特許第6648043号(P6648043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6648043自動制御された車両用ブレーキシステムおよび車両用ブレーキシステムの作動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648043
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】自動制御された車両用ブレーキシステムおよび車両用ブレーキシステムの作動制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/40 20060101AFI20200203BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20200203BHJP
   B60T 15/36 20060101ALI20200203BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20200203BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20200203BHJP
   B60T 13/66 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B60T8/40 C
   B60T8/17 B
   B60T15/36 Z
   B60T17/18
   B60T13/138 A
   B60T13/66 Z
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-575807(P2016-575807)
(86)(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公表番号】特表2017-520459(P2017-520459A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】IB2015054825
(87)【国際公開番号】WO2016001809
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】BG2014A000023
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・アリエンティ
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・カントーニ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・オドーニ
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−175347(JP,A)
【文献】 米国特許第06345871(US,B1)
【文献】 特開2012−116343(JP,A)
【文献】 実開平05−016537(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12− 8/1769
B60T 8/32− 8/96
B60T 13/00−13/74
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1動作圧力(P1)の第1油圧回路(16)によって作動を制御するように、少なくとも一つのブレーキ装置(12)に作用可能に接続された油圧作動ユニット(8)であって、ユーザがブレーキシステム(4)にブレーキを要求することを可能にする少なくとも一つのユーザ用のマニュアルアクチュエータ(20)を備える前記油圧作動ユニット(8)と、
第2動作圧力(P2)の第2油圧回路(36)によって前記油圧作動ユニット(8)に作用可能に接続された発電ユニット(32)と、
作動される前記発電ユニット(32)の前記第2油圧回路(36)と入力(54)において作用可能に接続され、かつ、前記少なくとも一つのブレーキ装置(12)の作動のための前記第1油圧回路(16)と出力(64)において作用可能に接続された被作動型ブレーキポンプ(48)と、
前記ブレーキシステム(4)の動作を管理する少なくとも一つのシステム制御ユニット(52)と、
前記マニュアルアクチュエータ(20)と、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出力(64)とに対し、相互作用する制御弁(60)であって、第1動作状態または標準状態の少なくとも一つにて動作可能であり、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出口(64)と少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)とを流体的に接続しており、前記マニュアルアクチュエータ(20)の出口ブランチ(24)を少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)から遮断する前記制御弁(60)と
を備え、
前記第1油圧回路(16)および前記第2油圧回路(36)には、互いに流体的に分離された異なる油圧流体が供給されている、車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項2】
前記油圧作動ユニット(8)は、前記第1動作状態において前記マニュアルアクチュエータ(20)の出口ブランチ(24)から受けた流体を蓄積する油圧タンクないしアキュムレータ(68)を備える、請求項1に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項3】
前記制御弁(60)は、前記第1動作状態において前記油圧タンクないしアキュムレータ(68)を前記マニュアルアクチュエータ(20)の前記出口ブランチ(24)に流体的に接続している、請求項2に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項4】
前記システム制御ユニット(52)は、前記第2油圧回路(36)の前記第2動作圧力(P2)が閾値以上に維持されている場合、前記第1動作状態において前記制御弁を動作させ、ブレーキに要する圧力値を生成するようにプログラムされている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項5】
前記制御弁(60)は、第2動作状態または安全状態にて動作可能であり、
前記制御弁(60)は、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の前記出口(64)を少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)から流体的に遮断し、前記マニュアルアクチュエータ(20)の前記出口ブランチ(24)と少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)とを流体的に接続している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項6】
前記油圧作動ユニット(8)は、前記第2動作状態において前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出口(64)から受けた流体を蓄積する油圧タンクないしアキュムレータ(68)を備える、請求項5に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項7】
前記制御弁(60)は、前記第2動作状態において、前記油圧タンクないしアキュムレータ(68)を前記被作動型ブレーキポンプ(48)の前記出口(64)に流体的に接続している、請求項6に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項8】
前記システム制御ユニット(52)は、前記第2油圧回路(36)の圧力が閾値未満に低下した場合、前記制御弁(60)を前記第2動作状態にて作動させるようにプログラムされている、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項9】
前記制御弁(60)には、前記制御弁(60)を前記第2動作状態または安全状態にて機能させるための弾性予負荷手段(72)が設けられている、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項10】
前記制御弁(60)は、前記第2油圧回路(36)によって前記システム制御ユニット(52)によって作動される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項11】
前記被作動型ブレーキポンプ(48)は、前記第2油圧回路(36)に作用するサーボ弁(88)によって調整された異なる圧力の作用を対向するチャンバ(51,53)にて受ける双方影響型作動シリンダ(49)を備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項12】
前記発電ユニット(32)は、車両の補助装置を制御するための車両の補助回路を含んでいる、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)。
【請求項13】
第1動作圧力(P1)の第1油圧回路(16)によって作動を制御するように、少なくとも一つのブレーキ装置(12)に作用可能に接続された油圧作動ユニット(8)であって、ユーザがブレーキシステム(4)にブレーキを要求することを可能にする少なくとも一つのユーザ用のマニュアルアクチュエータ(20)を備える前記油圧作動ユニット(8)を設け、
第2動作圧力(P2)の第2油圧回路(36)によって前記油圧作動ユニット(8)に作用可能に接続された発電ユニット(32)を設け、
作動される前記発電ユニット(32)の前記第2油圧回路(36)と入力(54)において作用可能に接続され、かつ、前記少なくとも一つのブレーキ装置(12)の作動のために前記第1油圧回路(16)と出力(64)において作用可能に接続された被作動型ブレーキポンプ(48)を設け、
前記ブレーキシステム(4)の動作を管理する少なくとも一つのシステム制御ユニット(52)を設け、
前記マニュアルアクチュエータ(20)と、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出力(64)とに対し、相互作用する制御弁(60)であって、第1動作状態または標準状態の少なくとも一つにて動作可能であり、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出口(64)と少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)とを流体的に接続しており、前記マニュアルアクチュエータ(20)の出口ブランチ(24)を少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)から遮断する前記制御弁(60)を設け、
前記第1油圧回路(16)および前記第2油圧回路(36)に互いに流体的に分離された異なる油圧流体を供給する
ことを含む、車両用ブレーキシステム(4)の作動制御方法。
【請求項14】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の車両用ブレーキシステム(4)を提供することを含む、車両用ブレーキシステムの作動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動制御された車両用ブレーキシステムおよび車両用ブレーキシステムの作動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次第にパワフルとなっているレーシングカーに対する運動エネルギ回生システム(kinetic energy recovery systems : KERS)の普及には、特に回生ブレーキと消散ブレーキとを自動的に「混合」できるシステムの普及が必要となってきている。正確には、回生ブレーキは、車両によって失われた運動エネルギを、回収および/または貯蔵すべき電気エネルギに変換することによって、ブレーキ中のエネルギを回収可能にするものである。消散ブレーキは、車両の運動エネルギを熱エネルギとして変換する/消散させる「伝統的」なものであり、すなわち典型的にはディスクブレーキキャリパ、パッド、およびブレーキディスクのような熱ブレーキである。
【0003】
これらのシステムは、「ブレーキバイワイヤ(Brake By Wire)」による伝統的な(即ち消散)ブレーキシステムを作動させる。換言すると、ユーザは、そのようなブレーキ装置に流体的に接続されたシステムに圧力を加えるレバーやペダルを直接操作することによってブレーキ装置を直接制御せず、このレバーやペダルの作用によって発揮される、ユーザの要求するブレーキが読み取られ、関連するアクチュエータによってブレーキ装置の対応する作動に変換される。
【0004】
作動時間の短縮(ブレーキシステムの最大圧力に達するまでの0.1〜0.2秒)が意味するのは、これらのアクチュエータが瞬間的な高出力を必要とすることだけなく、(レーシングカーの場合の)ラップ上の平均的な低出力もまた必要とすることである。
【0005】
さらに、競技環境下では、アクチュエータの重量も重要な役割を果たし、可能な限り低重量でなければならない。
【発明の概要】
【0006】
レーシングカーの分野では、常に、瞬時の高出力および低出力の電圧供給が必要であることから大型かつ重量の大きい電気部品が必要となるが、これらはレーシング用途にはあまり適していない。
【0007】
このため、技術的な矛盾が顕著に現れる。即ち、要求される性能を発揮するためには、部品が著しく重くなり、許容できる重量では、要求されるアクチュエータ出力を部品が発揮できない。
【0008】
従って、公知技術を参照して言及した欠点および限界を解決する必要があり、即ち、高出力、作動時間の短縮、かつ同時に、そのようなシステムが設置されている車両の性能に影響を与えないように部品の重量を小さくすることを保証したブレーキシステムを提供する必要がある。
【0009】
この必要性は、請求項1に記載の車両用ブレーキシステムによって、および、請求項14に記載の車両用ブレーキシステムの作動制御方法によって、満たされる。
【0010】
特に、この必要性は、
第1動作圧力(P1)の第1油圧回路(16)によって作動を制御するように、少なくとも一つのブレーキ装置(12)に作用可能に接続された油圧作動ユニット(8)であって、ユーザがブレーキシステムにブレーキを要求することを可能にする少なくとも一つのユーザ用のマニュアルアクチュエータ(20)を備える前記油圧作動ユニット(8)と、
第2動作圧力(P2)の第2油圧回路(36)によって前記油圧作動ユニット(8)に作用可能に接続された発電ユニット(32)と、
作動される前記発電ユニット(32)の前記第2油圧回路(36)と入力(54)において作用可能に接続され、かつ、少なくとも一つのブレーキ装置(12)の作動のための前記第1油圧回路(16)と出力(64)において作用可能に接続された被作動型ブレーキポンプ(48)と、
前記ブレーキシステム(4)の動作を管理する少なくとも一つのシステム制御ユニット(52)と
を備え、
前記第1油圧回路(16)および前記第2油圧回路(36)には、互いに流体的に分離された異なる油圧流体が供給されている、車両用ブレーキシステムによって満たされている。
【0011】
可能な実施形態では、前記システムは、前記マニュアルアクチュエータ(20)と、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出力(64)とに対し、相互作用する制御弁(60)を備え、
前記制御弁(60)は、第1動作状態または標準状態の少なくとも一つにて動作可能であり、前記被作動型ブレーキポンプ(48)と少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)とを流体的に接続しており、前記マニュアルアクチュエータ(20)の出口ブランチ(24)を少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)から遮断する。
【0012】
可能な実施形態では、前記油圧作動ユニット(8)は、前記第1動作状態において前記マニュアルアクチュエータ(20)の出口ブランチ(24)から受けた流体を蓄積する油圧タンクないしアキュムレータ(68)を備える。
【0013】
可能な実施形態では、前記制御弁(60)は、前記第1動作状態において前記油圧タンクないしアキュムレータ(68)を前記マニュアルアクチュエータ(20)の前記出口ブランチ(24)に流体的に接続している。
【0014】
可能な実施形態では、前記システム制御ユニット(52)は、前記第2油圧回路(36)の前記第2動作圧力(P2)が閾値以上に維持されている場合、前記第1動作状態において前記制御弁を動作させ、ブレーキに要する圧力値を生成するようにプログラムされている。
【0015】
可能な実施形態では、前記制御弁(60)は、前記第2動作状態または安全状態にて動作可能であり、
前記制御弁(60)は、前記被作動型ブレーキポンプ(48)の前記出口(64)を少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)から流体的に遮断し、前記マニュアルアクチュエータ(20)の前記出力ブランチ(24)と少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)とを流体的に接続している。
【0016】
可能な実施形態では、前記油圧作動ユニット(8)は、前記第2動作状態において前記被作動型ブレーキポンプ(48)の出口(64)から受けた流体を蓄積する油圧タンクないしアキュムレータ(68)を備える。
【0017】
可能な実施形態では、前記制御弁(60)は、前記第2動作状態において、前記油圧タンクないしアキュムレータ(68)を前記被作動型ブレーキポンプ(48)の前記出口(64)に流体的に接続している。
【0018】
可能な実施形態では、前記システム制御ユニット(52)は、前記第2油圧回路(36)の圧力が閾値未満に低下した場合、前記制御弁(60)を前記第2動作状態にて作動させるようにプログラムされている。
【0019】
可能な実施形態では、前記制御弁(60)は、前記第2油圧回路(36)によって前記システムユニット(52)によって作動される。
【0020】
可能な実施形態では、前記制御弁(60)には、前記制御弁(60)を前記第2動作状態または安全状態にて機能させるための弾性予負荷手段(72)が設けられている。
【0021】
可能な実施形態では、前記被作動型ブレーキポンプ(48)は、前記第2油圧回路(36)に作用するサーボ弁(88)によって調整された異なる圧力の作用を対向するチャンバ(51,53)にて受ける双方影響型作動シリンダ(49)を備える。
【0022】
可能な実施形態では、前記発電ユニット(32)は、車両の補助装置を制御するための車両の補助回路を含んでいる。
【0023】
可能な実施形態では、前記発電ユニットは、前記第2動作圧力まで前記第2油圧流体を加圧するためのポンプに作用可能に接続された少なくとも一つのモータを備える。
【0024】
可能な実施形態では、前記発電ユニットは、前記システム制御ユニットによって制御されるように前記システム制御ユニットに作用可能に接続されている。
【0025】
可能な実施形態では、被作動型ブレーキポンプは、車両の同じ車軸に配置された少なくとも二つ(4輪車両の場合)のブレーキ装置または単一(2輪車両の場合)のブレーキ装置に出力において作用可能に接続されている。
【0026】
可能な実施形態では、分波器を使用する必要なく、異なる車軸のブレーキを独立して制御するように、二つの作動ユニットを車両に取り付け可能である。
【0027】
また、本発明の技術的な問題は、
第1動作圧力(P1)の第1油圧回路(16)によって作動を制御するように、少なくとも一つのブレーキ装置(12)に作用可能に接続された油圧作動ユニット(8)であって、ユーザが前記ブレーキシステム(4)にブレーキを要求することを可能にするユーザ用の少なくとも一つのマニュアルアクチュエータ(20)を備える前記油圧作動ユニット(8)を設け、
第2動作圧力(P2)の第2油圧回路によって油圧作動ユニット(8)に作用可能に接続された発電ユニット(32)を設け、
作動される前記発電ユニット(32)の前記第2油圧回路(36)に入力(54)において作用可能に接続され、かつ、少なくとも一つの前記ブレーキ装置(12)の動作のために前記第1油圧回路(16)に出力(64)において作用可能に接続された被作動型ブレーキポンプ(48)を設け、
前記第1油圧回路(16)および前記第2油圧回路(36)に互いに流体的に分離された異なる油圧流体を供給し、
前記システムの動作を管理する少なくとも一つのシステム制御ユニット(52)を設ける
ことを含む車両用ブレーキシステムを作動制御する方法によって解決される。
【0028】
一実施形態では、前記作動制御する方法は、上記実施形態の種類の一つに記載の車両用ブレーキシステムを提供するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係るブレーキシステムの第1動作状態における概略図。
図2】本発明に係るブレーキシステムの第2動作状態における概略図。
図3】本発明の別の実施形態に係るブレーキシステムの概略図。
図4】関連車両の車載システムを備えた本発明に係るブレーキシステムの接続および相互作用のスキームの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のさらなる特徴および利点は、好ましく非限定的な実施例に関する以下の説明からより理解され得る。
【0031】
以下で説明する実施形態間で共通の構成要素または構成要素の一部は、同じ参照番号で示されている。
【0032】
図を参照して、参照符号4は、車両用ブレーキシステムを全体に示している。
【0033】
まず、本発明の目的のために、車両が意味するものを特定することが必要であるが、これは、一般に、2つ、3つ、または4つ以上の車輪を有し、同様に2つ以上の関連する車軸を有する、任意の種類、型、および動力のモータ車両である。本発明は、導入部分で説明したように、排他的ではないが、好ましくは高性能の四輪車に言及していることは明らかである。
【0034】
ブレーキシステムは、第1動作圧力P1の第1油圧回路16を通じた動作においてブレーキ装置12を制御するように少なくとも一つのブレーキ装置12に作用可能に接続された油圧作動ユニット8を備える。
【0035】
本発明の目的のために、使用されるブレーキ装置12の種類は、重要ではないが、好ましくは、排他的ではないが、単一部品または互いに接続された二つのハーフキャリパの固定式または浮動式のディスクブレーキ用のキャリパなどであり得る。
【0036】
油圧作動ユニット8は、ユーザがブレーキシステムにブレーキを要求することを可能にする少なくとも一つのユーザ用のマニュアルアクチュエータ20を備える。
【0037】
マニュアルアクチュエータ20は、ブレーキ流体を圧縮する油圧ポンプを作動する例えば操作レバーまたはペダルを備えてもよい。
【0038】
マニュアルアクチュエータ20は、出力ブランチ24を有する独自の油圧回路と、ブレーキ流体用タンク28とを順に備え、ブレーキパッドの摩擦材料の消費に続いてブレーキ流体を上記回路に供給する。マニュアルアクチュエータ20の油圧回路は、後述するように、第1油圧回路16と相互に作用する。
【0039】
また、ブレーキシステム4は、第2動作圧力P2の第2油圧回路36によって油圧作動ユニット8に作用可能に接続された発電ユニット32を備える。本発明の実施形態によれば、発電ユニット32は、車両の補助装置を制御するための車両の補助回路を備える。そのような補助装置は、例えば、推進ユニットの分配作動システムおよび推進ユニットの電力供給システムなどの両方の車両付属品を含み得る。
【0040】
例えば、「トップレーシング」車両(図1参照)に関するあるカテゴリでは、車は、ブレーキ装置を動作させるために、発電ユニットとして利用され得る高圧油圧システムを備える。
【0041】
他のカテゴリでは、設計上または規制上の選別のために、高圧油圧回路は車両上には設けられず、作動には電気的な特に電気油圧システムを使用し得る。
【0042】
例えば、可能な実施形態では、発電ユニット32は、油圧流体を第2動作圧力P2まで加圧するためのポンプ44に作用可能に接続された少なくとも一つのモータ40を備える。また、モータ40は、例えば、ブレーキシステム4が取り付けられている関連する車両の推進ユニットの例えば駆動シャフトまたは補助シャフトに作用可能に接続された動力取り出し装置に置換されてもよい。
【0043】
好ましくは、前記発電ユニット32は電気油圧式であり、モータ40は電気モータである。
【0044】
また、ブレーキシステム4は、作動される発電ユニット32の第2油圧回路36と入力54において作用可能に接続され、かつ、少なくとも一つのブレーキ装置12の作動のための第1油圧回路16と出力において作用可能に接続された被作動型ブレーキポンプ48を備える。
【0045】
第1油圧回路16および第2油圧回路36には、互いに流体的に分離された異なる油圧流体が供給されている。
【0046】
例えば、第1油圧回路16の油圧流体は、当該技術分野における公知の典型的な流体であり、好ましくは高性能システムでの使用に適した特性を有するものである。このブレーキ流体は、フェージング現象を防止するために、高吸湿性と、気泡形成に対する高い耐性とを特徴とする合成型のものである。そのような流体は、ブレーキ装置12の動作において高い信頼性を保証する。
【0047】
第2油圧回路36の油圧流体は、好ましくは、数百バールのオーダの特に非常に高圧での動作に適したミネラル流体である。
【0048】
図示のように、第1油圧回路16および第2油圧回路36には、互いに流体的に分離された異なる油圧流体が供給されている。換言すれば、二つの油圧流体は、異なる種類のものであり、互いに著しく異なる動作圧力P1およびP2で動作し、決して混合されず、互いに直接接触しない。関連する第1油圧回路16および第2油圧回路36は、上記被作動型ブレーキポンプ48によって互いに相互作用するこれらの油圧流体を受ける。
【0049】
例えば、被作動型ブレーキポンプ48は、第1油圧回路16および第2油圧回路36の圧力作動に対し、対向するチャンバに対応して、例えば第1チャンバ51および第2チャンバ53に対応して設けられた第1分離隔壁50が設けられた双方影響型作動シリンダ49を備える。例えば、第1チャンバ51は第1油圧回路16に流体的に接続されており、第2チャンバ53は第2油圧回路36に流体的に接続されている。双方影響型作動シリンダ49は、それぞれのチャンバ51,53の側面から作用する力の働きで動作する。
【0050】
また、ブレーキシステム4は、システムの動作を管理する少なくとも一つのシステム制御ユニット52を備える。
【0051】
発電ユニット32は、システム制御ユニット52によって制御されるようにシステム制御ユニット52に作用可能に接続されている。
【0052】
さらに、システム制御ユニット52は、対応する車両制御ユニットに接続され得る(図4)。このようにして、通常の動作状態下では、車両制御ユニット56は、システム制御ユニット52に実行しなければならない圧力を瞬間的に通信する。0
【0053】
これに代えて、車両制御ユニット56がシステム制御ユニット52の誤動作を検出した場合、従来の方法で、即ちマニュアルアクチュエータ20によるユーザの直接的な制御を介したブレーキシステムの操作によって、従って被作動型ブレーキポンプ48を作動させることなく、システム制御ユニット52をバイパス可能である。例えば、車両制御ユニット56とシステム制御ユニット52との間には、スイッチ/リレー58が介在しており、「マスタ」として動作する車両制御ユニット56は、「スレーブ」として動作するシステム制御ユニット52をバイパスおよび/または少なくとも一時的にスイッチオフできる。
【0054】
ブレーキシステム4は、マニュアルアクチュエータ20と、被作動型ブレーキポンプ48の出力64とに対し、相互作用する制御弁60を備える。
【0055】
上記制御弁60は少なくとも第1動作状態または安全状態にて動作可能であり、この状態の制御弁60は被作動型ブレーキポンプ48の出力ないし出口64を少なくとも一つのブレーキ装置12に流体的に接続し、マニュアルアクチュエータ20の出力ブランチ24を少なくとも一つのブレーキ装置12から遮断する。
【0056】
実施形態によると、油圧作動ユニット8は、第1動作状態においてマニュアルアクチュエータ20の出力ブランチ24から流体を受けて蓄積する油圧タンクないしアキュムレータ68を備える。
【0057】
この状態では、タンクないしアキュムレータ68は、ユーザが所望のブレーキ調整を行うことを可能にするように、ユーザによって操作されるマニュアルアクチュエータの特定の作動ストロークを許容し、かつ、次第に増加する抵抗の感覚をユーザに戻す機能を有する。同時に、システム制御ユニット52は、ユーザから要求されたブレーキ要求を読み取り、そのブレーキ要求を、制御弁60を介してブレーキ装置12に接続された上記被作動型ブレーキポンプ48によってブレーキ装置12の動作に変換する。
【0058】
特に、制御弁60は、第1動作状態では、一方で被作動型ブレーキポンプ48をブレーキ装置12に接続し、同時に他方で上記タンクないしアキュムレータ68をマニュアルアクチュエータ20の出力ブランチ24に流体的に接続している。
【0059】
制御弁60は、例えば四方弁である。
【0060】
好ましくは、システム制御ユニット52は、第2油圧回路36の第2動作圧力P2が閾値以下に維持されている場合、制御弁60を第1動作状態にて作動させるようにプログラムされている。
【0061】
換言すれば、システム制御ユニット52は、常に第1モードで、即ち「バイワイヤ(by-wire)」モードでシステムを操作するようにプログラムされている。該モードでは、ユーザは、マニュアルアクチュエータ20の動作によってブレーキトルクを要求し、実際、ブレーキ装置12を直接制御することはなく、ブレーキ装置12は被作動型ブレーキポンプ48によって常に作動されており、ユーザによって手動的になされる要求に明らかに依存する。
【0062】
この第1動作状態または機能する状態は、安全上の理由から、第2油圧回路36の圧力P2が予め設定された閾値より大きく維持されている限り、常に維持される。この閾値がもはや保証されない場合、システムは被作動型ブレーキポンプ48による正確で迅速な作動をもはや保証できなくなり、安全上の理由から、システムは第2動作状態に移行する。
【0063】
特に、制御弁60は、第2動作状態または安全状態で動作可能である。該状態では、制御弁60は、被作動型ブレーキポンプ48の出口64を少なくとも一つのブレーキ装置12から流体的に遮断し、マニュアルアクチュエータ20の出口ブランチ24を少なくとも一つのブレーキ装置12に流体的に接続する。
【0064】
このように、ユーザは、マニュアルアクチュエータ20によってブレーキ装置12の動作を直接制御する。
【0065】
さらに、第2動作状態では、油圧作動ユニット8の前記油圧タンクないしアキュムレータ68は、被作動型ブレーキポンプ48の出口64から流体を受けて蓄積する。
【0066】
特に、制御弁60は、第2動作状態では、上記タンクないしアキュムレータ68を被作動型ブレーキポンプ48の出口64に流体的に接続する。
【0067】
第2油圧回路36内の圧力P2が閾値未満に低下し、誤動作を検出した場合、または、運転手がマニュアルモードに移行することを決定した場合、システム制御ユニット52は制御弁60を第2動作状態で作動させるようにプログラムされている。
【0068】
実施形態によれば、制御弁60は、第2油圧回路36によってシステム制御ユニット52によって作動される。
【0069】
実施形態によれば、制御弁60には、制御弁60を第2動作状態または安全状態にて動作するように押圧する弾性予負荷手段72が設けられている。
【0070】
換言すれば、制御弁60が第1動作状態(標準状態)で作動するように油圧作動がない場合、システムは弾性予負荷手段72の作用により自動的に制御弁60を第2動作状態または安全状態に移行させる。
【0071】
例えば、上記第2油圧回路36の制御ブランチ76は、作動弁80を介して制御弁60に流体的に接続されている。作動弁80は、第1動作状態にて、制御ブランチ76を制御弁60と流体的に接続する。この流体的な接続により、制御弁60が第1動作状態で動作できるように、弾性予負荷手段72の作用を上回ることが可能となる。また、作動弁80は、第2動作状態にて制御弁60から制御ブランチ76を流体的に遮断する。この流体的な遮断により、制御弁60もまた第2動作状態で動作できるように、弾性予負荷手段72の作用が支配的となる。
【0072】
制御弁60は、例えば、一方で弾性予負荷手段72の押圧動作に供され、他方で制御ブランチ76から来る流体の押圧動作に供されるピストン84を備えてもよい。
【0073】
通常、即ち第1動作状態では、制御ブランチ76からの油圧的な押圧作用は、弾性予負荷手段72の弾性作用に勝る一方、第2動作状態では、弾性予負荷手段72の押圧作用が勝る。
【0074】
また、システムは、発電ユニット32から来る流体を受けるサーボ弁88を備える。このサーボ弁88は、被作動型ブレーキポンプ48に送られる圧力を調整可能である。従って、被作動型ブレーキポンプ48の動作を調整するために、異なる値に第2油圧回路の圧力P2を減少させることができる。
【0075】
注意すべきことには、サーボ弁88の正確な動作には、全く不純物を含まない高精度に濾過された流体でサーボ弁88を動作させることを要する。第2油圧回路36の油圧流体はこの高精度の濾過を行う一方、ブレーキ装置12に作用する第1油圧回路16の油圧流体は同精度の濾過を行うことができない。従って、本発明の目的のために重要なことは、第1油圧回路16および第2油圧回路36の流体は常に互いに分離されており、これらの第1油圧回路16および第2油圧回路36は互いに流体的に分離されていることである。このようにして、各油圧流体は、その回路内で最適に機能でき、その技術的機能を果たす。
【0076】
可能な実施形態によれば、被作動型ブレーキポンプ48は、出力64において、少なくとも車両の同じ車軸に配置された少なくとも二つのブレーキ装置12または単一のブレーキ装置(2輪車両の場合)に作用可能に接続されている。
【0077】
可能な実施形態によれば、異なる車軸のブレーキを独立して制御するように、二つの作動ユニットを車両に搭載可能であり、スプリッタを使用する必要がない。
【0078】
上記説明から理解できるように、本発明に係る車両用ブレーキシステムは、従来技術において提示された欠点を克服できる。
【0079】
特に、本発明に係る車両用ブレーキシステムによって、実際上、要求される性能を得るためには部品の重量が著しく重くなり、許容できる重量では部品が必要な作動力を提供できないという従来技術のシステムの技術的矛盾を解決できる。
【0080】
本発明によれば、電力ピークではなく電力平均に合わせて電気部品を形成できるため、これらの電気部品はレーシングカーの使用に適してより軽量となり得る。
【0081】
実際、アクチュエータに導入されるエネルギは、流体の圧力エネルギの形で徐々に蓄積され、この「タンク」から、高速作動に必要な高出力ピークが得られる。
【0082】
また、提案された解決法により、高圧の油圧システムを備えていない車両であっても、油圧用途の利点を活用できる。実際、そのような車両に対しては、ブレーキ装置のアクチュエータを操作するのに適した流体圧力に加圧可能である特定の電気油圧ユニットを使用してもよい。
【0083】
本発明に係るブレーキシステムは、安全状態を保証している。実際、第2油圧回路の圧力が閾値未満に低下した場合、システムはマニュアルアクチュエータの作動を介してユーザによるブレーキ装置の直接的なマニュアル制御を行う第2動作状態(安全状態)に自動的に移行する。
【0084】
標準状態下では、即ち第1動作状態では、システムは、ユーザがマニュアルアクチュエータを操作することによって行うブレーキトルクの要求を常に満たし、迅速で強力で信頼性の高いブレーキを行うように、「BBW」即ち「ブレーキバイワイヤ(brake-by-wire)」動作を行う。
【0085】
本発明に係るシステムによって、例えばロック現象(ABS)を回避するためのブレーキの自動管理などの追加的な操作機能を容易かつ有利に補うことができることは明らかである。
【0086】
当業者であれば、付随的かつ具体的な要求を満足させるために、前述のブレーキシステムに対して数多くの変更および変形を行うことができるが、これらはすべて特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
4 車両用ブレーキシステム
8 油圧作動ユニット
12 ブレーキ装置
16 第1油圧回路
20 マニュアルアクチュエータ
24 出口ブランチ(出力ブランチ)
28 ブレーキ流体用タンク
32 発電ユニット
36 第2油圧回路
40 モータ
44 ポンプ
48 被作動型ブレーキポンプ
49 双方影響型作動シリンダ
50 第1分離隔壁
51 第1チャンバ
52 システム制御ユニット
53 第2チャンバ
54 入力
56 車両制御ユニット
58 リレー
60 制御弁
64 出口(出力)
68 アキュムレータ(タンク)
72 予負荷手段
76 制御ブランチ
80 作動弁
84 ピストン
88 サーボ弁
図1
図2
図3
図4