特許第6648311号(P6648311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6648311新規のメンチルニコチナート合成プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648311
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】新規のメンチルニコチナート合成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/803 20060101AFI20200203BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200203BHJP
【FI】
   C07D213/803
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-563603(P2018-563603)
(86)(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公表番号】特表2019-518752(P2019-518752A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】EP2017061635
(87)【国際公開番号】WO2017211543
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年12月13日
(31)【優先権主張番号】102016000058282
(32)【優先日】2016年6月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518424774
【氏名又は名称】マルチケム アール アンド ディー ソシエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】セガラ,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】セガラ,マルコ
【審査官】 長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−055880(JP,A)
【文献】 米国特許第05962689(US,A)
【文献】 Organic Syntheses, Coll.,1990年,Vol.8, p.350; Vol.68, p.155,DOI:10.15227/orgsyn.068.0155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/803
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、純度の高いメンチルニコチナートを調製する方法
工程1:C1〜C4のアルコキシドの種類に属する直鎖状または分枝状のアルカリ触媒の存在下、40℃〜150℃の温度での、ニコチン酸のC〜Cアルキルエステルとのメンソールのエステル交換反応、
ここで、メンソールはニコチン酸の前記アルキルエステルに対して、1:1〜20:1のモル比であり、
前記反応は、真空下で行われて、前記反応により生成されるC〜Cのアルキルアルコールのみの除去を促し、その後、
前記反応により得られる生成物をろ過して、反応生成物から触媒の残渣を分離する;
工程2:蒸留される反応物(混合物)の質量に対して0.1〜5%の濃度の活性炭の存在下、まず、工程1で反応しなかったニコチン酸のC〜Cアルキルエステル、次に、余剰のメンソール、その後、純メンチルニコチナートを蒸留するような温度および真空条件下での、工程1で得られる反応生成物の混合物の蒸留。
【請求項2】
工程1における前記ニコチン酸のC〜Cアルキルエステルが、メチルニコチナートである、請求項1に記載の方法
【請求項3】
工程1における前記ニコチン酸のC〜Cアルキルエステルのモル量が、メンソールに対して1:1.5〜1:2である、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
工程1の前記温度が、70℃〜120℃である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法
【請求項5】
工程1の前記真空が、100〜400ミリバールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法
【請求項6】
工程1の前記触媒が、ナトリウムメトキシドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法
【請求項7】
比表面積が一般に500〜2500m/gである粉末活性炭が工程2で使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法
【請求項8】
工程2のメンチルニコチナートの蒸留の温度および真空が、約150℃〜170℃であり、0.5〜2.0ミリバールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法
【請求項9】
メンチルニコチナートの収量が少なくとも65%であり、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法
【請求項10】
工程1の前記触媒が、前記エステルに対して0.1〜10重量%の量で使用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法
【請求項11】
純度が約99.55%のメンチルニコチナートを調製するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔説明〕
本発明は、工業的に許容可能な高い最終収量、および高い純度のメンチルニコチナートを比較的短時間で容易に合成でき、健康に害を及ぼすかまたは取り扱いもしくは貯蔵が困難な、任意の種類の溶媒、前駆物質、中間体化合物または材料を用いることがない、メンチルニコチナートの新規の合成プロセスに関する。
【0002】
メンチルニコチナート(CAS Nbr 40594-65-8; EINECS 254-991-1)は、メンソールとニコチン酸とのエステルである。式C1623NOおよび以下の構造を有する。
【0003】
【化1】
【0004】
この分子は、(皮膚反応の微小循環を活性化させる)血管拡張特性を有するため、化粧品(例えば、セルライトの処置のためのクリームおよびジェル、脱毛症の処置のためのローション、歯磨き粉、口腔洗浄剤、性反応の刺激のための局所用の調合薬)に使用される有効成分である。
【0005】
例えば、日本国特許第48005592号(B)(Ito, Hiroo et al);米国特許第3,917,613号(Francoise Ernestine Lucie Humbert et al.);米国特許第9,144,572号(B2)(Segalla)を参照のこと。
【0006】
メンチルニコチナート等のエステルを調製するための基本的な3つの方法がこれまでのところ知られている。
【0007】
1.強酸性の脱水素触媒(通常、硫酸またはp−トルエン硫酸)の存在下、通常、溶媒としても作用する過剰のアルコール中または非極性溶媒(すなわち、ベンゼン、トルエン)中において、アルコール(すなわち、メンソール)との反応のため、特定のカルボン酸(すなわち、ニコチン酸)を作製することにより、直接エステル化の反応に基づき、カルボン酸から直接に。
【0008】
これは最も古典的な種類のエステル化であり、1895年にEmil FischerおよびArthur Speier(Emil Fischer, Arthur Speier "Darstellung der Ester", Chemische Berichte 28: 3252- 3258, 1895.)により初めて記載されたように、Fischer−Speierエステル化として一般に知られている。
【0009】
2.カルボン酸の塩化物(すなわち、ニコチン酸クロリド塩酸塩)から。特定のカルボン酸の塩化物は、通常、弱塩基性溶媒(例えば、ピリジン)の存在下において、アルコール(すなわち、メンソール)と反応し、エステルを生産し、塩酸を生成する。
【0010】
例えば、文献(no. 206 of R. Charonnat, M. et J.V. Harispe L. et Chevillard "Sur quelques esters nicotiques de mono et poly-alcools et leurs derives halogeno-alcoyles", Memoires Presentes a la Societe Chimique, 1948)に記載の内容を参照のこと。
【0011】
3.エステルから他のアルコールを特定の条件下で除去するアルコールの能力を利用して、エステル交換によるエステル(すなわち、ニコチンエステル)から。エステル交換プロセスは、酸(硫酸または無水塩酸)および塩基(通常は、アルコールの共役塩(アルコキシドとして知られる))の両方により触媒される。例えば、米国特許第3,917,613号(Humbert et al.)を参照のこと。
【0012】
第1の方法は、メンチルニコチナートの合成には使用できない。その理由は、強い酸性触媒(実際は、濃縮された硫酸またはp−トルエン硫酸等)の存在により、メンソールの迅速な副次的な脱水が生じ、結果として、所望でない二次化合物(メンテン、メンタン、メンテン二量体、メンテン三量体等)の生成が起こり、生成物の混合物からの分離が難しくなり、メンチルニコチナートの生成が著しく減り(もしかしたら、妨げられ)、前記混合物が琥珀色または暗褐色に着色するためである。
【0013】
また、非常に反応性が高い触媒の存在により、ニコチン酸の分子の同時分解も引き起こされ、有色で悪臭がひどい二次窒素化合物の生成が生じ、メンチルエステルの最終収量が微々たる量で工業的に許容可能でない。
【0014】
同様に、上述の第2の方法も、異なる理由ではあるが、メンチルニコチナートの合成に容易に適用できない。その理由は、費用が掛かる、長い製造時間を要する、同様に、非常に反応性が高く、健康に害を及ぼし有毒な物質(例えば、塩化ニコチノイルおよびその前駆物質である塩化チオニルSOCl腐食性が高く吸入による毒性が高い化合物および有毒な溶媒(例えば、ピリジン、ベンゼンおよびトリクロロメタン等)の使用が必要である、塩酸ガス(吸入ならびに皮膚および眼との接触により、非常に反応性が高く、腐食性があり、毒性がある)が発生するためである。
【0015】
実際、この第2の方法も、主に塩酸の化学的攻撃性という理由により、メンソールの減少が(特に、低温で作用していない場合に)容易に引き起こされ得る。さらに、プロセス全体は、許容可能な収量(著者らによると79%)を特徴とするが、長い製造時間を要し、複数の反応フェーズ(塩化ニコチノイルの調製に続いて、メンソールとの後者の反応)、溶媒の蒸留および回収、アルカリ化水での洗浄、酸の中和、水相からの有機相の分離、乾燥等が必要である。これにより、工業的に非常に複雑で、経済的に不都合で、経済的にリスクが高くなっている。
【0016】
上記で示される第3の調製方法(エステル交換)は、メンチルニコチナートの合成に不都合が少ないとして取り入れられるプロセスである。米国特許第3,917,613号に記載されるように、例えば、メンソールのナトリウムアルコキシド(ナトリウムメントレート)(メンソールと金属ナトリウムとを前反応させることにより、プロセスの最初の工程で、in situで得られる触媒である)の存在下での、メチルアルコールのニコチン酸(メチルニコチナート)とメンソールの反応で構成される方法であると知られている。
【0017】
しかし、この第3の合成方法でさえ、メンチルニコチナートの調製には産業上利用できないとする特定の批判的な側面を有する。例えば、メンソールと金属ナトリウムとの反応時間が非常に長い、気体の水素(非常に燃えやすく、爆発しやすい)が生成される、洗浄水の使用の後、ジクロロメタン(がんになる危険がある)等の健康に害を及ぼす有機溶媒を用いて有機相を分離する必要がある、最終収量が非常に低く(50%)、大規模での工業プロセスには好ましくない等である。
【0018】
エステル交換によるメンチルニコチナートの他の合成プロセスは、Organic Syntheses, Coll. Vol. 8, p.350 (1993); Vol. 68, p.155 (1990) "Transesterification of methyl esters of aromatic and α, β-unsaturated acids with bulky alcohols: (-) - Menthyl cinnamate and (-) - Menthyl nicotinate,"に報告されているプロセスであり、n−ブチルリチウム(n−BuLi)との前反応のためにメンソールを作製する工程から基本的に構成される。n−BuLiは、強塩基性有機金属化合物であり、空気に対して不安定であるため、一般に、有機溶液(通常はヘキサン)中で提供され、特に水と接触すると、自然点火する気体を放出するため、非常に危険であると考えられている。
【0019】
前記文献の著者らにより詳述されているように、実際に、このような反応は、完全に無水の環境下、アルゴン等の不活性ガス(すなわち、水、酸素および二酸化炭素とのn−ブチルリチウムの反応性および不適合性が高いため、周囲の大気から分離されたガス)から構成される雰囲気下で、テトラヒドロフラン(揮発性が高い無色の液体であり、特徴的な不快臭がし、燃えやすく、ペルオキシド(非常に激しく腐敗し得、この理由から、ブチルヒドロキシトルエンと阻害されるか、水酸化ナトリウムの入った気密瓶で貯蔵される)を生成しやすい)から構成される溶媒中で必ず起こる。
【0020】
本質的に、このような明らかに高い収量は、この特定のケースでは、n−ブチルリチウムが(すなわち、低濃度において)触媒として基本的には用いられないが、実際の中間試薬として、他の試薬(リチウムメントレート;メチルエステルと順に反応し、メンチルニコチナートの生成をもたらす)の生成というはっきりとした目的のため、比較的高く、メンソールとの化学量論的な量(100mmol メンソール:88mmol n−ブチルリチウム)で使用されることに主に基づくとはいっても、前記著者らにより報告された最終収量はまずまずよい(77〜83%)。
【0021】
しかし、この全ては、工業スケールにおいて全プロセスを不利にするような費用によって実現される(現在、1.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(Sigma-Aldrich社製)の1リットルの価格は、178.12ユーロであり、8リットルの価格は958.00ユーロである)。
【0022】
それゆえ、上述された経済的性質の重要因子に加えて、健康に害を及ぼす溶媒および、毒性が強く貯蔵が困難な化合物を使用することも考慮すると、プロセス全体は、工業生産での実現よりも、純粋な学術的目的のために研究室で行うことがより好適である。
【0023】
さらに、この作製方法は、脱気、脱湿、アルゴンの連続吸引、水洗、有機相の分離、乾燥、蒸留等の多数の複雑な段階も必要である。
【0024】
本発明の目的は、収量および簡易性に関して両方、高い純度で生成物を得るために必要な業務段階および工業段階の全ての速度、費用対効果および環境持続可能性が既知のものに関して代わり得る(もしかしたら、改善された)メンチルニコチナートの合成プロセスを提供することにより、少なくとも一部において先行技術の不都合を克服することである。
【0025】
他の目的は、大規模生産という工業的観点から有利な高い収量も特徴とするプロセスを提供することである。
【0026】
この目的および以下に記載される他の目的は、添付の独立請求項1に記載される特徴を有する発明に係る合成プロセスにより達成される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態が、従属請求項に記載される。
【0028】
本発明の目的は、工業的に許容可能な高い最終収量、および高い純度のメンチルニコチナートを得ることができる、メンチルニコチナートの合成プロセスに関する。当該プロセスは、有害な溶媒の使用を必要とせず、エステル交換反応およびその後の活性炭の存在下での真空蒸留の2つの工程を含む。
【0029】
より具体的には、本発明の合成プロセスは以下の工程を含む:
工程1:ニコチン酸の(直鎖状または分枝状の)C〜Cのアルキルエステル(ただし、このエステルおよび対応するアルコールが、メンチルニコチナートおよびメンソールのそれぞれよりも沸点が十分低く、蒸留によりこれらの混合物から容易に分離できるという条件)とのメンソールのエステル交換反応。前記アルキルエステルは、好ましくはC〜Cのアルキルエステルであり、より好ましくはメチルニコチナートである。前記エステル交換反応はアルキルアルコキシドまたはアルコラートR−O−Me(Rは、C〜C(好ましくはC〜C)の直鎖状または分枝状のアルキル群であり、Meは、ナトリウムおよびカリウムから選択される)の種類に属するアルカリ触媒の存在下、行われる。前記アルコキシドは、より好ましくはナトリウムメトキシドおよびカリウムメトキシドの中から選択され、さらに好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0030】
前記アルコキシドは、好ましくは(前記エステルに対して)0.1〜10重量%の量で存在し、
前記メンソールは前記ニコチン酸のアルキルエステルに対して、1:1〜20:1のモル比であり、
前記反応は、40〜150℃(好ましくは70〜120℃)の温度で、以下の図に沿って行われる。
【0031】
【化2】
【0032】
また、前記エステル交換反応は、不完全真空下(例えば、100〜400ミリバール)で行われ、前記反応により生成されるC〜Cのアルキルアルコールのみ全ての除去を促す。
【0033】
前記アルキルアルコールの蒸留の後に得られる最終混合物をろ過して、残りの液体成分から固形の触媒残渣(主に、メンチルアルコキシドから構成される)を分離する。
【0034】
工程2:活性炭(好ましくは粉末(PAC、粉末活性炭)であるが、これに限定されない)の存在下での、工程1で得られる混合物の蒸留。PACの濃度は、蒸留される生成物の質量に対して、0.1〜5重量%であり、好ましくは0.3〜1.2重量%である。
【0035】
まず、工程1で反応しなかったアルキルエステル、次に、余剰のメンソール(いずれも、次のプロセスで再利用され得る先駆物質を構成する)、その後、純メンチルニコチナートを蒸留するような、温度および真空の条件下で、前記蒸留は行われる。
【0036】
工程1では、C〜Cのアルキルエステル試薬は、メンソールに対して、好ましくは1:1.5〜1:2のモル比である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、前記工程1で生成される対応するアルコール(メチルアルコール)の除去物をより簡単に得るため、ナトリウムメトキシドの存在下でのメチルニコチナートとのメンソールのエステル交換反応により工程1が行われる。
【0038】
工程2では、たとえ、作業条件(蒸留する全体量の撹拌の温度、真空、速度および効率)の相関要素として好適に選択できるパラメータであるとしても、活性炭(通常、ほぼ500〜2500m/g程度、好ましくは約1400m/g)の大きさ、空隙率および比表面積が重要な因子である。
【0039】
例示の目的により、本発明の目的のため、「Norit CA1」または「Norit CAP Super」(Norit Italia SpA製)等の商業的に知られている粉末活性炭、また、「Acticarbone NCL 1240」および「Acticarbone NCL 816」(CECA Italiana SpA製)等の顆粒活性炭(GAC)について、純粋な参考情報を提供する(しかし、これらに限定されない)。
【0040】
GACの使用割合(通常、0.5〜3重量%)は、明確な理由(GACの方が接触面積が小さい)により、PACよりも大きいに違いないが、工程2において、非常に優れた実績をもたらし、次のプロセスのためにできるだけ速い分離および再利用をもたらす。今日市販で入手可能なほぼ全ての種類の活性炭が本発明により意図される目的のためにいかなる場合においても有用であり、粉末では、野菜油の漂白用に一般に使用される活性炭が最も好適であることがわかった。
【0041】
工程2の温度および真空の条件は、例えば、メチルニコチナート/メンソール分画の蒸留には、約100℃および15ミリバールであり、メンチルニコチナートの蒸留には約170℃および高い真空(0.5〜20ミリバール)である。
【0042】
工程2の蒸留は、当該分野において知られている任意の蒸留技術(例えば、分画蒸留、モル蒸留等)により行うことができる。
【0043】
工程2において、活性炭の存在下で蒸留が施される反応生成物の混合物は、上述の好ましい実施形態のケースでは、メンチルニコチナート、余剰のメンソール、反応しなかった少量のメチルエステル、および樹脂状二次化合物から主に構成され、工程1中で必ず生成される二次テルペン物質の量に依存して通常は、黄色/琥珀色/茶色である。
【0044】
活性炭の存在下での前記工程2の蒸留の後、少量の残渣(後に、除去される)が残る。当該残渣は、含浸させた活性炭、およびメンチルニコチナートよりも沸点が高い樹脂状テルペン化合物から構成される。
【0045】
本発明に係る本プロセスのメンチルニコチナートの収量は、少なくとも約65%、好ましくは少なくとも79%、より好ましくは83〜87%である。
【0046】
本プロセスの高い収量は、本プロセスとは異なる合成経路を用いる他のプロセスにより当該分野で通常必要とされている、中和工程および/または水での洗浄工程および/または揮発性有機溶媒(すなわち、ジクロロメタン、ジエチルエーテル等)に可溶な有機相の分離工程といったさらなる工程を必要としないことに主に起因する。
【0047】
本プロセスの終了時に得られるメンチルニコチナートのGC−MSで確認される純度は、少なくとも98.5%、好ましくは約99.55%(残りの0.45%は純メンソール)であることが分かった。20℃での屈折率:1.5074;沸点:168℃(0.7ミリバール);比重:1.04g/cc。
【0048】
このように得られた蒸留されたメンチルニコチナートは、完璧に透き通った白(無色)であり、ほぼ無臭であり、二次テルペン残渣を含んでいない(GC−MSおよび比色分析により確認された)。
【0049】
出願人は驚くべきことに、また予期せぬことに、工程2の反応生成物の蒸留の間にこのような活性炭が存在することにより、著しく収量が向上し、非常に高い純度が実現され、これらは、同じ蒸留で活性炭がない場合には得られないことを見出した。この点については、以下に記載の比較例を参照のこと。
【0050】
任意の理論に制限されることなく、活性炭の酸性pH(通常、約2.0〜3.5)も、本プロセスの高い収量に関連する因子のひとつであると考えられている。その理由は、工程1で使用される触媒の残り得る任意のアルカリ残渣の「中和」に寄与するからである。
【0051】
活性炭は、高温に対して化学的に不活であり、抵抗力があるため、驚くべき効果を示しながら、前記工程2のメンチルニコチナートの蒸留において使用できる。上述のように、メンチルニコチナートは、その非常に高い沸点(0.7ミリバールにおいて約160℃)のため、高い温度(約150〜170℃)および高い真空(0.5〜20ミリバール)の条件で蒸留する必要がある。
【0052】
出願人により行われた試験は、これらの温度および真空の条件において、実際に、工程2において活性炭を使わなかった場合、着色したテルペン物質の蒸留での通過が必ず存在し、該テルペン物質は、中間の沸点(すなわち、メンソール分画の沸点〜メンチルエステルの沸点)を有するため、収集した後生成物の結果として必ず汚染(着色)しながら、メンソールの後分画およびメンチルニコチナートの前分画と共に、蒸留受けフラスコへと容易に進むため、より純度が高く着色が少ない生成物を得たいと考えている技師に、メンチルニコチナートの最終収量を犠牲にして、さらに、分画の蒸留の時間および費用がかかる工程を蒸留液に施すことを示した。
【0053】
有利なことに、上述の工程1および工程2において、有機溶媒を用いることまたは有機相を水で洗浄することが不要であることは特筆すべきである。
【0054】
実際、全プロセスは、中和工程および/または分液漏斗を用いての有機相の分離工程、および/または乾燥剤を用いてのその後の脱水工程といったさらなる工程を必要としない。
【0055】
本発明に係る、上述のメンチルニコチナートの全合成プロセス(工程1の反応および工程2の蒸留)は、実際、たいてい無水条件下で行われ、水での数回の洗浄およびその後の有機相の分離を全く必要としないことは特筆すべきである。
【0056】
特に、プロセス全体において、有機化学溶媒の使用が不要で、燃えやすいか爆発しやすい気体が発生することなく、洗浄操作(すなわち、水中での反応生成物の混合物の激しい撹拌、その後の水相の安定化といった時間がかかる工程)がなく、有機相の分離がなく、有機生成物の乾燥/脱水工程が不要である。本合成プロセスが有利な点は、蒸留されるメンソールのニコチン酸エステルは、完全に無水であり、非常に高い純度(>99.50%)および非常に高い化学収量(>83%)を示す。
【0057】
本発明に記載されているように、単純で、速く、経済的で、効率的(高い収量)で、経済的インパクトを削減した合成方法の可能性により、コストの削減、工業リソースおよび製造時間の節約といった著しい利益をどれほどもたらすかということを理解することは容易である。
【0058】
工業用合成の当業者にとっては、本明細書中に記載される方法は、二次的または部分的な変更(例えば、異なるアルカリ触媒、試薬エステルとしての他のニコチン酸エステル、もしくは、試薬または他の種類の活性炭に対して他の量的割合の試薬または触媒の使用等)が可能であるが、全ての変更は本発明の範囲内であることを理解することは容易であろう。
【0059】
以下に、いくつか例示を行うが、本発明を限定するものではない。
【0060】
〔実施例1〕
(工程1−反応)
蒸留塔を備える反応器において、615.20g(3.9M)のメンソールおよび360.00g(2.6M)のメチルニコチナートを、真空下で溶解する。24.80gのアルカリ触媒(ナトリウムメトキシド溶液(5.4Mのメンソール溶液;30重量%)で構成され、市場において容易に入手可能である(最近では、特に、バイオディーゼルの合成業界において使用される))を加える。
【0061】
反応により生じる全てのメチルアルコール(かつ、メチルアルコールのみ)を通常約100〜400ミリバールで蒸留させるのに必要十分な真空下で、得られる混合物を撹拌し、70〜120℃で徐々に加熱した。この反応は非常に速く進み、数時間以内に終わる。
【0062】
全てのメチルアルコールが除去されたとき、(将来の再利用のために回収され得る触媒の固体残渣から反応液体生成物を分離するため)反応内容物を回収し濾過する。
【0063】
(工程2−蒸留)
(工程1中に必ず生成されるテルペン物質の量に依存して)通常、黄色/琥珀色/茶色に着色した、(メンチルニコチナート、余剰のメンソール、反応しなかった少量のメチルエステル、および二次テルペン化合物で主に構成される)工程1の生成物をロータリーエバポレータに直接注ぐ。
【0064】
蒸留を始める前に、適量の粉末活性炭を加える。蒸留される生成物の全量中の好適なPACの濃度は、0.3〜1.2重量%であることがわかった。
【0065】
その後、まず工程1で反応しなかったメチルニコチナートのほんの一部、次に、余剰のメンソール分画、最後に純メンチルニコチナートが蒸留されるような、温度および真空の条件において蒸留を行う。
【0066】
少量の残渣を蒸留ポットに残し、その後、除去する。当該残渣は含浸活性炭、およびメンチルニコチナートよりも高い沸点を有する樹脂状テルペン物質から主に構成される。
【0067】
メンチルニコチナートの収量は、83〜87%である。GC−MSで確認された純度は約99.55%であった(残りの0.45%は純メンソールである)。
【0068】
その見た目は完璧に透き通った白(無色)であり、ほぼ無臭の液体である。ハーゼン色数(Lange LICO−620比色計、C/2°):9。20℃での屈折率(Abbe屈折計、589nm):1.5074。
【0069】
〔実施例2(比較例)〕
活性炭を用いないこと以外は同様にして、実施例1に記載の手順を行う。
【0070】
強く黄色に着色した生成物を得るが、ピリジン臭がして、極めて不純物が多く、99%以下の純度である。ハーゼン色数:131。20℃での屈折率:1.5053。
【0071】
本発明は、上述の特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項に規定されるように、当業者の想到する範囲で、本発明自体の範囲を超えることなく、種々の詳細な変更が可能である。