特許第6647822号(P6647822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647822トルク制御装置及び方法、並びにモーター制御器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647822
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】トルク制御装置及び方法、並びにモーター制御器
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/14 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   H02P23/14
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-179902(P2015-179902)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-86634(P2016-86634A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2018年7月11日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0147688
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハン、ヒ
(72)【発明者】
【氏名】カン、グ、ベ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、テ、イル
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−331900(JP,A)
【文献】 特開平03−222686(JP,A)
【文献】 特開2010−142013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの温度を測定する温度センサーにより測定された前記モーターの現在温度と予め定義された基準温度との間の差による鎖交磁束の変化量を推定する鎖交磁束推定部;
前記モーターの温度変化に従い推定された鎖交磁束の変化量を利用し、前記モーターの現在温度に対応するトルク補償値を計算するトルク補償値計算部;及び
前記モーターの温度変化に対応して計算されたトルク補償値を適用してトルク指令の要求トルクに対する誤差を補償し、前記誤差が補償された要求トルクを含む最終のトルク指令をモーター制御器の電流マップに出力するトルク補償部
を含み、
前記鎖交磁束推定部は、
前記基準温度から前記モーターの現在温度を差し引いた値と、予め定義された鎖交磁束基準値とを掛算した値から前記鎖交磁束の変化量を推定し、
前記トルク補償値計算部は、
前記鎖交磁束の変化量、前記モーターの極数及び回転力軸電流値を掛算した値から前記トルク補償値を計算する、
トルク制御装置。
【請求項2】
前記トルク補償部は、
前記要求トルク及び前記トルク補償値を足算した値から最終のトルク指令を出力することを特徴とする請求項1に記載のトルク制御装置。
【請求項3】
温度センサーにより測定されたモーターの現在温度と予め定義された基準温度との間の差による鎖交磁束の変化量を推定する段階;
前記モーターの温度変化に従い推定された鎖交磁束の変化量を利用し、前記モーターの現在温度に対応するトルク補償値を計算する段階;
前記モーターの温度変化に対応して計算されたトルク補償値を適用してトルク指令の要求トルクに対する誤差を補償する段階;及び
前記誤差が補償された要求トルクを含む最終のトルク指令をモーター制御器の電流マップに出力する段階
を含み、
前記鎖交磁束の変化量を推定する段階は、
前記基準温度から前記モーターの現在温度を差し引いた値と、予め定義された鎖交磁束基準値とを掛算した値から前記鎖交磁束の変化量を推定し、
前記トルク補償値を計算する段階は、
前記鎖交磁束の変化量、前記モーターの極数及び回転力軸電流値を掛算した値から前記トルク補償値を計算する、
トルク制御方法。
【請求項4】
前記要求トルクを補償する段階は、
前記要求トルクに前記トルク補償値を足算して前記モーターの温度変化に伴うトルク誤差を補償することを特徴とする請求項に記載のトルク制御方法。
【請求項5】
温度センサーにより測定されたモーターの温度変化から鎖交磁束の変化量を推定し、前記推定された鎖交磁束の変化量から計算された前記モーターの現在温度に対応するトルク補償値を利用し、トルク指令の要求トルクに対する誤差を補償するトルク制御装置;
前記トルク制御装置により誤差が補償された要求トルク、前記モーターの回転速度及び電圧に基づき、前記トルク指令に適合する電流指令を選択して出力する電流マップ;
前記電流マップから選択された電流指令に対応する電圧指令を選択して出力する電流制御器;及び
前記電圧指令の要求電圧をPWM(Pulse Width Modulation)形態の3相電圧に変換して前記モーターに出力する電力モジュール
を含み、
前記トルク制御装置は、
前記基準温度から前記モーターの現在温度を差し引いた値と、予め定義された鎖交磁束基準値とを掛算した値から前記鎖交磁束の変化量を推定し、
前記鎖交磁束の変化量、前記モーターの極数及び回転力軸電流値を掛算した値から前記トルク補償値を計算する、
モーター制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク制御装置及び方法、並びにモーター制御器に関し、モーターの温度変化に伴い要求トルクの誤差を補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車及び電気自動車のようなエコカーは、モーターとインバーターからなるモーターシステムを主な動力源として用いる。よって、駆動モーターのトルク及び出力性能が車両の性能に多くの影響を及ぼすことになるので、駆動モーターの出力性能の向上及び/または低下が車両性能の向上及び/または低下にそのまま影響を与えることもある。
【0003】
車両の安定的な走行性能の維持のためには、駆動モーターが要求トルクに適合するトルクを一定に出力するのが重要である。
【0004】
ここで、永久磁石同期モーターの出力性能は、速度、電圧、温度などの運転条件に影響を受ける。しかし、電流マップで要求トルクに該当する電流指令を選定する時は、速度、電圧、トルク指令などの運転条件を考慮するようになっている。このように、モーターの温度を考慮しないとすれば、モーター制御器は基準温度に対する電流指令を選定することになるので、基準温度と実際温度との差によるトルク誤差が発生することになり、それにより駆動モーターは要求トルクに適合するトルクを一定に出力することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、モーターの温度に伴うトルク誤差を推定し、これを補償し、エコカー用駆動モーターが温度条件と係わりなく一定の出力を得ることができるようにするトルク制御装置及び方法、並びにモーター制御器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明に係るトルク制御装置は、モーターの温度を測定する温度センサー、前記温度センサーにより測定された前記モーターの現在温度と予め定義された基準温度との間の差による鎖交磁束の変化量を推定する鎖交磁束推定部、前記モーターの温度変化に従い推定された鎖交磁束の変化量を利用し、前記モーターの現在温度に対応するトルク補償値を計算するトルク補償値計算部、及び前記モーターの温度変化に対応して計算されたトルク補償値を適用し、前記モーターに対して発生したトルク指令の要求トルクを補償し、前記補償された要求トルクを含む最終のトルク指令をモーター制御器の電流マップに出力するトルク補償部を含むことを特徴とする。
【0007】
前記鎖交磁束推定部は、前記基準温度から前記モーターの現在温度を差し引いた値と、予め定義された鎖交磁束基準値とを掛算した値から前記鎖交磁束の変化量を推定することを特徴とする。
【0008】
前記トルク補償値計算部は、前記鎖交磁束の変化量、前記モーターの極数及び回転力軸電流値を掛算した値から前記トルク補償値を計算することを特徴とする。
【0009】
前記トルク補償部は、前記要求トルク及び前記トルク補償値を足算した値から最終のトルク指令を出力することを特徴とする。
【0010】
一方、前記目的を達成するための本発明に係るトルク制御方法は、温度センサーにより測定されたモーターの現在温度と予め定義された基準温度との間の差による鎖交磁束の変化量を推定する段階、前記モーターの温度変化に従い推定された鎖交磁束の変化量を利用し、前記モーターの現在温度に対応するトルク補償値を計算する段階、前記モーターの温度変化に対応して計算されたトルク補償値を適用し、前記モーターに対して発生したトルク指令の要求トルクを補償する段階、前記補償された要求トルクを含む最終のトルク指令をモーター制御器の電流マップに出力する段階を含むことを特徴とする。
【0011】
前記鎖交磁束の変化量を推定する段階は、前記基準温度から前記モーターの現在温度を差し引いた値と、予め定義された鎖交磁束基準値とを掛算した値から前記鎖交磁束の変化量を推定することを特徴とする。
【0012】
前記トルク補償値を計算する段階は、前記鎖交磁束の変化量、前記モーターの極数及び回転力軸電流値を掛算した値から前記トルク補償値を計算することを特徴とする。
【0013】
前記要求トルクを補償する段階は、前記要求トルクに前記トルク補償値を足算して前記モーターの温度変化に伴うトルク誤差を補償することを特徴とする。
【0014】
一方、前記目的を達成するための本発明に係るモーター制御器は、温度センサーにより測定されたモーターの温度変化から鎖交磁束の変化量を推定し、前記推定された鎖交磁束の変化量から計算された前記モーターの現在温度に対応するトルク補償値を利用し、前記モーターに対して発生したトルク指令の要求トルクを補償するトルク制御装置、前記トルク制御装置により補償されたトルク指令の要求トルク、前記モーターの回転速度及び電圧に基づき、前記トルク指令に適合する電流指令を選択して出力する電流マップ、前記電流マップから選択された電流指令に対応する電圧指令を選択して出力する電流制御器、及び前記電圧指令の要求電圧をPWM(Pulse Width Modulation)形態の3相電圧に変換して前記モーターに出力する電力モジュールを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モーターの温度変化に伴う鎖交磁束の変化量を推定し、温度差により発生するトルク指令の要求トルクの誤差を補償し、モーターが要求トルクに適合するトルクを一定に出力することができ、それによって車両が安定的な走行性能を維持するようにする効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るモーター制御器を示した図である。
図2】本発明に係るトルク制御装置を示した図である。
図3図2の鎖交磁束推定部の構成の説明に参照される図である。
図4図3のトルク補償値計算部の構成の説明に参照される図である。
図5】本発明に係るトルク制御方法に対する動作の流れを示したフローチャートである。
図6】本発明に係るモーター制御器の電流指令選択動作の説明に参照される例示図である。
図7】本発明に係るモーター制御器のトルク出力変化の説明に参照される例示図である。
図8】本発明に係るモーター制御器のトルク出力変化の説明に参照される例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で用いられる技術的用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではないことを留意しなければならない。また、本発明で用いられる技術的用語は、本発明で特に他の意味として定義されない限り、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者により一般に理解される意味として解釈されなければならず、あまりにも包括的な意味として解釈されるか、縮小されすぎた意味として解釈されてはならない。さらに、本発明で用いられる技術的な用語が、本発明の思想を正確に表現することができない誤った技術的用語である場合は、当業者が正しく理解することができる技術的用語に代替されて理解されなければならないはずである。また、本発明で用いられる一般的な用語は、辞書に定義されているところによるか前後の文脈上に従って解釈されなければならず、縮小されすぎた意味として解釈されてはならない。
【0018】
さらに、本発明で用いられる単数の表現は、文脈上明らかに別に意味しない限り複数の表現を含む。本発明で「構成される」または「含む」などの用語は、発明に記載の幾多の構成要素または幾多の段階を必ずしも全て含むものと解釈されてはならず、そのうち一部の構成要素または一部の段階は含まれない場合もあり、または追加的な構成要素または段階をさらに含むことができるものと解釈されなければならない。
【0019】
さらに、本発明で用いられる第1、第2などのように序数を含む用語は構成要素等の説明に用いられてよいが、構成要素等は用語等により限定されてはならない。用語等は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にだけ用いられる。例えば、本発明の権利範囲を外れることなく、第1構成要素は第2構成要素と命名されてよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名されてよい。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明に係る好ましい実施例を詳しく説明する。但し、図面符号に係わりなく、同一または類似の構成要素は同一の参照番号を与え、これに対する重複される説明は略する。
【0021】
さらに、本発明の説明において、関連した公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨をぼやかし得ると判断される場合、その詳細な説明を略する。また、図面は本発明の思想を容易に理解できるようにするためのものであるだけで、図面により本発明の思想が制限されるものと解釈されてはならないことに留意しなければならない。
【0022】
図1は、本発明に係るモーター制御器を示した図である。
【0023】
本発明に係るモーター制御器は、同期座標系(Synchronous Reference Frame)電流制御器(Current Regulator)を用いるものであって、図1に示す通り、モーター制御器は電流マップ(MTPA、Maximum Torque Per Ampere)10、電流制御器(current regulator)20、座標変換器30、過変調器40、電力モジュール(Electric Power Module)50を含むことができる。このとき、電気角速度ωrで回転するモーターM 60に要求トルクTe*が与えられる場合、電流マップ10は要求トルクTe*、電気角速度ωr、速度Vdcの入力を受けて要求トルクに適合する電流指令Idsr*及びIqsr*を選定して電流制御器20に出力する。
【0024】
ここで、本発明に係るモーター制御器は、電流マップ10の要求トルク入力端にモーター60の温度に伴うトルク誤差を補償するためのトルク制御装置100を備えることができる。さらに、モーター制御器は、トルク制御装置100にモーター60の温度を提供する温度センサー(図示省略)をさらに含むことができる。トルク制御装置100は、モーター60の温度に伴うトルク誤差を推定し、それに基づくトルク補償値を計算し、計算されたトルク補償値をトルク指令による要求トルクTe*に反映し、トルク誤差が補償された最終のトルク指令が電流マップ10に印加されるようにする。よって、電流マップ10は、モーター60の温度に伴うトルク誤差が補償された最終のトルク指令に適合する電流指令Idsr*及びIqsr*を選定して電流制御器20に出力する。
【0025】
電流制御器20は、電流マップ10からの入力を受けた電流指令Idsr*及びIqsr*がモーター60に流れることができるようにする電圧指令Vdsr*及びVqsr*を選定して出力する。このとき、電流制御器20から出力された電圧指令Vdsr*及びVqsr*は、座標変換器30及び過変調器40を経て電力モジュール50に入力される。
【0026】
電力モジュール50は、電圧指令Vdsr*及びVqsr*をPWM(Pulse Width Modulation)形態の3相電圧に変換してモーター60に印加させる。この場合、モーター60に印加された電圧指令は、モーター60の温度に伴うトルク誤差が補償された状態で選定されたものなので、モーター60はトルク指令の要求トルクに適合するトルクを一定に出力することになる。
【0027】
よって、モーター制御器のトルク誤差を補償するトルク制御装置100に対する具体的な説明は、図2の実施例を参照する。
【0028】
図2は、本発明に係るトルク制御装置を示した図である。
【0029】
図2に示す通り、トルク制御装置100は電流マップ10の要求トルク入力端に配置される。よって、トルク制御装置100は、鎖交磁束推定部(Flux Linkage Estimation)110、トルク補償値計算部120及びトルク補償部130を含むことができる。
【0030】
先ず、鎖交磁束推定部110は、モーターの温度を測定する温度センサーからモーターの現在温度が入力されると、入力されたモーターの温度に伴う鎖交磁束の変化量を推定してトルク補償値計算部120に出力する。ここで、鎖交磁束推定部110の詳細な構成は、図3のように示すことができる。
【0031】
図3に示す通り、鎖交磁束推定部110は、温度センサーからモーターの現在温度Tmotが入力されると、予め定義された基準温度Tmot_refとモーターの現在温度Tmotとの間の差を計算して鎖交磁束の変化量を推定させる。鎖交磁束の変化量は、下記数式(1)及び数式(2)を介して算出することができる。
【数1】
【数2】
ここで、λfは鎖交磁束、Δλfは鎖交磁束の変化量、λf_refは基準鎖交磁束、Temprefは基準温度、Tempはモーターの現在温度、そして、kは鎖交磁束の温度係数(temperature coefficient)[%/℃]を意味する。
【0032】
このように、鎖交磁束の変化量は、基準温度からモーターの現在温度を差し引いた値に、鎖交磁束の温度係数及び基準鎖交磁束を掛算して算出することができる。鎖交磁束推定部110は、算出された鎖交磁束の変化量をトルク補償値計算部120に出力する。
【0033】
トルク補償値計算部120は、鎖交磁束推定部110から入力された鎖交磁束の変化量を利用し、モーターの現在温度に伴うトルク誤差を補償するためのトルク補償値を計算する。ここで、トルク補償値計算部120の詳細な構成は、図4のように示すことができる。
【0034】
図4に示す通り、トルク補償値計算部120は、鎖交磁束推定部110から鎖交磁束の変化量Δλfが入力されると、鎖交磁束の変化量Δλfとモーターの回転力軸電流値iqsr及びモーターの極数Pを利用してトルク補償値を計算させる。トルク補償値は、下記数式(3)を介して算出することができる。
【数3】
ここで、ΔTeはトルク補償値、Pはモーターの極(pole)の数、Δλfは鎖交磁束の変化量、iqsrは回転力軸(q-軸)電流値を意味する。
【0035】
このように、トルク補償値は、鎖交磁束の変化量Δλfとモーターの回転力軸電流値iqsr及び(3/2)×(P/2)を掛算して算出することができる。トルク補償値計算部120は、算出されたトルク補償値をトルク補償部130に出力する。
【0036】
トルク補償部130は、モーターの現在温度に対応して計算されたトルク補償値を適用し、トルク指令の要求トルクに対する誤差を補償する。ここで、トルク補償部130は、トルク指令の要求トルクTe*が入力されると、トルク補償値計算部120から入力されたトルク補償値ΔTeを要求トルクTe*に適用し、モーターの現在温度に伴うトルク誤差を補償させる。
【0037】
トルク指令の要求トルクは、数式(4)のように表わすことができる。
【数4】
ここで、Te*は要求トルク、Pはモーターの極(pole)の数、Ldは磁束軸(d-軸)インダクタンス、Lqは回転力軸(q-軸)インダクタンス、idsrは磁束軸(d-軸)電流値、iqsrは回転力軸(q-軸)電流値、λfは鎖交磁束を意味する。
【0038】
よって、トルク補償部130は、誤差が補償された要求トルクTe_compを含む最終のトルク指令をモーター制御器の電流マップ10に出力させる。誤差が補償された要求トルクは、下記数式(5)を介して算出することができる。
【数5】
ここで、Te_compは誤差が補償された要求トルク、Te*は要求トルク、ΔTeはトルク補償値を意味する。よって、誤差が補償された要求トルクは、要求トルクTe*及びトルク補償値Teを足算して算出することができる。
【0039】
このように、トルク制御装置100は、トルク指令の要求トルクに対しモーターの現在温度に伴うトルク誤差を補償し、最終のトルク指令を電流マップ10に出力することにより、モーターから要求トルクに適合する一定のトルクを出力することができるようにする。
【0040】
前記のような構成を有する本発明に係るトルク制御装置の動作の流れをより詳しく説明する。
【0041】
図5は、本発明に係るトルク制御方法に対する動作の流れを示したフローチャートである。図5に示す通り、トルク制御装置は、温度センサーからモーターの現在温度Tmotが入力されると、予め定義された基準温度Tmot_refと比較する(S110)。
【0042】
「S110」過程の比較の結果、予め定義された基準温度Tmot_refとモーターの現在温度Tmotとの間の差を計算し、鎖交磁束の変化量Δλfを推定する(S120)。ここで、鎖交磁束の変化量を算出する式は、前述した数式(2)を参照する。
【0043】
さらに、トルク制御装置は、「S120」過程で推定された鎖交磁束の変化量Δλfを利用し、モーターの現在温度に伴うトルク誤差を補償するためのトルク補償値を計算させる(S130)。ここで、トルク補償値を算出する式は、前述した数式(3)を参照する。
【0044】
このとき、トルク制御装置は、「S130」過程で計算されたトルク補償値をトルク指令の要求トルクに適用し、モーターの現在温度に伴うトルク誤差を補償させる(S140)。ここで、誤差が補償された要求トルクを算出する式は、前述した数式(4)を参照する。
【0045】
以後、トルク制御装置は、「S140」過程で誤差が補償された要求トルクを含む最終のトルク指令をモーター制御器の電流マップに出力させる(S150)。
【0046】
図6は、本発明に係るモーター制御器の電流指令選択動作の説明に参照される例示図である。特に、図6は、永久磁石同期モーターの等トルク曲線及び電圧制限楕円の一部を示した図である。
【0047】
図6に示す通り、等トルク曲線は基準温度での鎖交磁束値、すなわち、基準鎖交磁束値(λf_ref)に対する等トルク曲線を中心に、モーターの温度が基準温度より低い時の鎖交磁束値は、基準鎖交磁束より大きい値(λf_ref+Δλf)を有する。一方、モーターの温度が基準温度より高い時の鎖交磁束値は、基準鎖交磁束より小さな値(λf_ref-Δλf)を有する。
【0048】
一方、電圧制限楕円は制御可能な指令電流idsr*とiqsr*の範囲を表わすが、これは入力電圧Vdcとモーターの回転速度により決定される。図6に示す通り、入力電圧が減少するか、モーターの回転速度が増加すると、電圧制限楕円は小さくなることになる。
【0049】
もし、基準鎖交磁束の時、特定の運転条件(電圧、速度、トルク指令)での電流指令をAとすれば、温度の変化に伴いAの位置は可変する。ここで、d軸電流指令は温度に影響を受けないので一定であり、q軸電流指令のみ温度によって上下方向に変わることになる。
【0050】
このとき、電流指令が電圧制限楕円を外れることになれば電流制御がなされない問題が発生し得るが、本発明の場合、温度に伴いトルク指令のトルク誤差が補償されるので、電流指令は電圧制限楕円内の値に決定されることになる。
【0051】
図7及び図8は、本発明に係るモーター制御器のトルク出力変化の説明に参照される例示図である。図7及び図8の各ポイントは、トルク指令の要求トルクTe*に対する実際の出力トルクを示したものである。
【0052】
先ず、図7は、モーターの温度に伴い要求トルクのトルク誤差を補償しない時の出力トルクをグラフで示した図であって、基準温度ではトルク指令に適合するトルクが出力されるが、温度が変わって鎖交磁束が増加するか減少する場合、約2〜4%程度のトルク誤差が発生することを確認することができる。
【0053】
一方、図8は、モーターの温度に伴い要求トルクのトルク誤差を補償した時の出力トルクをグラフで示した図であって、温度の差に伴う鎖交磁束の差を利用してトルク補償値を計算し要求トルクに適用するため、モーターの温度に係らず所望のトルク指令の要求トルクに近接したトルクが出力されることを確認することができる。
【0054】
前記過程等は、プロセッサにより実行されるハードウェア、ソフトウェアモジュール、またはその2つの結合で直接に具現されてよい。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスター、ハードディスク、着脱型ディスク、CD-ROMのような格納媒体、すなわち、メモリ及び/またはストレージに常在することもできる。例示的な格納媒体はプロセッサにカップリングされ、該プロセッサは格納媒体から情報を読み取ることができ、格納媒体に情報を書き込むことができる。他の方法として、格納媒体はプロセッサと一体型であってもよい。プロセッサ及び格納媒体は、ユーザー向けの集積回路(ASIC)内に常在することもできる。ASICは、ユーザーの端末機内に常在することもできる。他の方法として、プロセッサ及び格納媒体は、ユーザーの端末機内に個別のコンポーネントとして常在することもできる。
【0055】
以上のように、本発明では具体的な構成要素などのような特定の事項等と、限定された実施例及び図面とにより説明されたが、これは本発明の一層全般的な理解を助けるために提供されたものであるだけで、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能なはずである。よって、本発明の思想は、説明された実施例に限って定められてはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等であるか等価的な変形のある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならないはずである。
【符号の説明】
【0056】
10:電流マップ 20:電流制御器
30:座標変換器 40:過変調器
50:電力モジュール 60:モーター(M)
100:トルク制御装置 110:鎖交磁束推定部
120:トルク補償値計算部 130:トルク補償部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8