特許第6647898号(P6647898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647898紫外線反射膜およびスパッタリングターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647898
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】紫外線反射膜およびスパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/14 20060101AFI20200203BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20200203BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20200203BHJP
   C22C 21/12 20060101ALI20200203BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   C23C14/14 B
   C23C14/34 A
   C22C21/00 N
   C22C21/12
   G02B5/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-21086(P2016-21086)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-137549(P2017-137549A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥野 博行
(72)【発明者】
【氏名】中井 淳一
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021275(JP,A)
【文献】 特開2004−214606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/14
C22C 21/00
C22C 21/12
C23C 14/34
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下、および
Cu:0.2at%以上、6.0at%以下
の少なくとも一方を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなり、
下記(1)式を満足し、
波長254nmの紫外線の反射率が85%以上である、紫外線反射膜。
X+0.5Y<3.5 ・・・(1)
ここで、Xは希土類元素の量[at%]であり、YはCuの量[at%]である。
【請求項2】
前記希土類元素が、Sc、Nd、Gd、La、Y、Ce、PrおよびDyからなる群から選択される1つ以上の元素である、請求項1に記載の紫外線反射膜。
【請求項3】
膜厚が50nm以上、2000nm以下である、請求項1または2に記載の紫外線反射膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線反射膜およびスパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線反射膜は、紫外線滅菌装置または紫外線硬化性樹脂を硬化させるための樹脂硬化装置等の機器、および紫外線発光素子または装置等を含む照明具等の用途に用いられている。紫外線を効率良く反射することは、エネルギー効率またはコスト等の観点から重要であり、特許文献1、3および4では、金属からなる紫外線反射膜が検討されている。
【0003】
このような装置に使用される紫外線光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプ等が挙げられ、それぞれが特有のピーク波長および強度を有しており、使用目的に応じて適切な光源が選択される。その中でも、254nmに強いピークを有する低圧水銀ランプは、例えば、滅菌や表面改質等の様々な用途に適しており、広く用いられている。従って、254nmの紫外線を効率良く反射することができる紫外線反射膜が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−43468号公報
【特許文献2】特開2002−323611号公報
【特許文献3】特許第4981979号公報
【特許文献4】特開61−148883号公報
【特許文献5】特開2011−21275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外光領域の反射に関しては、十分な検討がなされていない。例えば、特許文献1には、紫外半導体発光素子に用いる反射膜として、Al、Rh、Siおよびそれらの合金が挙げられているが、実施例がなく、紫外光領域の反射率に関して十分に検討されていない。
【0006】
特許文献2には、高反射率および高耐久性を有する反射膜として、Ag合金が提案されているが、可視光領域における検討のみであり、紫外光領域の反射率については検討されていない。また、特許文献3には、Ag合金の表面の粗さを制御することにより、400nm以下の領域で高反射率を得ることが検討されているが、375nm以下の実施例がなく、254nmの紫外線の反射率については検討されていない。さらに、一般的に、可視光領域において、AgまたはAg合金が高反射率であるが、380nm以下の紫外光領域では急激に反射率が低下し、254nmでは反射率が25%程度である。
【0007】
特許文献5には、Alの合金化による可視光領域の反射率の向上について記載されているが、紫外光領域の反射率についての言及はない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであって、その目的は、紫外線反射膜を構成する希土類元素、Cuおよび残部のAlの量、並びに希土類元素とCuとの比率を所定の範囲に制御することにより、波長254nmの紫外線の反射率が85%以上の紫外線反射膜を提供することである。また、そのような組成を有するスパッタリングターゲットを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る紫外線反射膜は、1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下、およびCu:0.2at%以上、6.0at%以下の少なくとも一方を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなり、下記(1)式を満足し、波長254nmの紫外線の反射率が85%以上である。
X+0.5Y<3.5 ・・・(1)
ここで、Xは希土類元素の量[at%]であり、YはCuの量[at%]である。
【0010】
紫外線反射膜に用いられる前記希土類元素は、Sc、Nd、Gd、La、Y、Ce、PrおよびDyからなる群から選択される1つ以上の元素であってよい。
【0011】
紫外線反射膜の膜は、50nm以上、2000nm以下であってよい。
【0012】
本発明に係るスパッタリングターゲットは、1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下、およびCu:0.2at%以上、6.0at%以下の少なくとも一方を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなり、下記(2)式を満足する。
X+0.5Y<3.5 ・・・(2)
ここで、Xは希土類元素の量[at%]であり、YはCuの量[at%]である。
【0013】
スパッタリングターゲットに用いられる前記希土類元素は、Sc、Nd、Gd、La、Y、Ce、PrおよびDyからなる群から選択される1つ以上の元素であってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る紫外線反射膜は、紫外線反射膜を構成する希土類元素、Cuおよび残部のAlの量、並びに希土類元素とCuとの比率が所定の範囲に制御されることにより、波長254nmの紫外線の反射率が85%以上であり、優れた反射率を有する。また、本発明に係るスパッタリングターゲットは、このように反射率に優れた紫外線反射膜を成膜することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の紫外線反射膜およびスパッタリングターゲットの詳細を説明する。
【0016】
<紫外線反射膜>
[1.紫外線反射膜の組成]
本発明に係る紫外線反射膜は、1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下、およびCu:0.2at%以上、6.0at%以下の少なくとも一方を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなり、下記(1)式を満足し、波長254nmの紫外線の反射率が85%以上である。
X+0.5Y<3.5 ・・・(1)
ここで、Xは希土類元素の量[at%]であり、YはCuの量[at%]である。
【0017】
また、前記希土類元素は、Sc、Nd、Gd、La、Y、Ce、PrおよびDyからなる群から選択される1つ以上の元素であってよい。
以下に各元素および式(1)について詳述する。
【0018】
(1)希土類元素およびCuの機能
本発明に係る紫外線反射膜は、1または2種以上の希土類元素およびCuの少なくとも一方を所定量含有する。
Alをスパッタリング法で成膜する場合、Alは表面が粗い膜となり、反射率が低下する。しかし、希土類元素またはCuを添加すると、希土類元素またはCuは基板上で表面拡散しにくいため、基板上でAlの核生成サイトとなり、Alの核生成密度が相加する。その結果、微細な結晶粒が増加して組織が微細化するため、表面の粗さが小さくなる。
このように、希土類元素またはCuを含有することにより、紫外線反射膜の表面を比較的平坦にすることができるため、スパッタリング法で成膜する場合でも、反射率低下が抑制されて高い反射率が得られる。
【0019】
(2)1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下
本発明に係る紫外線反射膜は、1または2種以上の希土類元素を0.2at%以上、3.0at%以下含有することにより、紫外線反射膜の表面の粗さを小さくすることができ、254nmの紫外線の反射率が85%以上となり、優れた反射率を有する。希土類元素が0.2at%未満の場合、結晶粒が微細化しにくく表面の粗さを小さくする効果が弱くなり、85%の反射率を得ることができない。また、希土類元素が3.0at%を超える場合、希土類元素の低い反射率が紫外線反射膜の反射率に影響を及ぼして、反射率を低下させるため、85%の反射率を得ることができない。
紫外線のさらに良好な反射率を得る観点から、希土類元素の含有量の好ましい上限は1at%、より好ましくは2at%である。
また、紫外線のさらに良好な反射率を得る観点から、希土類元素は、Sc、Nd、Gd、La、Y、Ce、PrおよびDyからなる群から選択される1つ以上の元素であることが好ましい。
【0020】
(3)Cu:0.2at%以上、6.0at%以下
本発明に係る紫外線反射膜は、Cuを0.2at%以上、6.0at%以下含有することにより、紫外線反射膜の表面の粗さを小さくすることができると考えられ、254nmの紫外線の反射率が85%以上となり、優れた反射率を有する。Cuが0.2at%未満の場合、結晶粒が微細化しにくく表面の粗さを小さくする効果が弱くなると考えられ、85%の反射率を得ることができない。また、Cuが6.0at%を超える場合、Cuの低い反射率が紫外線反射膜の反射率に影響を及ぼして、反射率を低下させるため、85%の反射率を得ることができない。
紫外線のさらに良好な反射率を得る観点から、Cuの含有量の好ましい下限は0.5at%、より好ましくは1at%であり、好ましい上限は5at%、より好ましくは4at%である。
【0021】
)希土類元素の量X[at%]とCuの量Y[at%]との関係((1)式)
上記のように、希土類元素およびCuは共に、表面の粗さを小さくする効果があると考えられ、その結果、優れた紫外線の反射率を得ることができると考えられる。
一方で、上記のように、希土類元素およびCuには、過剰な添加により、反射率を低下させるという不都合がある。従って、両者が併用する場合には、所定の関係式を満足する範囲内で、両者を含有することにより、優れた反射率を有する紫外線反射膜を得ることができる。すなわち、希土類元素の量X[at%]およびCuの量Y[at%]は、下記(1)式を満足する。
X+0.5Y<3.5 ・・・(1)
紫外線のさらに良好な反射率を得る観点から、Xと0.5Yとの和の好ましい上限は3.0、より好ましくは2.5である。
【0022】
)Alおよび不可避不純物(残部)
本発明に係る紫外線反射膜は、希土類元素およびCuの他に、残部のAlおよび不可避不純物を含み、原料、資材または製造設備等の状況によって持ち込まれ得る。不可避的不純物としては、例えば、Fe、In、Sn、Ni、Ti、Mg、CrおよびZr等が挙げられる。不可避的不純物の含有量の好ましい上限は0.03wt%である。
【0023】
[2.紫外線反射膜の反射率]
本明細書において、紫外線反射膜の反射率とは、紫外分光光度計を用いて分光反射率を測定した値であり、基準ミラーの反射光強度に対する紫外線反射膜の反射光強度の比率である。紫外分光光度計としては、例えば、可視・紫外分光光度計「V−570」(日本分光株式会社製)が挙げられる。
本発明に係る紫外線反射膜は、254nmの紫外線の反射率が85%以上である。反射率の好ましい下限は87%、より好ましくは89%である。
【0024】
[3.紫外線反射膜の透過率]
紫外線反射膜の紫外線の透過率が高い場合、紫外線反射膜の近傍の材料(樹脂等)に紫外線が照射され、当該材料が劣化する原因となることがあるため、紫外線の透過率が低いことが好ましい。本願発明の紫外線反射膜は、膜厚50nm以上のAl基合金であるため、低い透過率を有する。
本明細書において、紫外線反射膜の透過率とは、紫外分光光度計を用いて分光反射率を測定した値であり、基準ミラーの透過光強度に対する紫外線反射膜の透過光強度の比率である。紫外分光光度計としては、例えば、可視・紫外分光光度計「V−570」(日本分光株式会社製)が挙げられる。
本発明に係る紫外線反射膜の紫外線の透過率の好ましい上限は0.1%である。
【0025】
[4.紫外線反射膜の膜厚]
本明細書において、紫外線反射膜の膜厚とは、段差計を用いて測定した値である。段差計としては、例えば、KLA Tencor社製「Alpha−Step」が挙げられる。
本発明に係る紫外線反射膜の膜厚の好ましい下限は50nm、より好ましくは100nmであり、紫外線の反射率がより良好になる。また、好ましい上限は2000nm、より好ましくは1000nmであり、紫外線の反射率がより良好になる。
【0026】
[5.紫外線反射膜の製造方法]
本発明に係る紫外線反射膜は、公知のスパッタリング法、例えばマグネトロンスパッタリング法により製造することができる。
添加した希土類元素またはCuが基板上で拡散するためのエネルギーが十分にある場合は、Alの核生成サイトが減少し、反射率を低下させることがある。具体的には、成膜時のパワーを上げることにより、または基板とターゲット距離とを狭めることにより、スパッタ粒子のエネルギーが増加し、その結果、表面の粗さが増加して反射率が低下することがある。従って、成膜条件は、使用する装置に応じて変更してよい。
【0027】
<スパッタリングターゲット>
[1.スパッタリングターゲットの組成]
本発明に係るスパッタリングターゲットは、1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下、およびCu:0.2at%以上、6.0at%以下のいずれか一方を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなり、前記希土類元素の量X[at%]およびCuの量Y[at%]が、下記(2)式を満足する。
X+0.5Y<3.5 ・・・(2)
【0028】
本発明に係るスパッタリングターゲットを用いることにより、上述のような紫外線反射膜を成膜することができる。
【0029】
[2.スパッタリングターゲットの製造方法]
スパッタリングターゲットの製造方法としては、特には限定されず、種々の方法を適用することができるが、スプレイフォーミング法を適用することが望ましい。スプレイフォーミング法により製造されたスパッタリングターゲットは、成分組織の均一性に優れており、それにより成分組織の均一な紫外線反射膜を形成することができるからである。
【実施例】
【0030】
<紫外線反射膜の成膜>
表1の実施例1に記載の組成を有する直径4インチの円盤型スパッタリングターゲットをULVAC社製DCマグネトロンスパッタリング装置「CS−200」のチャンバー内の電極に取り付けた後、チャンバー内の圧力を3×10−6Torrに調整した。次に、Arガス(ガス流量:19sccm)をチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を2mTorrに調整した。その後、室温で、スパッタリングターゲットに500Wのスパッタパワーを印加し、無アルカリガラス板(板厚0.7mm、直径4インチ)上に、表1の実施例1に記載の組成を有する膜厚100nmの紫外線反射膜を成膜した。
表1の実施例1〜19および比較例1〜9についても、上記と同様にして膜厚100nmの紫外線反射膜を成膜した。
表2の実施例20〜23については、成膜時間を変更することにより、表2に記載の膜厚を有する紫外線反射膜を成膜した。
【0031】
得られた紫外線反射膜について、下記の方法で組成分析、反射率測定および透過率測定を行った。評価結果を表1および2に示す。なお、表1および2に記載の元素および数値のうち、下線が付されたものは本発明の規定から外れていることを意味する。
【0032】
<組成分析>
ICP発光分析法により、紫外線反射膜の組成(at%)を算出した。
【0033】
<反射率測定>
日本分光株式会社製可視・紫外分光光度計「V−570」を用いて、無アルカリガラス板上に成膜した紫外線反射膜について、850〜250nmの範囲の分光反射率を測定した。254nmの紫外線の反射率を下記評価基準で判定した。○および△は、紫外線反射膜が実用可能な水準であることを示す。なお、375nmの紫外線の反射率を参考値として示す。
[評価基準]
○:87%以上
△:85以上、87%未満
×:85%未満
【0034】
<透過率測定>
日本分光株式会社製可視・紫外分光光度計「V−570」を用いて、無アルカリガラス板上に成膜した紫外線反射膜について、850〜250nmの範囲の分光透過率を測定した。254nmの紫外線の透過率を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例1〜23の紫外線反射膜は全て、1または2種以上の希土類元素:0.2at%以上、3.0at%以下、およびCu:0.2at%以上、6.0at%以下の少なくとも一方を含み、残部がAlおよび不可避不純物からなり、上述の(1)式を満足するため、表面の粗さが小さくなると考えられ、波長254nmの紫外線の反射率が85%以上と優れた反射率を有していた。
また、実施例20〜23の紫外線反射膜は全て、254nmの紫外線の透過率が0.01%未満と低く、紫外線の遮断性に優れていた。
【0038】
一方、比較例1の紫外線反射膜はAlのみで成膜されているため、表面の粗さを小さくする効果を得ることができないと考えられ、波長254nmの紫外線の反射率が83.6%と低く、評価基準を満たさなかった。
【0039】
比較例1〜5の紫外線反射膜は、Alと希土類元素以外の元素(In、Zn、SnまたはBi)とから成膜されているため、表面の粗さを小さくする効果を得ることができないと考えられ、波長254nmの紫外線の反射率が72.4〜84.2%と低く、評価基準を満たさなかった。比較例1〜4の紫外線反射膜にそれぞれ含まれるIn、ZnまたはSnは、表面の粗さを小さくすることができないと考えられ、その結果、これらの紫外線反射膜の反射率は低かったと考えられる。また、比較例5の紫外線反射膜に含まれるBiは、紫外線反射膜の表面に析出することにより、当該反射膜の反射率を低下させたと考えられる。
【0040】
比較例7の紫外線反射膜は、Alと希土類元素Ndとから成膜されているが、Ndの含有量が4.0at%と規定量より多いため、含有するNdの低い反射率が当該紫外線反射膜の反射率に影響を及ぼし、波長254nmの紫外線の反射率が84.8%と低く、評価基準を満たさなかった。
【0041】
比較例8の紫外線反射膜は、AlとCuとから成膜されているが、Cuの含有量が7.0at%と規定量より多いため、含有するCuの低い反射率が当該紫外線反射膜の反射率に影響を及ぼし、波長254nmの紫外線の反射率が84.4%と低く、評価基準を満たさなかった。
【0042】
比較例9の紫外線反射膜は、Alと希土類元素NdとCuとから成膜されているが、上述の式(1)を満足しないため、含有する希土類元素NdおよびCuの低い反射率が当該紫外線反射膜の反射率に影響を及ぼし、波長254nmの紫外線の反射率が84.9%と低く、評価基準を満たさなかった。