【文献】
畑浩二,杉浦伸哉,後藤直美,藤岡大輔,山岳トンネルにおけるICTを活用した予測型CIMの開発,土木学会論文集F3(土木情報学),日本,土木学会,2015年,71巻,2号,pp.II_78-II_85,ISSN:2185-6591
【文献】
丹羽廣海,村山秀幸,岡崎健治,大日向昭彦,伊東佳彦,地山の長期的な健全性診断を目的とした弾性波屈折法探査の適用実験,トンネル工学報告集,日本,土木学会,2014年12月,第24巻
【文献】
桑原徹,中西隆司,関山健一,三橋賢久,ノンコア削孔トンネル切羽前方探査システム「トンネルナビ」による軟弱地山の前方探査,土木建設技術発表会概要集,日本,土木学会,2010年,pp.221-228
【文献】
中西昭友,進士正人,ボーリング孔壁画像を用いた岩盤強度推定法のトンネル切羽前方調査への適用,応用地質技術年報,日本,応用地質株式会社,2000年,No.20,pp.103-112,ISSN:1343-1145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態の孔内調査装置は、
図1に示すように、自走装置100と、自走装置100を制御する制御装置200とからなり、掘削した水平孔等のボーリング孔300の孔内を自走装置100が自走し、ボーリング孔300の孔内を調査(撮影と弾性波計測)する装置である。なお、第1の実施の形態では、自走装置100と制御装置200とをケーブル400によって接続するように構成したが、自走装置100と制御装置200とは、無線で接続するようにしても良く、自走装置100に制御装置200を組み込んで構成するようにしても良い。
【0011】
自走装置100は、
図1及び
図2を参照すると、左右一対の無限軌道(キャタピラ)1aを備えた走行車両1と、ボーリング孔300の孔内を撮影するカメラ部2と、孔内の上孔壁に当接する第1上孔壁駆動輪3と、第1上孔壁駆動輪3よりも後方で孔内の上孔壁に当接する第2上孔壁駆動輪4とを備えている。走行車両1は、左右一対の無限軌道(キャタピラ)1aがそれぞれ取り付けられた左右一対のシャーシ1bを備えている。カメラ部2は、カメラ支持アーム5によって走行車両1のシャーシ1bと接続されている。また、第1上孔壁駆動輪3は、第1アーム6aによって走行車両1のシャーシ1bと接続されていると共に、第2上孔壁駆動輪4は、第2アーム6bによって走行車両1のシャーシ1bと接続されている。なお、走行車両1は、無限軌道1aの代わりに駆動輪を備えていても良い。
【0012】
図2及び
図3を参照すると、カメラ支持アーム5の一端側は、第1ヒンジ部10によって走行車両1のシャーシ1bに回動可能に接続され、カメラ支持アーム5の他端側(解放端側)にカメラ部2が取り付けられている。また、第1アーム6aの一端側は、第2ヒンジ部20によって走行車両1のシャーシ1bと回動可能に接続され、第1アーム6aの他端側(解放端側)に第1上孔壁駆動輪3が回転可能に取り付けられている。さらに、第2アーム6bの一端側は、第3ヒンジ部40によって走行車両1のシャーシ1bと回動可能に接続され、第2アーム6bの他端側(解放端側)に第2上孔壁駆動輪4が回転可能に取り付けられている。なお、
図2及び
図3は、一方の無限軌道(キャタピラ)1aを取り除いた状態が示されている。
【0013】
図4(a)を参照すると、第1ヒンジ部10は、本体(ハウジング)がカメラ支持アーム5に固定され、左右両側に回動軸11となるモータ軸を突出させた姿勢制御モータ7で構成されている。姿勢制御モータ7のモータ軸(回動軸11)は、走行車両1の左右一対のシャーシ1bにそれぞれ固定されている。姿勢制御モータ7としては、回転角度を制御可能なサーボモータが用いられる。姿勢制御モータ7の回転によって、走行車両1のシャーシ1bと第1アーム6aとの回動角度θa(
図1参照)が変更される。
【0014】
また、
図4(a)を参照すると、走行車両1の左右一対のシャーシ1bには、無限軌道1aの起動輪を駆動する駆動モータ8aがそれぞれ固定されている。駆動モータ8aのモータ軸が無限軌道1aの起動輪を駆動する第1駆動軸12となる。駆動モータ8aとしては、例えば、ロータを扁平にした薄型のブラシレスDCモータを用いることができる。なお、第1の実施の形態では、回動軸11と第1駆動軸12とを同軸上に配置させたが、回動軸11と第1駆動軸12とをずらして配置しても良い。
【0015】
図4(b)を参照すると、第2ヒンジ部20は、本体(ハウジング)が第1アーム6aに固定され、左右両側に回動軸21となるモータ軸を突出させたモーメント付与モータ9aで構成されている。モーメント付与モータ9aのモータ軸(回動軸21)は、走行車両1の左右一対のシャーシ1bにそれぞれ固定されている。モーメント付与モータ9aとしては、トルクを制御可能なサーボモータが用いられる。モーメント付与モータ9aは、第1アーム6aに対してシャーシ1bから離れる方向(
図1に示す矢印Aの方向)のモーメント、すなわち走行車両1(シャーシ1b)と第1上孔壁駆動輪3とが上下に離間する方向のモーメントを付与する。このモーメントによって、無限軌道1aには下面側の孔壁からの反力が、第1上孔壁駆動輪3には上孔壁からの反力がそれぞれ作用する。
【0016】
図4(c)を参照すると、第1アーム6aの他端側(解放端側)には、第1上孔壁駆動輪3を駆動する駆動モータ8bが固定されている。駆動モータ8bのモータ軸が第1上孔壁駆動輪3を駆動する第2駆動軸31となる。駆動モータ8bとしては、例えば、ロータを扁平にした薄型のブラシレスDCモータを用いることができる。
【0017】
図4(d)を参照すると、第3ヒンジ部40は、本体(ハウジング)が第2アーム6bに固定され、左右両側に回動軸41となるモータ軸を突出させたモーメント付与モータ9bで構成されている。モーメント付与モータ9bのモータ軸(回動軸41)は、走行車両1の左右一対のシャーシ1bにそれぞれ固定されている。モーメント付与モータ9bとしては、トルクを制御可能なサーボモータが用いられる。モーメント付与モータ9bは、第2アーム6bに対してシャーシ1bから離れる方向(
図1に示す矢印Bの方向)のモーメント、すなわち走行車両1(シャーシ1b)と第2上孔壁駆動輪4とが上下に離間する方向のモーメントを付与する。このモーメントによって、無限軌道1aには下面側の孔壁からの反力が、第2上孔壁駆動輪4には上孔壁からの反力がそれぞれ作用する。
【0018】
図4(e)を参照すると、第2アーム6bの他端側(解放端側)には、第2上孔壁駆動輪4を駆動する駆動モータ8cが固定されている。駆動モータ8cのモータ軸が第2上孔壁駆動輪4を駆動する第3駆動軸51となる。駆動モータ8cとしては、例えば、ロータを扁平にした薄型のブラシレスDCモータを用いることができる。
【0019】
第1アーム6aの他端側(解放端側)には、発信装置70aが設けられている。発信装置70aは、第2駆動軸31、もしくは第1上孔壁駆動輪3の側面に固定されており、第1上孔壁駆動輪3の回転に伴って間欠的にボーリング孔300の上孔壁に接触する。すなわち、発信装置70aは、ボーリング孔300の上孔壁と接触する接触部を有し、その接触部が第1上孔壁駆動輪3の外周の1カ所に設けられている。従って、第1上孔壁駆動輪3が1回転すると、発信装置70aの接触部が被検体であるボーリング孔300の上孔壁に1回接触する。
【0020】
第2アーム6bの他端側(解放端側)には、受信装置70bが設けられている。受信装置70bは、第3駆動軸51、もしくは第2上孔壁駆動輪4の側面に固定されており、第2上孔壁駆動輪4の回転に伴って間欠的にボーリング孔300の上孔壁に接触する。すなわち、受信装置70bは、発信装置70aと同様に、ボーリング孔300の上孔壁と接触する接触部を有し、その接触部が第2上孔壁駆動輪4の外周の1カ所に設けられている。従って、第2上孔壁駆動輪4が1回転すると、受信装置70bの接触部が被検体であるボーリング孔300の上孔壁に1回接触する。
【0021】
発信装置70a及び受信装置70bは、同一の構成を有しており、
図5を参照すると、圧電素子71と、圧電素子71に接触して設けられ、ボーリング孔300の上孔壁と接触する接触部として機能する保護部材72とを備えている。以下、発信装置70aに基づいて、詳細な構成について説明する。圧電素子71及び保護部材72は、回動軸22の法線方向に移動可能に設けられ、付勢手段であるバネ73によって回動軸22から遠ざかる方向に付勢されている。
図5(a)に示すように、発信装置70aがボーリング孔300の上孔壁と接触していない状態では、保護部材72のボーリング孔300の上孔壁と接触面は、第1上孔壁駆動輪3の外周面から突出する。これにより、
図5(b)に示すように、発信装置70aがボーリング孔300の上孔壁と接触する状態では、保護部材72の接触面が、バネ73によって付勢された状態でボーリング孔300の上孔壁と接触する。なお、第1上孔壁駆動輪3としてゴムタイヤを採用すると、ゴムタイヤの弾性変形を考慮でき、発信装置70aがボーリング孔300の上孔壁と接触していない状態では、保護部材72の接触面は、第1上孔壁駆動輪3の周面付近に位置していればよい。また、保護部材72のボーリング孔300の上孔壁と接触面は、曲面に形成されている。これにより、保護部材72の接触面は、第1上孔壁駆動輪3の回転に伴って接触位置を変えながらボーリング孔300の上孔壁に対して所定時間接触する。さらにまた、バネ73は、第1上孔壁駆動輪3の回転に伴って保護部材72が被検体表面に当接する際の衝撃を吸収するダンパーとしても機能する。
【0022】
図6には、第1の実施の形態の孔内調査装置の概略構成を示すブロック図が示されている。
図6を参照すると、自走装置100において、無限軌道1aの起動輪を駆動する駆動モータ8aには、駆動モータ8aの回転角度位置を検出するエンコーダ13が、発信装置70aが設けられている第1上孔壁駆動輪3を駆動する駆動モータ8bには、駆動モータ8bの回転角度位置を検出するエンコーダ32が、受信装置70bが設けられている第2上孔壁駆動輪4を駆動する駆動モータ8cには、駆動モータ8cの回転角度位置を検出するエンコーダ52がそれぞれ設けられている。また、第2ヒンジ部20として機能するモーメント付与モータ9aには、モーメント付与モータ9aの回転角度位置を検出するエンコーダ22が、第3ヒンジ部40として機能するモーメント付与モータ9bには、モーメント付与モータ9bの回転角度位置を検出するエンコーダ42がそれぞれ設けられている。さらに、カメラ部2は、図示しないバッテリ等を電源として発光して孔内を照射する照射部2aと、孔内を撮影するカメラ2bと、カメラ部2の姿勢を検出して姿勢信号を出力するジャイロセンサー2cとを備えている。カメラ2bとしては、前方を撮影する前方視カラーカメラ、孔壁を撮影するボアホールカメラ、孔壁の温度を映像として撮影する赤外線カメラ等を用いることができる。これらのカメラは、調査の目的に応じて適宜選定することができる。また、複数のカメラをカメラ部2に搭載するようにしても良い。
【0023】
制御装置200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、液晶ディスプレイ等の表示部210と、キーボート等の入力部220と、半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段である記憶部230と、制御部240とを備えている。制御部240は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピューター等の情報処理部である。ROMには制御装置200の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。制御部240は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、入力部220から入力された所定の指示情報に応じて装置全体の制御を行う。また、制御部240は、走行制御部241、姿勢制御部242、トルク制御部243、走行距離演算部244、映像処理部245、発信部246、受信部247、測定距離演算部248として機能する。
【0024】
走行制御部241は、入力部220から受け付けた走行指示(走行速度、走行方向等)に基づいて、駆動モータ8a、8b、8cを駆動し、自走装置100を前進もしくは後退させる。また、走行制御部241は、エンコーダ32から入力される駆動モータ8bの回転角度位置と、エンコーダ52から入力される駆動モータ8cの回転角度位置とに基づいて、発信装置70aが設けられている側の第1上孔壁駆動輪3の回転角と、受信装置70bが設けられている側の第2上孔壁駆動輪4の回転角とを同期させ、発信装置70aの保護部材72がボーリング孔300の上孔壁と接触するタイミングで、受信装置70bの保護部材72をボーリング孔300の上孔壁に接触させる。さらに、走行制御部241は、発信装置70aの保護部材72と受信装置70bの保護部材72とがボーリング孔300の上孔壁に接触するタイミングを発信部246と測定距離演算部248とに通知する。
【0025】
姿勢制御部242は、ジャイロセンサー2cから入力される姿勢信号に基づいて、第1ヒンジ部10の姿勢制御モータ7を制御することで、カメラ部2の姿勢が一定になるように、カメラ支持アーム5と走行車両1のシャーシ1bとの回動角度θa(
図1参照)を変更させる。
【0026】
トルク制御部243は、入力部220から受け付けたトルク指示に基づいて、第2ヒンジ部20のモーメント付与モータ9aと第3ヒンジ部30のモーメント付与モータ9bとに印加する電流を制御することで、第1アーム6aに対してシャーシ1bから離れる方向(
図1に示す矢印Aの方向)のモーメントと、第2アーム6bに対してシャーシ1bから離れる方向(
図1に示す矢印Bの方向)のモーメントとをそれぞれ付与する。これにより、無限軌道1aは下孔壁から、第1上孔壁駆動輪3及び第2上孔壁駆動輪4は上孔壁からそれぞれ反力を得ることができ、自走装置100は、ボーリング孔300内に水流がある場合や、ボーリング孔300の孔壁が荒れていても走破できる。なお、孔壁からの反力は、モーメント付与モータ9a、9bによって各アームに付与されるモーメント(モーメント付与モータ9、9bのトルク)によって決まる。従って、水流の量や孔壁の状態に応じて入力部220から入力するトルク指示によってモーメントの大きさ設定可能であり、孔壁からの反力を適切な値に設定することができる。なお、各アームに付与されるモーメントを変更する必要がない場合には、モーメント付与モータ9a、9bの代わりにバネ等の付勢手段を設け、付勢手段によって各アームにモーメントを付与するようにしても良い。
【0027】
走行距離演算部244は、エンコーダ13から入力される駆動モータ8aの回転角度位置に基づいて、自走装置100の走行距離をリアルタイムで演算し、演算した走行距離を映像処理部245に出力する。なお、第1の実施の形態では、無限軌道1aの起動輪を駆動する駆動モータ8aの回転角度位置に基づいて走行距離を演算するように構成したが、発信装置70aが設けられた第1上孔壁駆動輪3を駆動する駆動モータ8bや、受信装置70bが設けられた第2上孔壁駆動輪4を駆動する駆動モータ8cの回転角度位置に基づいて走行距離を演算するようにしても良い。
【0028】
映像処理部245は、カメラ部2のカメラ2bによって撮影された孔内映像に、走行距離演算部244によって演算された走行距離を重畳し、走行距離を重畳した孔内映像孔内映像を表示部210に表示すると共に、記憶部230に録画する。表示部210に表示された孔内映像は、姿勢制御部242によってカメラ部2の姿勢が一定に制御されるため、ブレが少なく、ボーリング孔300の状態を確実に把握することができる。また、自走装置100の走行距離も合わせて確認するができるため、目視によって把握された注目箇所(岩質の変化点等)間での距離を簡単に特定することができる。
【0029】
発信部246は、発信装置70aの保護部材72と受信装置70bの保護部材72とがボーリング孔300の上孔壁に接触するタイミングで、発信装置70aの圧電素子71に所定の電圧信号を供給し、圧電素子71を振動させる。圧電素子71の振動は、保護部材72を介してボーリング孔300の孔壁に弾性波として発信される。発信装置70aからボーリング孔300の孔壁に発信された弾性波は、表面弾性波となって伝播される。この表面弾性波は、受信装置70bの圧電素子71に保護部材72を介して伝わり、電圧信号に変換される。
【0030】
測定距離演算部248は、発信装置70aの保護部材72と受信装置70bの保護部材72とがボーリング孔300の上孔壁に接触するタイミングで、エンコーダ22から入力されるモーメント付与モータ9aの回転角度位置と、エンコーダ42から入力されるモーメント付与モータ9bの回転角度位置とに基づいて、発信装置70aの保護部材72と受信装置70bの保護部材72との距離を測定距離L
mとして演算する。測定距離L
mは、
図5(b)に示すように、回動軸21と回動軸41との間の距離L
1、第1アーム6aの長さをL
2、第2アーム6bの長さをL
3、第1アーム6aとシャーシ1bとがなす角度をθ
1、第2アーム6bとシャーシ1bとがなす角度をθ
2とすると、次式によって表される。
【0032】
回動軸21と回動軸41との間の距離L
1と、第1アーム6aの長さL
2と、第2アーム6bの長さをL
3とは既知である。従って、測定距離演算部248は、エンコーダ22から入力されるモーメント付与モータ9aの回転角度位置と、エンコーダ42から入力されるモーメント付与モータ9bの回転角度位置とに基づいて、第1アーム6aとシャーシ1bとがなす角度をθ
1と、第2アーム6bとシャーシ1bとがなす角度をθ
2とをそれぞれ演算し、測定距離L
mを演算する。
【0033】
受信部247は、発信部246から電圧信号が送信された後、受信装置70bの圧電素子71によって変換された電圧信号が受信されるまでの時間を、発信装置70aからボーリング孔300の孔壁に発信された弾性波が受信装置70bによって受信されるまでの弾性波測定時間T
mとして計測する。受信部247は、計測した弾性波測定時間T
mを、測定距離演算部248によって演算された測定距離L
mと、走行距離演算部244によって演算された走行距離と共に、記憶部230に記憶させる。弾性波測定時間T
mと測定距離L
mとは、弾性波速度の計測結果となり、弾性波速度から地山の圧縮強度を推定することができる。
【0034】
なお、大径の先端ビット500を用いて削孔を行う場合、
図7に示すように、ボーリングロッド600と上孔壁との間隙が生じ、この間隙を自走装置100の走行路としても良い。この場合には、無限軌道1aは、ボーリングロッド600の上面から反力を得る。そして、ボーリングロッド600の上面には、左右に間隔をもって配置された一対の無限軌道1aが当接するため、自走装置100は、ボーリングロッド600からずり落ちることなく、ボーリングロッド600の上面を安定して走行可能である。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の孔内調査装置は、
図8及び
図9を参照すると、孔壁の一軸圧縮強度を測定する硬度測定装置80を備えた自走装置100aと、自走装置100aを制御する制御装置200aとで構成されている。自走装置100aは、第1の実施の形態の自走装置100から発信装置70a及び受信装置70bと、第2アーム6bとを取り除き、硬度測定装置80が発信装置70aの代わりに第1アーム6aの他端側(開放端側)に設けられている。硬度測定装置80は、第2駆動軸31、もしくは第1上孔壁駆動輪3の側面に固定されており、第1上孔壁駆動輪3の回転に伴って間欠的にボーリング孔300の上孔壁に接触する。なお、第1の実施の形態の自走装置100の構成に硬度測定装置80を加えても良い。例えば、硬度測定装置80を発信装置70aと共に第1アーム6aの他端側(開放端側)に設けることができる。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0036】
硬度測定装置80は、一軸圧縮強度を測定するエコーチップやペネトロ計等で構成された硬度計81と、硬度計81を孔壁の方向に移動させるアクチュエータ82とを備えている。制御装置200aの制御部240aは、タイミング制御部249として機能する。タイミング制御部249は、エンコーダ32から入力される駆動モータ8bの回転角度位置に基づいて、硬度計81がボーリング孔300の上孔壁に対向するタイミングで、アクチュエータ82を駆動させ、硬度計81を上孔壁に押圧させ、硬度計81によって上孔壁の一軸圧縮強度を測定させる。
【0037】
受信部247aは、硬度計81によって測定された一軸圧縮強度を受信し、受信した一軸圧縮強度を、走行距離演算部244によって演算された走行距離と共に、記憶部230に記憶させる。
【0038】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の孔内調査装置は、
図10を参照すると、下孔壁に傷を付ける傷生成装置90を備えた自走装置100bと、自走装置100bを制御する制御装置200bとで構成されている。自走装置100bは、第2の実施の形態の自走装置100aの構成に加え、傷生成装置90を備えている。自走装置100bの前進時に傷生成装置90によって下孔壁に傷を付け、自走装置100bの後退時に下孔壁に付けた傷をカメラ部2によって撮影し、傷の具合によって孔壁を調査する。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0039】
図11(a)を参照すると、第3アーム6cの一端側は、第4ヒンジ部60によって走行車両1のシャーシ1bと回動可能に接続され、第3アーム6cの他端側(解放端側)に傷生成装置90が設けられている。なお、
図11において、(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、(c)は後方側から見た図である。第4ヒンジ部60は、本体(ハウジング)が第3アーム6cに固定され、左右両側に回動軸61となるモータ軸を突出させたモーメント付与モータ9cで構成されている。モーメント付与モータ9cのモータ軸(回動軸61)は、走行車両1の左右一対のシャーシ1bにそれぞれ固定されている。モーメント付与モータ9cとしては、トルクを制御可能なサーボモータが用いられる。
【0040】
傷生成装置90は、
図11(b)、(c)を参照すると、5本の刃を有するくし刃部材91と、くし刃部材91の刃先のそれぞれに取り付けられた当接部材92a〜eとからなる。当接部材92a〜eは、下孔壁に当接して傷を付けるための物質であり、当接部材92a〜eには、それぞれ硬度の異なる物質(例えば、石英、正長石、アパタイト、方解石、石膏等)が用いられる。当接部材92a〜eを異なる硬度で構成することで、当接部材92a〜e毎に傷の付き具合が異なり、この傷を観察することで下孔壁を構成する物資を推定することができる。例えば、下孔壁を構成する物資がアパタイト相当の硬度を有している場合には、石英や正長石で傷を付けることができるが、方解石や石膏では傷を付けることができない。従って、傷の付き具合を観察することで、下孔壁を構成する物資の硬度を把握することができ、映像と共に用いると、下孔壁を構成する物資の推定を高い確率で行うことが可能になる。
【0041】
図12を参照すると、制御装置200bの制御部240bは、押圧制御部250として機能する。押圧制御部250は、入力部220から押圧指示が入力されると、第4ヒンジ部60のモーメント付与モータ9cを制御することで、第3アーム6cに対して下孔壁に向かう方向(
図10に示す矢印Cの方向)のモーメントを付与する。これにより、傷生成装置90の当接部材92a〜eが下孔壁に押圧される。下孔壁への当接部材92a〜eの押圧力は、モーメント付与モータ9cによって第3アーム6cに付与されるモーメント(モーメント付与モータ9cのトルク)によって決まる。従って、入力部220から入力するトルク指示を変更することで、当接部材92a〜eの押圧力を適切な値に設定することができる。また、押圧制御部250は、入力部220から待避指示が入力されると、第4ヒンジ部60のモーメント付与モータ9cを制御することで、第3アーム6cに対して下孔壁から離れる方向(
図10に示す矢印Dの方向)のモーメントを付与し、傷生成装置90の当接部材92a〜eを下孔壁から離間させる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ボーリング孔の孔内を走行する自走装置100と、自走装置100の走行を制御する制御装置200とを有する孔内調査装置であって、自走装置100は、孔内を調査する調査装置(カメラ部2、発信装置70a、受信装置70b、硬度測定装置80、傷生成装置90)と、走行車両1と、一端側がヒンジ部(第2ヒンジ部20、第3ヒンジ部40)を介して走行車両1(シャーシ1b)に接続されたアーム(第1アーム6a、第2アーム6b)と、アームの他端側に設けられ、上孔壁に当接する上孔壁駆動輪(第1上孔壁駆動輪3、第2上孔壁駆動輪4)と、アームに対して、走行車両1と上孔壁駆動輪とが離れる方向のモーメントを付与するモーメント付与手段(モーメント付与モータ9a、9b)とを備えている。
この構成により、走行車両1には下孔壁から、上孔壁駆動輪(第1上孔壁駆動輪3、第2上孔壁駆動輪4)には上孔壁からそれぞれ反力が作用するため、自走装置100は、ボーリング孔300の孔内を安定して走行することができ、搭載する調査装置によって孔内の調査を素早く確実に行うことができる。
【0043】
さらに、本実施の形態において、モーメント付与手段は、ヒンジ部(第2ヒンジ部20、第3ヒンジ部40)として機能するモーメント付与モータ9a、9bであり、制御装置100は、モーメント付与モータのトルク9a、9bを制御するトルク制御部243を備えている。
この構成により、水流の量や孔壁の状態に応じて入力部220からモーメントの大きさ設定可能であり、孔壁からの反力を適切な値に設定することができる。
【0044】
さらに、本実施の形態において、自走装置100は、上孔壁に当接する第1上孔壁駆動輪3が他端側に設けられた第1アーム6aと、上孔壁に当接する第2上孔壁駆動輪4が他端側に設けられた第2アーム6bと、第1アーム6aの他端側に設けられ、第1上孔壁駆動輪3の回転に伴って間欠的に上孔壁に接触して弾性波を発信する発信装置70aと、第2アーム6bの他端側に設けられ、第2上孔壁駆動輪4の回転に伴って間欠的に上孔壁に接触して弾性波を受信する受信装置70bと、第1上孔壁駆動輪3の回転角度位置を検出する第1回転検出手段(エンコーダ32)と、第2上孔壁駆動輪4の回転角度位置を検出する第2回転検出手段(エンコーダ52)と、第1アーム6aの角度を検出する第1角度検出手段(エンコーダ22)と、第2アーム6bの角度を検出する第2角度検出手段(エンコーダ42)とを備え、制御装置200は、第1回転検出手段及び第2回転検出手段によって検出される第1上孔壁駆動輪3及び第2上孔壁駆動輪4の回転角度位置に基づいて、第1上孔壁駆動輪3の回転と第2上孔壁駆動輪4の回転とを同期させ、発信装置70aと受信装置70bとを同じタイミングで上孔壁に接触させる走行制御部241と、発信装置70aから発信された弾性波が受信装置70bによって受信されるまでの弾性波測定時間T
mを計測する受信部247と、第1角度検出手段及び第2角度検出手段によって検出される角度に基づいて、発信装置70aと受信装置70bとの距離を測定距離L
mとして演算する測定距離演算部248とを備えている。
この構成により、自走装置100を走行させながら、地山の物理定数として弾性波測定時間T
mと測定距離L
mとを測定することができる。弾性波測定時間T
mと測定距離L
mとは、弾性波速度の計測結果となり、弾性波速度から地山の圧縮強度を推定することができる。
【0045】
さらに、本実施の形態において、調査装置は、上孔壁駆動輪(第1上孔壁駆動輪3、第2上孔壁駆動輪4)の回転に伴って間欠的に上孔壁の一軸圧縮強度を測定する硬度測定装置80である。
この構成により、自走装置100aを走行させながら、地山の物理定数として一軸圧縮強度を測定することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態において、調査装置は、孔内を撮影するカメラ部2であり、
一端側が第1ヒンジ部10を介して走行車両1(シャーシ1b)に接続され、他端側がカメラ部2に接続されたカメラ支持アーム5と、カメラ支持アーム5の走行車両1(シャーシ1b)に対する角度を変更してカメラ部2の姿勢を制御する姿勢制御手段(姿勢制御モータ7)とを備えている。
この構成により、走行する自走装置から安定した姿勢で孔内を撮影することができ、撮影された映像に基づいて孔内を詳細に観察することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態において、調査装置は、下孔壁に傷を付ける傷生成装置90であり、傷生成装置90は、下孔壁に対して離接可能に構成されている。また、傷生成装置90は、下孔壁に当接して傷を付ける当接部材92a〜eがそれぞれ取り付けられる複数の刃先を備えている。
この構成により、傷生成装置90によって付けた傷を観察することで下孔壁を構成する物資の硬度を把握することができ、映像と共に用いると、下孔壁を構成する物資の推定を高い確率で行うことが可能になる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。