(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)電池パックと併せて作用する独立した電源、ならびに、(ii)完全充電モードおよびフロート充電モードを有するシステムのための前記電池パックにおける1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池の充電状態を制御する方法であって、
(a)前記電池パックにおける前記1つまたは複数の水性ニッケル亜鉛電池の充電状態が前記完全充電モードに関連付けられている既定のレベル未満であるかを判断し、
(b)前記充電状態が前記完全充電モードに関連付けられている既定のレベル未満であると判断された後、完全充電モードにおいて、第1の電圧で前記電池パックに電荷を加えて前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を完全充電状態まで充電し、前記完全充電状態までの前記第1の電圧は前記独立した電源から提供され、
(c)(b)の後、前記フロート充電モードで前記システムを動作させる間、第2の電圧を前記電池パックに加えて前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池をフロート充電状態で維持すること、前記フロート充電状態における前記充電状態は前記完全充電状態よりも低く、前記フロート充電状態のための前記第2の電圧は、前記独立した電源から提供され、前記第2の電圧の大きさは前記第1の電圧の大きさ未満であること、を備え、
前記電池パックにおける前記1つまたは複数の水性ニッケル亜鉛電池の前記充電状態は、前記システムの動作中に監視され、前記充電状態が前記完全充電モードに関連付けられている前記既定のレベル未満であることを前記監視が示す場合に(a)〜(c)は繰り返し実行される、方法。
(b)および(c)の少なくともいずれか一方において、前記独立した電源からの充電を行って前記電池パックにおける前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を充電することは、前記独立した電源からの電力を、前記電池パックに電気的に接続されているオルタネータに提供することを備える、請求項1に記載の方法。
前記車両の電気的機能を実行するために、(a)の前に、前記電池パックにおける前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を前記完全充電モードに関連付けられている前記既定のレベル未満に放電することをさらに備える、請求項6に記載の方法。
前記電気的機能は、前記車両の内燃機関の低温クランキング、前記車両の車室内の電子機器への電力供給、および/または、前記車両のパワーステアリングへの電力供給を含む、請求項7に記載の方法。
(c)の前に、前記電池パックにおける前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を部分的に放電して前記車両の前記電気的機能を果たすことをさらに備える、請求項7に記載の方法。
前記独立した電源に対してバックアップ電力を提供するために、(a)の前に、前記電池パックにおける前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を前記完全充電モードに関連付けられている前記既定のレベル未満で放電することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
(b)において、前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池の前記完全充電状態までの充電は、少なくとも約1Cの速度で実施される、請求項1に記載の方法。
(c)は、少なくとも約1Cの速度で実施される、前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池の前記フロート充電状態までの充電を含む、請求項1に記載の方法。
(a)電池パックと併せて作用する独立した電源、ならびに、(b)完全充電モードおよびフロート充電モードを有するシステムのための前記電池パックにおける1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池の充電状態を制御するためのコントローラであって、
オルタネータおよびエンジン制御ユニットの少なくともいずれか一方と通信するための通信インターフェイスと、
(i)前記電池パックにおける前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池の充電状態が前記完全充電モードに関連付けられている既定のレベル未満であるかを判断し、
(ii)前記充電状態が前記完全充電モードに関連付けられている既定のレベル未満であると判断された後、前記完全充電モードにおいて、第1の電圧で前記電池パックに電荷を加えて前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を完全充電状態まで充電し、
(iii)(ii)の後、前記フロート充電モードで前記システムを動作させる間、第2の電圧を前記電池パックに加えて前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池をフロート充電状態で維持し、
前記フロート充電状態における前記充電状態は前記完全充電状態よりも低く、前記完全充電状態までの前記第1の電圧は前記独立した電源から提供され、前記フロート充電状態のための前記第2の電圧は、前記独立した電源から提供され、前記第2の電圧の大きさは前記第1の電圧の大きさ未満であり、
(iV)前記システムの動作中、前記電池パックにおける前記1つまたは複数の水性ニッケル亜鉛電池の前記充電状態を監視し、前記充電状態が前記完全充電モードに関連付けられている前記既定のレベル未満であることを前記監視が示す場合に(a)〜(c)を繰り返し実行するための論理回路と、を備える、コントローラ。
前記コントローラ論理回路は、(ii)の前に、前記独立した電源が動作可能であるかを判断するようにさらに設計または構成されている、請求項21に記載のコントローラ。
前記完全充電状態を算出することは、次の式:電圧(完全充電)=1.9−0.002*(摂氏温度−22度)、の数値を求めることを含む、請求項25に記載のコントローラ。
前記コントローラ論理回路は、前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を少なくとも約1Cの速度で(ii)における前記完全充電状態まで充電するようにさらに設計または構成されている、請求項21に記載のコントローラ。
前記コントローラ論理回路は、前記電池パックの前記1つ以上の水性ニッケル亜鉛電池を少なくとも約1Cの速度で(iii)における前記フロート充電状態まで充電するようにさらに設計または構成されている、請求項21に記載のコントローラ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
序論
本開示の態様は電池充電管理に関する。本明細書に記載されるように管理される電池は、それらが、内燃機関またはグリッドからの交流電源などの独立した電源と併せて作用するシステムにおける使用が可能である。このようなシステムでは、電池は、繰り返し、特定の機能(単数または複数)を果たすことが要求される。これらの機能を果たす際、電池はさまざまな程度に放電する。システムは、電池の充電状態が高レベルで自動的に維持されて、電池がその機能を要求されると確実に果たすことができるように設計される。ある実施形態では、独立した電源(例えば内燃機関)が電池の充電に利用可能となると、その間に電池は再充電される。
【0023】
電池充電メンテナンスを、電池管理ユニット(BMU)または他の適切なコントローラを使用して成し遂げることができる。BMUは、制御された状態にある電池に関する1つまたは複数の関係のあるパラメータを示す感知された信号を受信するためのセンサまたは入力端子を含むことができる。このようなパラメータは、電池の充電状態、温度、電池によって目下伝達されている電圧、トリガリングイベント後に通過するクーロンなどを含む。BMUは、その電池がいつ、そしてどの程度まで充電または放電されるのかを指令する制御論理回路を含むこともできる。
【0024】
さまざまな実施形態では、電池は2つまたはそれ以上の異なるモードで充電される。完全充電動作モードと称する第1のモードでは、電池は、放電状態から、その電池のタイプにとって完全充電と考えられる充電状態(例えば、鉛電池に対してセル当たり2.3V、および、ニッケル亜鉛電池に対してセル当たり1.93V)まで完全に充電される。フロート充電動作モードと称する別のモードでは、完全に充電されている電池がフロートレベル(例えば、ニッケル亜鉛電池に対してセル当たり1.87V)で維持される。フロートモードでは、電池は完全充電と見なされ得るが、より低い電圧で維持される。フロート充電することによって、自己放電または低負荷放電(すなわち、充電状態が比較的高いままの充電)に対する補償が可能である。フロート充電は、典型的には、電池が使用されるシステムの通常動作中に電池内への多少の細流充電を含む。
【0025】
従来、フロート充電は完全充電状態における電池を維持するための役割を果たす。従来の電池管理ユニットの中には、異なる動作モードとして完全充電およびフロート充電を用いているといわれるものもあるが、各モードにおいて、これらのBMUは、電池を同じ完全な充電状態まで充電する。本明細書に記載されるいくつかの実装形態では、完全充電モードは、比較的甚だしく放電された状態から電池を充電する時に使用され、フロート充電は、比較的高電荷の状態であるが完全充電された電池の状態よりも低いレベル(例えば、完全充電の約95%)で電池を維持するために使用される。換言すると、フロート充電モードは、ほぼ完全充電状態で電池を維持するために使用され、それによって、電池は、エンジンの低温クランキング、UPSの電力供給、または、電池がかなりの程度まで放電される可能性のある他部分の操作を行うために使用可能である。いくつかの実装形態では、電池は設定された完全充電電圧レベルまで完全に充電され、次いで、充電電圧レベルをフロート充電レベルまで落とす。この手法は、過度の過充電を生じさせずに、長寿命を促進させる。
【0026】
本明細書に記載されたさまざまな実施形態によると、特殊なフロート充電モードは、完全充電まで連続的にまたは繰り返し充電することで、恐らくは、ガス(例えば、水素および/または酸素)が、内部で再結合できるまたは安全に放出できるよりも急速に生じることによって電池を損傷させることになる場合に、電池に対して使用される。水性のニッケル亜鉛電池は、このデュアルモード充電法を活用することができる電池の例である。同様に活用することができる他の電池には、銀亜鉛電池およびニッケル水素電池が含まれる。便宜上、開示されたデュアルモードシステムにおいて使用される電池として、本明細書では、ニッケル亜鉛電池について説明する。しかしながら、他の電池システムが、開示された実施形態によって使用可能であることは理解すべきである。
【0027】
本明細書に開示された実施形態から提供されるさまざまな用途が可能である。電池パックの充電の慎重なメンテナンスを必要とする2つの用途は、定置型バックアップ記憶装置(例えば、無停電電源装置またはUPS)、および、マイクロハイブリッド自動車または他の車両電子システムである。さまざまなマイクロハイブリッド用途において、電池パックは、約12〜48Vの電圧を供給するように要求される。UPS電池は概してより高い電圧をもたらす。双方の用途は、性能および寿命が最大化されるように、電池の充電状態の精確な判断およびメンテナンスを必要とする。
【0028】
さまざまなセンサおよび感知技法を用いて、充電状態および他の電池の状況を判断することができる。いくつかの実施形態では、完全充電または放電に対する定期的な較正によって充電および放電を計数することによって、充電状態は判断される。いくつかのシステムにおいて、直流インピーダンスは、電池パックにおけるセル性能の老朽化および劣化を判定する手段として監視される。
【0029】
本明細書に記載される実施形態は、典型的には、電池パックに言及するが、本開示の大部分が、記載されるように制御された充電状態を有する単電池にも同様に当てはまることは、理解されるべきである。電池パックは、任意の数の(典型的に)同一の電池または個別の電池セルのセットであると理解することができる。当該電池パックは、所望の電圧、容量、または、電力密度を伝達するために、直列、並列、または、その両方の混合で構成可能である。電池パックの構成要素は、個別の電池またはセル、および、電池パック間の電気的接続を提供する相互接続子を含む。再充電可能電池パックは、温度センサおよび/または電圧センサを含有することもでき、ここで電池充電器は充電の終了を検出するのに使用される。電池コントローラは、パック全体の電圧を既定のレベル内に保つのに使用される。
【0030】
UPSのシステム構成要素
図1Aは、電力負荷と一体化した無停電電源装置のブロック図を表す。本図に示されるように、交流電源103は通常、1つまたは複数の電力負荷107にとって必要とされるような電力を提供するように設計された電源装置105のための電力を提供する。このような電力負荷の例は、不可欠なデータ処理および通信機器を含む。電源装置105は、駆動された電力負荷に対して適切なレベルの電流および電圧で電力を提供するように設計または構成される。電源103は、電力負荷にとっての一次電源である。このことは、通常動作では、電力負荷105が電源103からそれら電力負荷105のための電力全てを受けることを意味する。電源は、電気設備(電力グリッド)、発電機などであってよい。
【0031】
交流電源103が予期せぬ(または予期していた)イベントによって利用できなくなることが起こった場合、電池バックアップ電力パック109が電源103の代わりとなり、電源103が利用できなくなった直後にまたはその後すぐに、電力負荷107に対する電力を利用可能にする。いくつかの実装形態において、電池と電力線との間の回路にダイオードが設けられる。バックアップ電池109は、放電時に電池に電荷を伝達するように構成された電池充電器111に接続される。典型的には、電源103が復帰し、かつ、電源装置105および最終的には電力負荷107に対する一次電源としての役割を果たすことができるようになった後に、充電が行われる。電源103が利用可能な時、その電力のほんの一部によって、電池充電器111はバックアップ電池109を適宜完全状態またはフロート状態まで再充電するように利用可能となる場合がある。
【0032】
電池管理論理回路は、典型的には、独立したユニットとしてまたは電源装置105内の回路としてのいずれかで、システムに組み入れられる。電池管理論理回路は、電源装置が完全充電まで急速に充電し、その後、フロート状態に切り換わることを徹底する。
【0033】
マイクロハイブリッド車両のシステム構成要素
図1Bは、電気始動モータ157および車両における他の電力負荷159に電力を提供するための電池パック153およびBMU155を持つ電気システム151を有する車両のブロック図を表す。ある実施形態では、車両はハイブリッドまたはマイクロハイブリッド車両である。ハイブリッド車両は概して、車を推進することができる完全電気駆動装置を有するが、マイクロハイブリッドは有さない。マイクロハイブリッドは、完全ハイブリッドのサブセットである。すなわち、ハイブリッド車両はスタートストップ方式を組み入れ、そして、再生式の制動エネルギーを捕獲可能、かつ、周期モード(充電後、電池が車室内の電力負荷をサポートするために放電する時)において電池を使用可能として、燃料効率を向上させることができる。
【0034】
BMU155および/またはエンジン制御ユニット(ECU)161は、車両の電気システムの局面を制御する。これらのユニットが、放電モード、完全充電モード、および、フロート充電モードで動作する時に電池パック153を制御可能とすることは、特に適切なことである。
【0035】
始動モータ157およびオルタネータ163は、内燃機関(図示せず)と機械的に通信する。電池およびオルタネータは両方ともアース171に接続される。アース171は車両151のシャーシであってよい。オルタネータ163は、エンジンが作動している際、電池パック153を充電し、BMU155および/またはECU161によって特定されるように完全充電モードまたはフロートモードで電池を充電することができる。オルタネータ163は、エンジンが作動している間に、車両電力負荷159に電力供給することもできる。しかしながら、いくつかの状況下で、電池パック153は、エンジンが作動している間に、電力負荷159のいくつかまたは全てに電力供給することができる。ある実施形態では、オルタネータはデジタル制御されたオルタネータである。
【0036】
述べたとおり、マイクロハイブリッド車両または他の車両における電池を使用して、例えば、車両の推進、車両における内燃機関の低温クランキング、および/または、車室内に対する電子的機能性(例えば、ラジオ、ライト、シートヒーター、電気式パワーステアリング、ナビゲーションシステムなど)の電力供給を補助する。この機能性は、総称して、車両電力負荷ブロック159として表される。低温クランキングは、電池パック153により始動モータ157に対して電力供給させることによって実施される。始動モータ157は、内燃機関を回転させることで、エンジンの動作をそれ自体の電力により開始するための電気モータである。始動モータ157は、電池パックから高電流および高電圧の電力供給を受ける。
【0037】
BMU155は、電池パック153からの電圧および温度を入力するものとして考えられる。図示した実施形態では、温度について、サーミスタ165が設けられる。他の箇所でもより詳細に説明するように、BMU155だけで、または、ECU161と併せて、電池パック153が充電されているかどうか、および、充電されている場合、それらが完全充電されているかまたはフロート充電されているかどうかを判断する。このことは、とりわけ、電池パックの電流電圧、電池パックの温度、および、最後に充電されてから電池パックから移った電流(又は充電)量を使用して決定される。ブロック173は、電池内へのおよび電池外への電流に比例した入力をもたらし、充電状態の予測、インピーダンス測定、および/または、充電の監視に使用可能である。
【0038】
ある実施形態では、BMUは「LINバス」によってECUと通信する。「LINバス」は、比較的速度は遅いが、低コストのネットワークを作成するために、自動車メーカによって特に開発されたシリアル単一回線通信プロトコルである。ECUは、エンジンの(オン/オフ)状態、ギアおよびクラッチのかみ合いなどを監視することができる。この情報および/または他の情報を使用して、運転手の意図を判断することができる。ECUはエンジンをオフするかどうかを制御する。ECUは、電池のパラメータ全て、および、連動装置のいずれかが作動しているかどうかをチェックする。例えば、ECUは、シートベルトが締められているかどうか、または、フードラッチがかみ合っていないかどうかを判断するためにチェックする。これらのタイプのスイッチは、車両内、または、恐らくはフード下にいる人のインジケータ、電池の充電状態が低い場合にECUがエンジンをオンにしない状況である。連動装置の状況によってエンジンをオンにすることが禁止されずに、電池が閾値の充電状態未満である場合、ECUはエンジンが電池を充電し続けるように誘導することができる。
【0039】
ある実施形態によると、論理回路および関連するハードウェアは、充電モードおよびフロートモードについて異なる電池充電電圧を印加するように設計または構成される。既述のように、BMUおよび/またはECUは何らかのこのような論理回路を提供することができる。マイクロハイブリッド車両では、ハードウェアはさらに、デジタル制御されたオルタネータを含むことができる。当該オルタネータは、命令されると、充電モードの時は第1の電圧に、フロートモードの時には第2のより低い電圧にニッケル亜鉛電池を充電することができる。ある実施形態では、オルタネータは、少なくとも次の3つの動作モード、無効モード、電池充電モード、および、電池フロートモードを有する。UPS用途では、直流−直流変換器および関連する電源装置によって同じ結果を成し遂げることができる。スイッチを用いることもできる。
【0040】
オルタネータがエンジンに過度の負荷をかける特定の環境では、有利には、オルタネータを作動しないようにし、過度の労力(負荷)なしにエンジンが再び車両の電力負荷に対処することができるまで、電池が車両の電力負荷を維持可能とすることができる。電池が、エンジンが作動している間の電力負荷に電力供給する責任を有する時、エンジンは、電池の充電状態があらかじめ設定されたレベル未満に低下している場合に、この電力供給する責任を再び引き受ける必要がある場合がある。最終的に、理想的には、エンジンに最小の負荷がかけられる時に、エンジンが電池を再充電しなくてはならないようにする。
【0041】
オルタネータは、典型的には、車両内でサポートされる電力負荷に基づくサイズに作られる。例えば、オルタネータは、シートヒーターなどの特徴に応じて50〜200Aを提供するように設計可能である。2012 Ford Focus(登録商標)などのような小型車に対しても、オルタネータは、150Aの電流を供給可能とする必要がある場合があるため、クランキング後、全ての電力負荷をサポートし、かつ、電池を充電するために十分な電流を出力するようなサイズで作られていると思われる。この数値は、電気式パワーステアリングのようなより多くのマイクロハイブリッドの特徴をサポートする電気的特徴が加えられているため増加するであろう。しかしながら、電池周期動作は、さらなる充電要件があることを意味する。場合によっては、電池は、200Aの充電を受容することができるようにしなければならず、それによって、再生式の制動動作からエネルギーを吸収することができる。
【0042】
図1Bが1つの電池パック(パック153)のみを示すことは留意すべきである。図示されるような実施形態において、単一のニッケル亜鉛電池パックが使用される。当該電池パックによって、車室内の電子機器、および、エンジン始動システムへの電力が提供される。これは、例えば、車室内の電子機器に電力供給するためのリチウムイオン電池、および、内燃機関をクランクするための鉛電池といった、2つの異なる電池システムが使用される設計と対照をなすものとなる。本明細書に記載したシステムのさまざまな実装形態は電池機能の全てをもたらすためにニッケル亜鉛電池パックのみを用いるが、ある実施形態は、車両電力負荷のみに電力供給するために、または、エンジンを低温クランクするためにニッケル亜鉛電池パックを用いて、他の用途には独立した電池パックが用いられる。
【0043】
例えば、車室内の電力負荷にはニッケル亜鉛電池パックを用いることができ、低温クランキングには別の電池パックを使用することができる。特定の実施形態では、48ボルトのシステムは、12Vの電池が48Vの電池に連結された2つの電池を使用する。48Vの電池を使用して、車室内の電力負荷をサポートし、かつ、電荷受容性を助ける。このような電池の容量は、約10〜20Ahであってよく、円筒形セルまたは角柱セルを含有することができるニッケル亜鉛電池パックによって満たすことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、BMU、ECU、デジタル制御されるオルタネータ、および/または、制御システム(コントローラと総称する)の他の構成要素は、プロセッサ、チップ、カードもしくはボード、または、これらの組み合わせを含み、これら構成要素は、1つまたは複数の制御機能を果たすための論理回路を含む。コントローラのいくつかの機能は、単一チップ、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能論理装置(PLD)チップもしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、同様の論理回路に組み込み可能である。このような集積回路は、論理機能、制御機能、監視機能および/または充電機能を単一のプログラム可能チップに組み込むことができる。
【0045】
一般に、電池充電および放電遷移を制御するために使用される論理回路は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアにおいて設計または構成可能である。換言すれば、充電および放電回路構成を制御するための命令は、ハードコード化されるか、ソフトウェアとして与えられてよい。命令は「プログラミング」によって与えられると言える。このようなプログラミングは、デジタル信号プロセッサにおいてハードコード化された論理回路を含む任意の形の論理回路、および、ハードウェアとして実装された特定のアルゴリズムを有する他の装置を含むと理解される。プログラミングは、汎用プロセッサにおいて実行可能なソフトウェアまたはファームウェア命令を含むとも理解される。いくつかの実施形態では、電池および電力負荷への電圧の用途を制御するための命令は、コントローラに関連付けられたれたメモリ装置上に記憶されるか、ネットワーク上に提供される。適したメモリ装置の例には、半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどが含まれる。印加された電圧を制御するためのコンピュータプログラムコードは、アセンブリ言語、C、C++、パスカル、フォートランなどの任意の従来のコンピュータ可読プログラミング言語で書き込み可能である。コンパイル済みオブジェクトコードまたはスクリプトは、プログラムで識別されたタスクを行うためにプロセッサによって実行される。
【0046】
電池または電池パックが2つの異なるレベル、完全充電状態およびより低いフロート充電状態で充電されるものとされる実施形態では、コントローラ論理回路は、どの充電状態がその環境(エンジンの状態、電池のSOCなど)では適切であるかを判断し、かつ、判断された充電状態に関連付けられたレベルまでの充電を指図するように設計または構成可能である。
【0047】
フロート電圧までの高速充電
現在、エンジン制御ユニットは、ECUがBMUから受け取るパラメータに基づいて、電池およびエンジン使用量についての決定を行うように設計されている。ECUおよび/またはBMUはこれらの決定を鉛電池に対して適宜行う。しかしながら、鉛電池は、ニッケル亜鉛電池およびある他の電池とは異なる要件を有する。鉛電池は、再充電の速度が遅く、比較的並みの充電状態未満で放電する場合、電荷受容性が劣ることが難点である。
【0048】
鉛電池が定置蓄電(例えば、UPS用途)で使用される時、通常、セル当たりおよそ2.3Vの特定の電圧まで、再充電およびフロート充電双方を行う。主要電源の中断時に完全充電状態が利用可能であるように、電圧は電池において維持される。これは、鉛電池の再充電の速度がかなり遅いため適切である。鉛電池は通常、セル当たり2.5Vの高電圧でも再充電するのに数時間かかる。しかしながら、バックアップ用途では、典型的には、鉛電池がバックアップ電源としての役割を果たした後に再充電することで、長期間の利用が可能である。従って、2.3Vでの充電に関連付けられた低再充電速度は許容できるものである。
【0049】
マイクロハイブリッド車両および他の車両における鉛電池の通常動作は、13.8〜14.8Vの固定電圧での充電およびフロート充電を含む。典型的なBMUアルゴリズムでは14.4Vまで充電し、その後、微小充電を行い、通常動作中は14.4Vを維持するように試みる。この微小充電はフロート充電である。
【0050】
車両が停止すると、電池パックは自動車の電気的機能を持続するが、再始動後に電池を再充電しなければならない。最適な充電状態に達する前に次の停止が生じた場合、電池の充電状態が低下して、その後エンジンをクランクすることができなくなる場合がある。この状況が生じる可能性がある前に、車両のスタートストップ機能性を無効にして、電池が受容可能な充電状態を取り戻すことができるようにしなければならない。換言すると、スタートストップアルゴリズムがエンジンの作動を停止することを別段定めていない事態では、車両の内燃機関は作動し続けるようにしなければならない。このような事態は、交通渋滞および惰行時の停止を含む場合がある。電池を充電するためには、エンジンが作動していなければならない。スタートストップ機能性が連続してより十分に利用可能であるように、急速充電能力を有する電池を用いることは利点となる。ニッケル亜鉛電池は、鉛電池よりかなり速い充電が可能である電池の1つのタイプであり、そのため、エンジンをより頻繁に停止させることが可能となる。
【0051】
定置用途および車両用途双方で直面する別の問題点は、鉛電池による充電受容性が低い場合があることである。双方の用途では、鉛電池を低い充電状態においやる場合がある。電池がいかなる多大な時間でもこのような状態のままである場合、その鉛電極は硫酸鉛を形成する場合があり、これによって、電池が充電を受容する将来的な能力は低下する。
【0052】
多くの点において、ニッケル亜鉛水性電池は鉛電池に比較して有利であり、場合によっては、鉛電池と置き換えられる場合がある。
【0053】
1.ニッケル亜鉛電池は鉛電池よりも早い再充電を行う。UPS用途にとって典型的なニッケル亜鉛電池パックは、2時間で0〜100%の充電状態で(1.9ボルトまで)充電可能である。それに反して、比較対象となる鉛電池は充電に8〜10時間を要する。
【0054】
2.ニッケル亜鉛電池は低い充電状態で劣化しない。ニッケル亜鉛電池は、その性能を劣化させずに完全充電状態の40〜50%で動作可能である。当該ニッケル亜鉛電池は、この低い充電状態で確実にエンジンをクランクすることができる。
【0055】
3.ニッケル亜鉛電池は、車両において、エンジンのクランキングおよび車室内の電子機器への電力供給双方に対して使用可能である。単一のニッケル亜鉛電池パックは双方の目的を満たすことができる。
【0056】
4.ニッケル亜鉛電池は、例えば、約5〜60℃の幅広い温度範囲で良好に機能する。
【0057】
ニッケル亜鉛電池は、一定の定電流電圧充電手順の電圧がユニットセル当たり約1.9〜1.93Vで維持される時、完全放電状態から2時間以内で完全に再充電可能である。残念ながら、この電圧では、ガスの発生速度がガスの再結合速度を超えることになり、それによって、ガスは再封可能通気孔を通って逃げることになるため、完全充電時の定常電流によってセルの寿命が短くなる。このため、ガスが電極間で移送されないようにする堅固なセパレータを使用することになる。より具体的には、セパレータは、酸素が陽極から陰極まで移送されないようにする。さまざまな実施形態では、セパレータはポリオレフィン微細孔構造セパレータである。当該セパレータは、典型的には、亜鉛の樹枝状結晶の陽極内への進入を防ぐために使用される。ニッケル亜鉛電池の例は、2005年4月26日に出願された米国特許出願第11/116,113号、2006年2月1日に出願された米国特許出願第11/346,861号(現在は米国特許第7,550,230号)、および、2012年7月13日に出願された米国特許出願第13/549,322号に記載されている。
【0058】
さまざまな実施形態では、ニッケル亜鉛電池、または、通常の高速充電中にガス発生を同様に受け入れることができる他の電池を含有する電池パックは両方とも、高速充電およびフロート充電双方をサポートして高い充電状態で電池を維持するように動作する。別に定められた完全充電レベル未満の固定電圧レベル(または充電状態レベル)までのフロート充電を行う。完全充電モードの時、電池は完全充電レベルまで充電され、フロート充電モードの時、電池はより低いフロートレベルまでしか充電されない。フロートレベルは、電池が完全充電レベルまで、特に高速で繰り返しまたは連続して充電される場合に生じる可能性のある電池の問題を回避するために選択されてよい。既述のように、これらの問題のうちの1つは、再結合よりも速い速度でのガス発生である。例えば、充電中のニッケル亜鉛電池は、亜鉛電極では水素を、ニッケル電極では酸素を生じさせることができる。完全充電レベルにおいて、これらのガスの生成速度は、当該ガスがセルにおいて再結合できる速度を超える。フロート充電レベルにおいて、当該ガスの生成速度は、当該ガスが再結合できる速度とほぼ同じである(またはそれより小さい)。完全充電レベルおよびフロート充電レベルは典型的には温度関数であり、充電速度の関数であってもよい。
【0059】
ニッケル亜鉛電池に対して(異なるフロート充電および完全充電)デュアルモードに関連付けられたあるパラメータについて下記に示す。これらのパラメータは、完全充電のための固定電圧レベルおよびフロート充電のための異なる固定電圧レベルを含む。完全充電およびフロート充電には適した充電速度も関係している。
【0060】
ECU/BMU動作
既述のように、車両において電池動作のモードを制御するための論理回路は、典型的には、BMU、ECU、および/または、デジタル制御されたオルタネータにおいて実装される。ある実施形態では、制御システムは、速い充電、および、比較的低い電圧レベルで成し遂げられるフロート充電モードを提供する。ある実施形態では、BMUはニッケル亜鉛電池の充電状態を監視し、かつ、その現状を通信リンクを介して車両のECUに報告する。次いで、ECUは、車両の電力負荷に電力供給するために、電池を使用するかオルタネータを使用するかどうかに関して、適切な決定を行うことができる。この文脈において、ECUは、例えば、充電電圧を変更するか、デジタル制御されたオルタネータを無効にするかどうかを判断することができる。
【0061】
いくつかの実装形態では、BMUによって、車両のエンジン制御ユニットにニッケル亜鉛電池パックについての情報が与えられる。当該エンジン制御ユニットは、とりわけ、(1)オルタネータから電池パックに電荷を伝達するか否か、および、(2)モータが停止できるか否かを決定する。決定2は、当該パックにおける電池の充電状態に基づく。基本的に、電池は、車の停止後モータを再始動させるために十分に充電されなければならない。決定1は車両が作動する間になされ、電池充電状態がさらなる充電を要するのに十分低いか判断される。環境によっては、さらなる充電を、フロート充電または完全再充電のどちらかにすることができる。
【0062】
ある実施形態では、マイクロハイブリッド車両の電池パックおよび関連するBMUは、放電、完全充電までの充電、および、フロート充電の少なくとも3つの動作状態またはモードを有するようになる。
【0063】
放電モードにおいて、ニッケル亜鉛電池は、内燃機関が動作しない間、電池が車両電力負荷を駆動する時に完全充電を必要とするポイントまで放電する。例として、内燃機関を低温クランクするために電池を使用すること、および、エンジンがオフ(例えば、エンジンが惰行中遮断される)間車室内の装備品に電力供給することが含まれる。
【0064】
マイクロハイブリッドニッケル亜鉛電池の完全充電を引き起こす状況は、電池が低い充電状態に到達後、内燃機関をオンにすること、および、オルタネータをかみ合わせることを含む。マイクロハイブリッドニッケル亜鉛電池のフロート充電となる状況は、内燃機関を作動させながらオルタネータは車室内の装備品に電力供給することを含む。典型的には、フロート充電がかけられている時、電池は比較的高い充電状態となる。電池が比較的より低い充電状態である時、完全充電が加えられる場合がある。場合によっては、ECUは、完全充電を加えるかフロート充電を加えるかどうかを判断する。電池の充電状態を考慮することに加えて、ECUは、エンジンが加速しているか減速しているかどうかを考慮することができる。加速によって、オルタネータによって伝達されている電流が少なくなる場合がある。そのため、急加速は、電池が比較的低い充電状態にある場合、オルタネータの無効またはフロート充電をもたらす場合がある。典型的には、フロート充電は大電流の流れを必要としない。
【0065】
しかしながら、例えば、加速または坂を上がっている間、内燃機関がほぼピーク容量で動作している時、システムは、電池をフロート充電にしてオルタネータに装備品へ電力供給させるか、オルタネータを無効にして電池に装備品へ電力供給させるかのどちらかとすることができる。後者の選択は、電池が完全に充電されている、または、受容できる充電状態である場合に好ましい場合がある。車両のエンジンが強力に作用しない(小さい加速またはわずかな傾斜)他の状況では、フロート充電の選択が好ましい場合がある。これによって、電池は惰行中エンジンを遮断する適時に備えることができる。これにより、燃料節約できる状況が与えられる。
【0066】
既述のように、ニッケル亜鉛電池は、比較的急速に充電することができ、それによって、起動が求められるさまざまな車両の機能に対する適切な充電状態を維持することができる。さらに、ニッケル亜鉛電池は、車を始動させるのに適した幅広い充電状態を有する。これは、電池が頻繁に車両電力負荷に電力供給するように要求される過度の交通渋滞時に有用である。
【0067】
いくつかの実施形態では、完全充電に達することができるレベルにエンジンの負荷が低下するまで、最適なフロート充電状態未満でフロート充電が実施される。
【0068】
表1は、開示された車両制御システムのある実装形態による状態図を表す。状態(電池動作モード)は、ニッケル亜鉛電池を充電状態にするエンジンのレベルに応じて判断される。放電動作(例えば、低温クランキングまたは車室内の電子機器の駆動)中もしくはその前に、または、BMUによるポーリング後に、充電状態を判断することができる。ある実施形態では、高い充電状態を少なくとも約70%とすることができ、低い充電状態を最大限で約40%とすることができ、中間の充電状態を高い充電状態と低い充電状態との間の状態とする。ある実施形態では、高負荷で動作するエンジンは、その最大容量(例えば、1分当たりの最大電力または回転数)のかなりの割合で動作するエンジンとなる。
【0070】
実例となる実装形態では、BMUまたは他の電池制御論理回路は、最初に、電池パックにおけるニッケル亜鉛電池が中間の充電状態(例えば、60%)まで低下しているかを判断する。BMUはECUに充電状態を通知し、ECUは次いで、電池を充電するかどうか、そして、その場合はどの状態まで充電するのかに関して決定する。代替的には、BMU自体は、電池が充電されるべきかを判断し、任意に充電レベルを判断し、ECUに通知する。ECUは、エンジンの状況を考慮して、電池を指定されたレベル(フロート)まで充電するかどうかを判断する。電池を充電することを決定した場合、ECUは、ニッケル亜鉛電池に適切なレベル(完全またはフロートレベル)で電荷を提供するようにオルタネータに指図する。説明したように、デジタル制御されたオルタネータはこの目的のために使用可能である。当然ながら、他の機構を用いて電池パックへの充電を制御することができる。オルタネータはまた、車室内の装備品に電力供給することができ、それに関する限りでは、ニッケル亜鉛電池はフロートモードまたは完全充電モードである。
【0071】
ある実施形態では、BMUは、定電圧段階における電流レベルを監視することによって、または、正味電荷入力を追跡することによって、電池が完全に充電される時を判断する。電池が完全に充電されていると判断されると、印加された充電電圧を、現行の温度に対して指定されたフロート電圧まで低下させる。例えば、7つのセルの「12ボルト」電池パックは、5Cを超える充電電流(40Ahの電池に対して200Amp)を吸収することができる。目的の充電状態に達すると、電池はより低い電圧(室温で1.82〜1.87V)でフロート充電されて充電状態を維持しながら、オルタネータは同時に車の電子電力負荷をサポートすることができる。電池の充電状態を、完全再充電を必要とするレベルまで低下させる放電イベント後、再び完全充電が行われることになる。このように、2つの電圧レベルを使用することによって、素早い充電および電池の耐用年数の両方ともを最適化することができる。従って、システムは、複数の車両電力負荷を使用可能にする、または、立て続けに生じる複数の停電に対処する準備ができている。
【0072】
例示のプロセスの流れを
図2に図示する。最初に、BMUまたは他の監視要素は、電池の充電状態が完全充電モードに関連付けられた閾値未満であるかを判断する(ブロック203)。次いで、コントローラは、電池を完全に充電するようにオルタネータに指図する(ブロック205)。その後、電池が完全に充電されると、コントローラは、電池をフロート充電して完全充電未満の充電状態になるようにオルタネータに指図する(ブロック207)。そのような様式において、電池は、放電しかつその機能を確実に果たすための準備がしやすい。
【0073】
表1は、エンジンが作動しない時、電池は(表において「該当なし」と示された)低い充電状態とすべきではないことを示している。しかしながら、ある実装形態では、エンジンは作動しないが動作モードであり(例えば、キーが差し込まれオンにされる)、電池は低い充電状態である時、システムがエンジンをオンにして電池の充電状態を高める選択肢を表すという選択肢がある。
【0074】
典型的な実装形態では、BMUは、充電状態の急速な調節を可能にするために、電池の電流または他の性質を連続的にまたは頻繁に監視する。場合によっては、ほぼミリ秒以上の速さで調節を行う。いくつかの実施形態では、BMUは、スケジュールに従って充電状態をポーリングするまたは判断する。
【0075】
UPSの動作
ある実施形態では、UPS電池パックおよび関連するBMUは、放電、完全充電までの充電、および、フロート充電の少なくとも3つの動作状態またはモードを有するものとする。放電モードにおいて、UPSニッケル亜鉛電池は、完全充電を必要とするポイントまで放電する。このモードでは、電池は、通常電源(例えば、
図1Aに示されるような交流電源)が機能停止して電池を至急再充電することができない間の電力を提供するために、放電可能である。UPSニッケル亜鉛電池の完全充電を引き起こすことになる状況は、一次電源がダウンしている間に電力負荷に電力供給するためにニッケル亜鉛電池が放電した後で、当該一次電源を復活させることを含む。UPSニッケル亜鉛電池をフロート充電させることになる状況は、当該電池が完全充電された後、ほぼ100%で電池の充電状態を維持することを含む。UPS用途のためのいくつかの実装形態において、フロート充電を使用して電池を完全充電で保ち、かつ、自己放電に対して補償する。
【0076】
ニッケル亜鉛電池を用いるある実施形態では、システムは、電池の電圧が90〜95%の充電状態を示す可能性があるレベルまで低下する時に、充電器のスイッチを入れる、および、切る。このヒステリシス充電は、停電が生じた時に、最初の充電状態が90〜100%で可変とすることができることを意味する。
【0077】
パラメータ
1.完全充電およびフロート充電されたニッケル亜鉛電池のSOCおよび電圧
【0078】
既述のように、耐用年数を長くして完全充電を維持するために、ニッケル亜鉛電池に印加されたフロート電圧は、ある実施形態では、室温に基づいた温度範囲にわたって約1.8〜1.9Vであってよい。完全充電電圧は、当該温度範囲にわたって約1.8〜1.95Vであってよい。
【0079】
完全充電レベルは温度関数であってよい。一実装形態では、充電レベルは下記の式によって判断される。
V=1.9−0.002*(T−22)
式中、Tは摂氏度である。基本的に、2mVは、摂氏度当たりのセル当たりで変化する。7セル電池に対して、これは、摂氏度当たり14mVとなる。
【0080】
ある実施形態では、フロート電圧はまた、温度逆関数として判断される。しかしながら、フロート充電電圧は、完全充電電圧よりも温度に敏感でない場合がある。
【0082】
マイクロハイブリッド用途に対して、電池の充電速度を、ある実施形態では約5Cまでとすることができる。典型的には、その範囲は約1C〜5Cであってよい。例として、動作時、車両のライト、ラジオ、および、ファンなどの典型的な車両電力負荷を駆動する間、40Ahのセルは約2%ごとに(例えば、約80%〜78%の充電状態で)放電することができる。これは、例えば、45Aの放電レベルで約1分の停止を表す。この充電状態または同様の放電を、約30秒間未満で100Aの再充電によって回復させることができる。
【0083】
当然のことながら、固定電圧で実施された充電は、少なくとも、電圧制御が加えられる充電プログラムの終わりに、電池への電流の流れ、ひいては充電速度を指図することになる。1Cで、室温におけるSOCの0%からSOCの80%(32Ah)までの時間は、充電電圧制限(例えば、1.9V)によって電流が低下する前のおよそ48分である。例えば、1.85V以下のフロート充電に対して、電流は、SOCの50%未満で減少するため、入力電流は(完全充電モードに関しては)同じであってよいが、かなり短時間となる。電流が電圧限界に達した後、電流は1.9Vの容量で観察されるであろうものよりも低い値へとより急速に低下することになる。それは、フロート時の電池への何らかの損傷を防止するこのより低い定常状態の値とされる。
【0085】
水酸化ニッケル電極は、高電力および高エネルギーのニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ならびに、ニッケル亜鉛電池における陽極として使用されている。ニッケル陽極は、概して、電気化学的に活性な酸化ニッケル、水酸化ニッケル、または、オキシ水酸化ニッケル、および、1つまたは複数の添加物を含んで、生成、電子輸送、ぬれ、機械的性質などを促進する。例えば、陽極形成は、水酸化ニッケル粒子、酸化亜鉛粒子、酸化コバルト(CoO)粒子、コバルト金属粒子、ニッケル金属粒子、および、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのチキソトロピー剤を含むことができる。金属ニッケルおよびコバルトを化学的に純水な金属またはその合金として提供することができることは留意されたい。陽極を、これらの物質を含有するペースト、および、高分子過フッ化炭化水素などの結合剤(例えば、テフロン(登録商標))から作ることができる。
【0086】
ある実施形態では、水酸化ニッケル電極は、水酸化ニッケル(および/またはオキシ水酸化ニッケル)、コバルト/コバルト複合粉体、ニッケル粉体、および、結合材を含む。コバルト化合物は、ニッケル電極の伝導性を高めるために含まれている。一実施形態では、ニッケル陽極は、酸化コバルト、水酸化コバルト、および/または、オキシ水酸化コバルトで、任意にそれらが水酸化(またはオキシ水酸化)ニッケル粒子上に被覆されたもののうちの少なくとも1つを含む。
【0087】
ニッケル発泡体マトリックスを使用して、電気活性な酸化ニッケル(例えば、Ni(OH)
2)電極物質をサポートすることができる。発泡体基板の厚さは15〜60ミルであってよい。電気化学的に活性な電極物質および他の電極物質で充填したニッケル発泡体を含む陽極の厚さは、約16〜24ミルに及び、好ましくは、約20ミルの厚さである。一実施形態では、約350g/m
2のニッケル発泡体の密度、および、約16〜18ミルに及ぶ厚さが使用される。
【0088】
ある実施形態では、電池は、非ニッケル陽極(例えば、銀電極または空気電極)を含む。銀亜鉛システムは、陽極として酸化銀を用いて、亜鉛空気システムは、酸化還元生成のために触媒作用を含有するガス拡散電極を用いる。
【0089】
セパレータ
典型的には、セパレータは小さな孔を有するものとする。ある実施形態では、セパレータは複数の層を含む。孔および/または積層構造によって、亜鉛樹枝状結晶は蛇行経路をもたらすことができ、ひいては、樹枝状結晶によって、進入および短絡を効果的に妨げる。好ましくは、孔構造のセパレータは、約1.5〜10、より好ましくは、約2〜5の蛇行度を有する。平均的な孔の直径は、好ましくは、最大で約0.2ミクロン、より好ましくは、約0.02〜0.1ミクロンである。また、孔サイズは、セパレータにおいて完全に均一であるのが好ましい。特定の実施形態では、セパレータは、多孔率が45%、孔サイズが0.1ミクロンの1つの好ましい物質によって、約35〜55%の多孔率を有する。
【0090】
ある実施形態では、セパレータは、亜鉛の進入を阻止するための障壁層、および、イオン電流の流れを可能にする電解質によってセルのぬれを保つためのぬれ層という、少なくとも2つの層(および、場合によっては厳密に2つの層)を含む。これは、隣接する電極層間に単一のセパレータ材のみを用いるニッケルカドミウムセルの一般的なケースではない。
【0091】
セルの性能は、陽極のぬれを保ち、陰極を比較的乾燥させて保つことによって補助することができる。よって、いくつかの実施形態では、障壁層は陰極に隣接して位置し、ぬれ層は陽極に隣接して位置する。この配置は、電解質と陽極との密接を維持することによって、セルの性能を向上させる。
【0092】
他の実施形態では、ぬれ層は、陰極に隣接して置かれ、障壁層は陽極に隣接して置かれる。この配置は、電解質を介した陰極への酸素輸送を促進することによって、陰極における酸素の再結合を補助する。
【0093】
障壁層は、典型的には、微細孔膜である。イオン伝導性を有する任意の微細孔膜を使用することができる。約30〜80パーセントの多孔度で、約0.005〜0.3ミクロンの平均的な孔サイズを有するポリオレフィンが適することが多い。好ましい実施形態では、障壁層は微孔性ポリプロピレンからできている。障壁層は、典型的には、約0.5〜4ミルの厚さ、より好ましくは、約1.5〜4ミルの厚さのものである。
【0094】
ぬれ(またはウィッキング)層は、任意の適したぬれ性セパレータ材から作ることができる。典型的には、ぬれ層は、例えば、約50〜85%の多孔度の比較的高い多孔率を有する。例には、ナイロンベースの物質、ならびに、ぬれ性ポリエチレン、ポリプロピレン、および、セルロースベースの物質といったポリアミド物質が含まれる。1つの特定の物質は、ポリビニルアルコールを含浸させたおよび/または被覆したセルロースである。ある実施形態では、ぬれ層は、約1〜10ミルの厚さ、より好ましくは、約3〜6ミルの厚さである。ぬれ物質として利用可能な別個の物質の例には、NKK VL100(日本、東京都のNKK社製)、Freudenberg FS2213E、Scimat 650/45(英国、スウィンドンのSciMAT社製)、および、Vilene FV4365が含まれる。
【0095】
当技術分野で既知の他のセパレータ材を用いることができる。示されるように、ナイロンベースの物質、微孔性ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)が適していることが非常に多い。実施形態は、選択的に密封セパレータに鑑みてなされる。実質的には、任意のセパレータ材は、本明細書に記載した熱源のうちの1つを適用することによって密封され得る限り作用する。いくつかの実施形態では、異なる溶融点を有するセパレータ材が用いられ、他の実施形態では、ゼリーロールの一端または両端が露出する状況の下で密封しないものと併せて密封するセパレータが用いられる。
【0096】
電極/セパレータ設計における別の考慮事項は、セパレータを、電極および集電体シートとほぼ同じ幅の簡易シートとして提供するかどうか、または、セパレータ層において1つまたは両方の電極を包み込むかどうかということである。後者の例では、セパレータは、電極層を効果的にカプセル化する電極シートのうちの1つにとって「袋」としての役割を果たす。いくつかの実施形態では、セパレータ層において陰極を包むことは、樹枝状結晶形成の防止に役立つ。特定の熱密封の実施形態は、「電極およびセパレータ組立体−ゼリーロール」という名称のセクションに関連してより詳細に後述される。
【0097】
電解質
ニッケル亜鉛セルに関連するある実施形態では、電解質組成は、亜鉛電極における樹枝状結晶形成および他の物質再分配の形を制限する。適した電解質の例は、参照により本明細書に組み込まれている、1993年6月1日付でM.Eisenbergに発行された米国特許第5,215,836号に記載されている。場合によっては、電解質は、(1)アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、(2)可溶性アルカリまたは土類フッ化アルカリ、ならびに、(3)ホウ酸塩、ヒ酸塩、および/または、リン酸塩(例えば、ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、および/または、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム)を含む。1つの特定の実施形態では、電解質は、約4.5〜10当量/リットルの水酸化カリウム、約2〜6当量/リットルのホウ酸またはメタホウ酸ナトリウム、および、約0.01〜1当量のフッ化カリウムを含む。高速の用途に対する特定の好ましい電解質は、約8.5当量/リットルの水酸化物、約4.5当量のホウ酸、および、約0.2当量のフッ化カリウムを含む。
【0098】
実施形態は、Eisenbergの特許に表された電解質組成に制限されない。概して、対象となっている用途に対して規定された基準にかなう電解質組成が満たされることになる。高電力用途が所望されているとすると、電解質は非常に良好な伝導性を有するべきである。長寿命が所望されているとすると、電解質は、樹枝状結晶形成への耐性を有するべきである。本発明において、適切なセパレータ層と共にKOH電解質を含有するホウ酸塩および/またはフッ化物を使用することによって、樹枝状結晶の形成が低減するため、より堅固で寿命の長い電力セルが実現される。
【0099】
特定の実施形態では、電解組成は、約3〜5当量/リットルの水酸化物(例えば、KOH、NaOH、および/または、LiOH)以上を含む。これは、陰極が酸化亜鉛ベースの電極であることを想定している。亜鉛酸カルシウム陰極に対して、電解質形成を交互に行うのが適切である場合がある。一例では、亜鉛酸カルシウムにとって適切な電解質は、次の組成、約15〜25重量%のKOH,約0.5〜5.0重量%のLiOHを有する。
【0100】
さまざまな実施形態によると、電解質は液体およびゲルを含むことができる。ゲル電解質は、オハイオ州クリーブランドのNoveon社から入手可能なCARBOPOL(登録商標)などの増粘剤を含むことができる。好ましい実施形態では、活性電解質材のほんの一部がゲルフォームである。特定の実施形態では、約5〜25重量%の電解質がゲルとして与えられ、ゲル成分は、約1〜2重量%のCARBOPOL(登録商標)を含む。
【0101】
場合によっては、電解質は、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれている、J.PhillipsおよびS.Mohantaによって2006年2月1日に出願された「Electrolyte Composition for Nickel Zinc Batteries」という名称の米国特許第7,550,230号において論じられるような比較的高濃度のリン酸イオンを含有することができる。
【0102】
ある実施形態では、開示された実施形態において使用されるニッケル亜鉛電池は、電解質が「枯渇した」状況で動作するように構成される。このようなセルは、活性電極物質の量との関連で比較的少量の電解質を有し、セルの内部領域に遊離電解液を有する浸水型セルから容易に区別することができる。枯渇した形態のセルは、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2006−0240317号として2005年4月26日に出願された発明の名称を「Nickel Zinc Battery Design」とする米国特許出願第11/116,113号において論じられている。さまざまな理由のために、枯渇した状況でセルを動作させることが所望される場合がある。枯渇したセルは概して、セル電極スタック内の総空隙容量が電解質によって完全に占有されていないものであると理解される。典型的な例では、電解質を充填した後の枯渇したセルの空隙容量は、充填前の総空隙容量の少なくとも約10%であってよい。
【0103】
陰極
ニッケル亜鉛セルに応用されるように、陰極は、後述されるように、界面活性剤が被覆された粒子、腐食防止剤、ぬれ剤といった1つもしくは複数の添加物質と任意に組み合わせた亜鉛または亜鉛酸イオンの、1つまたは複数の電気活性源を含む。電極が製造されると、クーロン容量、活性亜鉛の化学成分、多孔度、蛇行性などの、ある物理的、化学的、および形態学的特徴によって特徴付けられるものとなる。
【0104】
ある実施形態では、電気化学的に活性な亜鉛源は、次の成分:酸化亜鉛、亜鉛酸カルシウム、亜鉛金属、および、さまざまな亜鉛合金のうちの1つまたは複数を含むことができる。これらの物質のいずれかを、製造中に提供することができる、および/または、通常のセル周期中に作り出すことができる。特定の例として、例えば、酸化カルシウムおよび酸化亜鉛を含有するペーストまたはスラリーから生成可能な亜鉛酸カルシウムが考慮される。
【0105】
再充電可能な亜鉛アルカリ電気化学セルの陰極に対する活性物質は、亜鉛金属(または亜鉛合金)粒子を含むことができる。亜鉛合金が用いられる場合、ある実施形態では、ビスマスおよび/またはインジウムを含むことができる。ある実施形態では、活性物質は、約100万分の20(20ppm)までの鉛を含むことができる。この組成要件にかなう市販の亜鉛合金源は、カナダのNoranda社によって提供されるPG101である。一実施形態では、ニッケル亜鉛セルの電気化学的に活性な亜鉛金属成分は、約0.05重量%未満の鉛を含有する。亜鉛の陰極にはスズを使用することもできる。
【0106】
ある実施形態では、亜鉛金属粒子は、スズおよび/または鉛によって被覆可能である。亜鉛粒子、増粘剤および水を含有する混合物に鉛およびスズ塩を添加することによって、亜鉛粒子を被覆することができる。酸化亜鉛、および電極の他の構成成分の存在下において、亜鉛金属を被覆可能である。鉛またはスズを被覆した亜鉛粒子を含有する亜鉛電極は概して、電解質にコバルトが存在する時ガス発生しにくくなる。また、亜鉛伝導性マトリックスが元のままで、貯蔵期間の放電が低減するため、セルの寿命および保存期間が長くなる。本発明の陰極に適した例示の活性物質組成は、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれている、2009年5月18日に出願された、J.Phillipsらによる発明の名称を「Pasted Zinc Electrode for Rechargeable Nickel−Zinc Batteries」とする米国特許出願第12/467,993号にさらに記載されている。
【0107】
亜鉛活性物質は、粉体、粒状組成、繊維などの形で存在してよい。好ましくは、亜鉛電極ペースト形成において用いられる成分のそれぞれは、比較的小さい粒子サイズを有する。これは、粒子が、陽極と陰極との間のセパレータに進入するか損傷させる場合がある可能性を低減させる。
【0108】
特に電気化学的に活性な亜鉛成分(および、他の粒子電極成分)を考慮すると、このような成分は、40または50マイクロメートル以下の粒子サイズを有するのが好ましい。一実施形態では、粒子サイズは約40ミクロン未満、すなわち、平均直径は約40ミクロン未満である。このサイズ形式は、鉛で被覆された亜鉛または酸化亜鉛粒子の場合を含む。ある実施形態では、物質は、主要寸法(例えば、直径または主軸)が約50マイクロメートル以上の粒子のわずか約1%を有することを特徴とすることができる。このような組成は、例えば、亜鉛粒子をふるい分けまたは処理して、より大きい粒子を取り除くことによって提供され得る。ここで挙げられる粒子サイズ形式は、酸化亜鉛および亜鉛合金、ならびに、亜鉛金属粉体に適用されることに留意されたい。
【0109】
電気化学的に活性な亜鉛成分(複数可)に加えて、陰極は、イオン輸送、電子輸送(例えば、伝導性を高める)、ぬれ、多孔度、構造的完全性(例えば、結合)、ガス発生、活性物質可溶性、障壁性質(例えば、電極を離れる亜鉛の量を低減すること)、腐食抑制など、電極内のあるプロセスを促進するまたは当該プロセスに影響を及ぼす1つまたは複数の添加物質を含むことができる。
【0110】
さまざまな有機物質を、結合、拡散の目的で、および/または、セパレータの代用物として、陰極に添加することができる。例には、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースの遊離酸型(HCMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニルアルコール(PVA)、(日本京都府のサンノプコ株式会社から入手可能な)ノプコスパース分散剤などが含まれる。
【0111】
ある実施形態では、PSSおよびPVAなどのポリマー物質は、セパレータに危険をもたらす恐れのある鋭利なまたは大きい粒子を電極において覆う目的で、(被覆とは反対に)ペースト形成物と混合可能である。
【0112】
本明細書において電極組成物を定義する時、概して、製造時に生産される組成(例えば、ペースト、スラリー、または、乾式製造調合物の組成)、および、形成周期中もしくは後、または、携帯用工具に電力供給している間など、セルを使用中に、1つまたは複数の充電−放電周期中もしくは後に得られる可能性がある組成に応用可能であると理解される。
【0113】
本発明の範囲におけるさまざまな陰極組成物は、以下の文献、国際公開第02/39517号パンフレット(J.Phillips)、国際公開第02/039520号パンフレット(J.Phillips)、国際公開第02/30521号パンフレット、国際公開第02/039534号パンフレット(J.Phillips)、および、米国特許出願公開第2002182501号に記載されており、それら文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれている。上記参考文献における陰極添加物は、例えば、さまざまなアルカリ土類金属、遷移金属、重金属、および、貴金属のシリカならびにフッ化物を含む。
【0114】
最終的に、特定の性質を提供するために、多くの物質を陰極に添加することができるが、それらの物質または性質の一部は、陰極以外の電池成分を介して導入可能であることに留意すべきである。例えば、電解質における亜鉛の可溶性を低減するためのある物質を、(陰極にも与えてまたは与えずに)電解質またはセパレータにおいて提供することができる。このような物質の例は、リン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩、亜鉛酸塩、ケイ酸塩、ステアリン酸塩を含む。電解質および/またはセパレータにおいて与えられる可能性のある上記で特定した他の電極添加物は、界面活性剤、インジウムイオン、ビスマス、鉛、スズ、カルシウムなどを含む。
【0115】
例えば、いくつかの実施形態では、陰極は、酸化ビスマス、酸化インジウム、および/または、酸化アルミニウムなどの酸化物を含む。酸化ビスマスおよび酸化インジウムは、亜鉛と相互作用し、かつ、電極におけるガス発生を低減させることができる。酸化ビスマスを、乾式陰極調合物の約1〜10重量%の濃度で提供することができ、酸素の再結合を促進することができる。酸化インジウムは、乾式陰極調合物の約0.05〜1重量%の濃度で存在してよい。酸化アルミニウムを、乾式陰極調合物の約1〜5重量%の濃度で提供することができる。
【0116】
ある実施形態では、1つまたは複数の添加物を含んで、亜鉛電気活性物質の耐食性を向上させることで、長い保存期間を促進することができる。保存期間は、電池セルが商業的に成功するか失敗するかについての決定的事項といえる。電池は、本来、化学的に不安定な装置であることが認識されるため、化学的に有用な形で陰極を含む電池成分を保持するための対策を講じる場合がある。数週間から数か月にわたって使用しないうちに、電極物質がかなりの程度に腐食または劣化すると、保存期間が短いことによってこの価値は限られたものになることを意味する。
【0117】
電解質において亜鉛の可溶性を低減するために含まれる場合がある陰イオンの特定の例は、リン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩、亜鉛酸塩、ケイ酸塩、ステアリン酸塩などを含む。概して、これらの陰イオンは、乾式陰極調合物の約5重量%までの濃度で陰極に存在してよい。少なくとも、これらの陰イオンはセル周期中に溶液に入ることは確実であり、それら陰イオンが亜鉛の可溶性を低減させると考えられる。これらの物質を含む電極調合物の例は、次の特許および特許出願、つまり、Jeffrey Phillipsによる発明の名称を「Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Negative to Zinc Potential」とする、2004年9月28日に発行された米国特許第6,797,433号、Jeffrey Phillipsによる発明の名称を「Negative Electrode Formulation for a Low Toxicity Zinc Electrode Having Additives with Redox Potentials Positive to Zinc Potential」とする2004年12月28日に発行された米国特許第6,835,499号、Jeffrey Phillipsによる発明の名称を「Alkaline Cells Having Low Toxicity Rechargeable Zinc Electrodes」とする2004年11月16日に発行された米国特許第6,818,350号、および、Hallらによって2002年3月15日に出願されたニュージーランド特許第02/00036号(国際公開第02/075830号パンフレット)に含まれ、それら文献のそれぞれは、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれている。
【0118】
陰極に添加された導電繊維は、電極を湿らせるまたはぬれさせる目的を満たすこともできる。界面活性剤が被覆された炭素繊維は、こういった物質の一例である。しかしながら、他の物質を含んでぬれを促進させることができることを理解すべきである。このような物質の例は、酸化チタン、アルミナ、シリカ、アルミナおよびシリカの混合物などを含む。概して、これらの物質は、存在する時、乾式陰極調合物の約10重量%までの濃度で与えられる。このような物質についてのさらなる論述は、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれている、Jeffrey Phillipsによる発明の名称を「Formulation of Zinc Negative Electrode for Rechargeable Cells Having an Alkaline Electrolyte」とする2004年11月2日に発行された米国特許第6,811,926号において見出すことができる。
【0119】
亜鉛陰極は、亜鉛陰極の電気化学的活性成分とニッケル陽極との間の導電的連通を確立する物質を含有する。本発明の発明者は、界面活性剤が被覆された粒子を陰極内へ導入することによって、電極の全体的電流搬送能力、特に、界面活性剤が被覆された炭素粒子が増すことがわかっており、このことは、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれている、Jeffrey Phillipsによる発明の名称を「Carbon Fiber Zinc Negative Electrode」とする2010年8月6日に出願された米国特許出願第12/852,345号に記載されている。
【0120】
既述のように、安定した粘度を有し、亜鉛電極の製作中扱いやすいスラリー/ペーストは、亜鉛陰極を作るために使用可能である。このようなスラリー/ペーストは、鉛塩およびスズ塩を亜鉛粒子、増粘剤、および、例えば、水といった液体を含有する混合物に添加することによって任意に被覆された亜鉛粒子を有する。酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、分散剤、および、テフロン(登録商標)などの結合剤といった構成成分も添加されてよい。この面において適した結合剤には、P.T.F.E.、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、および、HECが含まれるが、これらに制限されない。この面において適した分散剤には、石けん、有機物分散剤、アンモニウム塩分散剤、ワックス分散剤が含まれるが、これらに制限されるものではない。本発明のこの面に合致する市販の分散剤の一例には、Nopcosperse(登録商標)(Nopco Paper Technology Australia Pty. Ltd.から入手可能な分散剤の液体シリーズの商標名)がある。この面に適した液体には、水、アルコール、エーテル、および、それらの混合物があるが、これらに制限されるものではない。
【0121】
セル構成
開示された方法およびシステムは、幅広いニッケル亜鉛セルサイズおよび形態によって実装可能である。例えば、本明細書に提示された実施形態は、角柱セル形態、および、さまざまな据え置き型の用途に対して用いられる、さまざまなより大きい形態の円筒形セルを用いることができる。車両用途に対する容量要件は、角柱電池に指令されてよい。UPS用途に対する要件は、低い時があり、そのため円筒形セルは、場合によっては使用可能である。
【0122】
いくつかの実施形態では、セル容器の内部、または、セルの他の構造成分は、水素再結合を促進するための物質で被覆可能である。水素再結合に触媒作用を及ぼす任意の物質を使用することができる。このような物質の例には酸化銀がある。
【0123】
セルは、概して、自然環境から密封されたものであるが、充電および放電中に電池から発生するガスを放出可能とすることができる。いくつかの実施形態では、ニッケル亜鉛セルは、通気孔を必要とせずに、この圧力さらにはそれ以上の圧力(例えば、約300psiまで)で動作するように設計されている。これにより、セル内部で発生するいずれの酸素および水素でも再結合を促すことができる。ある実施形態では、セルは、内圧を約450psiまで、さらには約600psiまでに維持するように構成されている。他の実施形態では、ニッケル亜鉛セルは、比較的低圧でガスを放出するように設計される。この設計は、水素ガスおよび/または酸素ガスをセル内部で再結合させず、制御された状態での解放を促す場合に適切である場合がある。通気キャップおよび円板、ならびに、キャリア基板自体の構造に関するある程度の詳細については、以下の特許出願に記載されており、これらは、あらゆる目的において参照により本明細書に組み込まれている。2006年4月25日に出願された米国特許出願公開第2006/015807号、および、2004年8月17日に出願された米国特許出願公開第2004/026859号(国際公開第2005/020353号パンフレット)。
【0124】
例示の実装形態
いくつかのマイクロハイブリッドシステムにおいて、電池パックは、7つのニッケル亜鉛電池を有し、他のマイクロハイブリッドシステムにおいて、電池パックは、8つのニッケル亜鉛電池を有する。いくつかの例示の実装形態についての詳細は以下になる。
8セルパック−15.2ボルトまで(より低い温度でより高い、例えば、15.5ボルトまで)充電することができ、多くの車両設計における車室内の電子機器に対して受容される電圧と一致する、13.8ボルトまで(および、いくつかの実装形態では14.8ボルトまで)フロート充電することができる。
7セルパック−(200Aの突入電流を可能にするために短期間ではより高い電圧を受容可能であるが)13.5ボルトまで充電可能であり、12.95ボルトまでフロート充電可能である。
デジタル制御された調整器によってフロート電圧が任意で与えられる。
電池は75〜85%の充電状態で維持される。
オルタネータの出力電圧/電流によって再充電は100〜75Aに制限される。
15Aで20秒間流出後、13Vで4秒以内にSOC80%まで電池を再充電する。
【0127】
他の実施形態
さまざまな実施形態によると、システム(例えば、BMU)がニッケル亜鉛セルに設けられて、このようなセルが、UPSまたはマイクロハイブリッド車両における電池パックの1つまたは複数の機能を満たすことができる。場合によっては、システムは、ニッケル亜鉛セルおよび鉛セルが非常に異なる特性を有していても、それら双方に対して作用する。
【0128】
いくつかの実施形態では、これは、電池タイプ−IDコード、つまり、鉛電池に対して1つのコード、および、ニッケル亜鉛電池に対して別のコードをECUに送ることによって成し遂げられる。ECUは、例えばニッケル亜鉛電池に対して1つのアルゴリズムを、および、例えば鉛電池に対して異なるアルゴリズムを用いることができる。代替的な実施形態では、ECUは、2つまたはそれ以上の電池タイプのうちのそれぞれに対して単一のアルゴリズムを用いる。例えば、ECUは鉛電池に対するアルゴリズムのみを有する。このような場合、BMUは、ECUへ供給する電池パラメータを調節する必要がある場合がある。BMUは、ニッケル亜鉛パラメータのある動作特性をECUに渡す前に修正する。例として、ニッケル亜鉛電池は40%の充電状態を有することができるが、BMUは、ニッケル亜鉛電池が60%の充電状態を有するとECUに知らせる。この例では、鉛電池がSOCの40%を有する場合、ECUは、鉛電池がSOCの60%まで充電されるまでエンジンは停止しないことを必要とすることになる。しかしながら、ニッケル亜鉛電池は、その機能を、SOCの40%で適切に満たすため、ECUアルゴリズムにとって、ECUが理解していない状態で、ニッケル亜鉛電池に対してSOCの40%に基づいて電池を充電することを決定することは、不適当であると思われる。
【0129】
ある実施形態では、BMUは、オルタネータが電池に与えた電圧または電流を修正することができる。これによって、BMUは、過充電、および、異なるタイプの電池によって作用するというECUの仮定から生じる可能性のある他の問題から電池を保護することができる。
【0130】
本発明および本発明の好ましい実施形態について上記で説明してきた。当業者は、本発明を実践する際に多数の修正および変形に想到するであろう。このような修正および変形は、添付の特許請求の範囲において包含される。本明細書において引用した全ての参考文献の全開示は、あらゆる目的において参照により組み込まれている。