(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について説明する。
本発明は、非晶質シリカを主成分とする母粒子(「母粒子」のことを以下では「シリカ微粒子」ともいう)の表面上に結晶性セリアを主成分とする子粒子を有し、さらにその子粒子の表面
の一部にシリカ被膜を有し、さらに下記[1]から[4]の特徴を備える平均粒子径50〜350nmのシリカ系複合微粒子を含む、シリカ系複合微粒子分散液である。
[1]前記シリカ系複合微粒子は、シリカとセリアとの質量比が100:11〜316であること。
[2]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供すると、セリアの結晶相のみが検出されること。
[3]前記シリカ系複合微粒子は、X線回折に供して測定される、前記結晶性セリアの結晶子径が10〜25nmであること。
[4]前記子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶していること。
このようなシリカ系複合微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
また、本発明の分散液が含むシリカ系複合微粒子を、以下では「本発明の複合微粒子」ともいう。
【0018】
また、本発明は、下記の工程1〜工程3を備え、本発明の分散液が得られる、シリカ系複合微粒子分散液の製造方法である。
工程1:シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を撹拌し、温度を5〜98℃、pH範囲を7.0〜9.0に維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る工程。
工程2:前記前駆体粒子分散液を乾燥させ、400〜1,200℃で焼成し、得られた焼成体に、次
の(ii)の処理をして焼成体解砕分散液を得る工
程。
(ii)溶媒を加えて、pH8.6〜10.8の範囲にて、湿式で解砕処理する。
工程3:前記焼成体解砕分散液を、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去することによりシリカ系複合微粒子分散液を得る工程。なお、相対遠心加速度とは、地球の重力加速度を1Gとして、その比で表したものである。
このようなシリカ系複合微粒子分散液の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0019】
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0020】
以下において、単に「本発明」と記した場合、本発明の分散液、本発明の複合微粒子及び本発明の製造方法のいずれをも意味するものとする。
【0021】
本発明の複合微粒子について説明する。
【0022】
<母粒子>
本発明の複合微粒子において、母粒子は非晶質シリカを主成分とする。
【0023】
本発明における母粒子に含まれるシリカが非晶質であることは、例えば、次の方法で確認することができる。母粒子(シリカ微粒子)を含む分散液(シリカ微粒子分散液)を乾燥させた後、乳鉢を用いて粉砕し、例えば、従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によってX線回折パターンを得ると、Cristobaliteのような結晶性シリカのピークは現れない。このことから、母粒子(シリカ微粒子)に含まれるシリカは非晶質であることを確認できる。
【0024】
また「主成分」とは、含有率が90質量%以上であることを意味する。すなわち、母粒子において、非晶質シリカの含有率は90質量%以上である。この含有率は95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。
以下に示す本発明の説明において「主成分」の文言は、このような意味で用いるものとする。
【0025】
母粒子は非晶質シリカを主成分とし、その他のもの、例えば、結晶性シリカや不純物元素を含んでもよい。
例えば、前記母粒子(シリカ微粒子)において、Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの各元素(以下、「特定不純物群1」と称する場合がある)の含有率が、それぞれ100ppm以下であることが好ましい。さらに50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることがよりいっそう好ましい。また、前記母粒子(シリカ微粒子)におけるU、Th、Cl、NO
3、SO
4及びFの各元素(以下、「特定不純物群2」と称する場合がある)の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。
一般に水硝子を原料として調製したシリカ微粒子は、原料水硝子に由来する前記特定不純物群1と前記特定不純物群2を合計で数千ppm程度含有する。
このようなシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液の場合、イオン交換処理を行って前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の含有率を下げることは可能であるが、その場合でも前記特定不純物群1と前記特定不純物群2が合計で数ppmから数百ppm残留する。そのため水硝子を原料としたシリカ粒子を用いる場合は、酸処理等で不純物低減させることも行われている。
これに対し、アルコキシシランを原料として合成したシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液の場合、通常、前記特定不純物群1及び前記特定不純物群2における各元素と各陰イオンの含有率は、それぞれ20ppm以下である。
なお、本発明において、母粒子(シリカ微粒子)におけるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO
3、SO
4及びFの各々の含有率は、それぞれ次の方法を用いて測定して求めた値とする。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びTh:ICP(誘導結合プラズマ発光分光分析)
・Cl:電位差滴定法
・NO
3、SO
4及びF:イオンクロマトグラフ
【0026】
後述のとおり本発明におけるシリカ系複合微粒子の平均粒子径は50〜350nmの範囲にあるので、その母粒子の平均粒子径は必然的に350nmより小さい値となる。なお、本願において母粒子の平均粒子径は、後述する本発明の製造方法が含む工程1で使用するシリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径と同じとする。この母粒子の平均粒子径が30〜330nmの範囲であるシリカ系複合微粒子が好適に使用される。
母粒子の平均粒子径が上記のような範囲にあると、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合にスクラッチが少なくなる。母粒子の平均粒子径が30nmよりも小さいと研磨レートが不足する傾向がある。平均粒子径が330nmよりも大きいと、かえって研磨レートが低下する傾向がある。また、基板の面精度が悪化する傾向がある。
【0027】
本発明における母粒子(シリカ微粒子)の平均粒子径は、動的光散乱法又はレーザー回折散乱法で測定された値を意味する。具体的には、次の方法で測定して得た値を意味するものとする。シリカ微粒子を水等に分散させ、シリカ微粒子分散液を得た後、このシリカ微粒子分散液を、公知の動的光散乱法による粒子径測定装置(例えば、日機装株式会社製マイクロトラックUPA装置や、大塚電子社製PAR−III)あるいはレーザー回折散乱法による測定装置(例えば、HORIBA社製LA―950)を用いて測定する。
なお、測定装置は各工程の目的や想定される粒子径や粒度分布に応じて使い分けられる。具体的には約100nm以下で粒度の揃った原料の単分散シリカ微粒子はPAR−IIIを用い、100nm以上とサイズが大きな単分散の原料シリカ微粒子はLA−950で測定し、解砕によりミクロンメーターからナノメーターまで粒子径が幅広く変化する解砕工程では、公知の動的光散乱法による粒子径測定装置や公知のレーザー回折散乱法による測定装置(好ましくはマイクロトラックUPAやLA−950)を用いることが好ましい。
【0028】
母粒子(シリカ微粒子)の形状は特に限定されず、例えば、球状、俵状、短繊維状、四面体状(三角錐型)、六面体状、八面体状、板状、不定形の他に表面に疣状突起を有するものや、金平糖状のものであってもよく、また、多孔質状のものであってもよいが、球状のものが好ましい。球状とは、単一粒子の母粒子の短径/長径比が0.8以下の粒子個数比が10%以下のものである。母粒子は、短径/長径比が0.8以下の粒子個数比が5%以下のものであることがより好ましく、0%のものであることがさらに好ましい。
短径/長径比は、後述する本発明の複合微粒子の短径/長径比の測定方法(画像解析法)と同様の方法で測定する。
【0029】
<子粒子>
本発明の複合微粒子は、上記のような母粒子の表面上に子粒子を有する。ここで、シリカ被膜が全体を被覆している子粒子が、シリカ被膜を介して母粒子に結合していてもよい。このような態様であっても、母粒子の表面上に子粒子が存在する態様であり、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0030】
本発明の複合微粒子において、子粒子は結晶性セリアを主成分とする。
【0031】
前記子粒子が結晶性セリアであることは、例えば、本発明の分散液を、乾燥させたのち乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気株式会社製、RINT1400)によって得たX線回折パターンにおいて、セリアの結晶相のみが検出されることから確認できる。なお、セリアの結晶相としては、Cerianite等が挙げられる。
【0032】
子粒子は結晶性セリア(結晶性Ce酸化物)を主成分とし、その他のもの、例えばセリウム以外の元素を含んでもよい。
ただし、上記のように、本発明の複合微粒子をX線回折に供するとセリアの結晶相のみが検出される。すなわち、セリア以外の結晶相を含んでいたとしても、その含有率は少ないため、X線回折による検出範囲外となる。
なお、「主成分」の定義は前述の通りである。
【0033】
子粒子について、本発明の複合微粒子をX線回折に供して測定される、結晶性セリアの結晶子径は10〜25nmであり、11〜23nmであることが好ましく、12〜20nmであることがより好ましい。
【0034】
結晶性セリアの結晶子径は、X線回折パターンの最大ピークの半値全幅から求められる。そして、例えば(111)面の平均結晶子径は10〜25nm(半値全幅は0.86〜0.34°)であり、11〜23nm(半値全幅は0.78〜0.37°)であることがこのましく、12〜20nm(半値全幅は0.79〜0.43°)であることがより好ましい。なお、多くの場合は(111)面のピークの強度が最大になるが、またその結晶面は(111)面(2θ=28度近傍)に限定されず、他の結晶面、例えば(100)面のピークの強度が最大であってもよい。その場合も同様に算出でき、その場合の平均結晶子径の大きさは、上記の(111)面の平均結晶子径と同じであってよい。
子粒子の平均結晶子径の測定方法を、(111)面(2θ=28度近傍)の場合を例として以下に示す。
初めに、本発明の複合微粒子を、乳鉢を用いて粉砕し、例えば従来公知のX線回折装置(例えば、理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面のピークの半価幅を測定し、下記のScherrerの式により、結晶子径を求めることができる。
D=Kλ/βcosθ
D:結晶子径(オングストローム)
K:Scherrer定数(ここでは、K=0.94)
λ:X線波長(1.7889オングストローム、Cuランプ)
β:半価幅(rad)
θ:反射角
【0035】
子粒子の大きさは、母粒子より小さく、平均粒子径11〜26nmであることが好ましく、12〜23nmであることがより好ましい。子粒子の大きさは、透過型電子顕微鏡を用いて30万倍に拡大した写真投影図(例えば後述する
図1(C))において、任意の50個の子粒子について平均粒子径を測定し、これらを単純平均して得た値を意味する。
【0036】
<シリカ被膜>
本発明の複合微粒子は、前記母粒子の表面上に前記子粒子を有し、さらにその子粒子の表面にシリカ被膜を有している。ここで、前記母粒子の表面に前記子粒子が結合しており、さらにそれらを覆うシリカ被膜を有していてもよい。すなわち、前記母粒子の表面に前記子粒子が結合してなる複合粒子の一
部をシリカ被膜が覆って
いる。よって、本発明の複合微粒子の最表面にはシリカ被膜が存在している。
【0037】
本発明の複合微粒子について透過型電子顕微鏡を用いて観察して得られる像(TEM像)では、母粒子の表面に子粒子の像が濃く現れるが、その子粒子の外側、すなわち、本発明の複合微粒子の表面側には、相対的に薄い像として、シリカ被膜が現れる。また、子粒子(セリア微粒子)が母粒子(シリカ微粒子)と結合している態様であってよく、シリカ被膜
が一部を被覆している子粒子が、シリカ被膜を介して母粒子に結合していてもよい。
また、本発明の複合微粒子をEDS分析に供し、元素分布を得ると、粒子の表面側にCe濃度が高い部分が現れるが、さらにその外側にSi濃度が高い部分が現れる。
また、上記のように透過型電子顕微鏡によって特定した前記シリカ被膜の部分に電子ビームを選択的に当てたEDS測定を行って当該部分のSi原子数%及びCe原子数%を求めると、Si原子数%が非常に高いことを確認することができる。具体的には、Ce原子数%に対するSi原子数%の比(Si原子数%/Ce原子数%)が0.9以上となる。
【0038】
このようなシリカ被膜は、子粒子(セリア結晶粒子)と母粒子(シリカ微粒子)の結合(力)を助長すると考えられる。よって、例えば、本発明の分散液を得る工程で、焼成して得られたシリカ系複合微粒子について湿式による解砕を行うことで、シリカ系複合微粒子分散液が得られるが、シリカ被膜により、子粒子(セリア結晶粒子)が母粒子(シリカ微粒子)から外れる事を防ぐ効果があるものと考えられる。この場合、局部的な子粒子の脱落は問題なく、また、子粒子の表面の全てがシリカ被膜で覆われていなくても良い。子粒子が解砕工程で母粒子から外れない程度の強固さがあれば良い。
このような構造を備えると、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨速度が高く、面精度やスクラッチの悪化が少ないと考えられる。
また、本発明の複合微粒子では子粒子の表面
の一部はシリカ層によって被覆されているので、本発明の複合微粒子の最表面(最外殻)にはシリカのOH基が存在することになる。このため研磨剤として利用した場合に、本発明の複合微粒子は研磨基板表面の−OH基による電荷で反発しあい、その結果、研磨基板表面への付着が少なくなると考えられる。
また遊離セリアは正の電荷をもつため基板へ付着しやすい。本発明の複合微粒子が子粒子の表面にシリカ被膜を有している場合、子粒子のセリア粒子が研磨時に脱落しても、その表面はシリカで覆われているため負の電荷を有しており、基板への付着を低減化する効果もある。
また、セリアはシリカや研磨基板、研磨パッドとは電位が異なり、pHはアルカリ性から中性付近でマイナスのゼータ電位が減少して行き、弱酸性領域では逆のプラスの電位を持つ。そのため電位の大きさの違いや極性の違いなどで研磨基材や研磨パッドに付着し、研磨基材や研磨パッドに残り易い。一方、本発明のシリカ系複合微粒子は、子粒子であるセリアがシリカ被膜で
その一部が覆われているため、pHがアルカリ性から酸性までマイナスの電位を維持するため、研磨基材や研磨パッドへの砥粒残りが起きにくい。
【0039】
シリカ被膜の厚さは、TEM像やSEM像から母粒子上のセリアの子粒子のシリカ被膜による被覆具合で概ね求められる。つまり、上記のように、TEM像では、母粒子の表面に粒子径が約20nm前後の子粒子の像が濃く現れ、その子粒子の外側に相対的に薄い像としてシリカ被膜が現れるので、子粒子の大きさと対比する事で、シリカ被膜の厚さを概ね求めることができる。この厚さは、SEM像から子粒子が凹凸としてハッキリ確認できて、TEM像からシリカ系複合微粒子の輪郭に凹凸が見られるのならば、シリカ被膜の厚さは20nmをはるかに下回る事が考えられる。一方、SEM像から子粒子の凹凸がはっきりせずに、TEM像からもシリカ系複合微粒子の輪郭に凹凸が見られないなら、シリカ被膜の厚さは約20nm前後であると考えられる。
【0040】
なお、上記のように、最外層(母粒子側の反対)のシリカ被膜は、子粒子(セリア微粒子)の全体を完全に覆っていなくてもよい。すなわち、本発明の複合微粒子の最表面にはシリカ被膜が存在しているが、シリカ被膜が存在していない部分があってもよい。また、シリカ系複合微粒子の母粒子が露出する部分が存在しても構わない。
【0041】
<本発明の複合微粒子>
本発明の複合微粒子は、上記のように、母粒子の表面に、上記のような子粒子を有している。
【0042】
本発明の複合微粒子において、シリカとセリアとの質量比は100:11〜316であり、100:30〜230であることが好ましく、100:30〜150であることがより好ましく、100:60〜120であることがさらに好ましい。シリカとセリアとの質量比は、概ね、母粒子と子粒子との質量比と同程度と考えられる。母粒子に対する子粒子の量が少なすぎると、母粒子同士が結合し、粗大粒子が発生する場合がある。この場合に本発明の分散液を含む研磨剤(研磨砥粒分散液)は、研磨基材の表面に欠陥(スクラッチの増加などの面精度の低下)を発生させる可能性がある。また、シリカに対するセリアの量が多すぎても、コスト的に高価になるばかりでなく、資源リスクが増大する。さらに、粒子同士の融着が進む。その結果、基板表面の粗度が上昇(表面粗さRaの悪化)したり、スクラッチが増加する、更に遊離したセリアが基板に残留する、研磨装置の廃液配管等への付着といったトラブルを起こす原因ともなりやすい。
なお、前記質量比を算定する場合の対象となるシリカとは、次の(I)〜(III)の全てを含むものである。
(I)母粒子を構成するシリカ成分
(II)母粒子に子粒子(セリア成分)が結合してなる複合微粒子を、覆ってなるシリカ被膜に含まれるシリカ成分
(III)セリア子粒子中に固溶しているシリカ成分
【0043】
本発明の複合微粒子におけるシリカ(SiO
2)とセリア(CeO
2)の含有率(質量%)は、まず本発明の複合微粒子の分散液(本発明の分散液)の固形分濃度を、1000℃灼熱減量を行って秤量により求める。
次に、所定量の本発明の複合微粒子に含まれるセリウム(Ce)の含有率(質量%)をICPプラズマ発光分析により求め、CeO
2質量%に換算する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO
2以外の成分はSiO
2であるとして、SiO
2質量%を算出することができる。
なお、本発明の製造方法においては、シリカとセリアの質量比は、本発明の分散液を調製する際に投入したシリカ源物質とセリア源物質との使用量から算定することもできる。これは、セリアやシリカが溶解し除去されるプロセスとなっていない場合に適用でき、そのような場合はセリアやシリカの使用量と分析値が良い一致を示す。
【0044】
本発明の複合微粒子はシリカ微粒子(母粒子)の表面に粒子状の結晶性セリア(子粒子)が焼結等して結合したものであってよい。この場合、本発明の複合微粒子は、凹凸の表面形状を有している。
すなわち、母粒子と子粒子との少なくとも一方(好ましくは双方)が、それらの接点において、焼結結合し、強固に結合していてもよい。ただし、シリカ被膜に覆われた子粒子が、そのシリカ被膜を介して母粒子と結合している場合もある。
【0045】
本発明の複合微粒子は、前記子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶していることを特徴としている。また、結晶性セリアにケイ素以外の元素が固溶していてもよい。一般に固溶とは、2種類以上の元素(金属の場合も非金属の場合もある)が互いに溶け合い、全体が均一の固相となっているものを意味し、固溶して得られる固溶体は、置換型固溶体と侵入型固溶体とに分類される。置換型固溶体は、原子半径が近い原子において容易に起こり得るが、CeとSiは原子半径が大きく違うため、少なくとも置換型固溶体は生じ難いと見られる。またCerianiteの結晶構造において、Ce中心からみたCeの配位数は8であるが、例えばSiがCeと1対1で置換した場合はCeの配位数は7となるはずである。しかし本発明の複合微粒子の分析結果においてはCe中心からみたCeの平均配位数は7.9で、さらにSiの平均配位数は1.1であることから、本発明の複合微粒子は侵入型であると推定している。そのうえ、本発明の複合微粒子の分析結果からも、隣接するCe−Siの原子間距離は、隣接するCe−Ceの原子間距離よりも小さいことから、本発明の複合微粒子は、侵入型固溶体であると推察される。すなわち、子粒子に含まれるセリウム原子およびケイ素原子について、セリウム−ケイ素原子間距離をR
1とし、セリウム−セリウム原子間距離をR
2としたときにR
1<R
2の関係を満たすことが好ましい。
従来、砥粒としてセリア粒子を用いてシリカ膜付基板やガラス基材を研磨すると、他の無機酸化物粒子を用いた場合に比べて、特異的に高い研磨速度を示すことが知られている。セリア粒子がシリカ膜付基板に対して、特に高い研磨速度を示す理由の一つとして、セリア粒子が被研磨基板上のシリカ被膜に対して、高い化学反応性を持つことが指摘されている。
本発明の複合微粒子は、その外表面側に存在する子粒子(セリア微粒子)において、Si原子がCeO
2結晶に侵入型の固溶をしていると見られる。Si原子の固溶により、CeO
2結晶の結晶歪みが生じることで、CeO
2の化学反応性を助長する結果、上記の高い研磨速度を示すものと推察される。
なお、上記のR
1、R
2等の、セリウム原子およびケイ素原子の原子間距離は、後述する実施例に説明する方法で測定して得た平均結合距離を意味するものとする。
【0046】
本発明の複合微粒子の形状は、格別に制限されるものではないが、実用上は、粒子連結型であることが好ましい。粒子連結型とは、2個以上の母粒子同士が各々一部において結合しているものを意味する。母粒子同士は少なくとも一方(好ましくは双方)がそれらの接点において溶着し、好ましくは双方が固着することで強固に結合しているものと考えられる。ここで、母粒子同士が結合した後に、その表面に子粒子が結合した場合の他、母粒子の表面に子粒子が結合した後、他のものに結合した場合であっても、粒子連結型とする。
連結型であると基板との接触面積を多くとることができるため、研磨エネルギーを効率良く基板へ伝えることができる。そのため、研磨速度が高い。また、粒子当たりの研磨圧力が単粒子よりも低くなるためスクラッチも少ない。
【0047】
本発明の複合微粒子において、画像解析法で測定された短径/長径比が0.80以下(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合は50%以上であることが好ましい。
ここで、画像解析法で測定された短径/長径比が0.80以下である粒子は、原則的に粒子結合型のものと考えられる。
【0048】
画像解析法による短径/長径比の測定方法を説明する。透過型電子顕微鏡により、本発明の複合微粒子を倍率25万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。これより、短径/長径比(DS/DL)を求める。そして、写真投影図で観察される任意の50個の粒子において、短径/長径比が0.80以下である粒子の個数割合(%)を求める。
【0049】
本発明の複合微粒子では、短径/長径比が0.80以下(好ましくは0.67以下)である粒子の個数割合が55%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。この範囲の本発明の複合微粒子は、研磨材として使用した際に、研磨速度が高くなり好ましい。
【0050】
本発明の複合微粒子は前述の粒子連結型であることがより好ましいが、その他の形状のもの、例えば球状粒子を含んでいてもよい。
【0051】
本発明の複合微粒子は、比表面積が4〜100m
2/gであることが好ましく、30〜60m
2/gであることがより好ましい。
【0052】
ここで、比表面積(BET比表面積)の測定方法について説明する。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
【0053】
本発明の複合微粒子の平均粒子径は50〜350nmであることが好ましく、170〜260nmであることがより好ましい。本発明の複合微粒子の平均粒子径が50〜350nmの範囲にある場合、研磨材として適用した際に研磨速度が高くなり好ましい。
本発明の複合微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法又はレーザー回折散乱法で測定された値を意味する。具体的には、次の方法で測定して得た値を意味するものとする。本発明の複合微粒子を水に分散させ、この複合微粒子分散液を、公知の動的光散乱法による粒子径測定装置(例えば、日機装株式会社製マイクロトラックUPA装置や、大塚電子社製PAR−III)あるいはレーザー回折散乱法による測定装置(例えば、HORIBA社製LA―950)を用いて測定する。
【0054】
本発明の複合微粒子において、前記特定不純物群1の各元素の含有率は、それぞれ100ppm以下であることが好ましい。さらに50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、1ppm以下であることがよりいっそう好ましい。また、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群2の各元素の含有率は、それぞれ5ppm以下であることが好ましい。本発明の複合微粒子における特定不純物群1及び前記特定不純物群2それぞれの元素の含有率を低減させる方法については、母粒子(シリカ微粒子)について述べた方法が適用できる。
なお、本発明の複合微粒子における前記特定不純物群1と前記特定不純物群2の各々の元素の含有率は、ICP(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて測定して求める値とする。
【0055】
本発明の複合微粒子は、前記特定不純物群1の各元素含有率がそれぞれ100ppm以下であり、前記特定不純物群2の各元素含有率がそれぞれ5ppm以下であることを特徴とする複合酸化物微粒子である場合と、必ずしもこの条件を満たさない複合酸化物微粒子である場合がある。このうち、前者は、高純度な研磨剤の適用が求められる用途、例えば、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスなどの研磨用途において研磨剤として好適に使用することができる。また、後者は、高純度な研磨剤の適用が求められない用途、例えば、ガラス研磨などに適用される。もちろん、前者は、高純度な研磨剤の適用が求められない用途にも当然に適用可能である。
【0056】
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
本発明の分散液は、上記のような本発明の複合微粒子が分散溶媒に分散しているものである。
【0057】
本発明の分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の分散液は、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
【0058】
また、本発明の分散液を備える分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
【0059】
本発明の分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
【0060】
本発明の分散液は、カチオンコロイド滴定を行った場合に、下記式(1)で表される流動電位変化量(ΔPCD)と、クニックにおけるカチオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が―110.0〜―15.0となる流動電位曲線が得られるものであることが好ましい。
ΔPCD/V=(I−C)/V・・・式(1)
C:前記クニックにおける流動電位(mV)
I:前記流動電位曲線の開始点における流動電位(mV)
V:前記クニックにおける前記カチオンコロイド滴定液の添加量(ml)
【0061】
ここで、カチオンコロイド滴定は、固形分濃度を1質量%に調整した本発明の分散液80gにカチオンコロイド滴定液を添加することで行う。カチオンコロイド滴定液として、0.001Nポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム溶液を用いる。その他の測定条件は文献やメーカー推奨の常法にのっとって好適な方法で行われる。
【0062】
このカチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線とは、カチオン滴定液の添加量(ml)をX軸、本発明の分散液の流動電位(mV)をY軸に取ったグラフである。
また、クニックとは、カチオンコロイド滴定によって得られる流動電位曲線において急激に流動電位が変化する点(変曲点)である。そして点(変曲点)における流動電位をC(mV)とし、点(変曲点)におけるカチオンコロイド滴定液の添加量をV(ml)とする。
流動電位曲線の開始点とは、滴定前の本発明の分散液における流動電位である。具体的には、カチオンコロイド滴定液の添加量が0である点を開始点とする。この点における流動電位をI(mV)とする。
【0063】
上記のΔPCD/Vの値が−110.0〜−15.0であると、本発明の分散液を研磨剤として用いた場合、研磨剤の研磨速度がより向上する。このΔPCD/Vは、本発明の複合微粒子表面におけるシリカ被膜の被覆具合及び/又は複合微粒子の表面における子粒子の露出具合あるいは脱離しやすいシリカの存在を反映していると考えられる。ΔPCD/Vの値が上記範囲内であると、湿式による解砕時において子粒子は脱離する事が少なく、研磨速度も高いと本発明者は推定している。逆にΔPCD/Vの値が−110.0よりもその絶対値が大きい場合は、複合微粒子表面がシリカ被膜で全面覆われているため解砕工程にて子粒子脱落は起き難いが研磨時にシリカが脱離しがたく研磨速度が低下する。一方、−15.0よりもその絶対値が小さい場合は脱落が起きやすいと考えられる。上記範囲内であると、研磨時において子粒子表面が適度に露出して子粒子の脱落が少なく、研磨速度がより向上すると本発明者は推定している。ΔPCD/Vは、−100.0〜−15.0であることがより好ましく、−100.0〜−20.0であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明の分散液は、そのpH値を3〜8の範囲とした場合に、カチオンコロイド滴定を始める前、すなわち、滴定量がゼロである場合の流動電位がマイナスの電位となるものであることが好ましい。これは、この流動電位がマイナスの電位を維持する場合、同じくマイナスの表面電位を示す研磨基材への砥粒(シリカ系複合微粒子)の残留が生じ難いからである。
【0065】
本発明の分散液の製造方法は特に限定されないが、次に説明する本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0066】
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は以下に説明する工程1〜工程3を備える。
【0067】
<本発明の製造方法>
<工程1>
工程1ではシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を用意する。
本発明の製造方法により、半導体デバイスなどの研磨に適用するシリカ系複合微粒子分散液を調製しようとする場合は、シリカ微粒子分散液として、アルコキシシランの加水分解により製造したシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を用いることが好ましい。なお、従来公知のシリカ微粒子分散液(水硝子を原料として調製したシリカ微粒子分散液等)を原料とする場合は、シリカ微粒子分散液を酸処理し、更に脱イオン処理して使用することが好ましい。この場合、シリカ微粒子に含まれるNa、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U、Th、Cl、NO
3、SO
4及びFの含有率が少なくなり、具体的には、100ppm以下となり得るからである。
なお、具体的には、工程1で使用する原料であるシリカ微粒子分散液中のシリカ微粒子として、次の(a)と(b)の条件を満たすものが好適に使用される。
(a)Na、Ag、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn及びZrの含有率が、それぞれ100ppm以下。
(b)U、Th、Cl、NO
3、SO
4及びFの含有率が、それぞれ5ppm以下。
【0068】
シリカ微粒子は、平均粒子径が30〜330nmの範囲にあって、画像解析法で測定された短径/長径比が0.95〜1.0の範囲にあるものであることが好ましい。
【0069】
工程1では、上記のようなシリカ微粒子が溶媒に分散したシリカ微粒子分散液を撹拌し、温度を5〜98℃、pH範囲を7.0〜9.0に維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子を含む前駆体粒子分散液を得る。
【0070】
前記シリカ微粒子分散液における分散媒は水を含むことが好ましく、水系のシリカ微粒子分散液(水ゾル)を使用することが好ましい。
【0071】
前記シリカ微粒子分散液における固形分濃度は、SiO
2換算基準で1〜40質量%であることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると、製造工程でのシリカ濃度が低くなり生産性が悪くなり得る。
【0072】
また、陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂、あるいは鉱酸、有機酸等で不純物を抽出し、限外ろ過膜などを用いて、必要に応じて、シリカ微粒子分散液の脱イオン処理を行うことができる。脱イオン処理により不純物イオンなどを除去したシリカ微粒子分散液は表面にケイ素を含む水酸化物を形成させやすいのでより好ましい。なお、脱イオン処理はこれらに限定されるものではない。
【0073】
工程1では、上記のようなシリカ微粒子分散液を撹拌し、温度を5〜98℃、pH範囲を7.0〜9.0に維持しながら、ここへセリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加する。
セリウムの金属塩は限定されるものではないが、セリウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属アルコキシドなどを用いることができる。具体的には、硝酸第一セリウム、炭酸セリウム、硫酸第一セリウム、塩化第一セリウムなどを挙げることができる。なかでも、硝酸第一セリウムや塩化第一セリウムが好ましい。中和と同時に過飽和となった溶液から、結晶性セリウム酸化物が生成し、それらは速やかにシリカ微粒子に凝集沈着機構で付着するので結合性酸化物形成の効率が高く好ましい。しかしこれら金属塩に含まれる硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオンなどは、腐食性を示す。そのため調合後に後工程で洗浄し5ppm以下に除去する必要がある。一方、炭酸塩は炭酸ガスとして調合中に放出され、またアルコキシドは分解してアルコールとなるため、好ましい。
【0074】
シリカ微粒子分散液に対するセリウムの金属塩の添加量は、得られる本発明の複合微粒子におけるシリカとセリアとの質量比が、前述のように、100:11〜316の範囲となる量とする。
なお、本発明のシリカ系複合微粒子分散液の製造方法において、セリウムの金属塩は、通常、セリウムの金属塩に水又は水系溶媒、酸などを加えてセリウム金属塩水溶液としたものが使用される。セリウム金属塩水溶液のセリア濃度は、格別に制限されるものではないが、作業性等を考慮すると、セリア濃度は1〜40質量%の範囲が好ましい。
【0075】
シリカ微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した後、撹拌する際の温度は5〜98℃であることが好ましく、10〜95℃であることがより好ましい。この温度が低すぎるとシリカの溶解度が著しく低下するため、セリアの結晶化が制御されなくなり、粗大なセリアの結晶性酸化物が生成して、シリカ微粒子(母粒子)への付着が起こり難くなる事が考えられる。
逆に、この温度が高すぎるとシリカの溶解度が著しく増し、結晶性のセリア酸化物の生成が抑制される事が考えられる。更に、反応器壁面にスケールなどが生じやすくなり好ましくない。
【0076】
また、撹拌する際の時間は0.5〜24時間であることが好ましく、0.5〜18時間であることがより好ましい。この時間が短すぎると結晶性の酸化セリウムが十分に形成できないため好ましくない。逆に、この時間が長すぎても結晶性の酸化セリウムの形成はそれ以上反応が進まず不経済となる。なお、前記セリウム金属塩の添加後に、所望により5〜98℃で熟成しても構わない。熟成により、セリウム化合物が母粒子に沈着する反応をより促進させることができる。
【0077】
また、シリカ微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加し、撹拌する際のシリカ微粒子分散液のpH範囲は7.0〜9.0とするが、7.6〜8.6とすることが好ましい。この際、アルカリ等を添加しpH調整を行うことが好ましい。このようなアルカリの例としては、公知のアルカリを使用することができる。具体的には、アンモニア水溶液、水酸化アルカリ、アルカリ土類金属、アミン類の水溶液などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
このような工程1によって、本発明の複合微粒子の前駆体である粒子(前駆体粒子)を含む分散液(前駆体粒子分散液)が得られる。
【0079】
工程1で得られた前駆体粒子分散液を、工程2に供する前に、純水やイオン交換水などを用いて、さらに希釈あるいは濃縮して、次の工程2に供してもよい。
【0080】
なお、前駆体粒子分散液における固形分濃度は1〜27質量%であることが好ましい。
【0081】
また、所望により、前駆体粒子分散液を、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、限外ろ過膜、イオン交換膜、遠心分離などを用いて脱イオン処理してもよい。
【0082】
工程1は、より好適には、シリカ微粒子分散液の温度範囲を5〜52℃とし、pH範囲を7.0〜9.0に維持しながら、セリウムの金属塩を連続的又は断続的に添加し、前駆体粒子分散液を調製し、更に該前駆体粒子分散液を温度5〜52℃で熟成することにより行われる。工程1をこのような条件で行った場合、セリウムの金属塩あるいは水酸化セリウムがシリカと液相で反応し、セリウムシリケート化合物が生成し、セリアの結晶成長が阻害される。また同時にセリア微結晶も生成し、母粒子上にセリウムシリケート化合物及びセリアの微結晶が形成される。
【0083】
<工程2>
工程2では、前駆体粒子分散液を乾燥させた後、400〜1,200℃で焼成する。
【0084】
乾燥する方法は特に限定されない。従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。具体的には、箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等を使用することができる。
なお、好適には、さらに乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とすることが推奨される。乾燥前の前駆体粒子分散液のpHを6.0〜7.0とした場合、強固な凝集体が生成することを抑制できるからである。
乾燥後、焼成する温度は400〜1200℃であるが、800〜1100℃であることが好ましく、1000〜1090℃であることがより好ましい。このような温度範囲において焼成すると、母粒子上のセリウムシリケート化合物からセリウムが拡散してセリアの結晶化が十分に進行し、その結果セリア粒子はシリカ層で被覆される。また、セリア微粒子の表面に存在するシリカ被膜が、適度に厚膜化し、母粒子と子粒子とが強固に結合する。また、このような温度範囲において焼成すると、子粒子の主成分である結晶性セリアにケイ素原子が固溶する。したがって、子粒子に含まれるセリウム原子およびケイ素原子について、セリウム−ケイ素原子間距離をR
1とし、セリウム−セリウム原子間距離をR
2としたときに、R
1<R
2の関係を満たすものとなり得る。この温度が高すぎると、セリアの結晶が異常成長したり、セリア粒子上のシリカ被膜が厚くなり母粒子との結合が進むが、セリアの子粒子を厚く覆う事も予想され、母粒子を構成する非晶質シリカが結晶化したり、粒子同士の融着が進む可能性もある。
【0085】
工程2では、焼成して得られた焼成体に次
の(ii)の処理をして焼成体解砕分散液を得る
。
(ii)溶媒を加えて、pH8.6〜10.8(好ましくは9.0〜10.6)の範囲にて、湿式で解砕処理する
。
湿式の解砕装置としても従来公知の装置を使用することができるが、例えば、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等、ロータ・ステータ式ホモジナイザー、超音波分散式ホモジナイザー、分散液中の微粒子同士をぶつける衝撃粉砕機等の湿式媒体攪拌式ミル(湿式解砕機)が挙げられる。湿式媒体攪拌ミルに用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石等を原料としたビーズを挙げることができる。
前
記(ii)
の処理におい
て、溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が使用される。例えば、純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。また
、(ii)の処理により得られる焼成体解砕分散液の固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、例えば、0.3〜50質量%の範囲にあることが好まし
い。
【0086】
なお、前記(ii)の湿式による解砕を行う場合は、溶媒のpHを8.6〜10.8(好ましくは9.0〜10.6)に維持しながら湿式による解砕を行うことが好ましい。pHをこの範囲に維持すると、カチオンコロイド滴定を行った場合に、前記式(1)で表される、流動電位変化量(ΔPCD)と、クニックにおけるカチオンコロイド滴定液の添加量(V)との比(ΔPCD/V)が−110.0〜−15.0となる流動電位曲線が得られるシリカ系複合微粒子分散液を、最終的により容易に得ることができる。
すなわち、前述の好ましい態様に該当する本発明の分散液が得られる程度に、解砕を行うことが好ましい。前述のように、好ましい態様に該当する本発明の分散液を研磨剤に用いた場合、研磨速度がより向上するからである。これについて本発明者は、本発明の複合微粒子表面におけるシリカ被膜が適度に薄くなること、及び/又は複合微粒子表面の一部に子粒子が適度に露出することで、研磨速度がより向上し、且つセリアの子粒子の脱落を制御できると推定している。また、シリカ被膜が薄いか剥げた状態であるため、子粒子が研磨時にある程度脱離しやすくなると推定している。ΔPCD/Vは、−100.0〜−15.0であることがより好ましく、−100.0〜−20.0であることがさらに好ましい。
【0087】
<工程3>
工程3では、工程2において得られた前記焼成体解砕分散液について、相対遠心加速度300G以上にて遠心分離処理を行い、続いて沈降成分を除去し、シリカ系複合微粒子散液を得る。
具体的には、前記焼成体解砕分散液について、遠心分離処理による分級で粗大粒子や短径/長径比が0.8未満の連結粒子の除去を行う。遠心分離処理における相対遠心加速度は300G以上とする。遠心分離処理後、沈降成分を除去し、シリカ系複合微粒子分散液を得ることができる。相対遠心加速度の上限は格別に制限されるものではないが、実用上は10,000G以下で使用される。
工程3では、上記の条件を満たす遠心分離処理を備えることが必要である。遠心加速度が上記の条件に満たない場合は、シリカ系複合微粒子分散液中に粗大粒子が残存するため、シリカ系複合微粒子分散液を用いた研磨材などの研磨用途に使用した際に、スクラッチが発生する原因となる。
本発明では、上記の製造方法によって得られるシリカ系複合微粒子分散液を、更に乾燥させて、シリカ系複合微粒子を得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、従来公知の乾燥機を用いて乾燥させることができる。
【0088】
このような本発明の製造方法によって、本発明の分散液を得ることができる。
また、シリカ微粒子分散液にセリウムの金属塩を添加した際に、調合液の還元電位が正の値をとることが望ましい。酸化還元電位が負となった場合、セリウム化合物がシリカ粒子表面に沈着せずに板状・棒状などのセリウム単独粒子が生成するからである。酸化還元電位を正に保つ方法として過酸化水素などの酸化剤を添加したり、エアーを吹き込む方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
<研磨用砥粒分散液>
本発明の分散液を含む液体は、研磨砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。特にはSiO
2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨砥粒分散液として好適に使用することができる。
ここで本発明の研磨用砥粒分散液を用いてシリカ膜が形成された半導体基板を平坦化する場合、本発明の研磨用砥粒分散液のpHを3〜8とすることが好ましい。
【0090】
本発明の研磨用砥粒分散液は半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のキズ(スクラッチ)が少ない、基板への砥粒の残留が少ないなどの効果に優れている。
【0091】
本発明の研磨用砥粒分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の研磨用砥粒分散液は、添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いることができる。
【0092】
<研磨促進剤>
本発明の研磨用砥粒分散液には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
【0093】
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩及びこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0094】
本発明の研磨用砥粒分散液が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0095】
<界面活性剤及び/又は親水性化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤又は親水性化合物を添加することができる。界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
【0096】
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
【0097】
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
【0098】
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0099】
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩及びカリウム塩が好ましい。
【0100】
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステル及びアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
【0101】
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は、何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
【0102】
本発明の研磨用砥粒分散液が界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0103】
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
【0104】
界面活性剤又は親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
【0105】
<複素環化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液を適用する被研磨基材に金属が含まれる場合、金属に不動態層又は溶解抑制層を形成させることで被研磨基材の侵食を抑制するために、本発明の研磨用砥粒分散液へ複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
本発明の研磨用砥粒分散液に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
【0107】
<pH調整剤>
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸又は塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
【0108】
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
【0109】
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類の様な、塩酸、硝酸などの鉱酸が使用される。
【0110】
<pH緩衝剤>
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩及びホウ酸塩又は有機酸などを使用することができる。
【0111】
また、本発明の研磨用砥粒分散液の分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
【0112】
本発明の研磨用砥粒分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると研磨速度が低下する可能性がある。逆に固形分濃度が高すぎても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ないので、不経済となり得る。
【実施例】
【0113】
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0114】
<実験1>
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第1表に記す。
【0115】
[成分の分析]
[シリカ微粒子(母粒子)]
後述するシリカ微粒子分散液のSiO
2重量について、珪酸ナトリウムを原料としたシリカ微粒子の場合は1000℃灼熱減量を行って秤量により求めた。またアルコキシシランを原料としたシリカ微粒子の場合は、シリカ微粒子分散液を150℃で1時間乾燥させた後に秤量して求めた。
【0116】
[シリカ系複合微粒子]
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
初めに、シリカ系複合微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z−2310)で測定する。
次に、100mlのメスフラスコにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びThについてICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
以下、特に断りがない限り、本発明におけるNa、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、K、Mg、Ni、Ti、Zn、Zr、U及びThの成分の含有率(含有量)は、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
【0117】
各陰イオンの含有率は、以下の方法によって測定するものとする。
<Cl>
シリカ系複合微粒子分散液からなる試料20g(固形分20質量%)にアセトンを加え100mlに調整し、この溶液に、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT−610)で分析を行う。
別途ブランク測定として、アセトン100mlに酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で滴定を行った場合の滴定量を求めておき、試料を用いた場合の滴定量から差し引き、試料の滴定量とした。
【0118】
<NO
3、SO
4、F>
シリカ系複合微粒子分散液からなる試料5g(固形分20質量%)を水で希釈して100mlのメスフラスコにおさめ、50mlの遠沈管に入れて、遠心分離機(日立製 HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、沈降成分を除去して得た液をイオンクロマトグラフ(DIONEX製 ICS−1100)にて分析した。
【0119】
<SiO
2、CeO
2>
シリカ系複合微粒子におけるシリカとセリアの含有率を求める場合、まずシリカ系複合微粒子分散液の固形分濃度を、1000℃灼熱減量を行って秤量により求める。次にCeについて、Al〜Th等と同様にICPプラズマ発光分析装置(例えば、SII製、SPS5520)を用いて標準添加法で測定を行い、得られたCe含有率からCeO
2質量%を算出する。そして、本発明の複合微粒子を構成するCeO
2以外の成分はSiO
2であるとして、SiO
2質量%を算出する。
【0120】
なお、シリカ微粒子(母粒子)における各元素又は各陰イオンの含有率は、上記シリカ系複合微粒子の分析方法において、試料をシリカ系複合微粒子分散液に代えて、シリカ微粒子分散液を用いることにより行った。
【0121】
[X線回折法、結晶子径の測定]
前述の方法に則り、実施例及び比較例で得られたシリカ系複合微粒子分散液を従来公知の乾燥機を用いて乾燥し、得られた粉体を乳鉢にて10分粉砕し、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)によってX線回折パターンを得て、結晶型を特定した。
また、前述のように、得られたX線回折パターンにおける2θ=28度近傍の(111)面(2θ=28度近傍)のピークの半値全幅を測定し、Scherrerの式により、結晶子径を求めた。
【0122】
<平均粒子径>
実施例及び比較例で得られたシリカ微粒子分散液及びシリカ系複合微粒子分散液について、これに含まれる粒子の平均粒子径を前述の方法で測定した。具体的には、シリカ微粒子分散液については大塚電子社製PAR−IIIを用い、シリカ系複合微粒子分散液についてはHORIBA社製LA950装置を用いた。
ここで、PAR−IIIの測定条件は以下の通りである。
あらかじめ準備しておいた0.56質量%濃度のアンモニア水をシリカ微粒子分散液へ添加して固形分濃度が1.0質量%となるように調整し、プラスチック製の測定セルに充填した。測定時はPINHOLE SELECTORとATTENUATOR FILTERで散乱強度が8000〜12000となるように光量を調整し、溶媒の屈折率は水の値を使用して測定を行った。
また、LA−950測定条件は以下の通りである。
LA−950V2のバージョンは7.02、アルゴリズムオプションは標準演算、固体の屈折率1.450、溶媒(純水)の屈折率1.333、反復回数は15回、サンプル投入バスの循環速度は5、撹拌速度は2とし、あらかじめこれらを設定した測定シーケンスを使用して測定を行った。そして、測定サンプルをスポイトを使用して原液のまま装置のサンプル投入口に投入した。ここで透過率(R)の数値が90%になるように投入した。そして、透過率(R)の数値が安定した後、超音波を5分間照射し粒子径の測定を行った。
【0123】
<短径/長径比率>
実施例及び比較例で得られたシリカ微粒子分散液及びシリカ系複合微粒子分散液が含む各粒子について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;日立製作所社製、型番:S−5500)を用いて倍率25万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とした。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とした。そして、比(DS/DL)を求めた。この測定を任意の50個の粒子について行い、単一粒子としての短径/長径比が0.8以下の粒子の個数比率(%)を求めた。
【0124】
[研磨試験方法]
<SiO
2膜の研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたシリカ系複合微粒子分散液を含む分散液(研磨用砥粒分散液)を調整した。ここで固形分濃度は0.6質量%で硝酸を添加してpHは5.0とした。
次に、被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO
2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備した。
次に、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.5MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を50ml/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さRa)を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
なお研磨傷の観察は、5枚の基板を研磨し光学顕微鏡を用いて絶縁膜表面を観察することで行った。評価基準は以下の通り。
・5枚を観察して、線状痕が多すぎて目視でカウントできない・・・「非常に多い」
・5枚を観察して、1枚でも線状痕が認められた・・・「有り」
・5枚を観察して、線状痕が認められなかった・・・・「明確には認められない」
【0125】
<アルミハードディスクの研磨>
実施例及び比較例の各々において得られたシリカ系複合微粒子分散液を含む分散液(研磨用砥粒分散液)を調整した。ここで固形分濃度は9質量%で硝酸を添加してpHを2.0に調整した。
アルミハードディスク用基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「ポリテックスφ12」)を使用し、基板負荷0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用砥粒分散液を20ml/分の速度で5分間供給して研磨を行い、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Maicro―Max)を使用し、調整リングでZoom15の拡大レベルに調整して全面観察し、65.97cm
2に相当する研磨処理された基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計し、次の基準に従って評価した。
線状痕の個数 評 価
50個未満 「非常に少ない」
50個から80個未満 「少ない」
80個以上 「多い」
少なくとも80個以上で総数をカウントできない程多い 「※」
【0126】
<準備工程1>
《高純度珪酸液》の調製
SiO
2濃度が24.06質量%、Na
2O濃度が7.97質量%の珪酸ナトリウム水溶液を用意した。そして、この珪酸ナトリウム水溶液にSiO
2濃度が5.0質量%となるように純水を添加した。
【0127】
[酸性珪酸液]
得られた5.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h
-1で通液させ、pHが2.7の酸性珪酸液18kgを得た。
得られた酸性珪酸液のSiO
2濃度は4.7質量%であった。
【0128】
[高純度珪酸液]
次に、酸性珪酸液を、強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h
-1で通液させ、pHが2.7の高純度珪酸液を得た。得られた高純度珪酸液のSiO
2濃度は4.4質量%であった。
【0129】
《シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:25nm)》の調製
514.5gの高純度珪酸液を攪拌しながら、純水42gへ添加し、次いで、さらに15%のアンモニア水を1,584.6g添加し、その後83℃に昇温して30分保持した。
次に、さらに高純度珪酸液13,700gを18時間かけて添加し、添加終了後に83℃を保持したまま熟成を行い、25nmのシリカ微粒子分散液を得た。
得られたシリカ微粒子分散液を40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度を12質量%まで濃縮した。
【0130】
《シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:45nm)》の調製
963gの12質量%の25nmシリカ微粒子分散液を攪拌しながら、純水991gへ加えた。次いで、さらに15%アンモニア水1,414gを添加し、その後87℃に昇温して30分保持した。
次に、さらに高純度珪酸液12,812gを18時間かけて添加し、添加終了後に87℃を保持したまま熟成を行い、45nmのシリカ微粒子分散液を得た。
得られたシリカ微粒子分散液を40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度を12質量%まで濃縮した。
【0131】
《シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:70nm)》の調製
平均粒子径45nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液(SiO
2濃度12質量%)を705g用意し、これを撹拌しながら、純水705gへ加えた。次いで、さらに15%アンモニア水50gを添加し、その後87℃に昇温して30分保持した。
次に、さらに高純度珪酸液7,168gを18時間かけて添加し、添加終了後に87℃を保持したまま熟成を行い、平均粒子径70nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を得た。なお、ここでシリカ微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法(動的光散乱法粒子径測定装置:PAR−III)によって測定して得られた値である。
得られたシリカ微粒子分散液を40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度を12質量%まで濃縮した。
【0132】
《シリカ微粒子分散液(シリカ微粒子の平均粒子径:96nm)》の調製
平均粒子径70nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなる分散液(SiO
2濃度:12質量%)を1,081g用意し、これを撹拌しながら、純水1,081gへ加えた。次いで、さらに15%アンモニア水50gを添加し、その後87℃に昇温して30分保持した。
次に、さらに高純度珪酸液6,143gを18時間かけて添加し、添加終了後に87℃を保持したまま熟成を行い、平均粒子径96nmのシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液を得た。なお、ここでシリカ微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法(動的光散乱法粒子径測定装置:PAR−III)によって測定して得られた値である。
得られたシリカ微粒子分散液を40℃まで冷却し、限外ろ過膜(旭化成製SIP1013)にてSiO
2濃度を12質量%まで濃縮した。濃縮後のシリカ微粒子分散液に陰イオン交換樹脂 三菱化学社製 SANUP Bを添加して陰イオンを除去した。
【0133】
<準備工程2>
準備工程1で得られた96nmのシリカ微粒子分散液に超純水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液6,000gを得た。
【0134】
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO
2換算で2.5質量%のB液を得た。
【0135】
次に、A液(6,000g)を50℃まで昇温して、撹拌しながら、ここへB液(8,453g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)を18時間かけて添加した。この間、液温を50℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH7.85を維持するようにした。
そして、B液の添加が終了したら、液温を93℃へ上げて4時間熟成を行った。熟成終了後に室内に放置することで放冷し、室温まで冷却した後に、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄し電気伝導度が75μS/cmまで洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液Aは、固形分濃度が7質量%で、レーザー回折散乱法粒子径(HORIBA社製LA−950)は4.6μm[メジアン径]であった。
【0136】
<準備工程3>
次に準備工程2で得られた前駆体粒子分散液Aに3質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整して、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1062℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
【0137】
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9.2に調整した後、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)にて湿式解砕(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)を120分行った。解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は7質量%で回収重量は1200gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。
次いで得られた焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、675Gで3分間処理し、軽液(沈降成分を除去した上澄み液)を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。シリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.208μm(208nm)であった。
【0138】
<実施例1>
実施例1では、準備工程3で得られたシリカ系複合微粒子分散液について2回目の解砕処理および遠心分離処理を行った。その方法について以下に説明する。なお、2回目の解砕処理および遠心分離処理を行って得られたシリカ系複合微粒子分散液も、当然、本発明の分散液に相当する。
準備工程3で得られたシリカ系複合微粒子分散液にイオン交換水を添加して固形分濃度を20質量%に調整した液を1kg準備した。そして、この液について、解砕機(アシザワファインテック社製、LMZ−06)を用いて解砕した。ここで解砕はφ0.25mmの石英ビーズを用い、充填率を85%とし、周速を10m/sとし、1L/分の条件で循環させて80分解砕した。なお、解砕機の粉砕室及び配管中にイオン交換水が残存するため解砕時の濃度は10質量%であった。また解砕中は3%のアンモニアを添加してpHを9.2に保った。解砕後に粉砕室を水押しして回収した固形分は9.3質量%であった。
次いで解砕した分散液を、遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度:1700Gで102秒処理した。そして、軽液を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。得られたシリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.196μm(196nm)であった。
【0139】
得られたシリカ系複合微粒子分散液に含まれるシリカ系複合微粒子についてX線回折法によって測定したところ、Cerianiteの回折パターンが見られた。
【0140】
次にシリカ系複合微粒子分散液を用いて研磨試験を行った。また、研磨用砥粒分散液に含まれるシリカ系複合微粒子の短径/長径比を測定した。
なお、原料としたシリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径、シリカ微粒子の不純物の含有率、シリカ系複合微粒子におけるシリカ100質量部に対するセリアの質量部、シリカ系複合微粒子調製時の焼成温度、シリカ系複合微粒子の結晶子径、結晶型、シリカ系複合微粒子に含まれる不純物の含有率、シリカ系複合微粒子の平均粒子径、シリカ系複合微粒子の短径/長径比が0.8以下の粒子個数比及び研磨性能(研磨速度、表面粗さ、SiO
2膜の研磨における研磨傷の観察結果、アルミハードディスクの研磨におけるスクラッチ個数)の測定結果を第1表〜第3表に示す。以降の実施例、比較例も同様である。
【0141】
<実施例2>
実施例2では、準備工程3で得られたシリカ系複合微粒子分散液について2回目の解砕処理および遠心分離処理を行った。その方法について以下に説明する。なお、2回目の解砕処理および遠心分離処理を行って得られたシリカ系複合微粒子分散液も、当然、本発明の分散液に相当する。
準備工程3で得られたシリカ系複合微粒子分散液にイオン交換水を添加して固形分濃度5質量%に調整した。次いでKOKUSAN社製、高速遠心分離機H−660で4Lローターを使用し、相対遠心加速度:10,000G、通液速度1L/分の条件で通液させ、遠心分離を行った。遠心分離した後に得られたシリカ微粒子分散液は、固形分が1.8%濃度であり、レーザー回折散乱法で測定した平均粒子径が0.200μm(200nm)[メジアン径]であった。
【0142】
<実施例3>
準備工程2で得られた前駆体粒子分散液Aを4.0kg準備した。そして、これを解砕機(アシザワファインテック社製、LMZ−06)を用いて解砕した。ここで解砕はφ0.25mmの石英ビーズを用い、充填率を60%とし、周速を8m/sとし、2L/分の条件で20パスさせて解砕を行った。なお、前駆体粒子分散液Aの解砕中は、ここへアンモニア水などの添加は行わなかった。解砕後の前駆体微粒子分散液AのpHは9.0であった。また、解砕後の前駆体微粒子分散液Aについてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.225μmであった。
次に、解砕後の前駆体微粒子分散液Aに3質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整し、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1062℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9.2に調整した後、解砕機(カンペ(株)製、バッチ式卓上サンドミル)を用いて湿式で60分間、解砕処理を行った。解砕処理では、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)を用いた。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。このようにして固形分濃度2.4質量%の焼成体解砕分散液1020gを得た。
さらに焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度:1700Gで102秒処理し、軽液を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。得られたシリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.198μm(198nm)であった。
【0143】
<実施例4>
準備工程1で得られたシリカ微粒子分散液に超純水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液6,000gを得た。
【0144】
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO
2換算で2.5質量%のB液を得た。
【0145】
次に、A液6,000g(dry180g)を18℃に保ち、これを撹拌しながら、ここへB液8,453g(dry211.3g)を18時間かけて添加した。この間、液温を18℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH7.7を維持するようにした。添加終了後に、液温18℃で4時間熟成を行った。その後、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が4.3質量%、pHが4.3(25℃にて)、電導度が170μs/cm(25℃にて)であった。
【0146】
次に得られた前駆体粒子分散液を120℃の乾燥機中で16時間乾燥させた後、1030℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
【0147】
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を加えてpHを9.2に調整した後、解砕機(カンペ(株)製、バッチ式卓上サンドミル)を用いて湿式で90分間、解砕処理を行った。解砕処理では、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)を用いた。そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。なお、解砕中はアンモニア水溶液を添加して、pHを9.2に保った。このようにして固形分濃度3.1質量%の焼成体解砕分散液1115gを得た。
さらに焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度:1700Gで102秒処理し、軽液を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。得られたシリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.194μm(194nm)であった。
【0148】
また、実施例4で得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子についてSEM,TEMを用いて観察した。SEM像とTEM像(50,000倍)を
図1(a)、(b)に示す。
【0149】
さらに、実施例4で得られたシリカ系複合微粒子分散液に含まれるシリカ系複合微粒子のX線回折パターンを
図2に示す。
【0150】
図2のX線回折パターンでは、かなりシャープなCerianiteの結晶であり、TEMやSEM像からセリア結晶粒子がシリカ表面と強く焼結しているように見える。
また、
図1からは、シリカ系複合微粒子の最表面に、薄いシリカ被膜が覆うように存在している様子が観察された。
【0151】
<実施例5>
準備工程1で得られたシリカ微粒子分散液にイオン交換水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液6,000gを得た。
【0152】
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO
2換算で2.5質量%のB液を得た。
【0153】
次に、A液(6,000g)を50℃まで昇温して、撹拌しながら、ここへB液(8,453g、SiO
2の100質量部に対して、CeO
2が117.4質量部に相当)を18時間かけて添加した。この間、液温を50℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH7.85を維持するようにした。
そして、B液の添加が終了したら、液温を93℃へ上げて4時間熟成を行った。熟成終了後に室内に放置することで放冷し、室温まで冷却した後に、限外膜にてイオン交換水を補給しながら洗浄し、電気伝導度が75μS/cmまで洗浄を行った。洗浄を終了して得られた前駆体粒子分散液は、固形分濃度が7質量%、pHが9.1(25℃にて)、レーザー回折散乱法粒子径(HORIBA社製LA−950)は4.6μmであった。
【0154】
次に得られた前駆体粒子分散液に3質量%酢酸水溶液を加えてpHを6.5に調整して、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1062℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
【0155】
得られた焼成体310gと、イオン交換水430gとを、1Lの柄付きビーカーに入れ、そこへ3%アンモニア水溶液を加え、撹拌しながら超音波浴槽中で10分間超音波を照射し、pH10(温度は25℃)の懸濁液を得た。
次に、事前に設備洗浄を行った解砕機(アシザワファインテック株式会社製、LMZ06)にφ0.25mmの石英ビーズ595gを投入し、水運転を行った。さらに上記の懸濁液を解砕機のチャージタンクに充填した(充填率85%)。なお、解砕機の粉砕室及び配管中に残留したイオン交換水を考慮すると、解砕時の濃度は25質量%である。そして、解砕機におけるディスクの周速を12m/sec、パス回数を25回、及び1パス当たりの滞留時間を0.43分間とする条件で湿式解砕を行った。また、解砕時の懸濁液のpHを10に維持するように、パス毎に3%アンモニア水溶液を添加した。このようにして、固形分濃度22質量%の焼成体解砕分散液を得た。
次いで得られた焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度675Gで3分間、遠心分離処理し、沈降成分を除去し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。得られたシリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.208μm(208nm)であった。
【0156】
<実施例6>
準備工程1の過程において得られた平均粒子径70nmのシリカ微粒子分散液にイオン交換水を添加してSiO
2固形分濃度が3.0質量%のA液6,000gを得た
次に、硝酸セリウム(III)6水和物にイオン交換水を加え、CeO
2換算で3.0質量%のB液を得た。
次に、A液6,000g(dry180.0g)を15.5℃に冷却して、撹拌しながら、ここへB液7044.2g(dry211.3g)を18時間かけて添加した。この間、液温を15.5℃に維持しておき、また必要に応じて3.0質量%のアンモニア水を添加して、pHを8.3〜8.6となるように保った。そして、B液の添加が終了したら、液温を15.5℃に保ったまま4時間熟成を行った。なお、A液へB液を添加している間および熟成中は調合液にエアーを吹き込みつづけ、酸化還元電位を100〜200mVに保った。
熟成終了後は、限外膜を用いてろ過した後にイオン交換水を補給して洗浄する作業を、電気伝導度が26μS/cmまで繰り返し行い、前駆体粒子分散液を得た。
次に、得られた前駆体粒子分散液に3.0質量%の酢酸を加えてpHを6.5に調整し、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1064℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3.0質量%のアンモニア水溶液を加えてpH10.0に調整した後、解砕機(カンペ(株)製、バッチ式卓上サンドミル)を用いて湿式で270分間、解砕処理を行った。解砕処理では、φ0.25mmの石英ビーズを用いた。そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。なお、解砕中はアンモニア水溶液を添加して、pHを10.0に保った。このようにして固形分濃度6.6質量%の焼成体解砕分散液1151gを得た。
さらに焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度:1700Gで102秒処理し、軽液(沈降成分を除去した上澄み液)を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。そして、得られたシリカ系複合微粒子分散液について実施例1と同様に評価を行った。
【0157】
<実施例7>
準備工程1で得られた96nmのシリカ微粒子分散液に超純水を加えて、SiO
2固形分濃度3質量%のA液2,500gを得た。
【0158】
次に、硝酸セリウム(III)6水和物(関東化学社製、4N高純度試薬)にイオン交換水を加え、CeO
2換算で3.0質量%のB液を得た。
【0159】
次に、A液2,500g(dry75g)を18℃まで昇温して、撹拌しながら、ここへB液5,833.3g(dry175g)を18時間かけて添加した。この間、液温を18℃に維持しておき、また、必要に応じて3%アンモニア水を添加して、pH7.8を維持するようにした。そして、B液の添加が終了したら、液温を18℃に保ったまま4時間熟成を行った。なお、A液へB液を添加している間および熟成中は調合液にエアーを吹き込みつづけ、酸化還元電位を100〜200mVに保った。
熟成終了後は、限外膜を用いてろ過した後にイオン交換水を補給して洗浄する作業を、電気伝導度が26μS/cmまで繰り返し行い、前駆体粒子分散液を得た。洗浄終了後の前駆体粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.33μmであった。
【0160】
次に得られた前駆体粒子分散液に3質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整し、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1028℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
【0161】
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3.0質量%のアンモニア水溶液を加えてpH10.0に調整した後、解砕機(カンペ(株)製、バッチ式卓上サンドミル)を用いて湿式で120分間、解砕処理を行った。解砕処理では、φ0.25mmの石英ビーズを用いた。そして、解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。なお、解砕中はアンモニア水溶液を添加して、pHを9.2に保った。このようにして固形分濃度7.2質量%の焼成体解砕分散液1121gを得た。
さらに焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、相対遠心加速度:675Gで3分間し、軽液(沈降成分を除去した上澄み液)を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。そして、得られたシリカ系複合微粒子分散液について実施例1と同様に評価を行った。
【0162】
<比較例1>
準備工程1で得られた96nmのシリカ微粒子分散液について、平均粒子径等の各測定を行った。
【0163】
<比較例2>
準備工程2で得られた前駆体粒子分散液Aについて、平均粒子径等の各測定を行った。
【0164】
<比較例3>
0.7質量%のアンモニア水3.63kgを準備し、これを93℃に昇温した(A液)。次いでCeO
2として1.6質量%の硝酸セリウム溶液5.21kg(B液)を準備し、A液にB液を1時間かけて添加した。添加終了後は93℃を保持して3時間熟成を行った。熟成後の溶液のpHは8.4であった。熟成した溶液を冷却後、相対遠心加速度:5000Gで遠心分離し、上澄み液を除去した。そして、沈殿したケーキにイオン交換水を加えて撹拌してレスラリーを行い、再度、相対遠心加速度:5000Gで遠心分離を行う処理を、スラリーの電導度が100μS/cm以下になるまで繰り返した。電導度が100μS/cm以下となったスラリーを固形分濃度6.0質量%に調整して超音波で分散し、セリア微粒子分散液を得た。
得られたセリア微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.116μmであった。
またX線で結晶子径、結晶型を測定したところ、結晶子径は18nmで、Cerianiteの結晶型を示した。
このセリア微粒子分散液を硝酸でpHを5.0に調整し、固形分濃度0.6質量の研磨用砥粒分散液を得た。この研磨用砥粒分散液で熱酸化膜の研磨を行った。結果を第1表〜第3表に示す。
【0165】
<比較例4>
次に準備工程2で得られた前駆体粒子分散液Aに3質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整して、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1250℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
【0166】
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9.2に調整した後、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)にて湿式解砕(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)を120分行った。解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は7.1質量%で回収重量は1183gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。
次いで得られた焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、675Gで3分間処理し、軽液(沈降成分を除去した上澄み液)を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。シリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.221μm(221nm)であった。
【0167】
<比較例5>
次に準備工程2で得られた前駆体粒子分散液Aに3質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整して、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、390℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
【0168】
得られた焼成体100gにイオン交換水300gを加え、さらに3%アンモニア水溶液を用いてpHを9.2に調整した後、φ0.25mmの石英ビーズ(大研化学工業株式会社製)にて湿式解砕(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)を120分行った。解砕後に44メッシュの金網を通してビーズを分離した。得られた焼成体解砕分散液の固形分濃度は7.2質量%で回収重量は1167gであった。なお、解砕中にはアンモニア水溶液を添加してpHを9.2に保った。
次いで得られた焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、型番「CR21G」)にて、675Gで3分間処理し、軽液(沈降成分を除去した上澄み液)を回収し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。シリカ系複合微粒子分散液についてレーザー回折散乱法(HORIBA社製LA−950)を用いて平均粒子径(メジアン径)を測定したところ、0.194μm(194nm)であった。
【0169】
<比較例6>
準備工程2で得られた前駆体粒子Aに3質量%酢酸を加えてpHを6.5に調整して、120℃の乾燥機中で15時間乾燥させた後、1250℃のマッフル炉を用いて2時間焼成を行い、粉状の焼成体を得た。
得られた焼成体310gにイオン交換水430gを加え、さらに3.0質量%のアンモニア水を加えて、pH11.0に調整した後、撹拌しながら超音波浴槽中で10分間超音波を照射して懸濁液を得た。
次に事前に設備洗浄をおこなった解砕機(アシザワファインテック株式会社製、LMZ06)にφ0.25mmの石英ビーズ595gを投入し、水運転を行った。さらに上記懸濁液を解砕機のチャージタンクに充填した(充填率85%)。なお、解砕機の粉砕室及び配管中に残留したイオン交換水を考慮すると、解砕時の濃度は25質量%である。そして、解砕機におけるディスクの周速を14m/秒、パス回数30回とする条件で湿式解砕を行った。また解砕時の懸濁液のpHを11に維持するように、パス毎に3%アンモニア水溶液を添加した。このようにして、固形分濃度20質量%の焼成体解砕分散液を得た。
次いで得られた焼成体解砕分散液を遠心分離装置(日立工機株式会社製、CR21G)にて相対遠心加速度675Gで3分間、遠心分離を行い、沈降成分を除去し、シリカ系複合微粒子分散液を得た。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
<実験2> 被膜のEDS組成分析
実施例4で得られたシリカ系複合微粒子分散液が含むシリカ系複合微粒子について、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−2100F、電界放射型透過電子顕微鏡(Cs補正付属)、加速電子:120kV、倍率:50,000倍)を用いて観察し、子粒子(セリア結晶粒子)の外側に被膜が存在することを確認し、その後、この被膜の部分へ選択的に電子ビームを当てたEDS測定を行った。
エネルギー分散型X線分光測定(EDS)の測定条件を以下に示す。
シリカ系複合微粒子を純水中で分散させた後、カーボン支持膜付きCuメッシュに載せて、以下の測定装置にて測定を行った。
測定装置:日本電子社製、UTW型Si(Li)半導体検出器
ビーム系:0.2nm
【0174】
透過型電子顕微鏡を用いて観察して得た写真(TEM像)を
図5(a)(b)に示す。そして、
図5(a)(b)によって確認された子粒子(セリア結晶粒子)の外側にシリカ被膜の部分へ選択的に電子ビームを当てたEDS測定の結果、1.74keV付近にSiの強度ピークが現れ、4.84keV付近にCeの強度ピークが現れた。そしてSi原子数%は0.836atom%、Ceの原子数%は0.277であり、Siの原子数%/Ceの原子数%は3.018と算出された。同様に実施例1、7、比較例1、3についても同様の測定を行った結果を第4表に示す。なお、比較例1、3は被膜が確認されなかった。
【0175】
【表4】
【0176】
<実験3>
実施例2、4、7及び比較例3、6で得られた各シリカ系複合微粒子分散液について、流動電位の測定及びカチオンコロイド滴定を行った。滴定装置として、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した自動滴定装置AT−510(京都電子工業製)を用いた。
まず、固形分濃度を1質量%に調整したシリカ系複合微粒子分散液へ0.05%の塩酸水溶液を添加してpH6に調整した。次に、その液の固形分として0.8gに相当する量を100mlのトールビーカーに入れ、流動電位の測定を行った。次にカチオンコロイド滴定液(0.001Nポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム溶液)を5秒間隔、1回の注入量0.2ml、注入速度2秒/mlで20mlを添加して滴定を行った。そして、カチオンコロイド滴定液の添加量(ml)をX軸、シリカ系複合微粒子分散液の流動電位(mV)をY軸にプロットして、流動電位曲線の開始点における流動電位I(mV)、ならびにクニックにおける流動電位C(mV)及びカチオンコロイド滴定液の添加量V(ml)を求め、ΔPCD/V=(I−C)/Vを算出した。結果を第5表に示す。また流動電位曲線を
図4に示す。
【0177】
【表5】
【0178】
<実験4>
[Si固溶状態の測定]
実施例5で調製したシリカ系複合微粒子分散液を、X線吸収分光測定装置(Rigaku社製のR−XAS Looper)を用いて、CeL III吸収端(5727eV)におけるX線吸収スペクトルを測定し、そのX線吸収スペクトルに現れるEXAFS振動を得た。解析にはRigaku製ソフトウエアREX−2000を使用し、セリウム周辺の酸素及びセリウムの平均配位原子数N、平均結合距離Rを得た。結果を第6表に示す。
第6表の結果から、セリウムの周辺には酸素、ケイ素およびセリウムが存在し、セリウム−酸素原子間距離は2.4Åで、セリウム―セリウム原子間距離は3.8Åであるのに対して、セリウム−ケイ素の原子間距離は3.2Åであることが確認された。またXRDの分析結果から、セリウムはCerianiteの結晶型でCeO
2として存在していることから、酸化セリウム中にSiが固溶していると考えられる。
実施例1、実施例4、比較例3、比較例4についても同様に測定を行った。結果を第6表に示す。
【0179】
【表6】