特許第6647858号(P6647858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647858
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】マイクロリアクター
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20200203BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20200203BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   G01N37/00 101
   B81B1/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-252186(P2015-252186)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-113706(P2017-113706A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年7月1日から同年同月3日まで第28回インターフェックスジャパン医薬品化粧品洗剤研究開発・製造技術国際展に展示。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年8月2日ラジオ番組「せとうち企業セレクション2015」にて説明。
(73)【特許権者】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 典久
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−111668(JP,A)
【文献】 特開2010−104868(JP,A)
【文献】 米国特許第05707157(US,A)
【文献】 特開2015−228437(JP,A)
【文献】 特開2009−279468(JP,A)
【文献】 特開2013−188677(JP,A)
【文献】 特表2012−526649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B81B 1/00
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カバーと、第2カバーと、第1カバーと第2カバーとの間に配置される流路プレートと、第1カバーと流路プレートとに対して接するように配されるガラス製の第1透明板と、第2カバーと流路プレートとに対して接するように配されるガラス製の第2透明板とからなるマイクロリアクターであり、
マイクロリアクターは、排出口と複数の導入口とを備え、
流路プレートは、任意のパターンで導入口と排出口とを結ぶ微小流路を備えており、
マイクロリアクターは、互いに同一又は異なるパターンの微小流路を備える複数枚の流路プレートを交換用プレートとして備えており、
第1カバー、第1透明板、流路プレート、第2透明板及び第2カバーは、相互に連通する連結孔を備えており、連結孔に固定具を挿通することで第1カバー、第1透明板、流路プレート、第2透明板及び第2カバーを相互に固定可能とし、固定具を外すことで流路プレートを交換可能とされており、
第1カバーと第2カバーと流路プレートと第1透明板と第2透明板とは平面視において同寸の長方形であり、流路プレートと第1透明板と第2透明板とを積層した際に側面に凹凸が生じない形状となり、
第1透明板又は第2透明板を介して流路プレートを視認するためののぞき窓が第1カバー及び第2カバーの少なくともいずれか一方に設けられたマイクロリアクター。
【請求項2】
固定具は、ねじ部と、ねじ山を設けない非ねじ部とを備える螺子であり、
ねじ部は、第1カバー、流路プレート、及び第2カバーを組み付けた状態で第1カバー及び第2カバーのうちのいずれか一方と固定具とが螺合する部分に配され、非ネジ部は連結孔を塞いで気密性及び液密性を高める請求項1に記載のマイクロリアクター。
【請求項3】
固定具は、多条螺子である請求項1又は2に記載のマイクロリアクター。
【請求項4】
第1カバーは、3個以上の導入口を備える請求項1ないしのいずれかに記載のマイクロリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小流路中で種々の反応を行うマイクロリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロリアクターは、微小な空間で流体を制御するため熱交換を効率よく行うことができる。ラージスケールでは反応の制御が難しく爆発のリスクがある反応でも比較的に制御しやすい。マイクロリアクターは小型であり、専有面積が小さい。このような優位性から、研究用途だけでなく、工業的な利用も検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイクロリアクターを用いて、剪断力を加えながら油と水とを混合し、エマルションを調整する方法が記載されている。実施例1では、水相として1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を使用し、油相としてドデカン溶液を使用する。
【0004】
特許文献2には、流路プレートを合成樹脂材料を焼結して製造する方法が記載されている。図1には、2枚の被覆体とその間に配置される流路プレートとをボルトとナットで締結したマイクロリアクターが記載されている。
【0005】
特許文献3には、無線デバイスと、加圧プレートと、計測プレートと、流路プレートとを含むマイクロリアクターが記載されている。図7には、ビスが記載されている。
【0006】
特許文献4には、流路プレートをゴムシートで構成することが記載されている。ゴムシート等を樹脂板又は金属板からなる剛直なホルダーで挟んで螺子止めによって固定することが記載されている。
【0007】
特許文献5には、ハウジング上部と、フタプレートと、流路プレートと、ハウジング下部プレートからなる光反応マイクロリアクターが記載されている。フタプレートは、光を透過する材質から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO2009/119578号公報
【特許文献2】特開2009−279468号公報
【特許文献3】特許第4706353号公報
【特許文献4】特開2013−188677号公報
【特許文献5】国際公開第WO2012/157052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1ないし4では、用途ごとに異なるパターンの微小経路を有するマイクロリアクターを別途用意しなければならい。このため、ユーザーは、用途ごとに特化したマイクロリアクターを購入せざるを得なかった。
【0010】
特許文献5のマイクロリアクターは、ネジを利用して、マイクロリアクターを一体化するものと思われる。しかし、フタプレートと流路プレートは溶着されており、複数の流路プレートから任意のものを選択して交換することを予定しているものではない。
【0011】
本発明は、複数の流路プレートの中から用途に応じて任意の流路プレートを選択し、その流路プレートに容易に交換することができるマイクロリアクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1カバーと、第2カバーと、第1カバーと第2カバーとの間に配置される流路プレートとからなるマイクロリアクターであり、マイクロリアクターは、排出口と複数の導入口とを備え、流路プレートは、任意のパターンで導入口と排出口とを結ぶ微小流路を備えており、マイクロリアクターは、互いに同一又は異なるパターンの微小流路を備える複数枚の流路プレートを交換用プレートとして備えており、第1カバー、及び第2カバーは、相互に連通する連結孔を備えており、連結孔に固定具を挿通することで第1カバー、流路プレート、及び第2カバーを相互に固定可能とし、固定具を外すことで流路プレートを交換可能としたマイクロリアクターによって、上記の課題を解決する。例えば、ユーザーは複数枚の流路プレートの中から用途に適した任意の流路プレートを選択して、ユーザー自身がマイクロリアクターにセットして任意の反応を行うことが可能である。
【0013】
第1カバーと流路プレートの間には、透明板を配置することが好ましい。透明板を介して微小流路を観察したり光を微小流路に照射することが可能になる。同様に、第2カバーと流路プレートの間には、透明板を配置することが好ましい。
【0014】
第1カバー及び第2カバーの少なくともいずれか一方に透明板を介して流路プレートを視認するためののぞき窓を設けることが好ましい。これにより、例えば、反応が進行する様子を光学顕微鏡などで観察することが可能になる。また、例えば、光触媒などを使用する場合にはのぞき窓から光を照射することが可能である。
【0015】
固定具は、ねじ部と、ねじ山を設けない非ねじ部とを備える螺子であり、ネジ部は、第1カバー、流路プレート、及び第2カバーを組み付けた状態で第1カバー及び第2カバーのうちのいずれか一方と固定具とが螺合する部分に配され、非ネジ部は連結孔を塞いで気密性及び液密性を高めるようにすることが好ましい。ねじ部によって第1カバー、第2カバー、及び流路プレートを確実に締結し、非ネジ部によって連結孔を塞ぐことによって、微小流路の気密性及び液密性を高めることが可能になる。
【0016】
固定具は、多条螺子とすることが好ましい。これによって、螺子の回転操作の回数は少なくして、しかも第1カバー、第2カバー、及び流路プレートを手早くに締結したり分解したりすることが可能になる。
【0017】
第1カバーは、3個以上の導入口を備えることが好ましい。これにより、流路のパターンを増加させて、より多数の用途に対応させることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
複数の流路プレートの中から用途に応じて任意の流路プレートを選択して、その流路プレートに容易に交換することができるマイクロリアクターを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のマクロリアクターの一実施例の分解斜視図である。
図2】各部材を固定具で締結した状態を示す図1のマイクロリアクターの斜視図である。
図3図1のマイクロリアクターの使用状態の一例を模式的に示した図である。
図4】流路プレートの一例を示す平面図である。
図5】流路プレートの一例を示す平面図である。
図6】流路プレートの一例を示す平面図である。
図7】流路プレートの一例を示す平面図である。
図8図2のAA部における断面図である。
図9】固定具の一例を示す正面図である。
図10図2のBB部における断面図である。
図11】別の実施形態のマイクロリアクターの断面図であり、図4と同一箇所で切断したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
図1ないし図5に本発明のマイクロリアクターの一実施形態を示す。本実施形態のマイクロリアクター1は、第1カバー11と、第1透明板12と、複数枚で一組の流路プレート13と、第2透明板14と、第2カバー15と、複数の固定具51とからなる。
【0022】
第1カバー11及び第2カバー15は、板状の部材であり、ステンレス鋼材で構成されている。図1に示したように、第1透明板12及び第2透明板14で流路プレートを挟み込むため、第1カバー11及び第2カバー15は、マイクロリアクター1を使用したり運搬したりする際に、容易に折れ曲がったり割れたりしたい程度の強度を備えるものであればよい。例えば、エンジニアプラスチックなどの合成樹脂材料、ステンレス鋼材、アルミニウム、若しくはシリコンなどの金属材料、石英ガラス、若しくは耐熱ガラスなどのガラス、又は透明セラミクスなどで構成すればよい。本実施形態では、第1カバー11及び第12カバー15は、耐食性が高いSUS304で構成されている。
【0023】
第1カバー11には、3個の導入口16、17、18と1個の排出口19とが設けられている。導入口16、17、18及び排出口19は、それぞれ第1カバー11を厚み方向に貫通する孔である。後述する第1透明板12には、導入口16、17、18と排出口19とにそれぞれ連通する複数の貫通孔が設けられている。
【0024】
導入口16、17、18は12時の位置と3時の位置と9時の位置に設けられる。排出口19は6時の位置に設けれれる。すなわち、導入口16と排出口19は、十文字に設けられている。導入口16、17、18及び排出口19の内壁は雌螺子となっている。図3に示した通り、反応原料供給部20、21、22と連通する管の端部に設けられた雄螺子を導入口16、17、18の雌螺子に螺合して固定することができる。同様に反応物貯蔵部23と連通する管の端部に設けられた雄螺子を排出口19の雌螺子に螺合して固定することができる。雌螺子と雄螺子の関係は入れ替えてもよい。
【0025】
図3に示した反応原料供給部20、21、22は、例えば、シリンジとそのピストンの端部を押す加圧装置とから構成することができる。反応物貯蔵容部23は、例えば、ビーカーなどの容器や、気密容器から構成することができる。
【0026】
本実施形態のマイクロリアクター1では、第1透明板12と第2透明板14とで流路プレート13を挟み込む構成としている。流路プレート13には、流路プレート13の厚み方向を貫通するスリット24が設けられている。第1透明板12と第2透明板14との間にスリット24を設けた流路プレート13を挟み込むことで微小経路が構成される。本実施形態の複数の流路プレート13は、ステンレス鋼材で構成された板状の部材である。ステンレス鋼板を任意の大きさに切削し、レーザー加工や放電加工によって任意のパターンのスリットを容易に形成することが可能である。流路プレート13は薄い板であるが、ステンレス鋼板は強度において優れる。したがって、流路プレートをステンレス鋼材で構成すれば、マイクロリアクター1を分解して微小経路を洗浄する際などに取り扱いやすく好ましい。流路プレート13は、シリコンなどの他の金属材料、合成樹脂材料などで構成してもよい。
【0027】
本実施形態では、第1透明板12、及び第2透明板14は、石英ガラスで構成されている。透明板は、例えば、石英ガラス、若しくは耐熱ガラスなどのガラス、透明セラミクス、又はシリコーンなどの合成樹脂で構成すればよい。石英ガラスは、化学的に安定で、流路の観察に適するため好ましい。
【0028】
本実施形態のマイクロリアクター1は、図1に示したように、計4枚の取り換え可能な流路プレート13を備える。図4に示したように、第1の流路プレート13aは、合流点25に向かって傾斜する第1経路26と合流点に向かって傾斜する第2経路27と合流点25から排出口19に向かって延びる第3経路28とを中央で結合させたY字形のスリットを備える。第1経路26と、第2経路27と、第3経路28とは、合流点25を介して連通する。第1経路26は導入口16に接続し、第2経路27は導入口18に接続し、第3経路28は排出口19に接続する。導入口17は、使用しないため、図示しない蓋で封止されている。図4の黒点は、導入口16、17、18の位置を示し、図5ないし図7においても同様とする。図4の流路プレート13aは、例えば、水性の物質と油性の物質と乳化剤とを混合してエマルションを生成させる際に適している。例えば、第1経路26から水性の物質及び乳化剤の混合物を供給し、第2経路27から油性の物質を供給し、第3経路28からエマルションを排出する。
【0029】
図5の流路プレート13bは、流路プレート13aに合流点25に向かって延びる第4経路29を追加したパターンを有する。第4経路29は、第1経路26と第2経路27との間に設けられており、合流点25を介して第3経路28と連通する。そして、第1経路26と、第2経路27と、第3経路28と、第4経路29は、合流点25を介して連通する。第1経路26は導入口16に接続し、第2経路27は導入口18に接続し、第4経路29は導入口17に接続する。第3経路28は排出口19に接続する。図5の流路プレート13bは、例えば、任意の反応基質Aと任意の反応基質Bと任意の触媒とを混合して反応物を得るさせる際に適している。このとき、例えば、反応基質Aは第1経路26から供給し、反応基質Bは第2経路27から供給し、触媒は第4経路29から供給し、反応物は第3経路28から排出する。この流路プレート13bでは3種の物質が同時に混合される。
【0030】
図6の流路プレート13cは、第1の合流点30に向かって延びる第1経路31と、第1の合流点30に向かって延びる第2経路32と、第1の合流点30及び第2の合流点33とを接続する第3経路34と、第2の合流点33に向かって延びる第4経路35と、第2の合流点33から排出口19に向かって延びる第5経路36とを連通させたパターンを有する。第1経路31は導入口17に接続し、第2経路32は導入口18に接続し、第4経路は導入口16に接続し、第5の経路は排出口19に接続する。図6の流路プレート13cは、例えば、以下のような用途に適している。例えば、任意の触媒Aの存在下で、任意の反応基質Aと任意の反応基質Bとを反応させて任意の反応物Cを生じさせる。その後、触媒Aの存在下で反応物Cと任意の反応基質Dとを反応させて任意の反応物Eを得るような場合に適している。この例では、反応基質A及び触媒Aは第1経路31から供給し、B反応基質Bは第2経路32から供給し、反応物Cは第3経路を流通する過程で生じ、反応基質Dは第4経路から供給し、反応物Eは第5経路36を流通する過程で生じて排出口19から排出される。図7の流路プレート13dでは、2種の物質を混合した後にもう1種の物質を混合することが可能になる。この流路プレート13cでは、2種の物質を混合した後にもう1種の物質を混合することが可能になる。
【0031】
図7の流路プレート13dは、第1の合流点37に向かって延びる第1経路38と、第1の合流点37に向かって延びる第2経路39と、第1の合流点37及び第2の合流点40とを接続する第3経路41と、第2の合流点40に向かって延びる第4経路42と、第2の合流点40から排出口19に向かって延びる第5経路43とを連通させたパターンを有する。第1経路38は導入口17に接続し、第2経路37は導入口18に接続し、第4経路42は導入口16に接続し、第5経路43は排出口19に接続する。第3経路41は、曲点44を複数有しており、左右に蛇行する形状である。図7の流路プレート13dは、例えば、以下のような用途に適している。任意の触媒Aの存在下で任意の反応基質Aと任意の反応基質Bとを反応させて任意の反応物Cを生じさせる。その後、触媒Aの存在下で反応物Cと任意の反応基質Dとを反応させて任意の反応物Eを得るような場合に適している。この例では、反応基質A及び触媒Aは第1経路38から供給し、B反応基質Bは第2経路39から供給し、その結果生じた反応物Cは蛇行した第3経路41を流通する過程で生じる。反応基質Dは、第4経路42から供給し、合流点40で反応物Cと混合される。その結果、第5経路43中で反応物Eを生じる。反応物Eは第5経路36から排出する。流路プレート13dは、第3経路41が左右に蛇行しているため、第1経路38から供給された物質と第2経路39から供給された物質とを反応させる時間を稼いでよく混ぜ合わせることができる。したがって、流路プレート13cの直線状の第3経路34では第1経路から供給された反応基質Aと第2経路から供給された反応基質Bとが反応する時間を稼げないときやA化合物とB化合物とがよく混合されないようなときに、流路プレート13dを使用するとよい。
【0032】
従来は、導入口の数が2で排出口の数が1である3穴のマイクロリアクターが広く用いられている。このようなマイクロリアクターは汎用性に乏しかった。本実施形態のマイクロリアクター1ように、導入口の数を3以上として、しかも流路プレートを交換可能とすることでマイクロリアクターの汎用性を格段に高めることが可能になる。換言すると、導入口の数を3以上の流路プレート13を交換可能にすることで、1台のマイクロリアクターで種々の反応を行うことが可能になる。
【0033】
本実施形態のマイクロリアクター1は、流路プレート13a、13b、13c、13dを一枚づつ備える。このため、マイクロリアクター1を用いて行う反応によって流路プレートを交換することで、1台のマイクロリアクターで多種類の反応に対応することが可能となる。
【0034】
本実施形態のマイクロリアクターは異種の流路プレートを1枚ずつ用いるが、同種の流路プレートを複数枚含む構成としてもよい。すなわち、流路プレート13a、13b、13c、及び13dからなる群から重複を許して選ばれる少なくとも1種以上の流路プレートを複数枚備えるものであることが好ましい。例えば、複数枚の流路プレート13aと、複数枚の流路プレート13bとを備えるものとしてもよい。また、例えば、複数枚の流路プレート13bを備えるものとしてもよい。同種の流路プレートを用意しておけば、一方の流路プレートの微小流路が詰まったときや破損したときには他方の流路プレートに交換することで反応を継続することができる。交換した流路プレートは、その間に洗浄したり修理したりすることができる。また、同種の流路プレートを複数枚重ねて使用すれば、微小流路の容積を増やすことが可能になる。これによって、1台のマイクロリアクター1で、小さめの反応規模にも大きめの反応規模にも柔軟に対応することが可能になる。
【0035】
本実施形態では、図8に示したように、第1カバー11、及び第2カバー15の両方にのぞき窓45a、45bが設けられる。のぞき窓45a、45bは、カバーの厚み方向を貫通する孔である。微小流路の平面及び底面は透明板12、14で構成される。このため、のぞき窓45a、45bを介して微小流路の様子を観察することができる。例えば、微小流路に閉塞が生じていないか観察することができる。また、例えば、光触媒反応の場合にはのぞき窓から光を照射して反応を生じさせることができる。例えば、吸光度の変化を利用して特定成分の定量分析を行うことができる。
【0036】
第2カバー15、第2透明板14、流路プレート13、第1透明板12、及び第1カバー11を記載した順に積層して、複数の連結孔46にそれぞれ固定具51を挿通して互いに固定する。第2カバー15、第2透明板14、流路プレート13、第1透明板12、及び第1カバー11は、平面視において同寸の長方形である。このためこれらを積層したマイクロリアクター1の形状は、側面に凹凸のない直方体となる。本実施形態のマイクロリアクター1では、図9に示したように、固定具51として、頭部47と、ねじ部48と、ねじ山を設けない非ねじ部49とを備える螺子を使用して流路プレート13及びカバー等を締結している。本実施形態では、第2カバー15、第2透明板14、流路プレート13、第1透明板12、及び第1カバー11にそれらを相互に連通する連結孔46を設けてある。第2カバー15の連結孔の内壁は雌螺子部となっている。第2カバー以外の連通孔46は雌螺子を設けておらず、内壁は滑面である。
【0037】
図10に示したように、ネジ部48は、第1カバー11、第1透明板12、流路プレート13、第2透明板14、及び第2カバー15を組み付けた状態で第2カバー15の雌螺子部と固定具51の雄螺子部とが螺合する部分に配される。ねじ軸のその他の部分は非ネジ部49となっている。非ネジ部49は、第1カバー11、第1透明板12、流路プレート13、第2透明板14の連結孔46を塞いで気密性及び液密性を高める。このため、図10において矢印で示した箇所、すなわち流路プレート13と第1透明板12との間と流路プレート13と第2透明板14との間で気密性及び液密性が高められる。これらの連結孔46の内径は、固定具51の回転が妨げられない程度に摺接して気密性及び液密性を発揮するようにしている。本実施形態のマイクロリアクター1では、固定具51の先端はマイクロリアクターの底面から突出しない。このため、図3に示したように、マイクロリアクター1の底面が実験台などに接するように設置して反応を行うことができる。
【0038】
本実施形態のマイクロリアクター1では、第2カバー15の連結孔46の内壁にのみねじ山を設けたが、第1カバー11の連結孔46の内壁にもねじ山を設けてもよい。第1透明板12の連結孔46と、第2透明板14の連結孔46によって気密性及び液密性を高めることができるからである。
【0039】
本実施形態では、第1カバー11の側に固定具51の頭部47が位置する。別の実施形態として、第2カバー15の側から固定具を挿通してもよい。この場合は、少なくとも第1カバー11の連通孔46の内壁にねじ山を設ける。
【0040】
本実施形態のマイクロリアクター1では、固定具51として多条螺子を使用している。螺子が一回転したときの螺子の移動量、すなわちリードと、螺子の条数と、ピッチとの間には以下の関係がある。リード(L)=ピッチ(P)×螺子の条数(n)。多条螺子を使用することで、螺子1回転当たりの移動量を増やすことが可能である。これにより、マイクロリアクター1を分解する作業と組み付ける作業を簡単かつ迅速に実施することができるようになる。本実施形態のマイクロリアクター1では気密性及び液密性を高めるために複数の固定具を使用している。多条螺子を使用することで流路プレート13の交換が容易になる。
【0041】
螺子の条数が大きくなると螺子が緩みやすくなるため、nは1以上、6以下とすることが好ましく、nは2以上、3以下とすることが好ましい。Pは、0.2以上、6以下とすることが好ましい。
【0042】
図11に別の実施形態を示す。この実施形態のマイクロリアクター2は、第1透明板12、及び第2透明板14を備えない点でマイクロリアクター1と異なる。第1カバー11b、及び第2カバー15bは、石英ガラスから構成されており耐熱性及び耐食性に優れ、しかも微小流路を外部から観察することが可能である。第2カバーの連結穴50は、凹部となっており、第2カバー15bを貫通しない点でもマイクロリアクター1と異なる。連結穴50は貫通しないため気密性及び液密性を高めることができる。マイクロリアクター1と同様にねじ部48b、非ねじ部49b、頭部47bを有する固定具51bを使用しているため、第1カバー11bの連結孔50は非ネジ部49bによって塞がれる。これによって気密性及び液密性が高められている。固定具51bは、マイクロリアクター1と同様の多条螺子であり、締結操作を手早く行うことができる。このため、固定具51bを付け外しすることで別の流路プレートに簡単かつ迅速に換装することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 マイクロリアクター
11 第1カバー
15 第2カバー
13 流路プレート
19 排出口
16、18 導入口
12、14 透明板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11