(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647851
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
F04D29/58 F
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-246504(P2015-246504)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-110593(P2017-110593A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】392008437
【氏名又は名称】株式会社久保田鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直丈
【審査官】
田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−196341(JP,A)
【文献】
特開2006−274915(JP,A)
【文献】
特開2006−257912(JP,A)
【文献】
特開平08−285481(JP,A)
【文献】
特開2006−009763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16、17/00−19/02、
21/00−25/16、29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、モータが収容されたモータ室と、前記モータによって回転駆動することにより流体の吸入・吐出を行うインペラが収容されたポンプ室とを備えた電動ポンプであって、
前記モータ室と、前記ポンプ室とは、前記ハウジング内に配設された仕切り壁によって区画されており、
前記仕切り壁の前記モータ室側に、電子部品が搭載された制御基板が配設されており、 前記制御基板は、伝熱部材を介して、前記仕切り壁に当接しており、
前記仕切り壁の前記ポンプ室側の面であって、少なくとも前記伝熱部材と当接する部位に、前記ポンプ室内の流体によって冷却される冷却部が設けられており、
前記冷却部は、前記仕切り壁の前記ポンプ室側の面に設けられた冷却フィンで構成されている、電動ポンプ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記モータ室を収容する第1のハウジングと、前記ポンプ室を収容する第2のハウジングとで構成され、
前記第1のハウジングと、前記第2のハウジングとは、前記仕切り壁を介して互いに結合している、請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記仕切り壁は、金属材料からなり、前記冷却フィンは、前記仕切り壁の表面を加工して形成されている、請求項1又は2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記冷却フィンは、凹凸からなり、該凹凸は、前記ポンプ室内の流体の流路に沿って設けられている、請求項1〜3の何れかに記載の電動ポンプ。
【請求項5】
ハウジング内に、モータが収容されたモータ室と、前記モータによって回転駆動することにより流体の吸入・吐出を行うインペラが収容されたポンプ室とを備えた電動ポンプであって、
前記モータ室と、前記ポンプ室とは、前記ハウジング内に配設された仕切り壁によって区画されており、
前記仕切り壁の前記モータ室側に、電子部品が搭載された制御基板が配設されており、 前記制御基板は、伝熱部材を介して、前記仕切り壁に当接しており、
前記仕切り壁の前記ポンプ室側の面であって、少なくとも前記伝熱部材と当接する部位に、前記ポンプ室内の流体によって冷却される冷却部が設けられており、
前記仕切り壁は、樹脂材料からなり、少なくとも前記伝熱部材と当接する部位において、前記伝熱部材と連結する冷却部材が埋設されており、該冷却部材が前記冷却部を構成している、電動ポンプ。
【請求項6】
前記仕切り壁は、前記ハウジングの一部で構成されている、請求項1又は5に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラの回転動作により、水等の流体の吸入・吐出を行う電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ポンプには、モータを駆動制御するための電子部品が搭載された制御基板が内蔵されている。電子部品の中には、発熱の大きなパワーデバイス(MOS型FET)等が含まれるため、このような発熱の大きな電子部品を効率よく冷却することが求められている。
【0003】
特許文献1には、電動ポンプを収容するハウジングのエンドカバーに開口部を形成し、この開口部近傍にMOS型FETを搭載した制御基板を配置するとともに、制御基板に設けられたフィン付きのヒートシンクを開口部から露出させた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−183595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成は、MOS型FETからの発熱を、ヒートシンクを介して、外気中に放熱する空冷式であるため、十分な冷却効率を得ることができない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、制御基板に搭載された電子部品の発熱を効率よく冷却することができる電動ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、制御基板に搭載された電子部品の発熱を効率よく冷却するために、モータ室とポンプ室とを仕切り壁により区画し、この仕切り壁に伝熱部材を介して制御基板を配設するとともに、この伝熱部材が当接する仕切り壁の部位に、ポンプ室内の流体によって冷却される冷却部を設けた構成を採用する。
【0008】
すなわち、本発明に係る電動ポンプは、ハウジング内に、モータが収容されたモータ室と、モータによって回転駆動することにより流体の吸入・吐出を行うインペラが収容されたポンプ室とを備えた電動ポンプであって、モータ室と、ポンプ室とは、ハウジング内に配設された仕切り壁によって区画されており、仕切り壁の前記モータ室側に、電子部品が搭載された制御基板が配設されており、制御基板は、伝熱部材を介して、仕切り壁に当接しており、仕切り壁の少なくとも伝熱部材と当接する部位におけるポンプ室側の面に、ポンプ室内の流体によって冷却される冷却部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
ある好適な実施形態において、上記ハウジングは、モータ室を収容する第1のハウジングと、ポンプ室を収容する第2のハウジングとで構成され、第1のハウジングと、第2のハウジングとは、仕切り壁を介して互いに結合している。
【0010】
ある好適な実施形態において、上記仕切り壁は、金属材料からなり、伝熱部材と当接する部位において、冷却部を構成している。
【0011】
ある好適な実施形態において、上記冷却部は、仕切り壁のポンプ室側の面に形成された冷却フィンで構成されている。
【0012】
ある好適な実施形態において、上記仕切り壁は、樹脂材料からなり、少なくとも伝熱部材と当接する部位において、伝熱部材と連結する冷却部材が埋設されており、該冷却部材が冷却部を構成している。
【0013】
ある好適な実施形態において、上記仕切り壁は、ハウジングの一部で構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、制御基板に搭載された電子部品の発熱を効率よく冷却することができる電動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における電動ポンプの構成を模式的に示した断面図である。
【
図2】
図1に示した電動ポンプを、第2のハウジングがない状態で、ポンプ室側から見た上面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態における電動ポンプの構成を模式的に示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における電動ポンプの構成を模式的に示した断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態における電動ポンプ1は、ハウジング2内に、アキシャルギャップ型のモータ4が収容されたモータ室S1と、モータ4によって回転駆動することにより流体の吸入・吐出を行うインペラ5が収容されたポンプ室S2とを備えている。
【0019】
モータ室S1と、ポンプ室S2とは、ハウジング2内に配設された仕切り壁3によって区画されている。そして、仕切り壁3のモータ室S1側には、モータ4を駆動制御するための電子部品9が搭載された制御基板7が配設されている。
【0020】
ハウジング2は、モータ室S1を収容する第1のハウジング2aと、ポンプ室S2を収容する第2のハウジング2bとで構成されており、第1のハウジング2aと、第2のハウジング2bとは、仕切り壁3を介して互いに結合されている。
【0021】
図2は、
図1に示した電動ポンプ1を、第2のハウジング2bがない状態で、ポンプ室S2側から見た上面図である。
【0022】
本実施形態では、
図1に示すように、制御基板7は、伝熱部材8を介して、仕切り壁3に当接している。また、仕切り壁3のポンプ室S2側の面には、表面が凹凸状に加工された冷却フィン3aが形成されている。この冷却フィン3aは、
図2に示すように、仕切り壁3の少なくとも伝熱部材8と当接する部位に形成されており、これにより、当該部位は、ポンプ室S2内を流れる液体によって効率よく冷却される。その結果、制御基板7に搭載された電子部品9からの発熱は、伝熱部材8を介して、冷却フィン3aからポンプ室S2内の液体中に放熱される。従って、制御基板7に搭載された電子部品9を、従来の空冷式よりも効率よく冷却することができる。
【0023】
ここで、冷却フィン3aは、仕切り壁3のポンプ室S2側の面に形成されている。従って、冷却フィン3aは、ポンプ室S2内の液体の流れをできるだけ妨げないような構造であることが好ましい。例えば、
図2に示すように、仕切り壁3の表面に形成した凹凸を、ポンプ室S2内の流体の流路に沿って形成することによって、液体の抵抗を低減することができる。
【0024】
また、本実施形態において、仕切り壁3の表面に形成した冷却フィン3aは、ポンプ室S2内の流体によって冷却される冷却部として機能する。従って、電子部品9の冷却効果をより高めるために、仕切り壁3は、熱伝導性の高い金属材料で構成されていることが好ましい。金属材料としては、例えば、アルミニウム等を用いることができる。
【0025】
また、冷却フィン3aは、仕切り壁3の表面を凹凸に加工して形成したが、表面に複数のフィンが形成された金属部材を、仕切り壁3の表面に貼り合わせたものであってもよい。
【0026】
また、本実施形態における伝熱部材8は、熱伝導性の高いものであれば、特にその材料は限定されない。例えば、伝熱部材8として、熱伝導性の樹脂シートを用いれば、制御基板7と仕切り壁3との間に、この樹脂シートを容易に挟み込むことができる。熱伝導性の樹脂シートとしては、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂に、例えば、カーボン粒子等の熱伝導性の高い材料を混合したものを用いることができる。なお、制御基板7との絶縁性が保たれれば、伝熱部材8として、金属材料を用いてもよい。
【0027】
また、本実施形態における仕切り壁3は、ハウジング2の一部で構成されていてもよい。例えば、仕切り壁3を、モータ室S1を収容する第2のハウジング2bと一体に構成してもよい。
【0028】
以上より、本実施形態における電動ポンプ1は、モータ室S1とポンプ室S2とを仕切り壁3により区画し、この仕切り壁3に伝熱部材8を介して制御基板7を配設するとともに、この伝熱部材8が当接する仕切り壁7の部位に、ポンプ室S2内の流体によって冷却される冷却フィン(冷却部)3aを設けることによって、従来の空冷式よりも、制御基板7に搭載された電子部品9の発熱をより効率的に冷却することができる。
【0029】
次に、
図1を参照しながら、本実施形態における電動ポンプ1の構成を、さらに詳しく説明する。
【0030】
図1に示すように、モータ室S1には、モータを支持する固定軸6と中心軸が一致するように配置されたステータ4aと、ステータ4aの軸方向の両側に、固定軸6の周りに回転するように配置された一対のロータ4b、4bとを備えたアキシャルギャップ型のモータ4が収容されている。ポンプ室S2には、固定軸6の周りに回転するように配置されたインペラ5が収容されている。一対のロータ4b、4bのうち、ポンプ室S2側に配置されたロータ4bには、磁石10が接着剤等で固着されている。また、ポンプ室S2内に収容されたインペラ5のモータ室S1側の底部には、磁石11が接着剤等で固着されている。そして、モータ室S1内の磁石10と、ポンプ室S2内の磁石11とは、仕切り壁3を介して互いに対向して配置されており、これにより、磁石10と磁石11とは磁気結合されている。その結果、一対のロータ4b、4bが回転すると、磁石10と磁石11との磁気結合により、インペラ5が固定軸6を中心に回転する。このインペラ5の回転動作により、ポンプ室S2に吸引された液体は、ポンプ室S2内を回転移動しながら加圧されて、吐出口(不図示)から吐出される。
【0031】
制御基板7は、モータ室S1内のモータ4が配置されていない空間に配設され、伝熱部材8を介して、仕切り壁3に当接している。制御基板7のモータ室S1側の面には、モータ4を駆動制御するための電子部品9、例えば、MOS型FET9a、電解コンデンサー9b、チョークコイル9c等が搭載されている。電子部品9は、配線14によって、ステータ4aに接続されており、また、外部端子13を介して、外部電源(不図示)と接続されている。なお、電子部品9のうち、発熱の大きなMOS型FET(パワーデバイス)9bは、冷却フィン3a及び伝熱部材8近傍の制御基板7に搭載することが好ましい。これにより、発熱の大きなMOS型FET(パワーデバイス)9bを、より効率的に冷却することができる。
【0032】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態において、仕切り壁3の表面に冷却フィン3aを形成し、この冷却フィン3aを、ポンプ室S2内の流体によって冷却される冷却部としたが、仕切り壁3が、熱伝導性の非常に高い材料、例えば金属材料で構成されていれば、仕切り壁3自身を冷却部としてもよい。また、仕切り壁3が、樹脂等の熱伝導性の低い材料で構成されている場合には、
図3に示すように、仕切り壁3の少なくとも伝熱部材8と当接する部位に、伝熱部材8と連結する冷却部材20を埋設させてもよい。冷却部材20は、仕切り壁3よりも熱伝導性の高い材料、例えば、金属材料で構成されているのが好ましく、この冷却部材20が、冷却部として機能する。
【0034】
また、上記実施形態では、アキシャルギャップ型のモータ4を使用した電動ポンプ1を例に説明したが、本発明は、これに限定されず、他の種類のモータを使用した電動ポンプにも勿論適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 電動ポンプ
2 ハウジング
2a 第1のハウジング
2b 第2のハウジング
3 仕切り壁
3a 冷却フィン(冷却部)
4 モータ
4a ステータ
4b、4b 一対のロータ
5 インペラ
6 固定軸
7 制御基板
8 伝熱部材
9 電子部品
9a MOS型FET
9b 電解コンデンサー
9c チョークコイル
10、11 磁石
13 外部端子
14 配線
20 冷却部材(冷却部)