(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
160℃の乾熱下で10分間保持した際に、フィルム横方向の加熱収縮率をフィルム縦方向の加熱収縮率で割った値が1.0〜1.4であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、無機薄膜層を積層させるための基材フィルムとして用いる積層2軸延伸ポリアミドフィルムを詳細に説明する。基材フィルムとなる積層2軸延伸ポリアミドフィルム(以下、単に「基材フィルム」又は「積層2軸延伸ポリアミドフィルム」と記載する)は、特定の混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に特定の混合重合体からなるB層が積層されて構成されるものである。
【0016】
基材フィルムのA層は、脂肪族ホモポリアミド97〜70重量%と脂肪族コポリアミド3〜20重量%と所望により熱可塑性エラストマー0〜10重量%との混合重合体からなる。かかるA層は、耐衝撃性および耐屈曲疲労性に優れる脂肪族ホモポリアミド中に柔軟性付与剤、粘り性付与剤として脂肪族コポリアミドが微分散している構造をもつことで、優れた衝撃強度、耐屈曲疲労性の改善に寄与し、さらに耐ピンホール素材としての熱可塑性エラストマーが分散している構造を持つことで、さらに優れた耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に寄与する。ここで、A層を構成する脂肪族コポリアミドの混合量が3重量%未満では、熱可塑性エラストマーの混合量が少ないと現行の耐ピンホール性ポリアミド延伸フィルムを越える高度に要求された耐衝撃性、耐屈曲疲労性を得ることができない。また、A層を構成する脂肪族コポリアミドの混合量が20重量%を超えると、衝撃強度、耐屈曲疲労性が飽和する。さらに、熱可塑性エラストマーの混合量が増加すると、耐屈曲疲労性の改善効果が得られるが、混合量が10重量%を超えると、透明性が不良となり、耐屈曲疲労性も飽和する。
【0017】
基材フィルムのA層を構成する脂肪族ホモポリアミドとしては、フィルム成形材料として使用することができかつ上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されない。例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・10などの脂肪族ポリアミド単独重合体を使用することができる。
【0018】
A層に混合される脂肪族コポリアミドとしては、上記の脂肪族ホモポリアミドに共重合可能なモノマーが10重量%以下、好ましくは1〜10重量%の共重合体、例えば、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/6・10共重合体、ナイロン6・6/6・10共重合体などの脂肪族コポリアミド、またはε‐カプロラクタムを主成分としこれとヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とのナイロン塩やメタキシリレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩などとを共重合させた少量の芳香族を含むポリアミド共重合体等を使用することができる。
【0019】
A層に混合される熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する物質としての熱可塑性材料のことであり、上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されない。例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体等の他、これらのエラストマーの混合物などが挙げられる。熱可塑性エラストマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明では、熱可塑性エラストマーは、本発明の目的を損なわない範囲において改質が行われてもよい。例えば、前記例示の熱可塑性エラストマーの変性体であってもよい。熱可塑性エラストマーにおける改質としては、例えば、共重合やグラフト変性による改質、極性基の付与による改質などが挙げられる。極性基の付与は、グラフト変性により行われてもよい。このような極性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキソ基などが挙げられる。極性基は1種類で又は複数の種類を組み合わせて付与することができる。従って、極性基が付与された変性体には、例えば熱可塑性エラストマーのエポキシ変性体、カルボキシ変性体、酸無水物変性体、ヒドロキシ変性体、アミノ変性体などが含まれる。
【0021】
本発明の熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー及びアイオノマー重合体を好適に用いることができる。
【0022】
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントからなるポリアミド系ブロック共重合体が挙げられる。ハードセグメントのポリアミド成分は、(1)ラクタム、(2)ω‐アミノ脂肪族カルボン酸、(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、又は(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸からなる群から選択され、具体的には、ε‐カプロラクタムの如きラクタム、アミノヘプタン酸の如き脂肪族ジアミン、アジピン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸を例示することができる。また、ポリアミド系ブロック共重合体のソフトセグメントを構成するポリオキシアルキレングリコールは、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ‐1,2‐プロピレングリコール等が挙げられる。
【0023】
ポリアミド系ブロック共重合体の融点は、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントの種類と比率によって決められるが、通常は、120℃から180℃の範囲のものが使用される。
【0024】
ポリアミド系ブロック共重合体を基材フィルムである積層2軸延伸ポリアミドフィルムの構成成分にすることにより、基材フィルムの耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に効果がある。
【0025】
また、ポリオレフィン系エラストマーとしては、特に制限されず、ポリオレフィンをハードセグメントとし、各種ゴム成分をソフトセグメントとするブロック共重合体などが挙げられる。ハードセグメントを構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、3‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン、1‐オクタデセンなど、炭素数2〜20程度のα‐オレフィン等の単独重合体又は共重合体などが挙げられる。ポリオレフィンを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。好ましいオレフィンには、エチレン、プロピレンが含まれる。また、ソフトセグメントを構成するゴム成分としては、例えば、エチレン‐プロピレンゴム(EPR)、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR;アクリルニトリル‐ブタジエンゴム)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、水素添加NBR(H‐NBR)、アクリロニトリル‐イソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリル‐イソプレン‐ブタジエンゴム(NBIR)などが挙げられる。これらのゴム成分には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸をコモノマーとして含有させたカルボキシル化ゴム等の酸変性ゴムやその他の変性ゴム、水添物なども含まれる。これらのゴム成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
アイオノマー重合体としては、特に制限されず、ポリオレフィンをハードセグメントとし、不飽和カルボン酸で酸変性させた各種ゴム成分をソフトセグメントとし、さらに金属イオンにて中和してなるブロック共重合体などが挙げられる。好ましいアイオノマー重合体としては、エチレンとメタクリル酸からなる共重合樹脂、又はエチレンとメタクリル酸とアクリル酸エステルとからなる共重合樹脂を、Na
+、K
+、Zn
2+を含む金属イオンで中和してなるアイオノマー重合体が挙げられる。
【0027】
A層を構成する混合重合体は、バージン原料の上記脂肪族ホモポリアミドと脂肪族コポリアミドと所望により熱可塑性エラストマーを混合したものであってもよいし、また、本発明の積層2軸延伸ポリアミドフィルムを製造する際に生成する規格外フィルムや切断端材(耳トリム)として発生する屑材及びその再生レジンとバージン原料を加えて調整したものであってもよい。
【0028】
本発明のB層は、脂肪族ホモポリアミド99.5〜90重量%と熱可塑性エラストマー0.5〜10重量%との混合重合体からなる。かかるB層は、優れた耐屈曲ピンホール性を持ち、包装袋に加わる屈曲の衝撃を受け止め、破袋防止性の発現に寄与する。熱可塑性エラストマーの含有量が上記範囲内であれば、良好な透明性を維持しながら耐屈曲疲労性を向上させることができる。
【0029】
B層を構成する脂肪族ホモポリアミド及び熱可塑性エラストマーは、上述したA層の脂肪族ホモポリアミド及び熱可塑性エラストマーを同様に使用することができる。
【0030】
このようにして本発明に用いられる基材フィルムとなる積層2軸延伸ポリアミドフィルムが成形される。ここで、フィルムの屈曲疲労性はフィルム厚みが影響し、フィルムが厚くなるほど屈曲疲労性は低下する。これはフィルムが屈曲される際、屈曲の外側には引張応力が、屈曲の内側には圧縮応力がかかるが、フィルムが厚くなるほどこれらの応力が大きくなるからである。本発明において得られるポリアミドフィルムは9μm未満の厚みを有するのが好ましい。フィルム厚みが9μm以上になると、耐屈曲疲労性が下がるので好ましくない。
【0031】
上記の如く作製した基材フィルムに無機薄膜層を積層させることによりガスバリア性積層フィルムを作製する。ガスバリア性積層フィルムの厚みは、高速自動充填後のヒートシール強度およびフィルム外観にも大きな影響を及ぼす。これは、ガスバリア性積層フィルムにポリエチレン、ポリプロピレンなどでなるシーラント層が設けられ袋状に加工された後、調味料等の内容物が充填され、シーラント層を内側として開口部をヒートシールするが、ガスバリア性積層フィルムが厚い場合、高速自動充填時にはガスバリア性積層フィルムの内側に設けられたヒートシール層まで十分に熱が伝わらずヒートシール強度が低下するからである。一方、高速自動充填時のヒートシール温度を高く設定すると、ヒートシール強度については十分な強度が得られるものの、高温でフィルムを加熱することによりヒートシール部分に波状のシワが発生し、外観良好性が低下する。
【0032】
高速自動充填時のヒートシール強度とフィルム外観の良好性を両立するため、ガスバリア性積層フィルムの厚みは9μm未満とすることが重要である。ガスバリア性積層フィルムの厚みが9μm以上である場合、これら2つの特性の両立は困難であり、高速自動充填時のヒートシール温度を低く設定した場合には、ヒートシール強度が不足する。一方、十分なヒートシール強度を得るために、ヒートシール温度を高く設定した場合、ヒートシール部分にいてシワ発生が発生し、外観の良好性が低下する問題が生じる。
【0033】
さらには、ガスバリア性積層フィルムの厚みを9μm未満とすることで、従来、包装用途に用いられてきたポリアミドフィルムと比べ減容化をすることができ、環境問題対策の一環である省資源化、廃棄物削減の要請に答えることができる。
【0034】
以上のように、ガスバリア性積層フィルムの厚みを9μm未満とすることで、耐屈曲疲労性とヒートシール強度、ヒートシール後の外観良好性を両立し、さらには減容化を可能とするものである。
【0035】
ヒートシール強度の測定法については後述するが、本発明のガスバリア性積層フィルムにポリエチレン、ポリプロピレンなどでなるシーラント層が設けられ袋状に加工された後、シーラント層を内側として開口部を140℃で0.5秒の条件でヒートシールを行い、JIS Z1707に準拠してシール強度測定した場合、その強度が23N/15mm以上になることが好ましい。23N/15mmより小さい場合、ヒートシール部分に未融着部分が生じて、内容物の漏れにつながる問題が生じる可能性があるため好ましくない。
【0036】
上述のように構成されたA層の少なくとも一方の面(例えば、片面又は両面)に上述のように構成されたB層が積層されてなる本発明のガスバリア性積層フィルムは、フィルムの全厚みが9μm未満のように極めて薄いものであっても、衝撃強度が0.6J/10μm以上であり、5℃の屈曲疲労ピンホール数が5個以下であり、破断強度が25N/15mm以上であることができる。また、本発明のガスバリア性積層フィルムは、ヘイズが6%以下であることが好ましい。ヘイズが6%を超えると透明性が十分に改善されず、透明性が要求される用途で使用しにくくなる。より好ましくは5%以下、更に好ましくは4%以下である。ヘイズ値は小さいほど好ましいが、1%以上であっても構わない。2%以上であっても好ましい範囲と言える。
【0037】
また、上記ガスバリア性積層フィルムは160℃の乾熱下で10分間保持した際のフィルム流れ方向(以下、「縦方向」とも言う)の加熱収縮率が1.5%〜4.0%であり、かつフィルム幅(以下、「横方向」とも言う)方向の加熱収縮率が2.1〜4.5%にすることが好ましい。縦方向および横方向の加熱収縮率がそれぞれ4.0%および4.5%をこえることになると,ヒートシールの際の熱履歴を受け,熱収縮による収縮シワが発生しやすくなるので好ましくない。また,印刷や他の基材フィルムとのラミネート等の加工工程においても,熱収縮による印刷のピッチずれやカール現象等の不具合点が発生する。一方,流れ方向の加熱収縮率が1.5%未満になると,ヒートシール時の加熱ロールによるしごきを受けた際に,フィルムの抗張力が不足し伸ばされるために,ヒートシール部分に波状のシワが発生するので好ましくない。
【0038】
また,ヒートシール部分に発生する波状のシワ発生の防止には,縦方向の加熱収縮率と横方向の加熱収縮率のバランスも重要である。たとえば,縦方向の加熱収縮率が2.5%以上で,縦方向のしごきに対し抗張力が発揮された状態で横方向のヒートシールが行われた場合,横方向には縮みを引き起こすことになるが,横方向の加熱収縮率が1.5%未満の場合には,この縮みを吸収できずにヒートシール部分に波状のシワが発生する。
【0039】
以上のことから,ガスバリア性積層フィルムのフィルム流れ方向(縦方向)の加熱収縮率が1.5〜4.0%の範囲と幅方向(横方向)の加熱収縮率が2.1〜4.5%の範囲とは同時に満足されなければならず、160℃の乾熱下で10分間保持した際のフィルム幅方向の加熱収縮率を、フィルム流れ方向の加熱収縮率で割った値は、1.0〜2.0となるのが好ましく、1.0〜1.4となるのがより好ましい。この値が1.0に近くなるほど、フィルム流れ方向とフィルム幅方向の収縮率が等しく、シワが発生しにくいこととなり、フィルム外観が良好となる。
【0040】
また、本発明のガスバリア性積層フィルムの弾性率は、2.2GPa以下であることが好ましい。2.2GPaより大きくなると柔軟性が不十分となり耐屈曲疲労性が低下する。1.5GPaより小さくなると柔軟になり過ぎ、耐ピンホール性のバランスが取れなくなる。1.6GPa以上2.1GPa以下がより好ましい。
【0041】
上記の弾性率について、他の物性と両立させるには製膜工程におけるテンターでの熱固定温度及び時間を最適化する必要がある。熱固定温度については、190℃〜205℃であることが好ましく、より好ましくは195℃〜203℃である。また、熱固定時間は5〜20秒であることが好ましく、より好ましくは10〜15秒で行う。特に熱固定温度が190℃よりも低くなると、フィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、寸法安定性が悪くなり、目標とする熱収縮率などの特性が得られない。また、耐衝撃性、耐ピンホール性等の機械的強度も不足する。
【0042】
一方、熱固定温度を205℃より高温にした場合、フィルムの結晶化が進みすぎるため、必要な弾性率が得られないため好ましくない。また、結晶化の進行によりフィルムが白化失透し、ヘイズが上昇しやすくなる。
【0043】
また、本発明の基材フィルムは、B層に対して0.6〜1.0ml/gの細孔容積を有する無機微粒子及び1.1〜1.6ml/gの細孔容積を有する無機微粒子のように2種類以上の細孔容積を有する無機微粒子を含有することが好ましい。無機微粒子の細孔容積の範囲は0.5〜2.0ml/gであると好ましく、0.8〜1.5ml/gであるとより好ましい。細孔容積が0.5ml/g未満であると、ボイドが発生し易くなりフィルムの透明性が悪化し、細孔容積が2.0ml/gを超えると、フィルムの滑り性が悪くなるため、好ましくない。このように2種類以上の細孔容積を有する無機微粒子を用いることにより、透明性と高湿度環境下でも優れた滑り性を維持し、包装袋に加わる摩擦、屈曲の衝撃を受け止め、破袋防止性の発現に寄与することができる。
【0044】
無機微粒子としては、シリカ、カオリン、ゼオライト等の無機滑剤、アクリル系、ポリスチレン系等の高分子系有機滑剤等の中から適宜選択して使用することができる。なお、透明性、滑り性の面から、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0045】
無機微粒子の好ましい平均粒子径は0.5〜5.0μmであり、より好ましくは1.0〜3.0μmである。平均粒子径が0.5μm未満であると、良好な滑り性を得るのに多量の添加量が要求され、5.0μmを超えると、フィルムの表面粗さが大きくなりすぎて実用特性を満たさなくなるので好ましくない。
【0046】
なお、細孔容積とは無機微粒子1g当りに含まれる細孔の容積(ml/g)のことをいう。そのようなシリカ微粒子は、一般には合成シリカを粉砕し分級することによって得られるが、合成時に直接に球状微粒子として得られる多孔質シリカ微粒子を用いることも可能である。また、そのようなシリカ微粒子は一次粒子が凝集してできた凝集体であり、一次粒子と一次粒子の隙間が細孔を形成する。
【0047】
細孔容積は、無機微粒子の合成条件を変えることによって調整することができ、細孔容積が小さいほど、少量の添加量で良好な滑り性を与えることが可能となる。細孔容積の小さい無機微粒子を使用すると、配合したポリアミド系樹脂の延伸工程においてフィルム表面に高い突起を形成するが、多くのボイドを生じ、フィルムの透明性が損なわれることがある。これに対し、細孔容積の大きい無機微粒子を使用すると、透明性を維持した上で多量添加が可能となる。しかし、その形成する表面突起の高さは低く、高湿度条件下でも好適な滑り性を維持するためには多量の無機微粒子の添加を必要とする。従って、上述した2種類以上の範囲の無機微粒子をB層に添加すると、透明性を維持したまま、高い表面突起と低い表面突起が共存し、高湿度環境下での優れた滑り性を得ることができる。なお、2軸延伸フィルムの透明性は、延伸条件(温度や倍率)あるいはその後の緩和処理条件(緩和率や温度)によっても変わってくるので、これらの条件も適正にコントロールすることが望ましい。
【0048】
無機微粒子をB層に添加する方法としては、樹脂の重合時の添加や押出し機での溶融押出し時に添加してマスターバッチ化し、このマスターバッチをフィルム生産時にポリアミドに添加して使用するなどの公知の方法により行うことができる。
【0049】
なお、無機微粒子の平均粒子径は下記のようにして測定した値である。高速攪拌機を使用して所定の回転速度(約5000rpm)で攪拌したイオン交換水中に無機微粒子を分散させ、その分散液をイソトン(生理食塩水)に加えて超音波分散機で更に分散した後に、コールカウンター法によって粒度分布を求め、重量累積分布の50%における粒子径を平均粒子径として算出した。
【0050】
無機微粒子のB層中に占める含有量は0.03〜2.5重量%であり、より好ましくは0.08〜1.5重量%である。無機微粒子の含有量が上記範囲未満であると、二軸延伸フィルムの高湿度下での滑り性が十分に改善されず、含有量が上記範囲を超えると、抽出工程での流失量が多くなる上、フィルムの透明性が許容できないほど悪くなるので好ましくない。また、0.6〜1.0ml/gの細孔容積を有する無機微粒子と1.1〜1.6ml/gの細孔容積を有する無機微粒子はそれぞれ、B層に0.005〜0.5重量%、0.01〜2.0重量%含有することが好ましい。
【0051】
本発明の基材フィルムは、上記必須成分以外に、前記した特性を阻害しない範囲内で他の種々の添加剤、例えば潤滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃改良剤などを含有することも可能である。特に、表面エネルギーを下げる効果のある有機系潤滑剤を、接着性や濡れ性に問題が生じない程度に添加すると、延伸フィルムに一段と優れた滑り性と透明性を与えることができるので好ましい。
【0052】
本発明では、A層及び/又はB層中に、滑り性付与を目的として脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有させることができる。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。
【0053】
この場合のポリアミド中の脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量は、好ましくは0.01〜0.40重量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量が上記範囲未満となると、滑り性が悪く、印刷やラミネート等における加工適性が不良となり、上記範囲を越えると、経時的にフィルム表面へのブリードにより表面に斑を生ずることがあり、品質上好ましくない。
【0054】
本発明の基材フィルムは、上記のようにB層に無機微粒子を添加したり、A層及び/又はB層が脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有することにより、0.90以下の23℃65%RHでのフィルム易滑面同士の静止摩擦係数を達成することができる。 ここで、フィルム易滑面とは、無機微粒子を含有する層、すなわちB層のことを言う。
【0055】
本発明のガスバリア性積層フィルムの全厚みは、包装材料として使用する場合、通常100μm以下であり、一般には5〜50μmの厚みのものが使用される。但し、本発明のガスバリア性積層フィルムは、9μm未満の薄いフィルム構成のときに上述の効果を発揮することが特徴である。
【0056】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、包装袋(製袋品)に加工される場合、B層面が製袋品の最外面となるラミネート構成となることが好ましい。製袋品の運搬時に段ボール等の運搬包装との摩擦が生じた場合、その摩擦でフィルムに削れを生じ破袋したり、袋どうしの接触で突き刺し、屈曲疲労等が増加し破袋したりする。本発明の構成では、滑り性の良いB層で摩擦による破袋要因を減少させ、高い破袋防止性を発現する。
【0057】
この場合において、B層の厚みがフィルム総厚みのかなりの部分を占めた場合、高い滑り性を確保するが透明性は大きく低下する。これと反対にA層の厚みがフィルム総厚みをほぼ占有した場合、柔軟性、衝撃強度、耐屈曲疲労性は優れているものの、滑り性が確保できない。従って、本発明において、A層の厚みを、A層とB層の合計厚みの60〜96%、特に65〜93%とすることが好ましい。また、B層の厚みを少なくとも1μm以上、好ましくは3μm以下とすることで、耐屈曲疲労性と耐磨耗性の両立を効果的に発現しうる。
【0058】
A層、B層を構成する各種ポリアミド、熱可塑性エラストマー等を混合する方法には特に制限はないが、通常はチップ状の重合体をV型ブレンダーなどを用いて混合した後、溶融し成形する方法が用いられる。
【0059】
本発明の基材フィルムのA層とB層を構成するポリアミドには、必要に応じて他の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン‐2,6‐ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等をその特性を害さない範囲で含有させてもよい。
【0060】
また、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を必要に応じて、ポリアミドからなるA層及び/又はB層の一方又は両方の層に含有させることができる。
【0061】
本発明の基材フィルムは、公知の製造方法により製造することができる。例えば、各層を構成する重合体を別々の押出機を用いて溶融し、1つのダイスから共押出しにより製造する方法、各層を構成する重合体を別々にフィルム状に溶融押出ししてからラミネート法により積層する方法、及びこれらを組み合わせた方法など任意の公知の方法を採用することができ、延伸方法としては、例えば、フラット式逐次2軸延伸方法、フラット式同時軸延伸方法、チューブラー法等の公知の方法を用いて縦方向に2〜5倍、横方向に3〜6倍延伸し、熱固定する。かくして、積層フィルムの透明性、酸素ガスバリア性や加工適性を向上させることができる。
【0062】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記基材フィルムの上に無機薄膜層が積層されている態様をとる。つまり、本発明の基材フィルムは無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムに用いるものであり、該無機薄膜層を積層した態様をとる。
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、加工性及びガスバリア性の観点から、アルミニウムを含む材料を使用することが好ましい。アルミニウムを含む材料としては、例えば純度の高いアルミニウム(99.9mol%以上)や他の添加元素を含むアルミニウム合金、酸化アルミニウムなどの無機酸化物などが挙げられ、複数の金属や金属と無機酸化物の併用、複数の無機酸化物の組み合わせでも良い。無機薄膜層を形成する材料の組み合わせとしては特に限定されないが、例えば、高純度アルミニウムとアルミニウム合金、添加元素が異なる2種のアルミニウム合金(マグネシウム、シリコン、チタン、カルシウム、マンガン等の添加元素)、アルミニウム合金と酸化アルミニウム、酸化アルミニウムと酸化チタン、酸化ケイ素と酸化アルミニウムなどが挙げられるが、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素(シリカ)と酸化アルミニウム(アルミナ)との複合酸化物が好ましい。
この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20%以上70%以下の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合があり、一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO
2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl
2O
3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0063】
無機薄膜層の膜厚は、通常1nm以上800nm以下、好ましくは5nm以上500nm以下である。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0064】
無機薄膜層を備えた積層フィルムの水蒸気透過度(g/m
2・day)は好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。積層フィルムの酸素透過度が6を超えると、十分なガスバリア性が得られない。
【0065】
無機薄膜層を備えた積層フィルムの酸素透過度(ml/m
2・day・MPa)は好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。積層フィルムの酸素透過度が30を超えると、十分なガスバリア性が得られない。
【0066】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)など、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO
2とAl
2O
3の混合物、あるいはSiO
2とAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm〜5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0067】
以上のような本発明のガスバリア性積層フィルムは、無機薄膜層を有することにより、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れたガスバリア性積層フィルム(積層体)となる。
【0068】
さらに、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムには、無機薄膜層または基材フィルムとヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層していてもよい。
【0069】
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥など公知の乾燥方法が使用できる。
【0070】
他方、他のプラスチック基材や紙基材としては、充分な積層体の剛性および強度を得る観点から、紙、ポリエステル樹脂、および生分解性樹脂等が好ましく用いられる。また、機械的強度の優れたフィルムとする上では、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの延伸フィルムが好ましい。
【0071】
本発明の積層フィルムは、無機薄膜層以外の上述した各層を有する態様をも包含する。
【0072】
本発明のガスバリア性積層フィルムを用いることで、包装袋を形成することができる。包装袋は、ガスバリア性積層フィルムにさらにシーラント層を積層させ、シーラント層同士をヒートシールさせることにより形成される。シーラント層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルムの外側(無機薄膜層のある面の反対面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
【0073】
本発明の包装袋の形態は、特に制限されるものではないが、例えば、三方袋、四方袋、ピロー袋、ガセット袋、スティック袋などが挙げられる。
【実施例】
【0074】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
【0075】
(1)衝撃強度
ガスバリア性積層フィルムについて(株)東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターを使用し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で衝撃強度を測定した。
【0076】
(2)屈曲疲労ピンホール数
理学工業社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法によりラミネートフィルムの屈曲疲労ピンホール数を測定した。
実施例で作製したガスバリア性積層フィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムを12インチ×8インチに裁断し、直径3.5インチの円筒状にし、円筒状フィルムの一方の端をゲルボフレックステスターの固定ヘッド側に、他方の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。ストロークの最初の3.5インチで440°のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を、40回/minの速さで500回行い、ラミネートフィルムに発生したピンホール数を数えた。なお、測定は5℃の環境下で行った。テストフィルムのL‐LDPEフィルム側を下面にしてろ紙(アドバンテック、No.50)の上に置き、4隅をセロテープ(登録商標)で固定した。インク(パイロット製インキ(品番INK‐350‐ブルー)を純水で5倍希釈したもの)をテストフィルム上に塗布し、ゴムローラーを用いて一面に延展させた。不要なインクをふき取った後、テストフィルムを取り除き、ろ紙に付いたインクの点の数を計測した。
【0077】
(3)ヘイズ
ガスバリア性積層フィルムについて、(株)東洋精機製作所社製の直読ヘイズメーターを使用し、旧JIS‐K‐7105に準拠し測定した。
ヘイズ(%)=〔Td(拡散透過率%)/Tt(全光線透過率%)〕×100
【0078】
(4)静止摩擦係数
ガスバリア性積層フィルムの易滑面同士の静止擦係数を旧JIS‐K‐7125に準拠し、23℃65%RH環境下で測定した。
【0079】
(5)破断強度
測定対象のガスバリア性積層フィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ180mm×15mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(商品名)機種名AG‐5000A)を用い、引張速度200mm/分、チャック間距離100mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて引張破断強度を測定し、MD方向とTD方向の平均値をデータとした。
【0080】
(6)シール強度
(2)で得られたラミネートフィルムを用いて、JIS Z1707に準拠してシール強度測定実施した。具体的な手順を以下に記す。
ヒートシールの条件としては、基材フィルムの無機薄膜層を積層する面の反対側についてヒートシール温度及びヒートシール時間をそれぞれ、140℃で0.1秒、140℃で0.3秒、140℃で0.5秒、140℃で0.7秒、150℃で0.1秒、150℃で0.3秒、150℃で0.5秒の7条件について行った。いずれのヒートシール条件においても、シール圧力は0.2MPaとした。
また、ヒートシール後の外観評価については、ヒートシーラーにて、サンプルのシール層面同士を接着し、ヒートシール部分の外観評価を行った。外観の評価はヒートシール部分の波状のシワ状態を目視評価し、シワの無い状態を○とし、シワがきつい状態を×として評価した。
【0081】
上記の如くヒートシールした試料について、引張強度試験機(東洋測機社製:商品名テンシロンUTM)を使用して、MD(長手)方向のT字剥離強度の測定を行った。この時の引張速度は200mm/分、試験片幅は15mm幅である。
【0082】
(7)弾性率
測定対象のガスバリア性積層フィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ180mm×15mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(商品名)機種名AG‐5000A)を用い、引張速度200mm/分、チャック間距離100mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて弾性率を測定し、MD方向とTD方向の平均値を測定対象フィルムの弾性率とした。
【0083】
(8)熱収縮率
ガスバリア性積層フィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ250mm×20mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。この試験片の中央部に約150mmの線を引く。このサンプルを23℃50%RH囲気下、24時間放置し基準線を測長する。測長した長さを熱処理前の長さFとする。このサンプルを160℃に保持した熱風乾燥機中に吊し、10分間加熱した後、さらに23℃50%RH雰囲気下に20分放置した後、前記基準線を測長し、熱処理後の長さGとする。
加熱収縮率を、[(F―G)/F]×100(%)で算出する。
上記方法で、MD方向とTD方向の各収縮率をn=3で測定し、平均値を熱収縮率とした。
【0084】
(9)ガスバリア性積層フィルムの水蒸気透過度
無機薄膜層を持つガスバリア性積層フィルムについて、JIS−K7129−B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN−W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度100%RHの雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、基材フィルム側から無機薄膜層側に水蒸気が透過する方向で行った。
【0085】
(10)ガスバリア性積層フィルムの酸素透過度
無機薄膜層を持つガスバリア性積層フィルムについて、JIS−K7126−2の電解センサー法(付属書A)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN2/20」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態での酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、基材フィルム側から無機薄膜層側に酸素が透過する方向で行った。
【0086】
(実施例1)
共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層の構成で、未延伸シートの合計厚みは110μmであり、合計厚みに対するA層の厚み比率は88%である。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)87重量部、ナイロン6とナイロン12からなる脂肪族コポリアミド(宇部興産株式会社製 7034B)10重量部、およびナイロン12をポリアミド成分とするポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量部を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製 T814)96.85重量部、ポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部、細孔容積0.6〜1.0ml/gのシリカ粒子0.08重量部、細孔容積1.1〜1.6ml/gのシリカ粒子0.5重量部および脂肪酸アマイド0.15重量部からなる重合体組成物。
【0087】
得られた未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸し、続いて横方向に4.0倍延伸を行い、その後熱固定ゾーンで202℃で10秒間熱処理することにより、厚み8μmの積層2軸延伸ポリアミドフィルムを作製し、さらに、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)とドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。
【0088】
(無機薄膜層の形成)
次に、得られた基材フィルムである積層二軸延伸ポリアミドフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm〜5mm程度の粒子状SiO
2(純度99.9%)とA1
2O
3(純度99.9%)とを用いた。ここで複合酸化物層の組成は、SiO
2/A1
2O
3(質量比)=67/33であった。またこのようにして得られたフィルム(無機薄膜層/二軸延伸ポリエステルフィルム)における無機薄膜層(SiO
2/A1
2O
3複合酸化物層)の膜厚は15nmであった。
以上のようにして、基材フィルムである積層二軸延伸ポリアミドフィルムの上に無機薄膜層を備えた本発明のガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムについて、上記の通り、静止摩擦係数、破断強度、衝撃強度、屈曲疲労ピンホール数、弾性率、熱収縮率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。
【0089】
(ラミネートフィルムの作製)
積層2軸延伸ポリアミドフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)を基材フィルムの無機薄膜層を積層する面の反対側にドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムの屈曲疲労ピンホール数及びシール強度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。耐ピンホール性、耐屈曲性に優れるフィルムであった。また、ヒートシール温度及びヒートシール時間をそれぞれ、140℃で0.5秒又は150℃で0.1秒の条件で行うことで、十分なヒートシール強度を得つつ、ヒートシール後の外観も良好な結果となっており、高速下での自動充填に用いた際も、高いヒートシール強度と外観特性を両立し得るフィルムであった。
【0090】
(実施例2)
2種3層の共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層/B層の構成で、未延伸シートの合計厚みは110μmであり、合計厚みに対するA層の厚み比率は75%である。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)87重量部、ナイロン6とナイロン12からなる脂肪族コポリアミド(宇部興産株式会社製 7034B)5重量部、およびナイロン12をポリアミド成分とするポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)6.0重量部からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量部を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製 T814)93.85重量部、ポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)6.0重量部、細孔容積0.6〜1.0ml/gのシリカ粒子0.08重量部、細孔容積1.1〜1.6ml/gのシリカ粒子0.5重量部および脂肪酸アマイド0.15重量部からなる重合体組成物。
【0091】
得られた未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸し、続いて横方向に4.0倍延伸を行い、その後熱固定ゾーンで202℃で10秒間熱処理することにより、厚み8μmの積層2軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。さらに、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)とドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。
その後、得られた積層二軸延伸ポリアミドフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を実施例1と同様の方法により電子ビーム蒸着法で形成した。得られたガスバリア性積層フィルムについて、静止摩擦係数、破断強度、衝撃強度、屈曲疲労ピンホール数、弾性率、熱収縮率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。また、ガスバリア性積層フィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)を基材フィルムの無機薄膜層を積層する面の反対側にドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムの屈曲疲労ピンホール数及びシール強度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。耐ピンホール性、耐屈曲性に優れるフィルムであった。また、ヒートシール温度及びヒートシール時間をそれぞれ、140℃で0.5秒又は150℃で0.1秒の条件で行うことで、十分なヒートシール強度を得つつ、ヒートシール後の外観も良好な結果となっており、実施例1と同様に、高速下での自動充填に用いた際も、高いヒートシール強度と外観特性を両立し得るフィルムであった。
【0092】
(比較例1)
共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層の構成で、未延伸シートの合計厚みは110μmであり、合計厚みに対するA層の厚み比率は92%である。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)97重量部、およびナイロン12をポリアミド成分とするポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量部を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製 T814)96.85重量部、ポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部、細孔容積1.1〜1.6ml/gのシリカ粒子0.4重量部および脂肪酸アマイド0.15重量部からなる重合体組成物。
【0093】
得られた未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸し、続いて横方向に4.0倍延伸を行い、その後熱固定ゾーンで215℃で10秒間熱処理することにより、厚み8μmの積層2軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。さらに、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)とドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。
その後、得られた積層二軸延伸ポリアミドフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を実施例1と同様の方法により電子ビーム蒸着法で形成した。得られたガスバリア性積層フィルムについて、静止摩擦係数、破断強度、衝撃強度、屈曲疲労ピンホール数、弾性率、熱収縮率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。また、ガスバリア性積層フィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)を基材フィルムの無機薄膜層を積層する面の反対側にドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムの屈曲疲労ピンホール数及びシール強度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。熱固定ゾーンの温度が215℃と高かったため、フィルムの結晶化が必要以上に進行し、屈曲疲労ピンホール性及びフィルム弾性率が劣る結果となった。
【0094】
(比較例2)
共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層の構成で、未延伸シートの合計厚みは110μmであり、合計厚みに対するA層の厚み比率は93%である。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)97重量部、およびナイロン12をポリアミド成分とするポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量部を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製 T814)96.85重量部、ポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部、細孔容積1.1〜1.6ml/gのシリカ粒子0.5重量部および脂肪酸アマイド0.15重量部からなる重合体組成物。
【0095】
得られた未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸し、続いて横方向に4.0倍延伸を行い、その後熱固定ゾーンで215℃で10秒間熱処理することにより、厚み8μmの積層2軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。さらに、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)とドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。
その後、得られた積層二軸延伸ポリアミドフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を実施例1と同様の方法により電子ビーム蒸着法で形成した。得られたガスバリア性積層フィルムについて、静止摩擦係数、破断強度、衝撃強度、屈曲疲労ピンホール数、弾性率、熱収縮率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。また、ガスバリア性積層フィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)を基材フィルムの無機薄膜層を積層する面の反対側にドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムの屈曲疲労ピンホール数及びシール強度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。熱固定ゾーンの温度が215℃と高かったため、フィルムの結晶化が必要以上に進行し、比較例1と同様に屈曲疲労ピンホール性及びフィルム弾性率が劣る結果となった。
【0096】
(比較例3)
2種3層の共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層/B層の構成で、未延伸シートの合計厚みは130μmであり、合計厚みに対するA層の厚み比率は75%である。
A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)87重量部、ナイロン6とナイロン12からなる脂肪族コポリアミド(宇部興産株式会社製 7034B)5重量部、およびナイロン12をポリアミド成分とするポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)6.0重量部からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量部を含有してなる混合重合体組成物。
B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製 T814)93.85重量部、ポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)6.0重量部、細孔容積0.6〜1.0ml/gのシリカ粒子0.08重量部、細孔容積1.1〜1.6ml/gのシリカ粒子0.5重量部および脂肪酸アマイド0.15重量部からなる重合体組成物。
【0097】
得られた未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸し、続いて横方向に4.0倍延伸を行い、その後熱固定ゾーンで202℃で10秒間熱処理することにより、厚み10μmの積層2軸延伸ポリアミドフィルムを作製した。さらに、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)とドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。その後、得られた積層二軸延伸ポリアミドフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を実施例1と同様の方法により電子ビーム蒸着法で形成した。得られたガスバリア性積層フィルムについて、静止摩擦係数、破断強度、衝撃強度、屈曲疲労ピンホール数、弾性率、熱収縮率、酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。また、ガスバリア性積層フィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L‐LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)を基材フィルムの無機薄膜層を積層する面の反対側にドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムの屈曲疲労ピンホール数及びシール強度を測定した。十分なヒートシール強度を得つつ、ヒートシール後の外観が良好となるヒートシール条件が無く、高速下での自動充填に用いた際に、高いヒートシール強度と外観特性を両立することができないフィルムであった。
【0098】
〔表1〕
【0099】
以上、本発明のガスバリア性積層フィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。