(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
1.中空構造板1
図1は、本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。本発明に係る中空構造板1は、少なくとも一方の面に中空状の凸部21が複数形成された1又は2枚の熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シート2の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材3、及び/又は表皮材4が積層されている。
【0013】
中空構造板1の目付けは特に限定されないが、300〜3000g/m
2とすることが好ましく、400〜2000g/m
2とすることがより好ましく、450〜1000g/m
2とすることが特に好ましい。これにより、中空構造板1の軽量化を図ることができる。
【0014】
中空構造板1の厚みも特に限定されないが、1.5〜55mmとすることが好ましい。1.5mm以上とすることにより、中空構造板1の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、曲げ剛性が保持された中空構造板1を作製できる。また、55mm以下とすることにより、中空凸部成形シート2における凸部21の高さを制御でき、凸部21の側壁の厚みがドラフトされて薄くなり過ぎることを防げるため、変形(座屈)が発生しにくい中空構造板1を作製できる。
【0015】
<中空凸部成形シート2>
中空凸部成形シート2は、少なくとも一方の面に中空状の凸部21が複数形成された1又は2枚の熱可塑性樹脂シートからなる。すなわち、
図1等に示すように、中空凸部成形シート2の一方の面にのみ凸部21が形成されていてもよいし、
図5に示すように、中空凸部成形シート2の両面に凸部21が形成されていてもよいし、2枚の熱可塑性樹脂シートから形成されていてもよい。
【0016】
図2のAは、本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す断面模式図であり、
図2のBは、開口部212の拡大図である。本発明では、凸部21の開口部212の、長径方向の長さa1と短径方向の長さa2との比(a1/a2)が、1.05≦a1/a2≦1.2
5であることを特徴とする。
【0017】
前述の通り、従来の中空構造板の中には、等方性に優れた物性を有するものがあり、そのような中空構造板においては、一方向性の曲げ剛性を向上させることが困難であった。
そこで、本願発明者は、中空構造板の構造について鋭意研究を行った結果、1.05≦a1/a2≦1.2
5に制御することにより、一方向性の曲げ剛性に優れた中空構造板が得られることを見出した。
【0018】
具体的には、a1/a2≧1.05とすることにより、長径方向の曲げ剛性が向上し、中空構造板が異方性を発現できることが分かった。また、熱等により曲げ加工した場合に任意の方向以外に折れ曲がることを回避できるため、他方向に曲がったり曲げ跡や折れが発生したりした中空構造板の発生率(以下、「不良率」ともいう)を低下できることも分かった。
【0019】
そして、a1/a2≦1.2
5とすることにより、成形時に凸部21の側壁の長径方向の樹脂が伸びて肉厚が薄くなり過ぎることを防ぎ、長径方向の曲げ剛性が低下することを回避できることが分かった。
【0020】
したがって、本発明に係る中空構造板1は、長径方向には曲げ剛性が高く(具体的には、100N/cm以上)、異方性を有しており、短径方向の曲げ加工性に優れる。
【0021】
また、本発明では、1.08≦a1/a2≦1.21とすることが好ましい。これにより、一方向性の曲げ剛性に更に優れた中空構造板1を提供できる。
【0022】
なお、本明細書において、「異方性」とは、例えば、長径方向の曲げ剛性と短径方向の曲げ剛性との比(以下、「曲げ剛性比」ともいう)が、1.5以上となることをいう。曲げ加工する場合は、この比が1.5以上であると、一方向の曲げ剛性を有しつつも、当て部材を要することなく、一方向の曲げ加工を簡潔に行える。なお、従来の等方性に優れる中空構造板では、この比は1.1程度である。1.5未満であると、短径方向に曲げ加工した際に、任意の方向以外に折れ曲がり、不良率が高くなってしまう。
【0023】
凸部21は、少なくとも上面部211及び開口部212を有していれば(
図2のA参照)、その形態は特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、
図1等で示した楕円錐台形状、三角錐台形状、四角錐台形状、五角錐台形状等の多角錐台形状、更には、楕円柱形状、多角柱形状、多角星柱形状、多角星錐台形状など、様々な形状に設計することができる。また、
図6で示したように、これらの形状を組み合わせた形態に設計することもできる。
【0024】
なお、本発明では、後述する表面材3や表皮材4が中空凸部成形シート2に積層された際に、起点を少なくして表面材3や表皮材4からの剥離強度を向上させるため、上述した多角錐台形状、多角柱形状等の角を丸く設計することもできる。
【0025】
本発明では、中でも特に、凸部21を楕円錐台形状又は多角錐台形状に設計することが好ましい。凸部21の形状を楕円錐台形状又は多角錐台形状に設計することにより、製造工程における設計を容易化できることに加え、金型を用いて凸部21を成形する場合、金型の製造コストを削減することもできる。
【0026】
また、本発明では、凸部21を楕円錐台形状に設計することが特に好ましい。これにより、一方向性の曲げ剛性に更に優れた中空構造板1を提供できる。
【0027】
複数の凸部21は、全て同一の形態であってもよいし、2種以上の形態を自由に選択して組み合わせてもよい。また、本発明では、
図6に示すように、凸部21の途中に段差を設けたり、凸部21の途中にウェーブを設けたりすることも可能である。
【0028】
本発明では、
図1等に示すように、中空凸部成形シート2が、1枚の熱可塑性樹脂からなる場合、凸部21の上面部211縁と凸部21の側壁の接点における凸部21の側壁の接線の傾きθ1と、凸部21の開口部212縁と凸部21の側壁の接点における凸部21の側壁の接線の傾きθ2と、の比(θ1/θ2)は特に限定されないが、1.05≦θ1/θ2≦1.67であることが好ましい。θ1/θ2≧1.05とすることにより、熱等により曲げ加工した場合に任意の方向以外に折れ曲がることを回避できるため、不良率を低下できる。また、θ1/θ2≦1.67とすることにより、曲げ加工した場合に凸部21の側壁が変形(座屈)して曲げ剛性が低下することを回避できる。
【0029】
θ1は特に限定されないが、50°≦θ1≦75°とすることが好ましい。θ1≧50°とすることにより、凸部21の側壁の傾斜が緩くなり過ぎることを防ぎ、十分な圧縮強度が発揮できる。より具体的には、折り曲げた際に凸部21の側壁が開口部212側へ傾くことを防げるため、十分な曲げ剛性が発揮できる。また、θ1≦75°とすることにより、真空成形した際に、中空凸部成形シート2の側壁の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、かつ、凸部21の側壁のフィルム化も防止できるため、十分な強度が得られる。逆に、θ1>75°とすると、中空凸部成形シート2を成形し脱型する際に、凸部21が引っ掛かるため離型しにくくなる。
【0030】
θ2も特に限定されないが、45°≦θ2≦70°が好ましい。θ2≧45°とすることにより、凸部21の側壁の傾斜が緩くなり過ぎることを防いで、十分な曲げ剛性を発揮できる。また、θ2≦70°とすることにより、真空成形した際に、中空凸部成形シート2の側壁の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、かつ、凸部21の側壁のフィルム化も防止できるため、十分な強度が得られる。逆に、θ2>70°とすると、中空凸部成形シート2を成形し脱型する際に、凸部21が引っ掛かるため、離型しにくくなる。
【0031】
本発明において、凸部21の配列形態は特に限定されず、例えば、凸部21を、格子状、千鳥状又は不規則に配列させることができる。本発明では、中でも特に、千鳥状に凸部21を配列させることが特に好ましい。これにより、本発明に係る中空構造板1の厚さ方向における圧縮強度を保持しつつ、一方向性の曲げ剛性に更に優れた中空構造板1を提供できる。
【0032】
なお、本明細書では、千鳥状に凸部21を配置させることには、所定の基準方向に沿って視たときに、隣接するもの同士が互い違うように配置される状態も含まれるものとする。
【0033】
また、凸部21を千鳥状に配列させた場合、横方向の凸部21の中心同士を結んだ線と斜め方向の凸部21の中心同士を結んだ線とがなす角度θ3(
図3のB参照)は特に限定されないが、60°とすることが特に好ましい。これにより、中空構造板1の剛性を向上できる。なお、「四角格子状」とは、θ3=90°とした場合の配列を意味する。
【0034】
開口部212の形態は長径及び短径を有する形状であれば特に限定されないが、楕円とすることが特に好ましい。これにより、一方向性の曲げ剛性に更に優れた中空構造板1を提供できる。
【0035】
上面部211の形態は特に限定されず、楕円、真円、三角形、四角形等の多角形等にすることができる。
【0036】
本発明では、凸部21の開口部212間の最短距離dと長径方向の長さa1との比(d/a1)は特に限定されないが、0.05≦d/a1≦0.5とすることが好ましい。d/a1≧0.05とすることにより、中空凸部成形シート2のライナー部(凸部21を長径方向から視た場合に凸部21が存在しない部分;
図3のB参照)まで十分に樹脂を成形でき、ライナー部の厚みが薄くなり過ぎることを防げるため、長径方向の曲げ剛性が向上する。また、d/a1≦0.5とすることにより、凸部21間の距離が長くなり過ぎて単位面当たりの凸部21の数が減りすぎることを回避できるため、中空構造板1の曲げ剛性が向上する。
【0037】
凸部21の開口部212間の最短距離d(
図2のA及び
図3のB参照)も特に限定されないが、0.5〜5mmとすることが好ましい。最短距離dを0.5mm以上とすることにより、ライナー部の賦形性が向上する。また、最短距離dを5mm以下とすることで、単位面積あたりの凸部21の数が多くなり、厚さ方向において十分な圧縮強度が得られる。なお、本発明において、最短距離dは常に一定でなくてもよい。
【0038】
凸部21の高さh(
図2のA参照)も特に限定されないが、1.5mm以上であることが好ましい。hを1.5mm以上とすることにより、剛性が高い中空構造板1を得ることができる。また、hは、50mm以下であることが好ましい。hを50mm以下とすることにより、凸部21の側壁部分が薄くなり過ぎるのを防ぎ、中空凸部成形シート2の変形(座屈)を防ぐことができる。
【0039】
本発明では、中空凸部成形シート2の構造として、シートの一部に、
図7に示すような流路Fが存在する構造を採用することもできる。本発明において、流路Fの形状、断面の構造等は特に限定されない。なお、
図7に示す矢印kは、流路Fの形成方向を示す。流路Fを形成する方向も特に限定されず、例えば、
図7に示すように、矢印g方向から視て斜め方向に流路Fを形成することができる。
【0040】
中空凸部成形シート2の材質は熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることが可能な熱可塑性樹脂を、1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。
【0041】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。
【0042】
中空凸部成形シート2の材質としては、中でも特に、加工性、コスト、重量及び物性の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、本発明では、更に高い剛性を得るため、ABS樹脂、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックを用いることもできる。
【0043】
本発明では、中空凸部成形シート2や、後述する表面材3及び表皮材4を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等のフィラー、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等のチョップドストランドを添加してもよい。
【0044】
また、中空凸部成形シート2や、後述する表面材3及び表皮材4を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性、濡れ性、滑り性及び耐候性などを向上させるための改質剤や顔料等の着色剤などを添加してもよい。
【0045】
なお、中空凸部成形シート2や、後述する表面材3及び表皮材4は、同じ材料で形成されていてもよいが、熱融着可能な範囲で相互に異なる材料で形成してもよい。
【0046】
<表面材3(31、32)>
本発明では、前述した中空凸部成形シート2の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材3、及び/又は後述する表皮材4が積層されている。すなわち、本発明では、中空構造板1には、
図1〜4及び7に示すように、表面材3又は表皮材4のみが積層されていてもよく、
図6に示すように、表面材3と表皮材4の両方が積層されていてもよく、
図5に示すように、中空凸部成形シート2の片面ずつに表面材3(32)と表皮材4(41)をそれぞれ積層されてもよい。
【0047】
なお、本明細書では、中空凸部成形シート2に積層された2枚の表面材について、それぞれ、第1表面材31、第2表面材32と称することもあるが、これらの名称の区別は便宜的なものである。したがって、実際の製品である中空構造板1においては、第1表面材31と第2表面材32の区別はない。また、後述する実施例で示すように、特に、凸部21の上面部211側に表面材3を積層した場合には、第1表面材31と、凸部21の開口部212側に表面材3を積層した場合には、第2表面材32と、便宜的に称することもある。
【0048】
表面材3の材質は熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることが可能な熱可塑性樹脂を、1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。なお、熱可塑性樹脂の具体例は前述したものと同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0049】
表面材3の材質としては、中でも特に、加工性、コスト、重量及び物性の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、本発明では、更に高い剛性を得るため、ABS樹脂、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックを用いることもできる。
【0050】
表面材3の目付けは特に限定されないが、100〜1000g/m
2とすることが好ましい。目付けを100g/m
2以上とすることにより、中空凸部成形シート2に表面材3を積層する際に、表面材3が薄くなり過ぎて破けることを防止できる。また、目付けを1000g/m
2以下とすることにより、短径方向に曲げ加工した場合に任意の方向以外に折れ曲がることを防げるため、不良率を低下できる。
【0051】
表面材3の厚みも特に限定されないが、0.1〜1mmとすることが好ましい。0.1mm以上とすることにより、中空構造板1の曲げ剛性を保持できる。また、1mm以下とすることにより、曲げ加工性の向上、軽量化及び原料コストの低減を図ることができる。
【0052】
本発明では、中空構造板1が表面材3を複数有する場合、複数の表面材3(31、32)の厚みは、同一としてもよいし、異なるものであってもよい。また、各表面材を、同一の材質で形成することもできるし、異なる材質で形成することもできる。
【0053】
以上の通り、本発明に係る中空構造板1の構造は特に限定されないものの、
図1に示すように、中空凸部成形シート2が、一方の面に楕円錐台形状等の錐台形状の凸部21が複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなり、凸部21の上面部211側にのみ表面材3(31)が積層された構造とすることができる。この構造を採用することにより、一方向性の曲げ剛性に更に優れた中空構造板1を提供できる。なお、この構造の中空構造板は、例えば、後述する
図8及び9に示す製造方法等により製造することができる。
【0054】
<表皮材4(41、42)>
本発明では、前述した中空凸部成形シート2の少なくとも一方の面に、前述した表面材3、及び/又は表皮材4が積層されている。本発明に係る中空構造板1が表皮材4を備えることで、中空構造板1に、意匠性、吸音特性、断熱性等の用途に応じた特性を付与できる。
【0055】
なお、本明細書では、中空凸部成形シート2に積層された2枚の表皮材について、それぞれ、第1表皮材41、第2表皮材42と称することもあるが、これらの名称の区別は便宜的なものである。したがって、実際の製品である中空構造板1においては、第1表皮材41と第2表皮材42の区別はない。また、後述する実施例で示すように、特に、凸部21の上面部211側に表皮材4を積層した場合には、第1表皮材41と、凸部21の開口部212側に表皮材4を積層した場合には、第2表皮材42と、便宜的に称することもある。
【0056】
表皮材4の材質は特に限定されず、通常、中空構造板の表皮材として用いることができる材料を目的の用途などに応じて自由に選択して用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂シート、樹脂製の織布、不織布、組布、編み物、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる金属シート、有機系又は無機系多孔質シート等が挙げられる。また、複数の同種又は異種のシートを積層した積層シート等を表皮材として用いることも可能である。
【0057】
本発明では、中空構造板1が表皮材4を複数有する場合、複数の表皮材4(41、42)の厚みは、同一としてもよいし、異なるものであってもよい。また、各表皮材を、同一の材質で形成することもできるし、異なる材質で形成することもできる。
【0058】
2.中空構造板1の製造方法
本発明に係る中空構造板1は、その構造に特徴があるため、その製造方法は特に限定されない。すなわち、本発明に係る中空構造板1の製造には、通常、中空構造板を製造する際に用いられる方法を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。なお、
図8及び9において、矢印jは中空構造板1の流れ方向を示す。
【0059】
図8は、本発明に係る中空構造板1の一例を示す概念図である。
図8に示す製造方法では、まず、溶融状態の熱可塑性樹脂Pを、金型D1、D2で両側からプレスすることにより、
図1の中で示した構造の中空凸部成形シート2を製造する。次に、先端にTダイ101が設けられた押出機102から、熱可塑性樹脂を押し出してシート状にした表面材3(31)を加熱手段が設けられたローラーR1を用いて熱融着により中空凸部成形シート2に積層し、本発明に係る中空構造板1を製造する方法である。
【0060】
図9は、本発明に係る中空構造板1の、
図8とは異なる製造方法の一例を示す概念図である。
図9に示す製造方法は、まず、表面に凸状のピンが複数突設された成形ローラーR2を用いて、該成形ローラーR2の溝に溶融状態の熱可塑性樹脂シートを注入して中空凸部成形シート2を形成する。次に、該中空凸部成形シート2の一方の面に表面が平坦な平ローラーR3を用いて第2表面材32を熱融着により積層し、その後、中空凸部成形シート2の他方の面に加熱手段が設けられたローラーR1を用いて第1表面材31を熱融着により積層し、本発明に係る中空構造板1を製造する方法である。
【0061】
図9に示す製造方法では、中空凸部成形シート2を、表面に凸状のピンが複数突設された成形ローラーR2と、表面が平坦な平ローラーR3とが、その回転軸が相互に平行となるように配置された真空形成装置によって製造を行っている。成形ローラーR2と平ローラーR3とは、それぞれ減圧チャンバー103a、103b内に設置されている。また、減圧チャンバー103a、103bには、
図9に示すように、中空凸部成形シート2や表面材31、32を吸引保持するための吸引孔104a、104bを設けることもできる。
【0062】
なお、図示しないが、表皮材4を中空構造板1に積層する場合は、前述した
図8及び9で示した製造方法において、表面材3(31、32)に代わり、表皮材4(41、42)を中空凸部成形シート2に積層する製造方法や、加熱手段が設けられたローラーR1、表面が平坦な平ローラーR3等により、表面材3に更に表皮材4を積層する製造方法等を採用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0064】
1.試験方法及び試験結果
まず、以下の表1及び2に示す実施例1〜11及び比較例1〜10の中空構造板を作製した。
実施例1〜10及び比較例1〜10の中空構造板は
図1で示した構造を
図8で示した製造方法により作製した。実施例11の中空構造板は
図4で示した構造を
図8で示した製造方法により作製した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
なお、表1及び2中、PPはポリプロピレンブロックコポリマー、PCはポリカーボネートを示す。また、表1及び2中の各数値(a1、a2、θ1、θ2、開口部間の最短距離d)は、中空構造板の断面からマイクロスコープを用いて測定した。
【0068】
次に、各中空構造板について、長径方向及び短径方向の「曲げ剛性(弾性勾配)」、及び「熱曲げ加工性」について評価を行った。
【0069】
[曲げ剛性(弾性勾配)の評価方法]
中空構造板を25×100mm(支点間50mm)の中央に負荷をかける曲げ試験(3点曲げ試験)を行った。なお、曲げ剛性(弾性勾配)については、上記曲げ試験により得られた荷重−たわみ曲線の直線部分から1cm撓んだ時の荷重を求め、その曲げ剛性とした。なお、表1及び2における各測定値は、各中空構造板の長径方向と短径方向を、それぞれ、N=5測定して得た平均値を記載した。この曲げ剛性の値が高いほど、曲げ剛性が高いと評価できる。
【0070】
また、表1及び2には、長径方向の曲げ剛性(平均値)と短径方向の曲げ剛性(平均値)との比(曲げ剛性比)も算出し、併記した。
【0071】
[熱曲げ加工性の評価方法]
公知の方法で、V字型の熱刃(V字角度:60°)を長径方向に設置し、第一表面材側又は第二表面材側から任意の温度(250℃)で熱曲げプレス加工を行った。なお、評価は、N=20で行った。不良の判断は、短径方向に折り曲げた際に、他方向にも曲がらない又は曲げ跡や折れがなかったかどうかを、目視にて確認した。そして、他方向にも曲がった又は曲げ跡や折れがあったものを不良であると判断し、不良率(%)を算出した。不良率が、5%以下であったものは「◎」とし、5%を超えて20%以下であったものは「○」とし、20%を超えて30%未満であったものは「△」とし、30%以上であったものは「×」と評価した。
【0072】
2.考察
実施例1〜11の中空構造板は、曲げ剛性比が1.5以上となり、十分な異方性を示し、かつ、短径方向の曲げ加工性も良好であった。したがって、一方向性の曲げ剛性に優れていた。一方で、比較例2及び7の中空構造板は、曲げ剛性比が1.5未満であり、異方性を示さなかった。また、比較例1〜10の中空構造板は、熱曲げ加工性が不良であった。
【0073】
したがって、本試験結果から、凸部の開口部の、長径方向の長さa1と短径方向の長さa2との比(a1/a2)を、1.05≦a1/a2≦1.2
5とすることにより、一方向性の曲げ剛性に優れた中空構造板が得られることが分かった。