(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号2のアミノ酸配列のN末端から123番目のアミノ酸がシステインに置換、243番目のアミノ酸がバリンに置換、387番目のアミノ酸がトレオニンに置換、405番目のアミノ酸がチロシンに置換、413番目のアミノ酸がトレオニンに置換、458番目のアミノ酸がリジンに置換、または前記置換を組み合わせたアミノ酸配列からなる、5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体。
前記コリネバクテリウム属微生物が、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)である、請求項5に記載の5’−イノシン酸を生産するコリネバクテリウム属微生物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
これを具体的に説明すると、次のとおりである。一方、本明細書で開示された各説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用できる。すなわち、本明細書で開示された様々な要素のすべての組み合わせが本発明のカテゴリに属する。また、下記記述された具体的な叙述によって、本発明のカテゴリは制限されるものではない。
【0009】
前記目的を達成するための本発明の一つの様態は、5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体を提供することにある。
【0010】
本明細書において、用語、「5’−イノシン酸を排出するタンパク質」は、5’−イノシン酸(5'-inosine monophosphate;IMP)を細胞外に排出するのに関与するタンパク質を意味する。本発明の目的上、前記用語はIMP排出能を有するタンパク質、IMP排出タンパク質、5’−イノシン酸排出能を有するタンパク質、5’−イノシン酸排出タンパク質などと混用して使用してもよい。具体的には、前記タンパク質はImpEで示してもよく、より具体的には、ImpE1またはImpE2で示してもよい。さらに具体的には、本発明の5’−イノシン酸を排出するタンパク質はImpE2で示してもよいが、これに制限されるものではない。また、前記タンパク質は、コリネバクテリウム属由来であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・スタティオニス由来であってもよいが、これに制限されない。
前記タンパク質は、配列番号2で記載されたアミノ酸配列を含むか、配列番号2で記載されたアミノ酸配列で構成されたタンパク質であってもよいが、前記タンパク質と同様の活性を有する配列は制限なく含み、当業者は、公知のデータベースであるNCBIのGenBankなどから配列情報を得ることができる。また、本出発明のIMP排出タンパク質は、配列番号2及び前記配列番号2と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、このような相同性または同一性を有しながら、前記タンパク質に相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、本発明のタンパク質として使用できることは自明である。
すなわち、本明細書で「特定配列番号で記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質」または「特定配列番号のアミノ酸配列からなるタンパク質」と記載されていても、該当配列番号のアミノ酸配列からなるタンパク質と同一もしくは相応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、保存的置換または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、本発明で使用できることは自明である。例えば、本発明のタンパク質変異体と同一あるいは相応する活性を有する場合であれば、前記アミノ酸配列の前後に、タンパク質の機能を変更しない配列の追加、自然に発生しうる突然変異、そのサイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換は除外せず、これらの配列の追加、あるいは突然変異を有する場合でも、本発明の範囲内に属することは自明である。
【0011】
本明細書において、用語、「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と互いに関連する程度を意味し、パーセンテージで表示されうる。
用語、相同性及び同一性は、多くの場合、相互交換的に用いられる。
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムによって決定され、用いられるプログラムによって確立されたデフォルトのギャップペナルティが一緒に利用されてもよい。実質的に、相同性を有するか(homologous)または同一(identical)の配列は、中間または高い厳しい条件(stringent conditions)で、一般的に、配列全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%以上でハイブリッドしてもよい。ハイブリッド化はポリヌクレオチドでコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮される。
【0012】
任意の2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、非特許文献2と同じデフォルトのパラメータを用いて「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定してもよい。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、非特許文献3)(バージョン5.0.0またはそれ以降のバージョン)で実行されるような、ニードルマン−ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献4)を使用して決定してもよい。(GCGプログラムパッケージ(Devereux、J.、et al、Nucleic Acids Research 12: 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul、[S.] [F.,] [ET AL、J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990);Guide to Huge Computers、Martin J. Bishop、[ED.,] Academic Press、San Diego,1994、及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定してもよい。
【0013】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、非特許文献5に開示されたように、例えば、非特許文献4のようなGAPコンピュータープログラムを利用して配列情報を比較することによって決定してもよい。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち、より短いものからのシンボルの全体数で類似の配列されたシンボル(つまり、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を割った値として定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法の比較マトリックス(同一性のための1及び非同一性のための0の値を含有する)及び非特許文献6に開示されたように、非特許文献7の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップで各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含んでもよい。したがって、本明細書で使用されるものとして、用語、「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0014】
本明細書において、用語、「変異体(variant)」は、一つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/または変形(modification)において、前記列挙された配列(the recited sequence)と相異するが、前記タンパク質の機能(functions)または特性(properties)が維持されるポリペプチドを指す。変異型ポリペプチドは、数個のアミノ酸置換、欠失または付加によって識別される配列(identified sequence)と異なる。このような変異型は、一般的に前記ポリペプチド配列のいずれかを変形し、前記変形されたポリペプチドの特性を評価して識別されうる。つまり、変異型の能力は本来のタンパク質(native protein)に比べて増加したり、変わらなかったり、または減少されうる。また、一部の変異型は、N末端のリーダー配列または膜転移ドメイン(transmembrane domain)のような一つ以上の部分が除去された変異型を含んでもよい。他の変異型は、成熟タンパク質(mature protein)のN及び/またはC末端から一部が除去された変異型を含んでもよい。
【0015】
本明細書において、用語、「保存的置換(conservative substitution)」は、1つのアミノ酸を類似の構造的及び/または化学的性質を有する別のアミノ酸に置換させることを意味する。前記変異型は一つ以上の生物学的活性を依然として保有しながら、例えば、一つ以上の保存的置換を有してもよい。このようなアミノ酸置換は、一般的に残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性(amphipathic nature)での類似性に基づいて発生しうる。例えば、正で荷電された(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含み;負で荷電された(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含み;芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンを含み;疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、グリシン及びトリプトファンを含む。
【0016】
また、変異型はポリペプチドの特性と2次構造に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは翻訳同時に(co−translationally)または翻訳後に(post−translationally)、タンパク質の転移(transfer)に関与するタンパク質N末端のシグナル(またはリーダー)配列とコンジュゲートしうる。また、前記ポリペプチドはポリペプチドを確認、精製、または合成できるように、他の配列またはリンカーとコンジュゲートされうる。
【0017】
具体的には、本発明の5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体は、配列番号2のアミノ酸配列のN末端から、123番目のアミノ酸、243番目のアミノ酸、387番目のアミノ酸、405番目のアミノ酸、413番目のアミノ酸または458番目のアミノ酸からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有するタンパク質変異体であってもよいが、これらに限定されない。
例えば、本発明の5’−イノシン酸排出能を有するタンパク質変異体は配列番号2のアミノ酸配列のN末端から123番目のアミノ酸がシステインに置換(F123C)、243番目のアミノ酸がバリンに置換(I243V)、387番目のアミノ酸がトレオニンに置換(S387T)、405番目のアミノ酸がチロシンに置換(F405Y)、413番目のアミノ酸がトレオニンに置換(M413T)、458番目のアミノ酸がリジンに置換(N458K)、または前記置換を組み合わせたアミノ酸配列を有する5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体であってもよいが、これに制限されない。より具体的には、前記5’−イノシン酸排出能を有するタンパク質変異体は、配列番号73、74、75、76、77、78、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、 121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、または155を有するアミノ酸配列、またはこれと少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。さらに、このような相同性を有し、前記タンパク質に相応する効能を示すアミノ酸配列を有するタンパク質であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、本発明のタンパク質として使用されることは自明である。
【0018】
また、本発明の5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体は、さらに、配列番号2のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、64番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、または前記置換が組み合わせされたアミノ酸配列からなる、5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体であってもよい。具体的には、本発明の5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体は、さらに、配列番号2のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がイソロイシンに置換、64番目のアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸に置換、または前記置換が組み合わせされたアミノ酸配列からなる、5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体であってもよい。
【0019】
前記「他のアミノ酸に置換」は、置換前のアミノ酸と異なるアミノ酸であれば、制限されない。例えば、配列番号2のアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換される場合、前記他のアミノ酸は、バリン以外のアミノ酸であれば制限されず、64番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換される場合、前記他のアミノ酸はグリシン以外のアミノ酸であれば、制限されない。
【0020】
本発明の他の一つの様態は、本発明のタンパク質変異体をコードするポリヌクレオチド、または本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供することにある。
本発明において、用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合によって長く鎖状につながったヌクレオチドのポリマー(polymer)であって、一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖を意味する。
【0021】
本発明のポリヌクレオチドは、コドン縮退性(codon degeneracy)によって前記配列番号73、74、75、76、77、78、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153または155のアミノ酸配列からなるタンパク質またはこれと相同性を有するタンパク質に翻訳されうるポリヌクレオチドも含まれることは自明である。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号79、80、81、82、83、84、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154または156の塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよく、より具体的には、配列番号79、80、81、82、83、84、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154または156の塩基配列で構成されたポリヌクレオチドであってもよい。また、公知の遺伝子配列から調製されうるプローブ、例えば、前記塩基配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリッド化し、配列番号73、74、75、76、77、78、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、 121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153または155のアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有するタンパク質をコードする配列であれば、制限なく含まれてもよい。
【0022】
前記「ストリンジェントな条件」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイズを可能にする条件を意味する。これらの条件は、文献(例えば、J. Sambrook et al.、同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性が高い遺伝子同士、40%以上、具体的には、90%以上、より具体的には、95%以上、さらに具体的には、97%以上、特に具体的には、99%以上の相同性を有する遺伝子同士でハイブリッド化し、それより相同性が低い遺伝子同士はハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化の洗浄条件である60℃、1×SSC 、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には、2回〜3回洗浄する条件が挙げられる。
【0023】
ハイブリダイズは、たとえハイブリッド化の厳密度に応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、2つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語、「相補的」は、互いにハイブリッド化が可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するために使用される。例えば、DNAに関すると、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本発明は、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、全体配列に相補的な単離された核酸断片を含みうる。
具体的には、相同性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイズ段階を含むハイブリダイズ化条件を用い、上述した条件を用いて探知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるものではなく、その目的に応じて当業者によって適切に調節されうる。
ポリヌクレオチドをハイブリッド化する適切な厳密度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野でよく知られている(非特許文献8参照)。
本発明で5’−イノシン酸の排出能を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、impE2遺伝子であってもよく、前記ポリヌクレオチドについての説明は前述した通りである。
本発明で5’−イノシン酸の排出能を有するタンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドも、前述した通りである。
本発明で使用する用語、「ベクター」は、適切な宿主内で目的のタンパク質を発現できるように、適切な調節配列に作動可能に連結された前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始しうるプロモーター、このような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適合したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含んでもよい。ベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノムそのものに統合されてもよい。
本発明で用いられるベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば、特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを用いてもよい。通常用いられるベクターの例としては、天然の状態であるか、組換えされた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いてもよく、プラスミドベクターとして、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系とpET系などを用いてもよい。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いてもよい。
【0024】
一例として、細胞内の染色体挿入用ベクターを介して、染色体内に目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを変異されたポリヌクレオチドに交替してもよい。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界で知られている任意の方法、例えば、相同組換えによって行われてもよいが、これに限定されない。前記染色体が挿入されたかどうかを確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、すなわち目的核酸分子が挿入されたかどうかを確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能の表現型を付与するマーカーが使用されてもよい。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみ生存するか、または他の表現形質を示すので、形質転換された細胞を選別することができる。
【0025】
本発明のもう一つの様態として、本発明は、本発明のタンパク質変異体を含むか、本発明のタンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを含む、5’−イノシン酸を生産する微生物を提供する。具体的には、本発明の微生物は、本発明のタンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換によって製造される微生物であってもよいが、これに制限されない。
本明細書において、用語、「形質転換」は、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは宿主細胞内で発現することさえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入され位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、これらをすべて含んでもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、あらゆる形態で導入されるものであっても構わない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されることができる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位、及び翻訳終結シグナルを含んでもよい。前記発現カセットは、それ自体の複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに限定されない。
【0026】
また、前記で用語、「作動可能に連結された」ものとは、本発明の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するようにするプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
本明細書で使用される用語、「5’−イノシン酸を生産する微生物」とは、自然的に5’−イノシン酸生産能を有している微生物または5’−イノシン酸の生産能及び/または排出能のない親菌株に5’−イノシン酸の生産能及び排出能付与された微生物を意味する。本発明において、前記5’−イノシン酸を生産する微生物は、5’−イノシン酸を排出する微生物または5’−イノシン酸排出能を有する微生物と混用して使用してもよい。
前記5’−イノシン酸を生産する微生物は、本発明の5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体を含むか、前記タンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドを含むか、または前記タンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換されて、タンパク質変異体を発現できる宿主細胞または微生物を含んでもよい。具体的には、本発明の微生物には、エシェリキア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、エルウィニア(Erwinia)属、エンテロバクテリア(Enterobacteria)属、サルモネラ(Salmonella)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属などの微生物菌株が含まれてもよく、より具体的には、本発明の微生物はコリネバクテリウム属微生物であってもよい。
【0027】
本明細書において、用語、「5’−イノシン酸を生産するコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物」とは、天然型または変異を介して5’−イノシン酸生産能を有しているコリネバクテリウム属微生物を意味する。具体的には、本発明で5’−イノシン酸生産能を有するコリネバクテリウム属微生物とは、天然型菌株それ自体または外部5’−イノシン酸の生産メカニズムと関連された遺伝子ガ挿入されたり、内在的遺伝子の活性を強化させたり弱化させて、向上された5’−イノシン酸の生産能を有するようになったコリネバクテリウム属微生物であってもよい。より具体的には、本発明で5’−イノシン酸生産能を有するコリネバクテリウム属微生物は、本発明の5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体を含むか、これをコードするポリヌクレオチドを含むか、または前記タンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換され、向上された5’−イノシン酸生産能を有するようになったコリネバクテリウム属微生物であってもよい。前記「向上された5’−イノシン酸の生産能を有するようになったコリネバクテリウム属微生物」は、形質転換前の親菌株または非変形微生物より5’−イノシン酸生産能が向上された微生物であってもよい。前記「非変形微生物」は、天然型菌株自体であるか、前記5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体を含まない微生物、または前記5’−イノシン酸を排出するタンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換されていない微生物であってもよい。
【0028】
本発明の一具体例として、本発明の微生物は、アデニロコハク酸シンテターゼ(adenylosuccinate synthetase)、及び/またはIMPデヒドロゲナーゼ(IMP dehydrogenase)の活性がさらに弱化されたコリネバクテリウム属微生物であってもよい。
本発明において、コリネバクテリウム属微生物は、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum )、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、またはコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)であってもよいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0029】
本発明はもう一つの様態として、本発明の5’−イノシン酸を生産するコリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階を含む、5’−イノシン酸の製造方法を提供する。
具体的には、本発明の方法は、本発明の微生物または本発明の培地から5’−イノシン酸を回収する段階をさらに含んでもよい。
本発明の方法において、前記微生物を培養する段階は、特に制限されないが、公知の回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などにより行われてもよい。このとき、培養条件は、特にこれに制限されないが、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例えば、リン酸または硫酸)を用いて適正pH(例えば、pH5〜9、具体的には、pH6〜8、最も具体的には、pH6.8)を調節してもよく、酸素または酸素含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持してもよい。培養温度は20〜45℃、具体的には、25〜40℃を維持してもよく、約10〜160時間培養してもよいが、これに制限されるものではない。前記培養によって生産された5’−イノシン酸は、培地中に分泌されるか細胞内に残留しうる。
【0030】
また、用いられる培養用培地は、炭素供給源としては、糖及び炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、でん粉及びセルロース)、油脂及び脂肪 (例えば、大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例えば、酢酸)などを個別に用いたり、または混合して用いてもよいが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆粕粉及びウレア)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを個別に用いたり、または混合して用いてもよいが、これに制限されない。リン供給源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを個別に用いたり、または混合して用いてもよいが、これに制限されない。また、培地には他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含んでもよい。
【0031】
本発明の前記培養段階で生産された5’−イノシン酸を回収する方法は、培養方法によって当該分野で公知の適切な方法を用いて培養液から目的とする5’−イノシン酸を収集してもよい。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化及びHPLCなどが用いられてもよく、当該分野で公知の適切な方法を用いて培地または微生物から目的とする5’−イノシン酸を回収してもよい。
また、前記回収段階は、精製工程を含んでもよく、当該分野で公知の適切な方法を用いて行ってもよい。したがって、前記回収された5’−イノシン酸は、精製された形態または5’−イノシン酸を含有した微生物発酵液であってもよい 。
【0032】
本発明のもう一つの様態として、本発明の5’−イノシン酸排出タンパク質変異体またはこれをコードするポリヌクレオチドを含む5’−イノシン酸生産用組成物を提供する。
本発明の組成物は、さらに、前記ポリヌクレオチドを作動させることができる構成を制限なく含んでもよい。本発明の組成物で、前記ポリヌクレオチドは、導入された宿主細胞で作動可能に連結された遺伝子を発現させうるようにベクター内に含まれた形態であってもよい。
また、前記組成物は、5’−イノシン酸生産用組成物に通常使用される任意の適切な賦形剤をさらに含んでもよい。これらの賦形剤としては、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、または等張化剤などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明は、もう一つの様態として、コリネバクテリウム属微生物の5’−イノシン酸の生産増加のための、本発明のタンパク質変異体の用途を提供する。
本発明は、もう一つの様態として、コリネバクテリウム属微生物で配列番号2のアミノ酸配列で構成されたタンパク質の活性を強化する段階を含む、5’−イノシン酸の排出増加方法を提供する。具体的には、前記配列番号2のアミノ酸配列で構成されたタンパク質の活性の強化は、前記配列番号2のアミノ酸配列のN末端から123番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、243番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換 、387番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、405番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、413番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、458番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換、または前記置換が組み合わせされたアミノ酸配列からなる5’−イノシン酸排出タンパク質変異体を前記コリネバクテリウム属微生物に導入、適用または含めることにより行ってもよい。前記用語、「5’−イノシン酸排出タンパク質」、「5’−イノシン酸排出タンパク質変異体」及び「コリネバクテリウム属微生物」は、前述したとおりである。
本発明は、もう一つの様態として、コリネバクテリウム属微生物の5’−イノシン酸の排出増加のための、本発明のタンパク質変異体の用途を提供する。
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0035】
実施例1:IMP排出タンパク質の発掘
IMP排出に関与するコリネバクテリウム属の膜タンパク質を同定するため、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)ATCC6872のゲノミックDNAライブラリを製作した。
以後、コリネバクテリウム属野生型の菌株は、IMPを生産できないか、IMPを生産しても、非常に極微量が生産されるだけなので、IMP生産能を確認するために、IMP生産能を有するATCC6872由来のCJI0323菌株を製作した。製作されたCJI0323菌株にATCC6872のゲノミックDNAライブラリを用いてIMP排出に関与する膜タンパク質のスクリーニングを行った。具体的な実験は、以下のとおりである。
【0036】
実施例1−1:IMP生産株であるCJI0323菌株の選別
ATCC6872由来のIMP生産株を作製するために、ATCC6872をリン酸塩緩衝液(pH7.0)、またはクエン酸緩衝液(pH5.5)に10
7〜10
8細胞/mlで懸濁させた。ここにUVを室温または32℃で20〜40分間処理して突然変異を誘発させた。2回にかけて0.85%食塩水で洗浄して希釈した後、1.7%寒天を含有した最小培地に耐性を付与しようとする物質を適正濃度に含有した培地に塗抹した後コロニーを得た。それぞれのコロニーを栄養培地で培養し、種培地で24時間培養した。発酵培地で3〜4日間培養した後、培養液に蓄積されたIMP生産量が最も優れたコロニーを選別した。高濃度IMP生産株を製作するために、アデニン要求性、グアニン漏出型、リゾチーム感受性、3,4−デヒドロプロリン耐性、ストレプトマイシン耐性、アゼチジンカルボン酸耐性、チアプロリン耐性、アザセリン耐性、スルファグアニジン耐性、ノルバリン耐性、トリメトプリム耐性を付与するために、前記過程をそれぞれの物質に対して順次行い、前記物質に対する耐性が付与されてIMP生産能の優れたCJI0323を最終選別した。下記の表1にATCC6872に比べたCJI0323の耐性程度を比較して示した。
【0038】
−最小培地:ブドウ糖2%、硫酸ナトリウム0.3%、リン酸第1カリウム0.1%、リン酸第2カリウム0.3%、硫酸マグネシウム0.3%、塩化カルシウム10mg/l、硫酸鉄10mg/l、硫酸亜鉛1mg/l、塩化マンガン3.6mg/l、L−システイン20mg/l、パントテン酸カルシウム10mg/l、チアミン塩酸塩5mg/l、ビオチン30μg/L、アデニン20mg/l、グアニン20mg/l、pH7.3
−栄養培地:ペプトン1%、肉汁1%、塩化ナトリウム0.25%、酵母エキス1%、寒天2%、pH7.2
−種培地:ブドウ糖1%、ペプトン1%、肉汁1%、酵母エキス1%、塩化ナトリウム0.25%、アデニン100mg/l、グアニン100mg/l、pH7.5
−発酵培地:グルタミン酸ナトリウム0.1%、塩化アンモニウム1%、硫酸マグネシウム1.2%、塩化カルシウム0.01%、硫酸鉄20mg/l、硫酸マンガン20mg/l、硫酸亜鉛20mg/l、硫酸銅5mg/l、L−システイン23mg/l、アラニン24mg/l、ニコチン酸8mg/l、ビオチン45μg/l、チアミン塩酸5mg/l、アデニン30mg/l、リン酸(85%)1.9%、ブドウ糖2.55%、果糖1.45%になるように添加して用いた。
【0039】
実施例1−2:CJI0323の発酵力価の実験
種培地2mlを直径18mmの試験管に分注して加圧殺菌した後、ATCC6872及びCJI0323をそれぞれ接種し、30℃の温度で24時間振とう培養して種培養液として用いた。発酵培地29mlを250mlの振とう用三角フラスコに分注して121℃の温度で15分間加圧殺菌した後、種培養液2mlを接種して3日間培養した。培養条件は、回転数170rpm、温度30℃、pH7.5に調節した。
培養終了後、HPLC(SHIMAZDU LC20A)を用いた方法によりIMPの生産量を測定し、培養結果は以下の表2のとおりである。
【0041】
前記CJI0323菌株はコリネバクテリウム・スタティオニスCN01−0323と命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2017年11月7日付で寄託し、寄託番号KCCM12151Pを与えられた。
【0042】
実施例1−3:排出タンパク質の発掘
1.7%の寒天を添加した最小培地内にさらにIMPを添加してCJI0323菌株の生育低下(growth inhibition)を示すスクリーニング条件を確立した。ATCC6872ゲノミックライブラリプラスミドをCJI0323菌株に電気穿孔法で形質転換させて(非特許文献9)、過量のIMPが添加された培地条件で生育低下が解除されるコロニーを選別した。選別されたコロニーからプラスミドを獲得し、シーケンスの技法により塩基配列を分析した。これから、過量のIMP添加条件で生育低下を解除させるのに関与する膜タンパク質の1種を同定した。
前記1種のコリネバクテリウム膜タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列、及び配列番号4の塩基配列(NCBI GenBank:NZ_CP014279、WP_066795121、MFS transporter)と確認された。前記膜タンパク質は、MFSトランスポーターとして知られているが、明確な機能が確認されておらず、さらにIMP排出に関する機能は知られていない。本明細書では、これをImpE2(WT)と命名した。
【0043】
実施例2:ImpE1、ImpE2の同定
実施例2−1:impE1、impE2の確認
前記膜タンパク質ImpE2の機能を調べるため、NCBIから配列番号4の遺伝子構造を確認した(NCBI GenBank:NZ_CP014279、WP_066795121、MFS transporter)。impE2(配列番号4)のORFの開始部分の7bpがそのimpE2上流に位置した他の遺伝子(NCBI GenBank:NZ_CP014279、WP_066795119、transcriptional regulator)と7bpオーバーラップされることを確認した。impE2の上流に位置した遺伝子及び該当遺伝子からコードされるタンパク質は、まだ機能が確認されなかったので、本明細書ではこれをImpE1(WT)と命名した(配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号3の塩基配列)。
【0044】
実施例2−2:impE1またはimpE2欠損ベクターの製作
実施例1と2−1を介して同定したIMPによる生育低下を解除させるのに関与するImpE1またはImpE2をIMP生産菌株で欠損させた場合、IMPの排出能が減少するのかを確認するために、各遺伝子の欠損ベクターを製作した。
ベクターを製作するための遺伝子断片は、ATCC6872ゲノミックDNAを鋳型としてPCRを介して獲得した。
具体的には、前記impE1のPCRは、配列番号5、6のプライマー及び配列番号7、8のプライマーを、impE2のPCRは、配列番号9、10のプライマー及び配列番号11、12のプライマーを用いた(表3)。
【0046】
この時用いたプライマーは、米国国立衛生研究所ジェンバンク(NIH GenBank)に登録されているコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis、ATCC6872)遺伝子(NCBI Genbank:NZ_CP014279)及び周辺塩基配列に対する情報に基づいて製作した。PCR法の条件は、94℃で5分間のを25回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。配列番号5と6のプライマー、配列番号7と8のプライマーを用いて増幅されたimpE1遺伝子の二つの断片を鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、1.8kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaIで切断した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZ(特許文献2及び3)のベクターにクローニングしてpDZ−△impE1を製作した。また、配列番号9と10のプライマーを用いて増幅されたimpE2遺伝子断片と配列番号11と12のプライマーを用いて増幅されたimpE2遺伝子の二つの断片を鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、1.7kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaI、speIで切断した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZベクターにクローニングして、pDZ−△impE2を製作した。
【0047】
実施例2−3:impE1、impE2統合欠損ベクターの製作
前記IMPによる生育低下を解除させるのに関与するタンパク質をコードする遺伝子impE1とimpE2はオーバーラップされているので、二つの遺伝子は同時に調節されるべく必要がある。したがって、impE1とimpE2の両方が欠損したベクターを製作した。
impE1とimpE2のPCRは、配列番号5と65のプライマー及び配列番号66と12のプライマーを用いた。この時用いたプライマーは、米国国立衛生研究所ジェンバンク(NIH GenBank)に登録されているコリネバクテリウム・スタティオニス(ATCC6872)遺伝子(NCBI Genbank:NZ_CP014279)及び周辺塩基配列に対する情報に基づいて製作した。配列番号5と65のプライマーを用いて増幅されたimpE1遺伝子断片と配列番号66と12のプライマーを用いて増幅されたimpE2遺伝子の二つの断片を鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、2.0kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を、それぞれXbaI、speIで切断した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZベクターにクローニングして、pDZ−△impE1E2を製作した。
【0048】
実施例2−4:impE1、impE2欠損菌株の製作
実施例2−2で製作した2種と実施例2−3で製作した1種のプラスミドをそれぞれCJI0323に電気穿孔法で形質転換した後(非特許文献10による形質転換法利用)、相同性配列の組換えによって染色体上にベクターが挿入された菌株はカナマイシン(kanamycin)25mg/Lを含有した培地から選別した。選別された1次菌株は再び2次交差(cross−over)を行った。最終的に形質転換された菌株の遺伝子が欠損されたかどうかは、配列番号5、8及び配列番号9、12及び配列番号5、12のプライマー対を用いてPCRを行うことにより確認した。
選別された菌株は、CJI0323_△impE1、CJI0323_△impE2、CJI0323_△impE1E2と命名し、前記菌株のIMPの生産能を評価した。
種培地2mlを直径18mmの試験管に分注して加圧殺菌した後、CJI0323、CJI0323_△IMPE1、CJI0323_△IMPE2、CJI0323_△IMPE1E2を接種し、30℃の温度で24時間振とう培養して種培養液として用いた。発酵培地29mlを250mlの振とう用三角フラスコに分注して121℃の温度で15分間加圧殺菌した後、種培養液2mlを接種して3日間培養した。培養条件は、回転数170rpm、温度30℃、pH7.5に調節した。
培養終了後、HPLCを用いた方法によりIMPの生産量を測定し、培養結果は以下の表4のとおりである。
【0050】
この時、親菌株であるコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323と培地内のIMP蓄積量を比較した結果、前記表4に示すようにCJI0323_△impE1、CJI0323_△impE2、CJI0323_△impE1E2菌株が、同一の条件下でCJI0323に比べてIMPの濃度が約8g/L減少したことを確認し、ImpE1、ImpE2がIMPの排出に関与するタンパク質であることを確認した。
【0051】
実施例3:IMP生産株CJI0323のimpE1、impE2の塩基配列の確認
前記実施例1で高濃度IMP生産をするCJI0323菌株の場合、高濃度のIMPを生産するためにIMP排出能が向上した可能性がある。したがって、CJ0323菌株のimpE1、impE2が変異されたかどうかを確認した。CJI0323の染色体DNAをポリメラーゼ連鎖反応の方法(以下「PCR方法」という)を介して増幅した。具体的には、まず、前記CJI0323の染色体DNAを鋳型として、配列番号13と14のプライマーを用いて(表5)94℃で1分間変性、58℃で30秒間結合、72℃で2分間Taq DNAポリメラーゼで重合する条件を28回繰り返すPCR方法を通じて、約2.8kbの塩基対の断片を増幅した。
【0053】
これを同じプライマーで塩基配列を分析した結果、野生型ATCC6872の塩基配列に比べて、impE1遺伝子の490番目のヌクレオチドであるgがaに置換されていることを確認した。これはImpE1タンパク質の164番目のアミノ酸であるグルタミン酸がリジンに置換される変異であることを意味する。また、impE2遺伝子の4番目のヌクレオチドであるgがaに置換されて(impE1遺伝子の666番目のヌクレオチドであるgがaに置換されたことを意味する)、191番目のヌクレオチドであるgがaに置換されていることを確認した。これはImpE2タンパク質の2番目のアミノ酸(ImpE1タンパク質の222番目のアミノ酸に該当)であるバリンがイソロイシンに置換され、64番目のアミノ酸がグリシンからグルタミン酸に置換されていることを意味する。
CJI0323菌株のimpE1ヌクレオチドはimpE1_CJI0323(配列番号87)、タンパク質はImpE1_CJI0323(配列番号85)と命名し、CJI0323菌株のimpE2ヌクレオチドはimpE2_CJI0323(配列番号88)、タンパク質はImpE2_CJI0323(配列番号86)と命名した。
【0054】
実施例4:impE1、impE2変異の復元
実施例4−1:impE1またはimpE2変異の復元ベクターの製作
前記実施例3でIMP生産菌株であるCJI0323菌株で、impE1、impE2が変異されたかどうかを確認した結果、impE1に1つ、impE2に2つの変異が含まれていることを確認した。CJI0323菌株は高濃度でIMPを生産する菌株であるため、前記変異がIMP排出能を向上させる変異である可能性が高い。したがって、変異のない天然の野生型であるImpEに復元した後、さらに発掘されるタンパク質変異体がより高いIMP排出能を有するかどうかを確認するために、次の実験を行った。
復元ベクターを製作するために、天然の野生型菌株であるコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)ATCC6872を鋳型としてPCRを行った。配列番号89と90のプライマーを用いて増幅されたimpE1impE2遺伝子断片をXbaIの制限酵素で処理し、pDZベクターのXbaI制限酵素の位置にクローニングして、pDZ−impE1E2(WT)を製作した。
【0055】
実施例4−2:impE1またはimpE2変異復元菌株の製作
実施例4−1で製作した1プラスミドをCJI0323に電気穿孔法で形質転換した後(非特許文献10による形質転換法利用)、相同性配列の組換えによって染色体上にベクターが挿入された菌株はカナマイシン(kanamycin)25mg/Lを含有した培地から選別した。選別された1次菌株は再び2次交差(cross−over)を行った。最終的に形質転換された菌株の遺伝子変異が復元したかどうかは、配列番号89、90のプライマーを用いてPCRを行い、塩基配列を分析することで確認した。以後、製作された菌株をCJI0323_impE1E2(WT)と命名した。
【0056】
実施例5:impE2変異の発掘
前記実施例3の結果を通して発掘された3種の変異のうち、最も高い5’−イノシン酸排出能を有する変異を選別し、これより高い排出能を有する変異を発掘するために次の実験を行った。
【0057】
実施例5−1:impE1E2変異のうち、最も高い5’−イノシン酸排出能を有する変異の選別
ImpE1のE164K単独変異のベクターを製作するために、天然の野生型菌株であるコリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)ATCC6872を鋳型として配列番号91と92のプライマー及び配列番号93と94のプライマーを用いた。配列番号91と92のプライマーを用いて増幅されたE164K−1遺伝子断片と、配列番号93と94のプライマーを用いて増幅されたE164K−2遺伝子の二つの断片とを鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、1.8kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaIで切断した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZベクターにクローニングして、pDZ−impE1(E164K)を製作した。
ImpE2のV2I単独変異ベクターを製作するために、ATCC6872を鋳型として配列番号91と95のプライマーと配列番号96と94のプライマーを用いた。配列番号91と95のプライマーを用いて増幅されたV2I−1遺伝子断片と、配列番号96と94のプライマーを用いて増幅されたV2I−2遺伝子の二つの断片とを鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、1.8kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaIで切断した。 T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZベクターにクローニングして、pDZ−impE2(V2I)を製作した。
ImpE2のG64E単独変異のベクターを製作するために、ATCC6872を鋳型として配列番号91と97のプライマー及び配列番号98と94のプライマーを用いた。配列番号91と97のプライマーを用いて増幅されたG64E−1遺伝子断片と、配列番号98と94のプライマーを用いて増幅されたG64E−2遺伝子の二つの断片とを鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、1.8kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaIで切断した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZベクターにクローニングして、pDZ−impE2(G64E)を製作した。
【0059】
CJI0323_impE1E2(WT)菌株に実施例4−2で製作したプラスミドの3種を形質転換した後(非特許文献10による形質転換法利用)、相同性配列の組換えによって染色体上にベクターが挿入された菌株はカナマイシン(kanamycin)25mg/Lを含有した培地から選別した。選別された1次菌株は再び2次交差(cross−over)を行った。最終的に形質転換された菌株の遺伝子変異が導入されたかどうかは、配列番号13、14のプライマーを用いてPCRを行い、塩基配列を分析することで確認した。選別された菌株は、CJI0323_impE1(E164K)、CJI0323_impE2(V2I)、CJI0323_impE2(G64E)と命名した。
前記コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1(E164K)、コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE2(V2I)及びコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE2(G64E)菌株は、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2018年11月2日付で寄託し、それぞれ寄託番号KCCM12359P、KCCM12360P及びKCCM12361Pを与えられた。
【0060】
種培地2mlを直径18mmの試験管に分注して加圧殺菌した後、CJI0323_impE1E2(WT)、CJI0323_impE1(E164K)、CJI0323_impE2(V2I)、CJI0323_impE2(G64E)を接種し、30℃の温度で24時間振とう培養して種培養液として用いた。発酵培地29mlを250mlの振とう用三角フラスコに分注して121℃の温度で15分間加圧殺菌した後、種培養液2mlを接種して3日間培養した。培養条件は、回転数170rpm、温度30℃、pH7.5に調節した。
培養終了後、HPLCを用いた方法によりIMPの生産量を測定し、培養結果は以下の表7のとおりである。
【0062】
前記結果のように、3種の変異それぞれIMP排出に関与していることを確認し、その中でもCJI0323_impE2(G64E)のIMP生産量が最も高いことを確認した。
【0063】
実施例5−2:impE2変異のアミノ酸置換挿入用ベクターの製作
前記結果を通して5’−イノシン酸の生産能の向上された代表的な3種の変異のうち、最も高いイノシン酸の排出能を示すimpE2(G64E)の位置的重要性を確認するために、impE2のアミノ酸配列で64番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換する変異導入用ベクターを製作した。
ImpE2(G64E)変異導入用ベクターの製作過程は次のとおりである。
報告されたポリヌクレオチド配列に基づいてコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323の染色体遺伝子を分離し、これを鋳型として、配列番号15と配列番号16〜33とのそれぞれのプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を介して遺伝子断片を得た。PCRは、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、72℃で1分間の重合を20回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。その結果、18種の1kbpのポリヌクレオチドを獲得した。
【0064】
次に、コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323の染色体遺伝子を分離して、配列番号34と配列番号35〜52のそれぞれのプライマー対を用いてポリメラーゼ連鎖反応を介してそれぞれの遺伝子断片を得た。PCRは、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、72℃で1分間の重合を20回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。その結果、18種の1kbpのポリヌクレオチドを取得した。
前記結果を介して獲得した二つの断片を鋳型として、オーバーラップ伸長PCR法を行い、18種の2kbpのポリヌクレオチド鋳型を得た。得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaIで切断し、T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZベクターに連結した後、大腸菌DH5αに形質転換して、カナマイシン(25mg/L)が含まれたLB固体培地に塗抹した。
ベクター製作のために用いたプライマー配列の情報は、表8のとおりである。
【0066】
PCRを通して目的した遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、獲得されたプラスミドの情報は表9のとおりである。
【0068】
実施例5−3:ImpE2変異体の64番目変異位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された菌株の製作及び5’−イノシン酸生産能の比較
前記実施例3−1で製造した変異導入用ベクターの18種をコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323に形質転換して、相同性配列の組換えによって染色体上にベクターが挿入された菌株はカナマイシン(kanamycin)25mg/Lを含有した培地から選別した。選別された1次菌株は再び2次交差(cross−over)を行った。最終的に形質転換された菌株の遺伝子変異が導入するかどうかは、配列番号13、14のプライマーを用いてPCRを行い、塩基配列を分析することで確認した。挿入された変異による菌株名は次の表10のとおりである。
【0070】
実施例2と同様の方法で培養して、そこから5’−イノシン酸の濃度を分析した(表11)。
【0072】
前記の結果のように、すべての変異菌株は、CJI0323_impE2(WT)に比べてIMP生産能が増加したので、前記impE2の64番の変異位置は、ImpEタンパク質のIMP排出能の増加に影響を与える重要な変異位置であることを再確認した。特にImpE2のアミノ酸配列から64番目のアミノ酸であるグリシンがグルタミン酸から他のアミノ酸であるアスパラギン酸に置換される場合、64番目のアミノ酸変異がないCJI0323_impE1(E164K)_impE2(V2I)菌株に比べて172%も増加した。また、5’−イノシン酸生産能が野生型に復元された菌株であるCJI0323_impE1E2(WT)に比べ397%も向上しており、CJI0323に比べて20%向上されることを確認した。
【0073】
実施例6:人工突然変異法を用いたimpE変異のライブラリ
より高いIMP排出能を有するタンパク質変異体を獲得するために、下記の方法で染色体内の1次交差挿入用ベクターのライブラリを製作した。
実施例5−3の結果で最も高いIMP排出能を有するものと確認された菌株CJI0323::impE2(G64D)のimpE2を対象にError−Prone PCRを行った。CJI0323::G64Dが保有している64番目のアミノ酸の後のアミノ酸配列に変異を導入するために、impE2の193番目の塩基配列から下流の約130bpの塩基配列まで、塩基置換変異がランダムに導入されたimpE遺伝子変異体(1.6kbp)を獲得した。Error−Prone PCRはDiversify PCR Random Mutagenesis Kit(Clontech)を使用して行い、CJI0323::impE2(G64D)のゲノムDNAを鋳型として、配列番号53、及び配列番号54のプライマー対(表12)を用いてポリメラーゼ連鎖反応を介して遺伝子断片を得た。
【0075】
増幅された遺伝子断片に変異が1kb当り0〜3.5個が導入されるようにし、PCRは94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、60℃で30秒のアニーリング、72℃で1分36秒間の重合を30回繰り返しした後、72℃で5分間重合反応を行った。その結果、1.6kbpのポリヌクレオチドを獲得した。増幅された遺伝子断片をpCR2.1−TOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を用いてpCR2.1−TOPOベクターに連結して大腸菌DH5αに形質転換してカナマイシン(25mg/L)が含まれたLB固体培地に塗抹した。形質転換されたコロニー20種を選別した後、プラスミドを獲得してポリヌクレオチド配列を分析した結果、3.5変異/kbの頻度で互いに異なる位置に変異が導入されたことを確認した。約20,000個の形質転換された大腸菌コロニーを取ってプラスミドを抽出し、これをpTOPO_impE libraryと命名した。
【0076】
実施例7:impE libraryベクターが挿入された菌株の選別
実施例6で製造したpTOPO_impE library ベクターをIMPを高濃度で生産する菌株CJI0323::impE2(G64D)に電気穿孔法で形質転換した後、カナマイシン25mg/Lを含有した栄養培地に塗抹して変異遺伝子が挿入された菌株、10,000個のコロニーを確保し、各コロニーをCJI0323::impE2(G64D)/pTOPO_impE(mt)1から CJI0323::impE2(G64D)/pTOPO_impE(mt)10000までと命名した。
【0077】
−栄養培地:ペプトン1%、肉汁1%、塩化ナトリウム0.25%、酵母エキス1%、寒天2%、pH7.2
−種培地:ブドウ糖1%、ペプトン1%、肉汁1%、酵母エキス1%、塩化ナトリウム0.25%、アデニン100mg/l、グアニン100mg/l、pH7.5
−発酵培地:グルタミン酸ナトリウム0.1%、塩化アンモニウム1%、硫酸マグネシウム1.2%、塩化カルシウム0.01%、硫酸鉄20mg/l、硫酸マンガン20mg/l、硫酸亜鉛20mg/l、硫酸銅5mg/l、L−システイン23mg/l、アラニン24mg/l、ニコチン酸8mg/l、ビオチン45μg/l、チアミン塩酸5mg/l、アデニン30mg/l、リン酸(85%)1.9%、ブドウ糖2.55%、果糖1.45%になるように添加して用いた。
【0078】
確保された10,000個のコロニーをそれぞれ加圧殺菌した種培地200μlに接種した96ディープウェルプレートを、マイクロプレート振とう機(Microplate shaker(TAITEC))を用いて30℃の温度、1200rpmで24時間振とう培養し、種培養液として用いた。加圧殺菌した発酵培地290μlを96ディープウェルプレートに分注した後、種培養液20μlずつ接種し、前記条件と同様に72時間振とう培養した。
【0079】
培養液から生産された5’−イノシン酸の生産量を分析するために、培養終了後の培養上澄み液3μlを蒸留水が197μlずつ分注された96ウェルUVプレートに移した。次に、マイクロプレートリーダー(Microplate reader)を用いて30秒間振とうし、25℃、波長270nmで分光光度計で吸光度を測定し、対照区であるCJI0323::impE2(G64D)菌株の吸光度と比較して10%以上増加した吸光度を示す50個の変異菌株コロニーを選別した。その他のコロニーは対照区に比べて類似または減少した吸光度を示した。
選別された50個の菌株は、前記と同様に吸光度を測定し、5’−イノシン酸生産量の確認を繰り返して行った。そして、CJI0323::impE2(G64D)菌株に比べて5’−イノシン酸の生産能が向上した菌株の上位4種を選別した。
【0080】
実施例8:impE2変異ライブラリ選別株の5’−イノシン酸生産能の確認
前記実施例7で選別した4種の菌株の5’−イノシン酸生産能を比較するために、以下のような方法で培養し、培養液の成分を分析した。
加圧殺菌した直径18mmの試験管に実施例2と同じ種培地5mlを接種し、30℃の温度で24時間振とう培養して種培養液として用いた。実施例2と同じ発酵培地29mlを250mlの振とう用三角フラスコに分注して121℃の温度で15分間加圧殺菌した後、種培養液2mlを接種して4〜5日間培養した。培養条件は、回転数170rpm、温度30℃、pH7.5に調節した。培養終了後、HPLCを用いた方法により5’−イノシン酸の生産量を測定した。
50種の菌株の中で、5’−イノシン酸の上位4種の菌株を選別して、前記培養及び分析を繰り返し行い、分析された5’−イノシン酸の濃度は、表13の通りである。
【0082】
5’−イノシン酸の濃度分析の結果、4種の選別株の5’−イノシン酸濃度がCJI0323::impE2(G64D)菌株に比べて最大17%増加することを確認した。
実施例9:選別されたimpE2変異菌株のimpE2遺伝子変異の確認
前記実施例8で選別された4種の菌株のimpE2に導入された変異を確認するために、impE2変異体のポリヌクレオチド配列を分析した。ポリヌクレオチド配列を決定するために配列番号13及び配列番号14のプライマー対を用いてPCRを行った。
確保された各変異型impE2遺伝子断片のポリヌクレオチド配列の分析を行った。impE2(WT)の配列番号4またはimpE2(CJ0323::G64D)の配列番号100のポリヌクレオチド配列と比較し、これにより変異型ImpE2のアミノ酸配列を確認した。選別された菌株のImpE2アミノ酸配列の変異の情報は、表14のとおりである。
【0084】
実施例10:impE2変異染色体導入用ベクターの製作
前記実施例9で確認されたimpE2変異適用効果を確認するために、これを染色体上に導入することができるベクターを製作し、製作過程は次の通りである。
impE2(G64D)変異が除外された表14のライブラリ変異のみを含むベクターを製作した。具体的には、コリネバクテリウム・スタティオニスATCC6872の染色体遺伝子を分離して、配列番号56と配列番号57、59、61、63のプライマー対を用い、ポリメラーゼ連鎖反応を介してそれぞれの遺伝子断片を得た。PCR法の条件は、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、72℃で1分間の重合を20回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行ってPCR断片を獲得した。
前記選別された4種の染色体をそれぞれ鋳型とし、配列番号58、60、62、64と配列番号55のプライマー対を用い、ポリメラーゼ連鎖反応を介して遺伝子断片を得た。PCR法の条件は、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、72℃で1分30秒間の重合を20回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行ってPCR断片を獲得した。二つの断片を鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、得られた遺伝子の断片を制限酵素XbaIで切断した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断した線状のpDZ(特許文献2及び3)ベクターに連結した後、大腸菌DH5αに形質転換してカナマイシン(25mg/L)が含まれたLB固体培地に塗抹した。
【0085】
次に、前記選別された変異体のうち、3種変異が統合されたimpE2(S387T、M413T、N458K)の単独変異の効果を確認するための単独変異のベクターを製作するためにATCC6872を鋳型として、配列番号56と配列番号67、69、71のプライマー対を用い、ポリメラーゼ連鎖反応を介してそれぞれの遺伝子断片を得た。続いてATCC6872を鋳型として、配列番号55と配列番号68、70、72のプライマー対を用い、ポリメラーゼ連鎖反応を介してそれぞれの遺伝子断片を得た。前記製作された二つの断片を鋳型として、オーバーラップポリメラーゼ連鎖反応を行い、得られた遺伝子断片を制限酵素XbaIで処理した。T4リガーゼを用いて前記遺伝子断片をXbaI制限酵素で切断したpDZベクターに連結した後、大腸菌DH5aに形質転換して、カナマイシンを含むLB固体培地に塗抹した。
【0087】
PCRにより目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、このプラスミドのimpE2に挿入された変異に基づいてpDZ−impE2(S387T、M413T、N458K )、pDZ−impE2(F123C)、pDZ−impE2(I243V)、pDZ−impE2(F405Y)、pDZ−impE2(S387T)、pDZ−impE2(M413T)、pDZ−impE2(N458K)と命名した。
【0088】
実施例11:野生型impE1、impE2基盤impE2変異導入菌株の製作及び5’−イノシン酸生産能の比較
前記実施例10で製造した新規変異導入用のベクター、pDZ−impE2(S387T、M413T、N458K)、pDZ−impE2(F123C)、pDZ−impE2(I243V)、pDZ−impE2(F405Y)の4種を2段階相同染色体の組換えを介して実施例4で製造した5’−イノシン酸生産菌株であるコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323のimpE1E2がWTに復元されたCJI0323_impE1E2(WT)に形質転換させた。その後、ポリヌクレオチド配列の分析により、染色体上のimpE2変異が導入された菌株を選別し、それぞれCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(S387T、M413T、N458K)、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(F123C)、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(I243V )、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(F405Y)と命名した。
【0089】
前記コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(F123C)、コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(I243V)及びコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(F405Y)菌株はブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2018年11月2日付で寄託し、それぞれ寄託番号KCCM12362P、KCCM12363P及びKCCM12365Pを与えられた。
【0090】
実施例7と同様の方法で培養して、そこから5’−イノシン酸の濃度を分析し、培養時間48時間後の濃度を測定した(表16)。
【0092】
新規変異株の4種はCJI0323_impE1E2(WT)に比べて5’−イノシン酸の濃度は、最大44%増加することを確認した。本発明のImpEタンパク質変異によるIMP生産量の増加は、非常に意味のあるものと解釈することができる。
【0093】
実施例12:CJI0323::impE2(G64D)基盤impE2変異導入菌株の製作及び5’−イノシン酸生産能の比較
前記実施例10で製造した新規変異導入用ベクター、pDZ−impE2(S387T、M413T、N458K)、pDZ−impE2(F123C)、pDZ−impE2(I243V)、pDZ−impE2(F405Y)の4種を5’−イノシン酸の生産菌株であるコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323::impE2(G64D)に2段階の相同染色体の組換えを介して形質転換させた。その後ポリヌクレオチド配列の分析により、染色体上のimpE2変異が導入された菌株を選別し、挿入されたimpE2変異に応じてCJI0323::impE2(G64D)_impE2(S387T、M413T、N458K)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(F123C)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(I243V)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(F405Y)と命名した。
実施例7と同様の方法で培養して、そこから5’−イノシン酸の濃度を分析した(表17)。
【0095】
新規変異株4種はCJI0323::impE2(G64D)対比5’−イノシン酸の濃度は、最大17%増加することを確認した。本発明のImpEタンパク質変異によるIMP生産量の増加は、非常に意味のあるものと解釈することができる。
次に、前記製作されたpDZ−impE2(S387T、M413T、N458K)、pDZ−impE2(F123C)、pDZ−impE2(I243V)、pDZ−impE2(F405Y)、pDZ−impE2(S387T)、pDZ−impE2(M413T )、pDZ−impE2(N458K)の7種のベクターを単独または組み合わせて、CJI0323_impE1E2(WT)菌株及びCJI0323::impE2(G64D)菌株に形質転換した。製作された菌株は、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(S387T)、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(M413T)、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(N458K)、CJI0323_impE1E2(WT)_impE2(F123C、I243V、S387T、F405Y、M413T、N458K))、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(S387T)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(M413T)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(N458K)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(I243V、S387T、M413T 、N458K)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(S387T、F405Y、M413T、N458K)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(I243V、S387T、F405Y、M413T、N458K)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2 (F123C、S387T、M413T、N458K)、CJI0323::impE2(G64D)_impE2(F123C、I243V、S387T、F405Y、M413T、N458K)と命名し、前記のような方法で5’−イノシン酸生産能を測定した(表18)。
【0096】
前記コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(S387T)、コリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(M413T)及びコリネバクテリウム・スタティオニスCJI0323_impE1E2(WT)_impE2(N458K)菌株はブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2018年11月2日付で寄託してそれぞれ寄託番号KCCM12364P、KCCM12366P及びKCCM12367Pを与えられた。
【0098】
前記表に示すように、impE2(S387T)、impE2(M413T)、impE2(N458K)単独の変異は、野生型に比べて最大33.6%が増加し、新規変異の組み合わせ導入菌株すべては、5’−イノシン酸の濃度が最大102.5%増加することを確認した。また、5’−イノシン酸を生産するCJI0323::impE2(G64D)菌株に新規変異を単独で導入した場合、表17及び表18に示すようにIMP排出能が増加し、これらの組み合わせで導入される場合には、より高いIMP排出能を有することが確認された。特に、CJI0323::impE2(G64D)菌株の変異と新規変異が両方統合された場合、IMP濃度が野生型に比べて約515%増加し、CJI0323::impE2(G64D)対比約24%増加することを確認した。本発明で発掘した新規変異は単独でもIMP排出能が増加し、これらの組み合わせで導入される場合、より高いIMP排出能を有することが確認された。
【0099】
実施例13:野生型IMP生産株基盤impE2の強化
実施例13−1:野生型IMP生産株基盤impE2変異導入菌株の製作
野生型のIMP生産菌株でimpE2の変異導入の効果を確認するために、ATCC6872でIMPの分解経路に該当するアデニロコハク酸シンテターゼ (adenylosuccinate synthetase)及びIMPデヒドロゲナーゼ(IMP dehydrogenase)の活性が弱化された菌株を製作した。前記二つの酵素をコードする遺伝子purA及びguaBの各塩基配列から1番目の塩基をaからtに変更して開始コドンを変更した。ATCC6872における前記二つの遺伝子の発現が弱化された菌株はCJI9088と命名した。製造されたCJI9088菌株に、前記実施例10で製作したpDZ−impE2(S387T、M413T、N458K)、pDZ−impE2(F123C)、pDZ−impE2(I243V)、pDZ−impE2(F405Y)ベクターを単独または組み合わせて電気穿孔法で形質転換し、相同性配列の組換えによって染色体上にベクターが挿入された菌株は、カナマイシン25mg/Lを含有した培地から選別した。選別された1次菌株は再び2次交差を行った。最終的に形質転換された菌株の遺伝子が導入されたかどうかは、配列番号13、14プライマー対を用いてPCRを行うことにより確認した。
製作されたCJI9088及びCJI9088_impE2(S387T、M413T、N458K)、CJI9088_impE2(F123C)、CJI9088_impE2(I243V)、CJI9088_impE2(F405Y)、CJI9088_impE2(F123C、I243V、S387T、F405Y、M413T、N458K)菌株のIMP生産能を評価した。培養終了後、HPLCを用いた方法によりIMPの生産量を測定し、培養結果は以下の表19の通りである。
【0101】
培地内に蓄積されたIMPを確認した結果、親菌株であるCJI9088に比べてIMP生産能が80%以上、最大730%増加することを確認した。したがって、本発明のImpEタンパク質変異によるIMP生産量の増加は、非常に意味のあるものと解釈することができる。
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明より、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。