(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ソフトシェディング回路は、前記補正対象のチャンネルそれぞれについて、対応する前記補正信号を前記誤差信号側の入力に重畳することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
前記ソフトシェディング回路は、有効なチャンネル数を増加させる際に、新たに有効となるチャンネルについて、デューティ比がゼロから増大するように前記補正信号を重畳することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御回路。
複数のチャンネルそれぞれについて、対応する前記電流検出信号と前記複数のチャンネルの前記電流検出信号の平均値との差分に応じた補償信号を、対応する前記コンパレータの2つの入力のうち少なくとも一方に重畳する電流バランス回路をさらに備え、
少なくともひとつのチャンネルが無効な状態において、前記電流バランス回路は、全チャンネルに電流が流れているものと仮定して動作することにより、前記ソフトシェディング回路として機能することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
前記電流バランス回路を前記ソフトシェディング回路として動作させる際に、無効なチャンネルに対応する電流検出信号が、実際の値とは異なる非ゼロの値にセットもしくは置換されることを特徴とする請求項5に記載の制御回路。
前記複数の重畳回路はそれぞれ、第1端が前記エラーアンプの出力と接続され、第2端が対応する前記コンパレータの入力と接続されるオフセット用抵抗を含み、対応する前記差分電流を、前記オフセット用抵抗の前記第2端にソースする構成および前記オフセット用抵抗の前記第2端からシンクする構成の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の制御回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチチャンネルのDC/DCコンバータは、負荷電流(出力電流)I
LOADに応じて動作させるチャンネル数を増減させるものが存在する(シェディング:Shedding)。
図2は、
図1のDC/DCコンバータのシェディングを説明する図である。ここでは理解の容易化のため、M=4チャンネルのコンバータ900について説明する。DC/DCコンバータ900には、2つのしきい値I
TH1、I
TH2が規定されており、I
LOAD<I
TH1の状態において、第1チャンネルCH1のみ有効(アクティブ、動作状態)となり、I
TH1<I
LOAD<I
TH2の状態において、第1チャンネルCH1および第2チャンネルCH2が有効となり、I
TH2<I
LOADの状態において、全チャンネルCH1〜CH4が有効となる。以下、有効なチャンネルを有効チャンネル、無効なチャンネルを無効チャンネルと称する。
図2のCH1〜CH4には、各チャンネルの理想的なコイル電流量、言い換えれば理想的なスイッチングのデューティ比が一点鎖線で示される。
図2のように、有効チャンネル、無効チャンネルを論理的に切りかえる制御をハードシェディングと称する。ハードシェディングは、負荷応答性に優れるという利点を有するが、本発明者が検討したところ、以下で説明するように出力電圧V
OUTの安定性に欠けることを認識するに至った。
【0006】
図2のCH1〜CH4には、実際のコイル電流量(スイッチングのデューティ比)が一点鎖線で示される。時刻t0において、1チャンネル動作から2チャンネル動作に切りかわる。エラーアンプ912の応答遅れによって、誤差信号V
ERRは実線のように緩やかに変化する。これにより第1チャンネルCH1の電流量は、実線で示す波形となり、ハッチングを付した過剰な電流が出力キャパシタC1に供給される。
【0007】
また、各チャンネルのデューティ比は、共通の誤差信号V
ERRによって規定される。したがって時刻t0における第2チャンネルCH2の電流量は、第1チャンネルCH1と同じ電流量であり、理想的な電流量よりも多くなる。つまり第2チャンネルCH2に関しても、ハッチングを付した過剰な電流が出力キャパシタC1に供給される。
【0008】
つまり、負荷電流I
LOADが増加する際には、各チャンネルにおいてデューティ比が過剰となり、余剰なコイル電流が生成され、出力電圧V
OUTがオーバーシュートする。
【0009】
反対に負荷電流I
LOADが減少する際には、各チャンネルにおいてデューティ比が過小となり、コイル電流が不足し、出力電圧V
OUTがアンダーシュートする。このような問題は昇圧DC/DCコンバータのみでなく、降圧DC/DC(Buck)コンバータ、あるいは昇降圧コンバータにおいても生じうる。
【0010】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、チャンネル数の切りかえにともなう出力電圧V
OUTの変動を抑制したマルチチャンネルDC/DCコンバータおよびその制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、マルチチャンネルのDC/DCコンバータの制御回路に関する。DC/DCコンバータは、チャンネルごとに設けられたスイッチングトランジスタ、インダクタ、整流素子を有する。制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック信号とその目標値の誤差を増幅し、誤差信号を生成するエラーアンプと、複数のチャンネルに対応するピーク電流モードの複数のパルス幅変調器であって、それぞれが、対応するスイッチングトランジスタに流れる電流を示す電流検出信号を誤差信号と比較するコンパレータと、コンパレータの出力に応じてPWM(Pulse Width Modulation)信号をオフレベルに遷移させるロジック回路と、を含む、複数のパルス幅変調器と、複数のチャンネルに対応し、それぞれが、対応するPWM信号に応じて、対応するスイッチングトランジスタを駆動する、複数のドライバと、有効なチャンネル数を切りかえる際に、少なくともひとつのチャンネルを補正対象とし、補正対象のチャンネルそれぞれついて、補正信号を生成し、対応するコンパレータの2つの入力のうち少なくとも一方に補正信号を重畳するソフトシェディング回路と、を備える。
【0012】
この態様によると、チャンネル数の切りかえに際して、デューティ比を補正することにより、オーバーシュートやアンダーシュートなどの出力電圧の変動を抑制するができる。
【0013】
ソフトシェディング回路は、補正対象のチャンネルそれぞれについて、対応する補正信号を誤差信号側の入力に重畳してもよい。これにより、回路の安定性を損なわずに、出力電圧の安定性を高めることができる。
【0014】
ソフトシェディング回路は、有効なチャンネル数を減少させる際に、切りかえ後において無効となるチャンネルについて、デューティ比が時間とともに低下するように、補正信号を重畳してもよい。これによりアンダーシュートを抑制できる。
【0015】
ソフトシェディング回路は、有効なチャンネル数を増加させる際に、新たに有効となるチャンネルについて、デューティ比がゼロから増大するように補正信号を重畳してもよい。これによりオーバーシュートを抑制できる。
【0016】
ある態様の制御回路は、複数のチャンネルそれぞれについて、対応する電流検出信号と複数のチャンネルの電流検出信号の平均値との差分に応じた補償信号を、対応するコンパレータの2つの入力のうち少なくとも一方に重畳する電流バランス回路をさらに備えてもよい。少なくともひとつのチャンネルが無効な状態において、電流バランス回路は、全チャンネルに電流が流れているものと仮定して動作することにより、ソフトシェディング回路として機能してもよい。
これにより、チャンネル間の電流のバランスに保ちながら、出力電圧の変動を抑制できる。
【0017】
電流バランス回路をソフトシェディング回路として動作させる際に、無効なチャンネルに対応する電流検出信号が、実際の値とは異なる非ゼロの値にセットあるいは置換されてもよい。
これにより、電流バランス回路は、仮想的な電流バランスを理想状態として動作することとなり、各チャンネルのデューティ比が好ましい方向に調節される。
【0018】
電流バランス回路を、平均電流を実際の値よりも大きい値とすることで、ソフトシェディング回路として動作させてもよい。
【0019】
電流バランス回路は、複数のチャンネルに対応し、それぞれが、対応する電流検出信号をホールドする、複数のホールド回路を含んでもよい。電流バランス回路をソフトシェディング回路として動作させる際に、無効なチャンネルに対応するホールド回路のホールド値が、非ゼロの値にセットあるいは置換されてもよい。
【0020】
電流バランス回路は、複数のチャンネルに対応し、それぞれが、対応する電流検出信号に応じた個別電流を生成する、複数の個別電流生成回路と、複数のチャンネルの個別電流の平均に相当する平均電流を生成する電流平均化回路と、複数のチャンネルに対応し、それぞれが、対応する個別電流と平均電流との差分電流を生成する、複数の差分電流生成回路と、複数のチャンネルに対応し、それぞれが補償信号として、対応する差分電流に応じたオフセット電圧を対応するコンパレータの2つの入力のうち少なくとも一方に重畳する、複数の重畳回路と、を含んでもよい。
【0021】
複数の重畳回路はそれぞれ、第1端がエラーアンプの出力と接続され、第2端が対応するコンパレータの入力と接続されるオフセット用抵抗を含み、対応する差分電流を、オフセット用抵抗の第2端にソースおよび/またはシンクしてもよい。
【0022】
複数の個別電流生成回路はそれぞれ、対応する電流検出信号を電流信号に変換する電圧/電流変換回路と、電流信号を2系統にコピーし、1系統を電流平均化回路に、1系統を対応する差分電流生成回路に供給する電流分配回路と、を含んでもよい。
【0023】
複数のチャンネルがMであるとき、電流平均化回路は、サイズ比がM:1である入力トランジスタと出力トランジスタを含むカレントミラー回路を含んでもよい。入力トランジスタに複数のチャンネルの個別電流が入力され、出力トランジスタに流れる電流を、平均電流として出力してもよい。
【0024】
本発明の別の態様もまた、制御回路である。この制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック信号とその目標値の誤差を増幅し、誤差信号を生成するエラーアンプと、複数のチャンネルに対応するピーク電流モードの複数のパルス幅変調器であって、それぞれが、対応するスイッチングトランジスタに流れる電流を示す電流検出信号を誤差信号と比較するコンパレータと、コンパレータの出力に応じてPWM(Pulse Width Modulation)信号をオフレベルに遷移させるロジック回路と、を含む、複数のパルス幅変調器と、複数のチャンネルに対応し、それぞれが、対応するPWM信号に応じて、対応するスイッチングトランジスタを駆動する、複数のドライバと、有効なチャンネル数を切りかえるマルチフェーズコントローラと、複数のチャンネルそれぞれについて、対応する電流検出信号と複数のチャンネルの電流検出信号の平均値との差分に応じた補償信号を、対応するコンパレータの2つの入力のうち少なくとも一方に重畳する電流バランス回路と、を備える。少なくともひとつのチャンネルが無効な状態において、電流バランス回路は、全チャンネルに電流が流れているものと仮定して動作する。
【0025】
ある態様において制御回路はひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0026】
本発明の別の態様はDC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは上述のいずれかの制御回路を備える。
【0027】
本発明の別の態様は、システム電源に関する。システム電源は、上述DC/DCコンバータを備えてもよい。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のある態様によれば、チャンネル間の電流バランスを改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0032】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0033】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0034】
図3は、実施の形態に係る制御回路200を備えるDC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は、
図1と同様に、マルチチャンネル、マルチフェーズの昇圧(Boost)コンバータであり、入力ライン102に直流入力電圧V
INを受け、出力ライン104に昇圧された出力電圧V
OUTを発生する。DC/DCコンバータ100は、Mチャンネル(Mは2以上の整数)で構成される。チャンネル数Mは任意であり、2チャンネル、3チャンネル、4チャンネル、6チャンネル、8チャンネル、12チャンネル、16チャンネルなど、DC/DCコンバータ100の用途に応じて決めればよい。
【0035】
DC/DCコンバータ100は、出力回路110および制御回路200を備える。出力回路110は、チャンネルごとに、スイッチングトランジスタM1、インダクタL1、整流素子D1、電流センス抵抗R1を有し、Mチャンネルに共通の出力キャパシタC1および抵抗R11,R12を有する。チャンネルごとの電流センス抵抗R1は、対応するスイッチングトランジスタM1と接地の間に設けられ、その両端間に、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチングトランジスタM1に流れる電流(すなわちコイル電流)に比例した電圧降下が発生する。電流センス抵抗R1の電圧降下は、電流検出信号V
ISとして、対応するCS端子に入力される。
【0036】
制御回路200は、単一の半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。制御回路200は、チャンネルごとに、出力(OUT)端子、電流検出(CS)端子を有する。また制御回路200は、全チャンネルで共通の電圧検出(VS)端子を有する。VS端子には出力電圧V
OUTに応じたフィードバック信号V
FBがフィードバックされる。制御回路200は、フィードバック信号V
FBがその目標値V
REFに近づくように、複数チャンネルCH1〜CHMのスイッチングトランジスタM1
1〜M1
Mを制御する。なお、スイッチングトランジスタM1は制御回路200に集積化されてもよい。また電流センス抵抗R1は制御回路200に集積化されてもよい。
【0037】
制御回路200は、エラーアンプ202、パルス幅変調器204_1〜204_M、ドライバ212_1〜212_M、マルチフェーズコントローラ250、ソフトシェディング回路260を備える。エラーアンプ202は、DC/DCコンバータ100の出力電圧V
OUTに応じたフィードバック信号V
FBとその目標値V
REFの誤差を増幅し、誤差信号V
ERRを生成する。
【0038】
複数のパルス幅変調器204_1〜204_Mは、複数のチャンネルに対応しており、ピーク電流モードの構成を有する。各パルス幅変調器204は、PWMコンパレータ206、ロジック回路208、スロープ補償器210を含む。i番目(1≦i≦M)のチャンネルのPWMコンパレータ206は、対応するスイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1を示す電流検出信号V
ISを誤差信号V
ERRと比較する。ロジック回路208は、PWMコンパレータ206の出力(リセット信号)ICMPに応じてPWM信号をオフレベル(たとえばローレベル)に遷移させる。またロジック回路208は、PWM周期間隔にアサートされるPWMクロック(セット信号)と同期して、PWM信号をオンレベルに遷移させる。スロープ補償器210は、電流検出信号V
ISまたは誤差信号V
ERRの一方に、スロープ電圧V
SLOPEを重畳する。
【0039】
複数のドライバ212_1〜212_Mは、複数のチャンネルCH1〜CHMに対応する。i番目のドライバ212_iは、対応するパルス幅変調器204_iからのPWM信号S
PWMに応じて、対応するスイッチングトランジスタM1_1を駆動する。
【0040】
マルチフェーズコントローラ250は、複数チャンネルCH1〜CHMのうち、有効なチャンネルを、DC/DCコンバータ100や負荷の状態に応じて切りかえる。たとえばマルチフェーズコントローラ250は、DC/DCコンバータ100の負荷電流I
LOADにもとづいてチャンネル数および動作フェーズを制御する。具体的にはマルチフェーズコントローラ250は、負荷電流I
LOADが大きいほど、有効なチャンネル数を増加させる。マルチフェーズコントローラ250は、負荷電流I
LOADを監視してもよいし、外部のマイコンからの制御指令、あるいは出力ライン104に接続される負荷からの制御信号にもとづいて、チャンネル数を変化させてもよい。
【0041】
ソフトシェディング回路260は、マルチフェーズコントローラ250が有効なチャンネル数を切りかえる際に、少なくともひとつのチャンネルを補正チャンネルとし、補正チャンネルに対応するPWMコンパレータ206の2つの入力(非反転入力端子、反転入力端子)のうち少なくとも一方に、補正信号
CORRを重畳する。
【0042】
好ましくはソフトシェディング回路260は、複数のチャンネルCH1〜CHMのうち、補正チャンネルについて、補償信号V
CORRを誤差信号V
ERR側の入力(
図3においてPWMコンパレータ206の反転入力端子側)に重畳する。つまりPWMコンパレータ206_iは、補正信号V
CORRiが重畳された誤差信号V
ERRiを電流検出信号V
ISiと比較し、V
ISi>V
ERRiとなるとICMP信号をアサートする。
【0043】
以上が制御回路200およびそれを備えるDC/DCコンバータ100の構成である。続いてその動作を説明する。本明細書における波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
図4は、
図3のDC/DCコンバータ100のソフトシェディングを説明する図である。ソフトシェディング回路260は、有効なチャンネル数を減少させる際に、切りかえ後において無効となるチャンネルについて、デューティ比が時間とともに減少するように、補正信号V
CORRを重畳する。またソフトシェディング回路260は、有効なチャンネル数を増加させる際に、新たに有効となるチャンネルについて、デューティ比がゼロから増大するように補正信号V
CORRを重畳する。
【0044】
図5(a)、(b)は、
図3のDC/DCコンバータ100において有効なチャンネル数を減少させたときの動作波形図である。
図5(a)と
図5(b)とでは、横軸の時間スケールが異なっている。ここでは理解の容易化、説明の簡潔化のため、2チャンネルから1チャンネルの切りかえを説明する。時刻t0より前に、第1チャンネルCH1、第2チャンネルCH2が有効であり、時刻t0において負荷電流I
LOADがしきい値I
TH1より小さくなると、第2チャンネルCH2が無効に切りかえられる。図中、CH1,CH2は、各チャンネルの電流供給能力を示す。
【0045】
ソフトシェディング回路260によって、第2チャンネルCH2の誤差信号V
ERRに補正信号V
CORR2を重畳することにより、第2チャンネルCH2の実効的な誤差信号V
ERR2がシフトし、スイッチングのデューティ比が補正される。具体的には、切りかえ後において無効となるチャンネルCH2について、デューティ比が時間とともに減少するように、補正信号V
CORR2を重畳する。これにより、時刻t0においてチャンネルCH2をオフするハードシェディングを行った場合に比べて、出力電圧V
OUTのアンダーシュートを抑制できる。
【0046】
なお第1チャンネルCH1についても、誤差信号V
ERRに補正信号V
CORR1を重畳して、実効的な誤差信号V
ERRをシフトさせ、スイッチングのデューティ比が補正してもよい。
【0047】
なお補正信号V
CORR1,V
CORR2の重畳後の誤差信号V
ERR1、V
ERR2が高速すぎると系が不安定となる。そこで、補正信号V
CORR1,V
CORR2は、ある時定数で誤差信号V
ERRに重畳されることが望ましい。
【0048】
図6(a)、(b)は、
図3のDC/DCコンバータ100において有効なチャンネル数を増加させたときの動作波形図である。
図6(a)と
図6(b)とでは、横軸の時間スケールが異なっている。時刻t0より前に、第1チャンネルCH1が有効であり、時刻t0において負荷電流I
LOADがしきい値I
TH1を超えると、第2チャンネルCH2が有効となる。チャンネル数を増加させる場合においては、第2チャンネルCH2の実効的な誤差信号V
ERR2をシフトさせることで、スイッチングのデューティ比が補正される。
【0049】
具体的には、新たに有効となるチャンネルCH2について、デューティ比がゼロから増大するように補正信号V
CORR2が重畳される。これにより、時刻t0においてチャンネルCH2を、誤差信号V
ERRに応じたデューティ比でオンするハードシェディングを行った場合に比べて、出力電圧V
OUTのオーバーシュートを抑制できる。
【0050】
なお第1チャンネルCH1についても、誤差信号V
ERRに補正信号V
CORR1を重畳して、実効的な誤差信号V
ERRをシフトさせ、スイッチングのデューティ比が補正してもよい。
【0051】
以上がDC/DCコンバータ100およびその制御回路200の動作である。この制御回路200によれば、エラーアンプによるフィードバック制御とは別に、それより高速に動作するソフトシェディング回路260を設け、PWMコンパレータ206の入力に補正信号V
CORRを重畳することにより、各チャンネルのデューティ比ひいては電流供給能力を補正し、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制することができる。
【0052】
なお、補正対象とするチャンネルは限定されず、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制できるように定めればよい。同様に、補正チャンネルごとの補正信号V
CORRの量については、オーバーシュートやアンダーシュートが減少するように、あらかじめ決められた値を用いてもよい。あるいは後述する
図7の制御回路200aのように、自動的に変化させてもよい。
【0053】
なおPWMコンパレータ206の反転入力端子(−)側の誤差信号V
ERRに補正信号V
CORRを重畳することと、PWMコンパレータ206の非反転入力端子(+)側の電流検出信号V
ISに逆極性で補正信号V
COMPを重畳することは等価であり、いずれの方式を採用してもよい。ところでソフトシェディング回路260を設けることは、新たな制御系を導入することに他ならないため、DC/DCコンバータ100の安定性に少なからず影響を及ぼす。本発明者が検討したところ、いくつかの回路においては、前者の方(誤差信号V
ERRに重畳)が系の安定性が高まることが確認されている。したがって、補正信号V
CORRを誤差信号V
ERR側に重畳することにより、系の安定性を損なわずに、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制できる。なお、補正信号V
CORRを電流検出信号V
IS側に重畳したからといって必ずしも系の安定性が低下するとは限らず、安定性の低下が問題とならない場合には、補正信号V
CORRを電流検出信号V
IS側に重畳してもよい。
【0054】
本発明は、
図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0055】
図7は、制御回路200の構成例(200a)を示す回路図である。この制御回路200aは、ソフトシェディング回路260としても機能する電流バランス回路220を備える。電流バランス回路220は、複数のチャンネルCH1〜CHMそれぞれについて、対応する電流検出信号V
ISiと、複数のチャンネルCH1〜CHMの電流検出信号V
IS1〜V
ISMの平均値V
AVEとの差分に応じた補償信号V
CMPiを、対応するPWMコンパレータ206_iの2つの入力のうち少なくとも一方に重畳する。
【0056】
好ましくは電流バランス回路220は、複数のチャンネルCH1〜CHMそれぞれについて、補償信号V
CMP1〜V
CMPMを誤差信号V
ERR側の入力(
図3においてPWMコンパレータ206の反転入力端子側)に重畳する。つまりPWMコンパレータ206_iは、補償信号V
CMPiが重畳された誤差信号V
ERRiを電流検出信号V
ISiと比較し、V
ISi>V
ERRiとなるとICMP信号をアサートする。
【0057】
たとえば電流バランス回路220は、複数のチャンネルCH1〜CHMの電流検出信号V
IS1〜V
ISMのピークをサンプリングし、サンプリングされた電流検出信号V
IS1’〜V
ISM’にもとづいて補償信号V
CMP1〜V
CMPMを生成することができる。i番目のチャンネルにおいて電流検出信号V
IS1がピークとなるのは、スイッチングトランジスタM1がターンオフするタイミング、すなわちICMP信号がアサートされるタイミングである。したがってピークをホールドするようにすることで、タイミング信号としてICMP信号あるいはPWM信号を用いることができるため、制御を簡易化できる。
【0058】
電流バランス回路220の基本動作を説明する。
図8(a)、(b)は、
図3のDC/DCコンバータ100の動作波形図である。
図8(a)には、電流バランス回路220を動作させないときの波形が示される。第1チャンネルCH1に着目したとき、
図8(a)に示すように、コイル電流I
L1のピーク値は、全チャンネルのコイル電流のピーク値の平均I
PEAKAVEよりも、偏差δI
1、小さくなっているとする。
【0059】
図8(b)を参照し、電流バランス回路220の動作を説明する。電流バランス回路220は、偏差δI
1に応じた補償信号V
CMP1を生成し、誤差信号V
ERRに重畳する。PWMコンパレータ206は、補正された誤差信号V
ERR1を電流検出信号V
IS1と比較し、V
IS1>V
ERR1となるとICMP信号をアサートし、スイッチングトランジスタM1がターンオフする。電流バランス回路220は、その他のチャンネルCH2〜CHMについても同様の補正を行う。以上が制御回路200の動作である。
【0060】
この制御回路200aによれば、電流バランス回路220によって、各チャンネルCHiのコイル電流I
Liのピークが、全チャンネルCH1〜CHMのコイル電流I
L1〜I
LMのピークの平均値I
PEAKAVEに近づくように補正され、ひいては全チャンネルのコイル電流のピークが一致することとなり、チャンネル間の電流バランスを改善することができる。
【0061】
なおPWMコンパレータ206の反転入力端子(−)側の誤差信号V
ERRに補償信号V
CMPを重畳することと、PWMコンパレータ206の非反転入力端子(+)側の電流検出信号V
ISに逆極性で補償信号V
CMPを重畳することは等価であり、いずれの方式を採用してもよい。ところで電流バランス回路220を設けることは、新たな制御系を導入することに他ならないため、DC/DCコンバータ100の安定性に少なからず影響を及ぼす。本発明者が検討したところ、いくつかの回路においては、前者の方(誤差信号V
ERRに重畳)が系の安定性が高まることが確認されている。したがって、補償信号V
CMPを誤差信号V
ERR側に重畳することにより、系の安定性を損なわずに、電流バランスを改善できる。なお、補償信号V
CMPを電流検出信号V
IS側に重畳したからといって必ずしも系の安定性が低下するとは限らず、安定性の低下が問題とならない場合には、補償信号V
CMPを電流検出信号V
IS側に重畳してもよい。
【0062】
図7の制御回路200aにおいては、電流バランス回路220がソフトシェディング回路260として動作し、補償信号V
CMPが補正信号V
CORRを兼ねることとなる。以下、電流バランス回路220のソフトシェディング回路260としての機能、動作を説明する。
【0063】
電流バランス回路220は、無効チャンネルについて、電流が流れているもの擬制して動作する。はじめにM=2の場合を説明する。つまり、シングルチャンネル動作における実際の電流は、
I
M1=I
LOAD
I
M2=0
である。これを、たとえば、
I
M1=I
LOAD
I
M2=K×I
LOAD
とみなして、電流バランス回路220を動作させる。ただしK>1を満たす。このときの平均電流は、
I
AVE=(1+K)/2×I
LOAD
となる。K>1であるとき、この場合、第1チャンネルCH1については、個別電流I
M1(=I
LOAD)が、平均電流I
AVEより小さいとみなされるため、平均電流に近づくように、つまりデューティ比が増加するように補正信号V
CMP1が生成される。反対に、第2チャンネルCH2については、個別電流I
M1(=K×I
LOAD)が、平均電流I
AVEより大きいとみなされるため、平均電流に近づくように、つまりデューティ比が減少するように補正信号V
CMP2が生成される。
【0064】
M=4の場合は、以下のように動作させればよい。シングルチャンネル動作における実際の電流は、
I
M1=I
LOAD
I
M2=0
I
M3=0
I
M4=0
である。これを、たとえば、
I
M1=I
LOAD
I
M2=K×I
LOAD
I
M3=K×I
LOAD
I
M4=K×I
LOAD
とみなして、電流バランス回路220を動作させる。ただしK>1を満たす。このときの平均電流は、
I
AVE=(1+3K)/4×I
LOAD
となる。第1チャンネルCH1については、個別電流I
M1(=I
LOAD)が、平均電流I
AVEより小さいとみなされるため、平均電流に近づくように、つまりデューティ比が増加するように補正信号V
CMP1が生成される。反対に、第2チャンネルCH2〜第4チャンネルCH4については、個別電流(=K×I
LOAD)が、平均電流I
AVEより大きいとみなされるため、平均電流に近づくように、つまりデューティ比が減少するように補正信号V
CMPが生成される。
【0065】
2チャンネル動作における実際の電流は、
I
M1=I
LOAD/2
I
M2=I
LOAD/2
I
M3=0
I
M4=0
である。これを、たとえば、
I
M1=I
LOAD/2
I
M2=I
LOAD/2
I
M3=K×I
LOAD/2
I
M4=K×I
LOAD/2
とみなして、電流バランス回路220を動作させる。ただしK>1を満たす。このときの平均電流は、
I
AVE=(1+K)/4×I
LOAD
となる。第1チャンネルCH1、第2チャンネルCH2については、個別電流I
M(=I
LOAD/2)が、平均電流I
AVEより小さいとみなされるため、平均電流に近づくように、つまりデューティ比が増加するように補正信号V
CMPが生成される。反対に、第3チャンネルCH3、第4チャンネルCH4については、個別電流(=K×I
LOAD/2)が、平均電流I
AVEより大きいとみなされるため、平均電流に近づくように、つまりデューティ比が減少するように補正信号V
CMPが生成される。
【0066】
図9は、電流バランス回路220によるソフトシェディングを示す波形図である。
図9の前半は、M=2のDC/DCコンバータにおいて、有効チャンネル数を2から1に減少させるときの動作を、後半は、有効チャンネル数を1から2に増加させるときの動作を示す。時刻t0より前は、全チャンネルが有効であり、したがって各チャンネルの電流が、平均電流I
AVEに近づくように電流バランス回路220が動作する。
【0067】
平均電流I
AVEは、簡略化して示している。時刻t0に、負荷電流I
LOADが減少すると、電流バランス回路220が、ソフトシェディング回路260としての動作を開始する。第2チャンネルCH2に関して、実際の電流I
M2よりも大きい仮想的な電流I
M2’が流れるものとして、電流バランス回路220の内部あるいは入力の状態が設定される。これにより実際の平均電流I
AVEよりも大きい仮想的な平均電流I
AVE’にもとづいて電流バランスが行われる。その結果、第2チャンネルCH2に関して、大きな電流I
M2’が平均電流I
AVE’に近づくように動作するため、誤差信号V
ERR2が緩やかに低下していき、その電流I
M2も緩やかに減少していく。第1チャンネルCH1については、電流バランス回路220による電流バランス制御にもとづいて、誤差信号V
ERR1が変化し、電流量I
M1が変化する。
【0068】
時刻t1に、負荷電流I
LOADが増加すると、電流バランス回路220が、再びソフトシェディング回路260としての動作を開始する。具体的には第2チャンネルCH2に関して、仮想的な電流I
M2’の値が、実際の電流I
M2に緩やかに戻され、実際の平均電流I
AVEにもとづく電流バランスに戻る。
【0069】
続いて、電流バランス回路220を、ソフトシェディング回路260として動作させるための構成例を説明する。
図10は、電流バランス回路220の構成例(220a)を示す回路図である。電流バランス回路220aは、複数チャンネルに対応する複数のサンプルホールド回路222_1〜222_Mを備える。i番目のサンプルホールド回路222_iは、対応する電流検出信号V
ISiを、各PWM周期内の所定のタイミングでサンプリングする。たとえば上述のように、コイル電流I
Lのピークを一致させる場合、サンプルホールド回路222_iは、電流検出信号V
ISiのピークにて、サンプリングを行えばよい。サンプリングのタイミングは、対応するチャンネルのICMP信号あるいはPWM信号S
PWMのネガティブエッジを利用して生成することができる。なお、サンプルホールド回路に代えて、トラックホールド回路などを用いてもよい。
【0070】
なお、全チャンネルのコイル電流I
L1〜I
LMのピークを揃えるかわりに、それらのボトムを揃えてもよい。この場合、サンプルホールド回路222_iは、電流検出信号V
ISiのボトムにて、言い換えれば、スイッチングトランジスタM1がターンオンした直後のタイミングでサンプリングを行えばよい。たとえばサンプリングのタイミングは、PWM信号S
PWMのポジティブエッジを利用して生成することができる。
【0071】
電流バランス回路220aは、さらに、複数の個別電流生成回路224_1〜224_M、電流平均化回路226、複数の差分電流生成回路228_1〜228_M、複数の重畳回路230_1〜230_Mを備える。
【0072】
複数の個別電流生成回路224_1〜224_Mは、複数のチャンネルCH1〜CHMに対応する。i番目の個別電流生成回路224_iは、対応する電流検出信号V
ISに応じた個別電流I
iを生成する。電流平均化回路226は、複数のチャンネルCH1〜CHMの個別電流I
1〜I
Mの平均に相当する平均電流I
AVEを生成する。
I
AVE=(I
1+I
2+・・・+I
M)/M
【0073】
複数の差分電流生成回路228_1〜228_Mは、複数のチャンネルCH1〜CHMに対応する。i番目の差分電流生成回路228_iは、対応する個別電流I
iと平均電流I
AVEとの差分電流ΔI
iを生成する。差分電流ΔI
iは、
図5の波形図の電流偏差δI
1に相当する。
【0074】
複数の重畳回路230_1〜230_Mは、複数のチャンネルCH1〜CHMに対応する。i番目の重畳回路230_iは、補償信号V
CMPiとして、対応する差分電流ΔI
iに応じたオフセット電圧V
OFSiを、対応するPWMコンパレータ206の非反転入力端子(+)、反転入力端子(−)のうち少なくとも一方に重畳する。
【0075】
電流バランス回路220aをソフトシェディング回路260として動作させる場合、以下の制御を行うことができる。
【0076】
無効チャンネルの個別電流生成回路224_1〜224_Mへの入力V
IS’を、実際の電流を示すフィードバック信号V
ISとは異なる値にセットされ、あるいは置換されてもよい。たとえばM=2のコンバータにおいてシングルチャンネル動作させる場合、個別電流生成回路224_2の入力に、K×I
LOAD×R
1に相当する電圧(ダミー電圧V
Dという)を与えればよい。
【0077】
図11は、重畳回路230の構成例を示す回路図である。重畳回路230_iは、オフセット用抵抗R21_i、第3キャパシタC21_iを含む。オフセット用抵抗R21は、第1端E1がエラーアンプ202の出力と接続され、第2端E2が、対応するPWMコンパレータ206_iの反転入力端子(−)と接続される。第3キャパシタC21_iは、オフセット用抵抗R21_iと並列に接続される。重畳回路230_iは、対応する差分電流ΔI
iを、オフセット用抵抗R21_iの第2端にソースおよび/またはシンクする。
【0078】
この重畳回路230においては、PWMコンパレータ206の反転入力端子(−)の電圧は、式(1)で与えられる。
V
ERRi=V
ERR+ΔV
OFSi=V
ERR+R
21×ΔI
i …(1)
つまり共通のフィードバック電圧V
ERRに対して、チャンネルごとに独立して、差分電流ΔI
iに比例したオフセット電圧V
OFSiを重畳することができる。すなわち、各チャンネルの差分電流ΔI
iは、もとの誤差信号V
ERRに影響を及ぼさない。
【0079】
またオフセット用抵抗R21の抵抗値に応じて、電流バランスのゲインを調節できる。また第3キャパシタC21の容量に応じて、電流バランスの応答速度を調節できる。また電流バランス回路220をソフトシェディング回路260として動作させる際には、ソフトシェディングの時定数を、キャパシタC21に応じて設定することが可能となる。
【0080】
図12(a)、(b)は、サンプルホールド回路222の構成例を示す回路図である。サンプルホールド回路222の入力端子Piは、CSi端子と接続され、電流検出信号V
ISを受ける。第1スイッチSW31および第2スイッチSW32は、入力端子Piと出力端子Poの間に直列に設けられる。第1キャパシタC31は、第1スイッチSW31および第2スイッチSW32の接続ノードと接続される。第2キャパシタC32は、出力端子Poと接続される。
【0081】
図12(a)において、ソフトシェディング回路260としての動作と関連して、制御回路200は、第2キャパシタC32を、ダミー電圧V
Dに充電する電圧源(あるいは電流源、充電回路)262を備えてもよい。
【0082】
あるいは
図12(b)に示すように、サンプルホールド回路222の後段に、ダミー電圧V
Diとサンプルホールド回路222の出力電圧V
ISi’を選択するセレクタ264を設けてもよい。
【0083】
図13は、
図12のサンプルホールド回路222の動作波形図である。V
LXは、
図3のインダクタL1とスイッチングトランジスタM1の接続ノードの電圧、Vxは第1キャパシタC31の電圧を、Vyは第2キャパシタC32の電圧を示す。第1キャパシタC31および第2キャパシタC32それぞれの容量の比に応じて、サンプルホールド回路222のゲインおよび時定数を設定することができる。つまり第2キャパシタC32の容量が小さいほど、サンプルホールド回路222のゲインは高く、また応答性が速くなるが、高すぎるゲインは、系を不安定にする場合がある。そこで第2キャパシタC32の容量を第1キャパシタC31の容量より大きくすることで、適切なゲイン、時定数を実現できる。
【0084】
図14は、個別電流生成回路224、電流平均化回路226、差分電流生成回路228の構成例を示す回路図である。複数の個別電流生成回路224は同様に構成されるため、第1チャンネルの構成を説明する。個別電流生成回路224_1は、V/I変換回路232および電流分配回路234を含む。V/I変換回路232は、対応する電流検出信号V
IS1を電流信号I
1Cに変換する。V/I変換回路232の構成は特に限定されず、さまざまな公知技術を用いることができる。電流分配回路234は、電流信号I
1Cを2系統にコピーし、1系統の電流I
1Aを電流平均化回路226に、1系統の電流I
1Bを対応する差分電流生成回路228_1に供給する。
【0085】
たとえば電流分配回路234は、V/I変換回路232のトランジスタM41のレプリカM42,M43、V/I変換回路232の抵抗R41のレプリカR42,R43を含んでもよい。トランジスタM41,M42,M43のゲートは共通に接続される。電流分配回路234の構成は特に限定されず、カレントミラー回路を用いることもできる。
【0086】
電流平均化回路226は、カレントミラー回路を含む。カレントミラー回路は、入力トランジスタM50と、複数の出力トランジスタM51〜M5Mを含む。入力トランジスタM50には、複数のチャンネルCH1〜CHMの個別電流I
1A〜I
MAが入力される。入力トランジスタM50と、複数の出力トランジスタM51〜M5Mのサイズは、M:1であり、複数の出力トランジスタM51〜M5Mそれぞれに流れる電流が、平均電流I
AVEとなる。
【0087】
差分電流生成回路228_iは、平均電流I
AVEが流れる配線236と、個別電流I
iBが流れる配線238と、重畳回路230に至る配線240の結線である。配線240には、差分電流ΔI
i=I
AVE−I
iBが流れる。
【0088】
なお、サンプルホールド回路222、個別電流生成回路224、電流平均化回路226、差分電流生成回路228、重畳回路230それぞれの構成は特に限定されず、公知の回路を用いることができる。
【0089】
最後にDC/DCコンバータの例示的な用途を説明する。
図15は、実施の形態に係るDC/DCコンバータを利用したシステム電源のブロック図である。システム電源300は、多系統(この実施の形態では3系統)構成を有しており、系統SYS1〜SYS3ごとに異なる電源電圧V
OUTを発生し、さまざまな負荷に供給可能となっている。
【0090】
システム電源300は、降圧コンバータ、昇圧コンバータ、リニアレギュレータの任意の組み合わせを含みうる。
図15では、第1系統SYS1が降圧コンバータ410であり、第2系統SYS2が昇圧コンバータ420であり、第3系統SYS3はリニアレギュレータ(LDO:Low Drop Output)430である。リニアレギュレータは複数チャンネル分、設けられてもよい。降圧コンバータ410あるいは昇圧コンバータ420は、実施の形態で説明したDC/DCコンバータ100に対応する。
図15では、DC/DCコンバータをシングルチャンネルとして示すが、マルチチャンネルマルチフェーズであってもよい。
【0091】
システム電源300は、パワーマネージメントIC302と、その他の周辺回路部品を含む。パワーマネージメントIC400は、降圧コンバータ410の制御回路200、昇圧コンバータ420の制御回路200、リニアレギュレータ402、インタフェース回路404、シーケンサ406等を含む。そのほかパワーマネージメントIC400には、各種保護回路などが内蔵される。
【0092】
インタフェース回路404は、外部のホストプロセッサとの間で、制御信号やデータを送受信するために設けられる。たとえばインタフェース回路404は、I
2C(Inter IC)バスに準拠してもよい。シーケンサ406は、多系統の電源回路の起動の順序やタイミングを制御する。
【0093】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0094】
(第1変形例)
図10の電流バランス回路220aに関して、サンプルホールド回路222に代えて、電流検出信号V
ISの平均値を生成する平均化回路を設けてもよい。平均化回路としては、ローパスフィルタを用いてもよい。
【0095】
(第2変形例)
実施の形態ではダイオード整流型のDC/DCコンバータを説明したが、同期整流型であってもよい。また昇圧DC/DCコンバータではなく、降圧DC/DCコンバータや、昇降圧DC/DCコンバータにも本発明は適用可能である。この場合、
図3の出力回路110のトポロジーを変更すればよい。
【0096】
(第3変形例)
図3においてコイル電流I
Lの検出方法は特に限定されない。たとえば電流センス抵抗R1に代えて、スイッチングトランジスタM1のオン抵抗を利用してもよい。あるいはスイッチングトランジスタM1に比例した電流が流れるように接続されるスイッチングトランジスタM1のレプリカを設け、レプリカに流れる電流を検出してもよい。
【0097】
(第4変形例)
図16は、第4変形例に係る電流バランス回路220の一部の回路図である。電流バランス回路220は、各チャンネルのダミー電圧V
Dを生成するダミー電圧生成部221をさらに備える。たとえばダミー電圧生成部221は、あるチャンネルCHiが無効となると、緩やかに増加し、無効である期間、一定値を維持し、そのチャンネルCHiが再び有効となると、ゼロに向かって低下するダミー電圧V
Diを生成する。たとえばダミー電圧生成部221は、A/Dコンバータを含んでもよく、ダミー電圧V
Diはデジタル制御されてもよい。
【0098】
個別電流生成回路224の基本構成は、
図14のそれと同様である。この変形例において各チャンネルのV/I変換回路232の演算増幅器233は、2つの非反転入力端子を有し、一方には、対応する電流検出信号V
ISiが入力され、他方には、ダミー電圧V
Diが入力される。3入力の演算増幅器233は、2つの非反転入力端子の電圧のうち高い一方と、反転入力端子の誤差を増幅する。
【0099】
V
Si>V
Diである期間、個別電流生成回路224_iは、電流検出信号V
Siにもとづいて動作する。したがって電流バランス回路220は、本来の電流バランス回路として動作する。V
Si<V
Diである期間、個別電流生成回路224_iは、ダミー電圧V
Diにもとづいて動作する。したがって電流バランス回路220は、ソフトシェディング回路として動作する。この変形例によれば、通常の電流バランス状態とソフトシェディング状態をシームレスに切りかえることが可能である。またホールド回路222やセレクタ264が不要となり、ソフトシェディングをデジタル制御できる。
【0100】
さらなる変形例として、
図16のダミー電圧生成部221は、A/Dコンバータに代えて、キャパシタと、キャパシタを充電してダミー電圧V
Dの上りスロープを生成する電流源と、キャパシタを放電してダミー電圧V
Dの下りスロープを生成する電流源と、を含んでもよい。
【0101】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。