(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647925
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】シリマリン高含有錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/28 20060101AFI20200203BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20200203BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20200203BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20200203BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20200203BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20200203BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20200203BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
A61K36/28
A61K31/357
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/42
A61K47/38
A61P1/16
A61P17/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-44800(P2016-44800)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-160148(P2017-160148A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】中川 公太
【審査官】
榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−306447(JP,A)
【文献】
特開2002−241266(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102908377(CN,A)
【文献】
特開2012−201593(JP,A)
【文献】
特開2002−238471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリマリンを10質量%以上、コラーゲン粉末を15〜50質量%、炭酸カルシウム粉末3〜10質量%、ヒドロキシプロピルセルロース0.5〜3質量%を含有し、錠剤硬度が少なくとも7kgfである錠剤。
【請求項2】
シリマリンがマリアアザミ(シリバム・マリアナム:Silybum marianum)由来の抽出物である請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
炭酸カルシウム粉末がホタテ貝殻粉末である請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
シリマリン10質量%以上、コラーゲン粉末を15〜50質量%、炭酸カルシウム粉末を3〜10質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.5〜3質量%を含む粉末混合物の造粒物を打錠することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリマリンを高濃度に含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラボノイドやカテキン、植物性色素のようなポリフェノール化合物の機能性に着目して、これらを含有する組成物が多く開発されている。
シリマリンは、このようなポリフェノール化合物をふくむ天然抽出物のひとつであり、マリアアザミ(学名:Silybum marianum(L)Gaertn)と呼ばれる植物の種子から抽出されたエキスである。シリマリンは、その構成成分としてフラボノリグナンに分類されるシリビン、イソシリビン、シリジアニン、シリクリスチンを含むことが知られている。
【0003】
シリマリンは肝臓機能強化や老化防止に有用であり、さらには紅斑、火傷、皮膚又は粘膜のジストロフィー状態、皮膚炎等の治療における治癒を促進し、外部環境からの刺激(放射線、風、太陽等)から皮膚を保護するのに有用であることが知られている(特許文献1)。また、シリマリンの皮脂分泌抑制効果(特許文献2)、表皮透過バリア強化効果(特許文献3)、乾癬及びアトピー性皮膚炎の治療効果(特許文献4)、表皮の扁平化改善効果が知られている。一方、シリマリンを組成物中に10%以上配合した場合、打錠に際してキャッピングが頻発して、目的とする錠剤の製造効率が悪化することが知られている。このためシリマリンを高配合した経口剤を製造する場合、組成物を造粒し、カプセルに充填したハードカプセル剤とすることが一般的に行われている。
【0004】
キャッピングは錠剤成形時の打錠圧力が高くなるほど発生頻度が増す。健康食品に用いられる錠剤は飲み易さの観点から直径8〜9mmであることが多く、そのような錠剤の実生産時には打錠圧1000kgfから1500kgf程度で錠剤成形することが一般的であるが、適した粉末でないとこれらの打圧ではキャッピングが発生しやすい。一方、1000kgf以下の低打圧であればキャッピングが発生しにくいが、得られる錠剤硬度が低くなり、製品の流通中に錠剤が破損するなどの問題が発生する。この問題を解決するには低打圧で流通に耐えうる硬度の錠剤を得られることが望ましいが、シリマリンを10%以上配合した打錠末を用いた場合において、これまでは、錠剤の成形時に1500kgf程度の打圧を必要としていたため、キャッピングが発生しづらい低打圧で錠剤成形を行う事が不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−100132号公報
【特許文献2】特開2000−169332号公報
【特許文献3】特開2000−169328号公報
【特許文献4】特開平05−286864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリマリンを10質量%以上含有する錠剤及びこれを1000kgf以下の打圧で連続的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.シリマリンを10質量%以上
、コラーゲン粉末を15〜50質量%、炭酸カルシウム粉末3〜10質量%、ヒドロキシプロピルセルロース0.5〜3質量%を含有し、錠剤硬度が少なくとも7kgfである錠剤。
2.シリマリンがマリアアザミ(シリバム・マリアナム:Silybum marianum)由来の抽出物である
1に記載の錠剤。
3.炭酸カルシウム粉末がホタテ貝殻粉末である1
又は2に記載の錠剤。
4.シリマリン
10質量%以上、コラーゲン粉末
を15〜50質量%、炭酸カルシウム粉末
を3〜10質量%、ヒドロキシプロピルセルロース
を0.5〜3質量%を含む粉末混合物の造粒物を打
錠することを特徴とする1〜
3のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、シリマリンを10質量%以上含有する錠剤及びその製造方法が提供される。本発明の錠剤は、錠剤として十分な硬度を有しているため、流通上も有利である。また本発明の方法は、低打圧で製造するためキャッピングが発生しにくい。そのためにコーティング工程中に錠剤の破損が発生せず、錠剤にフィルムコーティングや糖衣コーティングを施す事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】試験例の錠剤を製造する際の打錠圧と得られる錠剤の硬度変化を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、シリマリンを10質量%以上含有する錠剤であって、コラーゲン粉末、炭酸カルシウム粉末、ヒドロキシプロピルセルロースを含有することを特徴とする錠剤に関する発明である。
シリマリン(Silymarin;CAS No.65666−07−1)は、キク科マリアアザミ(学名シリバム・マリアナムSilybum marianum、別名オオアザミ、オオヒレアザミ、シスルアザミ;CASNo.84604−20−6)から抽出されるフラボノリグナンの総称であり、分子式C25H22O10で表される、シリビン(Silybin;CASNo.22888−70−6)、シリジアニン(Silydianin;CASNo.29782−68−1)、シリクリスチン(Silychristin;CASNo.33889−69−9)、イソシリビン(Isosilybin;CASNo.72581−71−6)などを含有している組成物である(天然薬物事典、奥田拓男編、廣川書店、昭和61年3月3日発行参照)。
【0011】
本発明においては、シリマリンを含む植物体から抽出した抽出物に含有される、これらのフラボノリグナンを含有している組成物を従来技術と同様、シリマリンと呼ぶ。例えば、シリマリンを含む植物体から抽出した抽出物としては、マリアアザミ抽出物がある。シリビン、イソシリビン、シリジアニン、シリクリスチンなどの成分を、本発明においてはシリマリン類と総称する。
またシリマリンは前記の通りフラボノリグナンの混合物であり、シリマリンとしての植物抽出物や植物中の含有量は、分光光度計による測定に基づいた方法(Wagner,H.,etal.,Arzneim.Forsch,18,696,1968.)、薄層クロマトグラフィーによる方法(Wagner,H.,etal.,Arzneim.Forsch,24,466,1974.)、高速液体クロマトグラフィーによる方法(Tittel,G.,etal.,J.Chromatogr.,135,499,1977.、Tittel,G.,etal.,J.Chromatogr.,153,227,1978.、Quercia,V.,etal.,Chromatography in Biochemistry,Medicine and Enviromental Research,Frigerio,A.(Ed).,Elsevier Scientific Publishing Company,Amsterdam,1983,p1.)により測定可能である。これらの測定法の中でも、分光光度計による測定に基づいた方法の一つである2,4−ジニトロヒドラジン分析は、ドイツ薬局方(Silybum marianumの果実に関するモノグラフ)に報告されており、広く用いられている。
【0012】
シリマリンをマリアアザミの果実から高純度で単離する方法として、70〜80%の純度で単離する方法や90〜96%の純度で単離する方法(特公昭63−41396号公報)が既に報告されている。シリマリンは通常マリアアザミの種実からエタノール、酢酸エチル、アセトンなどにより抽出し、スプレードライにより乾燥粉末として得られる抽出物原料として市販されている。本発明に使用するシリマリンはこのようにして調製されて、市販されているシリマリンをそのまま用いることができる。また、マリアアザミからシリビン、イソシリビン、シリジアニン、シリクリスチンなどのシリマリンの構成成分を濃縮した抽出物及びそれらを単離、精製して化合物として用いることができる。
本発明におけるシリマリンを含む植物体は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部、根、塊茎などの地下部、種子、樹脂などのすべての部位が使用可能である。
本発明におけるシリマリン及びそれを含む植物体は、それら自体を乾燥させた乾燥物及びそれらを、各種溶媒を用いて抽出する。例えば、水又はエタノール、メタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて抽出し、これを各種方法で溶剤を除去した後、乾燥させた粉末を本発明のシリマリンの原料として使用できる。
【0013】
本発明におけるシリマリン原料の植物体は、天然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥させたり、醗酵させたりしたものから常法により抽出する。また植物抽出物は、さらに常法に従って、再抽出、濃縮、粉末化などの処理を行って粉末として得ることができる。本発明にはこれらの粉末を使用することができる。また市販されているシリマリン粉末としては、「シリマリンET」や「シリマリンETG」など(いずれもインデナ社製)を例示できる。
シリマリンは、錠剤中に10〜50質量%配合することができる。50質量%を超えると、下記に説明するコラーゲン粉末及び炭酸カルシウム粉末、ヒドロキシプロピルセルロースの配合量が低下するため打錠適性が低下し、キャッピングの発生が増加するので好ましくない。
【0014】
コラーゲンは、3本のポリペプチド鎖が螺旋を巻いた構造を有し、約300nmの複数のコラーゲン分子が67nmずつずれて会合し、長いコラーゲン線維を形成する。コラーゲンは、魚や豚、牛などの生皮、腱、骨などを形成する主要タンパク質であるが、生体内に含まれる大部分は水に不溶性である。コラーゲンは不溶性ではあるが生体成分であり安全性に優れ、動物間で相同性が高いため免疫反応を起こしにくいなどの利点を有する。
一方、水溶性コラーゲンは、含水分量が多い、透明に溶液化された状態では熱変性温度が低いため、熱変性温度を向上させたコラーゲンもある。本発明においては、水不溶性のコラーゲンであっても水溶性コラーゲンであっても使用可能である。コラーゲンは、牛や豚などの家畜の皮や骨から抽出したものが一般的に使用可能であるが、魚由来のコラーゲンであっても良い。
本発明の錠剤には、コラーゲンの粉末を15〜50質量%配合することが好ましい。本発明に使用するコラーゲンとして、HACP−01(ゼライス社製)などを例示できる。
【0015】
本発明の錠剤には、炭酸カルシウム粉末を3〜10質量%を配合することが必要である。炭酸カルシウム粉末としては、ホタテ貝殻粉末、卵殻カルシウム粉末、サンゴカルシウム粉末から選択されるいずれか1以上の物質が好ましい。とくにホタテ貝殻粉末が好ましい。ホタテ貝殻粉末は、ホタテ貝の殻を粉末化したものとしては、ホタテ貝殻を焼成後粉末化したものが市販されている。しかし、一旦焼成すると炭酸カルシウム(CaCO
3)が酸化カルシウム(CaO)に変化するため好ましくない。
ホタテ貝殻粉末としては、ローラーミル等の粉砕装置により微粉砕され、分級し、粒子の大きさの整った粉末が市販されており、これを用いることができる。本発明に使用するホタテ貝殻粉末として、「ホタテ末」や「ホタテ末S」など(いずれもエヌ・シー・コーポレーション社製)を例示できる。
【0016】
本発明の錠剤には、ヒドロキシプロピルセルロースを0.5〜3質量%配合することが必要である。ヒドロキシプロピルセルロース(以下「HPC」)は、セルロースの水酸基を酸化プロピレンでエーテル化することで得られる。HPCは、多数のヒドロキシプロピル基(−OCH
2CH(OH)CH
3)を持つ。1グルコースあたりの置換された水酸基の平均数は置換度(degree of substitution, DS)として表され、これは最大3である。しかしヒドロキシプロピル基にも水酸基が含まれるため、反応途中にここもエーテル化される。そのため、1グルコースあたりのヒドロキシプロピル基の数であるモル置換度(moles of substitution, MS)は3より大きくなる。
セルロースは結晶性が高いため、HPCを水溶性とするにはMSを4以上にする必要がある。疎水基と親水基を持つため 下限臨界溶液温度(LCST)は約45℃で、これ以上の温度では不溶性となる。本発明においては水溶性であることが好ましい。
HPCは、食品添加物として広く利用されており、その安全性も熟知されている。HPCの分子量は、食品添加物として市販されているものとしては、質量平均分子量40000〜910000の範囲であるが、必要に応じて分子量の範囲を選択できる。本発明にあっては分子量の小さいものが好ましく、特に好ましくは、質量平均分子量が40000〜140000のものである。なおHPCの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)で容易に測定可能である。
食品添加物として市販されているHPCとしては、例えば日本曹達株式会社のセルニーSSL(分子量40000)、セルニーSL(分子量100000)、セルニーL(分子量140000)、セルニーM(分子量620000)、セルニーH(分子量910000)を例示することができる。
【0017】
本発明の錠剤は、シリマリン、コラーゲン粉末、炭酸カルシウム、HPCを混合・造粒し、これを打錠することで簡単に製造することができる。造粒は流動層造粒機を用いるのが良い。混合はV型混合機、ロッキングミキサ等一般的な混合機を用いる事ができる。本発明の錠剤にはセルロースやステアリン酸カルシウムなどの賦形剤や滑沢剤、その他の有効成分(生理活性成分)を添加することもできる。
打錠は、錠剤の製造に用いるロータリー式打錠機など一般的な成型打錠装置であれば良い。直径8〜9mmの錠剤の場合、打錠する際の打錠圧は、1000kgf以下とする。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を試験例、実施例、比較例により更に具体的に説明する。
試験例:シリマリン含有粉末の打錠試験
<試験方法>
下記の表1の組成の粉末より錠剤を調製して、打錠の状況を観察し、さらに錠剤の硬度試験を実施した。
なおシリマリンとして市販のシリマリン原末である「シリマリンETG」(インデナ社製)、炭酸カルシウム粉末として「ホタテ末」(エヌ・シー・コーポレーション社製)、HPCとしてセルニーSSL(日本曹達社製)を用いた。また滑沢剤として1質量%のステアリン酸カルシウムを添加した。尚、シリマリンETGは、あらかじめ粉砕機を用いて微粉末状に粉砕した。
【0019】
【表1】
【0020】
健康食品である錠剤はアルミ袋やボトルに詰めて販売されることが多いが、流通過程で錠剤の割れが発生しない為には、直径8〜9mmの錠剤において硬度7kgf以上を有していることが望ましい。実生産ではロータリー式打錠機を用いるが、生産性の観点から打錠回転数30rpm以上で生産できることが望ましい。ロータリー式打錠機を用いた実生産においてキャッピングを起こさないためには、打圧1000kgf以下で硬度7kgf以上の錠剤を得られる配合であることが望ましい。そこで、ロータリー式打錠機で打錠回転数30rpm、打圧1000kgfの場合と同程度の硬度を得られる、単発打錠機を用いた場合の製造条件として、打圧500kgfを設定した。すなわち単発式打錠機の打圧500kgfで硬度7kgf以上となる配合の条件を検討した。
各成分を秤量し、流動層造粒機で造粒した後にV型混合機で滑沢剤と混合した。単発打錠機(岡田精工社製)を用いて、300、400、500、600、1000kgfの打錠圧で打錠した。なお錠剤は200mg錠(直径8mm、R10mmの杵を使用)とした。打錠時のキャッピング発生状況を目視で確認し、また、得られた錠剤の硬度を硬度測定器(岡田精工社製)を用いて測定した。
【0021】
<結果>
図1に各錠剤の硬度と打錠圧の関係を示す。いずれの試験例も打圧を大きくすれば硬度7kgf以上の錠剤を得られるが、打圧500kgfにて硬度7kgf以上を得られたのは試験例4のみであった。尚、試験例5は試験例4からシリマリンを除いた配合であるが、試験例4と同等の硬度を示したことから、低打圧条件での錠剤硬度の上昇はコラーゲン粉末、ホタテ末、HPCの配合によることが分かった。また、別途賦形剤としてセルロース粉末とシリマリンを配合し打錠試験を行ったが、キャッピングが甚だしく、錠剤を得る事が出来なかった。
以上の試験から、実生産機のロータリー式打錠機にて、打圧1000kgf以下で硬度7kgf以上の直径8〜9mmの錠剤を得るには、試験例4の配合が必要であると考えられた。
【0022】
実施例・比較例
実生産に使用しているロータリー式打錠装置(畑鐵工所製AP−38 38本立て30rpm)を用いて下記の表2の実施例と比較例の組成の粉末を打錠成形した。打錠圧は300kgf〜1500kgfの範囲で設定した。実施例1、比較例1は直径8.5mm、R7mmの杵を使用した。比較例2は直径8mm、R6.5mmの杵を使用した。
【0023】
【表2】
【0024】
各成分は秤量後、流動層造粒機(フロイント製FLO−200)で造粒し、V型混合機を用いて滑沢剤を混合後に連続打錠した。下記の表3に示したように、実施例1の組成は打圧300kgfで硬度15.2kgfの錠剤が得られた。打圧300kgf〜900kgfの範囲で打錠したが、いずれもキャッピングの発生無く、連続的に目的の錠剤を製造することができた。比較例1では打圧700kgf以上ではキャッピング発生し製錠できなかった。キャッピングの発生しない打圧500kgfでは錠剤硬度3.5kgfであり、十分な硬度を持った錠剤が得られなかった。比較例2では打圧900kgf以上でキャッピングを発生し、打圧700kgfでは錠剤硬度5.5kgfとやはり不十分な硬度の錠剤であった。
上記の内容より、実施例1のみが、シリマリンを高配合した錠剤でありながら低打圧でキャッピングを起こさずに製造できる配合であった。
【0025】
【表3】