(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂が、前記脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋可能な反応性官能基を有する共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のシート状積層体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、
図1(a)に示すように、剥離シート2の上に、高分子薄膜4を積層してなるシート状積層体10であって、剥離シート2が、基材2aと、当該基材2aにおける高分子薄膜4が位置する側の表面に形成された剥離層2bと、を含むとともに、剥離層2bが、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部に対して、脂肪族ポリイソシアネート化合物を0.01〜40重量部の範囲内で含む剥離剤組成物の硬化物であり、かつ、高分子薄膜4の厚みを5〜1000nmの範囲内の値とすることを特徴とするシート状積層体10である。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0023】
1.剥離シート
本発明における剥離シートは、基材と、当該基材における高分子薄膜が位置する側の表面に形成された剥離層と、を含むことを特徴とする。
以下、基材および剥離層について、それぞれ具体的に説明する。
【0024】
(1)基材
(1)−1 種類
基材の種類としては、耐熱変形性に優れるとともに、所定のフレキシブル性を有し、かつ、剥離層に対して所定の密着性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等を用いることができる。
【0025】
また、特に、ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
この理由は、ポリエステルフィルムであれば、耐熱変形性および剥離層との密着性を効果的に向上させることができるためである。
より具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が好ましく挙げられる。
【0026】
(1)−2 厚み
また、基材の厚みを10〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、基材の厚みが10μm未満の値となると、基材が有する耐熱変形性が十分に支配的にならず、剥離シート全体としての耐熱変形性を向上させることが困難になる場合があるためである。一方、基材の厚みが200μmを超えた値となると、シート状積層体の裁断性が過度に低下したり、フレキシブル性が過度に低下してハンドリング性が低下したりする場合があるためである。
したがって、基材の厚みを15〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0027】
(1)−3 熱伸縮率
また、基材を昇温速度10℃/分で、初期温度設定の30℃から100℃まで昇温した際の、100℃における基材の熱伸縮率(MD方向およびCD方向)を2.00%の以下の値とすることが好ましい。
この理由は、基材の熱伸縮率が2.00%を超えた値となると、剥離シート全体としての耐熱変形性を向上させることが困難になる場合があるためである。一方、基材の熱伸縮率が過度に小さくなると、材料選択の幅が過度に制限されることになる。
したがって、基材を昇温速度10℃/分で、初期温度設定の30℃から100℃まで昇温した際の、100℃における基材の熱伸縮率を−1.00〜1.00%の範囲内の値とすることがより好ましく、−0.50〜0.50%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、熱伸縮率は、縮んだ場合に負の値をとり、伸びた場合に正の値をとるものとして表記する。
また、熱伸縮率の測定方法については、実施例において記載する。
【0028】
(2)剥離層
(2)−1 剥離剤組成物
(i)樹脂
本発明における剥離層を形成するための剥離剤組成物は、樹脂成分としてポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂を含むことを特徴とする。
この理由は、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂、すなわち、下記式(1)で表される構成単位を主要な構成単位として構成される樹脂であれば、高分子薄膜形成用溶液の塗布適性、および、形成された高分子薄膜の剥離性に優れた剥離層を得ることができるためである。
すなわち、表面自由エネルギーを低下させる効果があり、また、高温環境下においても剥離性を損なうことなく維持できるためである。
なお、本発明において「ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂とは、全構成単位のうち、80%以上(重量)の構成単位が下記式(1)で表される構成単位であるポリマーを意味する。
【0030】
また、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂が、後述する脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋可能な反応性官能基を有する共重合体であることが好ましい。
この理由は、優れた剥離性を効果的に保持しつつ、剥離層を基材に対して強固に密着させることができるためである。
すなわち、剥離層の主成分であるポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂を、脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋することで、剥離層を基材に対して強固に密着させることが可能になるが、下記式(2)で表される単一の構成単位からなるポリ(4−メチル−1−ペンテン)樹脂の場合、架橋可能な反応性官能基が存在せず、架橋が困難になるためである。
【0032】
また、脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋可能な反応性官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基およびニトリル基等が挙げられ、特にカルボキシル基や酸無水物基またはこれらの誘導体であることが好ましい。
また、これらの反応性官能基を有する構成単位、すなわちエチレン性不飽和結合含有モノマーとしては、不飽和カルボン酸およびその誘導体(酸無水物、酸アミド、エステル、酸ハロゲン化合物および金属塩)、イミド、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、スチレン系モノマー等が挙げられ、好ましくは不飽和カルボン酸およびその誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物およびエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0033】
また、不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸、商標)、無水ナジック酸およびメチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸、商標)などの不飽和カルボン酸およびその無水物;ならびにメタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミドおよびイミドなどが挙げられ、好ましくは塩化マロニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、アクリル酸、ナジック酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチルおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、より好ましくはアクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸およびメタクリル酸メチルが挙げられる。不飽和カルボン酸およびその誘導体は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび2−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート、10−ウンデセン−1−オール、1−オクテン−3−オール、2−メチロールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノールおよび2−ブテン−1,4−ジオールおよびグリセリンモノアルコールなどが挙げられ、好ましくは10−ウンデセン−1−オール、1−オクテン−3−オール、2−メタノールノルボルネン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2−ブテン−1,4−ジオールおよびグリセリンモノアルコールなどが挙げられ、より好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有エチレン性不飽和化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸のモノまたはジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノ、ジまたはトリグリシジルエステル、テトラコン酸のモノまたはジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸、商標)のモノまたはジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジメチル−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸、商標)のモノまたはジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノまたはジグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,5−エポキシ−1−ヘキセンおよびビニルシクロヘキセンモノオキシドなどが挙げられ、好ましくグリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートが挙げられる。エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、上述したエチレン性不飽和結合含有モノマーのうち、より好ましくは不飽和カルボン酸またはその誘導体であり、特に好ましくは不飽和カルボン酸無水物であり、最も好ましくは無水マレイン酸である。
【0037】
また、脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋可能な反応性官能基を有する構成単位の割合を、全構成単位100重量%に対して0.1〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる構成単位の割合が0.1重量%未満の値となると、架橋密度が過度に低くなって、剥離層を基材に対して強固に密着させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる構成単位の割合が10重量%を超えた値となると、架橋密度が過度に高くなって、高分子薄膜との密着性が過度に高くなり、剥離性が低下する場合があるためである。
したがって、脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋可能な反応性官能基を有する構成単位の割合を、全構成単位100重量%に対して0.3〜7重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜5重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
なお、脂肪族ポリイソシアネート化合物により架橋可能な反応性官能基を有する構成単位以外の構成単位としては、例えば、エチレンおよび4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。
また、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられる。
これらのうち、好ましくは4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数6〜20のα−オレフィンであり、さらに好ましくは炭素原子数8〜20のα−オレフィンである。これらのオレフィンは1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂の融点を150〜199℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる融点が150℃未満の値となると、高分子薄膜を作成する際に加熱工程で融点が低い剥離層が軟化して、高分子薄膜の表面において部分的な混層が発生し、剥離性が低下する場合があるためである。一方、かかる融点が199℃を超えた値となると、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂を溶剤に溶解させることが困難になって、剥離剤組成物を調製することが困難になり、ひいては基材上に剥離層を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂の融点を160〜190℃の範囲内の値とすることがより好ましく、170〜185℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、本発明におけるポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂は、剥離剤組成物の構成材料の一種であることから、溶剤に対して溶解可能であることが必要である。
【0040】
(ii)架橋剤
本発明の剥離層を形成するための剥離剤組成物は、架橋剤として脂肪族ポリイソシアネート化合物を含むことを特徴とする。
この理由は、脂肪族ポリイソシアネート化合物であれば、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂および溶剤との相溶性に優れ、剥離剤組成物中に均一に分散させることができることから、剥離層の表面平滑性を保持しつつ、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂同士を効率よく架橋することができるためである。
これに対し、脂環式ポリイソシアネート化合物や、芳香族ポリイソシアネート化合物を用いた場合、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂および溶剤との相溶性に劣ることから、剥離層内で凝集してしまい、剥離層の表面に剥離力が高い箇所と低い箇所が混在してしまうことによって、剥離安定性が著しく低下しやすくなることが確認されている(比較例5参照)。
【0041】
また、脂肪族ポリイソシアネート化合物とは、直鎖または分岐鎖のみを有するポリイソシアネートであり、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートの誘導体、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
また、脂肪族ポリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート環を形成していることが好ましい。
この理由は、脂肪族ポリイソシアネート化合物同士が結合してイソシアヌレート環を形成することにより、剥離層の凝集力を向上させ、さらに剥離層を基材に対してより強固に密着させることができるためである。
【0043】
また、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量を、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部に対して、0.01〜40重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が0.01重量部未満の値となると、剥離層を基材に対して強固に密着させることが困難になって、高分子薄膜を剥離する際に剥離層において凝集破壊が生じ、剥離性が低下する場合があるためである。一方、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が40重量部を超えた値となると、高分子薄膜との密着性が過度に高くなって剥離力が大きくなり、剥離性が低下する場合があるためである。
したがって、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量を、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部に対して、0.05〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜20重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましく、5〜15重量部の範囲内の値とすることが特に好ましい。
【0044】
次いで、
図2を用いて脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量と、高分子薄膜の剥離性との関係を説明する。
すなわち、
図2には、横軸にポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部に対する脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量(重量部)を採り、左縦軸にポリ乳酸からなる高分子薄膜の剥離力(mN/25mm)を採った特性曲線A、および、右縦軸に剥離層の基材密着性(−)を採った特性曲線Bが示してある。
なお、使用したシート状積層体の詳細、並びに、剥離力および基材密着性の評価方法等については、実施例において記載する。
また、右縦軸における基材密着性は、実施例において記載するように、JIS K5600−5−6:1999の分類0、1、2、3、4、5をそのまま示しており、値が小さくなる程、基材密着性が優れ、値が大きくなる程、基材密着性が劣ることを示す。
また、基材密着性が低いと、高分子薄膜を剥離する際に、剥離層の凝集破壊が生じやすくなるため、基材密着性は剥離性の評価項目の一つとなる。
【0045】
まず、特性曲線Aからは、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が増加するのに伴って、剥離力が増加する傾向が理解される。
より具体的には、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が0重量部の時点では、剥離力が30mN/25mm程度の値であるが、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が30重量部の時点では、実用上の許容範囲である80mN/25mm以下ではあるものの剥離力が50mN/25mm弱まで増加し、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が80重量部の時点では、剥離力が100mN/25mmにまで増加してしまい、実用上の許容範囲外となることが分かる。
【0046】
次いで、特性曲線Bからは、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が増加するのに伴って、基材密着性が向上する傾向が理解される。
より具体的には、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が0重量部の時点では、基材密着性の分類が5であり、実用上の許容範囲である2以下の範囲外であるが、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が10重量部の時点では、基材密着性の分類が1となって実用上の許容範囲内となり、その後も許容範囲内を維持していることが分かる。
なお、基材密着性の分類は、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量が0.01重量部の時点で、2以下の値を採ることが別途確認されている。
【0047】
したがって、特性曲線AおよびBより、剥離力および基材密着性を、共に実用上の許容範囲内となるように安定的に制御するためには、脂肪族ポリイソシアネート化合物の配合量を、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部に対して、0.01〜40重量部の範囲内の値とすべきことが理解される。
【0048】
(iii)溶剤
また、剥離剤組成物は、基材に対して塗布された後、加熱・乾燥により硬化されて剥離層となる。
したがって、剥離剤組成物は、基材に対して塗布可能なように、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂および脂肪族ポリイソシアネート化合物を溶解させるための溶剤を含む。
かかる溶剤の種類としては、トルエン、キシレン、n−ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、オクタン、イソオクタンおよびこれらの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0049】
また、溶剤の配合量としては、剥離剤組成物の固形分が0.1〜10.0重量%の範囲内の値となるように配合することが好ましい。
この理由は、剥離剤組成物の固形分を10.0重量%以下の値とすることで、粘度が上がり過ぎず、剥離剤組成物の基材に対する濡れ性が向上して、塗布適性が維持でき、均一な表面を得ることができるためである。一方、剥離剤組成物の固形分を0.1重量%以上の値とすることで、粘度が下がり過ぎず、基材へのハジキの発生を抑制できるなど塗布適性が維持でき、均一な表面が得られるためである。
したがって、溶剤を、剥離剤組成物の固形分が1.0〜7.5重量%の範囲内の値となるように配合することがより好ましく、2.5〜5.0重量%の範囲内の値となるように配合することがさらに好ましい。
【0050】
(2)−2 厚み
また、剥離層の厚みを10〜1000nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離層の厚みが10nm未満の値となると、剥離層の厚みを均一に制御することが困難になって、剥離性が低下する場合があるためである。一方、剥離層の厚みが1000nmを超えた値となると、結果的に大量の溶剤を使用する必要があり、希釈溶剤を揮発させる際に表面形状が不均一になる場合があるためである。また、剥離層が基材から脱落しやすくなる場合があるためである。
したがって、剥離層の厚みを50〜750nmの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜500nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
(2)−3 表面自由エネルギー
また、剥離シートにおける剥離層表面の表面自由エネルギーを40mJ/m
2以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる表面自由エネルギーが40mJ/m
2を超えた値となると、高分子薄膜と剥離層との間における相互作用が過度に強くなって、剥離シートから剥離する際に高分子薄膜が破れやすくなる場合があるためである。一方、かかる表面自由エネルギーが過度に小さな値となると、剥離層上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際に、ハジキが多くなって優れた塗布適性を得ることが困難になる場合がある。その結果、高分子薄膜の厚みが不均一になり、ひいては剥離シートから剥離する際に高分子薄膜が破れやすくなる場合がある。
したがって、剥離シートにおける剥離層表面の表面自由エネルギーを20〜37mJ/m
2の範囲内の値とすることがより好ましく、23〜34mJ/m
2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、表面自由エネルギーの測定方法については、実施例において記載する。
【0052】
(2)−4 算術平均粗さ
また、剥離シートにおける剥離層表面の算術平均粗さRa(原子間力顕微鏡を用いて、測定領域を10μm×10μmの面領域とし、測定領域以外の項目についてはJIS B0601:2001に準拠して測定)を35nm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる算術平均粗さRaが35nmを超えた値となると、剥離層上に高分子薄膜形成用溶液を塗布する際に、剥離層表面の凹凸に起因して、優れた塗布適性を得ることが困難になる場合があるためである。その結果、高分子薄膜の厚みが不均一になり、ひいては剥離シートから剥離する際に高分子薄膜が破れやすくなる場合があるためである。一方、かかる算術平均粗さRaが過度に小さな値となると、材料選択の幅が過度に制限される場合がある。
したがって、剥離シートにおける剥離層表面の算術平均粗さRaを0.1〜30nmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜25nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、Raの測定方法については、実施例において記載する。
【0053】
(2)−5 熱伸縮率
また、剥離シートを昇温速度10℃/分で、初期温度設定の30℃から100℃まで昇温した際の、100℃における剥離シートの熱伸縮率(基材のMD方向およびCD方向)を2.00%以下の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離シートの熱伸縮率が2.00%を超えた値となると、耐熱変形性が過度に低下して均一な厚みを有する高分子薄膜を安定的に形成することが困難になる場合があるためである。一方、剥離シートの熱伸縮率が過度に小さくなると、基材の材料選択の幅が過度に制限されることになる。
したがって、剥離シートを昇温速度10℃/分で、初期温度設定の30℃から100℃まで昇温した際の、100℃における剥離シートの熱伸縮率を−1.00〜1.00%の範囲内の値とすることがより好ましく、−0.50〜0.50%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、熱伸縮率の測定方法については、実施例において記載する。
【0054】
2.高分子薄膜
(1)材料物質
本発明における高分子薄膜は、非水溶性高分子を含むことが好ましい。
この理由は、本発明における高分子薄膜の主な適用対象物は、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などであり、基本的に生体由来の粘液、汗等をその表面に有していることから、かかる粘液等に含まれる水分によって高分子薄膜が溶解することを防ぐためである。
したがって、本発明における高分子薄膜の材料物質は、非水溶性の高分子薄膜を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知の材料物質を用いることができるが、生体適合性の材料物質を用いることがより好ましい。
また、本発明において高分子薄膜を非水溶性とするにあたり、必ずしもその材料物質が非水溶性である必要はなく、その材料物質を加熱・乾燥や架橋反応、重合等することにより、最終的に非水溶性高分子薄膜が得られるものであればよい。
【0055】
また、具体的な材料物質としては、ポリ乳酸、乳酸共重合体、ポリラクトンおよびラクトン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらの材料物質を含むことにより、より均一な厚みを有する高分子薄膜を、より安定的に得ることができるためである。
【0056】
また、材料物質としてポリ乳酸を用いる場合には、例えば、L−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの両方を含む乳酸の重合体を用いることができる。
また、L−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチド等の乳酸の環状二量体であるラクチドの重合体を用いてもよい。
【0057】
また、材料物質として乳酸共重合体を用いる場合には、乳酸とその他の単量体成分との重合体を用いることができる。
上述したその他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。
また、乳酸共重合体を構成する乳酸とその他の単量体成分とを共重合する際の重量比は乳酸/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
【0058】
また、材料物質としてポリラクトンを用いる場合には、例えば、εカプロラクトン、δブチロラクトン、βメチル−δバレロラクトン、βプロピオラクトン等のラクトンの重合体を用いることができる。
【0059】
また、材料物質としてラクトン共重合体を用いる場合には、例えば、ラクトンとその他の単量体成分との重合体を用いることができる。
上述したその他の単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含む化合物類またはその誘導体;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を有する化合物類またはその誘導体が挙げられる。また、上述した乳酸またはラクチドをその他の単量体成分として用いてもよい。
また、ラクトン共重合体を構成するラクトンとその他の単量体成分とを共重合する際の重量比はラクトン/その他の単量体成分=50/50〜99/1であることが好ましい。
【0060】
また、材料物質としてポリペプチドを用いる場合には、例えば、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグリシン、ポリフェニルアラニン、ポリアラニン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリバリン、ポリプロリン、ポリセリン、ポリスレオニン、ポリチロシン等を用いることができる。
【0061】
また、材料物質として、反対電荷を有する高分子電解質(ポリカチオンおよびポリアニオン)の希薄溶液を交互に塗布することにより、ポリカチオンと、ポリアニオンとが積層された高分子薄膜を形成することもできる。なお、ポリカチオンとポリアニオンとの積層数としては、それぞれ1層を積層した2層の積層体としてもよいが、さらに交互に積層して4層〜20層程度の積層体としてもよい。
かかるポリカチオンとしては、ポリリシン、ポリグルタミン、ポリアスパラギン、ポリアルギニン等が挙げられ、ポリアニオンとしては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等を挙げることができる。
【0062】
また、材料物質の重量平均分子量を10,000〜2,000,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、材料物質の重量平均分子量をかかる範囲内の値とすることにより、より均一な厚みを有する高分子薄膜を、さらに安定的に得ることができるばかりか、高分子薄膜の強度をさらに向上させることができるためである。
すなわち、材料物質の重量平均分子量が10,000未満の値となると、高分子薄膜の強度が不十分となる場合があるためである。一方、材料物質の重量平均分子量が2,000,000を超えた値となると、高分子薄膜の厚みが不均一となる場合があるためである。
したがって、材料物質の重量平均分子量を30,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがより好ましく、50,000〜500,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
また、材料物質は、上述したような重合体ばかりでなく、多官能性単量体であってもよい。
但し、これらの多官能性単量体を用いて高分子薄膜を形成する場合は、多官能性単量体を重合し、あるいは、さらに架橋することが必要になる。
かかる多官能性単量体としては、例えば、アミノ酸や糖類等、分子内にアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基等を複数有する単量体や、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ビスマレイミド等、分子内に複数のビニル基を有する単量体等が挙げられる。
【0064】
(2)厚み
また、高分子薄膜の厚みを5〜1000nmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、高分子薄膜の厚みをかかる範囲内の値とすることにより、高分子薄膜を適用対象としての臓器創傷面や角膜等の生体組織に適用した場合に、膜強度を適度に保ちながら生体組織に対して強固に密着させることができるためである。
すなわち、高分子薄膜の厚みが5nm未満の値となると、膜強度が過度に低下して、適用対象物に対して適用した際に、過度に破断しやすくなる場合があるためである。一方、高分子薄膜の厚みが1000nmを超えた値となると、適用対象物に対する密着性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、高分子薄膜の厚みを10〜700nmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜400nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
(3)機能性物質による修飾
また、高分子薄膜の表面を、機能性物質により修飾することも好ましい。
ここで、「機能性物質」とは、細胞膜上にある認識タンパク質やそのリガンド、抗原や抗体など分子認識能を有する物質や、触媒や酵素など特定の反応を促進する物質、抗酸化剤やラジカル消去剤など特定の反応に関与する物質、あるいはカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、マレイミド基など電荷や反応に関与する基や配位子などを意味する。
また、高分子電解質の電荷(静電相互作用)を利用して機能を発現させる物質も機能性物質に含まれる。
例えば、機能性物質としては、ポリエチレングリコールや糖鎖のような高分子化合物、タンパク質、ペプチド、糖鎖、ビオチン誘導体、ポリカチオンおよびポリアニオンの高分子電解質からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられるが、これらに何ら限定されるものではない。
【0066】
また、機能性物質の結合法としては、化学的あるいは物理的に結合させる方法がある。
まず、化学的に結合させる方法としては、高分子薄膜を構成する重合体等に導入されたアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基、シアヌル基、ビニル基に対して、結合し得る官能基を介して結合させることができる。
例えば、機能性物質と高分子薄膜との結合反応として、ヒドロキシル基やアミノ基と、イソシアネート基との反応によるウレタン結合やユリア結合、アミノ基と、アルデヒド基との反応によるシッフ塩基の形成、メルカプト基同士のジスルフィド結合、メルカプト基と、ピリジルジスルフィド基やマレイミド基との反応やカルボニル基と、スクシンイミド基との反応等を利用することができる。
【0067】
また、物理的に結合させる方法としては、機能性物質側と高分子薄膜側との静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合あるいは分子間力などを用いることができる。
あるいは、高分子薄膜側または機能性物質側にリガンドを導入させておき、機能性物質側または高分子薄膜側に導入されたアクセプターとのコンプレックスを利用して機能性物質を高分子薄膜上に固定することができる。
具体的な組み合わせとしては、ビオチンとアビジン、糖鎖とレクチン、抗原と抗体、薬物とレセプター、酵素と基質などが挙げられる。
また、酵素としては、カタラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、キモトリプシン、チトクローム、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、ガラクトシダーゼ、グリコセレブロシダーゼ、血液凝固因子、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、イソメラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、グルタミナーゼ、β−グルカナーゼ、セリンプロテアーゼ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
3.水溶性高分子膜
また、
図1(b)や
図3(a)に示すように、本発明のシート状積層体を構成するにあたり、高分子薄膜4における剥離シート2とは反対側の面に、水溶性高分子膜6(6a、6b)を積層してなるシート状積層体10´(10a´、10b´)とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、所定の機能を有する水溶性機能性膜6aとして、高分子薄膜4の適用部において臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の機能を付与することができるほか、高分子薄膜4を支持する水溶性高分子支持膜6bとして、高分子薄膜4を積層させた状態で、ピンセット等により剥離シート2から剥離し、適用対象物50にそのまま適用することができるためである。
また、高分子薄膜4が剥離シート2および水溶性高分子膜6(6a、6b)によって両側から挟持されているため、使用前の段階において、高分子薄膜4を安定的に保護することができる。
【0069】
ここで、
図3(a)〜(d)を用いて、水溶性高分子膜6としての水溶性高分子支持膜6bを有するシート状積層体10b´の使用態様を説明する。
すなわち、
図3(a)に示す態様のシート状積層体10b´であれば、
図3(b)に示すように、ピンセット等によって、剥離シート2から高分子薄膜4および水溶性高分子支持膜6bを剥離した後、
図3(c)に示すように、高分子薄膜4および水溶性高分子支持膜6bの積層体8を、高分子薄膜4が適用対象物50に対して直接接触するように載置することができる。
そして、
図3(c)に示すように、高分子薄膜4および水溶性高分子支持膜6bの積層体8に対して、例えば、生理食塩水12を加え、水溶性高分子支持膜6bを溶解することで、
図3(d)に示すように、適用対象物50に対して高分子薄膜4を効率的に適用することができる。
なお、水溶性機能性膜と、水溶性高分子支持膜と、は必ずしも別のものである必要は無く、これらの両方の機能を備えた水溶性高分子膜であってもよい。
【0070】
(1)材料物質
また、水溶性高分子薄膜の材料物質は、水溶性機能性膜の場合であれば、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を有することが好ましい。
この理由は、特定の機能を有する水溶性機能性膜であれば、高分子薄膜の適用面に対して直接的に接触し、容易かつ効果的に当該機能を付与することができるためである。
一方、水溶性高分子支持膜の場合であれば、高分子薄膜を支持すると共に、速やかに水に溶解する性質を有することが好ましい。
この理由は、
図3(a)に示す態様のシート状積層体は、剥離シートから高分子薄膜および水溶性高分子支持膜の積層体を剥離し、水溶性高分子支持膜によって補強された状態の高分子薄膜を、そのまま適用対象物に対して適用し、水溶性高分子支持膜は水に溶解させて除去することを主な使用態様としているためである。
したがって、適用対象物にそのまま水溶性高分子支持膜が残留すると、高分子薄膜が有する適用対象物への強固な密着性等の特性を十分に発揮させることが困難になる場合がある。
このような理由から、水溶性高分子膜の材料物質は、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を有するか、もしくは、所定の強度と水溶性を有する水溶性高分子であれば、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができるが、適用対象物が生体組織などである場合には、生体に対し無害であるものがより好ましい。
なお、本発明において「水溶性」とは、水、あるいは、アルコール類の水溶液等に可溶であることをいい、実用的には、生理食塩水に可溶であることが好ましい。
【0071】
また、具体的な水溶性高分子としては、例えば、ヒアルロン酸誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
この理由は、これらの水溶性高分子であれば、生体適合性があり、汎用性があるためである。
【0072】
(2)厚み
また、水溶性高分子膜の厚みを20nm〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子膜の厚みをかかる範囲内の値とすることにより、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を効果的に発揮することができるとともに、高分子薄膜を好適に補強することができる一方で、適用対象物に適用した際には、生理食塩水等によって速やかに溶解させることができるためである。
すなわち、水溶性高分子膜の厚みが20nm未満の値となると、水溶性高分子膜を均一に形成することが困難になる結果、臓器創傷面や角膜等の生体組織、表皮などへの密着性を向上させる等の特定の機能を効果的に発揮することが困難になったり、高分子薄膜を効果的に補強することが困難になったりする場合があるためである。一方、水溶性高分子膜の厚みが500μmを超えた値となると、適用対象物に適用した際に、速やかに溶解・除去させることが困難になる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子膜の厚みを100nm〜400μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜300μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0073】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態で説明したシート状積層体の製造方法であって、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするシート状積層体の製造方法である。
(a)ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部と、脂肪族ポリイソシアネート化合物0.01〜40重量部と、を有機溶剤に溶解してなる剥離剤組成物を準備する工程
(b)基材における少なくとも一方の表面に対し、剥離剤組成物を塗布し、剥離剤組成物層を形成する工程
(c)剥離剤組成物層を加熱・乾燥させて硬化することにより剥離層とし、剥離シートを得る工程
(d)剥離シートにおける剥離層に対し、高分子薄膜形成用溶液を塗布した後、加熱・乾燥させ、高分子薄膜を形成し、シート状積層体を得る工程
以下、本発明の第2の実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心に、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0074】
1.工程(a):剥離剤組成物の準備工程
工程(a)は、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂100重量部と、脂肪族ポリイソシアネート化合物0.01〜40重量部と、を有機溶剤に溶解してなる剥離剤組成物を準備する工程である。
なお、剥離剤組成物については、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
【0075】
2.工程(b):剥離剤組成物の塗布工程
工程(b)は、基材における少なくとも一方の表面に対し、剥離剤組成物を塗布し、剥離剤組成物層を形成する工程である。
また、剥離剤組成物の塗布を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、剥離剤組成物層をより効率的に形成することができるためである。
より具体的には、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
【0076】
3.工程(c):剥離剤組成物の硬化工程
工程(c)は、剥離剤組成物層を加熱・乾燥させて硬化させることにより剥離層とし、剥離シートを得る工程である。
また、剥離剤組成物層を硬化させる際の加熱・乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常80〜150℃の温度条件で、15〜300秒間行うことが好ましい。
この理由は、加熱・乾燥温度が80℃未満の値となると、溶剤を乾燥させるのに時間がかかり過ぎたり、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂の架橋が不十分になったりする場合があるためである。一方、加熱・乾燥温度が150℃を超えた値となると、剥離シートが熱変形しやすくなる場合があるためである。
また、加熱・乾燥時間が15秒未満の値となると、溶剤が残留したり、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂の架橋が不十分になったりする場合があるためである。一方、加熱・乾燥時間が300秒を超えた値となると、剥離シートが熱変形しやすくなる場合があるためである。
したがって、剥離剤組成物層を硬化させる際の加熱・乾燥条件を、90〜140℃の温度条件で、30〜180秒間とすることがより好ましく、95〜130℃の温度条件で、45〜120秒間とすることがさらに好ましい。
なお、より確実に硬化させる観点から、常温環境下において2〜14日、より好ましくは4〜7日のシーズニング期間を設けることが好ましい。
【0077】
4.工程(d):高分子薄膜の形成工程
工程(d)は、剥離シートにおける剥離層に対し、高分子薄膜形成用溶液を塗布した後、加熱・乾燥させ、高分子薄膜を形成し、シート状積層体を得る工程である。
【0078】
(1)塗布方法
また、高分子薄膜形成用溶液の塗布を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の厚みを有する高分子薄膜を、より効率的に形成することができることから、シート状積層体をより効率よく大量生産することができるためである。
また、ロールツーロール法を実施するにあたり、特に、バーコータ、リバースグラビアコータまたはスロットダイコータを用いて行うことが好ましい。
この理由は、これらの塗布装置であれば、所定の厚みを有する高分子薄膜を、さらに効率的に形成することができるためである。
すなわち、バーコータ、リバースグラビアコータおよびスロットダイコータであれば、ナノメートルオーダーの高分子薄膜を、その表面に皺を発生させることなく、かつ、均一な厚みでべた塗りすることができ、しかも、構造が簡単である上、経済性にも優れるためである。
【0079】
ここで、リバースグラビアコータについて、
図4(a)および(b)を参照しつつ、大まかに説明する。
すなわち、
図4(a)には、リバースグラビアコータ100の斜視図が示してあり、
図4(b)には、リバースグラビアコータ100を矢印A方向に沿って見た場合の断面図が示してある。
図4(a)〜(b)に示すように、リバースグラビアコータ100は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(102、104)を備えている。
【0080】
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(102、104)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液供給パン106に収容された塗布液(図示せず)を、掻き揚げながら塗布するためのグラビアロール108を備えている。
また、かかるグラビアロール108は、通常、直径が50mm程度、長軸方向の長さが1700mm程度であり、グラビアパターンは彫刻などによって刻設されている。グラビアの線数は、特に限定されないが、15〜200#のものを使用することが好ましい。
そして、かかるグラビアロール108は、グラビアロール用駆動原(図示せず)によって、剥離シート2の走行方向とは逆方向に回転しながら、剥離シート2に対して塗布液を塗布することになる。
【0081】
また、グラビアロール108には、ドクターブレード110が当接させてあり、これによりグラビアロール108に付着した余分な塗布液を掻き取ることができるため、ナノメートルオーダーの高分子薄膜を安定的に形成することができる。
また、高分子薄膜の厚みの調整は、高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにグラビアの線数と走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、リバースグラビアコータを用いる場合における高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、1〜200mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
また、リバースグラビアコータにおける剥離シートの走行スピードは、特に制限されないが、0.1〜100m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
【0082】
次いで、スロットダイコータについて、
図5(a)および(b)を参照しつつ、大まかに説明する。
すなわち、
図5(a)には、スロットダイコータ200の斜視図が示してあり、
図5(b)には、スロットダイコータを矢印Aに沿って見た場合の断面図が示してある。
図5(a)〜(b)に示すように、スロットダイコータ200は、原反ロール(図示せず)から繰り出されて巻取りロール(図示せず)に巻き取られる剥離シート2を、一定方向(矢印B)に沿って所定のスピードで走行させるための少なくとも1対のガイドロール(202、204)を備えている。
【0083】
また、かかる少なくとも一対のガイドロール(202、204)の間で走行している剥離シート2に対して、塗布液タンク206から、ポンプ208による加圧によって供給される塗布液(図示せず)を塗布するためのスロット210を備えている。
また、かかるスロット210は、剥離シート2の走行方向における上流側および下流側に互いに対向するように設けられたダイリップ(212、214)を備えており、かかるダイリップ(212、214)の隙間から、剥離シート2に塗布液が供給され、塗布することになる。
【0084】
また、スロットダイコータにおける剥離シートの走行スピードは、特に制限されないが、0.1〜100m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
また、高分子薄膜の厚みの調整は、高分子薄膜形成用溶液の濃度および粘度、並びにダイリップからの吐出量と剥離シートの走行スピードを調整することにより行うことができる。
また、スロットダイコータを用いる場合における高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)は、1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
【0085】
(2)高分子薄膜形成用溶液
(2)−1 高分子薄膜形成用溶液の材料物質
また、高分子薄膜形成用溶液における溶質としての高分子薄膜形成用の材料物質としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
【0086】
(2)−2 溶剤
また、高分子薄膜形成用溶液における溶剤の種類としては、高分子薄膜形成用の材料物質を溶解、または均一に分散でき、加熱により揮発するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、および四塩化炭素などが好ましい。
また、溶剤の沸点としては、30〜120℃の範囲内の値とすることが好ましく、35〜80℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0087】
(2)−3 溶液の濃度
また、高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高分子薄膜形成用溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な厚みが得られなくなる場合や溶液の粘度が最適にならない場合があるためである。一方、高分子薄膜形成用溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の濃度を0.3〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0088】
(2)−4 溶液の粘度
また、高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、高分子薄膜形成用溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のハジキが発生する場合があるためである。一方、高分子薄膜形成用溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、高分子薄膜形成用溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド型回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
【0089】
(2)−5 乾燥条件
また、剥離シート上に形成された高分子薄膜形成用溶液の塗布層を、高分子薄膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件で、6〜300秒間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足になったりする場合があるためである。一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が6秒未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。一方、乾燥時間が300秒を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、高分子薄膜形成用溶液の塗布層を高分子薄膜とするための乾燥条件を、50〜110℃の温度条件で、12〜180秒間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件で、18〜120秒間とすることがさらに好ましい。
【0090】
5.水溶性高分子膜の形成工程
かかる工程は、
図1(b)や
図3(a)に示すように、高分子薄膜4における剥離シート2とは反対側の面に、水溶性高分子膜6(6a、6b)を積層してなるシート状積層体10´(10a´、10b´)を製造する際に必要となる工程である。
すなわち、工程(b)で得られた高分子薄膜上に、水溶性高分子溶液を塗布し、水溶性高分子膜を形成する工程である。
【0091】
(1)塗布方法
また、水溶性高分子溶液の塗布を、ロールツーロール法にて行うことが好ましい。
この理由は、ロールツーロール法であれば、所定の厚みを有する水溶性高分子膜を、より効率的に形成することができるためである。
より具体的には、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
【0092】
(2)水溶性高分子溶液
(2)−1 水溶性高分子
また、水溶性高分子溶液における溶質としての水溶性高分子としては、第1の実施形態において既に説明したため、省略する。
【0093】
(2)−2 溶剤
また、水溶性高分子溶液における溶剤の種類としては、水溶性高分子溶液を溶解または均一に分散できるものであれば、特に限定されるものではないが、水、あるいは、アルコール類の水溶液等からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0094】
(2)−3 溶液の濃度
また、水溶性高分子溶液の濃度を0.1〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子溶液の濃度が0.1重量%未満の値となると、必要な厚みが得られなくなる場合があるためである。一方、水溶性高分子溶液の濃度が20重量%を超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の濃度を0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0095】
(2)−4 溶液の粘度
また、水溶性高分子溶液の粘度(測定温度:25℃)を1〜500mPa・sの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水溶性高分子溶液の粘度が1mPa・s未満の値となると、塗膜のハジキが発生する場合があるためである。一方、水溶性高分子溶液の粘度が500mPa・sを超えた値となると、均一な塗膜が得られなくなる場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の粘度(測定温度:25℃)を2〜400mPa・sの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜300mPa・sの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、水溶性高分子溶液の粘度は、JIS K7117−1の4.1(ブルックフィールド型回転粘度計)に準拠して測定されたものである。
【0096】
(2)−5 乾燥条件
また、高分子薄膜上に形成された水溶性高分子溶液の塗布層を、水溶性高分子膜とするための乾燥条件としては、特に限定されるものではないが、通常40〜120℃の温度条件で、6〜1200秒間行うことが好ましい。
この理由は、乾燥温度が40℃未満の値となると、乾燥に時間がかかり過ぎたり乾燥不足となったりする場合があるためである。一方、乾燥温度が120℃を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
また、乾燥時間が6秒未満の値となると、乾燥不足になる場合があるためである。一方、乾燥時間が1200秒を超えた値となると、皺やカールが生じたりする場合があるためである。
したがって、水溶性高分子溶液の塗布層を水溶性高分子膜とするための乾燥条件としては、50〜110℃の温度条件で、12〜600秒間とすることがより好ましく、60〜100℃の温度条件で、18〜480秒間とすることがさらに好ましい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0098】
[実施例1]
1.シート状積層体の製造
(1)剥離シートの製造
(1)−1 剥離剤組成物の調製
カルボキシル基を有するポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂(三井化学株式会社製、融点180℃)100重量部を、メチルシクロヘキサン/酢酸エチル=80/20の混合溶媒900重量部に溶解させた溶液(固形分10重量%)に対し、脂肪族ポリイソシアネート化合物としての1,5−ペンタメチレンジイソシアネートがイソシアヌレート環を形成した化合物であるイソシアヌレート化合物(三井化学株式会社製、スタビオD−370N、固形分100重量%)10重量部を添加した後、トルエン/n−ヘプタン混合溶媒にて固形分濃度5.0重量%に希釈し、剥離剤組成物を調製した。
【0099】
(1)−2 剥離層の形成
次いで、マイヤーバーを用いて、基材としての厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT100)の表面に対し、得られた剥離剤組成物を塗布した後、100℃で60秒間加熱・乾燥させて硬化することにより厚み500nmの剥離層とし、剥離シートを得た。
【0100】
(2)高分子薄膜形成用溶液の調製
重量平均分子量が180,000であるポリDL乳酸(PURAC株式会社製、PURASORB20)を酢酸エチルに溶解し、固形分濃度3重量%、25℃における粘度7.1mPa・sの高分子薄膜形成用溶液を調製した。
【0101】
(3)高分子薄膜の形成
次いで、リバースグラビアコータ(株式会社廉井精機製、μコータ)を用いて、準備した剥離シートの剥離層面に対し、得られた高分子薄膜形成用溶液を塗布した後、100℃で60秒間乾燥させ、厚み200nmの高分子薄膜を形成し、シート状積層体を得た。
このとき、使用したリバースグラビアコータにおけるグラビアロールは、線数150#、直径20mm、長軸方向の長さが300mmであり、剥離シートの走行スピードは1m/分であり、グラビアロールの回転速度は160rpmであった。
【0102】
2.評価
(1)表面自由エネルギーの測定
得られた剥離シートの剥離層面における表面自由エネルギーを、各種液滴の接触角(測定温度:25℃)を測定し、その値を基に北崎・畑理論により求めた。
すなわち、「分散成分」としてのジヨードメタン、「双極子成分」としての1−ブロモナフタレン、「水素結合成分」としての蒸留水を液滴として使用し、協和界面科学株式会社製、DM−70を用いて、静滴法により、JIS R3257に準拠して接触角(測定温度:25℃)を測定し、その値を基に北崎・畑理論により、表面自由エネルギー(mJ/m
2)を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0103】
(2)基材密着性の評価
得られたシート状積層体における、剥離層と基材との密着性を評価した。
すなわち、クロスカット法による付着性試験(JIS K5600−5−6:1999)に従って、得られた剥離シートの剥離層に碁盤目状の切れ目を入れて、粘着テープ(日東電工株式会社製、No.31B)を貼付して剥離したときの剥がれを確認し、試験結果の分類(以下にJISの分類0、1、2、3、4、5をそのまま示す。)に従って評価した。得られた結果を表1に示す。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、および/または交差点において剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全体的に剥がれを生じており、および/または目のいろいろな部分が、部分的または全体的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大剥がれを生じており、および/または数か所の目が部分的または全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
5:分類4でも分類できない剥がれ程度のいずれか。
【0104】
(3)算術平均粗さRaの測定
得られた剥離シートの剥離層面における算術平均粗さRa(nm)を、AFM(原子間力顕微鏡)(株式会社島津製作所製、SPM9700)を用いて、測定領域を10μm×10μmの面領域とし、測定領域以外についてはJIS B 0601:2001に準拠して測定した。得られた結果を表1に示す。また、このとき得られた剥離層面の画像を
図6(a)に示す。また、比較のために、比較例1および5の画像を
図6(b)および(c)に示す。
また、同様に、シート状積層体の高分子薄膜面における算術平均粗さRa(nm)を測定した。得られた結果を表1に示す。また、このとき得られた高分子薄膜面の画像を
図7(a)に示す。また、比較のために、比較例1の画像を
図7(b)に示す。
【0105】
(4)塗布適性評価
得られた剥離シートに対する高分子薄膜形成用溶液の塗布適性を評価した。
すなわち、剥離シートの剥離層面に対し、高分子薄膜形成用溶液(固形分濃度3重量%)を、マイヤーバーを用いて塗布し、乾燥前の厚みが約6μmの塗膜を形成した。
次いで、得られた塗膜におけるハジキを目視にて観察し、下記基準に沿って評価し、塗布適性の評価とした。得られた結果を表1に示す。
○:高分子薄膜形成用溶液の塗膜において、塗布後にハジキが観察されなかった
×:高分子薄膜形成用溶液の塗膜において、塗布後にハジキが観察された
【0106】
(5)耐熱変形性評価
(5)−1 熱伸縮率の測定
得られた剥離シートの熱伸縮率を測定した。
すなわち、TMA(熱機械的分析)装置(ネッチ・ジャパン株式会社製、TMA4000SA)を用いて、昇温速度10℃/分で、初期温度設定の30℃から100℃まで昇温した際の、100℃における剥離シートの熱伸縮率(%)(引張測定、測定荷重2.0g)を、基材のMD方向およびCD方向についてそれぞれ測定した。得られた結果を表1に示す。また、このとき得られた温度−熱伸縮率チャートを
図8(a)に示す。また、比較のために、比較例1のチャートを
図8(b)に示す。
また、同様に、剥離層を形成する前の基材のみの熱伸縮率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0107】
(5)−2 加熱・乾燥による影響の評価
得られたシート状積層体を目視観察し、下記基準に沿って評価し、加熱・乾燥による影響の評価とした。得られた結果を表1に示す。
○:高分子薄膜にハジキが観察されず、また、シート状積層体に歪みが観察されない
△:高分子薄膜にハジキが観察されないが、シート状積層体に歪みが観察される、もしくは、シート状積層体に歪みが観察されないが、高分子薄膜にハジキが観察される
×:高分子薄膜にハジキが観察され、かつ、シート状積層体に歪みが観察される
【0108】
(6)剥離性評価
(6)−1 剥離力の測定
得られたシート状積層体における、剥離シートから高分子薄膜を剥離する際の剥離力を測定した。
すなわち、シート状積層体における高分子薄膜に対して粘着テープ(日東電工株式会社製、No.31B)を貼合した後、粘着テープが貼合された状態の高分子薄膜を剥離シートから180°剥離する際の剥離力(mN/25mm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0109】
(6)−2 剥離安定性の評価
得られたシート状積層体における、剥離シートから高分子薄膜を剥離する際の剥離安定性を評価した。
すなわち、シート状積層体を10mm×10mmのサイズに裁断し、高分子薄膜の端部をピンセットでつまんで剥離シートから剥離した際に、実際に剥離することができた面積の割合を測定し、下記基準に沿って評価し、剥離安定性の評価とした。得られた結果を表1に示す。
○:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して80%以上の値である
△:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して60〜80%未満の値である
×:剥離シートから剥離することができた高分子薄膜の面積が、10mm×10mmに対して60%未満の値である
【0110】
[実施例2]
実施例2では、剥離シートを製造する際に、基材を厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT100)に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0111】
[実施例3]
実施例3では、剥離剤組成物を調製する際に、ポリイソシアネート化合物の添加量を20重量部に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0112】
[実施例4]
実施例4では、剥離層を形成する際に、剥離層の厚みを300nmに変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0113】
[実施例5]
実施例5では、剥離剤組成物を調製する際に、ポリイソシアネート化合物の添加量を30重量部に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0114】
[実施例6]
実施例6では、剥離剤組成物を調製する際に、カルボキシル基を有するポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂(三井化学株式会社製、融点180℃)を、カルボキシル基を有するポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂(三井化学株式会社製、融点140℃)に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0115】
[比較例1]
比較例1では、シート状積層体を製造する際に、基材のみからなる剥離シートとしてポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂シート(三井化学東セロ株式会社製、オピュラン X−88B #50、厚み50μm、融点235℃)を用いたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1、
図6(b)、
図7(b)および
図8(b)に示す。
【0116】
[比較例2]
比較例2では、剥離シートを以下のようにして製造したほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0117】
1.剥離剤組成物の調製
トリメチルシリル基を両末端に有するビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(アズマックス株式会社製、VDT−731)100重量部とトリメチルシリル基を両末端に有するメチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(アズマックス株式会社製、HMS−151)8重量部と白金触媒(東レ・ダウコーニング株式会社製、SRX212)2重量部をn−ヘプタンで固形分濃度が1.5重量%となるように希釈し、剥離剤組成物を調製した。
【0118】
2.剥離層の形成
次いで、マイヤーバーを用いて、基材としての厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT100)の表面に対し、得られた剥離剤組成物を塗布した後、150℃で60秒間加熱・乾燥させて硬化することにより厚み100nmの剥離層とし、剥離シートを得た。
【0119】
[比較例3]
比較例3では、剥離剤組成物を調製する際に、ポリイソシアネート化合物を添加しなかったほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0120】
[比較例4]
比較例4では、剥離剤組成物を調製する際に、ポリイソシアネート化合物の添加量を80重量部に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0121】
[比較例5]
比較例5では、剥離剤組成物を調製する際に、脂肪族ポリイソシアネート化合物としてのイソシアヌレート化合物を、芳香族ポリイソシアネート化合物としてのトリメチロールプロパンアダクト体のトリレンジイソシアネート化合物(東ソー株式会社製、コロネートL)に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1および
図6(c)に示す。
【0122】
[比較例6]
比較例6では、剥離剤組成物を調製する際に、カルボキシル基を有するポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂(三井化学株式会社製、融点180℃)を、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂(融点235℃)に変えたほかは、実施例1と同様にシート状積層体の製造を試みたが、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂が溶剤に溶解しなかったため、剥離剤組成物を調製することができず、シート状積層体を製造することができなかった。
【0123】
【表1】