(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上部開口部を有すると共に底部に横一列に並ぶ多数の開閉可能な排出孔を有し、内部に高粘度液体を貯留可能な横長のホッパーと、当該ホッパーを散布方向に移動させる左右の車輪と、前記ホッパーから後方に延びる柄本体と、前記各排出孔を開閉操作する操作部を備え、
前記ホッパーの底部内面に沿って左右にスライド可能でまたは前記ホッパーの底部内面に当接可能で前記操作部からの操作により前記各排出孔を開閉する開閉部材を備え、
前記操作部が、前記開閉部材を左右にスライド操作する操作片と、操作片からの操作動作を前記開閉部材に伝達する操作アームを備えると共に、前記開閉部材が各排出孔に対応する位置に多数の連通孔を有しており、
操作片の閉操作に従い前記開閉部材が一方向にスライドして各排出孔を閉じ、操作片の開操作に従い開閉部材が他方向にスライドして各連通孔が各排出孔に重なって各排出孔を開くように構成されていることを特徴とする高粘度液体散布機。
前記ホッパーの上部開口部に設置される穴あけ枠体を備え、当該穴あけ枠体は鋭利部を有して高粘度液体の収容容器が前記ホッパーの上部開口部にセットされるとき前記鋭利部により前記収容容器の底面に液体吐出口を開口せしめることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高粘度液体散布機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の装置は溶融アスファルトを塗膜防水材として散布するもので、主に路面用に使用されるものである。特許文献3の装置はウレタン樹脂やエポキシ樹脂材料と硬化剤をポンプで圧送して現場で吐出させ塗り広げるもので、例えば屋上の防水工事に使用するには、地上からホースを屋上まで延ばしてポンプで防水材料を圧送しなければならず、装置が大掛かりとなる。
【0006】
本発明は、屋上など搬入が難しい場所に容易に搬入可能で防水工事に適し、作業労力の軽減と作業精度の向上を図ることが可能な高粘度液体散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、
上部開口部を有すると共に底部に横一列に並ぶ多数の開閉可能な排出孔を有し、内部に高粘度液体を貯留可能な横長のホッパーと、当該ホッパーを散布方向に移動させる左右の車輪と、前記ホッパーから後方に延びる柄本体と、前記各排出孔を開閉操作する操作部を備え、
前記ホッパーの底部内面に沿って左右にスライド可能でまたは前記ホッパーの底部内面に当接可能で前記操作部からの操作により前記各排出孔を開閉する開閉部材を備え、
前記操作部が、前記開閉部材を左右にスライド操作する操作片と、操作片からの操作動作を前記開閉部材に伝達する操作アームを備えると共に、前記開閉部材が各排出孔に対応する位置に多数の連通孔を有しており、操作片の閉操作に従い前記開閉部材が一方向にスライドして各排出孔を閉じ、操作片の開操作に従い開閉部材が他方向にスライドして各連通孔が各排出孔に重なって各排出孔を開くように構成されていることを主要な特徴とする。
【0010】
本発明は、前記ホッパーの移動距離を計測する計測器を備えることを第4の特徴とする。
【0011】
本発明は、 前記ホッパーの上部開口部に設置される穴あけ枠体を備え、当該穴あけ枠体は鋭利部を有して高粘度液体の収容容器が前記ホッパーの上部開口部にセットされるとき前記鋭利部により前記収容容器の底面に液体吐出口を開口せしめることを第5の特徴とする。
【0012】
本発明は、前記ホッパーの上部開口部に前記穴あけ枠体を左右一対設置可能であることを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、屋上施工面等に対し熟練者でなくても安定した作業品質、作業精度を確保ながら、防水施工等を効率よく短期間で行うことができ、また、大掛かりな機械を導入したり使用せずに済み、施工費用の大幅な低減を図ることができるという優れた効果を奏する。
【0014】
また、従来の防水施工等は大変な労力を必要としたが、作業者の作業負担の大幅な軽減を図れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1ないし
図3において、符号100は本発明に係る高粘度液体散布機を示している。
【0018】
高粘度液体散布機100(以下、散布機100という)の構造をまず説明すると、
図1および
図2に示すように、散布機100は、横長のホッパー110と、ホッパー110を固定状態に支えるフレーム120と、フレーム120に取り付けられた左右の車輪130と、フレーム120から後方に延びる柄本体140と、操作部150と、計測器160を備えた構成とされている。
【0019】
ホッパー110は、上部開口部111を有すると共に内部に高粘度液体を貯留する液体貯留室112を有する横長の箱型形状をしている。液体貯留室112の下部は下端に行くに従い前後方向幅が狭くなるテーパー形状をしており、底部112aの中央には
図3に示すように2列に並ぶ多数の排出孔113が設けられている。排出孔113の位置に合わせて液体貯留室112の内部にはテーパー状の断面形状を有して液体貯留室112の底面に沿って左右にスライド可能な開閉板114が配置されている。
【0020】
開閉板114には前記2列の各排出孔113の位置に応じて2列に並ぶ多数の連通孔115が設けられており、開閉板114の左右のスライド操作により各排出孔113が一度に開閉されるようになっている。
【0021】
フレーム120の後部には斜め下向き後方に延びる支持部131を介して前記左右一対の車輪130が回転自在に取り付けられると共に、フレーム120の前部には斜め下向き前方に延びる前部支持片132が取り付けられている。さらにフレーム120の後部には斜め上向き後方に延びる前記柄本体140の前部が取り付け支持されている。
【0022】
柄本体140の後部には把持部141が設けられると共に、把持部141の近傍に開閉板114を左右にスライド操作する操作部150の操作レバー151が取り付けられている。操作部150はホッパー110の底部112aに設けられた2列の排出孔113を開閉操作するもので、前記操作レバー151と、操作レバー151から柄本体140に沿って前方に延びホッパー110内の開閉板114に係合する操作アーム152を備えている。
【0023】
操作アーム152は柄本体140に固定された支持受け部153に回動自在に支持されると共に、ホッパー110の後面に設けられた支持孔116に回動自在に支持されている。操作アーム152の前端はホッパー110内で下向きに延び、開閉板114の中央に跨るように固定された支持受け部154の支持孔155に係合している。
【0024】
上記構造により、操作部150は、操作レバー151を一方向(例えば把持部141側から見て時計回り)に回動させると、操作アーム152が一方向に回動して、ホッパー110内で開閉板114が左右一方向(例えば把持部141側から見て左方向)にスライドし、2列の各排出孔113を閉じるようになっている(
図4(A)参照)。また、操作レバー151を他方向(例えば把持部141側から見て反時計回り)に回動させると、操作アーム152が他方向に回動して、ホッパー110内で開閉板114が左右他方向(例えば把持部141側から見て右方向)にスライドし、2列の各排出孔113を開くようになっている。
【0025】
計測器160は、散布機100の走行距離を計測するもので、フレーム120から後方に延びる支持部161を介して計測器本体162が支持され、計測器本体162に自重で施工面Fに接地して駆動する回転ローラー163が取り付けられている。当該回転ローラー163の回転によって散布機100の走行距離を計測するようになっている。
【0026】
上記構成の散布機100において、
図5に示すように、ホッパー110の上部開口部111には平面視して矩形状の穴あけ枠体170を複数設置可能とされている。穴あけ枠体170はホッパー110の上部開口部111に設置されて、高粘度液体の収容缶10の底面11に液体吐出口12(
図6参照)を開口せしめるもので、矩形状の枠本体171と、枠本体171に支持された鋭利部172から構成されている。
【0027】
上記鋭利部172は枠本体171の四隅から中心に延びる4つの三角片172aからなり、4つの三角片172aが集まった中央の頂部が鋭利な形状をしている。その結果、
図6(A)から
図6(B)に示すように、穴あけ枠体170が設置されたホッパー110に対し上方から収容缶10をゆっくりと下ろすと穴あけ枠体170の鋭利部172が収容缶10の底面11に当たって底面を突き破り、底面11に液体吐出口12を開口せしめ、内部の混合液Kをホッパー110の貯留室112内に貯留できるようになっている。
【0028】
なお、ホッパー110の上部開口部111は収容缶10の大きさに合わせた大きさに設定され、底面11に液体吐出口12が開口された後の収容缶10は、内部の高粘度液体が下方の貯留室112内に全部吐出されるまで、ホッパー110の上部開口部111に保持できるようになっている。
【0029】
次に、上記のように構成された散布機100を用いて、
図8を参照しながら、建物屋上の施工面に対し、高粘度液体の例として防水材料(ウレタン樹脂溶液と硬化剤の混合液)を散布する作業手順について説明する。
(下準備)
【0030】
まず、建物屋上の施工面に対し下地処理を行う。次いでプライマー塗布後、装填量に基づいてマーキングを行う。マーキング位置は防水材料が1セット18kg(9kg×2)で使用量が2kg/m2の場合は散布開始位置から9mの位置、使用量が1.5kg/m2の場合は散布開始位置から12mの位置とする。本実施形態では複数列にわたり散布を行う。
(防水材料の装填)
【0031】
次に、1列目の散布開始位置に置かれた散布機100に対し、ホッパー110内の各排出孔113が開閉板114で閉じている状態(
図4(A))を確認し、ホッパー110内に防水材料を装填する。防水材料はウレタン樹脂溶液入りの一組の収容缶10に硬化剤を投入して攪拌した後、同収容缶10から混合液を前記散布機100のホッパー110に装填する。
【0032】
このとき、
図5に示すように、散布機100の上部開口部111には一組の穴あけ枠体170を設置しておき、
図6(A)から
図6(B)に示すように、各収容缶10を上から各穴あけ枠体170に下ろすと、各収容缶10の重みと穴あけ枠体170の鋭利部172の作用で各収容缶10の底面11に液体吐出口12を開口させることができる。これにより、内部の混合液からなる防水材料Kが液体吐出口12から下の液体貯留室112内に装填され、その間、各収容缶10はホッパー110の上部開口部111内に保持される。各収容缶10は内部の防水材料Kの排出後、ホッパー110から外す。
(散布開始)
【0033】
1列目の散布開始位置に置かれた散布機100に対し、作業者が柄本体140の把持部141を少し下げて、
図7に示すように前部支持片132を施工面Fから浮かすと共に、操作レバー151を開方向に回動させて開閉板114を開方向にスライドさせ、これにより各排出孔113を開き(
図4(B)参照)、同時に散布機100を散布方向(
図7および
図8の矢印方向)に一定速度で移動させる。
【0034】
散布機100の移動中、ホッパー110の液体貯留室112内に装填された防水材料は2列に並ぶ多数の排出孔113から施工面Fに対し一定量排出される。そして液体貯留室112に残る防水材料がマーキング位置まで継続的に散布される。散布距離は計測器160により正確に計測することができる。
【0035】
施工面F上に散布された防水材料は、散布機100の移動と共に、ローラーによって素早く均し作業を行う。
【0036】
1列目の散布が終わったら、
図8を参照して散布機100を元の散布開始位置に戻し、1列目の手順に従い、2列目以降の散布を継続して行う。このとき、2列目のローラーの均し作業を前列まで重ねて行うと、さらに膜厚の均質性が得られるようになる。
【0037】
以上の手順に従い、散布機100によるマーキング位置までの散布移動、ローラーによる散布材料の均し、散布機100の散布開始位置への復帰、散布機100への防水材料(混合液)の充填を繰り返すことにより、1列目から最終列まで防水材料を切れ目無く効率的に散布することができる。
【0038】
上記散布機100を用いることにより、次の効果を奏する。
【0039】
(1)屋上施工面等に対し熟練者でなくても安定した作業品質、作業精度を確保ながら、防水施工を効率よく短期間で行うことができる。
【0040】
(2)大掛かりな機械を導入したり使用せずに済み、施工を短期間で行えることも加え、施工費用の大幅な低減を図ることができる。
【0041】
(3)穴あけ枠体を組み合わせて用いることで、収容缶から高粘度液体をホッパー内に楽にかつ速やかに装填し、補充することができ、散布作業の迅速化、作業負担の大幅軽減を図ることができる。
(4)計測器を用いることで、散布作業の作業精度の向上に寄与できるし、事前のマーキング作業の省略も可能である。
【0042】
上記実施形態では散布液としてウレタン樹脂溶液と硬化剤を混ぜた混合液を挙げたが、これに限らない。ウレタン樹脂溶液は水性タイプまたは溶剤タイプを含む。散布する高粘度液体は防水材料に限らず、塗装材料、塗膜材料、シーリング材料などについても適用可能である。
【0043】
図9は、本発明に係る高粘度液体散布機の他の実施形態を示すもので、同図に示す散布機100’は、棒状の操作部材181により操作される横長の開閉部材182によりホッパー110の各排出孔113を開閉するようになっている。横長の開閉部材182の底面には各排出孔113を閉じる凸状の複数の栓183が設けられている。
【0044】
図9の散布機100’によると、開閉部材182の栓183によりホッパー110の各排出孔113を閉じた状態で混合液Kをホッパー110内に装填し、操作部材181を把持して開閉部材182を引き上げると各排出孔113が開口し、ホッパー110内の混合液Kを散布することができる。
【0045】
かくして、本発明によれば、従来の方法に比べて、作業精度の向上や作業期間の短縮を図れると共に、作業者の負担軽減を図れる高粘度液体散布機を実現することができた。