特許第6648301号(P6648301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6648301内蔵型音響スピーカ構造体を有するトップケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648301
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】内蔵型音響スピーカ構造体を有するトップケース
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20200203BHJP
   H04R 1/30 20060101ALI20200203BHJP
   B62J 45/10 20200101ALI20200203BHJP
   H04R 1/26 20060101ALN20200203BHJP
【FI】
   H04R1/02 102B
   H04R1/02 101B
   H04R1/30 A
   B62J99/00 F
   !H04R1/26
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-547971(P2018-547971)
(86)(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公表番号】特表2019-512946(P2019-512946A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2017050924
(87)【国際公開番号】WO2017153070
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】102016204029.4
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】ディッシャー・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ジーフェルス−パウルゼン・ヨハン
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0025486(US,A1)
【文献】 特開2015−089098(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201380910(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
H04R 1/02
H04R 1/26
H04R 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、特にオートバイまたはオートバイに類する自動車のためのトップケースであって、
音響スピーカケーシング(21)と、当該音響スピーカケーシング(21)に接続された少なくとも一つの音響スピーカ(29)とを有する内蔵型の音響スピーカ構造体(20)を備え、少なくとも部分的に前記音響スピーカケーシング(21)を形成するトップケース(10)において、
音響スピーカケーシング(21)は、空気が通るように音響スピーカ(29)の背面に接続されたホーン形チャンネル(23)を備えていることを特徴とするトップケース。
【請求項2】
請求項1に記載のトップケースにおいて、ホーン形チャンネル(23)は、少なくとも、一つの管部(23a)と、ホーン形チャンネルの出口開口部(24)に向かって拡開した一つのホーン部(23b)とを備えていることを特徴とするトップケース。
【請求項3】
請求項2に記載のトップケースにおいて、少なくとも、ホーン形チャンネル(23)の管部(23a)は、トップケース(10)の前面に対して概ね平行に揃えられていることを特徴とするトップケース。
【請求項4】
請求項2から3のいずれか一項に記載のトップケースにおいて、当該トップケース(10)の第一の側部(A)の部分に音響スピーカ(29)が配置されているとともに、第一の側部(A)と反対側に位置するトップケース(10)の第二の側部(B)の部分にホーン形チャンネル(23)の出口開口部(24)が配置されていることを特徴とするトップケース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のトップケースにおいて、音響スピーカケーシング(21)は、圧力チャンバ(25)を備えていることを特徴とするトップケース。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のトップケースにおいて、音響スピーカケーシング(21)は、少なくとも部分的に内部シェル(26)および当該内部シェル(26)に接続された外部シェル(27)によって形成され、特に射出成形により製造された内部シェル(26)および/または外部シェル(27)によって形成されていることを特徴とするトップケース。
【請求項7】
請求項6に記載のトップケースにおいて、内部シェル(26)は、トップケース(10)の蓋部材(12a)または底部材(11a)と一体的に接続されていることを特徴とするトップケース。
【請求項8】
請求項6から7のいずれか一項に記載のトップケースにおいて、外部シェル(27)は、少なくとも一つの統合されたヒンジ部(42a)を備え、当該ヒンジ部は、トップケース(10)の底部材(11)または蓋部材(12a)のヒンジ相手側部品に回動自在に接続するように形成されていることを特徴とするトップケース。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のトップケースにおいて、音響スピーカ(29)は、低音スピーカ、特に周波数領域f≦400Hzの低音スピーカであることを特徴とするトップケース。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のトップケースにおいて、車両ユーザのための背もたれアセンブリ(14)を備え、背もたれアセンブリ(14)が外部シェル(27)を少なくとも部分的に又は完全に覆っていることを特徴とするトップケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特にオートバイまたはオートバイに類する自動車のためのトップケースであって、特許請求項1の前提部分に記載の内蔵型音響スピーカ構造体を有するトップケースに関する。
【背景技術】
【0002】
音響スピーカシステムを有するオートバイが、例えば特許文献1より公知である。一緒に乗車している人、いわゆる“同乗者”のための側方アームレストに組み込まれた音響スピーカの構成が示されている。音響スピーカは、オートバイ上に取り付けられる荷物ケース、いわゆる“トップケース”にアームレストと一緒に固定されている。
【0003】
似たような構造が、やはり特許文献2に記載されている。
【0004】
公知の構造は、大抵は少なくとも二つの音響スピーカを備え、これらが一対で装備されているとともに、車両両側面に鏡映対称に配置されている。運転者や同乗者に適切な音響を提供するためには、適した配線を有した相応に出力のあるアンプが必要で、これらは通常、位置的には音響スピーカの傍に、従って車両重心よりも上側に取り付けなければならない。
【0005】
それに従って、この音響スピーカシステムの総重量が重いことが特に問題で、というのも、重心上側のその不利な位置のせいで、このシステムが車両の走行特性にそのまま負に働いてしまうからである。しかも、この種の構造は、それ相応に材料と組立ての手間に加えて、それに結び付いたコスト高をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4915187号明細書
【特許文献2】米国特許第4600208号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来技術に鑑み、上述の問題をできるかぎり低減し、コンパクトで軽量な、オートバイまたはオートバイに類する自動車用の音響スピーカ構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、特許請求項1の特徴を有した所謂“トップケース”により解決される。有利な実施形態は、同じく請求項1に従属する特許請求項に示される。
【0009】
それによれば、自動車、特にオートバイまたはオートバイに類する自動車用の所謂“トップケース”について、音響スピーカケーシングと、少なくとも一つの音響スピーカとを有する内蔵型の音響スピーカ構造体を備え、この音響スピーカケーシングを少なくとも部分的に形成するトップケースが提供される。しかも、音響スピーカケーシングは、空気が通るように音響スピーカの背面に接続されたホーン形チャンネルを備えている。
【0010】
トップケースとは、普通は、オートバイまたはオートバイに類する車両の上、なかんずく荷台またはその他の適した受け部の上に取り付け可能な、荷物を収容するために設けられている容器のことを指す。トップケースは、車両においてサイド(側方)に取り付けられるケースやバッグとは然るべく区別しなければならない。
【0011】
オートバイに類する車両とは、例えば所謂スクータ、二輪、三輪または四輪スクータ(Motorroller)並びにトライクおよびクアッドを意味するものとすることができる(ただし、それら以外を決して排除するものではない。)。
【0012】
音響スピーカ構造体は、トップケースが同時に音響スピーカケーシングを形成するようにトップケース内に組み込まれて(内蔵されて)いる。簡単に言うと、トップケースの壁部は、同時に音響スピーカケーシングの壁部としても機能し、それ相応に−選択された形状に応じて−一つまたは複数の音響スペースを画定する。音響スピーカケーシングに面して或いはその中に、一つまたは複数の音響スピーカを取り付けることができる。例えば、音響スピーカケーシングは、一つまたは複数の音響スピーカを取り付けるための一つまたは複数の音響スピーカ収容部を備えている。
【0013】
加えて、空気が通るように少なくとも一つの音響スピーカの背面に接続されているホーン形チャンネルが設けられている。そのために、例えば、音響スピーカ収容部により画定されて少なくとも一つの音響スピーカの背面が中に係入する収容空間が、ホーン形チャンネルに向かって開かれるように形成されていてもよい。このようにして、連通する一つの共通の空気柱が提供され、それに伴って、音が理想的に伝搬するように上述の空気の通りが提供される。この構造を用いることで、所謂“バックロードホーン型システム”の動作の仕組みが実現し、これをトップケースに取り入れることができ、それによって少なくとも一つの音響スピーカの効率と音圧を向上することができる。
【0014】
逆に、公知のシステムに対して音響スピーカの数をそれ相応に減らしても、それでもまだ車両ユーザ(例えば運転者や同乗者)に遜色のない音を聞かせられるようにできることになる。
【0015】
音響スピーカ構造体の実施形態次第では、一単体の音響スピーカでも既に十分となる可能性がある。その結果、二つ目の音響スピーカを追加しなくてもよくなり、それに付随した増幅を担う部分を削減することができ、これにより、それに対応した重さと取付けの手間がなくなる。このトップケースの構造のおかげで、車両重心の上側の部分において、この構造を通して小さくなった音響スピーカ構造体の質量が車両の走行特性にそのままプラスに作用する。
【0016】
ホーン形チャンネルは、例えば、少なくとも、管部と、このホーン形チャンネルの出口開口部に向かって拡開したホーン部とを備えることができる。管部の入口は、有利には音響スピーカの背面もしくはそれに付属する音響スピーカ収容部の収容空間に向けられているとともに空気が通るようにこれに接続されていることで、上述のとおり、音を伝搬させる連通した空気柱を提供するようになっている。音響スピーカの背面上で放出された後方音の音圧はその結果、管部内に存在する空気柱へと伝搬することができるようになる。この管部は、その後続の移行部でホーン部に至るが、このホーン部は、その移行部に沿ってホーン部の遠位端における出口開口部に向かって拡開し、楽器と同様“ベル部(Becherabschnitt)”とも呼ぶことができる。つまり、ホーン部が自ら延在しながら断面を拡大させることで、ホーン部の管部側の第一の端部には、当該第一の端部と反対側の第二の(開放された)端部(出口開口部が設けられている端部)における出口側断面に比べて、より狭い断面が設けられている。
【0017】
さらに、少なくとも、ホーン形チャンネルの管部は、トップケースの前面に対して概ね平行に揃えられていることができる。従って、トップケースが車両に組み立てられた状態でのホーン形チャンネルは、自動車の予め決められた車両長手方向に対して交差する向きに揃えられている。
【0018】
さらに、トップケースの第一の側部に少なくとも一つの音響スピーカが配置されているとともに、第一の側部と反対側に位置するトップケースの第二の側部にホーン形チャンネルの出口開口部が配置されているようにできる。こうして、この(或いはこれらの)音響スピーカがトップケースの第一の側部において音源(音源群)を提供し、例えば運転者や同乗者に音を聞かせることになる。ホーン形チャンネルを用いることで、さらに音響スピーカの後方音がホーン形チャンネルを介してトップケースの第二の側部に導かれる。案内された後方音がそこで出口開口部から出て、こちらの側からも運転者や同乗者に音を聞かせることになる。
【0019】
トップケースの第一および第二の側部は、トップケースの左側と右側の側方の表面とだけ捉えるべきではない。むしろ、側方の部分については、同じように前面の側方部分、例えば同乗者の背もたれの左側および/または右側と解することができる。これらの側方の部分には、同乗者を側方で支えるための、必要により設けられる側方頬部(Seitenwangen)が当然に含まれ、これらの中に、一方では少なくとも一つの音響スピーカが、他方では出口開口部が配置されているようにできる。
【0020】
いずれにしろ、ホーン形チャンネルにより、音響スピーカを専ら一方側だけに設けつつも、それでも両側で音を聞かせられるようにすることが可能になる。第二の側部における個別の(追加の)音響スピーカは、こうして省くことができ、同じく付属のアンプと相応の配線部も省くことができる。
【0021】
第一の側部における上述の一つの音響スピーカの代わりに、複数の音響スピーカがこの第一の側部に設けられ、一緒にまとめてホーン形チャンネルに接続されているようにできることは明らかである。
【0022】
同じく、トップケースは、一つ又は複数の音響スピーカと、それに対応するホーン形チャンネルとからなる上述の組み合わせを一組より多く有していてもよい。その場合には、複数のホーン形チャンネルの少なくとも一つ又は複数がこの記載に基づいて形成されている。
【0023】
他の実施形態によれば、音響スピーカケーシングは、圧力チャンバを備えることができる。このチャンバは、同じように音響スピーカケーシングにより形成され且つ少なくとも音響スピーカに向かって、特には音響スピーカの背面に向かって開放されている容量部により画定される。つまり、この圧力チャンバも音響スピーカ収容部の収容空間に向かって開放されるように形成されている。有利には、この圧力チャンバは、ホーン形チャンネルに平行に配置されており、隔壁によりホーン型チャンネルから隔離されている。こういった構造は、特に簡単かつスペースを節約して作製することができ、トップケース内で統合することができる。
【0024】
他の実施形態によれば、音響スピーカケーシングは、少なくとも部分的に内部シェルおよび当該内部シェルに接続された外部シェルによって形成され、特に射出成形により製造された内部シェルおよび/または外部シェルによって形成されていてもよい。このことは、少なくとも、二つのシェル、内部シェルと外部シェルとが一緒になって音響スピーカケーシングあるいは音響スピーカケーシングの少なくとも一部を形成することを意味する。そのために、二つのシェルは、一緒になって音響スピーカケーシングの音響スペースを形成するように互いに継ぎ合わされる。単に選択的にではあるが、二つのシェルの間から予期せぬ形で空気が出て行くことを防ぐために、二つのシェルは、例えば然るべく配置されたゴムシール部材により互いに密封することができる。内部シェルおよび/または外部シェルの製造は、射出成形によって行なうことができるので、形状がとりわけ簡単に付与され、各シェルの重さができるだけ少なくなることになる。
【0025】
さらに、内部シェルは、トップケースの蓋部材または底部材と一体的に形成されていてもよい。このことは、内部シェルが蓋部材、あるいは代替的に底部材と一体かつ物質的に一つにまとまって製造されていることを意味する。このことは、例えば射出成形による製造を通して射出成形部品として実現される。このようにして高い統一性を達成することができ、もし別体で製造された蓋部材や底部材に内部シェルを単に固定したとしたらそうなるような二重の壁部をなくすことができる。ただ、こういった固定の変形例も基本的には可能で、内部シェルは、材料接続的および/または(摩擦)力接続的および/または形状接続的に蓋部材ないし底部材に接続することができる。
【0026】
いずれにしろ、音響スピーカケーシング全体は、トップケースの蓋部材ないし底部材に接続されていて、一緒になって“蓋アセンブリ”ないし“底アセンブリ“の一部となり得る。
【0027】
蓋部材とは、例えばトップケースの皿形の蓋を意味し、この蓋が直接的ないし間接的にヒンジを介して底部材、例えば皿形の底部トレイに回動自在に設けられており、一緒になって荷物収容部のためのトップケースの内部空間を画成している。
【0028】
底部材および/または蓋部材が、それぞれ多重壁で、例えば内壁と当該内壁を取り囲む外壁とにより形成されていてもよいことは明らかである。従って、音響スピーカケーシングの内部シェルは、複数の壁の一つだけと、つまり、例えばいずれかの内壁だけと一体、あるいは外壁だけと一体に形成されているか、或いは両方の壁と一体に形成されていてもよい。
【0029】
さらに、外部シェルは、少なくとも一つの統合されたヒンジ部を備えることができ、当該ヒンジ部は、トップケースの底部材または蓋部材のヒンジ相手側部品に回動自在に接続するように形成されている。つまり、蓋アセンブリか或いは底アセンブリに対して設けられた音響スピーカケーシングの外部シェルが、一つ又は複数のヒンジ部を備えることができ、これを用いて、外部シェルがトップケースのそれぞれ相手となる部材、つまり底部材か蓋部材かに回動自在に接続され、そのときに、そこに配置されたヒンジ相手側部品とともにヒンジを形成する。このようにして、統一性が高められ、これが、特に簡単且つコンパクトなトップケースの構成を可能にする。
【0030】
有利な実施形態によれば、少なくとも一つの音響スピーカは、低音スピーカ、特に周波数領域f≦400Hzないしf≦150Hzの低音スピーカである。このように低い周波数の音は、ホーン形チャンネルを用いることで特に有利に導くことができる。
【0031】
少なくとも一つの音響スピーカに加えて、他の追加の音響スピーカ(特に、中音スピーカまたは高音スピーカ)をトップケースに面してまたはその中に設けることができるが、これらは、ホーン形チャンネルとはつながっていない。例えば、これらの追加の音響スピーカは、対になって設けられ、それぞれ鏡映対称的にトップケースの第一の側部の領域と第二の側部の領域とに配置される。
【0032】
さらに、トップケースは、車両ユーザのための背もたれアセンブリを備えることができ、背もたれアセンブリが外部シェルを少なくとも部分的に又は完全に覆うのでもよい。つまり、トップケースが、荷物スペース、音響スピーカ構造体および背もたれアセンブリが一つになったユニットをなし、その結果、特に簡単且つコンパクトに形成することができる。
【0033】
以下に、図面を参照しながら一実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】明細書に記載のトップケースの前面の正面図である。
図2】トップケースの蓋部材に接続された音響スピーカケーシングを示す図である。
図3】内蔵型の音響スピーカケーシングの正面断面図である。
図4】蓋部材と内蔵型音響スピーカケーシングの断面平面図である。
図5】蓋部材と内蔵型音響スピーカケーシングの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、所謂“トップケース”10の前面が正面図で示されている。これは、オートバイないしオートバイに類する自動車の上に固定された荷物容器であり、通常は、荷物を収容する底アセンブリ、ここでは皿形の底部材11により形成された底アセンブリと、荷物に蓋をする蓋アセンブリ12とを備えている。この蓋アセンブリ12は、トップケース10を開け閉めするためにヒンジ13a,13bを用いて底部材11に回動自在に接続されている。蓋アセンブリ12と皿形の底部材11とは、トップケース10が閉じた状態で荷物用の収納容積部分を画定している。
【0036】
図示されたトップケース10の前面は、トップケース10が取り付けられた状態では、通常、走行方向ないし車両の車両長手方向に向いており、従って同乗者の直ぐ後ろに配置されている。さらに、蓋アセンブリ12の前面は、人間工学的に形作られた背もたれアセンブリを備えており、この背もたれアセンブリは、背もたれ14と、同乗者を支えるための二つの側方の頬部15a,15bと、さらに任意選択的に追加のクッション16とを有している。
【0037】
これら二つの側方の頬部15a,15bには、それぞれ開口部17a,17bが設けられており、背もたれ14の後方でトップケース10の蓋アセンブリ12内に組み込まれた音響スピーカ構造体20(図2乃至5参照。)の音が出るようになっている。
【0038】
付加的に且つ同じく任意選択的に、クッション16の両側には、高音源および/または中音源として構成されたそれぞれ少なくとも一つの追加の音響スピーカ18a,18bが蓋アセンブリ12の上側の領域に配置されていてもよい。しかしながらこれらは、有利には上述の音響スピーカ構造体20ないし音響スピーカケーシング21の一部ではない。
【0039】
図2は、図1の詳細図において、トップケース10の蓋アセンブリ12内に組み込まれた音響スピーカ構造体20を示している。これは、図1に示された背もたれアセンブリ14を音響スピーカ構造体20から取り去ると見えるものである。分かり易くするために、音響スピーカ構造体20の音響スピーカケーシング21だけが示されている。音響スピーカケーシング21に接続できる音響スピーカ29の位置は、概略的にのみ示唆されており、このスピーカのために設けられる音響スピーカ収容部22により特徴的に表されている。音響スピーカ29は、音響スピーカ収容部22内に挿着することができ、紙面から出てくる向きに音響スピーカ前面が向けられている。
【0040】
音響スピーカケーシング21は、空気が通るように音響スピーカの背面29に接続されたホーン形チャンネル23を備えている。このチャンネル23は、少なくとも一つの管部23aと、出口開口部24に向かって拡開したホーン部23bとを有している。少なくとも、ホーン形チャンネル23の管部23aは、自動車の予め決められた車両長手方向を横切る向きに(横手方向Qに)揃えられている。つまり、少なくとも管部23aはトップケース10の前面に対して概ね平行に延在する。ホーン部23bもまた、概ねこの横手方向Qに揃えられているとともに、さらに車両長手方向に傾けられている。
【0041】
この構造により、トップケース10、正確には蓋アセンブリ12の第一の側部Aの部分に音響スピーカ29が配置されているとともに、トップケース10ないし蓋アセンブリ12の第一の側部Aと反対側に位置する第二の側部Bの部分にホーン形チャンネル23の出口開口部24が配置されているようにできる。図2に示されているように、音響スピーカ収容部22と、さらにこの中に挿着する音響スピーカの音響スピーカ前面とは、横向き且つトップケースの前面の方に向かいつつ上方に傾けられて配置されているので、音響スピーカ29により、その音響スピーカ前面において第一の側部Aの部分で音が放出できるようになっている。その背面において放出された後方音は、ホーン形チャンネル23内に提供された空気柱を通って出口開口部24に向かって伝搬し、そこで外に出る(通り方は図3の矢印を参照。)。このようにして、音響スピーカ29を一方側に配置しているにもかかわらず、いずれの側にも一つの音響スピーカを設ける必要なく、両側で音が聞こえる体験を同乗者にさせることができる。第二の音響スピーカと、通常は必要になる追加の増幅器とは、省くことができる。
【0042】
さらに、音響スピーカケーシング21は、圧力チャンバ25を備えている。このチャンバは、空気が通るように音響スピーカの背面29に接続し、ホーン形チャンネル23の管部23aに対して平行に延在する
【0043】
図2から分かるように、音響スピーカケーシング21は、一方の側では内部シェル26により形成されており、このシェルは、図示された実施形態では、蓋アセンブリ12の蓋部材12aと一つに一体形成されている。他方の側では、音響スピーカケーシング21は、内部シェル26に接続された外部シェル27により形成されている。この外部シェル27は、トップケース10ないし蓋アセンブリ12全体の前面の部分で、内部シェル26の上に着設されており、一緒になって音響スピーカケーシング21を画定するようになっている。
【0044】
この構造は、複雑な形状に対しても適しており、内部シェル26および/または外部シェル27を例えば射出成形により特に簡単に製造することができる。
【0045】
図3は、内蔵型の音響スピーカケーシング21を前側で切断して視た様子を示し、その切断面は図2の紙面に対して平行である。単に概略的にのみ示唆された音響スピーカ用の音響スピーカ収容部22、およびホーン形チャンネル23の管部23a、および出口開口部24の方に向かうその移行部でその断面が拡開するホーン部23bが見て取れる。音響スピーカ収容部22に対して設けられた収容空間28が同様に見て取れ、この収納空間の中に、音響スピーカ収容部22に収納される音響スピーカ29の背面が入り込む。収容空間28は、空気が通るように管部23aおよび圧力チャンバ25に接続されている。そのために、収容空間28は、圧力チャンバ25と管部23aに向かって開放されている。
【0046】
図4は、水平に切断して上面視した内蔵型の音響スピーカケーシング21を圧力チャンバ25の方を見るようにして示す。音響スピーカ収容部22、収容空間28、それに接続された管部23a(その入口だけが見える。)および拡開するホーン部23bの端部における出口開口部24が同じく見て取れる。図4は、さらに、空気が通るように収容空間28に接続されていて隔壁41により管部23aから切り離されている圧力チャンバ25の一部を示している。
【0047】
図5には、切断して側面視した内蔵型の音響スピーカケーシング21がホーン部23bを見るようにして示されている。ホーン部23bの拡開する断面と、ホーン部に接続された管部23aが見て取れる。さらに、圧力チャンバ25を管部23aから隔てる隔壁41が示されている。
【0048】
図4および図5から明らかなように、音響スピーカケーシング21は、概ね内部シェル26と、その内部シェル26に接続された外部シェル27とにより画定される。二つのシェル26,27は、それらの各輪郭によって、一緒になって音響スピーカケーシング21の空洞を形成する。
【0049】
図示された実施形態では、内部シェル26は、蓋部材12aと一体となって、蓋アセンブリ12の基本構成部である一つの単体の部材に形成されている。さらに、蓋アセンブリ12は、少なくとも、この蓋アセンブリに接続された外部シェル27と、図1にのみ示された背もたれアセンブリ14とを備えている。
【0050】
音響スピーカケーシングの内部シェルと蓋部材12aとのこの一体型の形態により、一方では一体部材の第一の面が音響スピーカケーシングの空洞の境界を定め、その反対の第二の面がトップケースの内部空間の境界を定める。
【0051】
このことは、蓋部材12aと、一体接続される内部シェル26とからなる一体部材を基にして、同乗者側の部分で外部シェル27を部分的に着設することによって特に有利な仕方で音響スピーカケーシングが作られ、それによりトップケース内に音響スピーカケーシング統合され得ることを意味する。上述したように、外部シェル27は、さらに背もたれ14により覆われてもよい。
【0052】
音響スピーカケーシング21の理想的な動作態様を得るために、外部シェル27と内部シェル26とは、一つの又は複数のシール部材43、特に一周するシール部材によって互いに気密に接続されている。
【0053】
機能をさらに統合して組み込む部品を減らすために、外部シェル27は、任意選択的に、対応するヒンジ相手側部品に回動自在に接続するための二つのヒンジ部42a,42bを備えており、これらが例えばトップケース10の底アセンブリに(ここでは、底部材11に)設けられ、一緒になって各ヒンジ13a,13bを形成している。
図1
図2
図3
図4
図5