特許第6648046号(P6648046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648046
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】接続機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20200203BHJP
   H01R 9/22 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H01R4/48 A
   H01R9/22
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-4988(P2017-4988)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-116773(P2018-116773A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】新内 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−058155(JP,A)
【文献】 特開平04−155784(JP,A)
【文献】 特開2006−019181(JP,A)
【文献】 特開平05−135809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/48−4/56
H01R9/22−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続される接続機器であって、
ケースと、
前記ケースに固定された導電性の端子部と、
前記ケースに取り付けられ、復元力により電線を前記端子部に押し付けて挟持する弾性部材と、
前記ケースに設けられた移動経路に沿って移動することにより前記弾性部材の形状を変更する操作部と、
を備え、
前記弾性部材が、前記電線を前記端子部との間で挟持している結線状態と、前記結線状態よりも撓んで前記端子部との間の前記電線の挟持が解除された解除状態との間で変形可能であり、
前記操作部が、前記結線状態の前記弾性部材に接触する第1位置と、前記解除状態の前記弾性部材に接触する第2位置とを結ぶ前記移動経路に沿って移動可能であり、
前記第1位置に位置する前記操作部の表面が、前記ケースの表面のうち前記操作部の周囲の領域よりも前記ケースの内部に位置し、または、前記領域と同一平面上に位置し、
前記第2位置に位置する前記操作部が、前記ケースに係止可能であり、
前記弾性部材は、前記結線状態と、前記電線を挟まずに前記端子部に接触している初期状態との間でも変形可能であり、
前記初期状態の前記弾性部材は自然状態よりも撓んでおり、
前記操作部の前記弾性部材と接触する端部には、前記移動経路に対して側方に突出する操作段差部が設けられ、
前記移動経路の前記第1位置を挟んで前記第2位置とは反対側に位置する第3位置において、前記操作段差部が前記ケースの一部に係止することにより、前記操作部の前記第2位置から離れる方向への移動が制限され、前記操作部の前記端部が前記弾性部材と前記ケースの前記一部との間に挟まれることを特徴とする接続機器。
【請求項2】
請求項1に記載の接続機器であって、
前記第2位置に位置する前記操作部の表面が、前記ケースの表面のうち前記操作部の周囲の領域よりも前記ケースの内部に位置し、または、前記領域と同一平面上に位置することを特徴とする接続機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接続機器であって、
前記弾性部材が板バネであることを特徴とする接続機器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記ケースが、前記移動経路から前記移動経路と交差する方向に延びる段差部を備え、
前記第2位置において、前記操作部が前記ケースの前記段差部に係止することを特徴とする接続機器。
【請求項5】
請求項4に記載の接続機器であって、
前記第2位置において、前記操作部の少なくとも一部が、前記弾性部材の復元力によって前記移動経路と交差する方向に移動することにより、前記操作部が前記段差部に係止することを特徴とする接続機器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の接続機器であって、
前記第3位置に位置する前記操作部の表面が、前記ケースの表面のうち前記操作部の周囲の領域よりも前記ケースの内部に位置し、または、前記領域と同一平面上に位置することを特徴とする接続機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が接続される接続機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御盤等において電線が接続される接続機器として、いわゆるプッシュイン式の接続機器が利用されている。当該接続機器では、ケースの挿入穴に電線が差し込まれると、ケース内に設けられた板バネにより当該電線が導通端子に押し付けられて電気的に接続される。
【0003】
特許文献1の電線接続機器では、ハウジングに対して進退可能な棒状操作ボタンが設けられる。当該電線接続機器では、棒状操作ボタンをハウジングに向けて押し込むことにより、ハウジング内の板バネが弾性変形して導通金具から離間する。棒状操作ボタンの先端は板バネと係合して板バネの形状を維持する。これにより、板バネが導通金具から離間したオープン状態が維持される。そして、オープン状態の電線接続機器に電線を挿入した後、棒状操作ボタンをハウジングから引き出すことにより、板バネが弾性復帰して当該電線を導通金具との間で挟持する。
【0004】
特許文献2のプラグにおける電線固定機構でも、上記と同様に、ハウジングに対して進退可能なボタン部材が設けられる。当該電線固定機構では、ボタン部材をハウジングに向けて押し込むことにより、ハウジング内のスプリングが弾性変形し、当該スプリングが端子金具から離間したオープン状態になる。ハウジングには、押し込まれたボタン部材を保持するための凹部が設けられる。ハウジングには、ボタン部材が元の位置に戻った際に保持するための他の凹部も設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4202125号公報
【特許文献2】特許第3357245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、棒状操作ボタンの一部がハウジングから突出している。このため、板バネと導通金具との間に電線が挟持されている結線状態において、棒状操作ボタンに工具等が誤ってぶつかって棒状操作ボタンが押し込まれると、結線状態が意図に反して解除されるおそれがある。また、板バネが導通金具から離間しているオープン状態において、棒状操作ボタンが誤って引き出されると、オープン状態が意図に反して解除され、電線の接続作業が阻害されるおそれがある。特許文献2においても、ボタン部材の一部がハウジングから突出しているため、結線状態およびオープン状態が意図に反して解除されるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電線が接続される接続機器において、結線状態の意図しない解除を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、電線が接続される接続機器であって、ケースと、前記ケースに固定された導電性の端子部と、前記ケースに取り付けられ、復元力により電線を前記端子部に押し付けて挟持する弾性部材と、前記ケースに設けられた移動経路に沿って移動することにより前記弾性部材の形状を変更する操作部とを備え、前記弾性部材が、前記電線を前記端子部との間で挟持している結線状態と、前記結線状態よりも撓んで前記端子部との間の前記電線の挟持が解除された解除状態との間で変形可能であり、前記操作部が、前記結線状態の前記弾性部材に接触する第1位置と、前記解除状態の前記弾性部材に接触する第2位置とを結ぶ前記移動経路に沿って移動可能であり、前記第1位置に位置する前記操作部の表面が、前記ケースの表面のうち前記操作部の周囲の領域よりも前記ケースの内部に位置し、または、前記領域と同一平面上に位置し、前記第2位置に位置する前記操作部が、前記ケースに係止可能であり、前記弾性部材は、前記結線状態と、前記電線を挟まずに前記端子部に接触している初期状態との間でも変形可能であり、前記初期状態の前記弾性部材は自然状態よりも撓んでおり、前記操作部の前記弾性部材と接触する端部には、前記移動経路に対して側方に突出する操作段差部が設けられ、前記移動経路の前記第1位置を挟んで前記第2位置とは反対側に位置する第3位置において、前記操作段差部が前記ケースの一部に係止することにより、前記操作部の前記第2位置から離れる方向への移動が制限され、前記操作部の前記端部が前記弾性部材と前記ケースの前記一部との間に挟まれる
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の接続機器であって、前記第2位置に位置する前記操作部の表面が、前記ケースの表面のうち前記操作部の周囲の領域よりも前記ケースの内部に位置し、または、前記領域と同一平面上に位置する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の接続機器であって、前記弾性部材が板バネである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の接続機器であって、前記ケースが、前記移動経路から前記移動経路と交差する方向に延びる段差部を備え、前記第2位置において、前記操作部が前記ケースの前記段差部に係止する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の接続機器であって、前記第2位置において、前記操作部の少なくとも一部が、前記弾性部材の復元力によって前記移動経路と交差する方向に移動することにより、前記操作部が前記段差部に係止する。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の接続機器であって、前記第3位置に位置する前記操作部の表面が、前記ケースの表面のうち前記操作部の周囲の領域よりも前記ケースの内部に位置し、または、前記領域と同一平面上に位置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、結線状態の意図しない解除を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一の実施の形態に係る接続機器の断面図である。
図2】接続機器の断面図である。
図3】接続機器の分解斜視図である。
図4】接続機器の断面図である。
図5】接続機器の断面図である。
図6】接続機器の断面図である。
図7】接続機器の断面図である。
図8】接続機器の斜視図である。
図9】他の接続機器の断面図である。
図10】他の接続機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る接続機器1の断面図である。図2は、接続機器1を図1中のII−IIの位置にて切断した断面図である。図3は、接続機器1の分解斜視図である。接続機器1は、電線が接続されるプッシュイン式の接続機器である。図1および図2では、電線が接続機器1に挿入されていない状態を示す。接続機器1は、例えば、制御盤等の端子台に利用される。
【0018】
以下の説明では、図1中の上下方向および左右方向を、単に「上下方向」および「左右方向」とも呼ぶ。また、図1において紙面に垂直な方向を「厚さ方向」とも呼ぶ。当該上下方向、左右方向および厚さ方向は、接続機器1が使用される際の取付方向とは必ずしも一致する必要はない。また、当該上下方向は、重力方向とも必ずしも一致する必要はない。
【0019】
接続機器1は、ケース2と、端子部3と、弾性部材4と、操作部5とを備える。ケース2は、端子部3、弾性部材4および操作部5を内部に収容する。ケース2は、例えば樹脂製である。図1に示す例では、ケース2には、それぞれに電線が挿入可能な2つの挿入穴21が設けられる。また、ケース2の内部には、2つの端子部3と、2つの弾性部材4と、2つの操作部5とが収容されている。換言すれば、接続機器1は、2セットの端子部3、弾性部材4および操作部5を備える。なお、接続機器1は、1セットまたは3セット以上の端子部3、弾性部材4および操作部5を備えていてもよい。
【0020】
端子部3、弾性部材4および操作部5の各セットは、挿入穴21に対応して配置される。2セットの端子部3、弾性部材4および操作部5は、形状および大きさ等は互いに同じであり、左右反対向きに配置される。図1中の右側の挿入穴21に注目すると、端子部3は、挿入穴21の下端部の右側に位置し、挿入穴21の下端部から下方に延びる。弾性部材4は、挿入穴21の下端部から左側へと延び、さらに下方へと延びる。操作部5は、挿入穴21の左側において、弾性部材4の上側に配置される。
【0021】
端子部3は、ケース2に固定された導電性の部材である。端子部3は、例えば金属製である。図1中の右側の端子部3は、図1中の左側の端子部3と電気的に接続されている。図1ないし図3に示す例では、当該2つの端子部3は一繋がりの部材である。具体的には、2つの端子部3の下端部が、左右方向に延びる導電性の端子接続部32により接続されている。
【0022】
弾性部材4は、ケース2に取り付けられた弾性変形可能な部材である。図1および図2に示す例では、弾性部材4は、略帯状の板バネである。弾性部材4は、例えば金属製である。弾性部材4は、導電材料により形成されてもよく、樹脂等の絶縁材料により形成されてもよい。弾性部材4は、例えば、長手方向の中央部41にて略L字状、略V字状または略U字状に折り曲げられた形状を有する。弾性部材4は、中央部41をケース2により挟まれることにより、両端部を略下側に向けた状態でケース2に取り付けられる。以下の説明では、ケース2のうち中央部41に下側から接する部位22を、「支持部22」と呼ぶ。支持部22は、弾性部材4の中央部41から略下方に延びる。
【0023】
図1中の右側の弾性部材4に注目すると、当該弾性部材4のうち、中央部41から支持部22の左側に延びる部位42は、支持部22とケース2の他の部位との間に挟まれることにより、およそ固定されている。また、当該弾性部材4のうち、中央部41から支持部22の右側に延びる部位43は、上下方向に延びる端子部3に接触している。弾性部材4の部位43は、操作部5等により下方に押されることにより、支持部22の上端部を支点として弾性変形して下向きに撓む。また、当該部位43に対する下向きの押圧力がなくなると、部位43は復元力により元の状態に戻る(すなわち、弾性復帰する)。以下の説明では、弾性部材4の部位42および部位43をそれぞれ、「固定部42」および「可動部43」と呼ぶ。固定部42と可動部43とは、中央部41を通る中心線に対して略線対称である。
【0024】
図1に示す状態では、弾性部材4の可動部43の先端が、上述のように、挿入穴21よりも下側において端子部3に接触し、挿入穴21の下端部を下側から閉鎖している。以下の説明では、図1に示す状態を「挿入穴閉鎖状態」と呼ぶ。また、挿入穴閉鎖状態は、挿入穴21に電線が挿入される前の状態、すなわち、接続機器1が使用される前の初期状態である。
【0025】
挿入穴閉鎖状態(すなわち、初期状態)の弾性部材4は、固定部42と可動部43とが近づく向きに少し撓んでいる。これにより、弾性部材4がケース2から脱落することを防止することができる。なお、図1中の左側には、撓みの無い状態の弾性部材4を二点鎖線にて示す。また、図1に示す例では、ケース2の支持部22が、固定部42と可動部43とが近づく向きの弾性部材4の撓み(すなわち、弾性部材4の屈曲)を制限するストッパの役割を果たす。
【0026】
操作部5は、上下方向に延びる略柱状または略板状の部材である。操作部5は、ケース2に設けられた上下方向に延びる穴部(以下、「移動経路24」)の内部に位置する。操作部5は、移動経路24に沿って上下方向に移動可能である。移動経路24は、ケース2の上面25に開口し、当該上面25から略下方に延びる。
【0027】
操作部5は、上端部51と、連結部52と、下端部53とを備える。上端部51、連結部52および下端部53は、この順序で上側から下側に向かって繋がる一繋がりの部材である。操作部5は、例えば樹脂製である。操作部5の上端部51は、例えば略直方体状の部位である。上端部51の上面511は、上下方向に略垂直な平面である。上端部51の上面511の中央部には、下向きに凹む凹部512が設けられる。連結部52は、上端部51の下端から下方に延び、上端部51と下端部53とを連結する。連結部52は、例えば、厚さ方向の幅が左右方向の幅よりも大きい略板状の部位である。下端部53は、連結部52の下端から下方に延びる。下端部53は、例えば、略板状または略柱状の部位である。
【0028】
上端部51の左右方向の幅は、上端部51の上下方向の略全長に亘って略一定である。連結部52の左右方向の幅は、連結部52の上下方向の略全長に亘って略一定である。下端部53の左右方向の幅は、下端部53の上端部において略一定であり、上端部から下方に向かうに従って漸次減少する。上端部51の左右方向の幅は、連結部52の左右方向の幅よりも大きい。下端部53の上端の左右方向の幅は、連結部52の下端の左右方向の幅よりも大きい。連結部52の左右両側の側面は、左右方向に略垂直であり、上下方向に略平行に延びる。
【0029】
図1中の右側の操作部5に注目すると、当該操作部5の上端部51は、連結部52の上端から左側に突出する。下端部53の左側の側面は、上端から上下方向に略平行に下方へと延び、その後、下方に向かうに従って右側へと向かう。弾性部材4は、連結部52または下端部53の左側の側面と部分的に接触する。以下の説明では、連結部52および下端部53の左側の側面をまとめて、操作部5の「弾性部材接触面54」と呼ぶ。操作部5の下端部53は、連結部52の下端から右側に突出する。これにより、連結部52の下端(すなわち、下端部53の上端)に、右側へと突出する操作段差部55が形成される。
【0030】
図1に示す挿入穴閉鎖状態では、操作部5の操作段差部55がケース2の一部に係止することにより、操作部5の上方への移動が制限される。操作部5の弾性部材接触面54は、上述のように弾性部材4の可動部43に接触しており、弾性部材4の復元力により、操作段差部55がケース2の上記一部に押し付けられる。これにより、操作部5がケース2に係止されるため、操作部5が図1に示す位置よりも上側へと移動することが防止される。接続機器1を組み立てる際には、操作部5は、撓んでいない状態(すなわち、非圧縮状態)の弾性部材4の可動部43が存在するはずの領域に先に配置されており、弾性部材4は、撓んだ状態でケース2に取り付けられる。これにより、上記構造が実現される。
【0031】
図1に示す挿入穴閉鎖状態では、操作部5の上端部51の上面511は、ケース2の上面25のうち操作部5の周囲の領域と略同一平面上に位置する。あるいは、操作部5の上端部51の上面511は、ケース2の上面25のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部(すなわち、当該領域よりも下側)に位置する。また、図2に示すように、操作部5の厚さ方向の両側面513は、ケース2の厚さ方向の両側面26のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と略同一平面上に位置する。操作部5の他の表面についても同様である。換言すれば、図1に示す挿入穴閉鎖状態では、操作部5の表面は、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域(すなわち、移動経路24の周囲の領域)よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と略同一平面上に位置する。
【0032】
ケース2には、図1に示す操作部5の上面511よりも下方において、移動経路24から移動経路24と交差する方向に延びる段差部241が設けられる。換言すれば、上下方向の段差部241の位置において、移動経路24の左右方向の幅が急激に拡大する。図1中の右側の移動経路24では、段差部241は、上下方向に延びる移動経路24から左向きに延びる。換言すれば、当該移動経路24では、段差部241の下側において左向きに広がる凹部が設けられる。図1中の左側の移動経路24では、段差部241は、上下方向に延びる移動経路24から右向きに延びる。
【0033】
次に、接続機器1に対する電線の接続の流れについて、図1図4および図5を参照しつつ説明する。なお、以下では、図中の右側の挿入穴21に電線を接続する際の様子について説明する。図中の左側の挿入穴21に電線を接続する場合については、左右反対向きである点を除き、作業員の動作は略同様である。
【0034】
まず、図1に示す挿入穴閉鎖状態から操作部5がケース2の内部に向かって押し込まれ、移動経路24に沿って下方へと移動する。操作部5が押し込まれる際には、例えば、作業員が通常のマイナスドライバー等の先端を、操作部5の上端部51の凹部512に接触させ、当該マイナスドライバーを介して操作部5に下向きの力を加える。操作部5の下方への移動に従って、弾性部材4が撓んで弾性部材4の形状が変更される。具体的には、図4に示すように、弾性部材4の可動部43が、操作部5の下端部53により下方へと押し下げられ、端子部3から左側へと離間する。これにより、挿入穴21の下端部が開放される。以下の説明では、図4に示す状態を「挿入穴開放状態」という。
【0035】
図4に示す挿入穴開放状態では、操作部5がケース2に係止され、図1に示す位置へと戻ることが防止される。具体的には、操作部5の上面511が下方へと移動し、上述の段差部241と上下方向の略同じ位置に位置した時点で、弾性部材4の復元力により操作部5の下端部53が右向きに押されて操作部5が僅かに傾く。これにより、操作部5の下端部53は、移動経路24と交差する方向である右向きに移動し、操作部5の上端部51は、移動経路24と交差する方向である左向きに移動する。操作部5の上端部51の左端部は、段差部241の下側に入り込み、操作部5の上面511が段差部241の下面に下側から押し付けられる。その結果、操作部5が段差部241に係止される。
【0036】
図4に示す挿入穴開放状態では、操作部5の上端部51の上面511は、ケース2の上面25のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部(すなわち、当該領域よりも下側)に位置する。あるいは、操作部5の上端部51の上面511は、ケース2の上面25のうち操作部5の周囲の領域と略同一平面上に位置していてもよい。操作部5の他の表面についても同様である。換言すれば、図4に示す挿入穴開放状態では、操作部5の表面は、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域(すなわち、移動経路24の周囲の領域)よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と略同一平面上に位置する。
【0037】
電線91は、図4中に二点鎖線にて示すように、挿入穴開放状態の接続機器1の挿入穴21に挿入される。電線91は、単線であってもよく、より線であってもよい。また、電線91は、先端部に棒状圧着端子等が設けられたより線であってもよい。
【0038】
続いて、作業員が通常のマイナスドライバー等の先端を、操作部5の上端部51の凹部512に接触させ、上端部51を右向きに移動する。これにより、上端部51が段差部241の下側の凹部から移動経路24へと引き出され、段差部241による操作部5の係止が解除される。段差部241による操作部5の係止が解除されると、弾性部材4の復元力により可動部43が右上に移動し、図5に示すように、電線91に左側から接触する。弾性部材4の可動部43は、電線91を端子部3に押し付け、端子部3との間で挟持する。これにより、電線91と端子部3とが電気的かつ機械的に接続される。以下の説明では、図5に示す状態を「結線状態」という。結線状態の弾性部材4は、上述のように、電線91を端子部3との間で挟持している。
【0039】
図5に示す結線状態では、操作部5は、弾性部材4の復元力により、図4に示す挿入穴開放状態から上方に移動している。操作部5の弾性部材接触面54は、弾性部材4の可動部43に接触している。結線状態における操作部5の上面511は、段差部241よりも上側に位置する。
【0040】
図5に示す結線状態では、操作部5の上端部51の上面511は、ケース2の上面25のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部(すなわち、当該領域よりも下側)に位置する。あるいは、操作部5の上端部51の上面511は、ケース2の上面25のうち操作部5の周囲の領域と略同一平面上に位置していてもよい。操作部5の他の表面についても同様である。換言すれば、図5に示す結線状態では、操作部5の表面は、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域(すなわち、移動経路24の周囲の領域)よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と略同一平面上に位置する。
【0041】
なお、図5に示す結線状態において、図5中の上側が重力方向下側となるように接続機器1が配置されている場合、操作部5は、重力により弾性部材4から図中の上方に離間する。そして、操作部5の操作段差部55が、図1に示す挿入穴閉鎖状態と同様に、ケース2の一部に係止され、操作部5の上方への移動が制限される。したがって、操作部5が図1に示す位置よりも上側へと移動することが防止される。
【0042】
電線91を接続機器1から取り外す際には、例えば、作業員が通常のマイナスドライバー等の先端を、操作部5の上端部51の凹部512に接触させ、当該マイナスドライバーを介して操作部5に下向きの力を加える。そして、操作部5を下方に移動し、図4に示すように挿入穴開放状態とする。挿入穴開放状態では、上述のように、操作部5は段差部241に係止され、弾性部材4は撓んで可動部43が電線91から左側へと離間する。
【0043】
図4に示す挿入穴開放状態では、弾性部材4の可動部43の先端と端子部3との間の左右方向の距離は、接続機器1に接続可能な各種類の電線91の先端部の径よりも大きい。したがって、挿入穴開放状態は、電線91が挿入穴21に挿入されても、弾性部材4と端子部3との間に挟持されない状態である。換言すれば、挿入穴開放状態は、結線状態よりも弾性部材4が撓んで端子部3と弾性部材4との間の電線91の挟持が解除された解除状態である。解除状態の接続機器1では、挿入穴21から電線91を引っ張り出すことで、電線91を接続機器1から容易に取り外すことができる。
【0044】
接続機器1では、弾性部材4は、図1に示す挿入穴閉鎖状態と、図4に示す挿入穴開放状態と、図5に示す結線状態との間で変形可能である。以下の説明では、図5に示すように、結線状態の弾性部材4に接触する操作部5の位置を「第1位置」と呼ぶ。また、図4に示すように、挿入穴開放状態(すなわち、解除状態)の弾性部材4に接触する操作部5の位置を「第2位置」と呼ぶ。さらに、図1に示すように、操作段差部55がケース2の一部に係止する操作部5の位置を「第3位置」と呼ぶ。
【0045】
上述の移動経路24は、操作部5の第3位置、第1位置および第2位置をこの順に結ぶ。第3位置は、移動経路24において、第1位置を挟んで第2位置とは反対側に位置する。第3位置では、上述のように、操作段差部55がケース2の一部に係止することにより、操作部5の上方への移動(すなわち、第2位置から離れる方向への移動)が制限される。なお、第3位置では、操作部5の一部がケース2の一部に係止していればよく、必ずしも操作段差部55がケース2の一部に係止する必要はない。
【0046】
以上に説明したように、電線91が接続される接続機器1は、ケース2と、端子部3と、弾性部材4と、操作部5とを備える。端子部3は、導電性であり、ケース2に固定される。弾性部材4は、ケース2に取り付けられる。弾性部材4は、復元力により電線91を端子部3に押し付けて挟持する。操作部5は、ケース2に設けられた移動経路24に沿って移動することにより、弾性部材4の形状を変更する。弾性部材4は、電線91を端子部3との間で挟持している結線状態と、結線状態よりも撓んで端子部3との間の電線91の挟持が解除された挿入穴開放状態(すなわち、解除状態)との間で変形可能である。操作部5は、結線状態の弾性部材4に接触する第1位置と、挿入穴開放状態の弾性部材4に接触する第2位置とを結ぶ移動経路24に沿って移動可能である。
【0047】
接続機器1では、第1位置に位置する操作部5の表面は、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と同一平面に位置する。このように、電線91が接続機器1に接続されている状態において、操作部5がケース2から突出していないため、工具等が操作部5に誤ってぶつかる等して、弾性部材4が結線状態から変形することを防止することができる。その結果、操作部5の意図しない移動による結線状態の意図しない解除を防止することができる。また、接続機器1では、第2位置に位置する操作部5は、ケース2に係止可能である。これにより、操作部5に力を加え続けることなく、挿入穴開放状態を維持することができる。その結果、挿入穴21への電線91の挿入、および、挿入穴21からの電線91の取り外しを容易に行うことができる。
【0048】
接続機器1では、接続される電線の太さは図5に示すものには限定されず、所定の範囲内において様々に変更されてよい。図6は、図5に示す電線91よりも細い電線91aが接続機器1に接続された結線状態を示す。図7は、図5に示す電線91よりも太い電線91bが接続機器1に接続された結線状態を示す。図5ないし図7に示すように、電線の太さが異なると、操作部5の第1位置も上下方向に異なるが、いずれの場合も、第1位置に位置する操作部5の表面は、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と略同一平面上に位置する。これにより、上記と同様に、操作部5の意図しない移動による結線状態の意図しない解除を防止することができる。
【0049】
なお、例えば、電線91が単線の場合、あるいは、電線91の先端部に棒状圧着端子等が設けられている場合、接続機器1が図4に示す挿入穴開放状態とされることなく、電線91と端子部3とが接続されてもよい。具体的には、図1に示す挿入穴閉鎖状態の接続機器1の挿入穴21に電線91が挿入され、電線91の先端部が、弾性部材4の可動部43を押し下げつつ下方に移動することにより、図5図7に示す結線状態(すなわち、電線91と端子部3とが電気的に接続された状態)が実現されてもよい。
【0050】
上述のように、接続機器1の弾性部材4は板バネである。これにより、接続機器1の製造コストを低減することができる。なお、弾性部材4は、板バネ以外の様々な部材(例えば、弦巻バネ)であってもよい。
【0051】
接続機器1では、第2位置に位置する操作部5の表面も、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と同一平面上に位置する。このように、挿入穴開放状態においても操作部5がケース2から突出していないため、工具等が操作部5に誤ってぶつかる等して、弾性部材4が挿入穴開放状態から変形することを防止することができる。その結果、挿入穴開放状態の意図しない解除を防止することができる。これにより、例えば、電線91の接続作業途中における意図しない電線91の結線を防止することができる。
【0052】
上述のように、ケース2は、移動経路24から移動経路24と交差する方向に延びる段差部241を備える。そして、第2位置において、操作部5がケース2の段差部241に係止する。これにより、第2位置に位置する操作部5のケース2への係止を容易に実現することができる。
【0053】
具体的には、第2位置において、操作部5の上端部51が、弾性部材4の復元力によって移動経路24と交差する方向に移動することにより、操作部5が段差部241に係止する。このように、接続機器1では、操作部5を第2位置まで移動することにより、弾性部材4の復元力によって操作部5の係止が自動的に実現される。したがって、第2位置に位置する操作部5のケース2への係止を、さらに容易に実現することができる。なお、第2位置において、弾性部材4の復元力によって移動経路24と交差する方向に移動する操作部5の部位は、必ずしも上端部51には限定されず、操作部5の一部であればよい。この場合も、上記と同様に、第2位置に位置する操作部5のケース2への係止を、さらに容易に実現することができる。
【0054】
接続機器1では、移動経路24の第1位置を挟んで第2位置とは反対側に位置する第3位置において、操作部5の一部(例えば、操作段差部55)がケース2の一部に係止することにより、第2位置から離れる方向への操作部5の移動が制限される。また、第3位置において、操作部5の上記一部が、弾性部材4の復元力によってケース2の上記一部に押し付けられる。これにより、操作部5がケース2から脱落することを防止することができる。
【0055】
接続機器1では、第3位置に位置する操作部5の表面も、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と同一平面上に位置する。このように、挿入穴閉鎖状態(すなわち、初期状態)においても操作部5がケース2から突出していないため、接続機器1の操作部5が誤って押されて、弾性部材4が挿入穴閉鎖状態から変形することを防止することができる。その結果、出荷時等に弾性部材4に不要な力が加わることを防止することができる。
【0056】
図8は、複数の接続機器1を厚さ方向に連結した大型の接続機器10を示す斜視図である。図10に示す例では、5つの接続機器1が厚さ方向に連結され、図中の最も手前側の接続機器1の側面は、薄板状のエンドプレート11に覆われている。接続機器10では、厚さ方向に並ぶ複数の挿入穴21に、結束バンド等(図示省略)により束ねられた複数の電線91が接続される場合がある。この場合、各接続機器1において、予め操作部5を第2位置にてケース2に係止させておくことにより、複数の電線91を同時に挿入穴21に挿入することができる。その結果、複数の電線91と接続機器10との結線を、電線91を屈曲させることなく容易に行うことができる。また、接続機器10から複数の電線91を取り外す際にも、各接続機器1において、予め操作部5を第2位置にてケース2に係止させておくことにより、複数の電線91を同時に挿入穴21から取り外すことができる。その結果、複数の電線91の接続機器10からの取り外しを、電線91を屈曲させることなく容易に行うことができる。
【0057】
上述の接続機器1では、様々な変更が可能である。
【0058】
例えば、接続機器1では、端子部3、弾性部材4および操作部5の形状は様々に変更されてよい。
【0059】
接続機器1では、第1位置、第2位置および第3位置に位置する操作部5の表面が、ケース2の表面のうち操作部5の周囲の領域よりもケース2の内部に位置し、または、当該領域と略同一平面上に位置することが好ましいが、第2位置および第3位置に位置する操作部5の一部は、ケース2の表面から外部に突出していてもよい。
【0060】
接続機器1では、第2位置において操作部5の上端部51がケース2の段差部241に係止される際には、操作部5は必ずしも傾く必要はなく、例えば、操作部5が左右方向に水平移動することにより、上端部51が段差部241に係止されてもよい。
【0061】
第2位置における操作部5の上端部51は、必ずしも弾性部材4の復元力によって段差部241に係止する必要はない。例えば、作業員がマイナスドライバー等の先端を左右方向に移動させることにより、上端部51の一部を段差部241の下側に移動させて係止させてもよい。また、操作部5のうち上端部51以外の部位が、段差部241に係止してもよい。さらに、第2位置に位置する操作部5は、ケース2に係止されるのであれば、段差部241以外の部位に係止されてもよい。例えば、第2位置に位置する操作部5が、弾性部材4の復元力によりケース2に押し付けられ、弾性部材4とケース2との間に挟まれることにより、ケース2に係止されてもよい。
【0062】
また、図9に例示する接続機器1aでは、図中の右側に示す操作部5aは、弾性部材4の復元力によって第2位置において僅かに傾斜し、操作部5aの下端部53がケース2の一部(すなわち、段差部)に係止する。接続機器1aでは、操作部5aと挿入穴21との間において、ケース2から操作部5aに向けて突出する突起部27が設けられる。突起部27は、例えば、操作部5aの連結部52に接触している。第2位置に位置する操作部5aの係止が解除される際には、例えば、作業員が通常のマイナスドライバー等の先端を、操作部5aの上端部51の凹部512に接触させ、上端部51を挿入穴21に近づく方向へと移動させる。これにより、操作部5aの下端部53が、突起部27を支点として挿入穴21から離れる方向へと移動し、下端部53とケース2との係止が解除される。操作部5aは、弾性部材4の復元力により上方へと移動し、図9中の左側に示す操作部5aのように、下端部53が突起部27に係止される。これにより、第3位置に位置する操作部5aの上方への移動が制限される。
【0063】
図10に例示する接続機器1bでは、操作部5bの上端部51が、左右方向に撓む樹脂バネである。また、上端部51は、挿入穴21とは反対向きに突出する突起部56を備える。図中の左側に示す第3位置に位置する操作部5bでは、樹脂バネである上端部51は左右方向に圧縮されている。図中の右側に示すように、操作部5bが下方に移動して第2位置に位置すると、上端部51が復元力により左右方向に広がり、操作部5bの突起部56がケース2の段差部241に係止する。
【0064】
上述の接続機器1,1a,1bは、様々な装置において電線を接続するために利用されてよい。例えば、接続機器1,1a,1bは、リレーソケットまたは操作スイッチ等に利用されてよい。
【0065】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1a,1b,10 接続機器
2 ケース
3 端子部
4 弾性部材
5,5a,5b 操作部
24 移動経路
25 (ケースの)上面
26 (ケースの)両側面
91,91a,91b 電線
241 段差部
511 (操作部の)上面
513 (操作部の)両側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10