特許第6647965号(P6647965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647965
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】回転子及びそれを備えたブラシ付モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/54 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   H02K23/54
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-100049(P2016-100049)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-208944(P2017-208944A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232999
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】川田 祥男
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 和広
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−033580(JP,U)
【文献】 特開2006−067774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子と、コアと、前記コアに巻線されかつ一端が前記整流子に接続されるコイルと、を備える回転子であって、
前記整流子は、突起部と、当該突起部に形成されかつ前記コイルを係止する係止部と、
を設け、
前記コアは、前記コイルを保持するコイル保持機構を有し、
前記コイル保持機構は、コイル保持溝と、当該コイル保持溝の幅より大きい幅となる空間を形成するとともに当該空間に前記突起部を収納する突起逃げ部と、を有し、
前記コイル保持機構の高さは、前記コアに巻線されるエンドコイルの高さよりも低く形成される回転子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転子であって、
前記突起部は、前記コアの外径側または内径側にクランク状に折り曲げられる回転子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転子であって、
前記コイルは、断面外周が略円形であり、
前記コイル保持溝は、前記コイルの略円形の外周に沿うように、略U字形状をなす回転子。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のいずれかの回転子であって、
前記コイル保持機構は、前記突起逃げ部に設けられ一部が前記コイルと接触するコイル支え部を有する回転子。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載のいずれかの回転子と、シャフトと、を備えるブラシ付モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子及びそれを備えたブラシ付モータに関し、特に、回転軸方向に短い扁平型回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車業界にてスロットルやブレーキ、エンジンの吸排気弁など自動車の各部で電子制御化が進んでいる。この動きと共にモータが自動車の各部に使用されるようになり、生産数量は増える傾向にある。そのため、モータ及び回転子には低コスト化及び生産効率向上が必要となっている。
【0003】
また、モータをエンジンへ直接取り付ける等の使用環境、特に耐振性の要求が厳しくなる一方、エンジンルーム等への搭載性の観点から回転電気の生存スペースは小さくなる傾向となっている。そのため、生産性が高く、扁平且つ高耐振性の回転子が求められている。
【0004】
従来の扁平型回転子の製造方法は、シャフトにコアを圧入しておき、整流子を整流子のフック部分が巻線後のコイル高さ(以下エンドコイル高さ)よりも高くなると想定される位置で仮固定しておく。この状態で整流子のフック部にコイルを絡げながら巻線する。その後、整流子のフック部とコイルをヒュージングし整流子を正規位置へ再圧入する工程が一般的である。
【0005】
この方法の問題点は通常の回転子製造方法に対し、整流子を仮固定する工程が追加になり、巻線後に再圧入する必要があることである。整流子を再圧入することにより整流子のフック部に絡げたコイルが緩むおそれがあり、その結果、耐振性が低下してしまう。この状態で耐振性を向上させるためには、ワニスや接着剤等で整流子のフック部及びフックに絡げたコイルを固定する必要がる。ワニスや接着剤の塗布を追加すると耐振性は向上するが、製造工程がさらに追加になり生産性低下、コストが増大してしまう。
【0006】
これを解決するため、特許文献1には、モータヨークに固定された界磁マグネットと、この界磁マグネットの内側に回転自在に配置され、回転子軸に固定された回転子コアと、前記回転子コアに巻回されるコイルと、回転子軸に固定される整流子ベース、および、この整流子ベースの外周部に配設され、回転子コイルに電気的に接続された整流子片を有する整流子と、前記整流子の整流子片と摺接可能なブラシと、を備えたモータにおいて、整流子の整流子片は、略L字形状をなし、ブラシと摺接可能な整流子片基部と、この整流子片基部より延設され、かつ、端部に90゜より狭角に形成されてコイルのリード線が電気的に接続されるフック爪部を有する立上がり部とからなり、整流子の整流子ベースは、整流子片基部が配設された小径円筒部と、この小径円筒部に一体的に固定され、整流子片の立上がり部が当接支持される大径円筒部とからなることを特徴とするモータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-4655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術は整流子片をL字状にし、整流子ベースと大径円筒部を設けることにより、整流子を仮固定することなく正規の位置で巻線、ヒュージングが可能なものである。但し大径円筒部を整流子ベースとは別に設ける必要があり、部品点数については考慮されていなかった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は部品点数を増やさずに、扁平型回転子の高耐振性と製造工程の削減を両立するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る回転子は、整流子と、コアと、前記コアに巻線されかつ一端が前記整流子に接続されるコイルと、を備える回転子であって、前記整流子は、突起部と、当該突起部に形成されかつ前記コイルを係止する係止部と、を設け、前記コアは、前記コイルを保持するコイル保持機構を有し、前記コイル保持機構は、コイル保持溝と、当該コイル保持溝の幅より大きい幅となる空間を形成するとともに当該空間に前記突起部を収納する突起逃げ部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により部品点数を増やさずに製造工程を削減し、生産性と高耐振性を両立した扁平型回転子が製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る回転子の斜視図である。
図2図1に示された整流子15の斜視図である。
図3】整流子15を示した図2のA部の拡大図である。
図4】コア10の正面図である。
図5図4のB−Bを通る平面の断面図である。
図6】コイル保持機構45にコイル絡げ後の斜視図である。
図7図6のコア10に整流子15を圧入後の上面図である。
図8図7のC−Cを通る平面の断面図である。
図9】実施例2に係るコイル保持機構45近傍の斜視図である。
図10】実施例3に係るコイル絡げ後のコイル保持機構45近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施形態を図1ないし10を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本実施形態に係る回転子の斜視図である。図2は、図1に示された整流子15の斜視図である。
【0015】
本実施形態に係る回転子は、鉄材で製作される中空または中実のシャフト5と、鉄材で製作されシャフト5に圧入固定したコア10と、銅材で製作された複数の整流子片25を円筒状に配置しこれを絶縁性の樹脂で一体成型しシャフト5に圧入固定される整流子15と、コア10に巻線されかつ一端が整流子15に接続されたコイル20と、を含んで構成される。
【0016】
図2に示されるように、整流子15は、2つ以上の整流子片25から構成される。各整流子片25の一方側辺には、突起部30がそれぞれ設けられている。突起部30は、生産性低下の抑制と強度のバランスのため、整流子片25と同一の厚みで形成される。
【0017】
図3は、整流子15を示した図2のA部の拡大図である。
【0018】
突起部30にはコイル接続用溝35が2箇所設けられる。コイル接続用溝35の位置は突起部30の幅方向の中心に対し対称となるようにする。
【0019】
コイル接続用溝35の幅W1は、コア10に巻線するコイル20の線径と同一かそれよりも細くなるように形成される。またコイル接続用溝35の先端は、コイル20をコイル接続用溝35に挿入しやすくするために、テーパ形状とする。コイル接続用溝35のテーパ形状を除いた深さD1は、コイル20の抜けを防止するために、コイル20の線径と同等以上とする。
【0020】
図4は、コア10の正面図である。図5は、図4のB−B断面図である。
【0021】
絶縁部40は、コイル20とコア10を絶縁するために樹脂等が用いられ、コア10にモールド成形される。絶縁部40には、コイル保持機構45が絶縁部40と一体成形されている。図5に示されるように、コイル保持機構45の高さH1は、コア10に巻線されるエンドコイルを超えないように設定する。
【0022】
図4に示されるように、コイル保持機構45の周方向位置は、コイル保持機構45の中心軸46とコア10のティース部中心軸47がそれぞれ一致する位置とする。
【0023】
またはコイル保持機構45の中心軸46とコアスロット部中心軸48がそれぞれ一致する位置とする。
【0024】
またコイル保持機構45には、コイル保持機構45に対し内径側から外径方向に貫通する2本のコイル絡げ溝50が設けられている。
【0025】
コイル絡げ溝50の幅は、コイル20の直径と同等以上とする。またその深さはコイル20の線径以上あり、巻線時のコイル20が保持出来れば良い。コイル絡げ溝50の位置は、図3に示されるコイル接続用溝35と一致するように設けられる。
【0026】
さらにコイル保持機構45には、コイル絡げ溝50に直行する方向に突起用逃げ溝55が設けられている。突起用逃げ溝55は、コイル絡げ溝50よりも深くし、コア10まで貫通していてもよい。また突起用逃げ溝55の幅W3は、突起部30の周方向の幅よりも広ければよい。突起用逃げ溝55の紙面奥行き方向の長さは突起部30よりも長ければよいがコイル保持機構45を貫通しないように設定する。
【0027】
突起用逃げ溝55にはコイル絡げ溝50と同一方向にコイル支え60が設けられている。コイル支え60の幅W2は、コイル接続用溝35の幅W1よりも狭く設定する。また、コイル支え60の上面は、コイル絡げ溝50の底面と同一とする。
【0028】
図6は、コイル保持機構45にコイル絡げ後の斜視図である。シャフト5に圧入固定されたコア10にコイル20を巻線する。コイル20の一端がコイル絡げ溝50に絡げられ保持される。
【0029】
図7は、図6のコア10に整流子15を圧入後の上面図である。図8は、図7のC−Cを通る平面の断面図である。
【0030】
整流子15をシャフト5の所定の位置に圧入固定することでコイル絡げ溝50に絡げられたコイル20がコイル支え60に支えられながら、コイル接続用溝35に案内される。
【0031】
整流子15の圧入高さ及び周方向の位置は任意で良いが、コイル20がコイル接続用溝35に、突起部30が突起用逃げ溝55にそれぞれ挿入可能な位置とする。これによりコイル接続用溝35を通して、整流子片25とコイル20がエンドコイルよりも低い位置で仮接続が完了する。
【0032】
コイル20と整流子15の電気的接続はレーザー溶接やハンダで接続する。あるいは整流子15を圧入する前にコイル接続用溝35のコイル被覆を剥しておいてもよい。
【0033】
本実施形態を実施することにより、整流子の再圧入が不要となる。これにより、コイル絡げ部の緩みが無いため耐振性が高く、接着剤やワニスによるコイル絡げ部の固定が不要となる。
【実施例2】
【0034】
図9は、実施例2に係るコイル保持機構45近傍の斜視図である。
【0035】
整流子片25の下部に設けられた突起部30は、外径側又は内径側にクランク状に折り曲げる。クランク形状とした各々の寸法は任意とするが、突起部30に設けられるコイル接続用溝35とコイル保持機構45の位置関係は実施例1に記載した通りとし、突起部30がコイル保持機構45の突起用逃げ溝55に収容し且つ、コイル20がコイル接続用溝35に案内できる位置とする。
【0036】
これにより整流子15の外径をコイル絡げ位置に関係なくエンドコイルに干渉しない範囲で拡大可能となる。また整流子15の強度に影響の無い範囲で整流子の外径を縮小可能となる。
【実施例3】
【0037】
図10は、実施例3に係るコイル絡げ後のコイル保持機構45近傍の斜視図である。
【0038】
コイル保持機構45にはコイル絡げ溝50が設けられているが、コイル絡げ溝50はU字形状としても良い。溝の幅及び位置は実施例1で記載した通りとする。
【0039】
コイル絡げ溝50をU字形状とすることでコイル20がコイル保持機構45から飛び出すことなくコイル絡げ溝50に絡げられることになる。これにより、コイル20とシャフト5との絶縁距離を稼ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
5…シャフト、10…コア、15…整流子、20…コイル、25…整流子片、30…突起部、35…コイル接続用溝、40…絶縁部、45…コイル保持機構、46…コイル保持機構45の中心軸、47…コアティース部の中心軸、48…コアスロット部の中心軸、50…コイル絡げ溝、55…突起用逃げ溝、60…コイル支え、D1…コイル接続用溝35の深さ、H1…コイル保持機構45の高さ、W1…コイル接続用溝35の幅、W2…コイル支え60の幅、W3…突起用逃げ溝55の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10