(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648009
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】マンノース被覆基材を含有する血液濾過システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20200203BHJP
A61L 33/00 20060101ALI20200203BHJP
A61L 33/06 20060101ALI20200203BHJP
A61L 33/08 20060101ALI20200203BHJP
A61L 33/10 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
A61M1/36 155
A61M1/36 165
A61M1/36 119
A61L33/00 110
A61L33/06 200
A61L33/08
A61L33/10
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-521836(P2016-521836)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公表番号】特表2016-526416(P2016-526416A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】US2014043358
(87)【国際公開番号】WO2014209782
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/838,854
(32)【優先日】2013年6月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509347181
【氏名又は名称】エクステラ・メディカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】マクレア キース
(72)【発明者】
【氏名】ウォード ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ラルム オッレ
(72)【発明者】
【氏名】アドルフソン ラーシュ
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−512078(JP,A)
【文献】
特表2010−530288(JP,A)
【文献】
特表平11−502703(JP,A)
【文献】
特表平06−505248(JP,A)
【文献】
特開昭58−053757(JP,A)
【文献】
特開2003−128502(JP,A)
【文献】
特開平07−178161(JP,A)
【文献】
特表2009−521413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61L 33/00
A61L 33/06
A61L 33/08
A61L 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン含有基材を提供する工程と、
中間体アルデヒドをアミン含有基材へ結合させる工程と、
中間体アルデヒド結合アミン含有基材に、反応性アミンを含む非還元マンノースを含有する水溶液を接触させ、シッフ塩基中間体を形成する工程と
前記シッフ塩基を還元剤と接触させて前記非還元マンノースに結合させる工程と
を含む、アミン含有基材に非還元マンノースを結合させるための方法。
【請求項2】
前記非還元マンノースが、p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液が酸性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミン含有基材がアミノ化ビーズである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤が、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素ナトリウムから選択されるメンバーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、反応性アルデヒド官能基を有するヘパリンを反応させる工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法に従い作製された末端結合したマンノース及びヘパリンを有するビーズ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2013年6月24日に出願された米国仮出願第61/838,854号の優先権を主張するものであり、これらの開示は、あらゆる目的で、その全体が本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薬剤耐性病原体の出現は、医療システムに対する増大している脅威である。現在の抗生物質があまり効果的でなくなってきているのみならず、大規模な製薬会社は、新しい抗菌剤の開発から、より収益性の高い創薬プログラム、例えば、癌治療薬に焦点を移している。「スーパーバグ」が主要な懸念事項であることは認識されているものの、新しい抗感染症薬に関する現在の市場は、その重要な規制や開発費に比べて比較的小さい。
【0003】
CDCは、最近、カルバペネム(carbapenem)耐性腸内細菌(CRE)の出現を警告している。CRE菌血症の死亡率は、50%と高い。利用可能である最も強力な抗生物質に対してですら、CREの耐性は、臨床医にほとんど治療選択肢を残さない。院内CRE感染症の発生率は、10年前のわずか1%強から今日の4%に増加している。CRE菌血症は一般的に院内感染であるが、CREを獲得したコミュニティ(community)の発生率が増加することが懸念されている。現在、CRE感染の広がりに対抗する唯一の戦略は、医療従事者の予防に関する教育プログラムを通じたものである。
【0004】
細菌感染に対抗するための従来の戦略は、宿主組織への損傷を回避しながら、細菌を特異的に殺傷する活性薬物を開発することである。今日の利用可能なより強力な抗生物質のいくつかは非常に毒性であるので、これは大きな課題である。例えば、バンコマイシンは腎毒性で、体外酸素供給を受けている患者には禁忌(contraindicated)である。例え、現在の薬物耐性に対処するために新しい抗生物質が開発されていても、新しい「スーパーバグ」はまだ出現するであろう。薬剤の発見を超えた、感染症と闘うための新しい戦略が明らかに必要とされている。
【0005】
血流感染又は菌血症は、ICUにおける大きな課題である。菌血症は、敗血症性ショック、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎、及び他の転移性の合併症をすぐに引き起こす可能性がある。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及び腸内細菌科(Enterobacteriacea)は、菌血症又は院内感染の原因となる最も一般的な細菌である。菌血症患者に関する転帰の重症度は、細菌負荷及び菌血症の期間の両方に相関している。大腸菌や黄色ブドウ球菌菌血症患者の定量的rt−PCRの研究により、rDNAの数が1238コピー/mLを超えて増加する場合に、死亡率は14.3%から42.9%に増加し、そして敗血症性ショックは31.4%から85.7%に増加することが示された(“Quantitative rt-PCR Holds Promise as a Screening Tool for Patients with Severe Sepsis.” Kirkbright. 2011, Emergence Medicine Australasia, Vol. 23, p. 502参照)。また、髄膜炎菌(N. meningitides)の高い血中濃度が、長期の入院、四肢又は組織損失、透析の必要性、及び死亡率に相関していることもまた発見された(Severity of Meningococcal Disease Associated with Genomic Bacterial Load. Darton. 2009, Clinical Infectious Disease, Vol. 48, pp. 587-84参照)。同様に、別の研究では、肺炎球菌性肺炎の重症度は、血液中の細菌負荷と相関していることが示された:肺炎球菌DNAコピー1000/mL以上の血液を有する患者に関する死亡率は、1000/mL以下を示す患者の6.1%に対して、25.9%であった(Rell et al. “Severity of Pneumococcal Pneumonia Associated with Genomic Bacterial Load.” 2009, Chest, Vol. 136, pp. 832-840参照)。さらに別の研究では、初期診断後48〜96時間の間のフォローアップ陽性血液培養物は、複雑な黄色ブドウ球菌菌血症の最も強い予測因子であることが示された。Fowler。(“Clinical Identifiers of Complicated Staphylococcus aureus Bacteremia.” 2003, Arch Intern Med, pp. 2066-2072参照)。効果的な菌血症の治療の難しさを複合すると、多くの場合、適切な抗生物質治療は遅延した投与となる。治療において遅延一時間ごとに、死亡率が7%強上昇することが報告された(Kumar et al., “Duration of hypotension before initiation of effective antimicrobial therapy is the critical determinant of survival in human septic shock.” 6, 2006, Crit Care Med, Vol. 34, pp. 1589-96参照)。即時に細菌負荷を軽減しそして菌血症の期間を短縮することができる安全で広範囲に使用される(broad-spectrum)技術は、最初の血液中に存在する細菌の種類を識別することなく使用することができるので、大きな突破口になるであろう。
【0006】
ヘパリン化のみをした媒体を有する吸着型血液灌流装置(adsorption hemoperfusion device)は、すでに、院内感染症及び菌血症の原因となる多くの知名度の高い細菌を標的とする能力を有する「広範囲に使用されるもの」であるが、グラム陰性細菌、例えば大腸菌(E. coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び緑膿菌は、ヘパリン/HSに対しては比較的低い親和性を有している。
【0007】
前述の事項を考慮すると、当該技術分野で必要とされているものは、血液から細菌及び病原体を除去する新規な方法及び装置である。本発明は、これらの及び他の必要性を満たしている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、マンノースを有する媒体の表面を官能化するための方法を提供する。特定の例において、マンノース媒体及びヘパリン化媒体を一緒に組み合わせて又は混合して、非常に広い範囲の病原体を標的とする単一の装置を作製する。さらに、ヘパリン化に対するマンノース媒体の近接近(close proximity)は、装置及び方法の全体を抗血栓性にし、このように全体的な安全性を向上させる。
【0009】
このように、或る実施態様において、本発明は、
a.マンノースで被覆された基材;及び
b.場合により、抗凝血成分(anti-coagulation component)
を含む、血液濾過媒体を含む、又はから本質的に成る、又はから成る。
【0010】
特定の実施態様では、基材は、無孔の硬質ビーズ、粒子、又は充填剤(packing)、網状発泡体(reticulated foams)、硬質のモノリシックベッド(monolithic bed)、織布又は不織布、糸又は中実の若しくは中空の緻密な(微小孔性ではない)モノフィラメント繊維、平坦な膜又は隔膜(barrier membrane)、平坦な膜又は緻密膜(dense membrane)から形成される螺旋状カートリッジ(spiral wound cartridge)を含む。
【0011】
特定の観点において、マンノースは、基材に末端(end-point)結合している。
【0012】
特定の観点では、抗凝血成分が存在し、前記成分は、ヘパリンである。
【0013】
特定の観点において、基材は、ヘパリンで被覆された基材を含む。
【0014】
特定の観点において、基材は、無孔の硬質ビーズを含み、前記ビーズの第一の部分がマンノースで被覆されており、そして前記ビーズの第二の部分は、ヘパリンで被覆されている。
【0015】
特定の観点において、マンノース及びヘパリンは、各々が、ビーズに末端結合している。
【0016】
特定の観点において、ヘパリンは、ヘパラン硫酸である。
【0017】
特定の観点において、マンノースは、D−マンノースである。
【0018】
特定の観点において、マンノースは、p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドである。
【0019】
特定の観点において、マンノースは、マンノースのポリマー、例えばマンナンである。
【0020】
本発明はまた、前記の媒体を含む容器を含む血液濾過カートリッジを提供する。
【0021】
本発明はまた、
a.マンノースで被覆された基材を含む、又はから本質的に成る、又はから成る容器;
b.場合により、抗凝血成分;及び
c.使用中に血液が容器を通って流れそして基材と接触するように、容器が体外血液濾過装置に機能的に結合する、体外血液濾過装置
を含む、又はから本質的に成る、又はから成る、血液濾過用システムに関する。
【0022】
本発明のシステムの特定の実施態様では、基材は、無孔の硬質ビーズ、粒子、又は充填剤、網状発泡体、硬質のモノリシックベッド、織布又は不織布、糸又は中実の若しくは中空の緻密な(微小孔性ではない)モノフィラメント繊維、平坦な膜又は隔膜、平坦な膜又は緻密膜から形成される螺旋状カートリッジを含む。
【0023】
本発明のシステムの特定の観点において、マンノースは、基材に末端結合している。
【0024】
本発明のシステムの特定の観点では、抗凝血成分が存在し、前記成分は、ヘパリンである。
【0025】
本発明のシステムの特定の観点において、基材は、ヘパリンで被覆された基材を含む。
【0026】
本発明のシステムの特定の観点において、基材は、無孔の硬質ビーズを含み、前記ビーズの第一の部分がマンノースで被覆されており、そして前記ビーズの第二の部分は、ヘパリンで被覆されている。
【0027】
本発明のシステムの特定の観点において、マンノース及びヘパリンは、各々が、ビーズに末端結合している。
【0028】
本発明はまた、血液の試料を前記基材に接触させる工程を含む、グラム陰性細菌の少なくとも1つを血液から除去する方法に関し、前記グラム陰性細菌は腸内細菌科であることができる。
【0029】
本発明の方法の或る実施態様では、グラム陰性菌は、大腸菌、肺炎桿菌、及び緑膿菌からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、アミンを含有する基材にマンノースを結合させるための方法を提供し、前記方法は、
アミノ化基材にマンノースを含有する水溶液を接触させ、シッフ塩基中間体(Schiff base intermediate)を形成する工程;及び
シッフ塩基を還元剤と接触させてマンノースに結合させる工程
を含む。
【0031】
別の実施態様では、適切なサイズの装置を、献血された血液中の病原体の減少のために使用することができる。
【0032】
以下の図面及び詳細な説明を読めば、これらの及び他の利点、目的、及び実施態様は、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の或る実施態様、すなわち、炭疽菌防御抗原(PA)からのマクロファージの保護を示す図である。
【0034】
【
図2】全血の通過後にヘパリン化されそしてカチオン性である媒体のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【0035】
本発明は、
a.マンノースで被覆された基材;及び
b.場合により、抗凝血成分
を含む、血液濾過媒体を提供する。
本発明は、血液濾過媒体を含み、哺乳動物の血液から細菌や病原体を除去することができる装置及び方法を提供する。特定の例において、基材は、マンノースを含む。他の例において、抗凝血成分が媒体に存在し、抗凝血成分はヘパリン又はヘパラン硫酸である。特定の病原体は、ヘパリンを用いて血液から除去することができる。マンノース官能化表面を使用して、ヘパリンが標的としない他の細菌を標的とすることができる。ヘパリンと異なり、マンノースは、抗血栓性とは考えられない。細菌除去の使用範囲を、マンノース媒体単体で、又は抗凝血成分と組み合わせて使用することによって、増加させることができる。
【0036】
特定の例において、マンノース媒体にヘパリン化吸着媒体を最適に混合することにより、血液に関する安全で広範囲に使用される技術が実現される。単一の吸着型血液灌流装置内で1つ以上の媒体/表面化学的性質を組み合わせることにより、非常に広い範囲の病原体を対象としている。
【0037】
好ましい抗凝血成分の1つは、ヘパリン又はヘパラン硫酸である。本発明は、この抗凝血成分を用いて、高濃度の黄色ブドウ球菌及びMRSAを全血から除去することができることを示している。MRSAの薬剤耐性が固定化されたヘパリンへの結合に影響を与えないことに注意することが重要である。他の薬剤耐性種はまた、ヘパリン/ヘパラン硫酸に結合する能力を維持することができると考えられている。本発明のヘパリン官能性吸着媒体に結合する細菌のリストを表1に示す。
【表1】
【0038】
末端に結合したヘパリンの広い表面積を有する体外装置は、全血由来の高濃度のグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌及びMRSA)を除去することができることが示されている(2011年3月発行のために受理された、Mattsby-Baltzer I. et al., “Affinity Aphaeresis for Treatment of Bacteraemia Caused by Staphylococcus aureus and/or Methicillin-resistant Staphylococcus aureaus (MRSA)”。Journal for Microbiology and Biotechnology参照)。また、本出願は、細菌がヘパリン化表面に結合した場合に細菌が死滅せず、したがって、それらが血流に潜在的な炎症性の毒素/副生成物を放出しなかったことをPCRを用いて示している。
【0039】
細菌除去の範囲は、現在の方法において、マンノース媒体単独で、又は抗凝血成分と組み合わせて使用することによって増加させることができる。ヘパリン及びヘパラン硫酸に対して任意の親和性を有することが知られていない、又はほとんど親和性を有していないグラム陰性細菌の例としては、大腸菌、肺炎桿菌、及び緑膿菌である。本発明の方法は、マンノース官能化媒体を使用して薬剤耐性及び薬剤感受性腸内細菌科の両方を除去することができる。
【0040】
マンノース官能化媒体は、基材に結合したマンノースを含む。他の例では、マンノース媒体は、p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドを含む。或る実施態様では、マンノースは、末端結合によって基材に結合している。別の実施態様では、マンノースは多点結合によって基材に結合している。
【0041】
他の例では、マンノースは、マンノースのポリマー、例えばマンナンである。マンナンは、糖マンノースの直鎖状ポリマーである植物多糖を意味する。植物のマンナンは、β(1−4)結合を有する。マンナンはまた、酵母で見つかった細胞壁多糖類を意味することができる。マンナンのこのタイプは、α(1−6)結合主鎖並びにα(1−2)及びα(1−3)結合の分岐を有している。
【0042】
種々の材料が、形状及び組成において、本発明における基材として使用されることができる。特定の例において、(主に)強制対流輸送(forced convective transport)によって、それらに結合する吸着部位への吸着物の輸送を促進する一方で、基材は、広い表面積を提供する。媒体は、典型的には、血流中に流れ出ないように(例えば、媒体漏出(media migration))そして血液が本質的に全媒体表面を通過できるように、媒体を保持するように設計された容器、例えばカラム内に充填されて提供される。
【0043】
媒体を作成するために有用な基材には、無孔の硬質ビーズ、粒子、又は充填剤、網状発泡体、硬質のモノリシックベッド(例えば焼結ビーズ若しくは粒子から形成されている)、織布又は不織布で充填したカラム、糸又は中実の若しくは中空の緻密な(微多孔質ではない)モノフィラメント繊維で充填されたカラム、平坦な膜又は隔膜、平坦な膜又は緻密膜から形成される螺旋状カートリッジ、あるいは媒体の組合せ、例えばビーズ/織物カートリッジの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0044】
特定の例において、適切な基材は、最初は微小孔性であるが、例えば末端結合したヘパリン又は末端結合したマンノースを介して、吸着部位が生成する前、する間、又はした後に表面が処理された場合に、本質的に無孔質になるものである。或る実施態様では、基材は、固体ビーズ又は粒子の形態である。
【0045】
有用なビーズは、直径が約100〜500ミクロン、例えば100、200、300、400、又は500ミクロンの範囲のサイズを有する。ビーズの平均粒径は、150〜450ミクロンであることができる。例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれる国際公開WO2011/068897参照。ビーズ又は他の広い表面積の基材は、生体適合性材料、例えば、実質的に浸出可能な不純物を含まない、ガラス、セラミックス、金属などのような天然又は合成ポリマー又は非ポリマー材料から作製することができる。いくつかの例示的なポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン又はエチレンと他の単量体との共重合体、ポリエチレンイミン、ポリプロピレン、及びポリイソブチレンを含んでいる。有用な基材の例は、無孔の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられる。他の適切なビーズは、ポリスチレン、高密度及び低密度ポリエチレン、シリカ、ポリウレタン、並びにキトサンである。
【0046】
さらに別の実施態様では、固体基材は、微粒子又は中空繊維(hollow fibers)を含む。本発明の特定の実施態様では、固体基材の材料は、ガラス、セルロース、セルロースアセテート、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アガロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、シリコーン、テフロン(登録商標)、及びポリウレタンからなる群から選択される。さらなる実施態様において、炭水化物は共有結合で固体基材に連結している。より具体的な実施態様では、炭水化物は、共有末端結合(covalent end-point attachment)によって固体基材に連結している。
【0047】
固体基材への炭水化物の共有結合は、非共有結合と比較して、固定化された分子の表面密度及び配向のようなパラメータの制御を提供する。これらのパラメータは、固定化された炭水化物分子に対する病原体の結合を提供することが示されている。特定の観点において、固体基材上の表面濃度は、0.01〜約0.2μg/cm
2、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、又は0.2μg/cm
2である。
【0048】
或る実施態様では、本発明の媒体は、単一の基材上に、ヘパリン及びマンノースの両方を含むことができ、又は、ヘパリン被覆された基材及びマンノース被覆された基材の混合物を含有することができる。被覆は、基材の全体又は基材の一部の上にあることができる。
【0049】
特定の観点では、基材がビーズである場合、ビーズの被覆量は、ビーズのグラムあたりのマンノース及び/又はヘパリン約0.4±0.3mgである。他の量は、ビーズのグラムあたりのマンノース又はヘパリン0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1.0±0.3mgが含まれる。平均サイズが300ミクロンである表面粗さを有するビーズ基材については、BET法で測定した表面領域が、2700cm
2/gのビーズである。このビーズ基材上のマンノースの表面被覆率は、ビーズの0.15μg/cm
2、又は約0.01μg/cm
2〜約0.2μg/cm
2、0.3、0.4、又は0.5μg/cm
2である。適切な範囲は約0.01μg/cm
2〜約0.5μg/cm
2である。
【0050】
抗凝血成分(例えば、ヘパリン)及びマンノースの両方の混合物が、単一の基材上に含まれている場合、ヘパリン:マンノースの比率は、1:99〜99:1の範囲とすることができ、そしてマンノース1〜50%を含むことができる。一例では、基材は、マンノース50%、又はマンノース約5、10、15、20、25、30、35、40、45、若しくは50%で被覆されている。或る観点では、基材は、マンノース100%で被覆されている。他の例では、基材は、50、60、70、80、90、又は100%のマンノースで被覆されている。或る観点では、ビーズ上のマンノース及びヘパリン被覆の合計量は、ビーズのグラム当たりの、ヘパリン、マンノース、又はヘパリン及びマンノースの組み合わせの総計が、0.4±0.3mgである。
【0051】
特定の例において、基材は、マンノース、マンノース誘導体、又はマンノースのポリマーで被覆されている。他の例では、基材は、マンノース及び抗凝血成分を組み合わせたものである。本発明の一つの好ましい用途では、基材は異なる吸着媒体との混合物であり、その後、カートリッジ又は他のハウジング内に充填される。この構成は、吸着カートリッジ又はフィルタの効率的な製造を可能にしながら、隣接するビーズ上の様々な表面化学の間の密接な接触を提供する。
【0052】
一つのアプローチは、血液が直列又は並列の流れにおいて異なる媒体に接触するように、ハウジング内のパフェ型配置(parfait-type arrangement)で異なる媒体を層状にすることである。カートリッジ内の異なる媒体の配置の一つは、必要に応じて、入口と出口領域の間に入れたマンノースを含有するブレンド領域とともに、カートリッジの入口及び/又は出口に混合しない抗凝血媒体(抗血栓性)を配置することである。繊維形状の媒体の場合、混合織物、編物、又は不織布構造を繊維工業で周知の方法によって調製することができ、混合繊維の織物を形成することができる。あるいは、1つの繊維タイプが積極的に接触して血液凝固を防止する表面を含んでいる限り、異なる化学的性質の表面を有する繊維2つ以上から作られた微細なマルチフィラメント糸又はモノフィラメントから、糸を調製することができる。次に、混合繊維糸は、血液接触用の織物を調製することができる。
【0053】
本発明の特定の観点において、固定化された抗凝血成分ヘパリン分子は、10kDaを超える平均分子量を有する。本発明の別の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、15kDaを超える平均分子量を有する。本発明のさらに別の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、21kDaを超える平均分子量を有する。本発明のさらに別の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、30kDaを超える平均分子量を有する。他の実施態様では、固定化されたヘパリン分子は、15−25kDaの範囲内の平均分子量を有する。平均分子量はまた、25−35kDaの範囲内のように高くてもよい。平均分子量は、1−35kDa、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、若しくは35kDaであることができる。
【0054】
或る観点では、本発明の装置又は方法における抗凝血成分(例えば、固定化されたヘパリン分子)の平均分子量は、当該技術分野の現在の状態で使用されるヘパリン分子の平均分子量よりも有意に高い。本発明に従って使用される全長ヘパリン分子は、固体基材の表面の単位面積当たりの結合され得るヘパリン結合分子の量、及び固定化された全長ヘパリン分子によって提示される結合モチーフの増大された選択性が原因で表面により結合され得る分子の範囲の両方により、ヘパリン結合部分に対する向上した結合容量を提供する。
【0055】
特定の観点では、マンノース及び/又はヘパリンは、共有末端結合によって固体基材に連結されている。固体基材へのヘパリンの共有結合は、非共有結合と比較して、前記の固定化された分子のパラメータ、例えば、表面密度及び配向性のよりよい制御を提供する。本発明者らは、これらのパラメータが、固定化されたヘパリン分子に対するヘパリン結合性有害物質の最適な結合を提供するために重要であることを見出した。或る実施態様では、固体基材上のヘパリン及び/又はマンノースの表面濃度は、0.001〜2.0μg/cm
2の範囲である。別の実施態様では、固体基材上のヘパリンの表面濃度は、0.005〜0.5μg/cm
2の範囲である。末端共有結合は、ヘパリンが、ヘパリン分子の末端残基を介して、固体基材に結合させることを意味する。
【0056】
或る実施態様では、装置の固体基材は、好ましくは、広い表面積を有する材料を含むことができる。装置の固体基材は、微粒子又は中空繊維を含むことができるが、固体基材の他のタイプを使用することもできる。固体基材の全表面積は、0.1〜20m
2の範囲であることができ、好ましくは、0.5〜3m
2、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、及び3.0m
2並びにこれらの間の数値であることができる。本発明の特定の実施態様では、固体基材の材料は、ガラス、セルロース、セルロースアセテート、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アガロース、架橋アルギネート(cross linked alginate)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、シリコーン、フルオロポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)、及びポリウレタンからなる群から選択される。固体基材は、粒子又はビーズを含むことができる。固体基材が粒子又はビーズである本発明の装置の実施態様では、粒子又はビーズは、好ましくは、ポリウレタン、ポリオレフィン、シリコーン、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリ(メチルメタクリレート)、ガラス、架橋アルギネート、及び架橋多糖類、例えば、アガロース、デキストラン、セルロース、キトサン及びデンプンからなる群から選択される材料を含むことができる。医療用微粒子用に一般的に使用される他の材料も使用することができる。本発明の別の実施態様において、固体基材は架橋多糖を含む。
【0057】
固体基材が中空繊維を含む本発明の装置の実施態様において、中空繊維は、好ましくは、ポリスルホン、ポリアミド、ポリニトリル、ポリプロピレン、架橋アルギネート、及びセルロースからなる群から選択される材料を含むことができる。医療用中空繊維用に一般的に使用される他の材料も使用することができる。中空繊維は、好ましくはポリスルホンを含むことができる。
【0058】
装置の固体基材は、もちろん、広い表面積を与える他の形状又は形態で存在することができる。
【0059】
デバイス上の許容可能な圧力降下のデバイスを介して適切な血流量を可能にするように、固体基材の大きさと多孔性は、各々の用途又は治療のために選択されるべきである。高い血流速度及び低い圧力降下、より大きな直径の粒子、孔、中空繊維、又は他の固体基材を必要とする特定の用途が必要とされる。高い血流速度及び低い圧力降下、より大きな直径の粒子、孔、中空繊維、又は他の固体基材を必要としない他の用途が使用されることができる。したがって、固体基材が粒子の形態で存在する本発明の実施態様では、粒子径が10μm〜5mmの範囲であることができる。粒径はまた、10μm〜1000μmの範囲、例えば、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000μmであることができる。
【0060】
一般的に、20μm〜200μmの範囲、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200μmの範囲の粒径が有用であるが、高流量の用途においては、より大きな粒子が必要とされる可能性がある。特定の例では、120μm以下の大きさの粒子が、好ましくは血漿及び血清とともに使用される。固体基材は、一つ以上の中空繊維を含むことができる。固体基材が中空繊維の形態で存在する本発明の実施態様では、繊維の内径は、1μm〜1000μmの範囲であることができる。一般的には、20〜200μmの範囲の内径が有用であるが、特定の用途において、より大きな又はより小さな直径の繊維を用いることができる。
【0061】
本発明の装置と方法は、好適には、意図される用途に必要な血流速度のために寸法が決められている。非限定的な例として、腎臓透析のための体外回路における血流速度は、一般に、200〜500mL/分の範囲、例えば200、300、400、又は500mL/分であるのに対し、オキシジェネーション(oxygenation)のための体外回路における血流速度は、一般に、2000〜7000mL/分の範囲、例えば2000、3000、4000、5000、6000、又は7000mL/分である。急性敗血症の治療のための体外回路におけるような特定の用途では、血流速度は、例えば非常に低くすることができ、例えば、1〜100mL/分の範囲である。
【0062】
本発明の媒体の操作においては、哺乳動物由来の全血又は血清を使用することができる。本発明の方法で使用することができる血液又は血清の量は、限定されるものではない。その範囲は、1mL未満から1Lを超える範囲であることができ、途切れることなく血液を患者に再循環させる場合には、患者の血液の全量まで、及び全量を含んでいてもよい。必要に応じて、媒体を介した1つ以上の「管(passes)」を使用することができる。血液は、ヒト又は動物の血液とすることができる。
【0063】
特定の観点において、本発明のいくつかの実施態様において使用される方法及び装置は、以下の特性を有することができる:血流1〜500mL/分、好ましくは5〜250mL/分でありそして流れ抵抗が低い(low flow resistance)。
【0064】
また、本発明の媒体は、体外装置において使用することができる。体外循環を使用した場合、それは、患者由来の血液及び血清の体外処置用の従来の装置を含むことができる。例えば、カートリッジ又はカラムが、次いで、従来の体外回路、例えば、CPB、血液透析、及びオキシジェネーションと直列で使用されることができる。それはまた、他のフィルタのシャント(shunt)又は代替として使用することができ、オキシジェネーションの前又は後に、オキシジェネーション機構への血流が、エンドトキシンを除去するための本発明の媒体にシャントされる。本発明の媒体はまた、体外の血流回路中の唯一の要素として使用することができる。
【0065】
肺炎桿菌の薬剤耐性株は、型1と型3線毛の両方のより高い濃度を発現していることが報告されている(Sahly, J. et al. “Extended-Spectrum B-lactamase Production is Associated with an Increase in Cell Invasion and Expression of Fimbrial Adhesins in Klebsiella pneumoniae.” 9, 2008, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Vol. 52, pp. 3029-3034参照)。任意の特定の理論に拘束されることなく、薬剤耐性株は、宿主組織に対するより高い親和性及び結合をもたらすことができ、この同時発現のために、より毒性であると考えられる。
【0066】
本発明は、病原体が、マンノースと場合により末端結合したヘパリンとにより修飾されている、固体表面又は基材に結合することを示している。表2は、黄色ブドウ球菌及びMRSAのいずれかの様々な実験室株の除去を示している。例えば、インビトロの血液研究(Mattsby-BaltzerI.,前出)では、MRSAの85%が、「ヘパリンのみ」の媒体を1回通過することにより除去された。細菌の出発濃度は、5×10
6CFU/mLであった。MRSAに結合することに加えて、PCR分析により、ヘパリン化表面が殺菌性(bactericidal)でないことが示された。これにより、細菌が媒体に結合すると、レシピエントに対して炎症性及び毒性である可能性がある(死)細菌の細胞成分が血液中に放出されていないことが示される。
【0067】
表2により、黄色ブドウ球菌及びMRSAのいくつかの株は、全血から高収量で(high yield)除去されたことが示されている。株に依存して、MRSA細菌の最大85%は、ヘパリン化基材により除去された。
【表2】
【0068】
ウイルスの取り込みを実証するために、HSV−1及びHSV−2を、ヒト血液、血清、又は緩衝化生理食塩水から除去した。この実験では、放射性標識したHSV−1又はHSV−2ウイルス粒子10
11/mLを有するヒト血液1mLをSeraph
TM媒体を充填したカラムに通した。この実験により、HSV−1の99.1%及びHSV−2の99.8%が、全血から除去されたことが実証された。(以下の表3を参照)。
【表3】
【0069】
細菌毒素はまた、ヘパリン官能化媒体に結合することが示されている。別の実験では、ヘパリン化媒体がある場合、炭疽菌(B. anthracis)によって産生される防御抗原(PA)は、バックグラウンドレベルまで減少し、そして、マクロファージが悪影響を受ける前に捕捉された。
図1。棒グラフに示されるように、ヘパリン化媒体が使用されていない場合、到達した細胞死のレベルは、80%である。ヘパリン化媒体が実験の設定に追加されると、マクロファージの細胞死は、死亡のバックグラウンドレベルである20%に減少し、これにより、それがマクロファージを攻撃する前のPAの取り込みが示される。
【0070】
同様の研究が、孔を形成する外毒素のα溶血素(α-hemolysin)を生成するためにMRSAを培養することによって行われた。培養培地由来の上清を、ヘパリン化媒体を通過させ、これにより、α溶血素はELISA分析のバックグラウンドレベルまで減少したことが実証された。
【0071】
抗凝血成分(例えば、ヘパリン化した吸着媒体)とマンノース媒体とを最適に混合することにより、血液の安全かつ広範囲に使用できる技術が開発されてきた。例として、エンドトキシンは、負に帯電され、負に帯電したヘパリン表面に結合しない。ヘパリンの不在下で単独で使用した場合に、エンドトキシンを標的にするカチオン性(正に帯電している)表面の化学的性質は、非常に血栓形成性(thrombogenic)であろう。ナノ又はマイクロスケールでヘパリン化媒体にカチオン性基材を組み合わせることにより、活性化されたヒト血液からエンドトキシンを高レベルで除去しながら、純粋なヘパリン化媒体の好ましい抗血栓特性を維持することができる。この技術は、治療の安全性を損なうことなく、吸着質(adsorbates)の使用範囲を拡大する。この能力の実証が、
図2に提供されるデータに示されている。
【0072】
特定の他の観点において、本発明は、その病因中の特定の病原体を利用する天然の受容体部位を特定することによりそして次に生体模倣、広い表面積の体外親和性吸着媒体(high-surface-area extracorporeal affinity adsorption media)を開発することにより、血液から病原体を除去するための技術を提供する。この開発された媒体の表面の化学的性質は、その後、例えば透析のような治療で使用される体外装置において媒体と接触させた全血由来の病原体の迅速な除去をもたらす天然のレセプター部位を模倣する。
【0073】
例えば、ヘパラン硫酸は、多くの異なる細胞表面上のシンデカン内に見出されるプロテオグリカンであり、サイトカイン及び増殖因子を含むタンパク質の無数を結合することによって、多くの生物学的プロセスに関与する。最初の結合のための炭水化物及びプロテオグリカンの標的化は、病原体の最も一般的な機構である。例えば、インフルエンザウイルスは、多くの糖タンパク質に見出される炭水化物、シアル酸に結合する。これらの病原体を除去するために、シアル酸が使用される。
【0074】
多くのグラム陰性菌は、線毛の先端に位置するマンノース結合アドヘシン(adhesins)を有している。(Sharon, N. “Bacterial lectins, cell-cell recognition and infectious disease.” 2, 1987, FEBS letters, Vol. 217, pp. 145-157参照)。細菌によって標的化されることが示されている他の炭水化物は、L−フコース、ガラクトース、及び種々のグルコサミン又はガラクトサミンを含む。
【0075】
グラム陰性菌で報告される様々なアドヘシンが存在する。最も研究されているものは、1型、3型、P型、及びS型の線毛、そして外膜タンパク質A(OmpA)である。1型線毛及びOmpAは、内皮細胞への結合に関与している。1型線毛は、マンノースへの付着を媒介し(マンノース感受性)、腸内細菌科の大部分で発現している。
【0076】
典型的には、線毛のいくつかの型が同時に発現する。加えて、マンノース感受性アドヘシンは、線毛を発現しなくても細菌細胞表面上に存在することが示されている。1型線毛は、ヒト脳微小血管内皮細胞と相互作用することが示されており、それにより、線毛を血液中で発現させることが可能であることが示唆される。(Teng, C. et al., “Escherichia coli K1 RS218 Interacts with Human Brain Microvascular Endothelial Cells via Type 1 Fimbria Bacteria in the Fimbriated State.” 5, 2005, Infection and Immunity, Vol. 73, pp. 2923-2931参照)。
【0077】
本発明は、その病因中の、特定の病原体が利用する天然の受容体部位を特定することにより、そして次に生体模倣、広い表面積の体外親和性吸着媒体を開発又は設計することにより、血液から病原体を除去するための技術を提供する。
【0078】
《基材に結合させる方法》
本発明は、アミンを含む基材にマンノースを結合させる方法を提供する。マンノース、マンノースの誘導体、及びマンノースのオリゴマーは、還元的アミノ化により、アミノ化した基材例えばアミノ化したビーズの第一級アミンに結合している。還元マンノースのオープンアルデヒド型(open aldehyde form)のビーズへの結合は、安定な第二級アミンをもたらす。反応性アミンを有する非還元マンノースは、アルデヒド官能基を有する中間体を用いてビーズに結合することができる。
【0079】
または、本発明は、アミンを含有する基材にマンノースを結合させるための方法を提供し、前記方法は
アミノ化した基材にマンノースを含有する水溶液を接触させ、シッフ塩基中間体を形成する工程;及び
シッフ塩基を還元剤と接触させてマンノースに結合させる工程
を含む。
【0080】
特定の観点において、マンノースは還元糖である。他の観点では、マンノースは、非還元糖(例えば、マンノシド)である。適切なマンノースとしては、D−マンノース、L−マンノース、p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシド、マンノース含有多糖、及びマンナンを含むがこれらに限定されない。
【0081】
マンノースが、非還元糖である場合、方法は、中間体アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)を非還元マンノースより前にアミン基材へ結合させることをさらに含む。
【0082】
典型的に、マンノースは、水溶液、例えば、酸性水溶液に溶解される。マンノース水溶液は、アミノ化した基材、例えばアミノ化したビーズと接触させる。シッフ塩基が生成される。シッフ塩基は、その後還元剤で還元される。還元剤は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムであることができる。特定の例において、方法は、反応性アルデヒド官能基を有する反応性ヘパリン(reacting heparin)をさらに含む。
【0083】
ヘパリン結合のために、還元性末端残基でより反応性であるアルデヒド官能基は、部分的な亜硝酸分解によって達成することができる。これは、反応時間を短縮するが、固定化されたヘパリンは、低い分子量を有するであろう。結合は還元的アミノ化(シアノ水素化ホウ素)により、水溶液中で行われる。
【0084】
特定の例では、この方法は、末端結合マンノース及びヘパリンを有するビーズを提供している。
【0085】
末端共有結合は、炭水化物が炭水化物分子の末端残基を介して固体基材に共有結合的に結合していることを意味する。本発明の第二の観点は、炭水化物、例えば、固体基材上に固定化されたマンノースを含む装置の使用を提供し、前記炭水化物は、病原性微生物、炎症性細胞、又は炎症性タンパク質の体外除去のために、病原性微生物、炎症性細胞、又は炎症性タンパク質結合親和性を有している。
【0086】
特定の観点では、表面への全長ヘパリン分子の共有結合は、表面上に存在する第一級アミノ基を有するヘパリン分子のアルデヒド基との反応によって達成される。全ての炭水化物の固有の特性は、それらの還元性末端にヘミアセタールを有するということである。このアセタールは、アルデヒド型と平衡状態にあり、第一級アミンによりシッフ塩基を形成することができる。これらのシッフ塩基は、次いで、安定な第二級アミンに還元されることができる。本発明の装置の実施態様において、ヘパリンは、安定な第二級アミノ基を介して固体基材に共有結合的に結合する。
【0087】
特定の観点において、本発明は、末端結合した全長ヘパリンを有する表面の調製用の方法に関し、この方法は、マンノースと共に全長ヘパリンの高い表面濃度を有する全長ヘパリン被覆表面をもたらす。本発明の種々の観点で使用される全長ヘパリン分子は、先行技術のヘパリン表面と比べて、表面の単位面積当たりの結合体のヘパリン結合能の有意な増加を提供する。ヘパリンは、好ましくは、共有結合で固体基材に連結されている。ヘパリン分子の共有結合は、ヘパリン被覆された表面に接触してヘパリンの血液中への浸出を防止する。ヘパリンの浸出は、例えば表面へのヘパリンの静電結合のために使用される従来技術で問題となっていた。
【実施例】
【0088】
以下の実験では、ヒト血液の1単位をLPSエンドトキシン10ng/mLとインキュベートし、コントロールのヘパリン化カートリッジ(LPS結合なしそして抗血栓性)及びヘパリン化ビーズとカチオン性媒体との混合物を有するカートリッジ(LPS結合性だが抗血栓性)を循環させた。結果により、ヘパリンのみのカラムはLPSを除去せず一方で混合カラムは予期せず有効でありそしてエンドトキシンの98%を除去したことが示された。
図2のSEM顕微鏡写真で示すようなカートリッジにおいて、血栓形成又は活性化された血小板の証拠はなく、また、血栓形成により引き起こされるであろう吸着カートリッジにわたる圧力降下の増加もなかった。
【0089】
《実施例1:還元性末端残基を介したアミノ化ビーズへのサッカロマイセス・セレビシエ(sacchromyces cerevisiae)由来の完全なマンナンの末端結合》
マンノースのオリゴマーは、誘導的、還元的アミノ化によりアミノ化ビーズ上の第一級アミンに結合している。ビーズへのオープンアルデヒド型の結合は、安定な第二級アミンをもたらし、そして反応は、以下に記載の反応工程式1のように示される。
【0090】
水中では、以下のD−マンノピラノースヒドロキシルのアルデヒド官能基は、炭素原子5上のヒドロキシル官能基との閉環により、α及びβ形態と平衡状態にあり、したがって、六員環を形成する。オープン遊離アルデヒド型の低い割合は、常に平衡状態で存在している。後者は第一級アミンと反応しシッフ塩基を形成する。還元により、これらの塩基は、安定した第二級アミンに不可逆的に変換される。したがって、オープンアルデヒド型は1%未満が平衡状態にある場合でも、カップリング収率が良好である。
【化1】
【0091】
サッカロミセス・セレビシエ由来のマンナンは、還元的アミノ化によってアミノ化ビーズ上の第一級アミンに結合する。オープンアルデヒドのビーズへの結合は、安定な第二級アミンをもたらしそして不可逆的である。
【0092】
塩化ナトリウム0.73g(Sigma−Aldrich,Lot no.BCBG1923V)をマグネチック・スターラーを用いて精製水25mL中に溶解した。サッカロマイセス・セレビシエ由来のマンナン50.0mg(Sigma,Lot no.SLBB8777V)を撹拌して水溶液中に溶解した。
【0093】
アミノ化ビーズ10.0g(ExThera Medical,Lot no.1120341)を溶液中に加えそして0.1M塩酸を用いてpHを3.9に調整した。0.1M HCLを作成するために用いた酸は、精製水で希釈した2M HCL(ExThera AB,Lot no.121204)である(1:19)。
【0094】
精製水0.5mL中シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液5.0mg(Acros Organics,Lot no,A0240008)を作製した。ビーズ/マンナン混合物に対して希釈したシアノ水素化ホウ素ナトリウム125μLを添加した。混合物を8時間80℃に加熱した。
【0095】
pHを2時間毎に5.6に調整し、次に0.1M HCLを用いて3.9まで低下させ、次にシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液125μLを添加した。
【0096】
ビーズをガラスフィルターじょうご(no.3)を用いて濾過し、DI水100mLで4回洗浄した。ビーズは、室温で一晩中空気乾燥した。
【0097】
《実施例2:低分子量オリゴ−マンノース(LMV−マンノース)の末端結合》
反応工程式は、実施例1に記載しているものと、本質的に同じである。
【0098】
塩化ナトリウム0.37g(Sigma−Aldrich,Lot no.BCBG1923V)をマグネチック・スターラーを用いてDI水12.5mL中に溶解した。LMV−マンノース5.0mgを撹拌して水溶液中に溶解した。
【0099】
アミノ化ビーズ5.0g(ExThera Medical,Lot no.1120341)を溶液中に加えそして0.1M塩酸を用いてpHを3.9に調整した。0.1M HCLを作成するために用いた酸は、精製水で希釈した2M HCL(ExThera AB,Lot no.121204)である(1:19)。
【0100】
精製水0.5mL中シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液5.0mg(Acros Organics,Lot no.A0240008)を混合物に添加した。混合物を24時間の期間60℃に加熱した。
【0101】
pHを1時間制御し、そして続いて0.1M HCLを用いて約5.8から3.9まで低下させた。24時間後、pHを約5.7に上昇させた。ビーズをガラスフィルターじょうご(no.3)を用いて濾過し、精製水4×50mLで洗浄した。ビーズは、室温で一晩中空気乾燥した。
【0102】
《実施例3:還元性末端残基を介したアミノ化ビーズへの中分子量オリゴ−マンノースの末端結合(HMV−マンノース)》
反応工程式は、実施例1に記載しているものと、本質的に同じである。
【0103】
マンノースのオリゴマーを還元的アミノ化によりアミノ化ビーズ上の第一級アミンに還元的に結合した。ビーズへのオープンアルデヒド型の結合は安定な第二級アミンをもたらし、そして反応は不可逆的である。
【0104】
還元末端ユニット内の単糖ユニットのアルデヒド官能基は、ヘミアセタールにより平衡状態であり、炭素原子5上のヒドロキシル官能基による閉環により形成され、したがって、六員環及びオープン遊離アルデヒド型を形成する。NaBH
3CNを使用することにより、後者を第一級アミンへの還元カップリングのために使用することができる。塩化ナトリウム0.37g(Sigma−Aldrich,Lot no.BCBG1923V)をマグネチック・スターラーを用いてDI水12.5mL中に溶解した。HMV−マンノース5.0mgを撹拌して水溶液中に溶解した。
【0105】
アミノ化ビーズ5.0g(ExThera Medical,Lot no.1120341)を溶液中に加えそして0.1M塩酸を用いてpHを3.9に調整した。0.1M HCLを作成するために用いた酸は、精製水で希釈した2M HCL(ExThera AB,Lot no.121204)である(1:19)。
【0106】
精製水0.5mL中シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液5.0mg(Acros Organics,Lot no.A0240008)を混合物に添加した。混合物を24時間の期間60℃に加熱した。
【0107】
pHを1時間制御し、そして続いて0.1M HCLを用いて約5.7から3.9まで低下させた。24時間後、pHを約5.6に上昇させた。ビーズをガラスフィルターじょうご(no.3)を用いて濾過し、精製水4×50mLで洗浄した。ビーズは、室温で一晩中空気乾燥した。
【0108】
《実施例4:還元性末端残基を介したアミノ化ビーズへの高分子量オリゴ−マンノースの末端結合(HMV−マンノース)》
反応工程式は、実施例1に記載しているものと、本質的に同じである。
【0109】
塩化ナトリウム0.37g(Sigma−Aldrich,Lot no.BCBG1923V)をマグネチック・スターラーを用いて精製水12.5mL中に溶解した。HMV−マンノース5.0mgを撹拌して水溶液中に溶解した。
【0110】
アミノ化ビーズ5.0g(ExThera Medical,Lot no.1120341)を溶液中に加えそして0.1M塩酸を用いてpHを3.9に調整した。0.1M HCLを作成するために用いた酸は、精製水で希釈した2M HCL(ExThera AB,Lot no.121204)である(1:19)。
【0111】
精製水0.5mL中シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液5.0mg(Acros Organics,Lot no.A0240008)を混合物に添加した。混合物を24時間の期間60℃に加熱した。
【0112】
pHを1時間制御し、そして続いて0.1M HCLを用いて約6.4から3.9まで低下させた。24時間後、pHを約6.2に上昇させた。ビーズをガラスフィルターじょうご(no.3)を用いて濾過し、精製水4×50mLで洗浄した。ビーズは、室温で一晩中空気乾燥した。
《実施例5:p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドの結合によるアミノ化アルデヒド活性化ビーズ上へのマンノースの末端結合》
グルタルアルデヒドを使用したアミノ化PE−ビーズのアルデヒド活性化は以下のように進行する。
【化2】
【0113】
p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドグルタルアルデヒド活性化ビーズの末端結合は以下のように進行する。
【化3】
【0114】
p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドは、還元的アミノ化によりアルデヒド活性化アミノ化ビーズに末端結合している。塩化ナトリウム0.73g(Sigma−Aldrich,Lot no.BCBG1923V)を精製水25mL中に溶解した。p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシド10.0mgを撹拌して水溶液中に溶解した。
【0115】
グルタルアルデヒド活性化ビーズ10.0g(ExThera AB,Lot no.LAE−I30)を溶液中に加えそして0.1M塩酸を用いてpHを3.9に調整した。0.1M HCLを作成するために用いた酸は、精製水で希釈した2M HCL(ExThera AB,Lot no.121204)である(1:19)。
【0116】
精製水1mL中シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液50mg(Acros Organics,Lot no.A0240008)を混合物に添加した。混合物を2時間60℃に加熱した。
【0117】
pHを1時間制御し、そして続いて0.1M HCLを用いて約6.0から3.9まで低下させた。2時間後、pHは約5.9であった。
【0118】
ビーズをガラスフィルターじょうご(no.3)を用いて濾過し、DI水4×100mLで洗浄した。ビーズは、室温で一晩中空気乾燥した。
【0119】
《実施例6:クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール活性化ビーズへのマンノースの末端結合》
クロロアセトアルデヒドジメチルアセタールを使用したアミノ化PE−ビーズのアルデヒド活性化は以下のように行われる。
【化4】
【0120】
クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール活性化ビーズへのp−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシドの末端結合は以下のように進行する。
【化5】
【0121】
塩化ナトリウム0.73g(Sigma−Aldrich,Lot no.BCBG1923V)をマグネチック・スターラーを用いて精製水25mL中に溶解した。p−アミノフェニル−α−D−マンノピラノシド10.0mgを撹拌して水溶液中に溶解した。
【0122】
クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール活性化ビーズ10.0g(report 013−IR P.6.2参照)を溶液中に加えそして0.1M塩酸を用いてpHを3.9に調整した。0.1M HCLを作成するために用いた酸は、精製水で希釈した2M HCL(ExThera AB,Lot no.121204)である(1:19)。
【0123】
精製水1mL中シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液10mg(Acros Organics,Lot no.A0240008)を混合物に添加した。混合物を2時間60℃に加熱した。
【0124】
pHを1時間制御し、そして続いて0.1M HCLを用いて約4.5から3.9まで低下させた。2時間後、pHは約4.5であった。ビーズをガラスフィルターじょうご(no.3)を用いて濾過し、精製水4×100mLで洗浄した。ビーズは、室温で一晩中空気乾燥した。
【0125】
《実施例7:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した生理食塩水からの大腸菌の除去》
マンノース及び/又はヘパリン化官能化媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。生理食塩水中の大腸菌ATCC8739細菌懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、2.05×10
5CFU/mLの濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。ヘパリン化ビーズをコントロールとして使用した。
【表4】
【0126】
《実施例8:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した生理食塩水からのK.ニューモニエの除去》
マンノース又はヘパリン化官能化媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。生理食塩水中のK.ニューモニエATCC13883細菌懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、2.25×10
5CFU/mLの濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表5にリストする。ヘパリン化ビーズをコントロールとして使用した。
【表5】
【0127】
《実施例9:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した生理食塩水からの緑膿菌の除去》
マンノース又はヘパリン化官能化媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。生理食塩水中の緑膿菌ATCC9027細菌懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、3.5×10
5CFU/mLの濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表6にリストする。ヘパリン化ビーズをコントロールとして使用した。
【表6】
【0128】
《実施例10:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からの大腸菌の除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中の大腸菌ATCC8739細菌懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、6.15E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表7にリストする。
【表7】
【0129】
《実施例11:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からの大腸菌(CRE)の除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のカルバペネム耐性(CRE)腸内細菌ATCC BAA−2469懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、2.57E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表8にリストする。
【表8】
【0130】
《実施例12:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのK.ニューモニエの除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のK.ニューモニエATCC13883懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、4.02E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表9にリストする。
【表9】
【0131】
《実施例13:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのK.ニューモニエ(CRE)の除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)K.ニューモニエATCC BAA−2146懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、1.40E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
10にリストする。
【表10】
【0132】
《実施例14:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのK.ニューモニエ(ESBL)の除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中の基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)K.ニューモニエATCC700603懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、2.82E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
11にリストする。
【表11】
【0133】
《実施例15:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのS.ニューモニエの除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のS.ニューモニエATCC6301懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、9.80E+04の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
12にリストする。
【表12】
【0134】
《実施例16:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのE.フェカリスの除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のE.フェカリスATCC29212懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、6.43E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
13にリストする。
【表13】
【0135】
《実施例17:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのE.フェカリス(VRE)の除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のバンコマイシン耐性E.フェカリス(VRE)ATCC51575懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、6.17E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
14にリストする。
【表14】
【0136】
《実施例18:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのE.フェシウム(VRE)の除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のE.フェシウムATCC51559懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、9.17E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
15にリストする。
【表15】
【0137】
《実施例19:マンノース修飾ポリエチレンビーズを使用した血液からのA.バウマンニの除去》
マンノース媒体約0.6グラムを100ミクロンのエンドプレートと2.5mLフィルターシリンジ(Mobicol)に充填した。血液中のA.バウマンニATCC19606懸濁液2mLを一晩培養することにより調製し、1.83E+05の濃度に希釈した。充填されたフィルターシリンジをPBS3mLですすぎ、次に細菌懸濁液をシリンジに3回通した。標準の希釈及びプレーティング技術を使用してシリンジの三度目の通過の後に残存する細菌を数えた。試験をそれぞれの媒体で2又は3回繰り返した。結果を表
16にリストする。
【表16】
【0138】
本出願における説明は、例示であり、本発明を限定するものではないことを意図している。当業者は、本明細書に記載の本発明の実施態様の変形例において、本発明と使用される材料及び方法の変形を認識し、本発明から逸脱することなく可能である。なお、本発明のいくつかの実施態様は、本発明の全ての目的を達成するための本発明の利点の全てを示さない可能性があることを理解すべきである。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。