特許第6647962号(P6647962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647962調理器用の調理蓋、及びそれを備えた調理器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647962
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】調理器用の調理蓋、及びそれを備えた調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20200203BHJP
   A47J 36/06 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   A47J27/00 101D
   A47J36/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-98067(P2016-98067)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-205173(P2017-205173A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】濱中 貴大
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雅一
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−119222(JP,U)
【文献】 意匠登録第1515238(JP,S)
【文献】 特開平06−269359(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3117805(JP,U)
【文献】 実開昭59−061728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/06
A47J 19/00−19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理鍋への装着状態において、調理蓋本体の上方側の蓋外面に上方把持部を備えると共に、前記調理鍋の鍔部に支持される蓋フランジ部を備え、
前記上方把持部が、当該上方把持部を載置面上に載置するときに、前記蓋フランジ部を水平方向に対して傾斜させ且つ前記載置面から離間した状態で載置支持する傾斜支持部位を有する調理器用の調理蓋において、
前記上方把持部と前記蓋フランジ部との双方が前記載置面に接地している状態で、前記調理蓋の重心からの鉛直線が前記傾斜支持部位と重畳し、
前記上方把持部は、前記調理鍋への装着状態において、平面視で、前記上方把持部の重心を中心とした周方向で複数の前記傾斜支持部位を併設している調理器用の調理蓋。
【請求項2】
前記上方把持部は、前記調理鍋への装着状態において、平面視で、前記上方把持部の重心を中心とした周方向で少なくとも5つ以上の前記傾斜支持部位を併設している請求項に記載の調理器用の調理蓋。
【請求項3】
前記上方把持部は、当該上方把持部を載置面上に載置するときに、前記傾斜支持部位とは別に、前記蓋フランジ部を水平方向に沿わせた状態で載置支持する水平支持部位を備える請求項1又は2に記載の調理器用の調理蓋。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一項に記載の調理器用の調理蓋を備える調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理鍋に着脱する調理器用の調理蓋、及びそれを備えた調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱ヒータ部を備えた調理器本体に載置される調理鍋に着脱する調理蓋として、調理鍋への装着状態において、調理蓋の上方側の蓋外面、即ち、調理鍋に対向する蓋内面とは反対側の面に上方把持部を有すると共に、調理鍋の鍔部に支持される蓋フランジ部を有する調理器用の調理蓋が知られている(特許文献1を参照)。
当該特許文献1に記載の調理器用の調理蓋は、特許文献1の図23、24に示すように、上方把持部が、上方把持部を載置面上に載置するときに、蓋フランジ部を水平方向に対して傾斜させ且つ載置面から離間した状態で載置支持する傾斜支持部位を有する。
当該構成を採用することにより、調理蓋は、蓋フランジ部が載置面から離間した状態で載置支持されるので、調理中において、比較的高温となった蓋フランジ部が載置面に接触し、載置面が熱損傷することを防止できる。
更には、蓋フランジ部を水平方向に対して傾斜させた状態で調理蓋を載置面上に載置できるから、使用者が調理蓋本体と載置面との間の上方把持部を把持し易く、操作性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−201876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前提として、上方把持部が載置面に当接した状態で、調理蓋を載置面に載置した場合を考える。
上記特許文献1に記載の調理器用の調理蓋にあっては、調理蓋に外力が加わった場合、蓋フランジ部が載置面に接触し、更には、その蓋フランジ部が載置面に接触した状態が維持されることになるため、高温の蓋フランジ部により、載置面が熱損傷する虞があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、調理蓋の蓋内面を上方へ向け、上方把持部を載置面に載置する場合において、何らかの原因で調理蓋に外力が加わり、蓋フランジ部が載置面に接触することがあっても、当該蓋フランジ部が載置面に接触し続けることを防止できる調理器用の調理蓋、及びそれを備えた調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための調理器用の調理蓋は、
調理鍋への装着状態において、調理蓋本体の上方側の蓋外面に上方把持部を備えると共に、前記調理鍋の鍔部に支持される蓋フランジ部を備え、
前記上方把持部が、当該上方把持部を載置面上に載置するときに、前記蓋フランジ部を水平方向に対して傾斜させ且つ前記載置面から離間した状態で載置支持する傾斜支持部位を有する調理器用の調理蓋であって、その特徴構成は、
前記上方把持部と前記蓋フランジ部との双方が前記載置面に接地している状態で、前記調理蓋の重心からの鉛直線が前記傾斜支持部位と重畳する点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、調理蓋の上方把持部が、上方把持部を載置面上に載置するときに、蓋フランジ部を水平方向に対して傾斜させ且つ載置面から離間した状態で調理蓋を載置支持する傾斜支持部位を有するから、傾斜支持部位が載置面に載置されている状態にあっては、調理蓋と載置面との間の空間を大きくとることができるから、上方把持部を把持し易くなり、調理蓋の操作性を向上できると共に、蓋フランジ部を載置面から離間させることができるため、高温の蓋フランジ部が載置面に接触して、載置面が熱損傷することを防止できる。
更には、上方把持部と蓋フランジ部との双方が載置面に接地している状態では、調理蓋の重心からの鉛直線が傾斜支持部位と重畳するから、例えば、何らかの外力が加わって、上方把持部と蓋フランジ部とが載置面に接触する状態となった場合であっても、調理蓋を、その自重により、蓋フランジ部と載置面とが離間して、上方把持部の載置支持部位が調理蓋を支持する状態へ移行させることができる。
これにより、調理蓋の蓋内面を上方へ向け、上方把持部を載置面に載置する場合において、何らかの原因で調理蓋に外力が加わり、蓋フランジ部が載置面に接触することがあっても、当該蓋フランジ部が載置面に接触し続けることを防止できる調理器用の調理蓋を実現できる。
尚、当該構成において、蓋フランジ部を水平方向に対して傾斜させた状態とは、側方視において、蓋フランジ部の全体が傾斜していることを意味するものであり、例えば、デザイン的な観点等から、蓋フランジ部の一部が、側方視で、傾斜しておらず、その一部を除く蓋フランジ部が、水平方向に対して傾斜した状態も含むものである。
また、載置面とは、調理鍋から取り外した調理蓋を載置可能なテーブル等の天面を意味するものとする。
【0008】
調理蓋の更なる特徴構成は、
前記上方把持部は、前記調理鍋への装着状態において、平面視で、前記上方把持部の重心を中心とした周方向で複数の前記傾斜支持部位を併設している点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、前記調理鍋への装着状態において、平面視で、上方把持部の重心を中心とした周方向で複数の傾斜支持部位を併設しているから、上方把持部を載置面上に載置するときに、複数の方向へ向けて蓋フランジ部を傾斜させて載置でき、載置時の操作性を向上できる。
【0010】
調理蓋の更なる特徴構成は、
前記上方把持部は、前記調理鍋への装着状態において、平面視で、前記上方把持部の重心を中心とした周方向で少なくとも5つ以上の前記傾斜支持部位を併設している点にある。
【0011】
図4に示す傾斜支持部位S1が6つある場合で、斜線を付した傾斜支持部位S1が載置面に接地されている場合を例として説明する。
上記特徴構成の如く、上方把持部が、蓋フランジ部を調理鍋の鍔部に載置した状態において、上方把持部の重心を中心とした周方向で少なくとも5つ以上(図4の例では6つ)の傾斜支持部位S1を併設することで、調理者は、指の間、例えば、中指と薬指との間に、載置面に接地した傾斜支持部位S1を位置させると共に、中指及び薬指と親指との間に上方把持部を挟んで把持することとなるが、この場合、中指と薬指との夫々が少なくとも1つの辺(図4で、L1で示す辺)に係止して把持できることとなり、上方把持部を比較的小さい力で把持することができ、操作性を向上できる。
尚、図4に示すような多角形形状にあっては、上方把持部の外周部位に頂点が形成されるため、上述したような把持状態にあっては、図4で当該頂点P1に中指及び薬指を係止させることができ、より小さい力で把持できる。
因みに、図6に示す傾斜支持部位S1を5つ備える上方把持部であっても、上述した傾斜支持部位S1を6つ備える上方把持部と同様に、中指と薬指との夫々が少なくとも1つの辺(図6で、L1で示す辺)に係止して把持できることとなり、上方把持部を比較的小さい力で把持できる効果を発揮する。また、図6で頂点P1にも、中指及び薬指を係止させることができ、より小さい力で把持できる。
【0012】
調理蓋の更なる特徴構成は、
前記上方把持部は、当該上方把持部を載置面上に載置するときに、前記傾斜支持部位とは別に、前記蓋フランジ部を水平方向に沿わせた状態で載置支持する水平支持部位を備える点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、蓋フランジ部を水平方向に沿わせた状態で載置支持する水平支持部位を有するから、使用状況に応じて、調理蓋の載置状態を自在に変更することができる。
例えば、調理中で、調理蓋の蓋内面に水滴が付着しているような場合には、水平支持部位を載置面に接地する形態で、調理蓋を載置面上に載置支持することで、蓋内面の水滴が載置面に滴下することを好適に防止できる。
【0014】
調理蓋の更なる特徴構成は、
前記上方把持部の前記水平支持部位を前記調理鍋の調理面に対向させ接地させた収納状態において、前記調理鍋の前記鍔部を通る仮想鍔面と前記調理鍋の前記調理面との鉛直方向での最短距離が、前記蓋フランジ部を通る仮想フランジ面と前記上方把持部の前記水平支持部位との鉛直方向での最短距離よりも短く構成されている点にある。
【0015】
調理器を収納する際、調理器の高さ方向(調理鍋の調理面に直交する方向)でのコンパクト化を図るために、調理蓋の蓋外面を調理鍋に対向させる状態で、収納することが一般的である。しかしながら、このように収納する収納状態から調理器を使用する使用状態へ移行する場合、調理蓋の把持部を把持することはできず、且つ調理蓋の蓋フランジ部が調理鍋の鍔部に支持されるため、蓋フランジ部と調理鍋の鍔部との間に隙間がなく、調理蓋を調理鍋から取り外し難いといった問題があった。
上記特徴構成によれば、収納状態において、蓋フランジ部と調理鍋の鍔部との間に隙間が形成されることとなり、当該隙間から指等を進入させ調理蓋の蓋フランジ部の近傍等を把持でき、調理蓋を収納状態から使用状態へ比較的簡単に移行でき、その操作性を向上できる。
【0016】
調理蓋の更なる特徴構成は、
前記上方把持部は、前記調理鍋への装着状態において、平面視で、前記調理蓋本体の中央部の近傍に前記傾斜支持部位を有すると共に、前記調理蓋本体の前記中央部の近傍から前記蓋フランジ部へ向けて延びる延設把持部位を有する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、傾斜支持部位にて調理蓋を載置面に載置支持している状態において、調理者は、延設把持部位を把持して調理蓋を把持できるから、例えば、蓋フランジ部が調理鍋の鍔部に載置された状態で、平面視で調理蓋本体の中央部の近傍にのみ把持部が設けられる場合に比べ、その操作性を向上できる。
【0018】
上記目的を達成するための調理器の特徴構成は、
これまで説明してきた調理器用の調理蓋を備える点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、これまで説明してきた調理蓋が奏する作用効果と同様の効果を発揮する調理器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る加熱調理器の斜視図
図2】実施形態に係る調理蓋を傾斜支持部位にて載置面上に支持した傾斜支持状態を示す断面図
図3】実施形態に係る調理蓋の調理鍋への収納状態を示す断面図
図4】当該実施形態に係る上方把持部のみを示す拡大図
図5】比較例(本願の権利範囲に含む構成例)としての上方把持部のみを示す拡大図
図6】別実施形態に係る上方把持部のみを示す拡大図
図7】別実施形態に係る調理蓋を傾斜支持部位にて載置面上に支持した傾斜支持状態を示す側面図
図8】別実施形態に係る調理蓋の延設把持部位と蓋フランジ部との双方が載置面に当接する状態を示す側面図
図9】別実施形態に係る調理蓋の傾斜支持部位にて載置面上に支持した傾斜支持状態を示す側面図
図10】別実施形態に係る上方把持部のみの拡大図
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態に係る調理器用の調理蓋10、及び当該調理蓋10を備えた調理器は、図1〜5に示すように、調理蓋10の蓋内面11bを上方へ向け、上方把持部60を載置面Mに載置する場合において、何らかの原因で調理蓋10に外力が加わり、蓋フランジ部11cが載置面Mに接触することがあっても、当該蓋フランジ部11cが載置面Mに接触し続けることを防止できる調理器用の調理蓋10、及びそれを備えた調理器を提供する。
【0022】
実施形態に係る加熱調理器100(調理器の一例)は、図1〜5に示すように、加熱ヒータ(図示せず)を有する調理器本体40と、当該加熱ヒータにて加熱され調理物を加熱する調理鍋30と、当該調理鍋30の上方に着脱自在な調理蓋10とを備えて構成されている。因みに、当該調理鍋30は、焼物調理と煮物調理との双方を実行する深底の調理鍋として構成されている。
調理器本体40は、図1に示すように、テーブル等の載置面(図示せず)に立つ脚部41aを有すると共に調理鍋30の下方及び側方(水平方向で調理鍋30の外方)に位置する外囲筐体41と、加熱ヒータの下方側で加熱ヒータからの熱を上方へ反射すると共に外囲筐体41に設けられる支持部(図示せず)にて支持される反射プレート(図示せず)とを備えている。
図示は省略するが、調理器本体40には、電力源と電気的に接続されると共に加熱ヒータによる加熱度合を調整する調整ダイヤルを有する操作治具を、着脱する着脱部を備えている。
【0023】
調理蓋10は、図1に示すように、円盤形状であり、且つ調理鍋30への装着状態においてその中央部位が上方へ膨出する膨出形状を有する調理蓋本体11と、当該調理蓋本体11の側方での外周縁である蓋フランジ部11cと、調理者が把持する上方把持部60とを備える。
調理鍋30には、上端の全周に亘って側方外側縁30cが設けられ、調理蓋10の装着状態(図1に示す状態)において、調理蓋10の蓋フランジ部11cを支持する複数の鍔部30aが、側方外側縁30cから内側に突出する形態で、側方の内周縁に沿って等間隔に設けられている。調理鍋30には、側方外側縁30cよりも側方へ延設される一対の側方把持部30bが、平面視で、調理鍋30の重心を中央位置として対向する状態で、設けられている。
尚、鍔部30aは、調理鍋30の上端の全周に亘って設けられていても構わない。
【0024】
以上の構成を採用することにより、調理者は、調理鍋30に調理蓋10を装着状態又は取り外した状態で、操作治具の調整ダイヤルを調整する形態で、加熱ヒータにより調理鍋30を加熱して、調理鍋30の調理面上の調理物を加熱しつつ調理を実行できる。
【0025】
調理器本体40は、平面視で略円形を有しており、本体ガード部44は、円形の調理器本体40の外周に沿って立設される一対の曲面平板状の立設壁部から構成されている。因みに、当該本体ガード部44の高さは、調理鍋30の側方外側縁30cより高く設けられている。
尚、調理器本体40の円形の外周の一部には、本体ガード部44を設けない本体ガード部非設置部位47bが設けられており、当該本体ガード部非設置部位47bは、調理器本体40に調理鍋30が載置される載置状態(図1に示す状態)において、調理鍋30の一対の側方把持部30bを受け入れる。
【0026】
更に、調理器本体40は、図1に示すように、本体ガード部44の側方内側で且つ調理鍋30の側方外側縁30cの直下を含む下方領域に、調理鍋から溢れた煮汁を受ける煮汁受部46を備え、煮汁受部46と本体ガード部44の側方外側とを連通する連通部47を備えている。
説明を追加すると、煮汁受部46は、平面視において、調理器本体40の内側から外側に沿う方向で、下方へ向けて傾斜して設けられている。また、本体ガード部44は、本体ガード部44の側方内側と側方外側とを繋ぐ複数の開孔47aを、平面視で調理器本体40の円形の外周に沿って等間隔に備えている。当該開孔47aは、本体ガード部44の下方位置に形成されると共に、当該実施形態にあっては、一の本体ガード部44に対して2つ設けられている。
そして、当該実施形態においては、調理鍋30から吹き零れ、煮汁受部46に受け入れられた煮汁は、連通部47としての開孔47a及び本体ガード部非設置部位47bを通り、本体ガード部44の側方外側(調理器本体40の側方外側)へ導かれることとなり、煮汁の調理器本体40の内部への侵入を防止している。
【0027】
以下、調理蓋10について説明するが、図2では、調理蓋10の異なる載置状態を図示するべく、実線で示す載置面Mと二点鎖線で示す載置面Mとを、一図面にて図示している。
上方把持部60は、図2に示すように、調理蓋本体11の蓋外面11aに沿う形状を有するアダプタ60aを介して螺子Bにより調理蓋本体11の中央部に螺合接続されている。
調理蓋10の上方把持部60は、図2に示すように、上方把持部60を載置面M(図2で実線)上に載置するときに、蓋フランジ部11cを水平方向に対して傾斜させ且つ載置面M(図2で実線)から離間した状態で調理蓋10を載置面M(図2で実線)上に載置支持する傾斜支持部位S1を有する。
調理蓋10は、図2に示すように、側方断面視で、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M(図2で実線)上に調理蓋10を載置支持している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1が傾斜支持部位S1と重畳する。更に、調理蓋10は、図2の側方断面視に加え、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1を通る他のすべての側方断面視でも、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M上に調理蓋10を載置支持している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1が傾斜支持部位S1と重畳する。
【0028】
また、当該調理蓋10は、図2に示す側方断面視で、上方把持部60(例えば、図でP3)と蓋フランジ部11c(例えば、図2でP2)との双方が載置面M(図2で二点鎖線)に接地している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2が傾斜支持部位S1と重畳する。更に、調理蓋10は、図2の側方断面視に加え、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2を通る他のすべての側方断面視でも、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面Mに接地している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2が傾斜支持部位S1と重畳する。
更に、当該実施形態にあっては、図2に示す側方断面視で、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M(図2で実線)上に調理蓋10を載置支持している状態と、上方把持部60(例えば、図でP3)と蓋フランジ部11c(例えば、図2でP2)との双方が載置面M(図2で二点鎖線)に接地している状態との間の遷移状態においても、調理蓋10の重心gからの鉛直線が傾斜支持部位S1と重畳する。
当該構成により、調理蓋10は、何らかの外力により、上方把持部60(例えば、図2でP3)と蓋フランジ部11c(例えば、図2でP2)との双方が載置面M(図2で二点鎖線)に接地している状態となった場合でも、調理蓋10が、傾斜支持部位S1が載置面M(図2で実線)に載置される載置状態に復帰する。
【0029】
上方把持部60は、上方把持部60を載置面(図示せず)上に載置するときに、傾斜支持部位S1とは別に、蓋フランジ部11cを水平方向に沿わせた状態で載置支持する水平支持部位S2を備えている。
当該構成にあっては、加熱調理器100を収納する場合、図3に示すように、調理蓋10の上方把持部60を調理鍋30に対向する収納状態で収納することになる。当該実施形態の加熱調理器100にあっては、収納状態において、調理鍋30の鍔部30aの上面を通る仮想鍔面30afと調理鍋30の調理面30dとの鉛直方向での最短距離(図3でL3)が、蓋フランジ部11cを通る仮想フランジ面11cfと上方把持部60の水平支持部位S2との鉛直方向での最短距離(図3でL2)よりも短く構成されている。
当該構成により、図3に示す収納状態において、調理鍋30の鍔部30aと調理蓋10の蓋フランジ部11cとの間に隙間を形成して、収納状態から調理蓋10を取り出すときの操作性を向上している。
【0030】
更に、当該実施形態に係る上方把持部60は、操作性の更なる向上を図るべく、独特の構成を有している。以下、図4、5に基づいて、その構成について説明を追加する。
上方把持部60は、図4に示すように、調理鍋30への装着状態において、平面視で、上方把持部60の重心g1を中心とした周方向で複数の傾斜支持部位S1を併設して構成されており、当該傾斜支持部位S1は、操作性を向上させる観点から、5つ以上(当該実施形態では、6つ)設けることが好ましい。
具体的には、当該実施形態に係る上方把持部60は、調理蓋10が調理鍋30へ装着される装着状態において、その上方側の部位が、略六角錐の底面に対向する頂点を、底面に平行な切断面で切り落として得られる形状を有している。当該上方把持部60は、図4に示すように、頂点を切り落として得られる切断面を水平支持部位S2、その他の面を傾斜支持部位S1として有する。
【0031】
当該構成を採用する場合、傾斜支持部位S1のうち斜線を付した傾斜支持部位S1が載置面Mに載置されている状態において、調理者は、指の間、例えば、中指と薬指との間に、載置面Mに接地した傾斜支持部位S1を位置させると共に、中指及び薬指と親指との間に上方把持部60を挟んで把持することとなる。この場合、中指と薬指との夫々が少なくとも1つの辺(図4で、L1で示す辺)に係止して把持できるから、上方把持部60を比較的小さい力で把持でき、操作性を向上できる。
尚、図4に示す形状にあっては、上方把持部60の外周部位に頂点が形成されるため、上述した把持姿勢にあっては、図4で頂点P1にも、中指及び薬指を係止させることができ、より小さい力で把持できる。
因みに、図6に示す傾斜支持部位S1を5つ備える上方把持部60であっても、上述した傾斜支持部位S1を6つ備える上方把持部60と同様に、中指と薬指との夫々が少なくとも1つの辺(図6で、L1で示す辺)に係止して把持できることとなり、上方把持部60を比較的小さい力で把持できる効果を発揮する。また、図6で頂点P1にも、中指及び薬指を係止させることができ、より小さい力で把持できる。
一方、上方把持部60が傾斜支持部位S1を4つ以下しか有しない比較例(本願の権利範囲に含む構成例)について説明すると、図5に示すように、上述した把持姿勢にあっては、図5でS1aで示す傾斜支持部位に中指と薬指とが接するのみで、中指及び薬指が係止する辺及び頂点が存在しないため、本願の実施形態の如く、小さい力で把持できないこととなる。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態にあっては、調理鍋30は、深底鍋である例を示したが、いわゆる調理プレートのような浅底鍋であっても構わない。
【0033】
(2)上記実施形態にあっては、調理器として、加熱ヒータを備えた加熱調理器100である構成例を示した。しかしながら、調理器として、例えば、コンロ等で加熱して用いるフライパン等の調理器、及びフライパン等の調理器用の調理蓋10も、本願の権利範囲に含むものである。
【0034】
(3)上記実施形態にあっては、上方把持部60は、傾斜支持部位S1を複数、好ましくは、5つ以上備えることが操作性の向上につながるとして、説明した。しかしながら、当該傾斜支持部位S1は1つ以上備える構成であれば、本願の目的を好適に達成できる。
【0035】
(4)上方把持部60は、図7に示すように、調理蓋10が調理鍋30へ装着される装着状態において、平面視で、調理蓋本体11の中央部の近傍に傾斜支持部位S1を有すると共に、調理蓋本体11の中央部の近傍から蓋フランジ部11cへ延びる延設把持部位60bを備える構成を採用しても構わない。
当該別実施形態(4)においても、上方把持部60の傾斜支持部位S1は、上述した実施形態と同様に、図7に示すように、蓋フランジ部11cを水平方向に対して傾斜させ且つ載置面M(図7で実線)から離間した状態で調理蓋10を載置支持する。
また、当該別実施形態(4)においても、調理蓋10の重心gからの鉛直線と傾斜支持部位S1との関係は、上述した実施形態と同一である。
即ち、調理蓋10は、図7に示すように、側方視で、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M(図7で実線)上に調理蓋10を載置支持している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1が傾斜支持部位S1と重畳する。更に、調理蓋10は、図7の側方視に加え、他のすべての側方視でも、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M上に調理蓋10を載置支持している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1が傾斜支持部位S1と重畳する。
また、当該調理蓋10は、図7に示す側方視で、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面M(図7で二点鎖線)に接地している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2が傾斜支持部位S1と重畳する。更に、調理蓋10は、図7の側方視に加え、他のすべての側方視でも、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面Mに接地している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2が傾斜支持部位S1と重畳する。
更に、当該実施形態にあっては、図7に示す側方視で、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M(図7で実線)上に調理蓋10を載置支持している状態と、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面M(図7で二点鎖線)に接地している状態との間の遷移状態においても、調理蓋10の重心gからの鉛直線が傾斜支持部位S1と重畳する。
更に、調理蓋10は、その蓋内面11bが上方を向いている状態で、傾斜支持部位S1が載置面Mに接地していない状態(図8に示す状態)にあっては、上方把持部60(具体的には、延設把持部位60b)を構成する1点と、蓋フランジ部11cを構成する1点との合計2点が、載置面Mに接地する状態となるように構成されている。この状態においても、調理蓋10の重心gからの鉛直線が傾斜支持部位S1と重畳するように構成しているため、結果、図8の状態にある調理蓋10は、自重により、傾斜支持部位S1が載置面Mに載置される載置状態(図7に示す状態)に復帰する。
尚、上述した図1〜6に示す上方把持部60を有する調理蓋10にあっても、当該別実施形態(4)の如く、調理鍋30の中央部の近傍から蓋フランジ部11cへ延びる延設把持部位60bを備える構成を採用しても構わない。
【0036】
(5)上記実施形態にあっては、上方把持部60の傾斜支持部位S1は、面として構成されている例を示したが、図9、10に示すように、少なくとも3点から成る頂点にて構成しても構わない。
図9、10に示す構成例にあっては、上方把持部60は、星形の複数の頂点60fを有する星形板状体60gと、当該星形板状体60gから装着状態で上方へ突出する突出部60eとから構成されており、傾斜支持部位S1は、複数の頂点60fの隣接する2頂点と、突出部60eの端部とから成る少なくとも3点により、構成される。
また、当該別実施形態(5)においても、調理蓋10の重心gからの鉛直線と傾斜支持部位S1との関係は、上述した実施形態と同一である。
即ち、調理蓋10は、図9に示すように、側方断面視で、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M(図9で実線)上に調理蓋10を載置支持している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1が傾斜支持部位S1と重畳する。更に、調理蓋10は、図9の側方断面視に加え、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1を通る他のすべての側方断面視でも、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M上に調理蓋10を載置支持している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V1が傾斜支持部位S1と重畳する。
また、当該調理蓋10は、図9に示す側方断面視で、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面M(図9で二点鎖線)に接地している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2が傾斜支持部位S1と重畳する。更に、調理蓋10は、図9の側方断面視に加え、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2を通る他のすべての側方断面視でも、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面Mに接地している状態で、調理蓋10の重心gからの鉛直線V2が傾斜支持部位S1と重畳する。
更に、当該実施形態にあっては、図9に示す側方断面視で、上方把持部60の傾斜支持部位S1が載置面M(図9で実線)上に調理蓋10を載置支持している状態と、上方把持部60と蓋フランジ部11cとの双方が載置面M(図9で二点鎖線)に接地している状態との間の遷移状態においても、調理蓋10の重心gからの鉛直線が傾斜支持部位S1と重畳する。
【0037】
(6)加熱調理器100は、平面視で、調理器本体40、調理蓋10、及び調理鍋30が、円形に限定されるものではなく、四角等の他の構成を好適に採用できる。
【0038】
(7)図3に示す収納状態において、調理鍋30の鍔部30aが調理蓋10の蓋フランジ部11cが接触するように構成しても構わない。
【0039】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の調理器用の調理蓋、及びそれを備えた調理器は、調理蓋の蓋内面を上方へ向け、上方把持部を載置面に載置する場合で、何らかの原因で調理蓋に外力が加わり、蓋フランジ部が載置面に接触することがあっても、当該蓋フランジ部が載置面に接触し続けることを防止できる調理器用の調理蓋、及びそれを備えた調理器として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 :調理蓋
11 :調理蓋本体
11c :蓋フランジ部
11cf :仮想フランジ面
30 :調理鍋
30a :鍔部
30af :仮想鍔面
30d :調理面
60 :上方把持部
60b :延設把持部位
100 :加熱調理器
B :螺子
M :載置面
P1 :頂点
S1 :傾斜支持部位
S2 :水平支持部位
g :重心
V1 :鉛直線
V2 :鉛直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10