次元的な原点移動ベクトルとなる。
【0066】
位置ずれ補正部37は、再構成の対象となる第2投影データに対して第2対応表を用いることにより、相対的な位置ずれを補正する。この補正により、第2投影データは、相対的な位置ずれが補正され、第1検出面にマッピングされる。相対的な位置ずれが補正された第2投影データは、第1対応表により3次元空間にマッピングされ、軌道ずれが補正される。相対的な位置ずれおよび軌道ずれが補正された第2投影データ(以下、補正投影データと呼ぶ)は、再構成部39に出力される。
【0067】
なお、第2投影データの撮影方向が第2対応表に存在しない場合、位置ずれ補正部37は、第2投影データの撮影方向に隣接する第2対応表における2つの撮影方向に関する補正量(回転行列Rφ、原点移動ベクトルVφ)に基づいて、相対的な位置ずれの補正に関する補正量を決定してもよい。以下、説明を簡単にするために、このときの第2投影データの撮影方向をφbとする。
【0068】
位置ずれ補正部37は、第2対応表において、φbに隣接する2つの撮影方向φaとφcとを特定する。ここでは、隣接する2方向からφaとφcとを特定したが、隣接する2方向に限らず隣接する複数方向から内挿により、φaとφcとを特定してもよい。位置ずれ補正部37は、特定したφaとφcとにそれぞれ対応する原点移動ベクトルVφaとVφcとを用いて、内挿補間によりφbに対応する原点移動ベクトルVφbを計算する。位置ずれ補正部37は、特定したφaとφcとにそれぞれ対応する回転角度θφaとθφcとを用いて、内挿補間により、φbに対応する回転角度θφbを計算する。位置ずれ補正部37は、計算されたθφbを用いて回転行列Rφbを計算する。位置ずれ補正部37は、原点移動ベクトルVφbと、回転行列Rφbと、拡大率M(x、y)とを用いて、以下の式により、第2投影データの撮影方向φbに関する位置ずれの補正を、P1(X、Y)=Rφb(P2(x、y)×M(x、y))+Vφbにより計算する。
【0069】
再構成部39は、相対的な位置ずれおよび軌道ずれが補正された補正投影データに基づいて、ボリュームデータを再構成する。以下、説明を簡単にするためにワンショットで略同時に収集した投影方向が同一である全チャンネルにわたる一揃いの補正投影データを、補正投影データセットと称する。
【0070】
具体的には、再構成部39は、投影方向(ビューアングル)が360°又は180°+ファン角の範囲内の補正投影データセットに基づいて、フェルドカンプ法または逐次再構成法により、略円柱形の3次元画像(ボリュームデータ)を再構成する。再構成部39は、再構成したボリュームデータを画像発生部33に出力する。
【0071】
入力部41は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。例えば、入力部41は、X線条件、回転撮影位置、照射範囲、第2検出器23の移動指示、回転撮影指示、被検体撮影指示、ビーズの特定指示などを入力する。入力部41は、図示していないが、各種設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。
【0072】
入力部41は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標をシステム制御部47に出力する。なお、入力部41は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部41は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標をシステム制御部47に出力する。
【0073】
記憶部43は、投影データ発生部31で発生された種々の投影データ、画像発生部33で発生された種々の画像、再構成部39により再構成されたボリュームデータ、所定の位置関係、第1対応表、第2対応表、テンプレート画像、拡大率M(x、y)等を記憶する。記憶部43は、本X線診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、入力部41から送られてくる操作者の指示、X線条件などの各種データ群、インターフェース部3とネットワークとを介して送られてくる種々のデータなどを記憶する。
【0074】
記憶部43は、再構成部39において用いされる各種再構成法に関する再構成プログラム、画像発生部33で用いられる各種画像処理に関する画像処理プログラム、位置ずれを検出するための位置ずれ検出プログラム、位置ずれの補正に関する位置ずれ補正プログラム等を記憶する。なお、記憶部43は、位置ずれ検出プログラムおよび位置ずれ補正プログラムを包含し、補正された第2投影データを再構成する医用画像処理プログラムを記憶してもよい。
【0075】
表示部45は、画像発生部33により発生された各種医用画像、入力部41により入力される入力項目(X線条件、照射範囲、撮影位置、撮影範囲)等を表示するモニタを有する。モニタは、上記各種医用画像、入力項目等を表示する。
【0076】
システム制御部47は、CPUとメモリを備える。システム制御部47は、入力部41から送られてくる操作者の指示、撮影条件等のX線条件などの情報を、メモリに一時的に記憶する。システム制御部47は、メモリに記憶された操作者の指示、X線条件などに従って、回転撮影および被検体撮影を実行するために、高電圧発生部11撮影制御部29などの各部を、それぞれ制御する。
【0077】
システム制御部47は、記憶部43に記憶された各種プログラムを読み出し、メモリに展開する。システム制御部47は、メモリに展開したプログラムに従って、画像発生部33、位置ずれ検出部35、位置ずれ補正部37、再構成部39などの各部を制御する。
【0078】
(位置ずれ補正再構成機能)
位置ずれ補正再構成機能とは、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれの補正と、第1検出器19の軌道ずれの補正とを、第2投影データに対して実行し、補正された第2投影データに基づいてボリュームデータを再構成する機能である。位置ずれ補正再構成機能に係る処理(以下、位置ずれ補正再構成処理と呼ぶ)について説明する。
【0079】
図3は、位置ずれ補正再構成処理の手順の一例を示すフローチャートである。本位置ずれ補正再構成処理において、被検体撮影の前に、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれの検出のための回転撮影が実行される。
【0080】
第1検出器19の回転軌道と理想的な回転軌道との軌道ずれを補正する第1対応表と、所定の位置関係とが、記憶部43から読み出される(ステップSa1)。第1対応表と所定の位置関係とは、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれの検出の前に、予め作成される。第2検出器23が、第1検出器19の前面に配置され、回転撮影が開始される(ステップSa2)。このとき、第2検出器23が、第1検出器19により撮影される。第1検出器19からの出力に基づいて、第2検出器23に関する第1投影データが発生される(ステップSa3)。
【0081】
第1投影データと所定の位置関係とに基づいて、撮影方向各々において、相対的な位置ずれが検出される(ステップSa4)。相対的な位置ずれに基づいて、撮影方向φごとに、原点移動ベクトルVφと回転行列Rφとが計算される(ステップSa5)。原点移動ベクトルVφと回転行列Rφとに基づいて、相対的な位置ずれを補正する第2対応表が発生される(ステップSa6)。第2対応表は、記憶部43に記憶される。
【0082】
被検体に対して、回転撮影(被検体撮影)が実行される(ステップSa7)。第2検出器23からの出力に基づいて、撮影方向各々において、第2投影データが発生される(ステップSa8)。第1対応表と第2対応表とに基づいて第2投影データを補正することにより、補正投影データが発生される(ステップSa9)。補正投影データに基づいて、ボリュームデータが再構成される(ステップSa10)。
【0083】
(第1変形例)
第1の実施形態との相違は、第2検出器23の背面にマーカが設けられていないことにある。このとき、本X線診断装置は、以下のようにして、相対的な位置ずれを検出する。
【0084】
撮影制御部29は、第2検出器23をパーク位置に配置させて所定の被写体に対して1回目の回転撮影(以下、第1撮影と呼ぶ)を実行するために、支持アーム駆動部27を制御する。所定の被写体は、3次元的に非対称であってX線を減弱させる物体であり、例えば、針金を丸めたものなどである。次いで、撮影制御部29は、第2検出器23を前面位置に配置させて、上記所定の被写体に対して回転撮影(以下、第2撮影と呼ぶ)を実行するために、支持アーム駆動部27を制御する。
【0085】
なお、撮影制御部29は、第1撮影および第2撮影において、それぞれ同一の撮影方向および同一の撮影条件で被写体を撮影するために、支持アーム駆動部27および高電圧発生部11等を制御する。撮影制御部29は、第1撮影および第2撮影の実行後に、被検体撮影を実行するために、支持アーム駆動部27および高電圧発生部11等を制御する。
【0086】
投影データ発生部31は、第1撮影における第1検出器19からの出力に基づいて、投影データ(以下、第1撮影投影データと呼ぶ)を発生する。投影データ発生部31は、第2撮影における第2検出器23からの出力に基づいて、投影データ(以下、第2撮影投影データと呼ぶ)を発生する。投影データ発生部31は、第1撮影投影データと第2撮影投影データとを、画像発生部33に出力する。
【0087】
画像発生部33は、第1撮影投影データに基づいて第1撮影画像を発生する。画像発生部33は、第2撮影投影データに基づいて第2撮影画像を発生する。画像発生部33は、発生した第1撮影画像と第2撮影画像とを、位置ずれ検出部35に出力する。
【0088】
位置ずれ検出部35は、前記第1撮影と前記第2撮影とにおいて同一の撮影方向ごとに、第1撮影画像と第2撮影画像とにおける被写体の投影像を検出する。例えば、位置ずれ検出部35は、被写体の投影像の検出として、パターンマッチング処理を適用する。位置ずれ検出部35は、同じ投影方向における第1撮影画像および第2撮影画像において検出された投影像を用いて、相対的な位置ずれを検出する。位置ずれ検出部35は、検出した相対的な位置ずれを、位置ずれ補正部37に出力する。
【0089】
(位置ずれ補正再構成機能)
図4は、本変形例に係る位置ずれ補正再構成処理の手順の一例を示すフローチャートである。本位置ずれ補正再構成処理において、被検体撮影の前に、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを検出するために、第1撮影および第2撮影が実行される。
【0090】
第1検出器19の回転軌道と理想的な回転軌道との軌道ずれを補正する第1対応表が、記憶部43から読み出される。第1対応表は、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれの検出の前に、予め作成される。第2検出器23がパーク位置に配置され、所定の被写体に対して第1撮影が実行される(ステップSb1)。第1検出器19からの出力に基づいて、撮影方向各々において、所定の被写体および第2検出器23に関する第1撮影投影データが発生される(ステップSb2)。
【0091】
第2検出器23が、第1検出器19の前面に配置され、同一の上記被写体に対して第2撮影が実行される(ステップSb3)。第2検出器23からの出力に基づいて、撮影方向各々において、上記被写体に関する第2撮影投影データが発生される(ステップSb4)。第1撮影投影データに基づいて、第1撮影画像が発生される。第2撮影投影データに基づいて、第2撮影画像が発生される。第1撮影画像と第2撮影画像とから、撮影方向各々において、被写体の投影像が検出される(ステップSb5)。
【0092】
同一撮影方向に関する第1撮影画像と第2撮影画像とにおける被写体の投影像を用いて、撮影方向各々において、相対的な位置ずれが検出される(ステップSb6)。相対的な位置ずれに基づいて、撮影方向φごとに、原点移動ベクトルVφと回転行列Rφとが計算される。原点移動ベクトルVφと回転行列Rφとに基づいて、相対的な位置ずれを撮影方向各々において補正する第2対応表が発生される。
【0093】
被検体に対して、回転撮影(被検体撮影)が実行される。第2検出器23からの出力に基づいて、撮影方向各々において、第2投影データが発生される。第1対応表と第2対応表とに基づいて第2投影データを補正することにより、補正投影データが発生される。補正投影データに基づいて、ボリュームデータが再構成される。
【0094】
(第2変形例)
第1の実施形態との相違は、第2対応表の作成を被検体の撮影時に実行することにある。
第2検出器23は、第1検出器19におけるマーカの検出効率を高めるため、第2検出器23を透過したX線ができるだけ多く第1検出器19に到達可能な構造を有することが望ましい。例えば、第2検出器23の構造は、不必要なX線不透過部品(例えば、電源回路、鉛シールドなど)を第2検出面の背面に配置しない構造を有する。
【0095】
撮影制御部29は、第1対応表の作成後において、前面位置に配置された第2検出器23を用いて被検体撮影を実行する。第2検出器23の撮像素子端をランドマークとして使用する場合は、撮影制御部29は、被検体撮影において、第2検出面を包含し、かつ第2検出面の大きさよりわずかに広い領域にX線を照射するために、照射野限定器17を制御してもよい。
【0096】
このとき、照射野限定器17は、第2検出面を包含し、かつ第2検出面の大きさよりわずかに広い領域にX線を照射するために、照射範囲を限定する。具体的には、照射野限定器17は、被検体撮影における撮影制御部29の制御により、第1、第2コリメータ羽根を移動させることにより、照射範囲を限定する。
【0097】
投影データ発生部31は、被検体撮影における第1検出器19からの出力に基づいて第1投影データを発生する。投影データ発生部31は、被検体撮影における第2検出器23からの出力に基づいて第2投影データを発生する。投影データ発生部31は、第1投影データを画像発生部33に出力する。投影データ発生部31は、第2投影データを位置ずれ補正部37に出力する。
【0098】
位置ずれ検出部35は、被検体撮影における撮影方向ごとに、第1投影データと所定の位置関係とを用いて、回転撮影における第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを、撮影方向に応じて検出する。なお、相対的な位置ずれの検出は、上記に限定されず、第1実施形態または第1変形例に記載の方法を用いてもよい。
【0099】
位置ずれ補正部37は、第1対応表と第2対応表とを用いて、被検体撮影に関する第2投影データを補正する。
【0100】
再構成部39は、補正された第2投影データ(補正投影データ)を用いて、ボリュームデータを再構成する。
【0101】
(位置ずれ補正再構成機能)
図5は、本変形例に係る位置ずれ補正再構成処理の手順の一例を示すフローチャートである。本位置ずれ補正再構成処理において、第1対応表の作成後の被検体撮影により、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれが検出される。
【0102】
第1検出器19の回転軌道と理想的な回転軌道との軌道ずれを補正する第1対応表と、所定の位置関係とが、記憶部43から読み出される。第2検出器23が、第1検出器19の前面に配置され、回転軸周りの軌道に沿って、被検体に対して回転撮影(被検体撮影)が実行される(ステップSc1)。
【0103】
このとき、第2検出面を包含し、かつ第2検出面の大きさよりわずかに広い領域にX線を照射するために、照射範囲が限定される。第1検出器19からの出力に基づいて、撮影方向各々において、被検体と第2検出器23とに関する第1投影データが発生される(ステップSc2)。第2検出器23からの出力に基づいて、撮影方向各々において、被検体に関する第2投影データが発生される(ステップSc3)。
【0104】
第1投影データと所定の位置関係とに基づいて、撮影方向各々において、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれが検出される(ステップSc4)。なお、第1投影データと第2投影データとに基づいて、撮影方向各々において、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれが検出されてもよい。
【0105】
相対的な位置ずれに基づいて、撮影方向φごとに、原点移動ベクトルVφと回転行列Rφとが計算される。原点移動ベクトルVφと回転行列Rφとに基づいて、相対的な位置ずれを撮影方向各々において補正する第2対応表が発生される。第1、第2対応表を用いて、第2投影データを補正することにより、補正投影データが発生される。補正投影データに基づいて、ボリュームデータが再構成される。
【0106】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るX線診断装置1によれば、マーカ(標識点)を背面に設けた第2検出器23を第1検出器19の前面に配置し、回転撮影に伴って第2検出器23を第1検出器19で撮影することにより、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを検出することができる。次いで、本X線診断装置1は、相対的な位置ずれに基づいて、第2投影データの位置ずれを補正する第2対応表を作成することができる。これにより、本X線診断装置1は、回転撮影における第1検出器19の回転軌道と理想的な回転軌道との軌道ずれを補正するための第1対応表と第2対応表とを用いて第2投影データを補正し、補正した第2投影データに基づいてボリュームデータを再構成することができる。
【0107】
これらのことから、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、高価なMAF用の較正ファントムを用いることなく、MAF検出器(第2検出器23)に関するホルダ機構を含んだCアームの幾何学的な変形,変移および振動特性の補正に関するテーブル(第2対応表)を作成することができる。これにより、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、製造コストが低減され、サービス性が向上し、かつより短時間で、Cアーム(支持アーム13)の幾何学的な変形および振動による投影データの位置ずれを補正し、より高精度なボリュームデータを再構成することができる。
【0108】
また、本実施形態の第1変形例に係るX線診断装置1によれば、第2検出器23の背面にマーカを設けることなく、第2対応表を作成することができる。これにより、更にコストを低減することができる。加えて、本変形に係るX線診断装置1によれば、マーカが搭載されていないMAFシステムにおいても、MAF検出器(第2検出器23)に関するホルダ機構を含んだCアームの幾何学的な変形,変移および振動特性の補正を実行することができる。
【0109】
加えて、本実施形態の第2変形例に係るX線診断装置1によれば、被検体に対する回転撮影により、第2対応表を作成することができる。これにより、第2対応表を被検体撮影と同時に作成できるため,被検体撮影毎にわずかに揺らぐホルダ機構を含んだCアームの幾何学的な変形,変移および振動特性を補正することが可能になり,さらに高精度なボリュームデータを再構成することができる。
【0110】
また、本実施形態の第2変形例に係る本X線診断装置1によれば、第2検出器23に対する事前較正処理が不要となり、操作者に対するサービス性が向上する。さらに、本X線診断装置1は、特に機械的な特性の変化(経時的な変化だけではなく、整備・修理等において支持機構21から第2検出器23の脱着など)を受けずに、相対的な位置ずれを補正することができる。
【0111】
すなわち、本実施形態の第2変形例に係る本X線診断装置1によれば、機械的な特性の変化による事前較正自体のずれを考慮する必要がないため、相対的な位置ずれの補正精度を一定に維持することができる。また、X線診断装置1によれば、被検体に対する撮影ごとに相対的な位置ずれを補正することが可能なため、前面位置に配置される第2検出器23の位置に関して高精度な再現性は要求されず、支持機構21に対する機械的精度を緩和させることができる。これにより、本X線診断装置1の製造コストをさらに低減させることができる。
【0112】
また、本実施形態および本変形例に係る機能は、位置ずれ検出処理、位置ずれ補正処理、位置ずれ補正再構成処理等を実行するプログラム(医用画像処理プログラム)を本X線診断装置1のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0113】
(第2の実施形態)
第1の実施形態との相違は、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれに基づいて、コリメータ羽根の位置と補償フィルタの位置とのうち少なくとも一方を、撮影方向に応じて補正することにある。
【0114】
入力部41は、撮影方向に応じてコリメータ羽根の位置を補正するコリメータ制御モードの実行指示を入力する。なお、入力部41は、撮影方向に応じて補償フィルタの位置を補正する補償フィルタ制御モードの実行指示を入力してもよい。入力部41は、上記モードの入力に伴って、被検体Pに対する撮影方向が入力される。
【0115】
位置ずれ補正部37は、コリメータ制御モードまたは補償フィルタ制御モードの入力を契機として、撮影方向に応じて、第2対応表を用いて第2検出器23の位置ずれ補正量を決定する。第2対応表における位置ずれ補正量(Vφ、θφ)は、第1の実施形態に記載の任意の方法により計算される。位置ずれ補正部37は、決定した位置ずれ補正量に基づいて、絞り羽根の位置を補正する羽根位置補正量を決定する。
【0116】
なお、位置ずれ補正部37は、補償フィルタ制御モードの入力を契機として、決定した位置ずれ補正量に基づいて、X線線量を減衰させる補償フィルタの位置を補正するフィルタ位置補正量を決定してもよい。位置ずれ補正部37は、羽根位置補正量およびフィルタ位置補正量を、撮影制御部29に出力する。
【0117】
以下、説明を簡単にするために、コリメータ制御モードおよび羽根位置補正量について説明する。補償フィルタ制御モードの入力時においては、以下の説明において、コリメータ羽根の位置を補償フィルタの位置に、羽根位置補正量をフィルタ位置補正量にそれぞれ読み替えればよい。
【0118】
位置ずれ補正部37は、第1の実施形態で算出された位置ずれ補正量(Vφ、θφ)と、第1検出器19と線源との間の距離SID1と、コリメータ羽根と線源との間の距離(以下、SIDcと呼ぶ)とにより、羽根位置補正量を計算する。具体的には、位置ずれ補正部37は、位置ずれ補正量を、コリメータ羽根の位置に反映させるための縮小率H(x、y)を、記憶部43から読み出す。縮小率H(x、y)は、SID1(x、y)に対するSIDc(x、y)の割合(H(x、y)=SIDc(x、y)/SID1(x、y))として計算される。位置ずれ補正部37は、縮小率H(x、y)を用いて、位置ずれ補正量(Vφ、θφ)を補正することより、コリメータ羽根を包含する平面内における羽根位置補正量(Vφc、θφc)を計算する。
【0119】
撮影制御部29は、羽根位置補正量に基づいて、コリメータ羽根を移動させるために、照射野限定器17を制御する。なお、撮影制御部29は、フィルタ位置補正量に基づいて、補償フィルタを移動させるために、照射野限定器17を制御してもよい。加えて、撮影制御部29は、操作者により入力された撮影方向に従って、支持アーム13を回転させる。
【0120】
照射野限定器17は、撮影制御部29による制御のもとで、コリメータ羽根を、羽根位置補正量に応じて移動させる。照射野限定器17は、被検体への被曝線量の低減および画質の向上を目的として、X線の照射野に挿入される少なくともひとつの補償フィルタを有する。補償フィルタは、例えば、アルミニウム、銅などにより構成される。補償フィルタは、撮影制御部29による制御のもとで、照射野限定器17におけるX線の照射野に挿入される。補償フィルタは、例えば、ハレーション(halation)防止のために用いられる。照射野限定器17は、撮影制御部29による制御のもとで、補償フィルタを、フィルタ位置補正量に応じて移動させる。
【0121】
図6は、天板背面から被検体を撮影する撮影角度を0°として、90°の撮影方向における第2検出器23の位置ずれ(ダレ)と、第2検出器23の位置ずれに応じたコリメータ羽根の位置の補正とを示す図である。
図6に示すように、コリメータ羽根の位置は、撮影方向(角度)に応じた第2検出器23の位置ずれに応じて補正される。
【0122】
(羽根位置補正機能)
羽根位置補正機能とは、撮影方向に応じた第2検出器23の位置ずれに応じて決定された羽根位置補正量に従って、コリメータ羽根を移動させる機能である。以下、羽根位置補正機能に係る処理(以下、羽根位置補正処理と呼ぶ)について説明する。なお、本変形例に係る羽根位置補正処理において、コリメータ羽根の位置の補正の代わりに補償フィルタの位置の補正を実行してもよい。また、コリメータ羽根の位置の補正とともに、補償フィルタの位置の補正が実行されてもよい。
【0123】
図7は、本実施形態に係る羽根位置補正処理の手順の一例を示す図である。
第2検出器23が第1検出器19の前面に配置される(ステップSd1)。コリメータ制御モードの入力指示が、入力部41を介して入力される。コリメータ制御モードの入力指示を契機として、コリメータ制御モードが起動される(ステップSd2)。操作者により入力された撮影方向に従って、支持アーム13が回転する。支持アーム13の回転後の撮影方向における第2検出器23に関する相対的な位置ずれに基づいて、コリメータの位置を補正する補正量(羽根位置補正量)が決定される(ステップSd4)。決定された補正量を用いて、コリメータが移動される(ステップSd5)。
【0124】
なお、補償フィルタ制御モードの実行指示が入力されると、ステップSd2において、補償フィルタ制御モードが起動される。加えて、ステップSd4において、支持アーム13の回転後の撮影方向における第2検出器23に関する相対的な位置ずれに基づいて、フィルタ位置補正量が決定される。次いで、決定された補正量を用いて、補償フィルタが移動される。
【0125】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るX線診断装置1によれば、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれに基づいて、撮影方向に応じて、コリメータの位置または補償フィルタの位置を補正する補正量(羽根位置補正量、フィルタ位置補正量)を決定することができる。次いで、本X線診断装置1は、決定した補正量を用いて、コリメータ羽根または補償フィルタを移動させることができる。これらのことから、本X線診断装置1は、
図6に示すように、第2検出器23に対するコリメーションを常に適正に実行することができる。これにより、被検体に対する不要被曝、または操作者が意図していないコリメーション(絞り)による画像観察の阻害を防止することができる。特に、鉛直軸に対する支持アーム13の回転角度が大きい場合、X線の照射範囲が適正なものとなり、第2検出器23の検出面を有効に利用できるようになる。
【0126】
また、本実施形態に係る機能は、位置ずれ検出処理、羽根位置補正処理等を実行するプログラム(羽根位置補正プログラム)を本X線診断装置1のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0127】
(第3の実施形態)
第1、第2の実施形態との相違は、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれに基づいて3次元画像データを投影する投影方向を補正し、補正された投影方向で3次元画像データを投影することにより第3投影データを発生することにある。
【0128】
インターフェース部3は、ネットワークを介して、予め種々の医用画像診断装置で発生された3次元画像データを受信する。インターフェース部3は、3次元画像データを記憶部43に出力する。種々の医用画像診断装置とは、例えば、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:以下、CTと呼ぶ)装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置、X線診断装置、核医学診断装置などである。
【0129】
撮影制御部29は、第2投影データの収集時における支持アーム13の幾何学的位置(以下、幾何学的情報と呼ぶ)を位置ずれ補正部37に出力する。幾何学的情報とは、例えば、第2投影データの収集時における撮影方向である。
【0130】
記憶部43は、被検体に関する3次元画像データを記憶する。3次元画像データとは、予め種々の医用画像診断装置により収集されたボリュームデータである。3次元画像データは、例えば、CT画像、MRI画像、3次元血管画像などの元になるデータである。
【0131】
位置ずれ補正部37は、被検体に関する第2投影データに関する撮影方向と相対的な位置ずれとに基づいて、3次元画像データを投影させる投影方向の位置ずれを補正する。相対的な位置ずれに関する補正量(Vφ、θφ)は、第1の実施形態等に記載の任意の方法により計算される。位置ずれ補正部37は、補正された投影方向(以下、補正投影方向と呼ぶ)を投影データ発生部31に出力する。なお、位置ずれ補正部37は、補正投影方向を画像発生部33に出力してもよい。
【0132】
投影データ発生部31は、補正投影方向に沿って3次元画像データを投影することにより、第3投影データを発生する。投影データ発生部31は、例えば、所定のコンピュータシミュレーションにより、補正投影方向に沿った3次元画像データの投影を実行する。投影データ発生部31は、第3投影データを画像発生部33に出力する。第3投影データは、例えば、血管投影データ、X線ライクな投影データである。鉛直方向を基準とした支持アーム13の角度が0°または180°のとき、すなわち第2検出器23が、天板の直上または直下に位置するとき、投影データ発生部31は、0°または180°の投影方向に沿って3次元画像データを投影することにより、第3投影データを発生する。
【0133】
画像発生部33は、第2投影データに第3投影データを重畳させることにより、重畳画像を発生する。なお、画像発生部33は、第3投影データに基づいて第3画像を発生し、第2画像に第3画像を重畳さすることにより重畳画像を発生してもよい。画像発生部33は、重畳画像を表示部45に出力する。第3画像は、例えば、血管画像、X線ライクな画像である。なお、画像発生部33は、補正投影方向を用いたレンダリング処理により第3画像を発生してもよい。
【0135】
入力部41は、投影方向の補正の実行に関する指示を入力する。この指示は、例えば、3D−ロードマップモードの入力指示である。
【0136】
図8は、補正された投影方向を用いて発生された第3画像を第2画像に重畳した3D−ロードマップ画像の一例を示す図である。
図8は、第1検出器19の前面に移動された第2検出器23が、被検体P(天板)の側面(例えば、正面90°の位置)に配置された状態を示している。このとき、位置ずれ補正部37は、第2検出器23のダレに対応する位置ずれ(第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれ)を用いて、ボリュームデータを投影する投影方向を補正する。この補正により、第2検出器23により収集された第2投影データに関するX線照射範囲と、補正投影方向を用いて3次元画像データから発生された第3投影データに関する仮想的なX線照射範囲とは一致する。
【0137】
すなわち、
図8に示すように、第2投影データにより発生された第2画像と、第3投影データにより発生された第3画像との位置関係は一致する。これにより、第2画像に第3画像を重畳した3Dロードマップ画像は、第2画像と第3画像との位置ずれが解消されて表示される。
【0138】
(投影方向補正機能)
投影方向補正機能とは、3次元画像データを投影させる投影方向の位置ずれを、幾何学的情報と相対的な位置ずれとを用いて補正し、3次元画像データを補正投影方向に投影した第3投影データを発生する機能である。以下、投影方向補正機能に係る処理(以下、投影方向補正処理)について説明する。以下、説明を簡単にするために、重畳画像は、3D−ロードマップ画像とする。
【0139】
図9は、投影方向補正処理の手順の一例を示す図である。
第2検出器23が、第1検出器19の前面に配置される(ステップSe1)。入力部41を介した操作者の指示により、3D−ロードマップモードが起動される(ステップSe2)。加えて、入力部41を介した操作者の選択指示により、3D−ロードマップモードにおいて使用される3次元画像データが選択される。入力部41を介して操作者により入力された撮影方向に従って、支持アーム13が回転する(ステップSe3)。被検体Pを透過したX線が、第2検出器23で検出される。第2検出器23の出力に基づいて、第2投影データが発生される。
【0140】
第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれに基づいて、3次元画像データを投影する投影方向が補正される(ステップSe4)。補正投影方向に沿って3次元画像データを投影させることにより、第3投影データが発生される(ステップSe5)。第2投影データに第3投影データを重畳させることにより、重畳画像(3D−ロードマップ画像)が発生される(ステップSe6)。重畳画像(3D−ロードマップ画像)が表示部45に表示される(ステップSe7)。なお、
図9に記載のフローチャートにおいて、撮影方向が0°または180°である場合、ステップSe4の処理は省略されてもよい。このときステップSe5の処理において、規定された撮影方向に沿って3次元画像データを投影させることにより、第3投影データが発生される。
【0141】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るX線診断装置1によれば、第1検出器19に対する第2検出器23の相対的な位置ずれを用いて、3次元画像データを投影する投影方向を補正することができる。すなわち、本X線診断装置1は、
図8に示すように、重力による第2検出器23の変異(相対的な位置ずれ)によるX線照射範囲のずれに応じて、第3投影データに関する仮想的なX線照射範囲を補正することができる。これにより、本X線診断装置1は、3次元画像データを補正投影方向に投影した第3投影データ(第3画像)と、第2投影データ(第2画像)との位置ずれを防ぐことができる。
【0142】
また、本実施形態に係る機能は、位置ずれ検出処理、投影方向補正処理等を実行するプログラム(投影方向補正プログラム)を本X線診断装置1のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0143】
(第4の実施形態)
第1乃至第3の実施形態との相違は、第2検出器23をパーク位置に配置した第1状態と第2検出器23を前面位置に配置した第2状態とにおいて、支持アーム13に対する第2検出器23の重心位置の差異(以下、重心差と呼ぶ)を補償するためのカウンターウェイトを有することにある。
【0144】
図10は、第4の実施形態に係るX線診断装置1の構成を示している。
カウンターウェイト49は、第1検出器19に関するX線照射範囲から第2検出器23を待避させた第1状態と、第2検出器23を第1検出器19の前面に配置させた第2状態とにおいて、第2検出器23の重心位置の差異を補償する。カウンターウェイト49は、点形状または棒形状を有する。カウンターウェイト49は、重心位置の差異、すなわち第1状態における重心分布と第2状態における重心分布とを略不変にするような重量を有する。支持機構21と支持アーム13との接続部分から第2検出器23の重心までの距離と、接続部分からカウンターウェイト49の重心までの距離が略等しい場合、カウンターウェイト49は、第2検出器23に略等しい重量を有する。
【0145】
支持機構21は、第1状態および第2状態に応じて、重心差を補償可能にカウンターウェイト49を支持する。支持機構21は、第1検出器19の片側または両側に位置するように、カウンターウェイト49を支持する。なお、支持機構21は、第1検出器19を取り囲むように、カウンターウェイト49を支持してもよい。支持機構21は、カウンターウェイト49と第2検出器23とを移動可能に支持する。具体的には、支持機構21は、第1状態と第2状態との間における第2検出器の移動方向とは逆方向に移動可能に、カウンターウェイト49を支持する。
【0146】
例えば、第2検出器23が前面位置からパーク位置に移動される場合、支持機構21は、パーク位置から前面位置にカウンターウェイト49を移動させる。また、第2検出器23がパーク位置から前面位置に移動される場合、支持機構21は、前面位置からパーク位置にカウンターウェイト49を移動させる。すなわち、第2検出器23がパーク位置に配置された場合、支持機構21は、カウンターウェイト49を前面位置の近傍の位置に、重心差を補償するように配置する。第2検出器23が前面位置に配置された場合、支持機構21は、カウンターウェイト49をパーク位置に配置する。
【0147】
図11は、第2検出器23をパーク位置に配置した第1状態における点形状のカウンターウェイト49と、第2検出器23を前面位置に配置した第2状態における点形状のカウンターウェイト49とを示す図である。
図11の左側に示すように、第1状態における点形状のカウンターウェイト49は、前面位置の近傍に配置される。
図11の右側に示すように、第2状態における点形状のカウンターウェイト49は、パーク位置に配置される。
【0148】
図12は、第2検出器23をパーク位置に配置した第1状態における棒形状のカウンターウェイト49と、第2検出器23を前面位置に配置した第2状態における棒形状のカウンターウェイト49とを示す図である。
図12の左側に示すように、第1状態における棒点形状のカウンターウェイト49は、前面位置の近傍に配置される。
図12の右側に示すように、第2状態における棒形状のカウンターウェイト49は、パーク位置に配置される。
【0149】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るX線診断装置1によれば、第2検出器23をパーク位置に配置した第1状態と第2検出器23を前面位置に配置した第2状態とにおいて、支持アーム13に対する第2検出器23の重心位置の差異を補償するためのカウンターウェイト49を設けることができる。これにより、本実施形態のX線診断装置1によれば、回転撮影において、支持アーム13の振動特性の変化を、抑制および低減することができる。すなわち、本実施形態によれば、回転撮影において、支持アーム13の振動特性を略一定に保つことができる。
【0150】
以上のことから、本実施形態によれば、第1検出器19に関する第1対応表の再現性が向上することにより、相対的な位置ずれの補正の精度が向上する。
【0151】
加えて、各実施形態に係る各種機能は、当該各種機能を実行するプログラム(医用画像処理プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの各種可搬型記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。