【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、特許請求項1の特徴を有した所謂“トップケース”により解決される。有利な実施形態は、同じく請求項1に従属する特許請求項に示される。
【0009】
それによれば、自動車、特にオートバイまたはオートバイに類する自動車用の所謂“トップケース”について、音響スピーカケーシングと、少なくとも一つの音響スピーカとを有する内蔵型の音響スピーカ構造体を備え、この音響スピーカケーシングを少なくとも部分的に形成するトップケースが提供される。しかも、音響スピーカケーシングは、空気が通るように音響スピーカの背面に接続されたホーン形チャンネルを備えている。
【0010】
トップケースとは、普通は、オートバイまたはオートバイに類する車両の上、なかんずく荷台またはその他の適した受け部の上に取り付け可能な、荷物を収容するために設けられている容器のことを指す。トップケースは、車両においてサイド(側方)に取り付けられるケースやバッグとは然るべく区別しなければならない。
【0011】
オートバイに類する車両とは、例えば所謂スクータ、二輪、三輪または四輪スクータ(Motorroller)並びにトライクおよびクアッドを意味するものとすることができる(ただし、それら以外を決して排除するものではない。)。
【0012】
音響スピーカ構造体は、トップケースが同時に音響スピーカケーシングを形成するようにトップケース内に組み込まれて(内蔵されて)いる。簡単に言うと、トップケースの壁部は、同時に音響スピーカケーシングの壁部としても機能し、それ相応に−選択された形状に応じて−一つまたは複数の音響スペースを画定する。音響スピーカケーシングに面して或いはその中に、一つまたは複数の音響スピーカを取り付けることができる。例えば、音響スピーカケーシングは、一つまたは複数の音響スピーカを取り付けるための一つまたは複数の音響スピーカ収容部を備えている。
【0013】
加えて、空気が通るように少なくとも一つの音響スピーカの背面に接続されているホーン形チャンネルが設けられている。そのために、例えば、音響スピーカ収容部により画定されて少なくとも一つの音響スピーカの背面が中に係入する収容空間が、ホーン形チャンネルに向かって開かれるように形成されていてもよい。このようにして、連通する一つの共通の空気柱が提供され、それに伴って、音が理想的に伝搬するように上述の空気の通りが提供される。この構造を用いることで、所謂“バックロードホーン型システム”の動作の仕組みが実現し、これをトップケースに取り入れることができ、それによって少なくとも一つの音響スピーカの効率と音圧を向上することができる。
【0014】
逆に、公知のシステムに対して音響スピーカの数をそれ相応に減らしても、それでもまだ車両ユーザ(例えば運転者や同乗者)に遜色のない音を聞かせられるようにできることになる。
【0015】
音響スピーカ構造体の実施形態次第では、一単体の音響スピーカでも既に十分となる可能性がある。その結果、二つ目の音響スピーカを追加しなくてもよくなり、それに付随した増幅を担う部分を削減することができ、これにより、それに対応した重さと取付けの手間がなくなる。このトップケースの構造のおかげで、車両重心の上側の部分において、この構造を通して小さくなった音響スピーカ構造体の質量が車両の走行特性にそのままプラスに作用する。
【0016】
ホーン形チャンネルは、例えば、少なくとも、管部と、このホーン形チャンネルの出口開口部に向かって拡開したホーン部とを備えることができる。管部の入口は、有利には音響スピーカの背面もしくはそれに付属する音響スピーカ収容部の収容空間に向けられているとともに空気が通るようにこれに接続されていることで、上述のとおり、音を伝搬させる連通した空気柱を提供するようになっている。音響スピーカの背面上で放出された後方音の音圧はその結果、管部内に存在する空気柱へと伝搬することができるようになる。この管部は、その後続の移行部でホーン部に至るが、このホーン部は、その移行部に沿ってホーン部の遠位端における出口開口部に向かって拡開し、楽器と同様“ベル部(Becherabschnitt)”とも呼ぶことができる。つまり、ホーン部が自ら延在しながら断面を拡大させることで、ホーン部の管部側の第一の端部には、当該第一の端部と反対側の第二の(開放された)端部(出口開口部が設けられている端部)における出口側断面に比べて、より狭い断面が設けられている。
【0017】
さらに、少なくとも、ホーン形チャンネルの管部は、トップケースの前面に対して概ね平行に揃えられていることができる。従って、トップケースが車両に組み立てられた状態でのホーン形チャンネルは、自動車の予め決められた車両長手方向に対して交差する向きに揃えられている。
【0018】
さらに、トップケースの第一の側部に少なくとも一つの音響スピーカが配置されているとともに、第一の側部と反対側に位置するトップケースの第二の側部にホーン形チャンネルの出口開口部が配置されているようにできる。こうして、この(或いはこれらの)音響スピーカがトップケースの第一の側部において音源(音源群)を提供し、例えば運転者や同乗者に音を聞かせることになる。ホーン形チャンネルを用いることで、さらに音響スピーカの後方音がホーン形チャンネルを介してトップケースの第二の側部に導かれる。案内された後方音がそこで出口開口部から出て、こちらの側からも運転者や同乗者に音を聞かせることになる。
【0019】
トップケースの第一および第二の側部は、トップケースの左側と右側の側方の表面とだけ捉えるべきではない。むしろ、側方の部分については、同じように前面の側方部分、例えば同乗者の背もたれの左側および/または右側と解することができる。これらの側方の部分には、同乗者を側方で支えるための、必要により設けられる側方頬部(Seitenwangen)が当然に含まれ、これらの中に、一方では少なくとも一つの音響スピーカが、他方では出口開口部が配置されているようにできる。
【0020】
いずれにしろ、ホーン形チャンネルにより、音響スピーカを専ら一方側だけに設けつつも、それでも両側で音を聞かせられるようにすることが可能になる。第二の側部における個別の(追加の)音響スピーカは、こうして省くことができ、同じく付属のアンプと相応の配線部も省くことができる。
【0021】
第一の側部における上述の一つの音響スピーカの代わりに、複数の音響スピーカがこの第一の側部に設けられ、一緒にまとめてホーン形チャンネルに接続されているようにできることは明らかである。
【0022】
同じく、トップケースは、一つ又は複数の音響スピーカと、それに対応するホーン形チャンネルとからなる上述の組み合わせを一組より多く有していてもよい。その場合には、複数のホーン形チャンネルの少なくとも一つ又は複数がこの記載に基づいて形成されている。
【0023】
他の実施形態によれば、音響スピーカケーシングは、圧力チャンバを備えることができる。このチャンバは、同じように音響スピーカケーシングにより形成され且つ少なくとも音響スピーカに向かって、特には音響スピーカの背面に向かって開放されている容量部により画定される。つまり、この圧力チャンバも音響スピーカ収容部の収容空間に向かって開放されるように形成されている。有利には、この圧力チャンバは、ホーン形チャンネルに平行に配置されており、隔壁によりホーン型チャンネルから隔離されている。こういった構造は、特に簡単かつスペースを節約して作製することができ、トップケース内で統合することができる。
【0024】
他の実施形態によれば、音響スピーカケーシングは、少なくとも部分的に内部シェルおよび当該内部シェルに接続された外部シェルによって形成され、特に射出成形により製造された内部シェルおよび/または外部シェルによって形成されていてもよい。このことは、少なくとも、二つのシェル、内部シェルと外部シェルとが一緒になって音響スピーカケーシングあるいは音響スピーカケーシングの少なくとも一部を形成することを意味する。そのために、二つのシェルは、一緒になって音響スピーカケーシングの音響スペースを形成するように互いに継ぎ合わされる。単に選択的にではあるが、二つのシェルの間から予期せぬ形で空気が出て行くことを防ぐために、二つのシェルは、例えば然るべく配置されたゴムシール部材により互いに密封することができる。内部シェルおよび/または外部シェルの製造は、射出成形によって行なうことができるので、形状がとりわけ簡単に付与され、各シェルの重さができるだけ少なくなることになる。
【0025】
さらに、内部シェルは、トップケースの蓋部材または底部材と一体的に形成されていてもよい。このことは、内部シェルが蓋部材、あるいは代替的に底部材と一体かつ物質的に一つにまとまって製造されていることを意味する。このことは、例えば射出成形による製造を通して射出成形部品として実現される。このようにして高い統一性を達成することができ、もし別体で製造された蓋部材や底部材に内部シェルを単に固定したとしたらそうなるような二重の壁部をなくすことができる。ただ、こういった固定の変形例も基本的には可能で、内部シェルは、材料接続的および/または(摩擦)力接続的および/または形状接続的に蓋部材ないし底部材に接続することができる。
【0026】
いずれにしろ、音響スピーカケーシング全体は、トップケースの蓋部材ないし底部材に接続されていて、一緒になって“蓋アセンブリ”ないし“底アセンブリ“の一部となり得る。
【0027】
蓋部材とは、例えばトップケースの皿形の蓋を意味し、この蓋が直接的ないし間接的にヒンジを介して底部材、例えば皿形の底部トレイに回動自在に設けられており、一緒になって荷物収容部のためのトップケースの内部空間を画成している。
【0028】
底部材および/または蓋部材が、それぞれ多重壁で、例えば内壁と当該内壁を取り囲む外壁とにより形成されていてもよいことは明らかである。従って、音響スピーカケーシングの内部シェルは、複数の壁の一つだけと、つまり、例えばいずれかの内壁だけと一体、あるいは外壁だけと一体に形成されているか、或いは両方の壁と一体に形成されていてもよい。
【0029】
さらに、外部シェルは、少なくとも一つの統合されたヒンジ部を備えることができ、当該ヒンジ部は、トップケースの底部材または蓋部材のヒンジ相手側部品に回動自在に接続するように形成されている。つまり、蓋アセンブリか或いは底アセンブリに対して設けられた音響スピーカケーシングの外部シェルが、一つ又は複数のヒンジ部を備えることができ、これを用いて、外部シェルがトップケースのそれぞれ相手となる部材、つまり底部材か蓋部材かに回動自在に接続され、そのときに、そこに配置されたヒンジ相手側部品とともにヒンジを形成する。このようにして、統一性が高められ、これが、特に簡単且つコンパクトなトップケースの構成を可能にする。
【0030】
有利な実施形態によれば、少なくとも一つの音響スピーカは、低音スピーカ、特に周波数領域f≦400Hzないしf≦150Hzの低音スピーカである。このように低い周波数の音は、ホーン形チャンネルを用いることで特に有利に導くことができる。
【0031】
少なくとも一つの音響スピーカに加えて、他の追加の音響スピーカ(特に、中音スピーカまたは高音スピーカ)をトップケースに面してまたはその中に設けることができるが、これらは、ホーン形チャンネルとはつながっていない。例えば、これらの追加の音響スピーカは、対になって設けられ、それぞれ鏡映対称的にトップケースの第一の側部の領域と第二の側部の領域とに配置される。
【0032】
さらに、トップケースは、車両ユーザのための背もたれアセンブリを備えることができ、背もたれアセンブリが外部シェルを少なくとも部分的に又は完全に覆うのでもよい。つまり、トップケースが、荷物スペース、音響スピーカ構造体および背もたれアセンブリが一つになったユニットをなし、その結果、特に簡単且つコンパクトに形成することができる。
【0033】
以下に、図面を参照しながら一実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。