(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の非水電解液は、一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを表し、Xは、フッ素原子または炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す)と、一般式(2)であらわされるジニトリル化合物(Rは有機基を表す)を含むところに特徴を有する。一般式(2)であらわされるジニトリル化合物のRは直鎖状もしくは分岐状の2価の脂肪族アルキル基を表すことが好ましい。一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物はLiTFSI等のイミド化合物と比較して分子サイズが小さく、形成されるコンタクトイオンペアのサイズも小さくなると考えられる。またジニトリル化合物はアルカリ金属に配位する部位を一分子に二か所有するため、通常リチウムイオン電池に用いられる溶媒とは異なる配位状態をとると考えられる。このようにフルオロスルホニルイミド化合物(1)をジニトリル化合物(2)とを含む非水電解液中では、アルカリ金属イオンは他のイミド化合物や溶媒の使用時とは異なる配位状態にあると考えられる。一方、炭素系負極へのアルカリ金属イオン挿入時には配位している溶媒やアニオンが脱離するが、通常の電解質塩を用いた場合は、炭素系負極へのアルカリ金属イオンの挿入時に溶媒が脱離せず、共挿入が起こり、炭素系負極の破壊が生じると言われている。そのため、炭素系負極を用いる際には、エチレンカーボネート等の環状カーボネートのSEIを形成する溶媒を併用し、溶媒やアニオンの共挿入を抑制することによって、アルカリ金属イオンの脱挿入を可能としている。本発明の非水電解液は、アルカリ金属イオンが通常のイミド化合物や溶媒とは異なる配位状態にあるため、エチレンカーボネートを必要とすることなく、アルカリ金属イオンを炭素系負極に対して良好に脱挿入でき、良好な容量およびサイクル特性を示すと考えられる。以下、本発明の非水電解液について詳細に説明する。
【0018】
1.非水電解液
1−1.フルオロスルホニルイミド化合物
本発明の非水電解液は、下記一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(フルオロスルホニルイミド化合物(1)と称する場合がある。)を含むものである。
【0020】
一般式(1)中、Xはフッ素原子(F)または炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す。炭素数1〜6のフルオロアルキル基とは、炭素数1〜6のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素で置換されたものである。フルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの内2以上の構造を合わせ持ったものでもよいが、直鎖状、又は分岐状のフルオロアルキル基が好ましく、直鎖状のフルオロアルキル基がより好ましい。具体的なフルオロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子、及び炭素数1〜3のフルオロアルキル基がXとして好ましい。
【0021】
一般式(1)中、Mで表されるアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン,ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンが好ましく、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオンである。
【0022】
具体的なフルオロスルホニルイミド化合物(1)としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのリチウム塩;ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのナトリウム塩;カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのカリウム塩;等が挙げられる。好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであり、より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0023】
本発明の非水電解液には1種のフルオロスルホニルイミド化合物(1)が単独で含まれていてもよく、また、2種以上のフルオロスルホニルイミド化合物(1)が含まれていてもよい。また、フルオロスルホニルイミド化合物(1)は、市販品を使用してもよいし、従来公知の方法により合成した物を用いてもよい。
【0024】
非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.1mol/L以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15mol/L以上であり、さらに好ましくは0.2mol/L以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは10mol/L以下であり、さらに好ましくは8mol/L以下である。非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.1mol/kg以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15mol/kg以上であり、さらに好ましくは0.2mol/kg以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは18mol/kg以下であり、さらに好ましくは16mol/kg以下である。フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が高すぎると電解液の粘度が上昇し電池性能を低下させるおそれがあり、一方フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が低すぎるとリチウムイオン電池中のリチウムイオン濃度が不足し、電池の性能を低下させるおそれがある。
【0025】
1−2.電解質塩
本発明の非水電解液は、フルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含んでいてもよい。他の電解質塩としては、非水電解液二次電池の電解質塩として通常用いられるものを使用することができる。好ましい電解質塩はリチウム塩およびナトリウム塩である。好適なリチウム塩の例は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(Li[C
2O
4]
2B)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF
3SO
2)
2N:LiTFSI)、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド(Li(C
2F
5SO
2)
2N:LiBETI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiC
2O
4BF
2)、ジシアノ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiC
2O
4B(CN)
2)、シアノフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiC
2O
4B(CN)F)、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、テトラフルオロアルミン酸リチウム(LiAlF
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、リチウムジニトラミド(LiN(NO
2)
2)、LiB
12F
12−xH
x、及びこれらの混合物である。好ましいリチウム塩として、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム等が挙げられる。さらに好ましくは、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムである。好適なナトリウム塩としては、ナトリウムイオン二次電池の電解質塩として用いられるナトリウム塩を使用することができる。ナトリウム塩としては、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF
6)、NaPF
3(CF
2CF
3)
3、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF
4)、ビス(オキサラト)ホウ酸ナトリウム(Na[C
2O
4]
2B)、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Na(CF
3SO
2)
2N:NaTFSI)、ナトリウムビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド(Na(C
2F
5SO
2)
2N:NaBETI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸ナトリウム(NaC
2O
4BF
2)、ジシアノ(オキサラト)ホウ酸ナトリウム(NaC
2O
4B(CN)
2)、シアノフルオロ(オキサラト)ホウ酸ナトリウム(NaC
2O
4B(CN)F)などがあげられる。好ましいナトリウム塩としては、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。これらの、他の電解質塩は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
非水電解液中の他の電解質塩の濃度は0.01mol/L以上であるのが好ましく、より好ましくは0.05mol/L以上であり、さらに好ましくは0.1mol/L以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは2mol/L以下であり、さらに好ましくは1.2mol/L以下である。非水電解液中の他の電解質塩の濃度は0.01mol/kg以上であるのが好ましく、より好ましくは0.05mol/kg以上であり、さらに好ましくは0.1mol/kg以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは2mol/kg以下であり、さらに好ましくは1.2mol/kg以下である。非水電解液中の他の電解質塩の濃度が高すぎると非水電解液の粘度が上昇してイオン伝導度が低下する虞がある。一方、他の電解質塩の濃度が低すぎると所望のイオン伝導度が得られ難くなる虞がある。
本発明の非水電解液がフルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含む場合には、フルオロスルホニルイミド化合物(1)と他の電解質塩の合計量100mol%に対して他の電解質塩を1mol%以上含むものであるのが好ましい。より好ましくは2mol%以上であり、さらに好ましくは5mol%以上であり、50mol%以下であるのが好ましく、より好ましくは30mol%以下であり、さらに好ましくは20mol%以下である。非水電解液中の他の電解質塩の含有量が多過ぎると、フルオロスルホニルイミド化合物(1)の特長を阻害するおそれがある。
【0027】
また、本発明の非水電解液がフルオロスルホニルイミド化合物(1)とは異なる他の電解質塩を含む場合には、本発明の非水電解液は、当該非水電解液中に含まれるフルオロスルホニルイミド化合物(1)と他の電解質塩を含む全ての電解質塩の濃度の合計が0.1mol/L以上、飽和濃度以下となる範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは0.2mol/L以上、より一層好ましくは0.3mol/L以上であり、より好ましくは10mol/L以下であり、より一層好ましくは9mol/L以下であり、さらに好ましくは8mol/L以下である。また、例えば、6mol/L以下、5mol/L以下、4mol/L以下の範囲も取り得る。
【0028】
1−3.ジニトリル化合物
本発明のリチウム二次電池用非水電解液において、前記ジニトリル化合物は、下記一般式(2)で表される(以下、ジニトリル化合物(2)と称する場合がある)。
【0030】
上記一般式(2)中、Rは有機基である。有機基は炭素原子を少なくとも1個有する基を意味する。有機基は炭素原子を少なくとも1個有してさえいればよく、また、ハロゲン原子やヘテロ原子等の他の原子や、置換基などを有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル結合を有する基、チオエーテル結合を有する基、エステル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、ジスルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基などが挙げられる。
【0031】
上記有機基は脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部が酸素に置き換わっている、すなわちエーテル結合を含んでいる脂肪族炭化水素基であってもよい。さらには、脂肪族炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子に置換されたハロゲン化脂肪族炭化水素基でもよい。一般式(2)において、Rの炭素数は1から12であることが好ましく、より好ましくは1から8であり、さらに好ましくは1から6である。
【0032】
上記一般式(2)中、Rは直鎖状もしくは分岐状の2価の脂肪族アルキル基であることが好ましい。直鎖状もしくは分岐状の2価の脂肪族アルキル基は、当該脂肪族アルキル基を構成する炭素原子の一部が酸素に置き換わっている、すなわちエーテル結合を含んでいてもよい。
【0033】
一般式(2)において、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族アルキル基は、Rの炭素数は1から12であることが好ましく、より好ましくは1から8であり、さらに好ましくは1から6である。また2価の脂肪族アルキル基はその水素原子の一部がハロゲン原子に置換されたハロゲン化脂肪族アルキル基でもよい。
【0034】
ジニトリル化合物(2)の具体例としては、直鎖状のジニトリル化合物としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン、1,9−ジシアノノナン、1,10−ジシアノデカン、1,12−ジシアノドデカンなどが挙げられる。また、分岐状のジニトリル化合物として、テトラメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、1,5−ジシアノヘプタン、1,7−ジシアノオクタン、1,8−ジシアノノナンなどが挙げられる。好ましくは、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、2−メチルグルタロニトリルであり、より好ましくは、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、2−メチルグルタロニトリル、さらに好ましくは、スクシノニトリル、グルタロニトリル、1,5−ジシアノペンタン、2−メチルグルタロニトリルである。これらは、一種、もしくは2種以上併用して用いることができる。
【0035】
エーテル結合を含んでいる脂肪族炭化水素基を含むジニトリル化合物(2)、あるいは、エーテル結合を有する直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキル基を含むジニトリル化合物(2)の具体例としては、エチレングリコールビス(2‐シアノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(2‐シアノエチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(2‐シアノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2‐シアノエチル)エーテル、1,3‐ビス(2‐シアノエトキシ)プロパン、1,4‐ビス(2‐シアノエトキシ)ブタン、1,5‐ビス(2‐シアノエトキシ)ペンタン等があげられる。これらは、1種、もしくは2種以上併用して用いることができる。また、Rが直鎖状もしくは分岐状の2価の脂肪族アルキル基を有するジニトリル化合物(2)と、Rがエーテル結合を含む直鎖状もしくは分岐状の2価の脂肪族アルキル基を有するジニトリル化合物(2)は併用して用いることができる。
ジニトリル化合物(2)は常温で固体もしくは液体であるため、固体の場合には融点以上の温度で融解させ液体にした状態でフルオロスルホニルイミド化合物(1)等と混合し、溶液とした状態で使用することが好ましい。また、固体の状態で上述のフルオロスルホニルイミド化合物(1)や他の電解質塩と混合した後、融点以上の温度でジニトリル化合物(2)を融解させ、溶液とすることも好ましい形態の一つである。
【0036】
ジニトリル化合物(2)は、本発明の非水電解液中の濃度が10質量%〜95質量%の範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは15質量%〜92質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%の範囲で用いるのが好ましい。また、例えば、30質量%〜95質量%、35質量%〜92質量%、40質量%〜90質量%の範囲も取り得る。ジニトリル化合物(2)の使用量が少なすぎるときには、電解液の粘度が上昇し十分なイオン伝導度が得られず、非水電解液二次電池として十分な性能が得られない。一方、多量にジニトリル化合物(2)を使用すると、電解液中のリチウムイオン濃度が低下し、十分な電池性能が得られない虞がある。
【0037】
1−4.溶媒
本発明の非水電解液は、フルオロスルホニルイミド化合物(1)、ジニトリル化合物(2)の他に溶媒を含んでいてもよい。本発明の非水電解液に用いることのできる溶媒としては、電解質塩(フルオロスルホニルイミド化合物(1)、他の電解質塩)、及び後述する任意で用いられる添加剤を溶解、分散させられるものであれば特に限定されず、有機溶媒に代えて用いられるポリマー、ポリマーゲル等の媒体等、非水電解液二次電池、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知の溶媒はいずれも使用できる。
【0038】
有機溶媒としては、誘電率が大きく、電解質塩、及び任意で用いられる添加剤の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)である。このような有機溶媒としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、2,3−ジメチルエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等のフッ素を含有する環状カーボネート類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリル、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)等のリン酸エステル類;ヘキサメトキシホスファゼン 、ヘキサキス(2,2−ジフルオロエトキシ)ホスファゼン 、ヘキサキス(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ホスファゼン等のホスファゼン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のモノニトリル類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
【0039】
これらの中でも、鎖状カーボネート類、環状カーボネート類等の炭酸エステル類、フッ素を含有する環状カーボネート類、ラクトン類、エーテル類が好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等がより好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等のカーボネート系溶媒がさらに好ましい。上記有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記溶媒は、上記ジニトリル化合物(2)と溶媒の合計量に対して、70vol%以下であることが好ましい。より好ましくは60vol%以下であり、さらに好ましくは50vol%であり、最も好ましくは40vol%である。
【0041】
上記溶媒は、上記ジニトリル化合物(2)と溶媒の合計量に対して、70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%であり、最も好ましくは40質量%である。
【0042】
ポリマーやポリマーゲルを有機溶媒に代えて用いる場合は次の方法を採用すればよい。すなわち、従来公知の方法で成膜したポリマーに、上述の非水系溶媒に電解質塩等を溶解させた溶液を滴下して、電解質塩並びに非水系溶媒を含浸、担持させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩等とを溶融、混合した後、成膜し、ここに非水系溶媒を含浸させる方法;モノマー、電解液及び重合開始剤を混合した溶液を用いて電池を作成後、熱によりモノマー重合する方法、モノマー、電解液、光重合開始剤を混合した溶液を電極シート上に塗工し、UV硬化する方法;(以上、ゲル電解質)、予め電解質塩等を有機溶媒に溶解させた非水電解液とポリマーとを混合した後、これをキャスト法やコーティング法により成膜し、有機溶媒を揮発させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩等とを溶融し、混合して成形する方法(真性ポリマー電解質);等が挙げられる。
【0043】
有機溶媒に代えて用いられるポリマーとしては、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル等)の単独重合体又は共重合体であるポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)等のニトリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ポリマー、及びこれらの共重合体等が挙げられる。またこれらのポリマーは架橋剤によって架橋し、ゲル状であることも好ましい形態の一つである。
【0044】
1−5.添加剤
本発明の非水電解液は、非水電解液二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロパ−1−エンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、トリメチレングリコール硫酸エステル等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩等のリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。これらの中でもビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート、1,3−プロパンスルトンを用いることが好ましい。さらに好ましくはビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等の不飽和結合を有する環状カーボネートである。
【0046】
上記添加剤は、本発明の非水電解液中の濃度が0.1質量%〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは0.2質量%〜8質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜5質量%である。添加剤の使用量が少なすぎるときには、添加剤に由来する効果が得られ難い場合があり、一方、多量に他の添加剤を使用しても、添加量に見合う効果は得られ難く、また、非水電解液の粘度が高くなり伝導率が低下する虞がある。
【0047】
2.非水電解液二次電池
2−1.非水電解液二次電池
本発明の非水電解液を用いる非水電解液二次電池は、正極、負極、セパレーター、電解液、外装材等から構成される。また非水二次電解液電池は本発明の非水電解液を用いる二次電池である。好ましくはリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、非水電解液を用いる金属空気二次電池等であり、より好ましくはリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、さらに好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0048】
2−2.正極
本発明の非水電解液二次電池においては、正極活物質としては、リチウムイオンやナトリウムイオンを吸蔵・放出可能であれば良く、従来公知のリチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池で使用される正極活物質を用いることができる。
リチウムイオン二次電池の活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiNi
1−x−yCo
xMn
yO
2やLiNi
1−x−yCo
xAl
yO
2(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物などの遷移金属酸化物、LiAPO
4(A=Fe、Mn、Ni、Co)などのオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLi
2MnO
3と、電気化学的に活性な層状のLiMO
2(M=Co、Niなどの遷移金属)との固溶体)、LiCo
xMn
1−xO
2(0≦x≦1)、LiNi
xMn
1−xO
2(0≦x≦1)、Li
2APO
4F(A=Fe、Mn、Ni、Co)などのフッ化オリビン構造を有する化合物などを用いることができる。これらを単独で使用してもよく、複数組み合わせて使用してもよい。
【0049】
ナトリウムイオン二次電池の活物質としては、NaNiO
2、NaCoO
2、NaMnO
2、NaVO
2、NaFeO
2、Na(Ni
XMn
1−X)O
2(0<X<1)、Na(Fe
XMn
1−X)O
2(0<X<1)、NaVPO
4F、Na
2FePO
4F、Na
3V
2(PO
4)
3等が挙げられる。
【0050】
正極は、正極活物質、導電助剤及び結着剤等を含む正極合剤が正極集電体に担持されてなるものであり、通常、シート状に成形されている。
【0051】
正極の製造方法は特に限定されないが、例えば、(i)分散用溶媒に正極合剤を溶解又は分散させた正極活物質組成物を正極集電体にドクターブレード法等で塗工したり、正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後、乾燥する方法;(ii)正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;(iii)液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布又は流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。また、必要に応じて乾燥後の正極合剤層を加圧してもよい。これにより正極集電体との接着強度が増し、電極密度も高められる。
【0052】
正極集電体の材料、正極活物質、導電助剤、結着剤、正極活物質組成物に用いられる溶媒(正極合剤を分散または溶解する溶媒)は特に限定されず、従来公知の材料を用いればよい。例えば、特開2014−13704号公報に記載の各材料を用いることができる。
【0053】
正極活物質の使用量は、正極合剤100質量部に対して75質量部以上、99質量部以下とするのが好ましく、より好ましくは85質量部以上であり、さらに好ましくは90質量部以上であり、好ましくは98質量部以下であり、より好ましくは97質量部以下である。
【0054】
導電助剤を用いる場合の、正極合剤中の導電助剤の含有量としては、正極合剤100質量%に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい(より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜10質量%)。導電助剤が少なすぎると、導電性が極端に悪くなり、負荷特性及び放電容量が劣化する虞がある。一方、多すぎると正極合剤層のかさ密度が高くなり、結着剤の含有量をさらに増やす必要があるため好ましくない。
【0055】
結着剤を用いる場合の正極合剤中の結着剤の含有量としては、正極合剤100質量%に対して0.1質量%〜10質量%が好ましい(より好ましくは0.5質量%〜9質量%、さらに好ましくは1質量%〜8質量%)。結着剤が少なすぎると良好な密着性が得られず、正極活物質や導電助剤が集電体から脱離してしまう虞がある。一方、多すぎると内部抵抗の増加を招き電池特性に悪影響を及ぼしてしまう虞がある。
【0056】
導電助剤及び結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視等)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
【0057】
2−3.負極
負極は、負極活物質、結着剤及び必要に応じて導電助剤等を含む負極活物質組成物が負極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0058】
負極活物質としては、非水電解液二次電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、リチウムイオン、ナトリウムイオン等を吸蔵・放出可能なものであればよい。具体的には、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)、石炭,石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料;Li、Na等のアルカリ金属;Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料;Sn合金等のSn系負極材料;リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金等のリチウム系材料;Li
4Ti
5O
12等のチタン系負極を用いることができる。
好ましくは 人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭,石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料等の炭素材料であり、より好ましくは、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料および難黒鉛化炭素であり、さらに好ましくは人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料である。
【0059】
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。なお、薄膜への加工が容易である観点からは、銅が好ましい。
【0060】
2−4.セパレーター
セパレーターは正極と負極とを隔てるように配置されるものである。セパレーターには、特に制限がなく、本発明では、従来公知のセパレーターはいずれも使用することができる。具体的なセパレーターとしては、例えば、非水電解液を吸収・保持し得るポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレーターやセルロース系セパレーターなど)、不織布セパレーター、多孔質金属体等が挙げられる。
上記多孔性シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を有する積層体、セルロース等が挙げられる。
上記不織布セパレーターの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド、ガラス等が挙げられ、非水電解液層に要求される機械的強度等に応じて、上記例示の材質を単独で、又は、混合して用いることができる。
また、非水電解液の有機溶媒の代わりにポリマーやポリマーゲルを用いる(いわゆるポリマー電解質又はゲル電解質)場合には必ずしもセパレーターは必要ではないが、電解質の支持体として上記の多孔性シート、不織布セパレーターをポリマー電解質又はゲル電解質と併用することも可能である。これらセパレーターを併用することにより、ポリマー電解質又はゲル電解質の性能が向上し、電池の性能を向上させることができる。
【0061】
2−5.外装材
正極、負極、セパレーター及び非水電解液等を備えた電池素子は、リチウムイオン二次電池使用時の外部からの衝撃、環境劣化等から電池素子を保護するため電池外装材に収容される。本発明では、電池外装材の素材は特に限定されず従来公知の外装材はいずれも使用することができる。
【0062】
2−6.その他の構成
本発明に係るリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、リチウムイオン二次電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V〜数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0064】
(電解液1)
LiFSI(リチウムビススルホニルイミド、日本触媒製)9.35gに60℃で溶解させたスクシノニトリル(Aldrich社製)を加え、1mol/LのLiFSIのスクシノニトリル溶液(電解液1)を作製した。
【0065】
(電解液2)
LiTFSI(キシダ化学社製)14.35gに60℃で溶解させたスクシノニトリル(Aldrich社製)を加え、1mol/LのLiTFSIのスクシノニトリル溶液(電解液2)を作製した。
【0066】
(電解液3)
電解液1(1mol/LのLiFSI/スクシノニトリル溶液) 1.0gにビニレンカーボネート(VC、キシダ化学社製)22.1mgを添加した。(VC濃度 2wt%)
(サイクリックボルタンメトリー評価)
北斗電工社製オートマチック ポラリゼーションシステムHSV−110を用いてサイクリックボルタンメトリーを測定した。測定には三極セル用い、作用極には市販の天然黒鉛負極、対極及び参照極にはLiを用いた。開始電圧はセルのOCVから開始し、掃引速度10mV/minとし負方向に掃引し、0.05Vに到達すると正方向に2Vまで掃引した。このように0.05Vと2Vの間で2回電位の掃引を行い、リチウムイオンの黒鉛負極への脱挿入試験を行った。
【0067】
実施例1
電解液1を用いて上記のサイクリックボルタンメトリーによるリチウムイオンの天然黒鉛負極への脱挿入試験を行った。結果を
図1に示す。1サイクル目、2サイクル目とも還元波(リチウムの挿入)、酸化波(リチウムの脱離)ともほぼ同じピーク強度であり、リチウムが可逆的に脱挿入されていることがわかる。
【0068】
比較例1
電解液1の代わりに電解液2を用いた以外は実施例1と同様に試験を行った。結果を
図2に示す。1サイクル目、2サイクル目とも還元波のほうが酸化波よりも大きく、不可逆性が確認された。特にリチウムの脱離を示す酸化波は非常に小さく、黒鉛に挿入されたリチウムイオンは少なく、還元波も溶媒の分解等に電流が使用されていることを意味していると考えられる。
【0069】
以上の結果より、LiFSIを電解質として用いた実施例1では天然黒鉛負極に可逆的にリチウムイオンが脱挿入しているのに対し、LiTFSIを電解質として用いた実施例2ではリチウムイオンの天然黒鉛負極への挿入が円滑に進行していないことを確認した。
【0070】
(電池評価−A)
コインセル型リチウムイオン二次電池について、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、25℃にて、充電速度0.5Cでの4.2V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行なった。次いで放電速度0.5Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行って得られた値を測定し、1サイクル目放電容量とした。その後、前述と同条件の充放電を繰り返し行い計5サイクル行い、5サイクル目の放電容量を5サイクル目放電容量とした。
【0071】
実施例2
市販の正極シート(活物質:コバルト酸リチウム)と、市販の負極シート(活物質:天然黒鉛)と、セパレーターとしてガラスフィルター(ワットマン社製 GF/F)を、それぞれ円形(正極φ12mm、負極φ14mm、セパレーターφ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(アルミクラッドSUS304L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))を用いてコインセル型リチウム電池を作製した。具体的には、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、負極、セパレーターをこの順で重ねた後、電解液1をガラスフィルターに含浸させた。次いで、正極活物質層面が負極活物質層面と対向するように正極シートを設置し、その上に正極ケースを重ね、カシメ機でかしめることによりコインセル型リチウムイオン二次電池を組み立てた。得られたコインセル型リチウムイオン二次電池を、上述の電池評価条件(電池評価−A)にて評価を行った。
【0072】
実施例3
電解液1の代わりに電解液3を用いた以外は実施例2と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0073】
比較例2
電解液1の代わりに電解液2を用いた以外は実施例2と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0074】
表1に、電池評価−Aの評価結果をまとめる。実施例2と、比較例2の対比から、フルオロスルホニルイミド化合物であるLiFSIとジニトリル化合物であるスクシノニトリルを組み合わせて用いることにより、高い初期容量が得られることを確認した。また、5サイクル後の容量劣化も抑制できることを確認した。さらに二重結合を有する環状カーボネートであるビニレンカーボネートを併用することにより、電池容量が向上することを確認した。
【0075】
【表1】
【0076】
(電解液4)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)0.56gにグルタロニトリル(東京化成工業社製)を3.0g加え、1mol/kgのLiFSIのグルタロニトリル溶液(電解液4)を作製した。
【0077】
(電解液5)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)0.56gに1,5−ジシアノペンタン(Aldrich社製)を3.0g加え、1mol/kgのLiFSIのピメロニトリル溶液(電解液5)を作製した。
【0078】
(電解液6)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)0.56gに2−メチルグルタロニトリル(東京化成工業社製)を3.0g加え、1mol/kgのLiFSIの2−メチルグルタロニトリル溶液(電解液6)を作製した。
【0079】
(電解液7)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)1.12gに1,5−ジシアノペンタン(Aldrich社製)を3.0g加え、2mol/kgのLiFSIのピメロニトリル溶液(電解液7)を作製した。
【0080】
(電解液8)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)1.12gに2−メチルグルタロニトリル(東京化成工業社製)を3.0g加え、2mol/kgのLiFSIの2−メチルグルタロニトリル溶液(電解液8)を作製した。
【0081】
(電解液9)
LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、日本触媒製)10.3gにサクシノニトリル(Aldrich社製)を3.6g加え、15.3mol/kgのLiFSIのサクシノニトリル溶液(電解液9)を作製した。
【0082】
(電池評価−B)
コインセル型リチウムイオン二次電池について、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、25℃にて、充電速度0.2Cでの4.2V定電流定電圧充電を電流量0.02Cまで行なった。次いで放電速度0.2Cで電圧が3.0Vになるまで放電を行って得られた値を測定し、1サイクル目放電容量とした。その後、前述と同条件の充放電を繰り返し行い計5サイクル行い、5サイクル目の放電容量を5サイクル目放電容量とした。
【0083】
実施例4
市販の正極シート(活物質:コバルト酸リチウム)と、市販の負極シート(活物質:天然黒鉛)と、セパレーターとしてガラスフィルター(ワットマン社製 GF/F)を、それぞれ円形(正極φ12mm、負極φ14mm、セパレーターφ16mm)に打ち抜いた。宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品(正極ケース(アルミクラッドSUS304L製)、負極キャップ(SUS316L製)、スペーサー(1mm厚、SUS316L製)、ウェーブワッシャー(SUS316L製)、ガスケット(ポリプロピレン製))を用いてコインセル型リチウム電池を作製した。具体的には、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、負極、セパレーターをこの順で重ねた後、電解液4をガラスフィルターに含浸させた。次いで、正極活物質層面が負極活物質層面と対向するように正極シートを設置し、その上に正極ケースを重ね、カシメ機でかしめることによりコインセル型リチウムイオン二次電池を組み立てた。得られたコインセル型リチウムイオン二次電池を、上述の電池評価条件(電池評価−B)にて評価を行った。
【0084】
実施例5
電解液4の代わりに電解液5を用いた以外は実施例4と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0085】
実施例6
電解液4の代わりに電解液6を用いた以外は実施例4と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0086】
実施例7
電解液4の代わりに電解液7を用いた以外は実施例4と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0087】
実施例8
電解液4の代わりに電解液8を用いた以外は実施例4と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0088】
実施例9
電解液4の代わりに電解液9を用いた以外は実施例4と同様にしてコインセル型リチウムイオン二次電池を作製し、電池評価を行った。
【0089】
表2に、電池評価−Bの評価結果をまとめる。実施例4から8について、フルオロスルホニルイミド化合物であるLiFSIと、複数のアルキル鎖長のジニトリル化合物を組み合わせて用いた場合でも、高い初期容量が得られることを確認した。また、5サイクル後の容量劣化も抑制できることを確認した。さらに、実施例9に示すように、非常に濃厚なLiFSIのサクシノニトリル溶液を用いても、同様に高い初期容量および優れた容量劣化抑制効果が得られることを確認した。
【0090】
【表2】