【実施例】
【0020】
以下にアスコルビン酸パルミテート(AP)を薬剤として配合した顆粒剤を用いた試験例を示して本発明をより具体的に説明する。
1.試験例顆粒の調製と評価(試験例1〜6)
(1)ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた徐放性顆粒剤の調製
徐放化成分としてポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)を用いて徐放性顆粒剤を調製した。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、太陽化学株式会社製TAISET50を用いた。
アスコルビン酸パルミテート(AP:DSMニュートリションジャパン株式会社)とポリグリセリン脂肪酸エステル(TAISET50:太陽化学株式会社)を下記の表1の比率で配合した顆粒剤を調製した。
【0021】
【表1】
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを磁性乳鉢に秤量し、HOT PLATE STIRRER SW−600H(株式会社日伸理化)で70〜80℃まで加温後、アスコルビン酸パルミテートを加え、乳棒にて混練し溶融物を得た。
作製した溶融物を室温まで冷却し、乳棒で粉砕後篩別し、16メッシュの篩を通過し30メッシュの篩を通過しない粒子を顆粒物として得た。
【0023】
(2)顆粒剤の溶出試験方法及び放出プロファイルの作成
溶出試験は、第十六改正日本薬局方に記載の溶出試験法(パドル法)に準拠した。
試験液として900mlのメタリン酸溶液(0.05%メタリン酸、0.2% Tween80)を使用し、それぞれ顆粒をアスコルビン酸パルミテート47mgに相当する重量を正確に秤とり、回転数50rpm、試験溶液温度37.2℃にて実施した。10分おきに試験液を、恒温水槽式溶出試験器(NTR−6400A、富山産業株式会社)を用いて、235nmの吸光度から溶出量を測定し、溶出率を求めた。得られた結果を、時間をX軸、溶出率をY軸としてプロットし放出プロファイルを得た。
【0024】
(3)結果
試験例1〜6の放出プロファイルを
図1に示した。
試験例1〜6の試料は、いずれも緩やかな0次放出を示したが、360分経過後も溶出率は40%に到達しなかった。これは経口投与剤の吸収可能な消化管に留まる時間(滞留時間)を越えても、40%しか放出されないことを意味している。したがってポリグリセリン脂肪酸エステルは経口投与剤の0次放出の目的には適していないことが確認できた。
【0025】
2.試験例顆粒の調製と評価(試験例7〜12)
(1)HPMCを用いた徐放性顆粒剤の調製
徐放化成分としてHPMCを用いて徐放性顆粒剤を調製した。
HPMCは、信越化学工業株式会社製のHPMC メトローズ SE06(試験例7)、メトローズ SE50(試験例8)、メトローズ NE100(試験例9)、メトローズ SFE400(試験例10)、メトローズ NE4000(試験例11)、メトローズSFE4000(試験例12)を用いた。HPMCの2%水溶液の粘度は下記の表2のとおりである。
アスコルビン酸パルミテートとHPMCを1:1の比率で配合した顆粒剤を調製した。
【0026】
【表2】
【0027】
HPMCを磁性乳鉢に秤量し、HOT PLATE STIRRER SW−600Hで70〜80℃まで加温後、アスコルビン酸パルミテートを加えて、乳棒にて混練し混合物を得た。
作製した混錬混合物を乳棒で粉砕した。粉砕後篩別し、200メッシュパス品を顆粒物として得た。
【0028】
(2)顆粒剤の溶出試験方法及び放出プロファイルの作成
溶出試験は同様に、第十六改正日本薬局方に記載の溶出試験法(パドル法)に準拠した。
試験液は、900mlのメタリン酸溶液(0.05%メタリン酸、0.2% Tween80)を使用し、それぞれ顆粒をアスコルビン酸パルミテート47mgに相当する重量を正確に秤量し、回転数50rpm、試験溶液温度37.2℃にて実施した。10分おきに試験液を、恒温水槽式溶出試験器を用いて、235nmの吸光度から溶出量を測定し、溶出率を求めた。得られた結果を、時間をX軸、溶出率をY軸としてプロットし放出プロファイルを得た。
【0029】
(3)結果
試験例7〜12の放出プロファイルを
図2に示した。
試験例7〜12の試料は、いずれも溶出試験開始から速やかに溶出され、時間の経過に対して直線的に溶出率が増加する0次放出がおきないことが確認された。したがってHPMCは経口投与剤の0次放出の目的には適していないことが確認できた。
【0030】
3.試験例顆粒の調製と評価(試験例13〜17)
(1)HPMCとポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた徐放化顆粒の調製
HPMCとポリグリセリン脂肪酸エステルの両方を用いて0次放出製剤を調製した。 HPMCは、信越化学工業株式会社製のHPMC メトローズ SE06(試験例13)、メトローズ SE50(試験例14)、メトローズ NE100(試験例15)、メトローズ SFE400(試験例16)、メトローズ NE4000(試験例17)を用いた。またポリグリセリン脂肪酸エステルとしてTAISET50(太陽化学株式会社)を用いた。
アスコルビン酸パルミテート、HPMC、ポリグリセリン脂肪酸エステルを1:1:1の比率で配合し、顆粒剤を調製した。
【0031】
まずポリグリセリン脂肪酸エステルを磁性乳鉢に秤量し、HOT PLATE STIRRER SW−600Hで70〜80℃まで加温して溶融させた後、同質量のHPMCとアスコルビン酸パルミテートを加えて乳棒にて混練し溶融物を得た。
作製した混錬溶融物を乳棒で粉砕した。粉砕後篩別し、16メッシュの篩を通過し30メッシュの篩を通過しない粒子を顆粒物として得た。
【0032】
(2)顆粒剤の溶出試験方法及び放出プロファイルの作成
溶出試験は同様に、第十六改正日本薬局方に記載の溶出試験法(パドル法)に準拠した。
試験液は、900mlのメタリン酸溶液(0.05%メタリン酸、0.2% Tween80)を使用し、アスコルビン酸パルミテート47mgに相当する顆粒剤を正確に秤量し、回転数50rpm、試験溶液温度37.2℃にて実施した。10分おきに試験液を、恒温水槽式溶出試験器を用いて、235nmの吸光度を測定し、この結果から溶出量を計算し、溶出率を求めた。得られた結果を、時間をX軸、溶出率をY軸としてプロットし放出プロファイルを得た。
【0033】
(3)結果
試験例13〜17の放出プロファイルを
図3に示した。
試験例13〜17の試料は、いずれも溶出試験開始から直線的に溶出量が増加する0次放出のプロファイルを示した。溶出率と時間の相関を計算し、
図3にR2の値を記載したが、時間経過とアスコルビン酸パルミテートの溶出率の変化は、時間をXとする一次直線で示すことができる1対1の対応があることを確認できた。
なお、試験例16、17の2試料は、試験開始6時間(360分)後に、溶出率90%に到達した。すなわち、2%水溶液の粘度が400mPa・s以上のHPMCをポリグリセリン脂肪酸エステルと併用すると、アスコルビン酸パルミテートの経口投与持続製剤として理想的な0次放出プロファイルを示すことが明らかとなった。
【0034】
4.アスコルビン酸パルミテートの含有量を増加させた試験顆粒の調製と評価(試験例18〜27)
アスコルビン酸パルミテートとポリグリセリン脂肪酸エステル、HPMCの最適な配合比率を決定するため、下記の表3の比率の組成で配合した顆粒剤を調製し、上記の試験と同様に放出プロファイルを得るための試験を行った。
【0035】
【表3】
【0036】
なお、HPMCは、信越化学工業株式会社製のHPMC メトローズ SFE400(試験例18〜22)、メトローズ SFE4000(試験例23〜27)を用いた。またポリグリセリン脂肪酸エステルとしてTAISET50(太陽化学株式会社)を用いた。またアスコルビン酸パルミテートの質量を1としたとき、試験例19と試験例24のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHPMCの質量比は1:0.33:0.33となる。同様に試験例20と試験例25のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHPMCの質量比は1:0.2:0.2となる。同様に試験例21と試験例26のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHPMCの質量比は1:0.125:0.125、同様に試験例22と試験例27のポリグリセリン脂肪酸エステル及びHPMCの質量比は1:0.056:0.056となる。
【0037】
(1)顆粒剤の調製
ポリグリセリン脂肪酸エステルを磁性乳鉢に秤量し、HOT PLATE STIRRER SW−600Hで70〜80℃まで加温して溶融させた後、同質量のHPMCとアスコルビン酸パルミテートを加えて乳棒にて混練し溶融物を得た。
作製した混錬溶融物を乳棒で粉砕した。粉砕後篩別し、16メッシュの篩を通過し30メッシュの篩を通過しない粒子を顆粒物として得た。
【0038】
(2)顆粒剤の溶出試験方法及び放出プロファイルの作成
溶出試験は同様に、第十六改正日本薬局方に記載の溶出試験法(パドル法)に準拠した。
試験液は、900mlのメタリン酸溶液(0.05%メタリン酸、0.2% Tween80)を使用し、アスコルビン酸パルミテート47mgに相当する顆粒剤を正確に秤量し、回転数50rpm、試験溶液温度37.2℃にて実施した。10分おきに試験液を、恒温水槽式溶出試験器を用いて、235nmの吸光度を測定し、この結果から溶出量を計算し、溶出率を求めた。得られた結果を、時間をX軸、溶出率をY軸としてプロットし放出プロファイルを得た。
【0039】
(3)結果
試験例18〜22の放出プロファイルを
図4、試験例23〜27の放出プロファイルを
図5に示した。
試験例18〜27の試料は、いずれも溶出試験開始から直線的に溶出量が増加する0次放出のプロファイルを示し、時間経過とアスコルビン酸パルミテートの溶出率の変化は、時間とほぼ比例関係があることを確認できた。
また、試験例18〜27の試料は、試験開始6時間(360分)後に、溶出率80%に到達した。すなわち、2%水溶液の粘度が400mPa・s以上のHPMCをポリグリセリン脂肪酸エステルと併用すると、アスコルビン酸パルミテートとHPMC、ポリグリセリンの質量比が1:1:1〜1:0.056:0.056の範囲において、経口投与持続製剤として理想的な0次放出プロファイルを示すことが明らかとなった。