【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は下記の実施形態を採用する。結晶シリコン太陽電池のテクスチャー構造の調製方法であって、
(1)シリコンウエハーの表面に多孔質層構造を形成する工程と、
(2)アルカリ性薬液で洗浄する工程と、
(3)残留した金属粒子を第1洗浄液で除去する工程と、
(4)フッ化水素酸と酸化剤との混合溶液である第1化学エッチング液で表面エッチングを行って結晶シリコン太陽電池のテクスチャー構造を得る工程と、を含む。
【0011】
上記では、前記多孔質層構造は従来技術に属し、多孔質シリコン構造、ナノワイヤ構造などを含む。
【0012】
前記工程(4)における酸化剤は、硝酸、過酸化水素水、クロム酸、または、過マンガン酸カリウム水溶液、であってもよい。
【0013】
第一の実施形態では、前記工程(1)において、酸化剤および金属塩を含むフッ化水素酸溶液にシリコンウエハーを投入して多孔質層構造を形成する。このとき、温度は25〜90℃、時間は10〜1000秒である。
【0014】
好ましくは、酸化剤および金属塩を含むフッ化水素酸溶液において、
金属イオンの濃度が1×10
−3mol/L以下、または、
金属イオンの濃度が1×10
−3mol/Lより大きいと同時にフッ化水素酸の濃度が1×10
−2mol/L以下、である。
【0015】
或いは、前記工程(1)において、先ずシリコンウエハーを、金属イオンを含んで且つ金属イオンの濃度が1×10
−3mol/L以下、または、金属イオンの濃度が1×10
−3mol/Lより大きいと同時にフッ化水素酸の濃度が1×10
−2mol/L以下、である溶液に浸漬して、シリコンウエハーの表面に一層の金属ナノ粒子をコーティングする。
【0016】
次に、シリコンウエハーの表面を化学エッチング液で、温度25〜90℃、時間30〜300秒の条件でエッチングして、多孔質層構造を形成する。ここで、前記化学エッチング液はフッ化水素酸と酸化剤との混合溶液であり、ここで、混合液中における各成分の濃度が、フッ化水素酸が0.05〜0.5mol/Lであり、酸化剤が1〜15mol/Lである。
【0017】
前記工程(1)と工程(2)の間、工程(2)と工程(3)の間、工程(3)と工程(4)の間には、それぞれ水洗工程を有する。
【0018】
第一の実施形態では、前記工程(2)において、洗浄時間は5〜250秒である。前記アルカリ性薬液において、アルカリ性物質の体積濃度は0.1〜30%、温度は20〜80℃である。前記アルカリ性薬液は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、水酸化テトラメチルアンモニウム、からなる群から選ばれるいずれか1種または複数種である。
【0019】
前記工程(2)において洗浄時間は、好ましくは5〜100秒、より好ましくは5〜50秒、更に好ましくは5〜30秒である。洗浄時間を10秒、20秒、40秒、または、60秒、に設定してもよい。
【0020】
前記アルカリ性薬液においてアルカリ性物質の体積濃度は、好ましくは0.5〜30%、より好ましくは1〜25%、更に好ましくは1〜20%である。
【0021】
前記アルカリ性薬液の温度は、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜70℃、更に好ましくは25〜50℃である。
【0022】
第一の実施形態では、前記工程(3)において前記第1洗浄液は、塩酸と過酸化水素水との混合液、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、硝酸、アンモニア水、の4種から選ばれる1種である。前記硝酸の体積濃度は5〜69%、前記アンモニア水の体積濃度は1〜30%である。前記第1洗浄液の温度は20〜80℃、好ましくは20〜70℃、より好ましくは20〜50℃である。
【0023】
第一の実施形態では、前記工程(4)において、前記第1化学エッチング液はフッ化水素酸と硝酸の混合液であり、ここで、混合液中における各成分の濃度は、フッ化水素酸が0.05〜0.5mol/Lであり、硝酸が1〜15mol/Lである。
【0024】
第一の実施形態では、前記工程(4)の後に、さらに、
(5)水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水、または、水酸化テトラメチルアンモニウム、からなる群から選ばれるいずれか1種または複数種であり、濃度が0.05〜0.5mol/Lのアルカリ溶液である第2化学エッチング液に上記シリコンウエハーを投入して、5〜250秒間浸漬する工程と、
(6)上記シリコンウエハーを、塩酸と過酸化水素水との混合液、または、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、のうちのいずれか1種の混合液である第2洗浄液に投入して、20〜80℃の温度で60〜300秒間洗浄する工程と、
(7)上記シリコンウエハーをフッ化水素酸溶液に浸漬する工程と、を含む。
【0025】
第一の実施形態では、工程(5)は、表面上の多孔質シリコンを除去する作用を果たす。工程(6)は、残留した金属粒子を除去する作用を果たす。工程(7)は、表層での酸化ケイ素層を除去する作用を果たす。実際の実施形態では、具体的なニーズに応じて選択してもよく、具体的には、
工程(5)のみ;
工程(5)と工程(6)との二つの工程の組み合わせ;
工程(5)、工程(6)および、工程(7)の三つの工程の組み合わせ;
のいずれかの組み合わせを採用することができる。
【0026】
第一の実施形態では、前記工程(5)〜(7)の各工程の前、および、前記工程(7)の後に、それぞれ水洗工程を有する。
【0027】
本発明はさらに、上記方法で調製された結晶シリコン太陽電池のテクスチャー構造の保護を含む。好ましくは、前記テクスチャー構造は主に複数の略逆ピラミッド状の微細構造で構成される。
前記略逆ピラミッド状の微細構造は、
下部が逆角錐状構造、上部が逆円錐台構造であり、
最上部が円形、楕円形、または、複数本の曲線により囲まれた閉じた図形、からなる群から選ばれる1種または複数種であり、
寸法が100〜900nmである。
前記テクスチャー構造はさらに、複数のピラミッド状の微細構造を有する。
【0028】
上記では、前記略逆ピラミッド状の微細構造の最上部は円形、楕円形、または、複数本の曲線により囲まれた閉じた図形、からなる群から選ばれる1種または複数種である。前記複数本の曲線により囲まれた閉じた図形は、少なくとも3本の曲線を含むが、より多くの曲線により囲まれていてもよく、好ましくは5〜8本の曲線により囲まれていてもよい。前記逆円錐構造は最上部が円錐体の底面であり、円錐体がその底部を上に、頂部を下にした逆立ち状の配置を取るため、円錐体の底面が微細構造の最上部に位置している。
【0029】
前記テクスチャー構造は複数の略逆ピラミッド状の微細構造を有する。これらの略逆ピラミッド状の構造は、独立してシリコンウエハーの表面に分布していても、一部が重なっていても、または、複数の逆円錐構造同士が部分的に重なっていてもよい。前記略逆ピラミッド状の微細構造の深さは100〜900nmである。前記テクスチャー構造の平均反射率は2〜20%、好ましくは5〜15%である。
【0030】
本発明のメカニズムは、工程(2)において、アルカリ性薬液により表面の多孔質シリコン構造を除去して下層のナノテクスチャー構造を露出させると同時に、多孔質シリコン中の大量の金属粒子を剥離することである。次に、工程(3)において、第1洗浄液によりナノ構造の孔底に残留した金属を徹底的に除去するため、シリコンウエハーを第1化学エッチング液に投入する際に金属粒子がエッチング液に混入することがない。これにより、第1化学エッチング液中において、混入した金属触媒による意図しない酸化還元反応を起こすことがなく、テクスチャー構造の安定性や均一性に悪影響を与えることを回避できる。
【0031】
さらに、第1化学エッチング液で処理する前にシリコンウエハーから金属粒子を除去することにより、第1化学エッチング液中に金属粒子が蓄積することも回避できる。これにより、金属粒子シリコンウエハーの表面に再付着することによる洗浄不良を回避できるため、エッチング液の寿命が長くなる。また、太陽電池の光電変換効率を大幅に低下させる悪影響を防ぐことができる。
【0032】
本発明に係るの他の態様において、結晶シリコン太陽電池のテクスチャー構造の調製方法は、
(1)シリコンウエハーの表面に多孔質層構造を形成する工程と、
(2)アルカリ性薬液で洗浄して、残留した金属粒子を除去する工程と、
(3)フッ化水素酸と酸化剤との混合溶液である第1化学エッチング液で表面エッチングを行って、結晶シリコン太陽電池のテクスチャー構造を得る工程と、を含む。
【0033】
つまり、第一の実施形態の工程(2)と工程(3)とは同じ種類の薬液を使用することから、これらの二つの工程を合併することができる。二つの工程で、同じ種類の薬液を選択することは極めて特別なことである。これにより、表面の多孔質シリコン構造を除去して、その下のナノテクスチャー構造を露出できるだけでなく、多孔質シリコン中の大量の金属粒子を剥離することもできる。また、ナノ構造の孔底に残留した金属を徹底的に除去することができる。
【0034】
第二の実施形態では、前記工程(1)において、酸化剤および金属塩を含むフッ化水素酸溶液にシリコンウエハーを投入して多孔質層構造を形成する。このとき、温度は25〜90℃、時間は10〜1000秒である。
【0035】
好ましくは、酸化剤および金属塩を含むフッ化水素酸溶液において、
金属イオンの濃度が1×10
−3mol/L以下、または、
溶液における金属イオンの濃度が1×10
−3mol/Lより大きいと同時にフッ化水素酸の濃度が1×10
−2mol/L以下である。
【0036】
或いは、前記工程(1)において、先ずシリコンウエハーを、金属イオンを含んで且つ金属イオンの濃度が1×10
−3mol/L以下、または、金属イオンの濃度が1×10
−3mol/Lより大きいと同時にフッ化水素酸の濃度が1×10
−2mol/L以下、である溶液に浸漬して、シリコンウエハーの表面に一層の金属ナノ粒子をコーティングする。
【0037】
次に、シリコンウエハーの表面を、化学エッチング液で、温度25〜90℃、時間30〜300秒の条件でエッチングして、多孔質層構造を形成する。ここで、前記化学エッチング液はフッ化水素酸と酸化剤との混合溶液であり、ここで、混合液中における各成分の濃度は、フッ化水素酸が0.05〜0.5mol/Lであり、酸化剤が濃度1〜15mol/Lである。
【0038】
第二の実施形態では、前記工程(1)と工程(2)の間、工程(2)と工程(3)の間には、それぞれ水洗工程を有する。
【0039】
第二の実施形態では、前記工程(2)において、洗浄時間は5〜250秒である。前記アルカリ性薬液において、アルカリ性物質の体積濃度は0.1〜30%、温度は20〜80℃である。前記アルカリ性薬液はアンモニア水、または、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、のうちいずれか1種である。
【0040】
前記工程(2)において洗浄時間は、好ましくは5〜100秒、より好ましくは5〜50秒、更に好ましくは5〜30秒である。洗浄時間を10秒、20秒、40秒、または、60秒、に設定してもよい。
【0041】
前記アルカリ性薬液においてアルカリ性物質の体積濃度は、好ましくは0.5〜30%、より好ましくは1〜25%、更に好ましくは1〜15%である。
【0042】
前記アルカリ性薬液の温度は、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜70℃、更に好ましくは25〜50℃である。
【0043】
第二の実施形態では、前記工程(3)において、前記第1化学エッチング液はフッ化水素酸と硝酸の混合液であり、ここで、混合液中における各成分の濃度は、フッ化水素酸が0.05〜0.5mol/Lであり、硝酸が1〜15mol/Lである。
【0044】
第二の実施形態では、前記工程(3)の後に、さらに、
(4)水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水、または、水酸化テトラメチルアンモニウム、からなる群から選ばれるいずれか1種または複数種であるアルカリ溶液である第2化学エッチング液に上記シリコンウエハーを投入して浸漬する工程と、
(5)上記シリコンウエハーを、塩酸と過酸化水素水との混合液、または、アンモニア水と過酸化水素水との混合液、のうちのいずれか1種の混合液である洗浄液に投入して洗浄する工程と、
(6)上記シリコンウエハーをフッ化水素酸溶液に浸漬する工程と、を含む。
【0045】
第二の実施形態では、前記工程(4)〜(6)の各工程の前、および、前記工程(6)の後に、それぞれ水洗工程を有する。
【0046】
本発明はさらに、上記方法で調製された結晶シリコン太陽電池のテクスチャー構造の保護を含む。好ましくは、前記テクスチャー構造は主に複数の略逆ピラミッド状の微細構造で構成される。
前記略逆ピラミッド状の微細構造は、
下部が逆角錐状構造、上部が倒円錐台構造であり、
最上部が円形、楕円形、または、複数本の曲線により囲まれた閉じた図形、からなる群から選ばれる1種または複数種であり、
寸法が100〜900nmである。
前記テクスチャー構造はさらに複数のピラミッド状の微細構造を有する。
【0047】
上記では、前記略逆ピラミッド状の微細構造の最上部は円形、楕円形、または、複数本の曲線により囲まれた閉じた図形、からなる群から選ばれる1種または複数種である。前記複数本の曲線により囲まれた閉じた図形は、少なくとも3本の曲線を含むが、より多くの曲線により囲まれていてもよく、好ましくは5〜8本の曲線により囲まれていてもよい。前記逆円錐構造は最上部が円錐体の底面であり、円錐体がその底部を上に、頂部を下にした逆立ち状の配置を取るため、円錐体の底面が微細構造の最上部に位置している。
【0048】
前記テクスチャー構造は複数の略逆ピラミッド状の微細構造を有する。これらの略逆ピラミッド状の構造は、独立してシリコンウエハーの表面に分布していても、一部が重なっていても、または、複数の逆円錐構造同士が部分的に重なっていてもよい。前記略逆ピラミッド状の微細構造の深さは100〜900nmである。前記テクスチャー構造の平均反射率は2〜20%、好ましくは5〜15%である。