【実施例】
【0038】
表5〜表8へ試験を行ったサンプルとその試験結果(評価結果)を示し、表1〜4へ当該サンプルの評価方法について示す。
【0039】
(粘着力についての評価方法)
図1(A)へ示す紙管の被着面2へ水を塗布し、表1へ示す通り貼付体としてプラスチックフィルム(PEフィルム)であるシート材を貼ってから当該シート材を巻芯へ巻き取るまでかかった時間で粘着力を評価した。当該時間が短いほど粘着力が強いことを示す。また当該時間が短いほど粘着力の発現性も高いことを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(評価基準)
表1へ示す粘着力の評価において、
図1(A)へ示す紙管である直径100mmの巻芯1の被着層2表面へ水を塗布し、(巻芯の軸方向の)幅250mmとし長さ35cmとするシート材を巻芯1表面即ち被着面2へ貼ってから巻芯1へ巻き取るまでの時間を計測した。当該計測において、表1へ示す通り、巻芯1表面即ち被着面2へ貼ってから、瞬時即ち1秒未満で巻き取り完了したものを「秀」と、1秒以上5秒以内で巻き取り完了したものを「優」と、5秒を超え10秒以内で巻き取り完了したものを「良」と、10秒を超え30秒未満で巻き取りを完了しものを「可」と、巻き取り完了に30秒以上かかったものを「不可」と評価した。
【0042】
(表面性)
図3(A)へ示す通り、巻芯1である上記表1で用いた寸法の紙管を3本のPP(ポリプロピレン)製のバンドrで結束し、恒温恒湿器にて設定条件で48時間入れた後、当該バンドrを鋏hで切った瞬間に紙管同士が引っ付いているか(
図3(C))否か(
図3(B))で評価した。
【0043】
(作業性)
上記塗布剤を製造するまでの過程において、摂氏23度で混合した樹脂の粘度をBL型粘度計60rpmで測定して評価した。
【0044】
【表2】
【0045】
塗布剤製造時の当該作業性の評価基準については、表2へ示す通り粘度が、5,000 mPa・s以下を「優」とし、5,000mPa・sより大きく20,000mPa・s以下を「良」とし、20,000mPa・sより大きく40,000mPa・s未満を「可」とし、40,000mPa・s以上を「不可」とした。
【0046】
(剥がれ性)
巻芯1である紙管に巻かれたシート材が、紙管から最後まで綺麗に剥がれ、紙管表面が破れていないか、シートが剥がされた紙管表面の外観を確認して評価した。表3へ示す通り、目視により破れがなかったものを○とし、目視により破れが確認されたものを×とした。
【0047】
【表3】
【0048】
(試験結果)
表4は、ポリ酢酸ビニル系樹脂1種類(単体)にて作成された塗布剤を塗布して被着面2を形成したサンプルa−1について、試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
サンプルa−1のポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量は、30万〜40万の範囲にある。
表4の試験項目No.1は上記の粘着力であり、表4の試験項目No.2は自然状態即ち摂氏23度・湿度50%雰囲気における48時間での表面性であり、表4の試験項目No.3は高温多湿即ち摂氏50度・湿度98%雰囲気における48時間での表面性である。サンプルa−1は、摂氏23度における粘度を8,300mPa・sとするものであり、また、表4の試験項目No.5は上記剥がれ性である。試験項目No.2の摂氏23度・湿度50%雰囲気における48時間での表面性、試験項目No.3は高温多湿即ち摂氏50度・湿度98%雰囲気における48時間での表面性というのは、夫々の温度・湿度に設定された上記恒温恒湿器にて48時間経過後の結果である。
【0049】
更に、サンプルa−1について、No.6の粘着強度の評価を行った。
No.6の引張強度は、次の引張試験を行った結果得られたものである。即ち、上記引張試験は、試験材料として、被着体を紙管の表面に使用する厚み0.50mmの原紙p1(紙)とし、貼付体を厚み50μmのPE(ポリエチレン)フィルムp3とした。
図6(A)へ示す通り、上記原紙p1のサイズは、縦幅w1(引張方向幅)を140mmとし横幅w2を70mmとし、上記PEフィルムp3のサイズは、縦幅w3(引張方向幅)を200mmとし横幅w4を70mmとした。
図6(B)へ示す通り上記原紙p1の被着面2即ち接着面p2のサイズは、縦幅(引張方向の重ね幅w5)を60mmとし横幅を70mmとした。具体的には、原紙p1に対し塗布剤を横幅全域で縦方向(引張方向)について60mmに渡ってバーコータ♯18にて塗布量40g/平方メートル塗布し、原紙p1の当該接着面p2へPEフィルムp3を重ねた状態とした。
試験方法は、
1)上記の通り原紙p1の当該接着面p2へPEフィルムp3を重ねて1日(24時間)乾燥放置した。
2)恒温恒湿器で摂氏23度・湿度50%に調湿した。
3)万能試験機にて上記原紙p1とPEフィルムp3をつかみ、引張速度10mm/分で測定する(
図6(B)へ示す原紙p1の下端p10を試験機に固定し、PEフィルムp3の上端p30を上方へ引っ張った)。
4)測定は、接着面p2で剥がれるか、又はPEフィルムp3が破断するまで行った。
5)最大粘着強度(N/60mm)の測定を行った。「〜N/60mm」とは引張方向の重ね幅w5を上記の通り60mmとした際の力(ニュートン)を示している。
6)5)の3回の平均値を採った。
7)試験結果として、PEフィルムp3で破断(MFと表記)したか、接着面P2(原紙p1側)が破断(AFと表記)したかを記録した。
【0050】
【表4】
【0051】
表4へ示す通り、ポリ酢酸ビニル系樹脂を100部とするサンプルa−1の評価結果は、No.1の粘着力について「優」、No.2の自然状態の表面性について「優」であり、No.3の高温多湿の表面性について「不可」であり、No.4の作業性について上記粘度8,300mPa・sにより「良」であり、No.5の剥がれ性についての外観確認は〇であった。またサンプルa−1の試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
サンプルa−1の評価結果から、塗布剤の樹脂をポリ酢酸ビニル系樹脂のみとすると、高温多湿の条件下で粘着力が発生し、紙管同士が引っ付いてしまうことが把握できた。即ちポリ酢酸ビニル系樹脂のみでは粘着性の発現性が高く発現した粘着力も高くべとつき易いことが分かる。また、ポリ酢酸ビニル系樹脂の接着力の強いことが分かる。
従って、樹脂成分をポリ酢酸ビニル系樹脂のみとする塗布剤を用いた場合、上記自然状態で使用するのに適し、高温多湿で使用するのには適さないことが把握できる。
【0052】
表5は、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAの2種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したb−1〜b−6の6つのサンプルについて、表4と同様の試験項目No.1〜No.6の評価を行った。
サンプルb−1〜b−6については、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量が30万〜40万の範囲にあり、ポリビニルアルコールAの重合度が1000のものを採用した。
尚、比較のため表4のサンプルa−1も併記している。サンプルb−1はポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールA10重量部(合計100重量部)、サンプルb−2はポリ酢酸ビニル系樹脂80重量部に対しポリビニルアルコールA20重量部(合計100重量部)、サンプルb−3はポリ酢酸ビニル系樹脂60重量部に対しポリビニルアルコールA40重量部(合計100重量部)、サンプルb−4はポリ酢酸ビニル系樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールA60重量部(合計100重量部)、サンプルb−5はポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールA80重量部(合計100重量部)、サンプルb−6はポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールA90重量部(合計100重量部)とした。
尚、サンプルb−7は、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)としたものである。
【0053】
【表5】
【0054】
表5へ示す通り、サンプルb−1は、試験項目No.1(粘着力)及びNo.2(自然状態の表面性)について何れも「優」であり、No.3(高温多湿の表面性)については「不可」、No.4の作業性については「良」、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−1の試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
サンプルb−2は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)及びNo.3(高温多湿の表面性)については何れも「優」であり、No.4の作業性については「優」、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−2の試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断し測定不能(MF)であった。
サンプルb−3は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−3は、試験項目No.6(引張強度)の強度について120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
サンプルb−4は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−4は、またサンプルb−5は、試験項目No.6(引張強度)の強度について87N/60mmで接着面が破断(AF)した。
サンプルb−5は、試験項目No.1(粘着力)については「良」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−5の試験項目No.6(引張強度)の強度について74N/60mmで接着面が破断(AF)した。
サンプルb−6は、試験項目No.1(粘着力)については「良」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−6の試験項目No.6(引張強度)の強度について69N/60mmで接着面が破断(AF)した。
サンプルb−7は、試験項目No.1(粘着力)については「可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。またサンプルb−7の試験項目No.6(引張強度)の強度について67N/60mmで接着面が破断(AF)した。
【0055】
上記のサンプルb−1の結果から、表5に示す条件の高温多湿の環境下で使用をしないのであれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールAを10重量部の塗布剤を用いた被着体1を使用することもできる。また、サンプルb−1の結果から、摂氏23度における作業性についても「良」であり実用に耐えるものである。
一方、サンプルb−2,b−3及びb−4の結果から、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、粘着力、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について全て「優」、剥がれ性については「○」と他のサンプルにない優れたものであり、極めて実用性の高い塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
サンプルb−5及びb−6の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=20〜10重量部:80〜90重量部の範囲では、粘着力が「良」、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」と、十分な実用性を備えた優れた塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
サンプルb−7の結果から、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)とした場合、粘着力について、「可」であり、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」と、実用に耐える塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
また特にサンプルb−1、b−2,b−3の何れも引張強度120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)したことから、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=90〜60重量部:10〜40重量部の範囲では、被着面の接着力が強いことが分かる。
特に引張強度87N/60mm以下で接着面が破断(AF)した、サンプルb−4,b−5,b−6,b−7から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=40〜0重量部:60〜100重量部の範囲では、被着面の剥離がし易いものであることが分かる。
上記のサンプルb−4,b−5,b−6から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=40〜10重量部:60〜90重量部の範囲では、上記剥離のし易さと適切な粘着力、表面性、作業性の何れも確保していることが分かる。
【0056】
表5のサンプルa−1から、樹脂を上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とした場合、上記条件の高温多湿の雰囲気での使用は控えるものとすれば、使用は可能であり、表5のサンプルb−1〜b−7の結果と合わせて、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=100〜0重量部:0〜100重量部の範囲の塗布剤について、上記高温多湿の環境下での使用を避け、作業性について工夫することを条件として、使用は可能である。そして上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜0重量部:20〜100重量部の範囲では、上記高温多湿の条件下でも実用性のある塗布液による被着体1を提供できることが確認できた。特に、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜10重量部:20〜90重量部の範囲では、塗布剤による優れた被着体1を形成できることが確認できた。また、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、塗布剤による非常に優れた被着体1を形成できることが確認できた。一方、上記剥離のし易さ観点を含めると、前述の通り上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=40〜10重量部:60〜90重量部の範囲において、塗布剤による極めて優れた被着体1を形成できることが確認できた。
【0057】
表6は、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの3種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したc−1〜c−3の3つのサンプルについて、表4及び表5と同様の試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
サンプルc−1〜c−3については、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量が30万〜40万の範囲にあり、ポリビニルアルコールAの重合度が1000、ポリビニルアルコールBの重合度が1700のものを採用した。
尚、比較のため表5のサンプルb−1のデータも表6へ併記している。サンプルc−1はポリ酢酸ビニル系樹脂85重量部、ポリビニルアルコールA10重量部、ポリビニルアルコールB5重量部(合計100重量部)とし、サンプルc−2はポリ酢酸ビニル系樹脂70重量部、ポリビニルアルコールA10重量部、ポリビニルアルコールB20重量部(合計100重量部)とし、サンプルc−3はポリ酢酸ビニル系樹脂65重量部、ポリビニルアルコールA10重量部、ポリビニルアルコールB25重量部(合計100重量部)とした。
【0058】
【表6】
【0059】
表6へ示す通り、サンプルc−1は、No.1(粘着力)、No.2(上記自然状態の表面性)及びNo.3(上記高温多湿の表面性)の何れについても「優」であり、No.4(作業性)について「良」、No.5(剥がれ性)について「○」であった。また、サンプルc−2は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「良」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。サンプルc−3は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「可」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。またサンプルc−1、c−2,c−3の何れの試験項目No.6(引張強度)の強度についても120N以上/60mmでPEフィルムp3が破断(MF)し測定不能であった。
【0060】
表6の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA:上記ポリビニルアルコールB=85〜65重量部:10重量部:5〜25重量部の範囲の塗布液について、形成される被着体1は実用に耐えるものと言える。
特に、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA:上記ポリビニルアルコールB=85〜70重量部:10重量部:5〜20重量部の範囲の塗布液では作業性も良く粘着性について何れも「優」以上と極めて実用性に優れた塗布液による被着体1を提供できることが分かる。
またサンプルc−1、c−2,c−3の何れも、接着力が強いことが分かる。
以上の点から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂と上記ポリビニルアルコールAと合わせて95〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを5〜20重量部(合計100重量部)を配合することで粘着力が向上することが把握できる。
表7においてサンプルb−1を含めると、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂と上記ポリビニルアルコールAと合わせて100〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを0〜20重量部(合計100重量部)を配合することで粘着力が向上することが把握できる。
尚、実用面において、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂と上記ポリビニルアルコールAと合わせて99〜80重量部に対し、ポリビニルアルコールBを1〜20重量部(合計100重量部)を配合することで被着面の粘着力を向上させるのが適切である。
【0061】
表7は、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールDの3種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したd−1〜d−3の3つのサンプルについて、表5及び表6と同様の試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
サンプルd−1〜d−3については、ポリ酢酸ビニル系樹脂の平均分子量が30万〜40万の範囲にあり、ポリビニルアルコールAの重合度が1000、ポリビニルアルコールDの重合度が2300のものを採用した。
尚、比較のため表5のサンプルb−1のデータも表7へ併記している。
ポリビニルアルコールDについては、濃度を7重量%即ち樹脂固形分7重量部を水93重量部で希釈することにて全体を100重量部とし、樹脂温度を摂氏23度に調整して、BL型粘度計を用い60rpmの条件で粘度を計測した場合に、粘度45,000mPa・sをとするものを使用した。
【0062】
【表7】
【0063】
表7へ示す通り、サンプルd−1は、No.1(粘着力)について「秀」であり、No.2(上記自然状態の表面性)及びNo.3(上記高温多湿の表面性)の何れについても「優」であり、No.4(作業性)について「不可」、No.5(剥がれ性)について「○」であった。また、サンプルd−2は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「不可」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。サンプルd−3は、No.1(粘着力)について「秀」、No.2〜No.3(表面性)について何れも「優」であり、No.4(作業性)について「不可」であり、No.5(剥がれ性)について「○」であった。
【0064】
表7の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA:上記ポリビニルアルコールD=85〜65重量部:10重量部:5〜25重量部の範囲の塗布液について、何れも作業性について「不可」であり、作業性に問題のあることが分かる。工夫によって作業性を確保できれば、形成される被着体1は実用に耐えるものと言える。
【0065】
(表面粗さ)
塗布剤として撥水性樹脂を塗布(コーティング)した後、粘着性樹脂を塗布(コーティング)すると表面粗さ及びうねりの品質が向上することが確認できる。
上記の撥水性樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂の何れか1種の樹脂を採用することができ、更にはこれらの樹脂を2種以上混合して利用することができる。
上記の粘着性樹脂としては、本願発明に係る塗布剤を採用することができる。
【0066】
具体的には、表面粗さについて、表8へ示すe−1〜e−4の4つ、のサンプルを用意して、JIS B 0601に準じて、評価を行った。表8において、評価項目No.1はサンプル表面の平均粗さ(Ra)、No.2は、サンプルの粗さ曲線の最大高さ(Ry)、No.3はサンプルの断面曲線の最大高さ(Rmax)、No.4はサンプルのうねり(Wt)を示す。
シームギャップというのは、紙管形成の際、帯状の紙材をスパイラル状に丸めて筒状体とすることによってできる当該帯状の紙材の接合する辺間のギャップである。
【0067】
【表8】
【0068】
表8のサンプルe−1及びe−2はシームギャップが無い部分とし、サンプルe−1は撥水性樹脂のみコーティングした例としてアクリル系樹脂を被着体1へコーティングした。サンプルe−2は撥水性樹脂と粘着性樹脂の夫々を被着体1へコーティングした例として、アクリル系樹脂及び粘着性樹脂の夫々を被着体1へコーティングした。当該粘着性樹脂として上記表6の上記サンプルc−2と同様の性状のものを用いた。
表8のサンプルe−3及びe−4はシームギャップが有る部分とし、サンプルe−3は撥水性樹脂のみをコーティングした例としてアクリル系樹脂を被着体1へコーティングした。サンプルe−4は撥水性樹脂と粘着性樹脂の夫々をコーティングした例として、アクリル系樹脂及び粘着性樹脂を被着体1へコーティングした。サンプルe−4についても当該粘着性樹脂として上記表6の上記サンプルc−2と同様の性状のものを用いた。
【0069】
表8へ示す通り、サンプルe−1は、評価項目No.1(平均粗さ)について2.30μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について14.37μm、No.3(断面曲線の最大高さ)43.73μm、No.4(うねり)について23.41μmであった。
サンプルe−2は、評価項目No.1(平均粗さ)について1.40μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について8.87μm、No.3(断面曲線の最大高さ)25.10μm、No.4(うねり)14.95μmであった。
サンプルe−3は、評価項目No.1(平均粗さ)について2.36μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について15.37μm、No.3(断面曲線の最大高さ)50.20μm、No.4(うねり)31.11μmであった。
サンプルe−4は、評価項目No.1(平均粗さ)について1.57μm、No.2(粗さ曲線の最大高さ)について10.10μm、No.3(断面曲線の最大高さ)48.29μm、No.4(うねり)30.08μmであった。
【0070】
上記の通り、撥水性樹脂のみをコーティングしたサンプルe−1に対して撥水性樹脂と粘着性樹脂の双方をコーティングしたサンプルe−2は、No.1〜No.4のいずれの項目についても、粗さの値(μm)が小さくなっていることが把握できる。同様に撥水性樹脂のみをコーティングしたサンプルe−3に対して撥水性樹脂と粘着性樹脂をコーティングしたサンプルe−4は、No.1〜No.4のいずれの項目についても、粗さの値(μm)が小さくなっていることが把握できる。
表8へ示す結果から、撥水性樹脂をコーティングした後粘着性樹脂をコーティングすることにより、表面粗さとうねりの品質の向上が確認できた。
【0071】
本願の発明者は、
図6(C)へ示す通り、現場において、実際に被着面へ貼り付けられて巻芯1へ巻き取られた1週間経過後のPEフィルム(シート材10)を、巻き方向逆に撮んで引っ張り、PEフィルムを剥がして、PEフィルムと巻芯1夫々の表面を目視により観察した。被着面を形成する塗布剤は、上記サンプルc−2(表6)と同様のものとした。
その結果、PEフィルムを破断なく綺麗に剥離でき、PEフィルム側には被着面の樹脂は付着していないことを確認した。
【0072】
表5へ示すサンプルb−1〜b−7は、ポリビニルアルコールの重合度を1000とするものであった。当該サンプルb−1〜b−7について、配合するポリビニルアルコールを重合度300のものとし他の条件を変えずに表5のNo.1〜No.5の評価を行い、更に配合するポリビニルアルコールの重合度200とするものとし他の条件を変えずにNo.1とNo.4の評価を行った結果を、表9へ示す。尚、表9には、表5へ示したポリビニルアルコールの重合度1000の各サンプル及び表4のサンプルa−1も併記した。
即ち、表9では、ポリ酢酸ビニル系樹脂とポリビニルアルコールAの2種類の樹脂を異なる配合比(重量)で配合して作成された塗布剤にて被着面2を形成したb−1〜b−6の6つのサンプルについて、表4と同様の試験項目No.1〜No.5の評価を行った。
表9のサンプルb−1〜b−6のポリビニルアルコールAの重合度を300又は200とする何れにおいても、前述の通りポリ酢酸ビニル系樹脂として平均分子量30万〜40万の範囲にあるものを採用し、サンプルb−1はポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールA10重量部(合計100重量部)、サンプルb−2はポリ酢酸ビニル系樹脂80重量部に対しポリビニルアルコールA20重量部(合計100重量部)、サンプルb−3はポリ酢酸ビニル系樹脂60重量部に対しポリビニルアルコールA40重量部(合計100重量部)、サンプルb−4はポリ酢酸ビニル系樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールA60重量部(合計100重量部)、サンプルb−5はポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールA80重量部(合計100重量部)、サンプルb−6はポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールA90重量部(合計100重量部)である点、更にサンプルb−7は、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)としたものである点変わりない。
【0073】
【表9】
【0074】
先ず表9中のポリビニルアルコールAの重合度を300とする各サンプルb−1〜b7について説明する。
サンプルb−1は、試験項目No.1(粘着力)及びNo.2(自然状態の表面性)について何れも「優」であり、No.3(高温多湿の表面性)については「不可」、No.4の作業性については「優」、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−2は、試験項目No.1(粘着力)、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性についてはいずれも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−3は、試験項目No.1(粘着力)について「良」、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−4は、試験項目No.1(粘着力)について「良」、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−5は、試験項目No.1(粘着力)については「可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−6は、試験項目No.1(粘着力)については「可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
サンプルb−7は、試験項目No.1(粘着力)については「不可」であり、No.2(自然状態の表面性)、No.3(高温多湿の表面性)及びNo.4の作業性については何れも「優」であり、No.5(剥がれ性)については「○」であった。
【0075】
上記表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−1の結果から、表9に示す条件の高温多湿の環境下で使用をしないのであれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂90重量部に対しポリビニルアルコールAを10重量部の塗布剤を用いた被着体1を使用できることが分かる。また、サンプルb−1の結果について、摂氏23度における作業性についても「優」であり実用に耐えるものと言える。
一方、表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−2,b−3及びb−4の結果から、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、粘着力、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について全て「優」又は「良」、剥がれ性については「○」と他のサンプルにない優れたものであり、実用性の高い塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
特に表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−2は、No.1〜No.5の全ての項目について「優」であり、塗布剤についてポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80重量部:20重量部前後の配合比率するのが最も好ましいことが把握できる。
また表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−5及びb−6の結果から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=20〜10重量部:80〜90重量部の範囲では、粘着力が「可」、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」と、十分な実用性を備えた塗布剤にて被着体1を形成できることが把握できる。
表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−7の結果から、ポリビニルアルコールAを100重量部(ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部)とした場合、上記自然状態及び高温多湿の表面性及び作業性について何れも「優」、剥がれ性については「○」であるものの、粘着力について「不可」であり、実用的でないことが把握できる。
表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とする上記のサンプルb−4,b−5,b−6から、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜20重量部:10〜90重量部の範囲では、上記剥離のし易さと適切な粘着力、表面性、作業性の何れも確保していることが分かる。
【0076】
表9のサンプルa−1から、樹脂を上記ポリ酢酸ビニル系樹脂とした場合、上記条件の高温多湿の雰囲気での使用は控えるものとすれば、使用は可能であり、表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルb−1〜b−6の結果と合わせて、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=100〜0重量部:10〜90重量部の範囲の塗布剤について、上記高温多湿の環境下での使用を避け、作業性について工夫することを条件として、使用は可能である。そして表9のポリビニルアルコールAの重合度を300とするサンプルから上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜10重量部:20〜90重量部の範囲では、上記高温多湿の条件下でも実用性のある塗布液による被着体1を提供できることが確認できた。特に、上記ポリ酢酸ビニル系樹脂:上記ポリビニルアルコールA=80〜40重量部:20〜60重量部の範囲では、塗布剤による優れた被着体1を形成できることが確認できた。
【0077】
次に表9中のポリビニルアルコールAの重合度を200とする各サンプルb−1〜b7について説明する。
サンプルb−1〜b−3は何れも、試験項目No.1(粘着力)は「良」であり、No.4の作業性については「優」であった。
サンプルb−4及びサンプルb−5は、試験項目No.1(粘着力)について「可」であり、No.4の作業性については「優」であった。
サンプルb−6及びサンプルb−7は何れも、No.4の作業性については「優」であるものの、試験項目No.1(粘着力)については「不可」であった。
上記表9のポリビニルアルコールAの重合度を200とするサンプルb−1〜b−5の結果から、ポリビニルアルコールの重合度200において、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=90:10〜20:80の範囲で、粘着力と剥がれ性については問題ない塗布液が得られることが分かる。サンプルb−1の結果を考慮し、高温多湿で使用しない場合、ポリビニルアルコールAの重合度を200とするものは、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=90:10〜20:80の範囲で使用可能といえる。特にサンプルb−2〜b−5の結果から、ポリビニルアルコールAの重合度を200とするものは、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA=80:20〜20:80の範囲において高温多湿での環境下でも優れたものであることが分かる。
【0078】
表6の各サンプルc−1〜c−3は夫々、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBの重量比率を、85:10:5と、70:10:20と、65:10:25とするものであった。
表10に、上記サンプルc−1〜c−3と共に、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBの重量比率を、80:10:10とするンプルc−xと、75:10:15とするサンプルc−yと、60:10:30とするサンプルc−4を追加した。サンプルc−x、サンプルc−y及びサンプルc−4について、ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量とポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBの重合度は表6の各サンプルc−1〜c−3と同じ(重合度1700)とした結果を記した。また、上記サンプルc−x、サンプルc−y及びサンプルc−4を含め表10の各サンプルに関し、ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量とポリビニルアルコールAの重合度は表6の各サンプルc−1〜c−3から変更せずポリビニルアルコールBの重合度を3000としたものについて、表5及び表6と同様のNo.1〜No.5の試験を行った結果を追加した。また比較し易いように表10へ表6のサンプルc−1〜c−3のデータを併記した。
【0079】
【表10】
【0080】
表10のポリビニルアルコールBの重合度を1700とするサンプルc−xについて、No.1〜No.3の夫々の項目について「優」、No.4について「良」、No.5について「〇」であった。
また表10のポリビニルアルコールBの重合度を1700とするサンプルc−yについて、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「良」、No.5は「〇」であった。
表10のポリビニルアルコールBの重合度を1700とするサンプルc−4について、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「可」No.5は「〇」であった。
表10のポリビニルアルコールBの重合度を3000とするサンプルc−1、c−x、c−y及びc−2について何れも、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「良」、No.5は「〇」であった。
表10のポリビニルアルコールBの重合度を3000とするサンプルc−3について、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「可」、No.5は「〇」であった。
また表10のポリビニルアルコールBの重合度を3000とするサンプルc−4については、No.1は「秀」、No.2及びNo.3は「優」、No.4は「不可」、No.5は「〇」であった。
表10から、ポリビニルアルコールAの重合度を1000とし当該ポリビニルアルコールAについて重量比率を10重量部に定め、ポリビニルアルコールBの重合度を1700とした場合、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜60:30の範囲において、実用に耐える塗布液を提供できること、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜70:20の範囲において、良好な塗布液を提供できることが分かる。
また表10から、ポリビニルアルコールAの重合度を1000とし当該ポリビニルアルコールAについて重量比率を10重量部に定め、ポリビニルアルコールBの重合度を3000とした場合、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜65:25の範囲において、実用に耐える塗布液を提供できること、ポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールB=85:5〜70:20の範囲において、良好な塗布液を提供できることが分かる。
【0081】
次に表11へ、表9の重合度300のポリビニルアルコールAの各サンプルを改めて示すと共に、表9のサンプルb−3〜b−7の夫々と同様の割合でポリ酢酸ビニル系樹脂の配合比率を変化させ、なお且つ重合度1700とするポリビニルアルコールBを20重量部の比率に固定し、当該ポリ酢酸ビニル系樹脂と合わせて80重量部となるようにポリビニルアルコールAの比率を変化させたサンプルを示す。
具体的には、重合度1700のポリビニルアルコールBを20重量部とすることを前提として表11において括弧書に、ポリ酢酸ビニル系樹脂60重量部に対しポリビニルアルコールBを20重量部としたサンプルb−3a、ポリ酢酸ビニ径樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールAを40重量部としたサンプルb−4a、ポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールAを60重量部としたサンプルb−5a、ポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールAを70重量部としたサンプルb−6a、ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部に対しポリビニルアルコールAを80重量部としたサンプルb−7aのNo.1の試験結果を示す。
表11から次の評価を行うことができた。
No.1の粘着力について、サンプルb−3a及びサンプルb−4aは「優」であり、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−3及びサンプルb−4の「良」に比べて優れたものであることが分かる。また、No.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを配合比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−5及びサンプルb−6は「可」であるのに対し、サンプルb−5a及びサンプルb−6aは「良」と良好なものであることが分かる。またNo.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−7が「不可」であるのに対し、サンプルb−7aは「可」であり、実用に耐えるものであることが分かる。
【0082】
【表11】
【0083】
表12へ、表9のポリビニルアルコールAの重合度300のサンプルを改めて示すと共に、表9のサンプルb−3〜b−7の夫々と同様の割合でポリ酢酸ビニル系樹脂の配合比率を変化させ、なお且つ残りの成分である重合度300のポリビニルアルコールAと重合度1700のポリビニルアルコールBとの間の配合比率を同じとして両ポリビニルアルコールを夫々変化させたサンプルを示す。
具体的には、表12へ、表11のサンプルb−3aを併記すると共に、ポリ酢酸ビニル系樹脂40重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を30重量部としたサンプルb−4b、ポリ酢酸ビニル系樹脂20重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を40重量部としたサンプルb−5b、ポリ酢酸ビニル系樹脂10重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を45重量部としたサンプルb−6b、ポリ酢酸ビニル系樹脂0重量部に対しポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBの夫々を50重量部としたサンプルb−7bを示す。
表12から次の評価を行うことができた。
No.1の粘着力について、サンプルb−4bは「秀」であり、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−4の「良」に比べて極めて優れたものであることが分かる。また、No.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−5及びサンプルb−6は「可」であるのに対し、サンプルb−5b及びサンプルb−6bは何れも「優」と優れたものであることが分かる。またNo.1の粘着力について、重合度300のポリビニルアルコールAを比率のみ変えるものとしポリビニルアルコールBを加えないサンプルb−7が「不可」であるのに対し、サンプルb−7bは「良」であり良好なものであることが分かる。
【0084】
【表12】
【0085】
表9〜表12の結果から、上記のポリ酢酸ビニル系樹脂は、単独の場合も第1のポリビニルアルコールを併用する場合も、分子量(平均分子量)を30万〜40万とするものが使用でき、また併用するポリビニルアルコールAとして重合度300〜1000とするものが使用できることが分かる。また、これらの樹脂に加えてポリビニルアルコールBを使用する場合、ポリビニルアルコールBは、重合度が1700〜3000のものを採用できることが分かる。また重合度200のポリビニルアルコールAについては表面性と作業性について評価していないが、各サンプルの数値傾向からポリビニルアルコールAは重合度200〜1000の範囲で使用できると考えられる。
上記各サンプルから直接把握できる、ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量の範囲及び各ポリビニアルコールの重合度の範囲と共に上記各サンプルの数値傾向からは、樹脂の調達が可能であれば、ポリ酢酸ビニル系樹脂は分子量(平均分子量)を10万〜70万の範囲まで拡張して採用することができ、またポリビニルアルコールAは重合度の上限を1200まで拡張して採用でき、ポリビニルアルコールBは重合度の下限を1200より大きいものとする範囲まで拡張して採用できるものと考えられる。
【0086】
表13及び表14へ、表5、表6、表9及び表10の各サンプルの樹脂の固形分濃度を示す。
また、表15及び表16へ、表11及び表12の各サンプルの樹脂固形分を示す。
ポリ酢酸ビニル系樹脂の分子量、ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールの重合度について、表13の各サンプルは表5に示すものと同じであり、表14の各サンプルは表6に示すものと同じである。
即ち表13及び表14の各サンプルにおいて、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、分子量(平均分子量)30万〜40万とし、ポリビニルアルコールAの重合度を1000とする。また、表14の各サンプルにおいて、ポリビニルアルコールBは重合度を1700とする。
また、表15及び表16の各サンプルにおいて、ポリ酢酸ビニル系樹脂は、分子量(平均分子量)30万〜40万とし、ポリビニルアルコールAの重合度を300とし、ポリビニルアルコールBの重合度を1700とする。
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
【表15】
【0090】
【表16】
【0091】
表13〜表16に示す各サンプルについての配合樹脂間の固形分濃度の割合が、各サンプルを塗布液として塗布して形成した紙管や梱包資材の完成品が備える構成樹脂間の割合となる。紙管や梱包資材は、上記塗布液の塗布後乾燥させ即ち水分を揮発させて完成する。表13〜表16の固形分濃度比が、当該完成した紙管や梱包資材という製品における樹脂間の固形分の比率に相当する。
例えば表14のサンプルc−yと同等の塗布液を紙管の製造工程中塗布した場合、製品として完成した紙管に設けられた樹脂の成分比率は、表14に示す固形分濃度から、ポリ酢酸ビニル系樹脂(平均分子量30万〜40万):ポリビニルアルコールA(重合度1000):ポリビニルアルコールB(重合度1700)=35.25:0.60:2.55で示すことができる。このサンプルc−yの固形分の重量比率について、濃度47%で75重量部のポリ酢酸ビニル系樹脂は47%×0.75=35.25%、ポリビニルアルコールAは同様に濃度6%×0.1=0.60%、ポリビニルアルコールBも同様に濃度17%×0.15=2.55%で算出されている。
【0092】
表13〜表16のサンプルと同等の塗布液を用いた紙管の完成品(未使用品)について、未使用の状態における樹脂の重量比率をまとめると次の1)〜4)に示す通りである。
1)表13の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールAは、
サンプルa−1=100(47%÷0.47):0:0
サンプルb−1=42.30:0.60
サンプルb−2=37.60:1.20
サンプルb−3=28.20:2.40
サンプルb−4=18.80:3.60
サンプルb−5=9.40:4.80
サンプルb−6=4.70:5.40
サンプルb−7=0:100(6%÷0.06)
である。
2)表14の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBは、
サンプルb−1=42.30:0.60:0
サンプルc−1=39.95:0.60:0.85
サンプルc−x=37.60:0.60:1.70
サンプルc−y=35.25:0.60:2.55
サンプルc−2=32.90:0.60:3.40
サンプルc−3=30.55:0.60:4.25
サンプルc−4=28:20:0.60:5.10
である。
3)表15の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBは、
サンプルb−3a=28.20:1.20:3.40
サンプルb−4a=18.80:2.40:3.40
サンプルb−5a= 9.40:3.60:3.40
サンプルb−6a= 4.70:4.20:3.40
サンプルb−7a= 0:4.80:3.40
である。
4)表16の各サンプルのポリ酢酸ビニル系樹脂:ポリビニルアルコールA:ポリビニルアルコールBは、
サンプルb−4b=18.80:1.80:5.10
サンプルb−5b= 9.40:2.40:6.80
サンプルb−6b= 4.70:2.70:7.65
サンプルb−7b= 0:3.00:8.50
である。
【0093】
(変更例)
上記の
図1(A)へ示す例では、巻芯1の外周面(円筒の側面)全体へ被着面2を形成するものとした。この他、
図1(B)へ示す通り、被着面2は、外周面表面において巻芯1の軸方向即ち巻芯1のスラスト方向について伸びる筋状の領域としても実施できる。
図1(B)へ示す通り、巻芯1の外周面へ巻芯1の軸方向の幅全体に渡って、直線状に被着面2を形成してもよい。即ち被着面2は、
図1(B)へ示す形態によりシート材の端辺付近のみを巻芯1へ固定するものとしても実施できる。
図1(B)では、被着面2は1本の筋としたが、
図1(C)へ示す通り被着面2は2本の筋としても実施でき、更には3本以上の筋としても実施できる。
図1(C)へ示す通り、被着面2の夫々は、間隔を開け上記軸方向に沿って互いに平行に伸びる。
図1(B)(C)へ示すように直線即ち連続した線とする他、被着面2は間欠的に設けられた破線状の領域や、点在するものとしても実施できる。
【0094】
上述してきた実施の形態の紙管は丸紙管即ち丸筒としたが、紙管は角紙管であっても実施できる。
また、
図1(A)〜(C)へ示す実施の形態では、被着体1を巻芯1としたが、被着体1は巻芯に限定するものではない。例えば被着体1は梱包資材(以下必要に応じて梱包資材1と呼ぶ。)としても実施することができる。梱包資材1として、縁当て部材(エッジボード)について本願発明を実施することができる。当該縁当て部材の梱包物と対面する面へ上記被着面2を形成しておく。複数の梱包物1を纏めて梱包する場合、バンドで締結することが行われるが、本願発明では、バンドで締結する前に当該縁当て部材の被着面2へ霧吹きなどで水分を付着させて粘着力を発揮させて梱包物を束ねて固定しておくことができる。即ち、従来、縁当て部材を用いてバンドで締結する梱包は、複数の作業者を要するものであった。具体的には、一纏めにされる複数の梱包物へ縁当て部材を当てた状態に一部の作業員が押えておき、その間他の作業者がバンドや紐を押さえられている梱包物に掛けて締結する必要があった。しかし、本願発明に係る梱包材では上記の通り、縁当て部材へ水分を付着させて、梱包物に当てることにて、作業者か押さえていなくても、梱包物が崩れず、一人の作業者で、バンドや紐の締結を完了することができる。
【0095】
被着体1を梱包材とする具体的な例を
図2(A)〜(F)へ示す。
図2の各例において、梱包材1は、積み荷の角や縁を保護する上記エッジボードや緩衝材などの梱包資材である。
図2(A)へ示す例は、梱包する荷(梱包物k)を複数の箱体とするものである。
図2(A)へ示す通り、この例では、被着体1は、積み上げられた複数の梱包物のコーナー(辺)へ配置される断面略L字型の板材であり、当該L字の内側(谷側)の面が被着面2である。上記の塗布剤が塗布された被着面2を積み上げられた梱包物kの角(辺)に当てることにより、梱包物kへ梱包材である被着体1を固着することができる。このため作業者が梱包材(被着体1)や積み上げられた梱包物kを押さえてなくても、荷崩れを起こさずにバンドなどの締結帯mを締結することができる。
【0096】
図2(A)へ示す例は、略直方体である複数の梱包物kを積み上げて全体を直方体状の集合物としてまとめられるものを例示し、当該集合物が呈する直方体の各辺へ梱包材である上記被着体1を配置し固定するものとした。一方
図2(B)へ示す例では、梱包物kを上から上段k1、中段k2、下段k3の3つの塊としている。当該上段k1、中段k2、下段k3をなす各塊間へスペーサ(図示しない。)を介することにより、各塊間へ間隔が開けられている。
図2(B)へ示す例では、上記各塊は、複数の薄板或いは複数のシート状の部材を積み上げた集合物であり、塊が分離しないように、各塊毎に上記断面略L字型の梱包材が被着体1として固定されている。この場合も、当該梱包材により、塊を構成する薄板などを纏まった状態に固定した後、バンドなどの締結帯mを掛けることができる。
【0097】
また、
図2(C)へ示すように、梱包物kを内容物が詰められた複数の袋とし、当該袋の積み上げにより形成された集合体のコーナーへ、被着体1が固定されるものとしても実施できるし、
図2(D)へ示すように、パレットg上に載せられた複数のドラム状の積み荷の上辺へ上記被着体1を固定して、締結帯mを掛けることもできる。
更に
図2(E)へ示す通り、円柱を呈するロール状に巻かれた部材の両底面の縁へ緩衝材や保護材として環状に形成された上記被着体1を固定するものとしても実施できる。
また、
図2(F)へ示すように、ダンボール箱などの梱包箱n内部のコーナー部分に補強材、緩衝材或いは保護部材として上記被着体1を固定するものとしても実施できる。
【0098】
被着体1を前述の巻芯とする
図1(A)〜(C)へ示す場合や、
図2の各例において、例えば
図4へ示す容器3へ上記塗布剤tを収容して提供するものとし、需要者が現場で塗布剤tを巻芯や梱包資材へ塗布して被着体1として利用することができる。この他、被着体1として提供する前述の巻芯と同様、
図2の各例においても、当初より梱包材を被着体1として上記塗布剤を塗布したものを需要者へ提供するものとして実施できる。
図4において5は容器3の蓋を示し、4は容器3の口に設けられて容器3内の塗布剤tを吸って塗布することができるフェルトや布、網目状の部材でできた導出部を示す。導出部4を被着体1とする部材へ押し付けることにより、容器3内の塗布剤tを塗布することができる。但し、霧吹きなど
図4へ示す容器3以外の周知の塗布具により塗布剤tを塗布することを制限するものではない。
【0099】
また上記の通り、塗布剤tとして粘着剤を容器3へ詰め、使用時に適量を塗布(コーティング)することで、どの部分にも粘着剤を塗布(コーティング)することが可能となった。更に塗布剤tを着色することで、塗布後どこに塗布(コーティング)したかも容易に判別できる。
【0100】
(総括)
本願発明では、水分が塗布されていない未使用の状態では巻芯は束ねた他の巻芯や埃などの異物が付着せず、巻芯へ巻き取るシート材の端部を固定する際に巻芯表面に設けた被着面へ水分を塗布しシート材を張付けることにより即時に巻取りを開始でき、巻き取り後確実にシート材を巻芯へ接着しておくことができ、シート材としてプラスチックフィルムを使用する際には、シート材を巻芯から綺麗に剥がすことができるものを提供できた。
本願発明の上記被着体1の用途については、上記の巻芯や梱包材に限定するものではないが、特に上述してきた粘着性巻芯及び梱包資材として利用するのに適する。
即ち、本願発明に係る被着体1は、
a.巻芯と梱包資材(エッジボードなどの梱包資材)に事前に塗った状態で提供し、使用時に水を塗布することで、粘着力が向上するものとして利用するのに適する。
b.樹脂単品でも販売することで、顧客で使用する際に、必要な所に必要な量の樹脂を塗布することで巻き取ることや、粘着による仮固定が出来るものとし利用するのに適する。
即ち、巻芯において、水分の付着により一旦被着体1である巻芯へ貼着部材であるシート材を取り付けた後乾燥すれば確実に固定され、 シート材をプラスチックフィルムとした場合シート材をはがす際には綺麗にシート材が剥がれる。このようにフィルム製品と紙管が最後綺麗に剥がれ、紙管表面が破れないことから紙粉などの影響が軽減され、クリーンルーム内での使用も従来品よりも使い易くなった。