特許第6647967号(P6647967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647967
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】一方向性ロータリーダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20200203BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   F16F9/14 A
   F16F9/34
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-101922(P2016-101922)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-207190(P2017-207190A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 良太
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−048386(JP,A)
【文献】 特開2002−081482(JP,A)
【文献】 特開2007−309377(JP,A)
【文献】 特開2009−103306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/14
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部、前記筒部の一端側に設けられる第1の壁部及び前記筒部の他端側に設けられる第2の壁部を有するハウジング、
前記第1の壁部に接する第1の面及び前記第2の壁部に接する第2の面を有する軸部、
前記軸部と前記筒部の間に形成される空間を仕切る隔壁部、
前記隔壁部で仕切られた空間を第1の室と第2の室に区画するベーン、
前記第1の面に形成され、前記第1の室に開口する第1の開口部を有する第1の溝、
前記第2の面に形成され、前記第2の室に開口する第2の開口部を有する第2の溝、
前記第1の室及び前記第2の室に充填されるオイル、
前記第1の溝と前記第2の溝の間を貫通する流路、及び
前記第1の溝又は前記第2の溝に設けられ、前記流路の断面積の拡大に伴って高さが変化しない弁体
を備えるロータリーダンパ。
【請求項2】
前記第1の溝、前記第2の溝及び前記弁体がそれぞれ環状である請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記第1の壁部又は前記第2の壁部と前記弁体の間に隙間を形成する突起をさらに備え、前記弁体が平板である請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記第1の溝に開口する前記流路の開口部又は前記第2の溝に開口する前記流路の開口部に形成される窪みをさらに備え、前記弁体が前記窪みの深さ方向に変形し得る請求項3に記載のロータリーダンパ。
【請求項5】
前記弁体が皿ばねである請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項6】
前記弁体が波板である請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項7】
前記弁体が樹脂製である請求項4〜6のいずれか1項に記載のロータリーダンパ。
【請求項8】
前記流路が複数であり、前記弁体が単数である請求項1〜7のいずれか1項に記載のロータリーダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向性ロータリーダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
一方向性ロータリーダンパは、ロータの回転方向によって制動力を変化させるために、バルブを有して構成される。バルブは、オイルが通過し得る流路と、前記流路を閉鎖し得る弁体を有して構成される。例えば、特開2002−081482号公報は、そのようなバルブがベーンに設けられた一方向性ロータリーダンパ(以下、従来のダンパという。)を開示している。
【0003】
オイルは、流路の断面積が大きいほど流動し易くなる。したがって、流路の断面積を大きくすれば、ロータが逆転している間に発生する制動力をより小さくすることができる。しかしながら、従来のダンパは、バルブがベーンに設けられているため、流路の断面積を大きくすることが容易でない。すなわち、ベーンの幅を拡大し、それによりベーンの断面積を大きくすれば、流路の断面積を拡大することができるが、ベーンの断面積を拡大することによってロータの回転角度が縮小するため、流路の断面積を拡大することが容易でなかった。
【0004】
また、従来のダンパのように複数のベーンを有する場合には、各ベーンにバルブが必要とされるので、製造コストが増大するという欠点があった。
【0005】
さらに、従来のダンパでは、弁体が球状であるため、流路の断面積を大きくする(すなわち、流路の内径を大きくする)ことによって弁体の直径が必然的に大きくなる。従来のダンパのように流路が軸方向に沿って形成されている場合には、流路の断面積を拡大することによって弁体の直径が拡大するため、バルブの全長が長くなる。したがって、ハウジングの高さを低くすることが容易でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−081482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ロータの逆転時に発生する制動力をより小さくすること、及びハウジングの高さをより低くすることが可能なロータリーダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、筒部、前記筒部の一端側に設けられる第1の壁部及び前記筒部の他端側に設けられる第2の壁部を有するハウジング、前記第1の壁部に接する第1の面及び前記第2の壁部に接する第2の面を有する軸部、前記軸部と前記筒部の間に形成される空間を仕切る隔壁部、前記隔壁部で仕切られた空間を第1の室と第2の室に区画するベーン、前記第1の面に形成され、前記第1の室に開口する第1の開口部を有する第1の溝、前記第2の面に形成され、前記第2の室に開口する第2の開口部を有する第2の溝、前記第1の室及び前記第2の室に充填されるオイル、前記第1の溝と前記第2の溝の間を貫通する流路、及び前記第1の溝又は前記第2の溝に設けられ、前記流路の断面積の拡大に伴って高さが変化しない弁体を備えるロータリーダンパを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、バルブ(すなわち、流路及び弁体)が軸部に設けられている。軸部の断面積の拡大は、ロータの回転角度に影響を及ぼさないため、軸部は、ベーンに比べて断面積を拡大することが容易である。したがって、流路の断面積を拡大することが容易である。また、本発明では、流路の断面積の拡大に伴って高さが変化しない弁体が採用されているので、流路の断面積を拡大することによってバルブの全長が長くなることがない。したがって、本発明によれば、ロータの逆転時に発生する制動力をより小さくすること、及びハウジングの高さをより低くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係るロータリーダンパの平面図である。
図2】実施例1に係るロータリーダンパの正面図である。
図3図1のA−A部断面図である。
図4図1のB−B部断面図である。
図5図4のC−C部断面図である。
図6図4のD−D部断面図である。
図7図3の一部分を拡大した断面図である。
図8】実施例1で採用したロータの平面図である。
図9】実施例1で採用したロータの底面図である。
図10図8のE−E部断面図である。
図11図8のF−F部断面図である。
図12】実施例1で採用した弁体の平面図である。
図13】実施例1で採用した弁体の正面図である。
図14図13のG部断面図である。
図15】実施例1に係るロータリーダンパの動作を説明するための断面図である。
図16】実施例2で採用した弁体の平面図である。
図17】実施例2で採用した弁体の正面図である。
図18図17のH部断面図である。
図19】実施例2で採用した弁体の動作を説明するための断面図である。
図20】実施例2で採用した弁体の動作を説明するための断面図である。
図21】実施例2で採用した弁体の動作を説明するための断面図である。
図22】実施例3で採用した弁体の平面図である。
図23】実施例3で採用した弁体の正面図である。
図24】実施例4で採用したロータの平面図である。
図25】実施例4で採用したロータの底面図である。
図26図24のI−I部断面図である。
図27図24のJ−J部断面図である。
図28図24のK−K部断面図である。
図29】実施例4で採用した弁体の動作を説明するための断面図である。
図30】実施例4で採用した弁体の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例に基づいて本発明の実施形態をさらに詳しく説明するが、本発明の技術的範囲は以下の説明の内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
実施例1は、本発明の一実施形態である。実施例1に係るロータリーダンパは、図1及び図2に示したように、ハウジング10及びロータ20を有して構成される。
【0013】
ハウジング10は、筒部11、第1の壁部12及び第2の壁部13を有して構成される。
【0014】
筒部11は、図5及び図6に示したように、円形の中空部を有する。
【0015】
第1の壁部12は、図3及び図4に示したように、筒部11の一端側に設けられている。本実施例では、第1の壁部12が筒部11の一端側を閉鎖する蓋として機能しているが、第1の壁部12は蓋でなくてもよい。すなわち、筒部11の一端側は、第1の壁部12とは別の部材によって閉鎖されていてもよい。第1の壁部12は、第1の溝26の開口部(すなわち、第1の面24に開口する開口部)を閉鎖する面を有するものであればよい。第1の壁部12がそのような面を有することによって、オイルが流れる道筋が整えられると共に、弁体41が第1の溝26に設けられる場合には、弁体41の脱落を防止することができる。
【0016】
第2の壁部13は、図3及び図4に示したように、筒部11の他端側に設けられている。本実施例では、第2の壁部13が筒部11の他端側を閉鎖する底壁として機能しているが、第2の壁部13は底壁でなくてもよい。すなわち、筒部11の他端側は、第2の壁部13とは別の部材によって閉鎖されていてもよい。第2の壁部13は、第2の溝27の開口部(すなわち、第2の面25に開口する開口部)を閉鎖する面を有するものであればよい。第2の壁部13がそのような面を有することによって、オイルが流れる道筋が整えられると共に、弁体41が第2の溝27に設けられる場合には、弁体41の脱落を防止することができる。
【0017】
本実施例では、ハウジング10が隔壁部14、軸受け部15、突起16及びフランジ17をさらに有して構成される。
【0018】
隔壁部14は、図5及び図6に示したように、軸部21と筒部11の間に形成される空間を仕切る壁である。
【0019】
軸受け部15は、図3図4及び図6に示したように、第2の壁部13の中央に形成された穴の周りでロータ20を支持する役割を果たしている。
【0020】
突起16は、図7及び図15に示したように、第2の壁部13と軸受け部15が交わる部分に形成されているが、突起16が形成される位置は限定されない。突起16は、第2の壁部13と弁体41の間に隙間を形成する役割を果たしている。本実施例で採用した弁体41は、この隙間にオイルが流入することによって正常に動作することができる。なお、本実施例で採用した弁体41が第1の溝26に設けられる場合には、突起16は、第1の壁部12と弁体41との間に隙間を形成する役割を果たし得る位置に形成される。
【0021】
フランジ17は、図1図2及び図4に示したように、筒部11の外周面から突出するように形成され、ロータリーダンパの取り付けに用いられるボルト等が挿入される穴18を有している。
【0022】
ロータ20は、ハウジング10の内部で回転し得るように設けられる。通常は、ロータ20がハウジング10の内部で回転するが、ハウジング10がロータ20の周りで回転することもあり得る。
【0023】
本実施例では、ロータ20が軸部21、ベーン22及び穴23を有して構成される。
【0024】
軸部21は、図3に示したように、第1の壁部12と第2の壁部13の間に設けられている。軸部21は、図8及び図9に示したように、第1の面24、第2の面25、第1の溝26及び第2の溝27を有して構成される。
【0025】
第1の面24は、図3に示したように、第1の壁部12に接している。
【0026】
第2の面25は、図3に示したように、第2の壁部13に接している。
【0027】
第1の溝26は、図8及び図10に示したように、第1の面24に形成されている。第1の溝26は、図5及び図8に示したように、第1の室31に開口する第1の開口部28を有して構成される。第1の溝26は、図8に示したように、オイルを流れ易くするため、環状であることが好ましい。第1の溝26が環状であることは、流路40の形成場所の増加をもたらすため、流路40の断面積を拡大させるのに役立つ。
【0028】
第2の溝27は、図9及び図10に示したように、第2の面25に形成されている。第2の溝27は、図6及び図9に示したように、第2の室32に開口する第2の開口部29を有して構成される。第2の溝27は、図9に示したように、オイルを流れ易くするため、環状であることが好ましい。第2の溝27が環状であることは、流路40の形成場所の増加をもたらすため、流路40の断面積を拡大させるのに役立つ。
【0029】
ベーン22は、図8図9及び図11に示したように、軸部21と一体に成形されている。隔壁部14で仕切られた空間は、図5及び図6に示したように、ベーン22によって第1の室31と第2の室32に区画される。本実施例では、図5及び図6に示したように、第1の室31及び第2の室32がハウジング10の内部に2つずつ形成されている。
【0030】
穴23は、図8図11に示したように、ロータ20の中央に形成されている。穴23は、ロータ20を貫通しており、この穴23には、ロータ20を回転させる又は固定する軸が挿入される。
【0031】
実施例1に係るロータリーダンパは、オイル及びバルブをさらに有して構成される。
【0032】
オイルは、第1の室31及び第2の室32に充填される。
【0033】
バルブは、流路40及び弁体41を有して構成される。
【0034】
流路40は、図8図11に示したように、第1の溝26と第2の溝27の間を貫通している。流路40は円形の穴でもよいが、本実施例では、流路40が弧状の長穴である。また、流路40は1つでもよいが、本実施例では、流路40が2つ以上(具体的には4つ)ある。本実施例の流路40の断面積(各流路の断面積の合計)は、従来のダンパに比べて格段に大きい。そのような構成は、第1の溝26及び第2の溝27がそれぞれ環状であることによって達成される。
【0035】
弁体41は、第1の溝26又は第2の溝27に設けられる。本実施例では、弁体41が、図3図4及び図7に示したように、第2の溝27の中に設けられている。本実施例で採用した弁体41は、図12及び図13に示したように、環状の平板である。この弁体41は、平座金によく似ており、図14に示したように、所定の幅(w)及び高さ(h)を有する。弁体41の幅(w)は流路40の断面積の拡大に伴って変化し得る(すなわち、寸法が拡大し得る)が、弁体41の高さ(h)は流路40の断面積の拡大に伴って変化しない。すなわち、この弁体41は平板であるため、弁体41の高さ(h)は弁体41の幅(w)が拡大することによって必然的に拡大するものではない。したがって、バルブの全長が流路40の断面積の拡大に伴って長くなることもない。よって、流路40の断面積を大きく設定した場合であっても、図2に示したように、ハウジング10の高さ(h)をより低くすることが可能である。
【0036】
本実施例は、従来のダンパと同様に、複数のベーン22を有するが、流路40が軸部21に形成されるため、流路40及び弁体41の数をそれぞれ1つにすることが可能である。また、本実施例は、従来のダンパと同様に、複数の流路40を有するが、弁体41の数を1つにすることが可能である。これは、弁体41が環状であることによって達成される。本実施例は、弁体41が単数であるため、従来のダンパに比べて製造コストを削減することが可能である。
【0037】
実施例1に係るロータリーダンパは、以下のように動作する。すなわち、ロータ20が正転(図5及び図6において、反時計回り方向に回転)した場合には、第2の室32のオイルが第2の開口部29から第2の溝27に流入する。それにより、弁体41が、図15に示したように、流路40を閉鎖する。本実施例では、流路40が複数であり、弁体41が単数であるが、1つの弁体41で全ての流路40が閉鎖される。その結果、オイルは、ベーン22と筒部11の間等に形成される僅かな隙間を通って第1の室31へ移動することになるため、大きな制動力が発生する。
【0038】
一方、ロータ20が逆転(図5及び図6において、時計回り方向に回転)した場合には、第1の室31のオイルが第1の開口部28、第1の溝26及び流路40を経由して第2の溝27に流入する。弁体41は、図7に示したように、第2の溝27に流入するオイルによって流路40から離れた状態を維持するため、オイルは、第2の開口部29を通って第2の室32に流入する。本実施例では、流路40の断面積が大きいため、第1の溝26から第2の溝27へのオイルの流れが円滑である。したがって、ロータ20の逆転時に発生する制動力が非常に小さい。
【0039】
本実施例で採用したバルブによれば、従来のダンパと比較して、ロータ20の逆転時に発生する制動力をより小さくすること、及びハウジング10の高さ(h)をより低くすることができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、本発明の他の実施形態である。実施例2は、ロータ20の正転時に流路40を通過するオイルの単位時間当たりの流量を調節し得る点で、実施例1と異なる。
【0041】
本実施例では、図16図18に示したように、弁体41が皿ばねである。この弁体41は、環状であり、高さ(h)を低くする方向に変形したときに弾性力を発生する。弁体41の高さ(h)は流路40の断面積の拡大に伴って変化しないため、バルブの全長が流路40の断面積の拡大に伴って長くならない。よって、流路40の断面積を大きく設定した場合であっても、図2に示したように、ハウジング10の高さ(h)をより低くすることが可能である。
【0042】
弁体41は、第1の溝26及び第2の溝27のいずれか一方に設けられる。本実施例では、図19に示したように、弁体41が第2の溝27の中に設けられている。
【0043】
弁体41は、以下のように動作する。すなわち、ロータ20の正転時に第2の溝27に流入するオイルの圧力が小さい場合には、弁体41に加えられる力が小さいため、図20に示したように、弁体41が小さく変形する。それにより、オイルの流れが制限されるが、発生する制動力は小さい。
【0044】
一方、ロータ20の正転時に第2の溝27に流入するオイルの圧力が大きい場合には、弁体41に加えられる力が大きいため、図21に示したように、弁体41が大きく変形する。それにより、オイルの流れがさらに制限され、その結果、大きな制動力が発生する。
【0045】
弁体41の変形の度合いは、オイルの圧力の大きさによって変化する。そして、オイルの圧力の大きさは、ロータ20を回転させる力の大きさに比例している。したがって、弁体41の弾性力を利用することによってロータ20の正転時に流路40を通過するオイルの単位時間当たりの流量を調節できる。そして、このバルブによれば、ロータ20を回転させる力の大きさが変化した場合でも、ロータ20の回転速度を一定に維持することが可能である。
【0046】
ロータ20が逆転している間は、図19に示したように、弁体41が流路40から離れた状態を維持し、流路40が開放される。本実施例では、実施例1と同様に、流路40の断面積が大きいため、ロータ20の逆転時に発生する制動力は非常に小さい。
【実施例3】
【0047】
実施例3は、本発明の他の実施形態である。実施例3は、実施例2と同様に、ロータ20の正転時に流路40を通過するオイルの単位時間当たりの流量を調節し得る点で、実施例1と異なる。
【0048】
本実施例では、図22及び図23に示したように、弁体41が環状の波板である。この弁体41は、波形座金によく似ており、高さを低くする方向に変形したときに弾性力を発生する。弁体41の高さは流路40の断面積の拡大に伴って変化しないため、バルブの全長が流路40の断面積の拡大に伴って長くならない。よって、流路40の断面積を大きく設定した場合であっても、図2に示したように、ハウジング10の高さ(h)をより低くすることが可能である。
【0049】
弁体41は、第1の溝26及び第2の溝27のいずれか一方に設けられる。
【0050】
弁体41の動作は、実施例2で採用した弁体41と同様である。すなわち、オイルの圧力が小さい場合には、弁体41が小さく変形し、オイルの圧力が大きい場合には、弁体41が大きく変形する。そして、ロータ20の正転時に流路40を通過するオイルの単位時間当たりの流量は、弁体41の変形の度合いによって調節される。したがって、このバルブによれば、ロータ20を回転させる力の大きさが変化した場合でも、ロータ20の回転速度を一定に維持することが可能である。
【0051】
ロータ20が逆転している間は、弁体41が流路40から離れた状態を維持し、流路40が開放される。本実施例では、実施例1と同様に、流路40の断面積が大きいため、ロータ20の逆転時に発生する制動力は非常に小さい。
【実施例4】
【0052】
実施例4は、本発明の他の実施形態である。実施例4は、ロータ20の正転時に流路40を通過するオイルの単位時間当たりの流量を調節し得る点で、実施例1と異なる。
【0053】
本実施例では、図25及び図28に示したように、第2の溝27に開口する流路40の開口部に窪み42が形成されている。弁体41は、実施例1と同様に、環状の平板であるが、この弁体41は、窪み42の深さ方向に変形し得る。
【0054】
弁体41は、ロータ20の正転時に第2の溝27に流入するオイルの圧力が小さい場合には、弁体41に加えられる力が小さいため、図29に示したように、窪み42の深さ方向に小さく変形する。それにより、オイルの流れが制限されるが、発生する制動力は小さい。
【0055】
一方、ロータ20の正転時に第2の溝27に流入するオイルの圧力が大きい場合には、弁体41に加えられる力が大きいため、図30に示したように、弁体41が窪み42の深さ方向に大きく変形する。それにより、オイルの流れがさらに制限され、その結果、大きな制動力が発生する。
【0056】
このように、ロータ20の正転時に流路40を通過するオイルの単位時間当たりの流量は、弁体41の変形の度合いによって調節されるので、このバルブによれば、ロータ20を回転させる力の大きさが変化した場合でも、ロータ20の回転速度を一定に維持することが可能である。
【0057】
ロータ20が逆転している間は、実施例1と同様に、弁体41が流路40から離れた状態を維持し、流路40が開放される。本実施例では、図24図27に示したように、流路40として、弧状の長穴と円形の穴が形成されている。流路40の断面積(各流路の断面積の合計)は従来のダンパと比較して大きいため、ロータ20の逆転時に発生する制動力は非常に小さい。
【0058】
弁体41が第1の溝26に設けられる場合には、窪み42は第1の溝26に開口する流路40の開口部に形成される。
【0059】
実施例2〜4において、弁体41は金属製であってもよい。しかしながら、オイルの粘度は温度が上昇するに従って低下するため、低温の環境よりも高温の環境の方がオイルが流れ易くなる。金属製の弁体では、温度が変化した場合に、ロータ20の回転速度を一定にできない事態が生じ得る。温度変化に対処するため、弁体41は樹脂製であることが好ましい。樹脂製の弁体は、温度が上昇するに従って変形し易くなるため、オイルの粘度の変化に対応して流量を調節することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 ハウジング
11 筒部
12 第1の壁部
13 第2の壁部
14 隔壁部
15 軸受け部
16 突起
17 フランジ
18 穴
20 ロータ
21 軸部
22 ベーン
23 穴
24 第1の面
25 第2の面
26 第1の溝
27 第2の溝
28 第1の開口部
29 第2の開口部
31 第1の室
32 第2の室
40 流路
41 弁体
42 窪み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30