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特許6648063ステッピングモータの制御装置及びステッピングモータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648063
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】ステッピングモータの制御装置及びステッピングモータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/08 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   H02P8/08
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-78421(P2017-78421)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-182879(P2018-182879A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】竹田 光一
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】宮地 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 圭
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−261023(JP,A)
【文献】 特開昭61−240846(JP,A)
【文献】 特開2015−035926(JP,A)
【文献】 特開2012−016122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相コイルの一方の相及び他方の相のそれぞれの励磁電流を制御してロータを回転させるステッピングモータの制御装置であって、
前記ステッピングモータの起動時のロータロック動作を行うホールド期間に、前記ステッピングモータのロータを所定の初期位置まで移動させるホールド制御手段と、
前記ホールド期間の終了後に前記ステッピングモータの1相励磁運転を行う通常制御手段とを備え、
前記ホールド制御手段は、
前記ホールド期間が開始されてから前記ホールド期間が終了する時まで、前記一方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、
前記ホールド期間が開始されてから所定時間が経過する時まで、前記他方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が前記第1の所定値以下となるように漸次増加させ、
前記所定時間が経過した時より後で、前記ホールド期間が終了する時までに、前記他方の相の励磁電流をゼロに到達させ、
前記通常制御手段は、前記ホールド期間が終了したとき、最初に前記一方の相に前記ホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるようにして前記ステッピングモータの1相励磁運転を開始する、ステッピングモータの制御装置。
【請求項2】
前記ホールド制御手段は、前記所定時間が経過した時より後で、前記他方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第2の所定値以下となるように漸次減少させる、請求項1に記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項3】
前記ホールド制御手段は、前記ホールド期間が終了する時に前記他方の相の励磁電流がゼロに到達するように、前記他方の相の励磁電流の制御を行う、請求項1又は2に記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項4】
前記ホールド制御手段は、前記ホールド期間が終了する時よりも前に前記他方の相の励磁電流がゼロに到達するように、前記他方の相の励磁電流の制御を行う、請求項1又は2に記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項5】
前記ホールド制御手段は、前記所定時間が経過する時まで、前記一方の相の励磁電流の絶対値と前記他方の相の励磁電流の絶対値とが互いに等しくなるように制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項6】
2相コイルの一方の相及び他方の相のそれぞれの励磁電流を制御してロータを回転させるステッピングモータの制御方法であって、
前記ステッピングモータの起動時のロータロック動作を行うホールド期間に、前記ステッピングモータのロータを所定の初期位置まで移動させるホールド制御ステップと、
前記ホールド期間の終了後に前記ステッピングモータの1相励磁運転を行う通常制御ステップとを備え、
前記ホールド制御ステップは、
前記ホールド期間が開始されてから前記ホールド期間が終了する時まで、前記一方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、
前記ホールド期間が開始されてから所定時間が経過する時まで、前記他方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が前記第1の所定値以下となるように漸次増加させ、
前記所定時間が経過した時より後で、前記ホールド期間が終了する時までに、前記他方の相の励磁電流をゼロに到達させ、
前記通常制御ステップは、前記ホールド期間が終了したとき、最初に前記一方の相に前記ホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるようにして前記ステッピングモータの1相励磁運転を開始する、ステッピングモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステッピングモータの制御装置及びステッピングモータの制御方法に関し、特に、起動時にロータを初期位置に移動させた後に通常駆動に移行するステッピングモータの制御装置及びステッピングモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、複数のコイルに励磁電流を流してステータを磁化させ、ロータをステップごとに回転駆動する。ステッピングモータの起動時には、任意の位置にあるロータをステータと対向する位置(初期位置)に引き込むためのホールド電流をコイルに流し、初期位置でのロータの振動が収まった後に、駆動電流を流して通常駆動に移行する。このように通常駆動に移行する前にロータロック動作を行うことで、ステッピングモータの乱調を防ぎ、確実に起動することができる。
【0003】
ところで、ロータロック動作を行うとき、急激にホールド電流を流すと、ステッピングモータで振動音や衝撃音が発生するという課題がある。
【0004】
このような課題に関し、下記特許文献1には、ステッピングモータの起動時のホールド期間内に、ロータを所定の初期位置まで移動させるためにコイルに流す励磁電流を、単位時間当たりの変化量が所定値以下となるように漸次に増加させることが記載されている。このような制御方法によれば、起動時にステッピングモータのロータが初期位置へ緩やかに移動するので、振動音や衝撃音の発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−016122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されているようなステッピングモータの制御方法では、ホールド期間中は2相励磁状態でロータロック動作が行われる。この場合において、通常駆動時に1相励磁状態で駆動させるときには、ホールド期間から通常駆動への移行時に異音(振動音、騒音など)が発生するという問題がある。すなわち、この時、2相励磁状態から1相励磁状態への切り替えが行われると、ロータが急激に移動することにより、異音が発生する。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、モータの駆動に伴い発生する音の大きさを抑制可能なステッピングモータの制御装置及びステッピングモータの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、2相コイルの一方の相及び他方の相のそれぞれの励磁電流を制御してロータを回転させるステッピングモータの制御装置は、ステッピングモータの起動時のホールド期間に、ステッピングモータのロータを所定の初期位置まで移動させるホールド制御手段と、ホールド期間の終了後にステッピングモータの1相励磁運転を行う通常制御手段とを備え、ホールド制御手段は、ホールド期間が開始されてからホールド期間が終了する時まで、一方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、ホールド期間が開始されてから所定時間が経過する時まで、他方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、所定時間が経過した時より後で、ホールド期間が終了する時までに、他方の相の励磁電流をゼロに到達させ、通常制御手段は、ホールド期間が終了したとき、最初に一方の相にホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるようにしてステッピングモータの1相励磁運転を開始する。
【0009】
好ましくは、ホールド制御手段は、所定時間が経過した時より後で、他方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第2の所定値以下となるように漸次減少させる。
【0010】
好ましくは、ホールド制御手段は、ホールド期間が終了する時に他方の相の励磁電流がゼロに到達するように、他方の相の励磁電流の制御を行う。
【0011】
好ましくは、ホールド制御手段は、ホールド期間が終了する時よりも前に他方の相の励磁電流がゼロに到達するように、他方の相の励磁電流の制御を行う。
【0012】
好ましくは、ホールド制御手段は、所定時間が経過する時まで、一方の相の励磁電流の絶対値と他方の相の励磁電流の絶対値とが互いに等しくなるように制御する。
【0013】
この発明の他の局面に従うと、2相コイルの一方の相及び他方の相のそれぞれの励磁電流を制御してロータを回転させるステッピングモータの制御方法は、ステッピングモータの起動時のホールド期間に、ステッピングモータのロータを所定の初期位置まで移動させるホールド制御ステップと、ホールド期間の終了後にステッピングモータの1相励磁運転を行う通常制御ステップとを備え、ホールド制御ステップは、ホールド期間が開始されてからホールド期間が終了する時まで、一方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、所定時間が経過する時まで、他方の相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、ホールド期間が開始されてから所定時間が経過した時より後で、ホールド期間が終了する時までに、他方の相の励磁電流をゼロに到達させ、通常制御ステップは、ホールド期間が終了したとき、最初に一方の相にホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるようにしてステッピングモータの1相励磁運転を開始する。
【発明の効果】
【0014】
これらの発明に従うと、モータの駆動に伴い発生する音の大きさを抑制可能なステッピングモータの制御装置及びステッピングモータの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるステッピングモータの制御装置を示すブロック図である。
図2】励磁電流の波形の一例を示す図である。
図3】ホールド電流の起動時制御の一例を示す図である。
図4】制御装置の起動時制御の一例を説明するフローチャートである。
図5】時間の経過とステッピングモータで発生する音圧の大きさとの関係の一例を示すグラフである。
図6】本実施の形態の一変形例における励磁電流の波形の一例を示す図である。
図7】本実施の形態の変形例に係るホールド電流の変化パターンを示す第1の図である。
図8】本実施の形態の変形例に係るホールド電流の変化パターンを示す第2の図である。
図9】本実施の形態の変形例に係るホールド電流の変化パターンを示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態におけるステッピングモータの制御装置について説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるステッピングモータの制御装置を示すブロック図である。
【0019】
図1に示されるように、制御装置10は、ステッピングモータ20に駆動電圧を供給し、ステッピングモータ20を駆動させる。
【0020】
ステッピングモータ20は、ロータと、ステータと、ステータに巻回された複数のコイル(図示せず)とを備えている。ステッピングモータ20は、例えば、2相コイルを備えるものである。すなわち、ステッピングモータ20は、A相(一方の相の一例)とB相(他方の相の一例)とのコイルを備えている。制御装置10からステッピングモータ20へは、A相(+)、A相(−)、B相(+)、及びB相(−)のラインなどを経由して、駆動電圧が供給される。本実施の形態において、ステッピングモータ20は、例えば車載用エアコンのアクチュエータとして用いられるが、これに限られるものではない。
【0021】
制御装置10は、大まかに、制御回路(ホールド制御手段の一例、通常制御手段の一例)30と駆動回路40とを備えている。駆動回路40は、ステッピングモータ20のコイルに駆動電圧を印加する。制御回路30は、駆動回路40を制御し、駆動回路40により印加される駆動電圧を制御する。すなわち、制御装置10は、ステッピングモータ20の2相コイルに駆動電圧を印加し、それらのコイルに励磁電流を流す。制御装置10は、2相コイルのA相及びB相のそれぞれの励磁電流を制御して、ステッピングモータ20のロータを回転させる。後述するように、制御回路30(より具体的には、後述するCPU31)は、ステッピングモータ20の起動時のホールド期間に、ステッピングモータ20のロータを所定の初期位置まで移動させるホールド制御手段としての機能と、ホールド期間の終了後にステッピングモータ20の1相励磁運転を行う通常制御手段としての機能を備え、ホールド制御手段として、ホールド期間が開始されてからホールド期間が終了する時まで、A相(一方の相の一例)の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、ホールド期間が開始されてから所定時間が経過する時まで、B相(他方の相の一例)の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、所定時間が経過した時より後で、ホールド期間が終了する時までに、B相の励磁電流をゼロに到達させ、通常制御手段として、ホールド期間が終了したとき、最初にA相にホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるようにしてステッピングモータ20の1相励磁運転を開始する。
【0022】
制御回路30は、CPU(Central Processing Unit)31と、電流測定部32と、メモリ33とを有している。駆動回路40は、モータ駆動部41と、電流センシング部42とを有している。
【0023】
電流センシング部42及び電流測定部32は、ステッピングモータ20の各コイルに流れる励磁電流値を検出する。より具体的には、電流センシング部42は、例えば、シャント抵抗に励磁電流を流し、シャント抵抗での電圧降下を検出する。そして、電流測定部32は、電流センシング部42で検出された電圧降下に基づいて各コイルの励磁電流値を算出する。
【0024】
CPU31は、駆動電圧を制御するための制御信号を生成してモータ駆動部41に出力する。CPU31は、ステッピングモータ20の通常駆動時において、例えば励磁電流が所定の矩形波状になるように、制御信号を生成して出力する。なお、制御信号の波形はこれに限られるものではない。
【0025】
本実施の形態において、CPU31は、後述のように、ホールド制御手段として、ステッピングモータ20の起動時のホールド期間に、ステッピングモータ20のロータを所定の初期位置まで移動させる起動時制御を行う(ホールド制御ステップ)。また、CPU31は、通常制御手段として、ホールド期間の終了後にステッピングモータ20の1相励磁運転を行う(通常制御ステップ)。ホールド制御ステップは、ホールド期間が開始されてからホールド期間が終了する時まで、A相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、ホールド期間が開始されてから所定時間が経過する時まで、B相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させ、所定時間が経過した時より後で、ホールド期間が終了する時までに、B相の励磁電流をゼロに到達させる。また、通常制御ステップは、ホールド期間が終了したとき、最初にA相に前記ホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるようにしてステッピングモータ20の1相励磁運転を開始する。なお、ホールド期間は、例えば、予め定められた期間である。起動時制御では、それぞれの制御に基づいて、制御信号が生成され、出力される。本実施の形態において、制御信号は、例えば、パルス幅変調されたPWM信号である。
【0026】
モータ駆動部41は、CPU31から供給された制御信号に従って、パルス幅変調された信号(以下、PWM(Pulse Width Modulation)信号ということがある。)である駆動電圧を、ステッピングモータ20のコイルに印加する。
【0027】
このようにしてステッピングモータ20のコイルに駆動電圧が印加されると、励磁電流が流れてステータが磁化する。2相コイルのA相とB相とのそれぞれに流す励磁電流の向きを交互に切り替えることにより、ステータに励磁される磁極が変化し、ロータが回転する。
【0028】
図2は、励磁電流の波形の一例を示す図である。
【0029】
図2において、グラフの横軸は時間を示し、縦軸は励磁電流の値を示す。図2の上段においては、主にA相の励磁電流が、破線で示されるB相の励磁電流と共に示されている。下段においては、B相の励磁電流が示されている。
【0030】
図2に示されるように、時刻t10のステッピングモータ20の起動後、ホールド期間(時刻t10から時刻t12まで)と、通常駆動時の駆動期間(時刻t12以降)とのそれぞれで、制御装置10により異なる駆動制御が行われる。
【0031】
ホールド期間の終了後の駆動期間においては、通常の励磁電流(通常の励磁電流を駆動電流ということがある。)がコイルに流れるように、制御装置10から駆動電圧が印加される。本実施の形態において、駆動期間においては、ステッピングモータ20の1相励磁運転が行われる。図2においては、駆動電流の波形は簡略化して図示されている。駆動電流の波形は、所定の周期の正弦波状であってもよい。
【0032】
ここで、本実施の形態において、CPU31は、ステッピングモータ20の起動時のホールド期間に、ステッピングモータ20のロータを所定の初期位置まで移動させる起動時制御を行う。起動時制御では、A相とB相との両方に、ホールド電流が流れるように制御が行われる。
【0033】
[起動時制御に関する説明]
【0034】
図2に基づいて、具体例としての起動時制御が行われた場合の励磁電流の推移を説明すると、次のようである。まず、時刻t10にステッピングモータ20の起動が開始されると、CPU31の制御に基づいて、制御装置10は、ステッピングモータ20への駆動電圧の印加を開始する。制御装置10は、ホールド期間(時刻t10から時刻t12)において、時間の経過と共に、徐々に励磁電流の大きさを変化させる制御を行う。このような、ホールド期間中にロータを初期位置に移動させるためにコイルに流す励磁電流を、ホールド電流ということがある。本実施の形態において、ホールド期間の長さは予め定められており、例えば100ms(100ミリ秒)である。ホールド期間の長さは、ロータが初期位置に移動して振動が収まるまでに要する時間を考慮して適宜設定されればよい。
【0035】
図2に示される例では、ホールド期間において、A相(一方の相の一例)とB相(他方の相の一例)との両方に正方向(図2において上方向)の励磁電流が流れるが、これに限られるものではない。ホールド期間において、ロータの位置等によって、A相、B相のそれぞれに正方向又は負方向(正方向とは反対方向)の励磁電流が流れる場合が考えられる。すなわち、図2に示される「A相+、B相+」の場合のほか、「A相+、B相−」の場合、「A相−、B相+」の場合、「A相−、B相−」の場合があり得る。以下、特記しない場合には、これらの各場合を代表させて、図2に示されるようにA相とB相との両方に正方向の励磁電流が流される場合を例に挙げて説明する。
【0036】
本実施の形態において、CPU31は、時刻t10にホールド期間が開始されてから、ホールド期間が終了する時(時刻t12)まで、一方の相(ここではA相)の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させる。
【0037】
また、本実施の形態において、CPU31は、時刻t10にホールド期間が開始されてから所定時間が経過する時(時刻t11)まで、他方の相(ここではB相)の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように漸次増加させる。
【0038】
また、CPU31は、時刻t11(ホールド期間が開始されてから所定時間が経過した時)より後で、ホールド期間が終了する時(時刻t12)までに、B相の励磁電流を、ゼロに到達させる。本実施の形態では、CPU31は、時刻t11より後で、B相の励磁電流の絶対値を、単位時間当たりの変化量が第2の所定値以下となるように漸次減少させる。CPU31は、ホールド期間が終了する時刻t12に、B相の励磁電流がゼロに到達するように、B相の励磁電流の制御を行う。時刻t11から時刻t12を、B相の励磁電流の減衰期間ということがある。
【0039】
時刻t10から減衰期間が始まる時刻t11までの時間は、予め設定された時間であり、例えば60msである。上述のようにホールド期間の長さが予め設定されているため、減衰期間の長さ(時刻t11から時刻t12まで)も、予め設定された時間ということができ、例えば40msである。時刻t10から減衰期間が始まる時刻t11まで、A相の励磁電流の絶対値と、B相の励磁電流の絶対値とが、互いに等しくなるように制御される。すなわち、時刻t10から時刻t11まで、A相の励磁電流とB相の励磁電流とは、いずれも、時間の経過と共に線形に増加する。
【0040】
他方、時刻t11に減衰期間に入ると、後述するように、時刻t12までの間、A相の励磁電流の絶対値は到達電流値まで線形に増加する。B相の励磁電流の絶対値はゼロまで線形に減少する。これにより、時刻t12においては、A相の励磁電流値が到達電流値となり、B相の励磁電流はゼロとなる。
【0041】
このような起動時制御は、例えば次のようにしてCPU31の制御に基づいて行われる。すなわち、予め、ターゲット電流値が、例えば、メモリ33内に記憶されている。CPU31は、電流測定部32で算出された励磁電流値と、メモリ33に記憶されているターゲット電流値とを比較する。CPU31は、算出される励磁電流値がターゲット電流値に近づくように、ステッピングモータ20を駆動するためのデューティ比を調整する。CPU31は、調整したデューティ比に対応する制御信号を生成し、モータ駆動部41へ供給する。これにより、モータ駆動部41において、制御信号に応じたデューティ比のパルス幅変調された駆動電圧が生成される。ターゲット電流値は、例えば、メモリ33内に記憶されている。
【0042】
図3は、ホールド電流の起動時制御の一例を示す図である。図4は、制御装置10の起動時制御の一例を説明するフローチャートである。
【0043】
図3においては、A相について、図2の時刻t11付近における、モータ駆動部41により印加される駆動電圧の波形と、ターゲット電流及びホールド電流の波形とが拡大して示されている。同図において、時刻t20から時刻t22の期間や時刻t22から時刻t24の期間など、駆動電圧の立ち上がりから次の立ち上がりまでの期間は、PWM信号の周期Tに相当する。図4においては、PWM信号の1周期の間に行われる制御装置10の処理動作が示されている。
【0044】
本実施の形態において、CPU31は、起動時のホールド期間内に、時間の経過と共にデューティ比が大きくなるパルス幅変調された駆動電圧がコイルに印加されることで、ホールド電流が時間の経過と共に漸次に増加又は減少するように起動時制御を行う。これを、図3及び図4を参照しつつ説明する。
【0045】
まず、周期Tの開始時点である時刻t20で、CPU31は、制御信号をローからハイ(第1の値)に設定する(ステップS1)。これに応じて、モータ駆動部41は駆動電圧をローからハイにする。駆動電圧のロー及びハイは、例えば0V及び12Vにそれぞれ対応する。次に、電流センシング部42及び電流測定部32は、コイルに流れるホールド電流値を検出する(ステップS2)。時刻t20から時刻t21の直前まで、ホールド電流はターゲット電流より小さいため(ステップS3のNO)、CPU31は制御信号をハイ(第1の値;図4では、“1”と表現)に設定する(ステップS4)。この場合、駆動電圧はハイのままであり(ステップS1)、PWM信号のデューティ比(各周期におけるPWM信号のオン期間の比率)は大きくなる。駆動電圧がハイであると、コイルに流れる励磁電流は増加していく。
【0046】
時刻t21に、ホールド電流がターゲット電流に達すると(ステップS3のYES)、CPU31は制御信号をロー(第2の値;図4では、“0”と表現)に設定する(ステップS5)。これに応じて、モータ駆動部41は駆動電圧をローに設定し(ステップS6)、コイルへの駆動電圧の印加を停止する。以降、周期Tの終了時点である時刻t22まで駆動電圧はローである(ステップS6,S7)。周期Tに対する駆動電圧がハイである時刻t20から時刻t21の比がPWM信号のデューティ比である。
【0047】
駆動電圧がローである時刻t21から時刻t22では、コイルの両端には電圧が印加されないが、コイルのインダクタ成分のため、図3に示すように、ホールド電流は徐々に減少する。これにより、ホールド電流は、ターゲット電流より小さくなる。
【0048】
その後、次の周期の開始時点である時刻t22で、制御装置10は図4の処理動作を開始し、モータ駆動部41が駆動電圧を再びハイに設定する。これにより、ホールド電流は増加し始める。時刻t22から時刻t24の周期においては、時刻t20から時刻t22の周期よりもターゲット電流が増加している。そのため、時刻t20から時刻t21の期間よりも長い時刻t22から時刻t23の期間において駆動電圧がハイに設定される。
【0049】
このように、図2のホールド期間の間、図4の処理動作が繰り返し行われる。すなわち、CPU31は、ホールド電流の値がターゲット電流の値に達しない場合は、制御信号を、それまでと比較して駆動電圧のデューティ比が大きくなるようにハイに設定し、ホールド電流の値がターゲット電流の値に達している場合は、制御信号を、複数のコイルへの駆動電圧の印加が停止されるローに設定する。これにより、A相においては、PWM信号のデューティ比が徐々に大きくなり、ターゲット電流に従って図2に示されるように線形に増加するホールド電流が生成される。
【0050】
なお、B相においては、時刻t11以降に、ターゲット電流が徐々に減少する。そのため、PWM信号のデューティ比が徐々に小さくなり、ホールド電流が徐々に減少する。
【0051】
また、図3に示されるように、厳密には、ホールド電流は鋸歯状にリップルを伴いながら増加又は減少する。しかしながら、ホールド期間(時刻t10から時刻t12)に比べて、PWM信号の周期Tは十分に短い。例えば、ホールド期間が100msであるのに対し、PWM信号の周期Tは0.1ms程度である。そのため、ホールド電流は漸次に線形に増加又は減少するといえる。
【0052】
図2に戻って、本実施の形態において、ターゲット電流値は、A相とB相とのそれぞれについて設定されている。A相のターゲット電流値は、ホールド期間の終了時にA相の励磁電流値が所定の値(到達電流値)に達するように、時間の経過と共に電流が線形に増加するように設定されている。換言すると、A相のホールド電流値が到達電流値に達するタイミングと、ホールド期間の終了タイミングとは、同時になるように制御が行われる。
【0053】
ロータを初期位置まで引き込むことができるように、到達電流値は、例えば、駆動電流の最大値(起動時のホールド期間の終了後にコイルに流される励磁電流の最大値)の30パーセントから100パーセントまでの間の範囲に設定されている。例えば、スタート時(起動開始時)の到達電流値が、駆動電流の最大値の70パーセントの値に設定されている場合を想定する。このとき、ホールド期間において、駆動電流の最大値の0パーセントの値から、70パーセントの値すなわち到達電流値に到達するまで、ホールド電流の値が徐々に上昇(増加)するように制御が行われる。ホールド電流の値が到達電流値に到達して起動時のホールド期間が終了すると、駆動期間に入る。
【0054】
駆動期間では、CPU31は、励磁電流値を、到達電流値から急激に上昇させて、励磁電流値が駆動電流の最大値(100パーセントの値)をとる範囲で、安定した通常駆動を開始する。
【0055】
ここで、本実施の形態において、CPU31は、ホールド期間が終了したとき、最初にA相(一方の相の一例)にホールド期間の終了時と同じ極性で励磁電流が流れるように、ステッピングモータ20の1相励磁運転を開始する。
【0056】
すなわち、ホールド期間の終了時においてA相に正方向に励磁電流が流れているとき、1相励磁運転は、A相に正方向に励磁電流が流れる通電相から開始される。この最初の通電相では、B相(他方の相の一例)の励磁電流は、ゼロである。
【0057】
ホールド期間の終了時においてA相に負方向(正方向とは反対の方向)に励磁電流が流れているとき、1相励磁運転は、A相に負方向に励磁電流が流れる通電相から開始される。この最初の通電相では、B相の励磁電流はゼロである。
【0058】
なお、ホールド期間の終了時においてB相に正方向に励磁電流が流れているとき、1相励磁運転は、B相に正方向に励磁電流が流れる通電相から開始されてもよい。このとき、この最初の通電相では、A相の励磁電流は、ゼロとすればよい。
【0059】
ホールド期間の終了時においてB相に負方向(正方向とは反対の方向)に励磁電流が流れているとき、1相励磁運転は、B相に負方向に励磁電流が流れる通電相から開始されてもよい。このとき、この最初の通電相では、A相の励磁電流は、ゼロとすればよい。
【0060】
以上説明したように、起動時のホールド期間において、励磁電流(ホールド電流)の大きさが漸次増加するように制御が行われることにより、起動前にロータがどの位置にあっても、ロータがステータに対向する位置(初期位置)にゆっくりと引き込まれる。一方の相(本例ではA相)のホールド電流は到達電流値まで上昇し、他方の相(本例ではB相)のホールド電流はゼロまで減少する。ロータを初期位置に確実に引き込むことができる。ホールド期間の終了後、通常駆動動作が行われ、ステッピングモータ20が確実に動作する。ホールド期間において、一方の相のホールド電流や他方の相のホールド電流が増加するとき、単位時間当たりの変化量が第1の所定値以下となるように制御される。第1の所定値が大きいと、励磁電流の変化が急激となり、ロータが短時間に移動することによる音の発生が起こる可能性がある。第1の所定値が小さいと、励磁電流の変化が緩やかになってロータの移動に時間がかかるため、結果的にホールド期間が長くなり、初期位置までの移動に時間を要する。したがって、第1の所定値は、上記を考慮して、適切な値に設定される。そのため、ロータが起動前の位置から初期位置まで高速には移動しないので、ステッピングモータ20からの振動音や衝撃音等の騒音の発生を抑制できる。
【0061】
また、本実施の形態では、2相励磁を行っているホールド期間から、1相励磁運転が行われる駆動期間に切り替わるときに、異音の発生が抑制される。すなわち、ホールド期間において、当初はロータを初期位置に引き込むように2相励磁が行われるが、その途中からはB相の励磁電流がゼロに到達するまで漸減される減衰期間に入る。そのため、ホールド期間が終了する時刻t12においては、ロータの位置は、1相励磁運転の開始時の最初の通電相でA相にのみ励磁電流が流れている場合の位置になっている。したがって、時刻t12にホールド期間から駆動期間に切り替わり、1相励磁運転が開始される瞬間には、ロータはほとんど回転しない。したがって、ロータが急激に回転することにより起因する異音の発生を抑制することができる。ステッピングモータ20を用いる機器において、静粛性を向上させることができる。また、ステッピングモータ20を用いる機器について、ユーザが耳障りであると感じる音の発生を抑制することができる。減衰期間において、B相の励磁電流は、単位時間当たりの変化量が第2の所定値以下となるようにして漸減される。そのため、減衰期間においてロータが急激に回転することがなく、確実に異音の発生を抑制することができる。なお、第2の所定値は、ロータが初期位置に移動するまで(すなわち、A相の励磁電流が到達電流値に達するまで)にB相の励磁電流がゼロになるように設定すればよい。
【0062】
図5は、時間の経過とステッピングモータ20で発生する音圧の大きさとの関係の一例を示すグラフである。
【0063】
図5において、実線は、本実施の形態における音圧の大きさの測定時を示し、破線は、従来のような、ホールド期間の終了時まで2相に励磁電流が流れ、減衰期間が設けられていない場合における音圧の大きさの測定値を示す。従来では、図5の破線で示されるように、ステッピングモータ20で音が発生する場合、特に音圧が立ち上がる起動時にピークがあり、異音となることがわかる。これに対して、本実施の形態では、実線で示されるように、そのような起動時の音圧のピークは抑制されている。したがって、異音の発生を抑制することができる。
【0064】
図6は、本実施の形態の一変形例における励磁電流の波形の一例を示す図である。
【0065】
図6に示されるように、ホールド期間の終了から通常駆動期間の開始までの間にホールド終了時の励磁電流値がしばらく一定に維持される期間が挿入されるようにしてもよい。
【0066】
図6において、ホールド期間は時刻t10から時刻t12までであり、駆動期間は時刻t12から所定の期間(一定期間)だけ後のt13に開始される例が示されている。ここで、時刻t12から時刻t13までの間は、A相とB相とのそれぞれにおいて、ホールド期間の終了時の励磁電流の大きさ(A相は到達電流値、B相はゼロ)が、そのまま一定に維持されるようにしてもよい。これにより、上述と同様に、1相励磁運転に切り替わるときにロータが急激に回転することなく、異音の発生が抑制される。なお、上記の所定の期間は、ホールド期間に含むものと捉えてもよい。
【0067】
[起動時制御のホールド電流の変化パターンに関する説明]
【0068】
上述の実施の形態では、起動時制御は、ホールド期間内にA相のホールド電流とB相のホールド電流とのそれぞれが線形に変化するようにして行われていたが、このようなホールド電流の変化パターンは、線形に変化するものに限られない。例えば、各相のホールド電流は、図2に示されるように時間の経過と励磁電流の大きさとの関係を示したときに直線状、段階状、下に凸の曲線状、又は上に凸の曲線状に変化したりするように設定されていてもよい。このようなホールド電流の変化パターンは、ターゲット電流値の設定を適宜行うことで設定できる。
【0069】
例えば、減衰期間において、ホールド電流が漸次増加する一方の相(例えばA相)に対して、他方の相(例えばB相)のホールド電流の変化パターンも、種々設定することができる。他方の相のホールド電流が、ホールド期間の終了時にゼロになっていればよい。
【0070】
図7は、本実施の形態の変形例に係るホールド電流の変化パターンを示す第1の図である。図8は、本実施の形態の変形例に係るホールド電流の変化パターンを示す第2の図である。図9は、本実施の形態の変形例に係るホールド電流の変化パターンを示す第3の図である。
【0071】
図7図8及び図9においては、図2と同様にして、A相(一方の相の一例)とB相(他方の相の一例)との両方に正方向の励磁電流が流される場合について、各相の励磁電流の大きさの変化が示されている。実線はA相の励磁電流を示し、破線はB相の励磁電流を示す。なお、各図において、A相の励磁電流は上述の実施の形態と同様である。
【0072】
図7に示されるように、B相のホールド電流が、ホールド期間が終了する時よりも前にゼロに到達するように起動時制御が行われてもよい。例えば、B相のホールド電流は、減衰期間が開始された時刻t11から徐々にゼロに向けて減少し、減衰期間中の時刻t13にゼロになる。そして、時刻t13からホールド期間が終了する時刻t12までは、ゼロのまま維持される。
【0073】
また、図8に示されるように、B相のホールド電流の単位時間当たりの変化量(変化率)が、減衰期間中に変化してもよい。例えば、B相のホールド電流は、時刻t11から減衰期間中の時刻t13まで、所定の変化率で減少し、時刻t13から時刻t12まで、所定の変化率よりも大きな変化率で減少し、時刻t12にゼロになってもよい。
【0074】
また、図9に示されるように、B相のホールド電流が、減衰期間が開始された時刻t11にゼロに減少してもよい。このとき、時刻t11からホールド期間が終了する時刻t12まで、B相のホールド電流がゼロのまま維持されるようにすればよい。換言すると、ホールド期間において、時刻t11を境に、ロータを初期位置に引き込むための2相励磁状態から、1相励磁運転に備えた1相励磁状態に切り替えられてもよい。
【0075】
減衰期間においてこのようにB相のホールド電流が減少するいずれの場合であっても、上述の実施の形態と同様に、2相励磁を行っているホールド期間から、1相励磁運転が行われる駆動期間に切り替わるときに、異音の発生が抑制される。
【0076】
[その他]
【0077】
本発明は、上述の実施の形態のそれぞれの構成に限られるものではない。各実施の形態のそれぞれの特徴点を適宜組み合わせてステッピングモータの制御装置が構成されていてもよい。
【0078】
一方の相が到達電流値に到達したホールド期間の終了時において、他方の相の励磁電流は、厳密にはゼロではなくてもよく、略ゼロであればよい。また、ホールド期間において、減衰期間が開始されるまで、一方の相のホールド電流が他方の相のホールド電流と一致していなくてもよい。例えば、一方の相のホールド電流が他方の相のホールド電流よりも大きくてもよいし、その逆であってもよい。ロータを急激に回転させないようにローラを緩やかに初期位置に引き込むように、2相のホールド電流が制御されればよい。
【0079】
上述のフローチャートは具体例であって、このフローチャートに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【0080】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。すなわち、モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理により実現されるように構成されていてもよい。
【0081】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10 制御装置
20 ステッピングモータ
30 制御回路(ホールド制御手段の一例、通常制御手段の一例)
31 CPU
32 電流測定部
33 メモリ
40 駆動回路
41 モータ駆動部
42 電流センシング部
43 電圧制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9