特許第6648084号(P6648084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6648084三次元的な物体を付加的に製造するための装置
<>
  • 特許6648084-三次元的な物体を付加的に製造するための装置 図000002
  • 特許6648084-三次元的な物体を付加的に製造するための装置 図000003
  • 特許6648084-三次元的な物体を付加的に製造するための装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648084
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】三次元的な物体を付加的に製造するための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/30 20170101AFI20200203BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20200203BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20200203BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20200203BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200203BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200203BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20200203BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20200203BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B29C64/30
   B29C64/268
   B29C64/153
   B29C64/295
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B22F3/105
   B22F3/16
   B28B1/30
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-165110(P2017-165110)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-65378(P2018-65378A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】10 2016 120 044.1
(32)【優先日】2016年10月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ヘルツォーク
(72)【発明者】
【氏名】フローリアーン・ベックマン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ポンティラー−シュムラ
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0263209(US,A1)
【文献】 特開2014−125643(JP,A)
【文献】 特表2016−516580(JP,A)
【文献】 特表2015−526319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40
B22F3/105,3/16
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的で層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービームを用いて凝固化可能な構造材料(3)から成る構造材料層の凝固化とによる、三次元的な物体(2)を付加的に製造するための装置(1)であって、構造平面内に形成された構造材料層の少なくとも部分的な調温のために設置されている少なくとも1つの調温装置(11)を含み、前記調温装置(11)が、電磁的な調温ビームを発生させるために設置されている少なくとも1つの調温要素(12)を含んでおり、該少なくとも1つの調温要素(12)が、調温ダイオードとして形成されているか、又は調温ダイオードを含んでいる、前記装置において、
前記調温装置(11)が複数の調温ダイオードを含んでおり、これら調温ダイオードが、ハウジング状の保持装置(15)に、又は該保持装置(15)内に配置されており、該保持装置(15)が、連続的で層ごとの選択的な露光と、これに伴う、構造平面内に形成された、エネルギービームを用いて凝固化可能な構造材料(3)から成る構造材料層の凝固化とがなされる装置側のプロセスチャンバ(6)のプロセスチャンバ壁部の外部又は内部に配置されており、
前記保持装置(15)が、少なくとも1つの運動自由度をもって前記装置側のプロセスチャンバ(6)に対して相対的に運動可能に支持されており、
前記保持装置(15)が前記装置側のプロセスチャンバ(6)の内部に配置されており、前記保持装置が、前記装置側のプロセスチャンバ(6)内で少なくとも1つの運動自由度をもって運動可能に支持されて配置された、選択的に固化されるべき構造材料層を前記構造平面内で形成するために設置されている装置側の積層装置(7)に運動可能に結合されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記調温装置(11)が複数の調温ダイオードを含んでおり、これら調温ダイオードが、行状及び/又は列状の配置で少なくとも1つの平面内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記保持装置(15)がフレーム式又はフレーム状の保持構造部(16)を含んでおり、該保持構造部には、又は該保持構造部内には前記調温ダイオードが配置されており、少なくとも1つの調温ダイオードが、少なくとも1つの運動自由度をもって前記保持構造部(16)に対して相対的に運動可能に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つの調温ダイオードが、該調温ダイオードによって発生可能な調温ビームのビーム特性に関する、当該調温ビームの初期出力、強度、波長の少なくとも1つを含む調温ビームパラメータについて変更可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
1つ又は複数の調温ダイオードの動作を各調温ダイオードによって発生可能な調温ビームのビーム特性に関する調温ビームパラメータを介して制御するために設置されている制御装置(14)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
1つ又は複数の調温ダイオードの適当な作動によって、調温されるべき局所的に限定された構造材料層に関して局所的に及び/又は時間的に変化する1つ又は複数の調温ビームプロファイル(13)を発生させるために、前記制御装置(14)が設置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
調温されるべき構造材料層の調温を検出するために設置されている検出装置が設けられており、前記制御装置(14)が、前記検出装置によって発生する、調温されるべき構造材料層の検出された温度を描写する検出情報に基づいて1つ又は複数の調温ダイオードの制御を制御するように設置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの調温ダイオードが、面発光ダイオードとして形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
エネルギービームを用いて凝固化可能な構造材料(3)から成る、構造平面内に形成された構造材料層の連続的で層ごとの選択的な凝固化によって三次元的な物体(2)を付加的に製造するための方法において、
当該方法の実行のために、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置が用いられることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的で層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービームを用いて凝固化可能な構造材料から成る構造材料層の凝固化とによる、三次元的な物体を付加的に製造するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元的な物体を付加的に製造するための適当な装置は、それ自体又はそれ自体について知られている。適当な装置を用いて、三次元的な物体が、連続的で層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービームを用いて凝固化可能な構造材料から成る構造材料層の凝固化とによって付加的に構成される。
【0003】
各構造材料層の調温が合目的である場合があり、場合によっては必要でさえあり得る。調温は、特に熱的に生じる各物体(部分)内部の応力を低減させることに寄与し、その結果、特定の調温によって付加的に製造されるべき、あるいは製造された物体の構造上の特性に影響を及ぼすことが可能である。これに対応して、冒頭に挙げた種類の装置は、構造平面内に形成された構造材料層の少なくとも部分的な調温のために設置された調温装置を規則的に備えている。
【0004】
公知の調温装置により、通常、各構造材料層の1つの静的な調温のみが可能となる。このような公知の調温装置により、比較的大きな手間のみによって可能である以上は、例えば異なる構造材料の異なる熱的な特性に関して個別に適合可能な各構造材料層の調温を実現することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎をなす課題は、特に各構造材料層の個別に適合可能な調温の可能性に関して、三次元的な物体の付加的な製造のための改善された装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1による、三次元的な物体を付加的に製造するための装置によって解決される。従属請求項は、装置の可能な実施形態に関するものである。
【0007】
これに記載された装置(「装置」)は、連続的で層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービーム、特にレーザビームを用いて凝固化可能な構造材料から成る構造材料層の凝固化とによる、三次元的な物体、すなわち例えば技術的な部材あるいは技術的な部材群を付加的に製造するために設置されている。構造材料は、粒子状あるいは粉体状の金属材料、合成樹脂材料及び/又はセラミック材料であり得る。選択的に凝固化されるべき各構造材料層の選択的な凝固化は、物体に関する構造データに基づいて行われる。適当な構造データは、それぞれ付加的に製造されるべき物体の幾何学的−構造上の形状を記述していることともに、例えばそれぞれ付加的に製造されるべき物体の「スライスされた」CADデータを含むことが可能である。
【0008】
装置は、SLM装置、すなわち選択的レーザ溶融法(SLM法)の実行のための装置、特にLaserCUSING(登録商標)−方法であり得るか、又は選択的レーザ焼結法(SLS法)を実行する装置であり得る。
【0009】
装置は、付加的な構造過程の実行に典型的に必要な機能構成要素、すなわち特に連続的で層ごとの選択的な露光及びこれに伴う構造材料層の凝固化のためのエネルギービームすなわち特にレーザビームを発生させるためのエネルギー発生装置と、選択的に露光されるべき、あるいは選択的に凝固化されるべき構造材料層を形成するための積層装置とを構造平面内に含んでいる。したがって、実際の選択的な露光あるいは選択的に凝固化されるべき各構造材料層の実際の選択的な凝固化が構造平面内で行われる;一般的に、構造平面内には、少なくとも1つの、選択的に凝固化されるべき、あるいは選択的に凝固化された構造材料層が形成されている。装置を用いて実行される付加的な構造過程は、装置に対応する不活性化可能なプロセスチャンバ内で行われる。プロセスチャンバは装置の(外部の)ハウジング構造部の一部を形成することができ、このハウジング構造部には、又はこのハウジング構造部内には、装置側の機能構成要素が配置又は形成されている。
【0010】
装置は、別の機能構成要素として調温装置を含んでいる。この調温装置は、エネルギービーム発生装置に対して個別の装置の機能構成要素である。調温装置は、構造平面内に形成された、特に(まだ)選択的に凝固化されるべき、又は(既に)凝固化された構造材料層の少なくとも部分的な調温のために設置されている。後述のように、調温装置は、調温されるべき構造材料層の1つ又は複数の関連した、若しくは関連していない範囲の局所的に限定された調温のために設置されている。構造材料層の調温は、構造材料層の少なくとも1つの範囲の、所定の加熱温度あるいは所定の加熱温度範囲への(コントロールされた)加熱、及び/又はある加熱温度あるいは加熱温度範囲における加熱された範囲の保持、並びに構造材料層の少なくとも1つの範囲の、所定の冷却温度あるいは所定の冷却温度範囲への(コントロールされた)冷却及び/又はある冷却温度あるいは冷却温度範囲における冷却された範囲の保持と理解され得る。
【0011】
調温装置は、少なくとも1つの調温要素を含んでいる。この調温要素は、特に電磁的な調温ビームを発生させるために設置されている。したがって、調温装置を用いて実現可能な調温は、少なくとも1つの電磁的な調温ビームと、したがって調温されるべき、選択的に凝固化されるべき、又は選択的に凝固化された構造材料層の少なくとも1つの範囲への後述するレーザビームのような電磁的なビームの特定の提供によって行われる。
【0012】
調温要素は、調温ダイオードとして形成されているか、あるいはこのような調温ダイオードを含んでいる。調温ダイオードは、レーザビームである調温ビームを発生させるために設置された半導体要素と理解されるべきである。調温ダイオードによって発生可能な調温ビームの光学的な特性、すなわち例えば波長は、とりわけ用いられる1つ又は複数の半導体材料に依存している。具体的な構成に応じて、調温ダイオードは、例えば、650〜2000nm、特に800〜100nmの波長と、0.1〜10ワットの範囲のレーザ出力とを発生させることが可能である。当然、これより大きな、及び/又はこれより小さな例外も考えられる。
【0013】
典型的には、調温ダイオードは、実際の調温ダイオードを形成する半導体要素の平面から垂直にレーザビームを発出するように設置された面発光ダイオード(Oberflaechenemitterdiode)、短くは面発光レーザ(Oberflaechenemitter)である。対応する半導体要素の発出面は、調温装置の取付状態において、典型的には調温されるべき各構造材料層に対向するように整向されている。対応する面発光ダイオードは、VCSEL(英語:vertical cavity surface emitting laser(垂直共振器面発光レーザ))とも呼ばれ、他のダイオード構造形態に対して、すなわち特にエッジエミッタダイオード(Kantenemitterdioden)に対して、特に変更可能なビーム特性、すなわち特にビームプロファイル、これにより発生可能なレーザビームの強度において優れている。したがって、適当な面発光ダイオードを用いて、異なるビーム特性の異なる調温ビームを発生させることが可能である。このようにして、個別に適合可能な同様に均等な構造材料層の調温が可能である。
【0014】
装置の特別な利点は、調温装置の上述の形態によって、すなわち特に調温ダイオードの使用によって、調温されるべき構造材料層における、したがって付加的に星座凹されるべき、あるいは製造された1つ又は複数の物体における熱応力を低減させることが可能であることにあり、これは、構造上の特性、すなわち例えば物体の機械的な安定性及び寸法安定性にポジティブな影響を及ぼすものである。また、とりわけ構造材料の温度に依存した吸収特性が特定して影響され得る。
【0015】
全体として、特に各構造材料層の個別に適合可能な調温の可能性に関して改善された装置が存在する。
【0016】
上述の構成から、調温ダイオードが典型的には調温ビームによって発生可能な調温ビームのビーム特性に関連する少なくとも1つの調温パラメータ、特にその初期出力、強度、波長などについて変更可能であることが得られる。合目的には、装置は、調温装置に付設可能な、あるいは付設されたハードウェア及び/又はソフトウェアにより実行される制御装置を含んでいる。この制御装置は、動作の制御のために、すなわち特に各調温ダイオードによって発生可能な調温ビームのビーム特性に関連する1つ又は複数の調温ダイオードの少なくとも1つの調温パラメータの制御のために設置されている。制御装置を用いて、各調温ダイオードの個別の作動と、したがってそれぞれ調温されるべき構造材料層の個別に適合可能な調温とが可能である。例えば、適当な調温ビームプロファイルの幾何形状は、1つ又は複数の調温ダイオードの適当な作動によって(ほぼ)適宜に適合されることが可能である。適合な調温ビームプロファイルは、例えばストライプ状(streifenfoermig)であることが可能であり、その結果、調温されるべき構造材料層の局所的に制限されたストライプ状の範囲を調温可能である。同様のことは、当然、他の調温ビームプロファイルにも当てはまる。
【0017】
また、1つ又は複数の調温ダイオードの適当な作動によって、(ほぼ)適宜の場所的に及び/時間的に変化する、特に調温されるべき構造材料層について局所的に制限された、各調温ダイオードによって発生される調温ビームで構成される調温ビームプロファイルを発生させることが可能である。このようにして、調温されるべき構造材料層の加熱に関連して、所定の加熱温度への適宜の場所的に及び/又は時間的に変化する温度勾配も実現され得る。同様に、調温されるべき構造材料層の冷却に関連して、所定の冷却温度への適宜の場所的に及び/又は時間的に変化する温度勾配も実現され得る。
【0018】
装置は、調温されるべき構造材料層の温度を検出するために設置されている検出装置を含むことができる。この検出装置は、例えば高温計の形態の温度センサとして形成されることが可能であるか、又はこのような温度センサを含むことができる。前記又は1つの別の装置側の制御装置は、これが存在する限り、1つ又は複数の調温ダイオードの動作の制御を、検出装置によって発生される、選択的に凝固化されるか、又は選択的に凝固化された構造材料層の検出された温度を描写する検出情報に基づいて所定の加熱温度又は所定の冷却温度に関して個別に制御するように設置されることが可能である。したがって、調温ダイオードの動作の制御、すなわち一般的に調温されるべき構造材料層の調温は、調温されるべき構造材料層の調温監視を伴うことが可能である。
【0019】
典型的には、調温装置は、1つのみならず複数の調温ダイオードを含んでいる。調温ダイオードは、基本的に、構造平面に対して相対的な適宜の空間的な配置で配置可能あるいは配置されており、この空間的な配置内では、それぞれ調温されるべき構造材料層が形成されているか、形成される。例示的な配置は、調温ダイオードあるいは複数の調温ダイオードが、調温装置に関連した全体的に存在する調温ダイオードの数の部分量のために少なくとも1つの共通の、特に構造平面に対して平行に位置する平面内に行状及び/又は列状に配置されているように設定されている。行及び列に関連した調温ダイオードの配置は、マトリクス状の配置、短くマトリクスと呼ぶことができる。したがって、適当なマトリクスは、(それぞれ)少なくとも2つの調温ダイオードから成る少なくとも1つの行、典型的には平行に配置された複数の行と、(それぞれ)少なくとも2つの調温ダイオードから成る少なくとも1つの列、典型的には平行に配置された複数の列とを含んでいる。調温ダイオードについての適当な行は、角度をもって、特に調温ダイオードについての適当な列に対して垂直に延在し、またその逆でもある。
【0020】
共通の平面における適当な調温ダイオードの上述の配置のほかに、調温ダイオードあるいは複数の調温ダイオードは、調温装置に関連した全体的に存在する調温ダイオードの数の部分量のために複数の、特に構造平面に対して平行に位置する平面内に互いに重なり合って配置されることが可能である。複数の平面内での互いに重なり合った調温ダイオードの配置により、特にコンパクトな、場合によっては互いの中へ重なり合った、適当な調温ダイオードの配置が得られる。それぞれ互いに重なり合って位置する平面内に配置された調温ダイオードは、互いに対して相対的な所定の空間的なずれをもって配置されることが可能である。したがって、上側の平面内に配置された調温ダイオードによって発生される調温ビームは、下側の平面内に配置された調温ダイオードへ入射せず、孔又はその他の開口部の、例えば隙間の形態の自由空間を通って、下側の平面において直接隣接して配置された調温ダイオードの間へ入射する。複数の平面内における互いに重なり合った配置は、いずれにしても、調温ビームが調温されるべき各構造材料層へ向けられることができるように選択されている。
【0021】
調温ダイオードは、その互いに対する具体的な配置にかかわらず、特にハウジング状の保持装置に、又はこの保持装置内に配置されることが可能である。保持装置は、装置側のプロセスチャンバの外部又は内部に配置又は形成されることが可能である。保持装置は、プロセスチャンバのプロセスチャンバ壁部にも配置されることが可能である。装置側のプロセスチャンバの外部における調温装置の配置は、調温ダイオードによって発生可能あるいは発生される調温ビームの適切な入射可能性が前提となっており、この入射可能性は、例えばプロセスチャンバ壁部に配置又は形成された、プロセスチャンバへの各調温ビームの通過を可能とする通過窓によって実現され得る。
【0022】
プロセスチャンバの外側又は内側での配置にかかわらず、保持装置は、特にフレーム式又はフレーム状の保持構造部を含むことができ、この保持構造部には、又はこの保持構造部内には、調温ダイオードが配置されている。保持構造部は、典型的にはいくつかのあらかじめ決定可能な、又はあらかじめ決定された配置位置を含んでおり、この配置位置には、又はこの配置位置内には、少なくとも1つの調温ダイオードが配置可能であるか、又は配置されている。保持構造部での、又は保持構造部内での調温ダイオードの配置は、(損傷することなく、あるいは破壊することなく)取り外し可能であり得る。これは、例えば、保守点検及び/又は修理の場合に必要な交換を容易にするものである。
【0023】
保持装置は、装置側のプロセスチャンバあるいは構造平面に対して少なくとも1つの運動自由度をもって運動可能に支持されることが可能である。保持装置の運動は、これに結合可能な、又は結合された、特に(電気)モータによる駆動装置及び/又はガイド装置によって行われる。保持装置の運動によって、調温ダイオードを例えば具体的な調温状況について、調温されるべき構造材料層に対して相対的に運動させることが可能である。保持装置の運動は、少なくとも1つの並進軸線に沿った並進的な運動自由度及び/又は少なくとも1つの回転軸線周りの回転的な運動自由度を含むことができる。保持装置の運動は、例えば、線形運動、回転運動、傾動運動又は旋回運動であり得る。当然、複数の異なる運動自由度において組み合わされた運動が可能である。
【0024】
プロセスチャンバ内での保持装置の配置について、特に、適当な駆動装置及び/又はガイド装置が装置側のプロセスチャンバ内で少なくとも1つの運動自由度で運動可能に支持されて配置された装置側の機能構成要素によって提供され得ることが当てはまる。したがって、保持装置は、装置側のプロセスチャンバ内で少なくとも1つの運動自由度で運動可能に支持されて配置された装置側の機能構成要素に運動結合されることが可能である。装置側の機能構成要素は、例えば、選択的に露光されるべき、あるいは選択的に凝固化されるべき構造材料層の形成のために構造平面内に設置されている積層装置であり得る。積層装置は、典型的には、並進的な運動自由度をもって構造平面に対して相対的に運動可能に支持されている。したがて、保持装置は積層装置に運動結合されることができ、これは、例えば、保持装置が直接的に、又は間接的に、すなわち少なくとも1つの部材あるいは部材群を介在しつつ積層装置に配置されているように実現されることが可能である。
【0025】
上述のように、保持装置は特にフレーム式又はフレーム状の保持構造部を含むことができ、この保持構造部には、又はこの保持構造部内には、調温ダイオードが配置されている。例えば具体的な調温状況についての、調温されるべき構造材料層に対する相対的な調温ダイオードの運動は、少なくとも1つの調温ダイオードが保持構造部に対して相対的に、したがって調温されるべき構造材料層に対して相対的にも少なくとも1つの運動自由度をもって保持構造部において、又は保持構造部内で運動可能に支持されているようにも実現されることが可能である。このために、保持構造部側には、調温ダイオードの運動を実現可能な適切な駆動装置及び/又はガイド装置が設けられている。構造平面に対して相対的な保持装置の運動に関連した上述の構成は、保持構造部に対して相対的な調温ダイオードの運動についても同様に当てはまる。
【0026】
本発明は、装置のほかに、連続的で層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービームを用いて凝固化可能な構造材料から成る、構造平面内における構造材料層の凝固化とによる、三次元的な物体を付加的に製造するための方法に関するものでもある。この方法は、その実行のために上述のような装置が用いられることを特徴としている。したがって、装置に関する構造全体が同様に方法にもあてはまる。
【0027】
本発明を、図面における実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施例による装置の原理図である。
図2】一実施例による装置の原理図である。
図3】一実施例による調温装置の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、一実施例による装置1の原理図が示されている。装置1は、三次元的な物体2、すなわち例えば技術的な部材あるいは技術的な部材群を連続的な層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービーム発生装置4によって発生されるエネルギービーム5を用いて凝固化可能な粉体状の材料3、すなわち例えば金属粉体から成る構造材料層の凝固化とによる付加的に製造するための方法に用いられる。選択的な露光と、これに伴う、それぞれ凝固化されるべき構造材料層の選択的な凝固化とが、物体に関する構造データに基づいて行われる。適当な構造データは、それぞれ付加的に製造すべき物体2の幾何学的あるいは幾何学的−構造上の構成を記述するものである。適当な構造データは、例えば、製造されるべき物体2の「スライスされた」CADデータを含むことができる。
【0030】
装置1は不活性化可能なプロセスチャンバ6を含んでおり、このプロセスチャンバ内では、各物体2の実際の付加的な製造が行われる。プロセスチャンバ6は、装置1のハウジング構造(不図示)の一部を形成することができる。プロセスチャンバ6内には、付加的な構造過程を実行するために必要な装置1の機能構成要素、すなわち特に水平に向けられた二重矢印P1で示唆されているように運動可能に支持された、構造平面において凝固化されるべき構造材料層を形成するために設置されている積層装置7が配置あるいは形成されている。機能モジュール、すなわち具体的には粉体状の構造材料3を提供するための粉体モジュール8と、物体2の実際の付加的な構成が行われる構造モジュール9と、凝固化されていない構造材料3を収容するためのオーバーフローモジュール10とがプロセスチャンバ6に、あるいはプロセスチャンバ6内に配置されていることが見て取れる。機能モジュールは、交換可能容器に関して取り外し可能にプロセスチャンバ6に結合可能であるか、結合されていることが可能である。
【0031】
装置1は、別の機能構成要素として調温装置11を含んでいる。調温装置11は、レーザビーム発生装置4に対して別個の装置1の機能構成要素である。調温装置11は、構造平面において形成された特に(まだ)選択的に凝固化されるべき、又は(既に)選択的に凝固化された構造材料層の少なくとも部分的な調温のために設置されている。構造材料層の調温は、所定の加熱温度あるいは所定の加熱温度範囲への構造材料層の少なくとも1つの範囲の(コントロールされた)加熱及び/又は加熱された範囲の加熱温度あるいは加熱温度範囲での保持並びに所定の冷却温度あるいは所定の冷却温度範囲への構造材料層の少なくとも1つの範囲の(コントロールされた)冷却及び/又は冷却された範囲の冷却温度あるいは冷却温度範囲での保持と理解されるべきである。
【0032】
調温装置11は、複数の調温要素12(図3参照)を含んでいる。これら調温要素12は、それぞれ、特に電磁的な調温ビームを発生させるために設置されている。各調温要素12によって発生する調温ビームは、調温ビームプロファイル13へ合成される。したがって、調温装置11を用いて実現可能な調温は、電磁的な調温ビームと、したがって電磁的なビームを調温されるべき構造材料層の少なくとも1つの範囲へ特定して提供することとによって行われる。
【0033】
調温要素12は、それぞれ調温ダイオードとして、すなわち具体的には面発光ダイオードとして形成されている。調温ダイオードは、レーザビームである調温ビームを発生させるために設置された半導体要素と理解されるべきである。調温ダイオードによって発生可能な調温ビームの光学的な特性、すなわち例えば強度及び波長は、とりわけ用いられる1つ又は複数の半導体材料に依存している。具体的な構成に応じて、調温ダイオードは、例えば800〜1000nmの波長と、0.1〜10ワットの範囲のレーザ出力を発生させることが可能である。調温ダイオードとして使用される面発光ダイオードは、この面発光ダイオードにより発生可能なレーザビームの変更可能なビーム特性によって傑出している。したがって、面発光ダイオードを用いることで、この成るビーム特性の異なる調温ビームを発生させることが可能である。このようにして、個々に適合可能な、同様に均等な構造材料層の調温が可能である。
【0034】
したがって、典型的には、調温ダイオードは、これら調温ダイオードによって発生可能な調温ビームのビーム特性に関係する調温ビームパラメータ、特にその初期出力、強度、波長などにおいて変更可能である。装置1は、調温装置11に割り当てられた、ハードウェアにより、及び/又はソフトウェアにより実行される制御装置14を含んでいる。制御装置14は、動作の制御、すなわち特に各調温ダイオードによって発生可能な調温ビームのビーム特性に関係する1つ又は複数の調温ダイオードの少なくとも1つの調温ビームパラメータの制御のために設置されている。制御装置14を用いて、各調温ダイオードの個別の作動と、したがって調温されるべき各構造材料層の個別に適合可能な調温とが可能である。例えば、適当な調温ビームプロファイル13の幾何形状は、1つ又は複数の調温ダイオードの適当な作動によって(ほぼ)適宜適合されることが可能である。適当な調温ビームプロファイル13は例えばストライプ状であることが可能であり、その結果、調温されるべき構造材料層の局所的に制限されたストライプ状の範囲を調温可能である。同様のことは、当然、他の調温ビームプロファイルにも当てはまる。
【0035】
また、1つ又は複数の調温ダイオードの適当な作動によって、(ほぼ)適宜の場所的に及び/時間的に変化する調温ビームプロファイルを発生させることが可能である。このようにして、調温されるべき構造材料層の加熱に関連して、所定の加熱温度への適宜の場所的に及び/又は時間的に変化する温度勾配も実現され得る。同様に、調温されるべき構造材料層の冷却に関連して、所定の冷却温度への適宜の場所的に及び/又は時間的に変化する温度勾配も実現され得る。
【0036】
装置1は、調温されるべき構造材料層の温度を検出するために設置されている検出装置(選択的であるため不図示)を含むことができる。検出装置は、例えば高温計の形態の温度センサとして形成されることが可能である。制御装置14は、1つ又は複数の調温ダイオードの動作の制御を、検出装置によって発生される、選択的に凝固化されるか、又は選択的に凝固化された構造材料層の検出された温度を描写する検出情報に基づいて所定の加熱温度又は所定の冷却温度に関して個別に制御するように設置されることが可能である。したがって、調温ダイオードの動作の制御、すなわち一般的に調温されるべき構造材料層の調温は、調温されるべき構造材料層の調温監視を伴うことが可能である。
【0037】
一実施例による調温装置11の原理図を示す図3に基づき、調温装置11が複数の調温要素12あるいは複数の調温ダイオードを含んでいることが明確に見て取れる。図3に示された実施例によれば、調温ダイオードは、行状及び列状に共通の、特に構造平面に対して平行に位置する平面内に配置されている。調温ダイオードのこの配置は、マトリクス状の配置、単にマトリクスと呼ぶことができる。
【0038】
図3に示された、共通の平面内における適当な調温ダイオードの配置のほかに、調温ダイオードは、特に構造平面に対して平行に位置する複数の平面内にも重なり合って配置されることが可能である。このとき、重なり合って位置する各平面内に配置された調温ダイオードは、互いに対して所定の空間的なずれをもって互いに相対的に配置されることが可能である。したがって、上側の平面内に配置された調温ダイオードによって発生される調温ビームは、下側の平面内に配置された調温ダイオードへ入射するわけではなく、例えば隙間の形態の、孔又はその他の開口部の自由空間を通って、下側の平面内で直接隣接して配置された調温ダイオードの間へ入射する。
【0039】
また、図3に基づき、調温ダイオードがハウジング状の保持装置15に、又はこの保持装置15内に配置されていることが見て取れる。保持装置15は、フレーム式あるいはフレーム状の保持構造部16を含んでおり、この保持構造部には、あるいはこの保持構造部内には、調温ダイオードが配置されている。保持構造部16は、あらかじめ設定可能又はあらかじめ設定されたいくつかの配置位置(不図示)を含んでおり、これら配置位置には、あるいはこれら配置位置内には、少なくとも1つの調温ダイオードが配置可能であるか、あるいは配置されている。保持構造部16における、あるいは保持構造部16内での調温ダイオードの配置は、(損傷することなく、あるいは破壊することなく)取り外し可能であり得る。
【0040】
図1に戻って、保持装置15と、したがって調温装置11とがプロセスチャンバ6の外部に配置あるいは形成され得ることが見て取れる。具体的には、保持装置15は、プロセスチャンバ6のカバー範囲を形成するプロセスチャンバ壁部の範囲に配置あるいは形成されている。前記保持装置15あるいは別の保持装置15の代替的な配置可能性が破線で示されており、この保持装置は、プロセスチャンバの側方範囲を形成する、例えば傾斜して延びるプロセスチャンバ壁部の範囲に配置あるいは形成されている。装置側のプロセスチャンバの外部における調温装置11の上述の配置可能性は、調温ダイオードによって発生可能あるいは発生される調温ビームの適切な入射可能性が前提となっており、この入射可能性は、例えば、プロセスチャンバ壁部に配置あるいは形成された、プロセスチャンバ6への各調温ビームの通過を可能にする通過窓によって実現可能である。
【0041】
保持装置15は、プロセスチャンバ6のプロセスチャンバ壁部内にも統合して配置されることが可能である。
【0042】
図1には示されていないが、保持装置15あるいは調温装置11がある運動自由度でプロセスチャンバ6あるいは構造平面に対して相対的に運動可能に支持されていることが可能である。保持装置15の運動は、これに接続可能又は接続された、特に(電気)モータによる駆動装置及び/又はガイド装置によって行われることが可能である。保持装置15の運動によって、例えば躯体的な調温状況に関して、調温ダイオードを調温されるべき構造材料層に対して相対的に運動させることが可能である。保持装置15の運動は、少なくとも1つの並進軸線に沿った並進的な運動自由度及び/又は少なくとも1つの回転軸線周りの回転的な運動自由度を含むことができる。保持装置15の運動は、例えば線形運動、回転運動、傾動運動又は旋回運動であり得る。
【0043】
図2には、別の実施例による装置1の原理図が示されている。図1に示された実施例とは異なり、保持装置15あるいは調温装置11は、プロセスチャンバ6内に配置されている。このとき、保持装置15は、ある運動自由度をもってプロセスチャンバ6あるいは構造平面に対して相対的に運動可能に支持されている。このことは、保持装置15がプロセスチャンバ6内において少なくとも1つの運動自由度をもって運動可能に支持された装置1の機能構成要素に配置されているように実現されている。機能構成要素は、矢印P1で示唆されているように並進的な運動自由度をもって構造平面に対して相対的に運動可能に支持されている積層装置7である。当然、プロセスチャンバ6内での保持装置15あるいは調温装置11の静的な配置も同様に考えられる。
【0044】
調温されるべき構造材料層に対して相対的な調温ダイオードの運動が、代替的に、又は補足的に、1つ又は複数の調温ダイオードが保持構造部16に対して相対的に、及びしたがって調温されるべき構造材料層に対して相対的に少なくとも1つの運動自由度をもって保持構造部16において又はこの保持構造部16内で運動可能に支持されているように実現されていることが全ての実施例に当てはまる。保持構造部16の側から、これに適切な駆動装置及び/又はガイド装置(不図示)が設けられており、この駆動装置及び/又はガイド装置によって、調温ダイオードの運動を実現可能である。
【0045】
図1及び図2に示された装置1によって、三次元的な物体2を、連続的な層ごとの選択的な露光と、これに伴う、エネルギービーム5を用いて凝固化可能な材料3から成る、構造平面内に形成された構造材料層の凝固化とによって付加的に製造するための方法が実行される。
図1
図2
図3