特許第6648055号(P6648055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6648055紙管、梱包資材、塗布剤、塗布剤の製造方法並びに紙管の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648055
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】紙管、梱包資材、塗布剤、塗布剤の製造方法並びに紙管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/28 20060101AFI20200203BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20200203BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20200203BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20200203BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20200203BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20200203BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20200203BHJP
   C09D 131/04 20060101ALI20200203BHJP
   B65D 19/38 20060101ALI20200203BHJP
   B65D 85/672 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B65H75/28
   B65H75/10
   C09J7/00
   C09J5/00
   C09J131/04
   C09J129/04
   C09D129/04
   C09D131/04
   B65D19/38 B
   B65D85/672
【請求項の数】16
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-37808(P2017-37808)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-30713(P2018-30713A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-161898(P2016-161898)
(32)【優先日】2016年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391050101
【氏名又は名称】日本紙管工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】竹本 拓央
(72)【発明者】
【氏名】浦松 真一
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−162468(JP,A)
【文献】 特開平08−231936(JP,A)
【文献】 特開2000−170098(JP,A)
【文献】 特開2006−124616(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3141892(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0018332(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0316282(US,A1)
【文献】 特開昭60−066759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 − 75/32
C09D 129/04
C09D 131/04
B65D 85/58
B65D 85/672
B65D 19/38
B65D 63/10
B65D 63/14
B65D 63/16
C08C 19/00 − 19/44
C08F 18/08
C08F 218/08
C08F 261/04
C08F 301/00
C08F 261/04
C09J 5/00
C09J 7/00
C09J 129/04
C09J 131/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面へ水分を塗布することによりシート材の端部を保持する被着面を備え、前記シート材を、プラスチックフィルム、紙、金属箔、布、不織布の何れかとする巻芯であって、
前記被着面が、水溶性ポリマーを備え、
前記水溶性ポリマーとして、少なくともポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールとを含み、
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、前記ポリビニルアルコールよりも接着力の高いものであり、
前記ポリビニルアルコールは、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性の低いものであり、発現した前記ポリビニルアルコールの粘着性の粘着力が、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さいものであり、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度で湿度50%の環境下において、
水分未塗布の状態で前記シート材を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とし、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏50度で湿度98%の環境下において、
水分未塗布の状態で前記シート材を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とし、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度〜摂氏50度で湿度50%〜98%の環境下において、
水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を120N/60mm未満とする、接着力を前記被着面が発揮する紙管。
【請求項2】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量を、30万〜40万とする請求項1に記載の紙管。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールの重合度300〜1000をとする請求項1又は2に記載の紙管。
【請求項4】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、粘度を1〜40000mPa・sとし、
前記ポリビニルアルコールは、粘度を1〜3000mPa・sとする請求項1〜3の何れかに記載の紙管。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールを第1のポリビニルアルコールとして、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性が低く尚且つ発現した粘着性の粘着力が前記第1のポリビニルアルコールより大きな第2のポリビニルアルコールを、前記水溶性ポリマーが含み、
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の接着力が、前記第2のポリビニルアルコールよりも高いものである請求項1〜4の何れかに記載の紙管。
【請求項6】
前記第2のポリビニルアルコールは、粘度を3000〜40000mPa・sとする請求項5に記載の紙管。
【請求項7】
紙管表面の少なくとも一部は、前記水溶性ポリマーにてコーティングされたコーティング層を備え、
前記被着面は、前記コーティング層の表面であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の紙管。
【請求項8】
表面へ水分を塗布することによりシート材の端部を保持する被着面を備え、前記シート材を、プラスチックフィルム、紙、金属箔、布、不織布の何れかとする梱包資材であって、
前記被着面が、水溶性ポリマーを備え、
前記水溶性ポリマーとして、少なくともポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールとを含み、
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、前記ポリビニルアルコールよりも接着力の高いものであり、
前記ポリビニルアルコールは、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性の低いものであり、発現した前記ポリビニルアルコールの粘着性の粘着力が、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さいものであり、
少なくとも摂氏23度で湿度50%の環境下において、
水分未塗布の状態でポリエチレンフィルムを貼着した場合前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼着した場合24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面が発揮し、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏50度で湿度98%の環境下において、
水分未塗布の状態で前記シート材を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面が発揮し、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度〜摂氏50度で湿度50%〜98%の環境下において、
水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を120N/60mm未満とする、接着力を前記被着面が発揮する梱包資材。
【請求項9】
巻芯や梱包資材を被着体とし、シート材や梱包物又は当該梱包物を収容する梱包箱を貼付体として、前記被着体へ塗布することにより、前記貼付体を固定する被着面を前記被着体へ形成する塗布剤であって、
水溶性ポリマーを主成分とし、
前記水溶性ポリマーとして、少なくともポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールとを含み、
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、前記ポリビニルアルコールよりも接着力の高いものであり、
前記ポリビニルアルコールは、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性の低いものであり、発現した前記ポリビニルアルコールの粘着性の粘着力が、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さいものであり、
前記貼付体を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度で湿度50%の環境下において、水分未塗布の状態で前記貼付体を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記貼付体を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面へ付与し、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏50度で湿度98%の環境下において、水分未塗布の状態で前記シート材を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面へ付与し、
前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度〜摂氏50度で湿度50%〜98%の環境下において、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を120N/60mm未満とする、接着力を前記被着面へ付与するものである容器入りの塗布剤。
【請求項10】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、平均分子量を10万〜70万とするものであり、
前記ポリビニルアルコールは、重合度を1200以下とするものである請求項1に記載の紙管。
【請求項11】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、平均分子量を10万〜70万とするものであり、
前記第1のポリビニルアルコールは、重合度を1200以下とするものであり、前記第2のポリビニルアルコールは、重合度が1200を超えるものである請求項5又は6に記載の紙管。
【請求項12】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、平均分子量を10万〜70万とするものであり、
前記ポリビニルアルコールは、重合度を1200以下とするものである請求項8に記載の梱包資材。
【請求項13】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、平均分子量を10万〜70万とするものであり、
前記ポリビニルアルコールは、重合度を1200以下とするものである請求項9に記載の塗布剤。
【請求項14】
請求項9又は13に記載の塗布剤の製造方法。
【請求項15】
前記ポリ酢酸ビニル系樹脂:前記ポリビニルアルコールの重量比率を両者の合計を100%として、80:20〜20:80とする請求項9又は13に記載の塗布剤の製造方法。
【請求項16】
請求項9又は13に記載の塗布剤を、紙管表面の少なくとも一部へ塗布する紙管の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、紙管、梱包資材、塗布剤、塗布剤の製造方法並びに紙管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙材、特に、シート材の巻芯を例に採ると、シート材の巻き取りが確実に行えるように種々の工夫がなされている(特許文献1及び2)。
【0003】
シート材を巻き取るための巻芯としては、円筒状に加工された紙管などが使用されており、シート材5巻取り開始端部を巻芯の外周面に固定するため、巻芯の外周面には、巻芯の軸に平行な方向に感圧接着剤が帯状に塗布されたものが提案されている(特許文献2の図3及び図4)。
また、例えば特許文献1には、巻取り開始端部に内方折返し部が設けられたシート材を巻取るための巻芯であって、周壁外周面に、巻取られるシート材の厚さとほぼ等しい高さのシート材端受止用段部が全長に渡って設けられ、周壁外周面における段部の下端に連なった部分に、シート材の折返し部が嵌め入れられる凹所が全長に渡って形成されたシート材用巻芯が示されている(実用新案登録請求の範囲)。
特許文献1においても上記感圧接着剤を利用し、シート材を上記感圧接着剤に貼付して巻芯を回転することにて、シート材の巻芯への巻取り開始の段取りを素早く正確に行うことが期待される。
【0004】
しかし、シート材を巻き取る巻芯であって感圧接着剤が塗布されているものは、シート材を巻き始めるまでは感圧接着剤が離型紙で覆われていないと埃が付着したり、湿気の影響で粘着力が低下したりするなどという問題があり、また離型紙を添付する工程とコストを必要とするという問題点がある。これらの問題点に着目して、特許文献2の請求項1へ示す巻芯が提案された。
【0005】
特許文献2の巻芯は、筒状体の表面に、前記筒状体の軸方向と平行に帯状に保持手段がコーティングされており、前記保持手段が大気中では乾燥して粘着力を発揮せず、液体を塗布することにより粘着力を発揮することを特徴とするものである(請求項1)。また、特許文献2の請求項2には、前記保持手段が、澱粉、デキストリン、コンニャクマンナン、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル系樹脂、アラビアゴムおよびカルボキシメチルセルロースのうちの少なくとも一つを含むものであり、前記液体が水である巻芯が示されている。
【0006】
上記構成により特許文献2では、上記問題を解決するため、離型紙の添付を省略することによりコストの低減が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平3−8689号公報
【特許文献2】特開2005−162468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2において、澱粉などの天然素材を接着剤として上記保持手段を形成するものに主眼が置かれ、澱粉に代え合成樹脂を用いる場合について実用に耐える十分な技術の開示はなされていない。
例えば、特許文献2は、巻芯などへ保持手段を形成するに適した合成樹脂について具体的な接着力を示してはいない。また特許文献2において、合成樹脂に触れられてはいるものの、同じ組成の合成樹脂であっても、重合度によって粘度が異なる点を考慮したものではない。
また例えば、巻芯へプラスチックフィルムを巻き取る場合、水分の塗布により発現した粘着力にてプラスチックフィルムの端部を巻芯へ固定してプラスチックフィルムを巻芯へ固定することはできても、プラスチックフィルムを巻芯から引き出して使用する場合、上記端部が綺麗に剥がれずに、プラスチックフィルムが千切れたり、巻芯表面の一部が剥がれてプラスチックフィルムへくっ付いたりすることがあるが、保持手段に合成樹脂を採用した場合においてこのような不都合を抑える具体的な手段は示されていない。
更にまた、表面に上記保持手段を備える複数の紙管同士を、搬送や保管のためにバンドで束ねた場合に、高温多湿の環境下では保持手段がべとつき、バンドを外しても紙管同士が簡単に離れないことがあり、保持手段に合成樹脂を用いた場合にこのような不具合を払拭する具体的な手段は特許文献2において示されていない。特に澱粉などを用いて保持手段を形成して場合、上記べとつきの問題は顕著である。
上述の各問題について纏めると次の通りである。
即ち、第1の問題として、特許文献2には保持手段を構成する素材として合成樹脂に触れられているものの、実用的な粘着性の発現の仕方について十分な検討がなされていない。
第2の問題として、特許文献2において、巻芯に対しプラスチックフィルムを必要なときに簡単に巻き取れ、プラスチックフィルムを使用する際には綺麗に巻芯から剥がれるという、相反する作用を実用的に両立できる合成樹脂を用いた構成について十分な開示はなされていない。
また、第3の問題として、特許文献2において、合成樹脂を上記保持手段とする紙管表面が高温多湿の環境下でもべとつかず尚且つ水分を塗布した際には上記の通り必要な粘着力を発揮するという相反する作用についても、その両立を図るための開示は十分なされていない。
そこで、本願発明は、水性ポリマーを利用しつつ実用的な範囲の接着力や粘着性に着目し、巻芯などの紙管は勿論のこと、エッジボードなどの梱包資材も含めて、上記課題の解決を図るものである。
また本願発明は、紙管や梱包資材に対し、ユーザーサイドにおいて簡単に尚且つユーザーの所望の箇所に自由に上記保持手段を形成できる塗布剤の提供を図るものでもある。
更に、両面テープにて巻芯へ巻き取るシート材の端部を固定する場合、両面テープの厚み分巻芯表面に段差が生じ、巻かれたシート材に段差痕ができる。このため従来当該段差痕を緩和するのに、本来必要とする長さよりもシート材を余分に巻き付けることが行われていた。本願発明は、両面テープを不要として上段差痕の問題を回避し、使用されない余分なテープ材を不要とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、表面へ水分を塗布することによりシート材の端部を保持する被着面を備え、前記シート材を、プラスチックフィルム、紙、金属箔、布、不織布の何れかとする巻芯であって、前記被着面が、水溶性ポリマーを備え、前記水溶性ポリマーとして、ポリ酢酸ビニル系誘導体とポリビニルアルコール系誘導体の少なくとも何れか一種を含み、前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度で湿度50%の環境下において、水分未塗布の状態で前記シート材を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面が発揮する紙管を提供する。
また本願発明は、前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏50度で湿度98%の環境下において、水分未塗布の状態で前記シート材を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面が発揮する紙管を提供できた。
更に本願発明では、前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度〜摂氏50度で湿度50%〜98%の環境下において、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を120N/60mm未満とする、接着力を前記被着面が発揮する紙管を提供できた。
また更に本願発明では、前記水溶性ポリマーとして、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールとを備え、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、前記ポリビニルアルコールよりも接着力の高いものであり、前記ポリビニルアルコールは、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性の低いものであり、発現した前記ポリビニルアルコールの粘着性の粘着力が、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さいものである紙管を提供できた。
更にまた本願発明は、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、粘度を1〜40000mPa・sとし、前記ポリビニルアルコールは、粘度を1〜3000mPa・sとする紙管を提供できた。
また本願発明では、前記ポリビニルアルコールを第1のポリビニルアルコールとして、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性が低く尚且つ発現した粘着性の粘着力が前記第1のポリビニルアルコールより大きな第2のポリビニルアルコールを、前記水溶性ポリマーが含み、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂の接着力が、前記第2のポリビニルアルコールよりも高いものである紙管を提供できた。
更に本願発明では、前記第2のポリビニルアルコールは、粘度を3000〜40000mPa・sとする紙管を提供できた。
また更に本願発明では、紙管表面の少なくとも一部は、前記水溶性ポリマーにてコーティングされたコーティング層を備え、前記被着面は、前記コーティング層の表面であることを特徴とする紙管を提供できた。
更にまた本願発明では、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性が低く、発現した粘着性の粘着力がポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さな第1の樹脂と、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性が低く、発現した粘着性の粘着力が前記第1の樹脂より大きな第2の樹脂と、接着力が前記第1及び第2の樹脂よりも高い前記ポリ酢酸ビニル系樹脂と、を表面に備えた紙管を提供できた。
粘着性の発現性が高いとは、少量の水分の付着によってもべとつき易いということであり、上記の粘着性の発現性が低いとはべとつき難いということである。
また本願発明では、水溶性ポリマーを、表面に備えた梱包資材であって、前記水溶性ポリマーとして、ポリ酢酸ビニル系誘導体とポリビニルアルコール系誘導体の少なくとも何れか一種を含み、少なくとも摂氏23度で湿度50%の環境下において、水分未塗布の状態でポリエチレンフィルムを貼着した場合前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し厚さ50μmのポリエチレンフィルムを貼着した場合24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面が発揮する梱包資材を提供できた。
更にまた本願発明では、巻芯や梱包資材を被着体とし、シート材や梱包物又は当該梱包物を収容する梱包箱を貼付体として、前記被着体へ塗布することにより、前記貼付体を固定する被着面を前記被着体へ形成する塗布剤であって、水溶性ポリマーを主成分とし、前記水溶性ポリマーとして、ポリ酢酸ビニル系誘導体とポリビニルアルコール系誘導体の少なくとも何れか一種を含み、前記貼付体を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度で湿度50%の環境下において、水分未塗布の状態で前記貼付体を貼着しても前記被着面は粘着力及び接着力を発揮せず、水分を塗布し前記貼付体を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上とする、接着力を前記被着面へ付与するものである容器入りの塗布剤、当該塗布剤の製造方法、並びに当該塗布剤を表面の少なくとも一部へ塗布する紙管の製造方法を提供できた。
また本願発明では、前記ポリ酢酸ビニル系誘導体は、平均分子量を10万〜70万とするものであり、前記ポリビニルアルコール系誘導体は、重合度を1200以下とするものである紙管、梱包資材又は塗布剤を提供できた。
更に本願発明では、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、平均分子量を10万〜70万とするものであり、前記第1のポリビニルアルコールは、重合度を1200以下とするものであり、前記第2のポリビニルアルコールは、重合度が1200を超えるものである紙管を提供できた。
また更に本願発明では、前記ポリ酢酸ビニル系樹脂は平均分子量を10万〜70万とするものであり、前記第1の樹脂は重合度を1200以下とするポリビニルアルコールであり、前記第2の樹脂は重合度が1200を超えるポリビニルアルコールである紙管を提供できた。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、シート材を巻き取る巻芯などの紙管や梱包資材について、保持手段として適した実用的な性質の合成樹脂を備えたものを提案できた。
本願発明では、シート材を巻き取る巻芯などの紙管や、或いは梱包物や梱包物を収容する梱包箱へ取り付けられて梱包物や梱包箱の縁を保護するエッジボードなどの梱包資材において、当該シート材の固定や、梱包材の他への固定を簡単に行うことができる一方、当該固定が必要になるまで埃などの異物を付着し難いものとした。
即ち、上記の巻芯や梱包資材を被着体とし、上記シート材を固定する巻芯や或いは上記梱包物や梱包箱へ固定する梱包資材を貼付体とし、被着体に貼付体との固定を行う被着面を設けておくものであり、被着面は、水分の塗布という簡単な手法によって、上記シート材の接着を行うことができるものとした。そしてその一方で、水分を塗布するまで被着面は、粘着力を発揮せずに、異物の付着を防止できるものとしたのである。
例えば、外周面全体を前記被着面とし、形成された未使用の巻芯同士を、複数寄せ集めてバンドで結束した場合に、バンドを解くと、互いにくっ付くことなく簡単に分離することができる。特に高温多湿の環境下においても、バンドを解くと、簡単に分離することができる。
また、シート材を巻芯へ巻き取る際には、上記水分の付着にて粘着性を発揮しシート材端部を素早く固定することができ、シート材を素早く巻き取ることができる。巻き取り後乾燥や紙管への浸透によって水分が消滅することで被着面は接着力を発揮し確実にシート材端部を保持する。
そして、特にシート材をプラスチックフィルムとし、当該シート材を使用する際には、接着していたシート材端部を巻芯から簡単に剥がすことができシート材を最後まで簡単に巻芯から取り外すことができる。特に巻芯へ形成した上記被着面へ上記プラスチックフィルムが確実に引っ付く反面、上記プラスチックフィルムを上記巻芯から剥がす際には、巻芯表面が剥がれて破れたり、或いは上記プラスチックフィルムの一部が巻芯表面に残りプラスチックフィルムが千切れてしまうということなく、最後まで綺麗に剥がせる。
被着体を上記梱包資材とし貼付体を梱包物や梱包箱とする場合も上記と同様の効果を奏する。
また実施の形態レベルにおいて、本願発明では、上記被着面を形成する塗布剤について、少なくとも塗布時の粘度を40000mPa・s以下とすることにより、塗布剤の操作性(作業性)を良好なものとし、巻芯や梱包資材といった被着体の製造即ちこれら被着体への被着面の形成を行い易いものとできる。
また本願発明では、現場の作業者が、既存の部材へ塗布剤を塗布することにより、上記被着体を現場にて適切に形成することができる。即ち、本願発明は、ユーザーサイドにて被着体とする部材の形態や現場の状況に応じて臨機応変に対応することができる塗布剤を提供できた。
特に上記の通り作業者が塗布液を用いて梱包資材の被着体へ被着面を形成する場合、或いは当初より塗布剤にて被着面が形成された被着体を用いる場合の何れの場合も、使用現場において、作業者が被着面全体へ水分を塗布し、被着面全体を固定へ使用することもできることは勿論、作業者は水分の付着を被着面とした領域内で選択して限定的に行い、被着面中の使用する特定部分のみ粘着力及び接着力を発揮させるものとして利用できる。このように、本願発明では、水分の付着の量や範囲を選択することによって、粘着力及び接着力を発揮させる範囲を的確に選択することができる。
また、従来のように巻芯へのシート材端部の固定に両面テープを用いた場合、巻芯表面に両面テープの厚み分段差を生じさせてしまうが、本願発明では、上記の通り塗布剤の塗布により被着面を形成するものであり段差を生じさせない。また上記両面テープでは、使用するまで、埃などが付着しないように、剥離シートで粘着面を覆っておく必要があるが、本願発明ではそのような手間は不要である。
本願発明では、特に、貼付体を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、摂氏50度で湿度98%の環境下において、前記被着面は、水分未塗布の状態では粘着力や接着力を発揮せず、水分塗布後貼付体の貼り付け後の前記引張強度を20N/60mm以上120N/60mm未満とすることにより、大気中では上記の通り、1)巻芯などの被着体に対し、巻芯に巻き取るシート材などの貼付体は、高温多湿であってもくっ付かない、その一方で2)水分の塗布という簡単な作業にて被着体(被着面)へ貼付体がくっ付くという、1)2)の相反する事項を実用的な範囲で両立させた。
より具体的には、紙管について、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性が低く、発現した粘着性の粘着力がポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さな第1の樹脂と、発現した粘着性の粘着力が前記第1の樹脂より大きな第2の樹脂と、接着力が前記第1及び第2の樹脂よりも高い前記ポリ酢酸ビニル系樹脂と、を表面に備えるものとすることにより、高温多湿の環境下などでも表面がべとつかず、水分の塗布によりシート材の巻取りの開始当初から巻き取りに必要な粘着性を発現させつつ、巻取り後水分消滅後の接着力とシート材使用時の剥離性とを確保した。
実施の形態レベルにおいて、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂を粘度1〜40000mPa・sのものとし、上記第1の樹脂を粘度1〜3000mPa・sのポリビニルアルコール(第1のポリビニルアルコール)とし、上記第2の樹脂を粘度3000〜40000mPa・sのポリビニルアルコール(第2のポリビニルアルコール)とすることができる。
また、シート材を剥がした後は、再度水分を塗布しない限り再びシート材を固着することはできず、その一方で紙管側へ保持されている樹脂へ水分を塗布することによって、再利用することを可能とした。
更に、巻芯へのシート材端部の固定で両面テープを用いた場合に、両面テープの厚みにより生じていた巻芯表面の段差について、本願発明では、塗布剤の塗布により被着面を形成することで当該段差を生じさせないものとした。即ち従来上記の段差によりフィルム等の製品(シート材)にシワが転写されて段差痕を生じさせてしまうため、巻芯の需要者においてシート材に余尺を付けて対応していたが、本願発明の実施により、両面テープを用いないことで上記段差を生じさせないため、シート材へのシワの転写が軽減され、下巻として巻かれるシート材の余尺の長さも大幅に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は本願発明の一実施の形態に係る被着体(巻芯)の全体略斜視図、(B)は(A)の被着体(巻芯)の変更例を示す全体略斜視図、(C)は(B)の被着体(巻芯)の変更例を示す全体略斜視図。
図2】(A)は被着体を梱包材とする他の実施の形態における梱包物全体の斜視図、(B)は(A)の変更例を示す梱包物全体の斜視図、(C)は(A)の他の変更例を示す梱包物全体の斜視図、(D)は上記被着体を用いた更に他の変更例の全体斜視図、(E)は上記被着体の更に他の実施の形態を示す全体斜視図、(F)は上記被着体のまた他の実施の形態を示す梱包資材全体の斜視図。 図1の全体略側面図。
図3】(A)〜(C)は本願発明の剥離性の評価方法の説明図。
図4】本願発明を塗布剤として実施する場合の塗布用容器へ収容された状態の塗布剤を示す斜視図。
図5】(A)は表面が紙材のみで形成された紙管(巻芯1)の一部拡大略断面図、(B)は表面に非水溶性樹脂を含浸させた紙管(巻芯1)の一部拡大略断面図、(C)及び(D)は本願発明に係る塗布剤で(A)の紙管表面をコーティングした状態を示す一部拡大略断面図、(E)は(A)の紙管へ本願発明に係る塗布剤を塗布して樹脂20を紙管表面へ含浸させた状態を示す一部拡大略断面図、(F)は(B)の紙管へ本願発明に係る塗布剤を塗布して樹脂20を紙管表面へ含浸させた状態を示す一部拡大略断面図。
図6】(A)は表4〜表6のNo.6の引張強度試験における原紙とPEフィルムの配置を示す正面図、(B)は(A)の側面図、(C)は紙管に巻かれたポリエチレンフィルムを剥がす状態を示す略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本願発明の好ましい実施の形態について説明する。
(被着体の概要)
図1へ示す通り、この実施の形態は、被着体1を巻芯(以下必要に応じて巻芯1と呼ぶ。)とし、被着体1へ固定される貼付体をシート材とする。
即ち、巻芯1は、シート材を巻きつける筒状の芯材である。この例では、前記巻芯1は、紙管である。また、この例では、巻芯1の周面全面を、上記シート材を固定する被着面2とする。
シート材は、プラスチックフィルム、紙、金属箔、布又は不織布とすることができる。この実施の形態では、シート材をプラスチックフィルムとする場合を例示する。
被着面2は、水分が付着していないとき粘着力を発揮せずシート材や埃を含めた他の物を粘着しない。また被着面2は水分が付着することにより粘着力を発揮して巻芯1に巻き取る上記シート材の端部を巻芯1へ固定する。具体的には、被着面2について、上記塗布剤が塗布されることにより形成された塗布面である。塗布剤が塗布された後被着面2から塗布剤の水分が蒸発や紙管への浸透によって抜け、被着面2は乾燥する。乾燥後は被着面2へ水分が塗布されない限り、粘着性の発現性が抑えられて被着面2はべとつかない。プラスチッフィルムを巻き取る際には、乾燥している被着面2へ水分を塗布することによって粘着性を発現させる。発現した粘着性の粘着力により、プラスチックフィルムの端部を被着面2へ貼り付け直ちに巻き取りを開始することができる。巻き取り後再び被着面2が乾燥すると被着面2の接着力にてプラスチックフィルムは被着面2へ接着される。
【0013】
(塗布剤)
上記塗布剤は、水溶性ポリマーを主成分として含み、粘度を40000mPa・sを超えないものとする。例えば上記水溶性ポリマーが一種の樹脂から構成されている場合は、当該樹脂の粘度について40000mPa・sを超えないものとする。一方上記水溶性ポリマーが複数種の樹脂から構成されている場合は、各樹脂が夫々の粘度について40000mPa・sを超えないものとする。水溶性ポリマーの粘度が40000mPa・sを超えると、塗布剤として塗布するのが極めて困難になることを本願発明者は確認しており、このような知見に基づき、塗布剤の粘度を上記40000mPa・sを超えない範囲に設定するものである。但し作業時の希釈により40000mPa・sを超えないものとして取り扱いできるものであれば、樹脂自体の粘度は40000mPa・sを超えるものであってもよい。
【0014】
(塗布剤の樹脂選定)
詳しくは、塗布剤は、上記水溶性ポリマーとして、ポリ酢酸ビニル系誘導体とポリビニルアルコール系誘導体の少なくとも何れか1種を含むものとして形成できる。
上記水溶性ポリマーには、ポリ酢酸ビニル系誘導体としてポリ酢酸ビニル系樹脂と、ポリビニルアルコール系誘導体としてポリビニルアルコールを含むものが好ましい。
【0015】
上記水溶性ポリマーには、特に、ポリビニルアルコール系誘導体である次の第1の樹脂と、ポリビニルアルコール系誘導体である次の第2の樹脂とを含むものが好ましい。
即ち、上記第1の樹脂は、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも粘着性の発現性を低いものとし、発現した粘着性の粘着力をポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さいものとする。また、上記第2の樹脂は、発現した粘着性の粘着力を上記第1の樹脂の樹脂より大きいものとする。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、接着力を上記第1及び第2の樹脂よりも高いものとする。
【0016】
上記第1の樹脂と第2の樹脂には、何れもポリビニルアルコールを採用することができる。ここでは、第1の樹脂である上記ポリビニルアルコールを第1のポリビニルアルコールとし、第2の樹脂である上記ポリビニルアルコールを第2のポリビニルアルコールとする。
但し、ポリ酢酸ビニル系誘導体には、ポリ酢酸ビニル系樹脂の他、変性ポリ酢酸ビニル系樹脂を採用することができる。またポリビニルアルコール系誘導体についても、ポリビニルアルコールの他、変性ポリビニルアルコールを採用することができる。第1及び第2の樹脂の双方或いは何れか一方を変性ポリビニルアルコールとしてもよい。
以下必要に応じて、上記第1のポリビニルアルコールをポリビニルアルコールAと呼び、上記第2のポリビニルアルコールをポリビニルアルコールBと呼ぶ。
但し、上記水溶性ポリマーは、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂やポリビニルアルコールB(第2の樹脂)を含まずポリビニルアルコールA(第1の樹脂)のみからなるものとしても実施できる。
【0017】
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂には、摂氏23度で粘度1〜40000mPa・sの範囲にあるものを採用するのが望ましい。
また上記ポリビニルアルコールAには、摂氏23度で粘度1〜3000mPa・sの範囲にあるものを採用するのが望ましい。
更に上記ポリビニルアルコールBには、摂氏23度で粘度3000〜40000mPa・sの範囲にあるものを採用するのが望ましい。
上記の各樹脂は、粘度について上記の上限値に近いものは、樹脂濃度が高く、上記範囲内において上限値よりも下限値寄りの樹脂は水やアルコールなどの水分で希釈し調整して得ることができる。
塗布剤として使用可能な各樹脂を例示すると、濃度を7重量%即ち樹脂固形分7重量部を水93重量部で希釈することにて全体を100重量とし、樹脂温度を摂氏23度に調整して、BL型粘度計を用い60rpmの条件で粘度を計測した場合、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂には10mPa・sとする性状のものを、上記ポリビニルアルコールAには67.5mPa・sとする性状のものを、上記ポリビニルアルコールBには、107.5mPa・sとする性状のものを採用することができた。
【0018】
上記のポリ酢酸ビニル系樹脂については、粘着性の発現性が高く発現した粘着性の粘着力も高いため、上記の性状のポリ酢酸ビニル系樹脂のみでは少量の水分でもべとつく。更に高温多湿の環境下において、運搬や保管のために複数の巻芯をバンドで結束した場合、バンドを解いても、巻芯同士が引っ付いて離れなくなっている危惧がある。その反面上記ポリ酢酸ビニル系樹脂はその粘着力により、被着面へ水分を塗布しシート材を巻芯へ貼付けて、シート材の巻取りを直ちに開始できる。
上記のポリビニルアルコールAについては、ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも上記の通り粘度が低く、粘着性の発現性も低く、発現した粘着性の粘着力もポリ酢酸ビニル系樹脂よりも小さい。即ち、水分に敏感な上記のポリ酢酸ビニル系樹脂に比べてポリビニルアルコールAは水分に鈍感である。このため、上記のポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとを併用することにより、被着面2を高温多湿の環境下でも、べとつき難いものとできる。
【0019】
上記各樹脂の関係についてより詳しく説明する。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBよりも少ない水分量で粘着性を発現する。即ち、高温多湿下の大気中水分での粘着性の発現性について、上記のポリ酢酸ビニル系樹脂がポリビニルアルコールAより高い。また上記ポリ酢酸ビニル系樹脂の接着力はポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBよりも強い。
一方上記ポリビニルアルコールAの粘着力は、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも低い。
水分を塗布するなど、十分な水分量があれば、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの三者は共に粘着性を発現する。
【0020】
ところが発現した粘着力については、ポリビニルアルコールBが上記ポリ酢酸ビニル系樹脂よりも高く、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂はポリビニルアルコールAよりも高い関係にある。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂単体については、シート材の巻き取り開始に必要な(1)初期粘着性や、シート材に対する(2)接着力は優れているが、少量の水分での粘着性の発現性が高く、高温多湿下の大気中水分での(3)非接着性についてはポリビニルアルコールAに劣る。
そこで、塗布液にポリビニルアルコールAを加えることで相対的に上記ポリ酢酸ビニル系樹脂の占める量を減少させて、(3)非接着性を改善することができる。
一方、上記の通りポリビニルアルコールAにおいて大気中水分での粘着性の発現性は上記ポリ酢酸ビニル系樹脂より低いため、(3)非粘着性が改善されるが、水塗布下での発現した粘着力は、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂のほうがポリビニルアルコールAより高いため、(1)初期粘着性が低下する。
【0021】
水塗布下での発現した粘着力は、ポリビニルアルコールBが最も強く、次いで上記ポリ酢酸ビニル系樹脂が強く、ポリビニルアルコールAが最も弱いため、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールBの二者を併用するか、或いは上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの三者を併用することで、初期粘着性が向上し、(1)(2)(3)の条件について全ての点で好ましいと考えられる。
尚、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールBの二者を配合したものや、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの三者を配合したものについてポリビニルアルコールBの配合比率を高め、40000mPa・sを超えると紙管表面をコーティングする作業が行い難くなり、コーティングの作業性が損なわれる。
そこで、上記コーティングの作業性を考慮する必要のある場合、塗布剤には、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの三者を配合するのが望ましい。
また(1)初期粘着性が相対的に劣るとしてもポリビニルアルコールA単体での使用も可能である。
【0022】
上記の通り、塗布剤について、上記のポリ酢酸ビニル系樹脂と、上記のポリビニルアルコールAと、上記のポリビニルアルコールBとを配合したものとし、被着体へ塗布して塗布面を乾燥させた後、水分が積極的に塗布されない状態においては、高温多湿の雰囲気であっても、他へ粘着するという状況を実用的に抑制することができ、また操作性(作業性)も確保できるのである。
【0023】
尚、塗布剤に用いる好ましい樹脂については上述の通りであるが、高温多湿の環境で用いない場合は、塗布剤にポリ酢酸ビニル系誘導体を含みポリビニルアルコール系誘導体を含まないものとし、或いは塗布剤にポリビニルアルコール系誘導体を含みポリ酢酸ビニル系誘導体を含まないものとするのを排除するものではない。
例えば、塗布剤は、粘度を上記40000mPa・sを超えない範囲とすることを前提として、ポリ酢酸ビニル系樹脂を含み、上記ポリビニルアルコールの何れも含まないものとしても実施できる。勿論、塗布剤は、粘度を上記40000mPa・sを超えない範囲とすることを前提として、上述の通りポリビニルアルコールAを含み、ポリ酢酸ビニル系樹脂やポリビニルアルコールA以外のポリビニルアルコールを含まないものとしても実施できるのである。
【0024】
(塗布剤の好ましい樹脂配合)
上述してきた通り、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAの2種類の樹脂を配合することにより、ポリ酢酸ビニル系樹脂の1種類の場合よりも上記の表面性(高温多湿条件)の品質向上と作業性向上を図ることができる。また、高温多湿の環境下においても、積極的に水分を付着させない状態においては、確実に粘着性を発揮させないようにしておくために、塗布剤について、上記の通り、少なくとも、ポリ酢酸ビニル系樹脂と、ポリビニルアルコールAとを配合して上記の通り調整しておくのが望まれる。塗布剤を巻芯へ塗布し被着面2を形成する際には、粘度を調整し操作性を上げておけばよい。
【0025】
具体的には、上記塗布剤として、ポリ酢酸ビニル系樹脂80〜0重量部に対し、ポリビニルアルコールAを20〜100重量部を混合した樹脂は、通常例えば摂氏23度・湿度50%環境下は勿論高温多湿例えば摂氏50度・湿度98%の環境下においても、水分が塗布されない限りべとつかず、水を塗布することで充分な粘着力を発揮する。
尚、ポリ酢酸ビニル系樹脂 及び ポリビニルアルコールAは、1種類以上使用しても良い。
上記の通り、ポリビニルアルコールAと共にポリ酢酸ビニル系樹脂を必ず配合する(0部としない)ものとすることができる。特に、上記のポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAの合計99〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを1〜20重量部添加することで(全体100重量部)、更に粘性が増し、粘着力が向上する。
【0026】
ポリ酢酸ビニル系樹脂は、粘度について1mPa・s〜40,000mPa・sの範囲にある一種のみを使用するものとしてもよいし、この他、配合後の粘度が1mPa・s〜40,000mPa・sの範囲にあることを前提として、粘度の異なる複数種のポリ酢酸ビニル系樹脂を使用するものとしてもよい。上記何れの場合も、塗布液製造時に、ポリ酢酸ビニル系樹脂の粘度を1mPa・s〜40,000mPa・sに調整して、目的とする塗付剤を作成すればよいのである。
また、ポリビニルアルコールAについても、粘度が1mPa・s〜3,000mPa・sの範囲にある一種のみを使用するものとしてもよいし、この他、配合後の粘度が1mPa・s〜3,000mPa・sの範囲にあることを前提として、粘度の異なる複数種のポリビニルアルコールAを使用するものとしてもよい。
更にポリビニルアルコールBについても、粘度が3,000mPa・s〜40,000mPa・sの範囲にある一種のみを使用するものとしてもよいし、この他、配合後の粘度が 3,000Pa・s〜40,000mPa・sの範囲にあることを前提として 粘度の異なる複数種のポリビニルアルコールBを使用しても良い。
【0027】
紙管の被着面は、シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、摂氏23度〜摂氏50度で湿度50%〜98%の環境下において、水分未塗布の状態で前記シート材を貼着した引張強度を5N/60mm未満とし、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上200N/60mm未満とする、接着力を備えるものが好ましい。
特に、紙管の被着面は、シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、少なくとも摂氏23度・湿度50%の環境下において、水分未塗布の状態で前記シート材を貼着した引張強度を5N/60mm未満とし、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上120N/60mm未満とする、接着力を備えるものがより好ましい。
そして、前記シート材を厚さ50μmのポリエチレンフィルムとした際、紙管の被着面は、摂氏50度・湿度98%の環境下において、水分未塗布の状態で前記シート材を貼着した引張強度を5N/60mm未満とし、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度を20N/60mm以上120N/60mm未満とする、接着力を備えるものが好ましい。
上記のポリエチレンフィルムは、引張強度として粘着力を示す基準としたものであって、上記シート材を上記のポリエチレンフィルムに限定するものではない。
尚、被着面の上記接着力について、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを基準として説明した。従って、上記と接着力が変わらないものであっても、シート材を上記ポリエチレン以外のプラスチックフィルムとし、シート材の素材以外は上記と同じ条件とした場合に、当然引張強度の範囲は上記と異なるものとなって良い。また接着力が変わらないものであって、基準とするポリエチレンフィルムの厚さのみ異なる場合も引張強度の範囲は上記と異なるものとなって良い。
例えば、シート材をポリプロピレン(PP)フィルムなどの強度の強いフィルムを用いる場合は、シート材の素材以外の条件を上記と同じとしても、水分を塗布し前記シート材を貼着して24時間経過後の引張強度は200N/60mm超える。
【0028】
塗布剤に用いる樹脂の選定は、上記の粘度が重要である。同じ粘度であっても、樹脂の重合度の相違から、濃度が異なる場合もある。従って、ポリ酢酸ビニル系誘導体及びポリビニルアルコール誘導体について、粘度が40000mPa・sを超えるものであっても、水などの水分で希釈されて、粘度が40000mPa・sを超えないものについても、本願発明に含まれる。
特に、巻芯などの紙材(被着体)製造時の作業性の観点から、塗布液の粘度が、5,000〜20,000mPa・sとするのが好ましく、5000mPa・s以下であればより好ましい。
次に塗布剤について、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの3種を用いる場合の、各樹脂について具体的に説明する。
【0029】
既に述べた通り、比較的粘度が小さく粘度を低下させるのに用いられるポリビニルアルコールAの粘度の最大範囲は、1mPa・s〜3,000mPa・sであり、好ましい範囲は1mPa・s〜1,500mPa・s であり、より好ましい範囲は1mPa・s〜500mPa・sである。
比較的粘度が大きく粘度を高めるのに用いられるポリビニルアルコールBの粘度の最大範囲は、3,000mPa・s〜40,000mPa・sであり、好ましい範囲は5,000mPa・s〜30,000mPa・sであり、より好ましい範囲は10,000mPa・s〜25,000mPa・sである。
上述の通り、ポリビニルアルコールBを1〜20重量部配合することで粘着力が向上する。
上記のポリ酢酸ビニル系樹脂として、分子量(平均分子量)を10万〜70万とするものが好ましく、分子量(平均分子量)を30万〜40万とするものがより好ましい。
上記第1の樹脂即ちこの例では第1のポリビニルアルコールとして、重合度を1200以下とするものが好ましく、重合度を300〜1200とするものがより好ましく、重合度を500〜1000とするものが最も好ましい。第1の樹脂を変性ポリビニルアルコールとしてもよい。
上記第2の樹脂即ちこの例では第2のポリビニルアルコールとして、重合度が1200を超えるものが好ましく、重合度を1200より大きく3000以下とするのものがより好ましく、重合度を1300〜2000とするものが最も好ましい。第2の樹脂を変性ポリビニルアルコールとしてもよい。
上記の通りここでは第1のポリビニルアルコールをポリビニルアルコールAとし、第2のポリビニルアルコールをポリビニルアルコールBとする。
尚、一部の上記ポリビニルアルコールBで重合度が2000を超えるもの特に重合度が2300〜2500のものについて、以下必要に応じポリビニルアルコールD(表7のサンプルd−1〜d−3)として説明する。説明にあたり特に区別する必要がない場合ポリビニルアルコールDを含め、第2のポリビニルアルコールをポリビニルアルコールBとする。
また、使用するポリビニルアルコールは、上記第1のポリビニルアルコール及び第2のポリビニルアルコールの何れか一方又は双方に限定するものではない。例えば、重合度1200以下のポリビニルアルコールを第1のポリビニルアルコールとすると共に重合度が1200を超え2000以下のものを第2のポリビニルアルコールとしつつ、以下に説明する実施の形態と異なり、重合度2300〜2500の上記ポリビニルアルコールDを第3のポリビニルアルコールとし、更に重合度2500を超えるポリビニルアルコールを第4のポリビニルアルコールとし、更に当該第4のポリビニルアルコールよりも重合度の範囲が高いポリビニルアルコールを第5、第6のポリビニルアルコールとして、上記第2、第3のポリビニルアルコールの双方又は一方と共に上記第4や第5、第6のポリビニルアルコールのうち何れか1つ又は2つ以上を併用するものとしてもよい。本願発明の上記効果が得られる限り、重合度の異なる範囲に属する3種以上のポリビニルアルコールを併用して実施してもよいのである。
また、本願発明の主要部である上記各樹脂間において上記重合度や配合比率の関係が成立するものであれば、本願発明は上記各樹脂に加えて上記各樹脂以外の成分を配合されたものも含む。
【0030】
樹脂取り扱いの便から、製造時における各樹脂の濃度即ち水による希釈条件について説明する。
ポリ酢酸ビニル系樹脂の濃度の許容範囲については、
ポリ酢酸ビニル系樹脂(固形分):水=5重量部:95重量部〜95重量部:5重量部であり、次の範囲がより好ましい。
ポリ酢酸ビニル系樹脂(固形分):水=20重量部:80重量部〜80重量部:20重量部。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂の濃度については次の範囲が特に好ましい。
ポリ酢酸ビニル系樹脂(固形分):水=40重量部:60重量部〜60重量部:40重量部。
【0031】
ポリビニルアルコールAについては粘度小即ち粘度1mPa・s〜3,000mPa・sとすることを前提として、濃度の許容範囲は、
ポリビニルアルコールA(固形分):水=1重量部:99重量部〜95重量部:5重量部
であり、次の範囲がより好ましい。
ポリビニルアルコールA(固形分):水=1重量部:99重量部〜70重量部:30重量部。
上記ポリビニルアルコールAの濃度について、次の範囲が更に好ましい。
ポリビニルアルコールA(固形分):水=1重量部:99重量部〜30重量部:70重量部。
【0032】
上記ポリビニルアルコールBについては粘度大即ち3,000mPa・s〜40,000mPa・sを前提として、濃度の許容範囲は、
ポリビニルアルコールB(固形分):水=5重量部:95重量部〜95重量部:5重量部
であり、好ましい範囲は次の通りである。
ポリビニルアルコールB(固形分):水=5重量部:95重量部〜70重量部:30重量部。
ポリビニルアルコールBの濃度については次の範囲が特に好ましい。
ポリビニルアルコールB(固形分):水=10重量部:90重量部〜30重量部:70重量部。
【0033】
上記の通り、本願発明は、被着面へ適切な性状の水溶性ポリマーを設けることによって、粘着性の発現をコントロールしつつ、粘着性の発現時に必要な粘着力や、接着力の確保を可能とし、更に接着後のプラスチックフィルムを綺麗に剥がせる剥離性の良さを実現するものである。
また、上記の通り、適切な性状の水溶性ポリマーを採用することに加え、当該水溶性ポリマーで紙管表面をコーティングして前記被着面を形成することにより、即ち、紙管表面に水溶性ポリマーのコーティング層を形成し、当該コーティング層の表面を前記被着面とすることにより、より一層当該水性ポリマーの上記効力を高めることができる。
但し、上記水溶性ポリマーを前記被着面において紙管の肌へ含浸した状態にするものとし被着面をコーティング面としていないもの、即ち被着面において紙管表面を当該水溶性ポリマーで完全に被覆するのではなく微視的には紙管の地肌を部分的に露出させるものを排除するものではない。
被着体を紙管や梱包資材とする場合、本発明に係る上記塗布剤の被着体への塗布量は、3g/平方メートル〜40g/平方メートルとするのが好ましく、5g/平方メートル〜30g/平方メートルとするのがより好ましく、10g/平方メートル〜20g/平方メートルとするのが最も好ましい。
但し、本発明の効果を得ることができれば、前記範囲外の塗布量とすることを排除するものではない。
次に被着面での上記水性ポリマーの好ましい状態ついて、具体的に説明する。
【0034】
被着体とする紙管について、図5(A)へ示す通り一般に紙管(巻芯1)表面が紙材11のみにて形成されたものの他、図5(B)へ示す通り紙管の表面へ非水溶性の樹脂12を備えたものであってもよい。この非水溶性の樹脂12については、通常紙管表面を完全に被覆即ち層形成にて紙管表面をコーティングするものではなく、紙の肌に含浸したものであり、図5(B)へ示す通り微視的にはところどころ生地の紙の部分が露出する状態である。具体的には、紙管の肌を拡大してみると凹凸の起伏があり(図5(A))、当該肌の凹部分に上記非水溶性の樹脂12が入り込み、肌の凸部分は上記非水溶性の樹脂に覆われず紙材11が露出している(図5(B))。
【0035】
上記図5(A)及び図5(B)の何れの紙管を用いる場合も、紙管表面へ上記塗布剤を塗布することにより、図5(C)や図5(D)へ示す通り紙管表面を上記水性ポリマーにてコーティングするコーティング層を形成するのが望ましい。即ち樹脂にて層を形成し紙管表面を被覆するのが望ましい。図示は省略するが、上記の非水溶性の樹脂12についても、紙管表面をコーティングするものとし、当該樹脂12の層の上に上記被着面2を形成する樹脂20が積層されるものとしてもよい。更に未使用の被着体を図5(C)へ示すように紙材の肌の起伏に沿ってコーティングした場合であっても、プラスチックフィルム(貼付体)の巻き取りに使用した後は、表面が滑らかなプラスチックフィルムにより図5(D)へ示す通り被着面2は平滑な状態となっていることがある。この場合に被着面2が平滑になっていても、適切な粘着性の発現やその粘着力、接着力、剥離性を確保できるものであれば、再利用することが可能である。
【0036】
但し、必要とする粘着性の発現やその粘着力、接着力や剥離性を確保できるものであれば、被着面2を図5(E)や図5(F)へ示すものとしても実施できる。
例えば、表面が紙材のみで形成されている図5(A)の紙管へ、塗布液の塗布にて被着面2を形成する樹脂20を塗布した場合、図5(B)の紙管の非水溶性の樹脂12と同様、紙管表面を完全に被覆即ち層形成にて紙管表面をコーティングするものではなく、紙の肌に含浸したものとしてもよい。即ち、上記肌の凹部分に被着面2を形成する上記樹脂20が入り込み、肌の凸部分は上記樹脂20に覆われず紙材11が露出しているものであってもよい(図5(E))。
【0037】
一方、上記非水溶性の樹脂を含浸させた図5(B)の紙管へ、塗布液の塗布にて被着面2を形成する樹脂20を塗布した場合、非水溶性の樹脂12と共に上記樹脂20が上記凹部分へ入り、上記凸部分は紙材11が露出した状態とされたものであってもよい(図5(F))。
樹脂20を有する塗布剤を、例えば図4へ示す容器3を用い紙管など被着体の表面へ塗布することにより、塗布後水分の蒸発や揮発、紙管内部へ水分が浸み込んで水分が消滅した後、樹脂20(樹脂固形分)は図5(C)〜(F)へ示す状態にて紙管へ備えられるのである。
【実施例】
【0038】
表5〜表8へ試験を行ったサンプルとその試験結果(評価結果)を示し、表1〜4へ当該サンプルの評価方法について示す。
【0039】
(粘着力についての評価方法)
図1(A)へ示す紙管の被着面2へ水を塗布し、表1へ示す通り貼付体としてプラスチックフィルム(PEフィルム)であるシート材を貼ってから当該シート材を巻芯へ巻き取るまでかかった時間で粘着力を評価した。当該時間が短いほど粘着力が強いことを示す。また当該時間が短いほど粘着力の発現性も高いことを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(評価基準)
表1へ示す粘着力の評価において、図1(A)へ示す紙管である直径100mmの巻芯1の被着層2表面へ水を塗布し、(巻芯の軸方向の)幅250mmとし長さ35cmとするシート材を巻芯1表面即ち被着面2へ貼ってから巻芯1へ巻き取るまでの時間を計測した。当該計測において、表1へ示す通り、巻芯1表面即ち被着面2へ貼ってから、瞬時即ち1秒未満で巻き取り完了したものを「秀」と、1秒以上5秒以内で巻き取り完了したものを「優」と、5秒を超え10秒以内で巻き取り完了したものを「良」と、10秒を超え30秒未満で巻き取りを完了しものを「可」と、巻き取り完了に30秒以上かかったものを「不可」と評価した。
【0042】
(表面性)
図3(A)へ示す通り、巻芯1である上記表1で用いた寸法の紙管を3本のPP(ポリプロピレン)製のバンドrで結束し、恒温恒湿器にて設定条件で48時間入れた後、当該バンドrを鋏hで切った瞬間に紙管同士が引っ付いているか(図3(C))否か(図3(B))で評価した。
【0043】
(作業性)
上記塗布剤を製造するまでの過程において、摂氏23度で混合した樹脂の粘度をBL型粘度計60rpmで測定して評価した。
【0044】
【表2】
【0045】
塗布剤製造時の当該作業性の評価基準については、表2へ示す通り粘度が、5,000 mPa・s以下を「優」とし、5,000mPa・sより大きく20,000mPa・s以下を「良」とし、20,000mPa・sより大きく40,000mPa・s未満を「可」とし、40,000mPa・s以上を「不可」とした。
【0046】
(剥がれ性)
巻芯1である紙管に巻かれたシート材が、紙管から最後まで綺麗に剥がれ、紙管表面が破れていないか、シートが剥がされた紙管表面の外観を確認して評価した。表3へ示す通り、目視により破れがなかったものを○とし、目視により破れが確認されたものを×とした。
【0047】
【表3】
【0048】
(試験結果)
表4は、ポリ酢酸ビニル系樹脂1種類(単体)にて作成された塗布剤を塗布して被着面2を形成したサンプルa−1について、試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
サンプルa−1のポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量は、30万〜40万の範囲にある。
表4の試験項目No.1は上記の粘着力であり、表4の試験項目No.2は自然状態即ち摂氏23度・湿度50%雰囲気における48時間での表面性であり、表4の試験項目No.3は高温多湿即ち摂氏50度・湿度98%雰囲気における48時間での表面性である。サンプルa−1は、摂氏23度における粘度を8,300mPa・sとするものであり、また、表4の試験項目No.5は上記剥がれ性である。試験項目No.2の摂氏23度・湿度50%雰囲気における48時間での表面性、試験項目No.3は高温多湿即ち摂氏50度・湿度98%雰囲気における48時間での表面性というのは、夫々の温度・湿度に設定された上記恒温恒湿器にて48時間経過後の結果である。
【0049】
更に、サンプルa−1について、No.6の粘着強度の評価を行った。
No.6の引張強度は、次の引張試験を行った結果得られたものである。即ち、上記引張試験は、試験材料として、被着体を紙管の表面に使用する厚み0.50mmの原紙p1(紙)とし、貼付体を厚み50μmのPE(ポリエチレン)フィルムp3とした。
図6(A)へ示す通り、上記原紙p1のサイズは、縦幅w1(引張方向幅)を140mmとし横幅w2を70mmとし、上記PEフィルムp3のサイズは、縦幅w3(引張方向幅)を200mmとし横幅w4を70mmとした。図6(B)へ示す通り上記原紙p1の被着面2即ち接着面p2のサイズは、縦幅(引張方向の重ね幅w5)を60mmとし横幅を70mmとした。具体的には、原紙p1に対し塗布剤を横幅全域で縦方向(引張方向)について60mmに渡ってバーコータ♯18にて塗布量40g/平方メートル塗布し、原紙p1の当該接着面p2へPEフィルムp3を重ねた状態とした。
試験方法は、
1)上記の通り原紙p1の当該接着面p2へPEフィルムp3を重ねて1日(24時間)乾燥放置した。
2)恒温恒湿器で摂氏23度・湿度50%に調湿した。
3)万能試験機にて上記原紙p1とPEフィルムp3をつかみ、引張速度10mm/分で測定する(図6(B)へ示す原紙p1の下端p10を試験機に固定し、PEフィルムp3の上端p30を上方へ引っ張った)。
4)測定は、接着面p2で剥がれるか、又はPEフィルムp3が破断するまで行った。
5)最大粘着強度(N/60mm)の測定を行った。「〜N/60mm」とは引張方向の重ね幅w5を上記の通り60mmとした際の力(ニュートン)を示している。
6)5)の3回の平均値を採った。
7)試験結果として、PEフィルムp3で破断(MFと表記)したか、接着面P2(原紙p1側)が破断(AFと表記)したかを記録した。
【0050】
【表4】
【0051】
表4へ示す通り、ポリ酢酸ビニル系樹脂を100部とするサンプルa−1の評価結果は、No.1の粘着力について「優」、No.2の自然状態の表面性について「優」であり、No.3の高温多湿の表面性について「不可」であり、No.4の作業性について上記粘度8,300mPa・sにより「良」であり、No.5の剥がれ性についての外観確認は〇であった。またサンプルa−1の試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
サンプルa−1の評価結果から、塗布剤の樹脂をポリ酢酸ビニル系樹脂のみとすると、高温多湿の条件下で粘着力が発生し、紙管同士が引っ付いてしまうことが把握できた。即ちポリ酢酸ビニル系樹脂のみでは粘着性の発現性が高く発現した粘着力も高くべとつき易いことが分かる。また、ポリ酢酸ビニル系樹脂の接着力の強いことが分かる。
従って、樹脂成分をポリ酢酸ビニル系樹脂のみとする塗布剤を用いた場合、上記自然状態で使用するのに適し、高温多湿で使用するのには適さないことが把握できる。
【0052】
表5は、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAの2種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したb−1〜b−6の6つのサンプルについて、表4と同様の試験項目No.1〜No.6の評価を行った。
サンプルb−1〜b−6については、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量が30万〜40万の範囲にあり、ポリビニルアルコールAの重合度が1000のものを採用した。
尚、比較のため表4のサンプルa−1も併記している。サンプルb−1はポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールA10重量部(合計100重量部)、サンプルb−2はポリ酢酸ビニル系樹脂80重量部に対しポリビニルアルコールA20重量部(合計100重量部)、サンプルb−3はポリ酢酸ビニル系樹脂60重量部に対しポリビニルアルコールA40重量部(合計100重量部)、サンプルb−4はポリ酢酸ビニル系樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールA60重量部(合計100重量部)、サンプルb−5はポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールA80重量部(合計100重量部)、サンプルb−6はポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールA90重量部(合計100重量部)とした。
尚、サンプルb−7は、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)としたものである。
【0053】
【表5】
【0054】
表5へ示す通り、サンプルb−1は、試験項目No.1(粘着力)及びNo.2(自然状態の表面性)について何れも「優」であり、No.3(高温多湿の表面性)については「不可」、No.4の作業性については「良」、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−1の試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
サンプルb−2は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)及びNo.3(高温多湿の表面性)については何れも「優」であり、No.4の作業性については「優」、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−2の試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断し測定不能(MF)であった。
サンプルb−3は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−3は、試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
サンプルb−4は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−4は、またサンプルb−5は、試験項目No.6(引張強度)の強度について87N/60mmで接着面が破断(AF)した。
サンプルb−5は、試験項目No.1(粘着力)については「良」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−5の試験項目No.6(引張強度)の強度について74N/60mmで接着面が破断(AF)した。
サンプルb−6は、試験項目No.1(粘着力)については「良」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−6の試験項目No.6(引張強度)の強度について69N/60mmで接着面が破断(AF)した。
サンプルb−7は、試験項目No.1(粘着力)については「可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−7の試験項目No.6(引張強度)の強度について67N/60mmで接着面が破断(AF)した。
【0055】
上記のサンプルb−1の結果から、表5に示す条件の高温多湿の環境下で使用をしないのであれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールAを10重量部の塗布剤を用いた被着体1を使用することもできる。また、サンプルb−1の結果から、摂氏23度における作業性についても「良」であり実用に耐えるものである。
一方、サンプルb−2,b−3及びb−4の結果から、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、粘着力、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について全て「優」、剥がれ性については「○」と他のサンプルにない優れたものであり、極めて実用性の高い塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
サンプルb−5及びb−6の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=20〜10重量部:80〜90重量部の範囲では、粘着力が「良」、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」と、十分な実用性を備えた優れた塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
サンプルb−7の結果から、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)とした場合、粘着力について、「可」であり、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」と、実用に耐える塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
また特にサンプルb−1、b−2,b−3の何れも引張強度120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)したことから、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=90〜60重量部:10〜40重量部の範囲では、被着面の接着力が強いことが分かる。
特に引張強度87N/60mm以下で接着面が破断(AF)した、サンプルb−4,b−5,b−6,b−7から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=40〜0重量部:60〜100重量部の範囲では、被着面の剥離がし易いものであることが分かる。
上記のサンプルb−4,b−5,b−6から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=40〜10重量部:60〜90重量部の範囲では、上記剥離のし易さと適切な粘着力、表面性、作業性の何れも確保していることが分かる。
【0056】
表5のサンプルa−1から、樹脂を上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とした場合、上記条件の高温多湿の雰囲気での使用は控えるものとすれば、使用は可能であり、表5のサンプルb−1〜b−7の結果と合わせて、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=100〜0重量部:0〜100重量部の範囲の塗布剤について、上記高温多湿の環境下での使用を避け、作業性について工夫することを条件として、使用は可能である。そして上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜0重量部:20〜100重量部の範囲では、上記高温多湿の条件下でも実用性のある塗布液による被着体1を提供できることが確認できた。特に、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜10重量部:20〜90重量部の範囲では、塗布剤による優れた被着体1を形成できることが確認できた。また、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、塗布剤による非常に優れた被着体1を形成できることが確認できた。一方、上記剥離のし易さ観点を含めると、前述の通り上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=40〜10重量部:60〜90重量部の範囲において、塗布剤による極めて優れた被着体1を形成できることが確認できた。
【0057】
表6は、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの3種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したc−1〜c−3の3つのサンプルについて、表4及び表5と同様の試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
サンプルc−1〜c−3については、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量が30万〜40万の範囲にあり、ポリビニルアルコールAの重合度が1000、ポリビニルアルコールBの重合度が1700のものを採用した。
尚、比較のため表5のサンプルb−1のデータも表6へ併記している。サンプルc−1はポリ酢酸ビニル系樹脂85重量部、ポリビニルアルコールA10重量部、ポリビニルアルコールB5重量部(合計100重量部)とし、サンプルc−2はポリ酢酸ビニル系樹脂70重量部、ポリビニルアルコールA10重量部、ポリビニルアルコールB20重量部(合計100重量部)とし、サンプルc−3はポリ酢酸ビニル系樹脂65重量部、ポリビニルアルコールA10重量部、ポリビニルアルコールB25重量部(合計100重量部)とした。
【0058】
【表6】
【0059】
表6へ示す通り、サンプルc−1は、No.1(粘着力)、No.2(上記自然状態の表面性)及びNo.3(上記高温多湿の表面性)の何れについても「優」であり、No.4(作業性)について「良」、No.5(剥がれ性)について「○」であった。また、サンプルc−2は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「良」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。サンプルc−3は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「可」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。またサンプルc−1、c−2,c−3の何れの試験項目No.6(引張強度)の強度についても120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
【0060】
表6の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA:上記ポリビニルアルコールB=85〜65重量部:10重量部:5〜25重量部の範囲の塗布液について、形成される被着体1は実用に耐えるものと言える。
特に、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA:上記ポリビニルアルコールB=85〜70重量部:10重量部:5〜20重量部の範囲の塗布液では作業性も良く粘着性について何れも「優」以上と極めて実用性に優れた塗布液による被着体1を提供できることが分かる。
またサンプルc−1、c−2,c−3の何れも、接着力が強いことが分かる。
以上の点から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂と上記ポリビニルアルコールAと合わせて95〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを5〜20重量部(合計100重量部)を配合することで粘着力が向上することが把握できる。
表7においてサンプルb−1を含めると、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂と上記ポリビニルアルコールAと合わせて100〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを0〜20重量部(合計100重量部)を配合することで粘着力が向上することが把握できる。
尚、実用面において、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂と上記ポリビニルアルコールAと合わせて99〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを1〜20重量部(合計100重量部)を配合することで被着面の粘着力を向上させるのが適切である。
【0061】
表7は、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールDの3種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したd−1〜d−3の3つのサンプルについて、表5及び表6と同様の試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
サンプルd−1〜d−3については、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量が30万〜40万の範囲にあり、ポリビニルアルコールAの重合度が1000、ポリビニルアルコールDの重合度が2300のものを採用した。
尚、比較のため表5のサンプルb−1のデータも表7へ併記している。
ポリビニルアルコールDについては、濃度を7重量%即ち樹脂固形分7重量部を水93重量部で希釈することにて全体を100重量部とし、樹脂温度を摂氏23度に調整して、BL型粘度計を用い60rpmの条件で粘度を計測した場合に、粘度45,000mPa・sをとするものを使用した。
【0062】
【表7】
【0063】
表7へ示す通り、サンプルd−1は、No.1(粘着力)について「秀」であり、No.2(上記自然状態の表面性)及びNo.3(上記高温多湿の表面性)の何れについても「優」であり、No.4(作業性)について「不可」、No.5(剥がれ性)について「○」であった。また、サンプルd−2は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「不可」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。サンプルd−3は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「不可」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。
【0064】
表7の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA:上記ポリビニルアルコールD=85〜65重量部:10重量部:5〜25重量部の範囲の塗布液について、何れも作業性について「不可」であり、作業性に問題のあることが分かる。工夫によって作業性を確保できれば、形成される被着体1は実用に耐えるものと言える。
【0065】
(表面粗さ)
塗布剤として撥水性樹脂を塗布(コーティング)した後、粘着性樹脂を塗布(コーティング)すると表面粗さ及びうねりの品質が向上することが確認できる。
上記の撥水性樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂の何れか1種の樹脂を採用することができ、更にはこれらの樹脂を2種以上混合して利用することができる。
上記の粘着性樹脂としては、本願発明に係る塗布剤を採用することができる。
【0066】
具体的には、表面粗さについて、表8へ示すe−1〜e−4の4つ、のサンプルを用意して、JIS B 0601に準じて、評価を行った。表8において、評価項目No.1はサンプル表面の平均粗さ(Ra)、No.2は、サンプルの粗さ曲線の最大高さ(Ry)、No.3はサンプルの断面曲線の最大高さ(Rmax)、No.4はサンプルのうねり(Wt)を示す。
シームギャップというのは、紙管形成の際、帯状の紙材をスパイラル状に丸めて筒状体とすることによってできる当該帯状の紙材の接合する辺間のギャップである。
【0067】
【表8】
【0068】
表8のサンプルe−1及びe−2はシームギャップが無い部分とし、サンプルe−1は撥水性樹脂のみコーティングした例としてアクリル系樹脂を被着体1へコーティングした。サンプルe−2は撥水性樹脂と粘着性樹脂の夫々を被着体1へコーティングした例として、アクリル系樹脂及び粘着性樹脂の夫々を被着体1へコーティングした。当該粘着性樹脂として上記表6の上記サンプルc−2と同様の性状のものを用いた。
表8のサンプルe−3及びe−4はシームギャップが有る部分とし、サンプルe−3は撥水性樹脂のみをコーティングした例としてアクリル系樹脂を被着体1へコーティングした。サンプルe−4は撥水性樹脂と粘着性樹脂の夫々をコーティングした例として、アクリル系樹脂及び粘着性樹脂を被着体1へコーティングした。サンプルe−4についても当該粘着性樹脂として上記表6の上記サンプルc−2と同様の性状のものを用いた。
【0069】
表8へ示す通り、サンプルe−1は、評価項目No.1(平均粗さ)について2.30μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について14.37μm、No.3(断面曲線の最大高さ)43.73μm、No.4(うねり)について23.41μmであった。
サンプルe−2は、評価項目No.1(平均粗さ)について1.40μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について8.87μm、No.3(断面曲線の最大高さ)25.10μm、No.4(うねり)14.95μmであった。
サンプルe−3は、評価項目No.1(平均粗さ)について2.36μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について15.37μm、No.3(断面曲線の最大高さ)50.20μm、No.4(うねり)31.11μmであった。
サンプルe−4は、評価項目No.1(平均粗さ)について1.57μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について10.10μm、No.3(断面曲線の最大高さ)48.29μm、No.4(うねり)30.08μmであった。
【0070】
上記の通り、撥水性樹脂のみをコーティングしたサンプルe−1に対して撥水性樹脂と粘着性樹脂の双方をコーティングしたサンプルe−2は、No.1〜No.4のいずれの項目についても、粗さの値(μm)が小さくなっていることが把握できる。同様に撥水性樹脂のみをコーティングしたサンプルe−3に対して撥水性樹脂と粘着性樹脂をコーティングしたサンプルe−4は、No.1〜No.4のいずれの項目についても、粗さの値(μm)が小さくなっていることが把握できる。
表8へ示す結果から、撥水性樹脂をコーティングした後粘着性樹脂をコーティングすることにより、表面粗さとうねりの品質の向上が確認できた。
【0071】
本願の発明者は、図6(C)へ示す通り、現場において、実際に被着面へ貼り付けられて巻芯1へ巻き取られた1週間経過後のPEフィルム(シート材10)を、巻き方向逆に撮んで引っ張り、PEフィルムを剥がして、PEフィルムと巻芯1夫々の表面を目視により観察した。被着面を形成する塗布剤は、上記サンプルc−2(表6)と同様のものとした。
その結果、PEフィルムを破断なく綺麗に剥離でき、PEフィルム側には被着面の樹脂は付着していないことを確認した。
【0072】
表5へ示すサンプルb−1〜b−7は、ポリビニルアルコールの重合度を1000とするものであった。当該サンプルb−1〜b−7について、配合するポリビニルアルコールを重合度300のものとし他の条件を変えずに表5のNo.1〜No.5の評価を行い、更に配合するポリビニルアルコールの重合度200とするものとし他の条件を変えずにNo.1とNo.4の評価を行った結果を、表9へ示す。尚、表9には、表5へ示したポリビニルアルコールの重合度1000の各サンプル及び表4のサンプルa−1も併記した。
即ち、表9では、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAの2種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したb−1〜b−6の6つのサンプルについて、表4と同様の試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
表9のサンプルb−1〜b−6のポリビニルアルコールAの重合度を300又は200とする何れにおいても、前述の通りポリ酢酸ビニル系樹脂として平均分子量30万〜40万の範囲にあるものを採用し、サンプルb−1はポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールA10重量部(合計100重量部)、サンプルb−2はポリ酢酸ビニル系樹脂80重量部に対しポリビニルアルコールA20重量部(合計100重量部)、サンプルb−3はポリ酢酸ビニル系樹脂60重量部に対しポリビニルアルコールA40重量部(合計100重量部)、サンプルb−4はポリ酢酸ビニル系樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールA60重量部(合計100重量部)、サンプルb−5はポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールA80重量部(合計100重量部)、サンプルb−6はポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールA90重量部(合計100重量部)である点、更にサンプルb−7は、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)としたものである点変わりない。
【0073】
【表9】
【0074】
先ず表9中のポリビニルアルコールAの重合度を300とする各サンプルb−1〜b7について説明する。
サンプルb−1は、試験項目No.1(粘着力)及びNo.2(自然状態の表面性)について何れも「優」であり、No.3(高温多湿の表面性)については「不可」、No.4の作業性については「優」、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−2は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性についてはいずれも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−3は、試験項目No.1(粘着力)について「良」、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−4は、試験項目No.1(粘着力)について「良」、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−5は、試験項目No.1(粘着力)については「可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−6は、試験項目No.1(粘着力)については「可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−7は、試験項目No.1(粘着力)については「不可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
【0075】
上記表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−1の結果から、表9に示す条件の高温多湿の環境下で使用をしないのであれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールAを10重量部の塗布剤を用いた被着体1を使用できることが分かる。また、サンプルb−1の結果について、摂氏23度における作業性についても「優」であり実用に耐えるものと言える。
一方、表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−2,b−3及びb−4の結果から、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、粘着力、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について全て「優」又は「良」、剥がれ性については「○」と他のサンプルにない優れたものであり、実用性の高い塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
特に表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−2は、No.1〜No.5の全ての項目について「優」であり、塗布剤についてポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80重量部:20重量部前後の配合比率するのが最も好ましいことが把握できる。
また表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−5及びb−6の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=20〜10重量部:80〜90重量部の範囲では、粘着力が「可」、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」と、十分な実用性を備えた塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−7の結果から、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)とした場合、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」であるものの、粘着力について「不可」であり、実用的でないことが把握できる。
表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とする上記のサンプルb−4,b−5,b−6から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜20重量部:10〜90重量部の範囲では、上記剥離のし易さと適切な粘着力、表面性、作業性の何れも確保していることが分かる。
【0076】
表9のサンプルa−1から、樹脂を上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とした場合、上記条件の高温多湿の雰囲気での使用は控えるものとすれば、使用は可能であり、表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−1〜b−6の結果と合わせて、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=100〜0重量部:10〜90重量部の範囲の塗布剤について、上記高温多湿の環境下での使用を避け、作業性について工夫することを条件として、使用は可能である。そして表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルから上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜10重量部:20〜90重量部の範囲では、上記高温多湿の条件下でも実用性のある塗布液による被着体1を提供できることが確認できた。特に、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、塗布剤による優れた被着体1を形成できることが確認できた。
【0077】
次に表9中のポリビニルアルコールAの重合度を200とする各サンプルb−1〜b7について説明する。
サンプルb−1〜b−3は何れも、試験項目No.1(粘着力)は「良」であり、No.4の作業性については「優」であった。
サンプルb−4及びサンプルb−5は、試験項目No.1(粘着力)について「可」であり、No.4の作業性については「優」であった。
サンプルb−6及びサンプルb−7は何れも、No.4の作業性については「優」であるものの、試験項目No.1(粘着力)については「不可」であった。
上記表9のポリビニルアルコールAの重合度を200とするサンプルb−1〜b−5の結果から、ポリビニルアルコールの重合度200において、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=90:10〜20:80の範囲で、粘着力と剥がれ性については問題ない塗布液が得られることが分かる。サンプルb−1の結果を考慮し、高温多湿で使用しない場合、ポリビニルアルコールAの重合度を200とするものは、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=90:10〜20:80の範囲で使用可能といえる。特にサンプルb−2〜b−5の結果から、ポリビニルアルコールAの重合度を200とするものは、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80:20〜20:80の範囲において高温多湿での環境下でも優れたものであることが分かる。
【0078】
表6の各サンプルc−1〜c−3は夫々、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBの重量比率を、85:10:5と、70:10:20と、65:10:25とするものであった。
表10に、上記サンプルc−1〜c−3と共に、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBの重量比率を、80:10:10とするンプルc−xと、75:10:15とするサンプルc−yと、60:10:30とするサンプルc−4を追加した。サンプルc−x、サンプルc−y及びサンプルc−4について、ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量とポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBの重合度は表6の各サンプルc−1〜c−3と同じ(重合度1700)とした結果を記した。また、上記サンプルc−x、サンプルc−y及びサンプルc−4を含め表10の各サンプルに関し、ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量とポリビニルアルコールAの重合度は表6の各サンプルc−1〜c−3から変更せずポリビニルアルコールBの重合度を3000としたものについて、表5及び表6と同様のNo.1〜No.5の試験を行った結果を追加した。また比較し易いように表10へ表6のサンプルc−1〜c−3のデータを併記した。
【0079】
【表10】
【0080】
表10のポリビニルアルコールBの重合度を1700とするサンプルc−xについて、No.1〜No.3の夫々の項目について「優」、No.4について「良」、No.5について「〇」であった。
また表10のポリビニルアルコールBの重合度を1700とするサンプルc−yについて、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「良」、No.5は「〇」であった。
表10のポリビニルアルコールBの重合度を1700とするサンプルc−4について、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「可」No.5は「〇」であった。
表10のポリビニルアルコールBの重合度を3000とするサンプルc−1、c−x、c−y及びc−2について何れも、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「良」、No.5は「〇」であった。
表10のポリビニルアルコールBの重合度を3000とするサンプルc−3について、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「可」、No.5は「〇」であった。
また表10のポリビニルアルコールBの重合度を3000とするサンプルc−4については、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「不可」、No.5は「〇」であった。
表10から、ポリビニルアルコールAの重合度を1000とし当該ポリビニルアルコールAについて重量比率を10重量部に定め、ポリビニルアルコールBの重合度を1700とした場合、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜60:30の範囲において、実用に耐える塗布液を提供できること、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜70:20の範囲において、良好な塗布液を提供できることが分かる。
また表10から、ポリビニルアルコールAの重合度を1000とし当該ポリビニルアルコールAについて重量比率を10重量部に定め、ポリビニルアルコールBの重合度を3000とした場合、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜65:25の範囲において、実用に耐える塗布液を提供できること、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜70:20の範囲において、良好な塗布液を提供できることが分かる。
【0081】
次に表11へ、表9の重合度300のポリビニルアルコールAの各サンプルを改めて示すと共に、表9のサンプルb−3〜b−7の夫々と同様の割合でポリ酢酸ビニル系樹脂の配合比率を変化させ、なお且つ重合度1700とするポリビニルアルコールBを20重量部の比率に固定し、当該ポリ酢酸ビニル系樹脂と合わせて80重量部となるようにポリビニルアルコールAの比率を変化させたサンプルを示す。
具体的には、重合度1700のポリビニルアルコールBを20重量部とすることを前提として表11において括弧書に、ポリ酢酸ビニル系樹脂60重量部に対しポリビニルアルコールBを20重量部としたサンプルb−3a、ポリ酢酸ビニ径樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールAを40重量部としたサンプルb−4a、ポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールAを60重量部としたサンプルb−5a、ポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールAを70重量部としたサンプルb−6a、ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部に対しポリビニルアルコールAを80重量部としたサンプルb−7aのNo.1の試験結果を示す。
表11から次の評価を行うことができた。
No.1の粘着力について、サンプルb−3a及びサンプルb−4aは「優」であり、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−3及びサンプルb−4の「良」に比べて優れたものであることが分かる。また、No.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを配合比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−5及びサンプルb−6は「可」であるのに対し、サンプルb−5a及びサンプルb−6aは「良」と良好なものであることが分かる。またNo.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−7が「不可」であるのに対し、サンプルb−7aは「可」であり、実用に耐えるものであることが分かる。
【0082】
【表11】
【0083】
表12へ、表9のポリビニルアルコールAの重合度300のサンプルを改めて示すと共に、表9のサンプルb−3〜b−7の夫々と同様の割合でポリ酢酸ビニル系樹脂の配合比率を変化させ、なお且つ残りの成分である重合度300のポリビニルアルコールAと重合度1700のポリビニルアルコールBとの間の配合比率を同じとして両ポリビニルアルコールを夫々変化させたサンプルを示す。
具体的には、表12へ、表11のサンプルb−3aを併記すると共に、ポリ酢酸ビニル系樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を30重量部としたサンプルb−4b、ポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を40重量部としたサンプルb−5b、ポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を45重量部としたサンプルb−6b、ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を50重量部としたサンプルb−7bを示す。
表12から次の評価を行うことができた。
No.1の粘着力について、サンプルb−4bは「秀」であり、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−4の「良」に比べて極めて優れたものであることが分かる。また、No.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−5及びサンプルb−6は「可」であるのに対し、サンプルb−5b及びサンプルb−6bは何れも「優」と優れたものであることが分かる。またNo.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−7が「不可」であるのに対し、サンプルb−7bは「良」であり良好なものであることが分かる。
【0084】
【表12】
【0085】
表9〜表12の結果から、上記のポリ酢酸ビニル系樹脂は、単独の場合も第1のポリビニルアルコールを併用する場合も、分子量(平均分子量)を30万〜40万とするものが使用でき、また併用するポリビニルアルコールAとして重合度300〜1000とするものが使用できることが分かる。また、これらの樹脂に加えてポリビニルアルコールBを使用する場合、ポリビニルアルコールBは、重合度が1700〜3000のものを採用できることが分かる。また重合度200のポリビニルアルコールAについては表面性と作業性について評価していないが、各サンプルの数値傾向からポリビニルアルコールAは重合度200〜1000の範囲で使用できると考えられる。
上記各サンプルから直接把握できる、ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量の範囲及び各ポリビニアルコールの重合度の範囲と共に上記各サンプルの数値傾向からは、樹脂の調達が可能であれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂は分子量(平均分子量)を10万〜70万の範囲まで拡張して採用することができ、またポリビニルアルコールAは重合度の上限を1200まで拡張して採用でき、ポリビニルアルコールBは重合度の下限を1200より大きいものとする範囲まで拡張して採用できるものと考えられる。
【0086】
表13及び表14へ、表5、表6、表9及び表10の各サンプルの樹脂の固形分濃度を示す。
また、表15及び表16へ、表11及び表12の各サンプルの樹脂固形分を示す。
ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量、ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールの重合度について、表13の各サンプルは表5に示すものと同じであり、表14の各サンプルは表6に示すものと同じである。
即ち表13及び表14の各サンプルにおいて、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、分子量(平均分子量)30万〜40万とし、ポリビニルアルコールAの重合度を1000とする。また、表14の各サンプルにおいて、ポリビニルアルコールBは重合度を1700とする。
また、表15及び表16の各サンプルにおいて、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、分子量(平均分子量)30万〜40万とし、ポリビニルアルコールAの重合度を300とし、ポリビニルアルコールBの重合度を1700とする。
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
【表15】
【0090】
【表16】
【0091】
表13〜表16に示す各サンプルについての配合樹脂間の固形分濃度の割合が、各サンプルを塗布液として塗布して形成した紙管や梱包資材の完成品が備える構成樹脂間の割合となる。紙管や梱包資材は、上記塗布液の塗布後乾燥させ即ち水分を揮発させて完成する。表13〜表16の固形分濃度比が、当該完成した紙管や梱包資材という製品における樹脂間の固形分の比率に相当する。
例えば表14のサンプルc−yと同等の塗布液を紙管の製造工程中塗布した場合、製品として完成した紙管に設けられた樹脂の成分比率は、表14に示す固形分濃度から、ポリ酢酸ビニル系樹脂(平均分子量30万〜40万):ポリビニルアルコールA(重合度1000):ポリビニルアルコールB(重合度1700)=35.25:0.60:2.55で示すことができる。このサンプルc−yの固形分の重量比率について、濃度47%で75重量部のポリ酢酸ビニル系樹脂は47%×0.75=35.25%、ポリビニルアルコールAは同様に濃度6%×0.1=0.60%、ポリビニルアルコールBも同様に濃度17%×0.15=2.55%で算出されている。
【0092】
表13〜表16のサンプルと同等の塗布液を用いた紙管の完成品(未使用品)について、未使用の状態における樹脂の重量比率をまとめると次の1)〜4)に示す通りである。
1)表13の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールAは、
サンプルa−1=100(47%÷0.47):0:0
サンプルb−1=42.30:0.60
サンプルb−2=37.60:1.20
サンプルb−3=28.20:2.40
サンプルb−4=18.80:3.60
サンプルb−5=9.40:4.80
サンプルb−6=4.70:5.40
サンプルb−7=0:100(6%÷0.06)
である。
2)表14の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBは、
サンプルb−1=42.30:0.60:0
サンプルc−1=39.95:0.60:0.85
サンプルc−x=37.60:0.60:1.70
サンプルc−y=35.25:0.60:2.55
サンプルc−2=32.90:0.60:3.40
サンプルc−3=30.55:0.60:4.25
サンプルc−4=28:20:0.60:5.10
である。
3)表15の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBは、
サンプルb−3a=28.20:1.20:3.40
サンプルb−4a=18.80:2.40:3.40
サンプルb−5a= 9.40:3.60:3.40
サンプルb−6a= 4.70:4.20:3.40
サンプルb−7a= 0:4.80:3.40
である。
4)表16の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBは、
サンプルb−4b=18.80:1.80:5.10
サンプルb−5b= 9.40:2.40:6.80
サンプルb−6b= 4.70:2.70:7.65
サンプルb−7b= 0:3.00:8.50
である。
【0093】
(変更例)
上記の図1(A)へ示す例では、巻芯1の外周面(円筒の側面)全体へ被着面2を形成するものとした。この他、図1(B)へ示す通り、被着面2は、外周面表面において巻芯1の軸方向即ち巻芯1のスラスト方向について伸びる筋状の領域としても実施できる。図1(B)へ示す通り、巻芯1の外周面へ巻芯1の軸方向の幅全体に渡って、直線状に被着面2を形成してもよい。即ち被着面2は、図1(B)へ示す形態によりシート材の端辺付近のみを巻芯1へ固定するものとしても実施できる。
図1(B)では、被着面2は1本の筋としたが、図1(C)へ示す通り被着面2は2本の筋としても実施でき、更には3本以上の筋としても実施できる。図1(C)へ示す通り、被着面2の夫々は、間隔を開け上記軸方向に沿って互いに平行に伸びる。
図1(B)(C)へ示すように直線即ち連続した線とする他、被着面2は間欠的に設けられた破線状の領域や、点在するものとしても実施できる。
【0094】
上述してきた実施の形態の紙管は丸紙管即ち丸筒としたが、紙管は角紙管であっても実施できる。
また、図1(A)〜(C)へ示す実施の形態では、被着体1を巻芯1としたが、被着体1は巻芯に限定するものではない。例えば被着体1は梱包資材(以下必要に応じて梱包資材1と呼ぶ。)としても実施することができる。梱包資材1として、縁当て部材(エッジボード)について本願発明を実施することができる。当該縁当て部材の梱包物と対面する面へ上記被着面2を形成しておく。複数の梱包物1を纏めて梱包する場合、バンドで締結することが行われるが、本願発明では、バンドで締結する前に当該縁当て部材の被着面2へ霧吹きなどで水分を付着させて粘着力を発揮させて梱包物を束ねて固定しておくことができる。即ち、従来、縁当て部材を用いてバンドで締結する梱包は、複数の作業者を要するものであった。具体的には、一纏めにされる複数の梱包物へ縁当て部材を当てた状態に一部の作業員が押えておき、その間他の作業者がバンドや紐を押さえられている梱包物に掛けて締結する必要があった。しかし、本願発明に係る梱包材では上記の通り、縁当て部材へ水分を付着させて、梱包物に当てることにて、作業者か押さえていなくても、梱包物が崩れず、一人の作業者で、バンドや紐の締結を完了することができる。
【0095】
被着体1を梱包材とする具体的な例を図2(A)〜(F)へ示す。図2の各例において、梱包材1は、積み荷の角や縁を保護する上記エッジボードや緩衝材などの梱包資材である。
図2(A)へ示す例は、梱包する荷(梱包物k)を複数の箱体とするものである。図2(A)へ示す通り、この例では、被着体1は、積み上げられた複数の梱包物のコーナー(辺)へ配置される断面略L字型の板材であり、当該L字の内側(谷側)の面が被着面2である。上記の塗布剤が塗布された被着面2を積み上げられた梱包物kの角(辺)に当てることにより、梱包物kへ梱包材である被着体1を固着することができる。このため作業者が梱包材(被着体1)や積み上げられた梱包物kを押さえてなくても、荷崩れを起こさずにバンドなどの締結帯mを締結することができる。
【0096】
図2(A)へ示す例は、略直方体である複数の梱包物kを積み上げて全体を直方体状の集合物としてまとめられるものを例示し、当該集合物が呈する直方体の各辺へ梱包材である上記被着体1を配置し固定するものとした。一方図2(B)へ示す例では、梱包物kを上から上段k1、中段k2、下段k3の3つの塊としている。当該上段k1、中段k2、下段k3をなす各塊間へスペーサ(図示しない。)を介することにより、各塊間へ間隔が開けられている。図2(B)へ示す例では、上記各塊は、複数の薄板或いは複数のシート状の部材を積み上げた集合物であり、塊が分離しないように、各塊毎に上記断面略L字型の梱包材が被着体1として固定されている。この場合も、当該梱包材により、塊を構成する薄板などを纏まった状態に固定した後、バンドなどの締結帯mを掛けることができる。
【0097】
また、図2(C)へ示すように、梱包物kを内容物が詰められた複数の袋とし、当該袋の積み上げにより形成された集合体のコーナーへ、被着体1が固定されるものとしても実施できるし、図2(D)へ示すように、パレットg上に載せられた複数のドラム状の積み荷の上辺へ上記被着体1を固定して、締結帯mを掛けることもできる。
更に図2(E)へ示す通り、円柱を呈するロール状に巻かれた部材の両底面の縁へ緩衝材や保護材として環状に形成された上記被着体1を固定するものとしても実施できる。
また、図2(F)へ示すように、ダンボール箱などの梱包箱n内部のコーナー部分に補強材、緩衝材或いは保護部材として上記被着体1を固定するものとしても実施できる。
【0098】
被着体1を前述の巻芯とする図1(A)〜(C)へ示す場合や、図2の各例において、例えば図4へ示す容器3へ上記塗布剤tを収容して提供するものとし、需要者が現場で塗布剤tを巻芯や梱包資材へ塗布して被着体1として利用することができる。この他、被着体1として提供する前述の巻芯と同様、図2の各例においても、当初より梱包材を被着体1として上記塗布剤を塗布したものを需要者へ提供するものとして実施できる。図4において5は容器3の蓋を示し、4は容器3の口に設けられて容器3内の塗布剤tを吸って塗布することができるフェルトや布、網目状の部材でできた導出部を示す。導出部4を被着体1とする部材へ押し付けることにより、容器3内の塗布剤tを塗布することができる。但し、霧吹きなど図4へ示す容器3以外の周知の塗布具により塗布剤tを塗布することを制限するものではない。
【0099】
また上記の通り、塗布剤tとして粘着剤を容器3へ詰め、使用時に適量を塗布(コーティング)することで、どの部分にも粘着剤を塗布(コーティング)することが可能となった。更に塗布剤tを着色することで、塗布後どこに塗布(コーティング)したかも容易に判別できる。
【0100】
(総括)
本願発明では、水分が塗布されていない未使用の状態では巻芯は束ねた他の巻芯や埃などの異物が付着せず、巻芯へ巻き取るシート材の端部を固定する際に巻芯表面に設けた被着面へ水分を塗布しシート材を張付けることにより即時に巻取りを開始でき、巻き取り後確実にシート材を巻芯へ接着しておくことができ、シート材としてプラスチックフィルムを使用する際には、シート材を巻芯から綺麗に剥がすことができるものを提供できた。
本願発明の上記被着体1の用途については、上記の巻芯や梱包材に限定するものではないが、特に上述してきた粘着性巻芯及び梱包資材として利用するのに適する。
即ち、本願発明に係る被着体1は、
a.巻芯と梱包資材(エッジボードなどの梱包資材)に事前に塗った状態で提供し、使用時に水を塗布することで、粘着力が向上するものとして利用するのに適する。
b.樹脂単品でも販売することで、顧客で使用する際に、必要な所に必要な量の樹脂を塗布することで巻き取ることや、粘着による仮固定が出来るものとし利用するのに適する。
即ち、巻芯において、水分の付着により一旦被着体1である巻芯へ貼着部材であるシート材を取り付けた後乾燥すれば確実に固定され、 シート材をプラスチックフィルムとした場合シート材をはがす際には綺麗にシート材が剥がれる。このようにフィルム製品と紙管が最後綺麗に剥がれ、紙管表面が破れないことから紙粉などの影響が軽減され、クリーンルーム内での使用も従来品よりも使い易くなった。
【符号の説明】
【0101】
1 被着体
2 被着面
3 容器
4 導出部
5 蓋
h 鋏
r(試験に用いた締結用の)バンド
t 塗布剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6