特許第6648002号(P6648002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6648002音響機器音色特性評価装置及び音色特性評価方法
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  • 特許6648002-音響機器音色特性評価装置及び音色特性評価方法 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648002
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】音響機器音色特性評価装置及び音色特性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   G01H17/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-247102(P2016-247102)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-91821(P2018-91821A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】509281829
【氏名又は名称】高野 卓雄
(73)【特許権者】
【識別番号】516247166
【氏名又は名称】株式会社シーピーアイテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】501444958
【氏名又は名称】鎌田 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100098350
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 睦彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 卓雄
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−161197(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/072653(WO,A1)
【文献】 特開2002−365320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数の、かつ互いに同期したディジタル正弦波及びディジタル余弦波を発生する発生手段と、
前記ディジタル正弦波を基にアナログサイン波を発生するディジタル・アナログ変換手段と、
前記アナログサイン波を被測定音響機器に入力させる手段と、
前記被測定音響機器の入力部及び出力部のアナログシグナルをそれぞれディジタルデータに変換するアナログ・ディジタル変換手段と、
前記ディジタル正弦波及びディジタル余弦波並びに入力部ディジタルデータ及び出力部ディジタルデータに基づいてフーリエ変換を行うフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段により得られた入力部フーリエ係数及び出力部フーリエ係数を基に、前記複数の周波数毎の前記被測定音響機器における前記入力部と前記出力部との間の前記アナログサイン波の波高の比率を求めるとともに、前記フーリエ変換手段により得られた入力部フーリエ係数及び出力部フーリエ係数を基に、前記複数の周波数毎の前記被測定音響機器における前記入力部と前記出力部との間の前記アナログサイン波の伝送遅れ時間を求め、さらに、前記複数の周波数毎に求められた前記アナログサイン波の波高の比率及び伝送遅れ時間に基づき、増幅率周波数特性及び伝送遅れ時間周波数特性として、所定の周波数の正弦波を基準とする相対増幅率及び相対位相角を算出する演算手段と、
を備えた音響機器音色特性評価装置。
【請求項2】
前記所定の周波数は440Hzである請求項1に記載の音響機器音色特性評価装置。
【請求項3】
複数の周波数の、かつ互いに同期したディジタル正弦波及びディジタル余弦波を発生する発生工程と、
前記ディジタル正弦波を基にアナログサイン波を発生するディジタル・アナログ変換工程と、
前記アナログサイン波を被測定音響機器に入力させる工程と、
前記被測定音響機器の入力部及び出力部のアナログシグナルをそれぞれディジタルデータに変換するディジタル・アナログ変換工程と、
前記ディジタル正弦波及びディジタル余弦波並びに入力部ディジタルデータ及び出力部ディジタルデータに基づいてフーリエ変換を行うフーリエ変換工程と、
前記フーリエ変換工程により得られた入力部フーリエ係数及び出力部フーリエ係数を基に、前記複数の周波数毎の前記被測定音響機器における前記入力部と前記出力部との間の前記アナログサイン波の波高の比率を求めるとともに、前記フーリエ変換工程により得られた入力部フーリエ係数及び出力部フーリエ係数を基に、前記複数の周波数毎の前記被測定音響機器における前記入力部と前記出力部との間の前記アナログサイン波の伝送遅れ時間を求め、さらに、前記複数の周波数毎に求められた前記アナログサイン波の波高の比率及び伝送遅れ時間に基づき、増幅率周波数特性及び伝送遅れ時間周波数特性として、所定の周波数の正弦波を基準とする相対増幅率及び相対位相角を算出する演算工程と、
を備えた音響機器音色特性評価方法。
【請求項4】
前記所定の周波数は440Hzである請求項3に記載の音響機器音色特性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器の音色特性を解析評価するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオ・アナライザは音質を定量化する為の測定器であり、一般的に歪みメータ、周波数カウンタ、AC電圧計、DC電圧計、FFTアナライザ、低歪みオーディオ信号源等の機能を備えた物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は従来のオーディオ・アナライザによる、音色に対する評価は十分ではない点である。従来のオーディオ・アナライザは相対位相角を重視しておらず、音響機器の音色に対する評価を十分に行うことが出来なかった。そのため現状では音色の評価を人の聴覚に頼っており、客観性に欠ける点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本来音の波はフーリエ変換理論よりサイン波から成る基本波と、基本波の整数倍の周波数を持った高調波を重畳した物としてとらえる事が出来る。
【0005】
音の基本特性として、音高、音量、音色の三要素をあげる事が出来るが、基本波の周波数は音高を決め、基本波と高調波の波高が音量を決め、高調波の基本波に対する波高の比率と相対的位相角によって波形が決まり、その波形が音色を決める。
【0006】
これら音の構成要素である、音高、音量、音色、が音響機器を通過する事によってどの様に変化するかは、その音響機器の極めて重要な特性といえる。
【0007】
この中で音響機器を通過する音高、音量の変化は比較的容易に測定し定量化する事が出来る。一方音色の変化は定量的に測定する事が極めて困難で、音響機器の特性を解析評価する事を困難にしてきた。
【0008】
いま音色は音の波形により定まり、波形は基本波に対する高調波の波高比率と相対的位相角によって決まる事から、音響機器の音色特性は音響機器内における高調波の波高比率の変化、音響機器内において発生した高調波ノイズ強度、音響機器内における相対的位相角の変化により、定量的に表す事が出来る。
【0009】
ここで基本波と高調波の波高比率に着目するならば、音響機器を通過する波高比率の変化率は(数1)(数2)(数3)より基本波と高調波の増幅率の比率に等しい。従って音響機器における増幅率の周波数特性は音響機器の音色特性の一部を定量的に表していると言える。
【0010】
音響機器入力における基本波と高調波の波高比率をPとする
基本波の波高をHとする
高調波の波高をhとする
音響機器出力における基本波と高調波の波高比率をQとする
基本波の増幅率をMとする
高調波の増幅率をmとする
入出力における基本波と高調波の波高比率の入力に対する出力の変化率をYとする。
【0011】
【数1】
【数2】
【数3】
【0012】
ここで高調波ノイズに着目するならば、音響機器を通過する基本波の高調波ノイズの周波数特性は音響機器の音色特性の一部を定量的に表していると言える。
【0013】
ここで相対的位相角に着目する。ここで言う相対的位相角とは基本波の位相角が0度の時の高調波の位相角である。高調波の周波数は基本波の整数倍である事から、高調波の角速度も基本波の角速度の整数倍となる。
【0014】
ここで基本波0度から360度回転し再び0度に成る時間をTとすると、同じ時間Tで高調波は360度の整数倍だけ回転する事となり元の位相角になるため両者の測定時刻に差が無ければ常に相対位相角は一定となる。
【0015】
しかし一般的に音響機器内における音響信号の伝送遅れ時間は周波数によって一定ではなく、信号の見かけ上の経過時間は実時間プラス伝送遅れ時間となる。この為基本波がT時間で360度回転するとする時、高調波は基本波の伝送遅れ時間と高調波の伝送遅れ時間の差t時間だけ変化する事となり、高調波の角速度のt倍だけ、相対位相角が変化する事となる。従って音響機器内における伝送遅れの周波数特性は相対位相角の変化をもたらす事から、増幅率の周波数特性と共に音響機器の音色特性の一部と捉える事が出来る。
【0016】
実際には音響機器における、増幅率、高調波ノイズ、伝送遅れ、これら三者の周波数特性を持って、音響機器の音色特性の定量化が図れたとするには多少問題がある。それは、増幅率、高調波ノイズ、伝送遅れ、の数値がそのまま音色の変化として現れる訳ではなく、あくまでも基本波との相対値の変化が音色の変化として現れる事である。
【0017】
これら相対値を求める事によって初めて、音色特性を直接的かつ定量的に評価する事が出来る。そのため仮の基本波を定めその場合の、増幅率、高調波ノイズ、伝送遅れ、の相対値を算出し、この値を持って音響機器の特性値とする。ただし伝送遅れを時間で表すと実際の波に対してどの程度の影響が有るのかを実感しにくいので、時間を仮の基本波の位相角として角度で表す事とする。
【0018】
仮の基本波の周波数をFとする時、(数4)より求めたPの周波数特性を「FHz相対増幅率」、(数5)より求めたQの周波数特性を「FHz相対高調波ノイズ」、(数6)(数7)より求めたθの周波数特性を「FHz相対位相角」とする。
【0019】
「FHz相対増幅率」、「FHz相対高調波ノイズ」、「FHz相対位相角」、を求め る周波数をfとする
周波数fの増幅率をmとする
周波数fの「FHz相対増幅率」をPとする
周波数fの高調波ノイズをnとする
周波数fの「FHz相対高調波ノイズ」をQとする
周波数fの伝送遅れ時間をtとする
周波数fの「FHz相対位相角」をθとする
基本波の周波数をFとする
周波数Fの増幅率をMとする
周波数Fの波高をNとする
周波数Fの伝送遅れ時間をTとする
周波数Fの角速度をωとする
【0020】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0021】
音響の世界では440Hzの音(A音)を基準としている事が多い事から、ここでは基本波を440Hzとした場合の、増幅率、高調波ノイズ率、伝送遅れ、の相対値を計測し、この値を持って音響機器の特性値とする。ただし伝送遅れを時間で表すと実際の波に対してどの程度の影響が有るのかを実感しにくいので、時間を440Hzにおける位相角として角度で表す事とする。この後この値をそれぞれ「A音相対増幅率」「A音相対高調波ノイズ」「A音相対位相角」と呼ぶものとする。
【0022】
ここで実際の計測計測しようとする音響機器に目的の周波数のアナログサイン波を入力し、その入力部と出力部の両者の信号を同時にディジタル化し複素フーリエ変換により波高と位相をそれぞれ求め、その入力値と出力値の差から、音響機器を通過する際の増幅率、高調波ノイズ、遅れ時間を計測する。この計測を各周波数において計測し、さらに基準の周波数に対する相対値化の変換を行った物を特性値として周波数を横軸とした、周波数特性グラフ等のかたちで表示する。
【発明の効果】
【0023】
音響機器の音色特性を「A音相対増幅率」「A音相対高調波ノイズ」「A音相対位相角」で表す事によって、従来主観的な評価であった音色特性が定量的かつ客観的に評価可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1はオーディオ・アナライザの実施方法を示した説明図である。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明装置の実施例であり、エレキギターとギターアンプの間を接続するために使用されるシールドケーブルの特性を測定する場合の概念図である。
【0026】
図1において、2は、測定しようとするシールドケーブルである。
1は、100KΩの抵抗でエレキギターの出力インピーダンスが通常100KΩ程度で有るため実用時を想定して挿入する。
3は、1MΩの抵抗でギターアンプの入力インピーダンスが通常1MΩ程度で有るため実用時を想定して挿入する。
【0027】
4は、ディジタル・アナログ変換器(以後、DACと表記)であり、離散化正弦波(ディジタル正弦波)を受け取り、正弦波(アナログサイン波)を発生させる。
5は、入力部アナログ・ディジタル変換器(以後、入力部ADCと表記)であり、被測定シールドケーブル入力部の電圧を離散化しディジタルデータを出力する。
6は、出力部アナログ・ディジタル変換器(以後、出力部ADCと表記)であり、被測定シールドケーブル出力部の電圧を離散化しディジタルデータを出力する。
【0028】
7は、複数の離散化正弦波とこの離散化正弦波と同位相の(すなわち同期した)複数の離散化余弦波とを発生する発生器であり、離散化正弦波をDACに供給するとともに離散化正弦波と離散化余弦波の両方を入力フーリエ変換部と、出力フーリエ変換部にそれぞれ供給する。
【0029】
8は、入力フーリエ変換部であり、入力ADCからのディジタルデータと離散化正弦波と離散化余弦波により入力離散化複素フーリエ変換を演算し、入力部フーリエ係数を求める。
9は、出力フーリエ変換部であり、出力ADCからのディジタルデータと離散化正弦波と離散化余弦波により出力離散化複素フーリエ変換を演算し、出力部フーリエ係数を求める。
【0030】
10は、演算処理とその結果の表示部であり、入出力フーリエ変換部より得たフーリエ変換値(入力部フーリエ係数及び出力部フーリエ係数)に演算により「A音相対増幅率」「A音相対高調波ノイズ」「A音相対位相角」を求め表示を行う。
【0031】
(表1)(表2)(表3)は、資料A、資料B、資料C、について実際に計測を行った結果を表にした物である。
【0032】
(表4)は、(表1)におけるA音相対増幅率をグラフにした物である。このグラフから資料Bが最も増幅率の変化により音色を変化させない事が見て取れる。また資料Aは最も大きく増幅率の変化により音色を変化させる、また資料CはA,Bの中間である。
【0033】
(表5)は、(表2)におけるA音相対位相角をグラフにした物である。
このグラフから資料Bが最も相対位相角の変化により音色を変化させない事が見て取れる。資料Aは最も大きく音色を変化させる、資料CはA,Bの中間である。
【0034】
(表3)から「A音相対高調波ノイズ」は極めて低レベルで在り、音色には有為な影響がないことが見て取れる。
【0035】
以上の結果から資料Bが最も音色を変化させない事が見て取れる。資料Aは最も大きく音色を変化させる、資料CはA,Bの中間である。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【符号の説明】
【0041】
1 100KΩ抵抗
2 被測定シールドケーブル
3 1MΩ抵抗
4 ディジタル・アナログ変換器
5 入力部アナログ・ディジタル変換器
6 出力部アナログ・ディジタル変換器
7 離散化正弦波、余弦波発生器
8 入力離散化複素フーリエ変換算出部
9 出力離散化複素フーリエ変換算出部
10 演算処理と結果表示部
図1