(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース部は、前記二つのフランジのうち、前記載置面に載置されたフランジを前記載置面に締結するための締結具が前記横幅方向において前記二つの側壁の間に配置された状態で、前記二つのフランジの間に挟み込まれていることを特徴とする請求項3に記載の柱持ち上げ用治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、柱部材の中には、
図1に図示するように互いに対向する二つのフランジを備えたものが存在する。このような構造の柱部材を持ち上げる際には、当該構造に適した治具を利用することになるが、その場合には、柱部材に対する治具の取り付け状態を、柱を持ち上げるために必要な力(反力)が適切に得られるような状態で安定させる必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、互いに対向する二つのフランジを備えた柱部材を適切に持ち上げるための治具を提供することである。また、本発明の他の目的は、上記の柱部材を治具によって適切に持ち上げることが可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の柱持ち上げ用治具によれば、互いに対向する二つのフランジを備えた柱部材を持ち上げるための柱持ち上げ用治具であって、ベース部と、該ベース部の底面からの突出量が変化するように進退することが可能な進退部と、を備え、前記ベース部は、該ベース部の前端側から前記二つのフランジの間に差し込まれて、前記二つのフランジの間に挟み込まれた状態で固定され、前記進退部は、該進退部の進退方向における一端に向かうに連れて前記ベース部の前端に近付くように傾斜しており、前記柱部材が載置される載置面に前記一端が近付く向きに移動して前記突出量が増加することにより前記載置面を押圧することで解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の柱持ち上げ用治具では、柱部材に設けられた二つのフランジ部の間にベース部を挟み込んだ状態で当該ベース部を固定する。かかる状態で、ベース部の底面から突出している進退部の一端部(進退方向における一端部)の突出量が増加するように当該進退部を移動させる。そして、柱部材が載置された載置面に進退部の一端が近付く向きに進退部が移動して上記の突出量が増加すると、それによってフランジ部とベース部との間に反力が生じる。かかる反力を利用して柱部材が持ち上げるようになる。また、進退部は、その一端に向かうに連れてベース部の前端に近付くように傾斜している。これにより、進退部がその一端にて柱部材の載置面を押圧している間には、その状態(押圧状態)を良好に維持することが可能となる。この結果、柱部材を持ち上げている期間中、上記の反力が安定し、以て、柱部材を適切に持ち上げることが可能となる。
【0008】
また、上記の構成において、前記ベース部の前端は、前記ベース部の高さ方向に対して傾いた傾斜面をなしていると、好適である。
上記の構成では、ベース部の前端がベース部の高さ方向に対して傾いた傾斜面となっているので、ベース部の前端がベース部の高さ方向に沿っている場合に比較して、ベース部を柱部材におけるフランジ間のスペース内に差し込み易くなる。
【0009】
また、上記の構成において、前記ベース部は、後壁と、前記ベース部の横幅方向において前記後壁の両脇に位置している二つの側壁と、を有し、前記後壁及び前記二つの側壁は、同一の金属材料によって構成されており、且つ、一体化されていると、より好適である。
上記の構成では、ベース部の各部(具体的には、後壁と二つの側壁)が同一の金属材料によって構成されており、かつ、一体化されている。分かり易く説明すると、ベース部の後壁及び二つの側壁は、U字状となるように金属材料を成形することで構成されている。これにより、ベース部の構造がよりシンプルなものとなり、また、ベース部の剛性を確保し易くなる。
【0010】
また、上記の構成において、前記ベース部は、前記二つのフランジのうち、前記載置面に載置されたフランジを前記載置面に締結するための締結具が前記横幅方向において前記二つの側壁の間に配置された状態で、前記二つのフランジの間に挟み込まれていると、更に好適である。
上記の構成では、ベース部が二つのフランジの間に挟み込まれた状態にあるとき、一方のフランジを柱部材の載置面に対して締結するための締結具が、ベース部の横幅方向において当該ベース部の側壁の間に位置するようになる。これにより、上記の締結具とベース部との干渉を避けつつ、ベース部を二つのフランジの間に挟み込むことが可能となる。
【0011】
また、上記の構成において、前記柱部材が、前記二つのフランジのそれぞれと隣り合う位置に設けられた支持部にて外壁パネルを支持する構成において、前記ベース部は、前記外壁パネルを前記支持部に支持させるために前記外壁パネルに取り付けられた支持部品が前記横幅方向において前記二つの側壁のうち、前記外壁パネルにより近い方の側壁と隣り合った状態で、前記二つのフランジの間に挟み込まれていると、より一層好適である。
上記の構成では、ベース部が二つのフランジの間に挟み込まれた状態にあるとき、外壁パネルを柱部材の支持部に支持させるために当該外壁パネルに取り付けられた支持部品が、ベース部の横幅方向において当該ベース部の側壁(厳密には、外壁パネルにより近い方の側壁)と隣り合っている。これにより、上記の支持部品とベース部との干渉を避けつつ、ベース部を二つのフランジの間に挟み込むことが可能となる。
【0012】
また、上記の構成において、前記ベース部は、前記ベース部の後端に取り付けられ、前記進退部を保持する保持部を備え、前記進退部は、ボルトネジによって構成され、前記保持部は、前記進退方向に沿って延出した長ナットによって構成されていると、尚一層好適である。
上記の構成では、進退部がボルトネジによって構成されており、当該ボルトネジが長ナットによって保持されている。かかる構成であれば、進退部をよりシンプルな構造とすると共に、当該進退部を構成するボルトネジの座屈を抑制することが可能となる。
【0013】
また、前述の課題は、本発明の柱持ち上げ方法によれば、互いに対向する二つのフランジを備えた柱部材を、柱持ち上げ用治具を用いて持ち上げる柱持ち上げ方法であって、(A)前記柱持ち上げ用治具が有するベース部を、該ベース部の前端側から前記二つのフランジの間に差し込んで、前記二つのフランジの間に挟み込まれた状態で固定することと、(B)前記柱持ち上げ用治具が有する進退部を、前記ベース部の底面からの突出量が変化するように進退させることと、(C)前記進退部の進退方向における一端が、前記柱部材が載置された載置面に近付く向きに前記進退部を移動させて前記突出量を増加させることにより、前記進退部の前記一端が前記載置面を押圧した際に前記二つのフランジ部の一方と前記ベース部との間に生じる反力によって、前記柱部材を持ち上げることと、を有し、(D)前記進退部を進退させる際には、前記一端に向かうに連れて前記ベース部の前端に近付くように傾斜した状態の前記進退部を進退させることにより解決される。
上記の方法によれば、互いに対向する二つのフランジを備えた柱部材を、適切に持ち上げることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに対向する二つのフランジを備えた柱部材に適した治具を提供し、当該治具を用いて上記の柱部材を適切に持ち上げることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る柱持ち上げ用治具、及び当該治具を用いた柱持ち上げ方法について説明することとする。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0017】
先ず、本実施形態に係る柱持ち上げ用治具及び柱持ち上げ方法について説明するにあたり、持ち上げられる柱部材(以下、対象柱10)について
図1を参照しながら説明する。
図1は、対象柱10及びその周辺を示す模式的に示す立面図である。
【0018】
対象柱10は、複数階の住宅の躯体を構成するものであり、厳密には、より上方の階(具体的には、2階以上の階)に配置される鉄骨柱である。また、対象柱10は、同じ階に位置する梁部材20(例えば、胴差)の上に載置されている。より詳しく説明すると、梁部材20は、H形鋼からなり、上下に並んで互いに対向する二つのフランジ(以下、上側梁フランジ21及び下側梁フランジ22)と、フランジ間に位置するウェブ(以下、梁ウェブ23)とを有する。そして、対象柱10は、上側梁フランジ21の上面に載置されている。すなわち、上側梁フランジ21の上面は、対象柱10が載置された載置面に相当する。
【0019】
また、対象柱10は、
図1に示すようにH形鋼からなる下端部12を備えている。この下端部12は、上下方向に並んで互いに対向する二つのフランジ(以下、上側柱フランジ13及び下側柱フランジ14)と、フランジ間に位置するウェブ(以下、柱ウェブ15)とを有する。また、下端部12は、その直上位置にある柱本体11が上側柱フランジ13にて溶接されることで当該柱本体11に接合されている。また、下端部12の下側柱フランジ14は、上側梁フランジ21の上面に載った状態で当該上側梁フランジ21にボルト17(締結具に相当)によって締結されている。
【0020】
また、対象柱10及び梁部材20は、住宅の外壁を構成する外壁パネルを支持する機能を備えている。具体的に説明すると、住宅の外壁を構成する外壁パネルは、鉛直方向において複数並べて配置される。対象柱10は、上下方向において隣り合う2つの外壁パネルのうち、より上方の外壁パネル(以下、上方パネルPu)を支持し、梁部材20は、より下方の外壁パネル(以下、下方パネルPl)を支持している。
【0021】
対象柱10及び梁部材20の各々における外壁パネルの支持構造について説明すると、対象柱10の下端部12は、上方パネルPuの裏面と対向する位置に設けられたパネル取り付けプレート16を有する。このパネル取り付けプレート16は、支持部に相当し、
図1に示すように、上側柱フランジ13及び下側柱フランジ14の各々と隣り合う位置に設けられている。また、パネル取り付けプレート16には、比較的大径となった円穴が形成されている。この円穴に上方パネルPuの裏面から突出したフックボルト18(支持部品に相当)の頂部が挿入された後に上方パネルPuが自重落下すると、フックボルト18が上記の円穴の縁部に係合するようになる。これにより、上方パネルPuの下端部が対象柱10によって支持されるようになる。
【0022】
なお、上方パネルPuの上端部は、不図示の固定機構によって対象柱10の上端部に固定されている。つまり、上方パネルPuの上端部及び下端部は、いずれも対象柱10によって支持されていることになる。
【0023】
一方で、梁部材20は、
図1に示すように、下方パネルPl法面と対向する位置に設けられたパネル固定プレート24を有する。このパネル固定プレート24は、上側梁フランジ21及び下側梁フランジ22の各々と隣り合う位置に設けられている。また、パネル固定プレート24には、複数のボルト穴(
図1では、図示を簡略化するため1個のみ図示)が形成されている。そして、それぞれのボルト穴に挿入された固定ボルト25によって下方パネルPlがパネル固定プレート24に固定される。これにより、下方パネルPlの上端部が梁部材20によって固定支持されるようになる。
【0024】
ところで、上方パネルPu及び下方パネルPlは、上下方向においてパネル間に隙間(所謂、横目地)が形成された状態で対象柱10や梁部材20に支持されている。そして、上述した構成においてパネル間の隙間を上下方向に広げる場合には、梁部材20に固定支持された下方パネルPlを動かすことができないため、上方パネルPuを上方に動かすことになる。ここで、上方パネルPuが対象柱10に支持されているため、当該上方パネルPuを上方に動かすためには、対象柱10を上方パネルPuと共に持ち上げることになる。その上で、対象柱10とその載置面との間、具体的には下側柱フランジ14の下面と上側梁フランジ21の上面との間にスペーサ(不図示)を介在させる。この結果、パネル間の隙間が当該スペーサの厚み分だけ広げられるようになる。
【0025】
そして、対象柱10を持ち上げるにあたり、本実施形態に係る柱持ち上げ用治具(以下、本治具1)を用意して対象柱10に取り付ける。そして、対象柱10に取り付けられた状態の本治具1を操作することにより、対象柱10が持ち上げるようになる。以下では、本治具1の構成及びその利用方法について詳しく説明することとする。
【0026】
先ず、本治具1の構成について
図2及び3を参照しながら説明する。
図2及び3は、本治具1を示す図であり、
図2は、本治具1を側方から見たときの図であり、
図3は、下方から見たときの図である。なお、
図2では、本治具1の前後方向を矢印にて図示しており、
図3では、後述するベース部2の横幅方向を矢印にて図示している。
【0027】
本治具1は、作業者(本治具1のユーザ)が把持可能なサイズとなっており、
図2に図示の外形形状をなしている。本治具1は、同図に示すように、ベース部2と保持部3と進退部4とを有している。また、本治具1は、
図2に図示したようにベース部2の高さ方向が上下方向(鉛直方向)に沿った状態で用いられる。つまり、本治具1は、ベース部2の底面が下方を向き、ベース部2の頂面が上方を向いた状態で利用される。
【0028】
ベース部2は、本治具1中、対象柱10に取り付けられる部分である。このベース部2は、比較的背高に形成されており、上側柱フランジ13及び下側柱フランジ14の間隔と略等しい高さを有している。また、ベース部2は、側方視では
図2に示すように平行四辺形状となっており、下方から見たときには
図3に示すように略U字状となっている。具体的に説明すると、ベース部2は、
図3に示すように、後壁2aと、ベース部2の横幅方向において後壁2aの両脇に位置している二つの側壁2bとを有している。
【0029】
そして、後壁2a及び二つの側壁2bは、同一の金属材料(鋼材)によって構成されており、且つ、一体化されている。より詳細に説明すると、後壁2a及び二つの側壁2bは、比較的厚肉な平板鋼材からなり、当該平板鋼材をU字状に加工成形することで構成されている。
【0030】
また、二つの側壁2bのそれぞれの前端面は、ベース部2の前端に位置し、本実施形態ではベース部2の高さ方向(上下方向)に対して傾斜している。より厳密に説明すると、各側壁2bの前端面は、
図2に示すように下方に向かうほど前側に位置するように傾いた傾斜面となっている。なお、二つの側壁2bの前側部分は、互いに離間しており、換言すると、ベース部2の前端は、開口端となっている。
【0031】
後壁2aは、側壁2bの前端面と略同じ傾斜角度だけベース部2の高さ方向に対して傾斜した状態でベース部2中に設けられている。そして、後壁2aの後面には保持部3が溶接にて接合されている。保持部3は、本治具1中、進退部4を保持する部分である。この保持部3は、長ナットにより構成されており、後壁2aの後面に沿わせた状態で当該後面に接合されている。つまり、保持部3についても、側壁2bの前端面と略同じ傾斜角度だけベース部2の高さ方向に対して傾斜した状態でベース部2に取り付けられている。また、
図2に示すように、保持部3の下端(延出方向一端)は、ベース部2の底面よりもやや上方に位置し、保持部3の上端(延出方向他端)は、ベース部2の頂面よりも幾分下方に位置している。
【0032】
進退部4は、本治具1中、ベース部2の底面からの突出量が変化するように進退することが可能な部分である。この進退部4は、ボルトネジによって構成されており、保持部3に形成されたネジ孔に螺合されており、当該ネジ孔の延出方向(すなわち、保持部3の延出方向)に沿って進退する。つまり、進退部4の進退方向(
図2中、記号Rが付された方向)は、保持部3の延出方向に沿っている。
【0033】
また、進退部4は、その中心軸が保持部3と略同じ傾斜角度だけベース部2の高さ方向に対して傾斜した状態で保持部3に保持されている。つまり、本実施形態において進退部4は、その進退方向における一端(分かり易くは、進退部4の先端)に向かうに連れてベース部2の前端に近付くように傾斜した状態で本治具1中に設けられている。
【0034】
以上までに本治具1の構成について説明したが、上述した本治具1各部の形状、寸法及び材質は、あくまでも一例であり、本発明が奏する効果が得られる範囲内で自由に設定することが可能である。
【0035】
次に、本治具1の使用方法、すなわち、本治具1を用いて対象柱10を持ち上げる方法について説明する。なお、以下に説明する方法は、本発明の柱持ち上げ方法に相当する。対象柱10を持ち上げるに際し、作業者は、本治具1を把持している手を対象柱10の下端部12に近づけ、その後に当該下端部12に本治具1を取り付ける。かかる工程について
図4を参照しながら詳細に説明する。
図4は、本治具1を対象柱10に取り付ける様子を当該対象柱10の上方から見たときの図である。
【0036】
対象柱10と同じ階に配置された床パネル30と、対象柱10が支持する外壁パネル(厳密には、上方パネルPu)との間には開口が形成されている。作業者は、当該開口を通じて対象柱10の下端部12にアクセスする。つまり、作業者は、
図4に示すように本治具1を把持した手を上記の開口に入れた後、その手を同図中の矢印方向に動かす。
【0037】
なお、床パネル30と上方パネルPuとの間に形成されている開口は、一般的に幅狭になっている。このため、本治具1のサイズ(特に、ベース部2の横幅)については、上記の開口にスムーズに入れられる大きさであるとよい。
【0038】
そして、作業者は、本治具1中のベース部2を、当該ベース部2の前端側からフランジ間スペースS内に差し込む。ここで、フランジ間スペースSとは、上側柱フランジ13と下側柱フランジ14との間に形成されたスペースであり、より厳密には各フランジの外側半分の部分と柱ウェブ15とパネル取り付けプレート16とによって囲まれる空間である。
【0039】
なお、本実施形態では、ベース部2の前端が当該ベース部の高さ方向(上下方向)に対して傾いた傾斜面となっているため、ベース部2をその前端からフランジ間スペースS内に差し込む際には比較的スムーズに差し込むことが可能である。
【0040】
そして、ベース部2をその前後方向中途位置までフランジ間スペースS内に差し込むことにより、当該ベース部2がフランジ間スペースS内で固定されるようになる。かかる状態において、ベース部2は、
図5に示すように、上下方向において上側柱フランジ13及び下側柱フランジ14の間に挟み込まれている。つまり、ベース部2がフランジ間スペースS内で固定された状態では、同図に示すように、ベース部2の頂面(上端面)が上側柱フランジ13の下面に当接しており、ベース部2の底面(下端面)が下側柱フランジ14の上面に当接している。
図5は、ベース部2がフランジ間スペースSに固定されている状態を側方から見たときの図である。
【0041】
以上のようにベース部2が上側柱フランジ13及び下側柱フランジ14の間に挟み込まれた状態で固定されることにより、本治具1が対象柱10の下端部12に取り付けられる。なお、本治具1が対象柱10の下端部12に取り付けられた状態では、
図6に示すように、下側柱フランジ14を上側梁フランジ21に締結しているボルト17の先端部(厳密には、下側柱フランジ14から突き出た部分)が、ベース部2の横幅方向において当該ベース部2が有する二つの側壁2bの間に位置している。
図6は、ベース部2がフランジ間スペースSに固定されている状態を、
図5中の矢視A方向から見たときの図である。
【0042】
つまり、ベース部2は、上記のボルト17の先端部がベース部2の横幅方向において二つの側壁2bの間に配置された状態でフランジ間スペースS内に固定されている。このような構成により、上記のボルト17とベース部2との干渉を避けながら当該ベース部2をフランジ間スペースS内に固定することが可能となる。
【0043】
また、本治具1が対象柱10の下端部12に取り付けられた状態では、
図6に示すように、上方パネルPuから延出して対象柱10のパネル取り付けプレート16の円穴に係合しているフックボルト18の頂部が、ベース部2の横幅方向において当該ベース部2が有する二つの側壁2bのうち、上方パネルPuにより近い方の側壁2bと隣り合っている。
【0044】
つまり、ベース部2は、上記のフックボルト18の頂部がベース部2の横幅方向において上方パネルPuにより近い方の側壁2bと隣り合った状態でフランジ間スペースS内に固定されている。このような構成により、上記のフックボルト18の頂部とベース部2との干渉を避けながら当該ベース部2をフランジ間スペースS内に固定することが可能となる。以上のように、本実施形態に係るベース部2は、上記のボルト17やフックボルト18との干渉を避けながらフランジ間スペースSに固定するのに適した形状及びサイズとなっている。
【0045】
本治具1の使用方法の説明に戻ると、ベース部2をフランジ間スペースS内に固定した後、作業者は、所定の工具を用いて進退部4を操作して当該進退部4を進退させる。より具体的に説明すると、進退部4の先端部4aにおけるベース部2の底面からの突出量が増加するように進退部4を進退(厳密には下方に向かって進行)させる。
【0046】
なお、本実施形態では、進退部4がベース部2の高さ方向に対して傾いた状態で進退することになっている。より詳しく説明すると、本実施形態において進退部4を進退させる際には、先端に向かうに連れてベース部2の前端に近付くように傾斜した状態にある進退部4を、当該傾斜方向に沿って進退させることになる。
【0047】
進退部4の進退動作(厳密には、下方への進行動作)により、進退部4の先端(一端)が上側梁フランジ21の上面に徐々に近づき、やがて上側梁フランジ21の上面に載置された養生プレートtに当接するようになる。かかる状態において進退部4を操作して上記の突出量を更に増加させると、進退部4の先端が養生プレートtを介して上側梁フランジ21の上面を押圧するようになる。そして、進退部4の先端が上側梁フランジ21の上面を押圧すると、これに伴って、上側柱フランジ13の下面とベース部2の頂面との間に反力(
図5中、記号Fにて示す力)が生じる。この反力Fによって上側柱フランジ13が上方に押し上げられる結果、対象柱10全体が持ち上がるようになる。
【0048】
なお、本実施形態では、進退部4の先端部が養生プレートtに当接し、進退部4が当該養生プレートtを介して上側梁フランジ21の上面を押圧することとしたが、進退部4の先端が上側梁フランジ21の上面に当接した状態で直接上側梁フランジ21の上面を押圧することも可能である。
【0049】
次に、本治具1の有効性について、
図7に図示した従来の柱持ち上げ用治具100と対比しながら説明することとする。
図7は、従来の柱持ち上げ用治具を示す図であり、
図5と対応した図である。
【0050】
従来の柱持ち上げ用治具100は、
図7に示すように、ベース部101と保持部102と進退部103とを有する。これらの部分は、それぞれ本治具1のうち、対応する部分と同様の機能を担っている。具体的に説明すると、ベース部101は、対象柱10の下端部12に取り付けられる部分であり、保持部102は、進退部103を保持する長ナットであり、進退部103は、対象柱10を持ち上げる際に操作されるボルトネジである。
【0051】
ここで、従来例に係るベース部101は、例えば厚板の鋼板からなり、その上面が上側柱フランジ13の下面に当接した状態で対象柱10の下端部12に取り付けられる。また、ベース部101が上記の状態にあるとき、進退部103は、その中心軸が鉛直方向に沿った状態で保持部102により保持されている。
【0052】
そして、ベース部101が上側柱フランジ13の下面に当接した状態で進退部103を操作し、当該進退部103の先端が上側梁フランジ21の上面に載置された養生プレートtに当接する位置まで進退部103を下方に向かって移動させる。その後、進退部103を引き続き操作し、保持部102の下端からの突出量が更に増加するように進退部103を移動させると、進退部103の先端が養生プレートtを介して上側梁フランジ21の上端を押圧するようになる。これに伴って、上側柱フランジ13の下面とベース部101の頂面との間には上向きの反力が生じ、この反力によって上側柱フランジ13が押し上げられる。
【0053】
一方、ベース部101は、上記の反力とは反対向きの抗力(すなわち、下向きの力)を上側柱フランジ13から受けるようになる。この抗力によって従来の柱持ち上げ用治具100全体が
図7中の矢印方向に回転する。このように治具全体が回転してしまうと、進退部103の先端が養生プレートt上を滑り、やがて進退部103の先端が上側梁フランジ21の上面から離れるために上記の反力が得られなくなり、この結果、対象柱10が持ち上がらなくなってしまう(厳密には、持ち上げられていた状態の対象柱10が自重落下してしまう)。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る柱持ち上げ用治具(すなわち、本治具1)であれば、ベース部2が上側柱フランジ13及び下側柱フランジ14の間に挟み込まれた状態で固定されているため、従来例のように治具全体が回転するような状況を回避することが可能である。また、本治具1に備えられた進退部4は、下端に向かうに連れてベース部2の前端に近付くように傾斜している。したがって、
図7に図示した矢印方向と同じ方向に本治具1が仮に回転したとしても、進退部4の先端が上側梁フランジ21の上面を押圧している状態を維持することが可能となる。このように
進退部4がその先端にて上側梁フランジ21の上面を押圧している状態が良好に維持される結果、対象柱10を持ち上げるための力(すなわち、反力)を安定させ、以て、当該対象柱10を適切に持ち上げることが可能となる。
【0055】
以上までに本実施形態に係る柱持ち上げ用治具の構成について説明してきたが、上記の内容は、あくまでも一例であり、他の構成が考えられる。例えば、上記の実施形態では、ベース部2の前端が傾斜面であることとしたが、これに限定されるものではなく、ベース部2の前端が当該ベース部2の高さ方向に沿った面(すなわち、底面から垂直に延出した面)であってもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、進退部4がボルトネジによって構成されていることとした。ただし、進退部4については、ベース部2の底面からの突出量が変化するように進退可能なものであればよく、例えばノック式の進退構造を採用した部品を進退部4として利用してもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、ベース部2が厚肉の平板鋼材によって構成されており、その形状が下面視で略U字状となっていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、ベース部2がブロック体によって構成されていてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、持ち上げられる柱部材(すなわち、対象柱10)が外壁パネルを支持する機能を有することとした。ただし、これに限定されるものではなく、持ち上げられる柱部材は、外壁パネルを支持する機能を備えていないものであってもよく、例えば、柱としての通常の機能のみを有するものであってもよい。