特許第6647856号(P6647856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647856
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】グラウト接合構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20200203BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20200203BHJP
   E02D 27/16 20060101ALI20200203BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   E02D27/32 Z
   E02D27/42 Z
   E02D27/16
   E02D27/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-250407(P2015-250407)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-115373(P2017-115373A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】502281127
【氏名又は名称】株式会社ファテック
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健治
(72)【発明者】
【氏名】青野 孝行
(72)【発明者】
【氏名】高島 展浩
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−149182(JP,A)
【文献】 特開2015−129393(JP,A)
【文献】 特開2011−121795(JP,A)
【文献】 特開2012−171855(JP,A)
【文献】 特開2011−144103(JP,A)
【文献】 特開2015−055046(JP,A)
【文献】 特開2004−060250(JP,A)
【文献】 特開2015−166538(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0065384(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00−27/52
E02D 5/22−5/80
E04H 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備の風車を支持するためのタワーの下端側と海底に打設された管状の基礎杭の上端側とを接続するための接合管の下端開口側の管内に基礎杭の上端側が挿入されて、互いに向かい合う基礎杭の外周面と接合管の内周面との間にグラウト材を充填して構成されたグラウト接合構造において、
短繊維を混入した水中不分離性グラウト材が、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間の水中に位置される下端部に充填され、
短繊維を混入した水中不分離性グラウト材の上方に位置される基礎杭の外周面と接合管の内周面との間に、当該短繊維を混入した水中不分離性グラウト材よりも高強度の気中打設型グラウト材が充填されて構成されたことを特徴とするグラウト接合構造。
【請求項2】
繊維を混入した水中不分離性グラウト材は、径寸法0.2mm以下でかつ全長15mm以下のビニロンの短繊維が1.0体積%以上1.5体積%以下混入されて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のグラウト接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電設備の風車を支持するためのタワーの下端側と海底に打設された管状の基礎杭の上端側とを接続するための接合管の下端側と基礎杭の上端側とを接合するグラウト接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電所の風力発電設備において、風車を支持するためのタワーの下端側と海底に打設された管状のモノパイル(大口径鋼管杭)と呼ばれる基礎杭の上端側とが、トランジションピースと呼ばれる接合管(鋼管)及びグラウトにより接合されたグラウト接合構造が知られている。
当該グラウト接合構造は、接合管の下端開口側の管内に基礎杭の上端側が挿入されて、互いに向かい合う基礎杭の外周面と接合管の内周面との間に水中不分離性モルタル等のグラウト材が充填された構造である(例えば、特許文献1参照)。
そして、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間に充填されたグラウト材が凝結した後、例えば風車を支持するためのタワーの下端側に設けられたブラケットと接合管の上部側に設けられたブラケットとをボルト等で接合することによって、基礎杭とタワーとを接合するようにしている。
基礎杭は必ずしも垂直に立設することができないので、基礎杭が垂直に立設されていない場合でも、当該接合管の中心線が垂直となるように接合管を基礎杭の上端側に接合することによって、タワーを垂直に立設することができるようになる。
また、互いに向かい合う基礎杭の外周面と接合管の内周面との間にグラウト材が充填されていることによって、タワーの揺れを防止できる。
また、タワーの下方への移動は、グラウト材が充填される接合管の内周面及び基礎杭の外周面の少なくとも一方に設けられたシアキー(せん断力伝達部材)(例えば、特許文献2参照)や、接合管の内側に設けられて基礎杭の上端に支持されるブラケットによって、抑制されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−149182号公報
【特許文献2】特開2013−53425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間に充填されたグラウト材には、接合管を介して海洋波による繰り返し荷重が作用するため、グラウト材が疲労破壊により粉砕化して基礎杭の外周面と接合管の内周面との間から脱落する恐れがあり、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間からグラウト材が脱落すると、タワーのぐらつきが発生する可能性があった。
本発明は、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間に充填されたグラウト材の脱落抑制効果を向上させたグラウト接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るグラウト接合構造は、洋上風力発電設備の風車を支持するためのタワーの下端側と海底に打設された管状の基礎杭の上端側とを接続するための接合管の下端開口側の管内に基礎杭の上端側が挿入されて、互いに向かい合う基礎杭の外周面と接合管の内周面との間にグラウト材を充填して構成されたグラウト接合構造において、短繊維を混入した水中不分離性グラウト材が、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間の水中に位置される下端部に充填され、短繊維を混入した水中不分離性グラウト材の上方に位置される基礎杭の外周面と接合管の内周面との間に、当該短繊維を混入した水中不分離性グラウト材よりも高強度の気中打設型グラウト材が充填されて構成されたので、基礎杭の外周面と接合管の内周面との間の下端部に充填されたグラウト材の脱落抑制効果を向上させたグラウト接合構造を実現できるようになるとともに、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を、安価かつ短期間で実現できる。
短繊維を混入した水中不分離性グラウト材は、径寸法0.2mm以下でかつ全長15mm以下のビニロンの短繊維が1.0体積%以上1.5体積%以下混入されて形成されたものであるので、ビニロンの短繊維を用いることで、コスト、混入作業を容易にでき、かつ、短繊維水中不分離性モルタルの流動性の低下を少なくできて、施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】風力発電設備を示す正面図。
図2】グラウト接合構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態によるグラウト接合構造を採用した洋上風力発電所の風力発電設備は、図1に示すように、風車1と、風車1を支持するためのタワー2と、海底に打設された管状のモノパイルと呼ばれる基礎杭3と、基礎杭3の上端側とタワー2の下端側とを接続するためのトランジションピースと呼ばれる接合管4とを備え、接合管4の下端側と基礎杭3の上端側とがグラウト接合構造によって接合されるとともに、接続管の上端側とタワー2の下端側とが図外のブラケット等の連結部材によって接続されて構成されている。
【0008】
グラウト接合構造は、図2に示すように、接合管4の下端開口側の管内に基礎杭3の上端側が挿入されて、互いに向かい合う基礎杭3の外周面3Aと接合管4の内周面4Aとの間(以下、「グラウト材充填部5」という)にグラウト材が充填された構造である。言い換えれば、2つの異なる径の管である基礎杭3と接合管4とを内側と外側とに重ね合わせ、互いに向かい合う基礎杭3の外周面と接合管4の内周面との間にグラウト材を充填し、グラウト材と管との付着強度とグラウト材のせん断強度とで接合する構造的結合である。
当該グラウト接合構造を採用することによって、基礎杭3が垂直に立設されていない場合でも、当該接合管4の中心線が垂直となるように接合管4を基礎杭3の上端側に接合することによって、タワー2を垂直に立設することができる。
尚、基礎杭3が垂直に立設されている場合においては、基礎杭3の上端部と接合管4の下端部とが同心(同軸)となるように設置されて、グラウト材充填部5にグラウト材を充填することにより、グラウト接合構造が構成される。即ち、基礎杭3の中心線と接合管4の中心線とが一致するように、接合管4の下端側となる一端開口側の管内に基礎杭3の管の上端側が挿入されて、グラウト材充填部5にグラウト材が充填されることによって、グラウト接合構造が構成される。
【0009】
グラウト材充填部5にグラウト材を充填することによって、接合管4の下端側と基礎杭3の上端側とを接合する管接合方法は、グラウト材充填部5に充填されたグラウト材が当該グラウト材充填部5の環状の下端開口から漏れ出さないように当該グラウト材充填部5の環状の下端開口を図外の弾性を有した環状体や型枠等の栓塞手段で塞いだ状態でグラウト材充填部5の環状の上端開口から、まず、グラウト材充填部5の下端部に、短繊維を混入した水中不分離性グラウト材(以下、「短繊維混入水中不分離性グラウト材」という)として短繊維を混入した水中不分離性モルタル(以下、「短繊維混入水中不分離性モルタル6」という)を充填してグラウト下層6Aを形成する。例えば、グラウト材充填部5の下端位置と当該下端位置から上方に50cm程度離れた上位置との間の領域であるグラウト材充填部5の下端部に、短繊維混入水中不分離性モルタル6を充填してグラウト下層6Aを形成する。尚、短繊維混入水中不分離性モルタル6を充填するグラウト材充填部5の下端部の領域、即ち、グラウト材充填部5の下端位置から上位置までの上下方向の長さは、風力発電設備の大きさに応じて適宜決めればよい。短繊維混入水中不分離性モルタル6の充填作業は、接合管4の上端に図外の作業台を設置し、当該作業台上に図外のモルタル充填装置を設置し、図外のグラウトホース等を用いて充填する。
尚、グラウト材充填部5の下端位置は、海水面10よりも下方に位置するように設定され、当該グラウト材充填部5の下端部に充填されるグラウト材は海水中、又は、海水を水に置換した水中に充填されることになるため、水中不分離性能に優れた水中不分離性モルタルを用いる。
水中不分離性モルタルは、水中で打設した場合に材料が分離し難くなるように粘性が高くなっており、流動性が悪い。従って、通常、水中不分離性モルタルにさらに流動性を悪くすると考えられる短繊維を混入しようとは考えない。
しかしながら、本発明者は、グラウト材充填部5に充填されたグラウト材、特に、グラウト材充填部5の下端部に充填されたグラウト材には、接合管4を介して海洋波による繰り返し荷重が作用して大きな荷重が加わり、グラウト材が疲労破壊により粉砕化してグラウト材充填部5から脱落する恐れがあることを考慮し、グラウト材充填部5の下端部に充填されたグラウト材の耐久性を向上させることを優先して、グラウト材充填部5の下端部に充填するグラウト材として、短繊維混入水中不分離性モルタル6を充填するようにした。
【0010】
そして、グラウト材充填部5の水中に位置される下端部に充填されてグラウト下層6Aを形成する短繊維混入水中不分離性モルタル6が充分に凝結した後、当該グラウト下層6Aの上方の水分をポンプ等の排水手段を用いてグラウト材充填部5から外部に排水した後に、当該排水されたグラウト下層6Aの上方のグラウト材充填部5であるグラウト材充填空間、即ち、大気中にグラウト下層6Aを形成するグラウト材よりも高強度の気中打設型グラウト材7を充填してグラウト上層7Aを形成する。当該高強度の気中打設型グラウト材としては、100MPa〜150MPaの強度を有したグラウト材を用いることが好ましい。排水作業は、接合管4の上端に図外の作業台を設置し、当該作業台上にポンプ等の排水手段を設置し、吸引ホース等を用いて当該グラウト下層6Aの上方の水分を吸引する。
従って、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を構成する場合において、グラウト材充填部5に短繊維混入水中不分離性モルタル6のみを充填してグラウト接合構造を構成する場合と比べて、グラウト接合構造の接合長(グラウト材充填部5に充填されるグラウト材の上下方向の長さ)を短くでき、グラウト材の量を少なくできてグラウト材の充填作業を短縮化できるので、コストを低減できるとともに施工期間を短縮できる。即ち、実施形態の管接合方法によれば、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性と耐久性とを有したグラウト接合構造を、安価かつ短期間で実現可能となる。
また、グラウト材充填部5に短繊維混入水中不分離性モルタル6のみを充填した場合に所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を実現することが困難である場合でも、実施形態のように、大気中にグラウト下層6Aを形成する短繊維混入水中不分離性モルタル6よりも高強度の気中打設型グラウト材7を充填してグラウト上層7Aを形成することによって、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を実現することが可能となる。
特に、風力発電設備の風車1及びタワー2が大型化するとタワー2を支持する基礎杭3も大型化するため、グラウト材充填部5に短繊維混入水中不分離性モルタル6のみを充填して、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を実現するためには、グラウト接合構造の接合長が長くなってしまったり、グラウト材充填部5に短繊維混入水中不分離性モルタル6のみを充填して、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を実現することが困難となる傾向があった。しかしながら、実施形態のように、グラウト材充填部5の水中に位置される下端部に充填されてグラウト下層6Aを形成する短繊維混入水中不分離性モルタル6が凝結した後、グラウト下層6Aの上方のグラウト材充填部5内の水分をグラウト材充填部5から外部に排水した後に、当該排水されたグラウト下層6Aの上方のグラウト材充填部5、即ち、大気中にグラウト下層6Aを形成する短繊維混入水中不分離性モルタル6よりも高強度の気中打設型グラウト材7を充填してグラウト上層7Aを形成することにより、風力発電設備の風車1及びタワー2の大型化に対応可能な、所望の圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性を有したグラウト接合構造を実現できるようになる。
【0011】
そして、グラウト材充填部5に充填されたグラウト材7を養生により充分に凝結させた後、例えば風車1を支持するためのタワー2の下端側に設けられた図外のブラケットと接合管4の上部側に設けられた図外のブラケットとをボルト等で接合することによって、基礎杭3とタワー2とを接合する。
【0012】
尚、水中不分離性モルタルとは、水中不分離性能に優れたモルタルであり、例えば、株式会社ファテック社製、商品名「マックスAZ」、太平洋マテリアル株式会社製 商品名「太平洋プレユーロックスLC-MIX」、住友大阪セメント株式会社製 商品名「フィルコン300W」等を用いればよい。
また、水中不分離性モルタルの配合例としては、例えば「マックスAZ」の場合、セメント960kg/m、珪砂747kg/m、膨張剤20kg/m、減水剤1.5kg/m、増粘剤4kg/mである。当該増粘剤としては、例えばカチオン性界面活性剤から選ばれる水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる水溶性低分子化合物とが混合された液体又は粉末が用いられる。
【0013】
尚、発明者は、全長12mm、径0.1mmのビニロン(ポリビニルアルコール(PVA)繊維)により形成された短繊維を1.0体積%混入して形成した水中不分離性モルタルの供試体1、当該短繊維を1.5体積%混入して形成した水中不分離性モルタルの供試体2、当該短繊維を混入しないで形成した水中不分離性モルタルの供試体3を作成し、各供試体1,2,3に対してJIS R5201に基づく曲げ強度試験を行った。そして、曲げ強度試験の結果、当該短繊維の混入量が多くなるほど、曲げ強度が大きくなることを確認した。特に、供試体1及び供試体2は、破断後も応力が持続し、なだらかに応力が低下すること、即ち、靱性(粘り強さ、亀裂による強度低下に対する抵抗の程度)が向上することを確認した。
【0014】
また、全長12mm、径0.1mmのビニロン(ポリビニルアルコール(PVA)繊維)により形成された短繊維を1.0体積%混入して形成した水中不分離性モルタルの供試体、及び、当該短繊維を混入しないで形成した水中不分離性モルタルの供試体を、それぞれ複数個作成し、(社)日本道路協会の「舗装・試験方法便覧」に記載されたコンクリートの曲げ疲労試験方法(B070T)」を参考にして、曲げ疲労試験を行った。具体的には、供試体に0.47MPaに相当する最小軸力を与えて繰り返し周波数20Hzで200万回を超える繰り返し載荷を実施した。当該曲げ疲労試験の結果、短繊維を1.0体積%混入して形成した水中不分離性モルタルの供試体に対する200万回繰り返し載荷における疲労限強度の増加は、応力比レベルで0.1程度、短繊維を混入しないで形成した水中不分離性モルタルの供試体と比較して向上することを確認した。
【0015】
尚、曲げ強度試験においては、材齢7日、及び、材齢28日の4×4×16cmの角柱供試体を用い、曲げ疲労試験においては、材齢28日標準養生後、保管期間を温度20±1℃、湿度60±5%の恒温湿室内で4週間以上保管した4×4×16cmの角柱供試体を用いた。また、水中不分離性モルタルは、株式会社ファテック社製、商品名「マックスAZ」を用いた。
【0016】
従って、実施形態では、短繊維を混入しないで形成した水中不分離性モルタルと比べて、靱性、及び、疲労限強度が向上する短繊維混入水中不分離性モルタル6をグラウト材充填部5の少なくとも下端部に充填したので、グラウト材充填部5の下端部に充填されたグラウト材の脱落抑制効果を向上させたグラウト接合構造を実現できるようになる。
即ち、グラウト材充填部5の少なくとも下端部に充填された短繊維混入水中不分離性モルタル6に、接合管4を介して海洋波による繰り返し荷重が作用したとしても、当該短繊維混入水中不分離性モルタル6が破断し難く、当該短繊維混入水中不分離性モルタル6が破断したとしても、当該短繊維混入水中不分離性モルタル6がグラウト材充填部5の下端部から脱落し難くなるグラウト接合構造を構成できる。
【0017】
尚、短繊維水中不分離性モルタルは、径寸法0.2mm以下でかつ全長15mm以下のビニロンの短繊維が1.5体積%以下混入されて形成されたもの、より好ましくは、上述したように、径寸法0.1mm、全長12mmのビニロンの短繊維が1.0体積%混入されて形成されたものを用いればよい。
このように、ビニロンの短繊維を用いることで、コスト、混入作業を容易にできて好ましい。また、径寸法0.1mm、全長12mmのビニロンの短繊維が1.0体積%混入されて形成された短繊維水中不分離性モルタルを用いることで、短繊維水中不分離性モルタルの流動性の低下を少なくできて、施工性が向上する。
【0018】
尚、本発明では、例えば、小型の風力発電設備を構築する場合などのように、圧縮強度、引張強度及び曲げ強度等の強度特性が比較的小さくても良いという条件下においては、グラウト材充填部に短繊維混入水中不分離性グラウト材のみを充填して構成したグラウト接合構造としてもよい。
【0019】
また、短繊維混入水中不分離性グラウト材は、接合管4の下端位置から基礎杭3の上端位置までの間における任意の領域に充填されていればよい。例えば、グラウト材を充填して形成されるグラウト層の下端位置が接合管4の下端位置と一致してかつ上端位置が基礎杭3の上端位置と一致するグラウト層を形成してもよい(即ち、グラウト材充填部5全体に短繊維混入水中不分離性グラウト材を充填してもよい)し、あるいは、グラウト材を充填して形成されるグラウト層の上端位置が基礎杭3の上端位置よりも下方に位置されるグラウト層を形成してもよいし、あるいは、グラウト材を充填して形成されるグラウト層の下端位置が接合管4の下端位置よりも上方に位置されるグラウト層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 風車、2 タワー、3 基礎杭、3A 基礎杭の外周面、4 接合管、
4A 接合管の内周面、
5 グラウト材充填部(互いに向かい合う基礎杭の外周面と接合管の内周面との間)、
6 短繊維混入水中不分離性モルタル(短繊維を混入した水中不分離性グラウト材)。
図1
図2