(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、ファンデーション、クリーム、乳液、アイシャドウ、化粧下地、ネイルエナメル、アイライナー、マスカラー、口紅、パック、化粧水などのフェーシャル化粧料、メーキャップ化粧料などの各種化粧料において、白色度や隠ぺい力を出すために種々の白色顔料や体質顔料が用いられている。その中でも、特に、酸化チタンや酸化亜鉛を配合した化粧料はある程度の隠ぺい力は付与できるものである。
【0003】
一方、同様の目的で各種球状樹脂粒子を配合する場合もある。例えば、樹脂粒子の欠点である被覆力を付与するために、平均粒子径が0.01〜1.0μmの中空樹脂球体からなる平均粒子径は1〜100μmの球状集合体(二次粒子)を含有させる化粧料などが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、中空樹脂粒子の集合体を形成させ、光の屈折を複雑にすることにより白色度及び隠蔽力を増大させようとする試みであると思われる。
【0004】
また、二酸化珪素被覆の微粒子酸化チタンとメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆の微粒子酸化亜鉛とを配合した日焼け止め化粧料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2に記載の各粒子は、それぞれ油相及び水相の別々の相に概ね3質量%づつ分散されており、この配合により安定性と使用性(広がり具合)を調整している。また、当該特許文献2の実施例5には、上記の各粒子に加えて平均粒子径10μmのポリエチレン微粒子を6%添加する配合も開示されており、これによって塗布面の平滑性及び艶が向上していることが示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示の各化粧料は、要求される白色度や隠ぺい力を出すためには、大量に酸化チタンを配合する必要があり、比重の大きな酸化チタンが沈降するトラブルが発生したり、化粧料の使用感が著しく悪化してしまうなどの課題がある。また、樹脂粒子だけでは白色度や隠ぺい力に劣るなどの不満があるのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の化粧料は、少なくとも平均粒子径が0.2μm以上の酸化チタンと、平均粒子径が0.01〜100μmの樹脂微粒子を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いる酸化チタンは、平均粒子径が0.2μm以上であれば、特に制限なく用いることができる。
用いる酸化チタンの平均粒子径が0.2μm以上であれば、各種化粧料において、白色度や隠ぺい力を付与することができ、好ましくは、白色度の点、隠ぺい力の点から、平均粒子径が1μm以下となるものが望ましい。なお、平均粒子径が0.2μm未満の酸化チタンでは、白色度や隠ぺい力が劣ることとなり、好ましくない。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、一次平均粒子径を意味するものであり、電子顕微鏡写真を基に測定された値をいうものである。
【0013】
用いることができる酸化チタンとしては、例えば、市販のタイペークCR−50(平均粒子径0.25μm、石原産業株社製)、MP−1133(平均粒子径0.25μm、テイカ社製)、MKR−1(平均粒子径0.2μm、堺化学工業社製)などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
これらの酸化チタンの含有量は、後述する樹脂微粒子との関係から変動するものであるが、白色度や隠ぺい力の付与の点から、化粧料全量に対して、好ましくは、1〜40質量%(以下、単に「%」という)、より好ましくは、5〜30%程度である。
この酸化チタンの含有量が1%未満では、白色度や隠ぺい力が劣ることなり、一方、40%超過では、化粧料の流動性や使用感が悪くなり、好ましくない。
【0015】
本発明に用いる樹脂微粒子は、平均粒子径が0.01〜100μmであれば、特に制限なく用いることができる。
用いる樹脂微粒子の平均粒子径が0.01〜100μmの範囲内であれば、上記平均粒子径が0.2μm以上の酸化チタンとの相互作用により酸化チタン単独よりも同固形分量で、酸化チタンの含有量を抑えて沈降によるトラブルを減らし、各種化粧料の使用感に影響せず、より高い白色度や隠ぺい力を高度に付与させことができ、より好ましくは、平均粒子径が0.1〜1μmのものが望ましい。なお、用いる樹脂微粒子の平均粒子径が0.01μm未満、100μm超過のものであると、本発明の効果を発揮できず、隠ぺい力不足となったり、仕上がりが悪くなったりし、好ましくない。
更に好ましくは、上記樹脂微粒子が中空粒子であればより高い白色度や隠ぺい力、乾燥速度がより向上した効果を発揮させることができる。
【0016】
用いることができる樹脂微粒子としては、例えば、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、(アクリレーツ/マレイン酸/スチレン)コポリマー、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマーなどが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
好ましくは、酸化チタンとの相互作用により、より高い白色度や隠ぺい力を高度に付与せしめる点から、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、(アクリレーツ/マレイン酸/スチレン)コポリマーの使用が望ましい。
また、これら樹脂微粒子は、化粧料の製造性、作業性、効率性などの点から、水分散、溶剤分散の分散液の形態で添加する方が好ましい。
【0017】
具体的に用いることができる樹脂微粒子としては、例えば、市販のOPULYN 305 Opacifier〔平均粒子径0.3μm、(アクリレーツ/マレイン酸/スチレン)コポリマー分散液、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社製〕、ROHMSPHERE PGL〔平均粒子径0.35μm、中空樹脂粒子、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー分散液、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社製〕、ROHMSPHERE Powder〔平均粒子径0.35μm、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社製〕)、ダイゾールPLUS MT−PE〔平均粒子径1μm、中空樹脂粒子、固形分25%、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー分散液、大東化成工業社製〕、MP−2200(平均粒子径0.3〜0.5μm、ポリメタクリル酸メチル、総研化学社製)などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
これらの樹脂微粒子の含有量(固形分濃度)は、本発明の効果を発揮せしめる点から、化粧料全量に対して、好ましくは、1〜50% 、より好ましくは、5〜40%程度である。
この樹脂粒子の含有量が1%未満では、本発明の効果を発揮できず、一方、50%超過では、化粧料の流動性が悪くなり、好ましくない。
【0019】
本発明の化粧料は、上記酸化チタン、樹脂微粒子を含有するものであるが、更に、化粧料の用途、好適な配合組成などの点から、被膜形成樹脂、増粘剤、着色剤を含有することができる。
用いることができる被膜形成樹脂としては、各種化粧料に用いられている被膜形成樹脂であれば、特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル樹脂エマルション、アルカリ可溶アクリル樹脂である(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、酢酸ビニル樹脂などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの被膜形成樹脂の含有量(固形分濃度)は、化粧料の用途などにより変動するものであるが、化粧料全量に対して、好ましくは、0.1〜30%、より好ましくは、1〜20%程度である。
【0020】
用いることができる着色剤としては、化粧品に一般的に用いられる有機顔料や無機顔料、パール顔料、その他光輝性顔料、染料を用いることができる。
有機顔料としては、青色1号Alレーキ、赤色202号、赤色226号、228号、青色404号、赤色220号、黄色401号、黄色205号、青色201号、青色204号、黄色4号Alレーキ、黄色203号Alレーキ、赤色104号Alレーキなど、無機顔料としては、カーボンブラック、コンジョウ、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタンなど、パール顔料としては、マイカ、雲母チタン、カルミン被膜雲母チタン、カルミン・紺青被膜雲母チタン、黒酸化鉄被膜雲母チタン、黒酸化鉄・カルミン被膜雲母チタン、黒酸化鉄・紺青被膜雲母チタン、青被膜雲母チタン、ベンガラ被膜雲母、ベンガラ被膜雲母チタン、ベンガラ・カルミン被膜雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被膜雲母チタン、ベンガラ・紺青被膜雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄・紺青被膜雲母チタンなどを挙げることができる。
染料としては、赤色104号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色227号、赤色230号、黄色202号、緑色201号、緑色204号、青色205号、赤色401号、赤色504号、だいだい色402号、黄色403号、黄色407号、緑色401号、紫色401号、黒色401号等の法定色素やその他塩基性染料などを挙げることができる。
本発明では、高い白色度と隠ぺい力を生かす観点から、染料の使用が好ましい。
これらの着色剤の含有量は、化粧料の用途などにより変動するものであるが、化粧料全量に対して、好ましくは、0.001〜10%、より好ましくは、0.01〜1%程度である。
【0021】
用いることができる増粘剤としては、化粧品に一般的に用いられる増粘剤を用いることができる。
例えば、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、ヒドロキシプロピルグァーガム、スクレロチウムガム、カルボマー等などが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの増粘剤の含有量は、化粧料の用途などにより変動するものであるが、後述するように、化粧料の粘度範囲を好適にする点などから、化粧料全量に対して、好ましくは、0.001〜10%、より好ましくは、0.01〜1%程度である。
【0022】
本発明の化粧料には、残部として水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水など)を含有することができ、更に、乾燥性の調整の目的で水溶性の有機溶剤、その他の任意成分、例えば、pH調整剤、中和剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ロウ、界面活性剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、消泡剤、各種エキス等、その他種々の各成分を必要に応じて適宜配合することができる。
用いることができる有機溶剤としては、例えば、エタノール、フェノキシエタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、1,3−ブチレングリコール、ペンチレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、エチルヘキシルグリセリンなどのグリセリン類などが挙げられる。
これらの有機溶剤の含有量は、好適な乾燥性を得るために、化粧料全量に対して、0〜20%、好ましくは、0.1〜20%とすることが望ましい。
【0023】
本発明の化粧料は、化粧料の用途などにより変動するものであるが、使用性の点、塗布後の隠ぺい力の点から、25℃における、ずり速度3.83(s
−1)の粘度が、10(mPa・s)以上とすることが好ましく、より好ましくは、20〜10000(mPa・s)、特に好ましくは、25〜1000(mPa・s)であることが望ましい。
この粘度が、10(mPa・s)未満では、酸化チタンがハードケイクを形成し、目的の性能が得られないことがある。
なお、上記粘度範囲の調整は、用いる酸化チタン、樹脂微粒子及び水などを効果的に組み合わせることにより、また、必要に応じて増粘剤を用いることにより行うことができる。
【0024】
本発明の化粧料において、好ましくは、白色度や隠ぺい力の点などから、上記樹脂微粒子を配合していない、酸化チタン単独の化粧料の乾燥塗膜のL*値(以下、「L1*値」という)より、この酸化チタンの一部を樹脂微粒子に置き換えた化粧料(本発明となる化粧料)の乾燥塗膜のL*値(以下、「L2*値」という)の方が高い値を示すこと(L1*値<L2*値」)が好ましい。
このL*値は、L
*a
*b
*表色系における明度であり、本発明(後述する実施例も含む)では分光測色計 MSC−IS-2B(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した明度(L*値)である。
更に好ましくは、白色度の点から、〔L2*値−L1*値〕が0.01〜50の範囲となることが望ましい。
【0025】
本発明の化粧料は、目的とする各種化粧料の剤形に応じて常法により製造することができる。
また、本発明の化粧料の剤型は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン等、どのような剤型でも構わない。
また、化粧料の製品形態も任意であり、例えば、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料、ファンデーション、口紅、アイライナー、マスカラー、アイシャドー等のメーキャップ化粧料、日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤)、ボディー化粧料、美爪料(ネイルエナメル)などに適用することができ、また、各種の塗布具などに充填等して、使用に供されることとなる。
特に、各種化粧料において、白色度や隠ぺい力を求められるファンデーション、美爪料、乳液、クリーム、パック、口紅、一時染毛料、ボディアート、アイシャドウ、アイライナーに好適に適用することができる。
【0026】
このように構成される本発明の化粧料は、少なくとも平均粒子径が0.2μm以上の酸化チタンと、平均粒子径が0.01〜100μmの樹脂微粒子を含有するものであり、白色度や隠ぺい力を求められる各種化粧料において、酸化チタンの含有量を抑えて沈降によるトラブルを減らし、化粧料の使用感に影響せず、従来と同程度の固形分量で、より高い白色度や隠ぺい力を付与させてなる各種化粧料が得られることとなる。また、本発明の化粧料では、酸化チタン単独使用の場合と比べて乾燥速度が向上した化粧料が得られ、さらに樹脂微粒子が中空粒子であればより高い白色度や隠ぺい力、乾燥速度がより向上した効果を発揮させることができる各種化粧料が得られることとなる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〜9及び比較例1〜5〕
(実施例1〜8及び比較例1〜4)
下記表1に示す配合処方(全量100%)で、ディスパーで混合分散して、各化粧料(美爪料;ネイルエナメル)を調製した。
(実施例9及び比較例5)
下記表2に示す配合処方(全量100%)で、ホモミキサーで混合分散して、各化粧料(ファンデーション)を調製した。
上記で得られた実施例1〜9及び比較例1〜5の各化粧料(美爪料、ファンデーション)について、下記測定方法により、ずり速度3.83(s
−1)における25℃の各粘度を測定し、また、下記各方法で、樹脂微粒子を配合していない、酸化チタン単独の化粧料の乾燥塗膜のL1*値、本発明の化粧料の乾燥塗膜のL2*値について測定し、隠ぺい力及び乾燥性について評価した。
これらの結果を下記表1及び2に示す。
【0029】
〔粘度の測定方法〕
得られた各睫毛装飾用化粧料について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(TV−30型粘度計のうち、EHD型粘度計、標準コーンプレート、トキメック社製)を用いて所定のずり速度における粘度を測定した。
【0030】
(化粧料の乾燥塗膜の各L*値の測定方法法)
樹脂微粒子を配合していない、酸化チタン単独の化粧料の乾燥塗膜のL1*値、本発明の化粧料の乾燥塗膜のL2*値は下記方法により測定した。
化粧料を均一な厚さで塗布し、自然乾燥させた後、その乾燥塗膜を用いて分光測色計により、各L*値を測定した。
【0031】
(隠ぺい力の評価方法)
各化粧料を、隠ぺい率試験紙に均一な厚さで塗布し、自然乾燥させた後、その乾燥塗膜を目視で確認して下記各評価基準で隠ぺい力について評価した。
隠ぺい力の評価基準:
○:白黒の境目が見えない
△:白黒の境目がやや見える
×:白黒の境目がはっきり見える
【0032】
(乾燥性の評価方法)
各化粧料を、隠ぺい率試験紙に均一な厚さで塗布し、3分後に綿棒で軽く撫でることで下記各評価基準で乾燥性について評価した。
乾燥性の評価基準:
○:綿棒に化粧料が全くつかない
△:綿棒には付かないが、少し化粧料がくずれる
×:綿棒に化粧料が付着し、塗布した化粧料もくずれる
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜9は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べ、化粧料の使用感に影響せず、より高い白色度や隠ぺい力を付与させてなる各種化粧料が得られることが判明した。
また、本発明の実施例1〜9では、比較例3、5の酸化チタン単独使用の場合と比べて乾燥速度がより向上した化粧料が得られることが確認でき、さらに樹脂微粒子が中空粒子であればより高い効果を発揮させることができることが判明した。