特許第6648575号(P6648575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648575
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】長鎖分岐構造解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/00 20060101AFI20200203BHJP
   G01N 33/44 20060101ALI20200203BHJP
   C08F 36/06 20060101ALI20200203BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   G01N19/00 B
   G01N33/44
   C08F36/06
   C08F10/02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-53466(P2016-53466)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-176940(P2016-176940A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-56740(P2015-56740)
(32)【優先日】2015年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 修一
(72)【発明者】
【氏名】斯波 晃司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通典
【審査官】 長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−523953(JP,A)
【文献】 特開2011−241275(JP,A)
【文献】 特開2013−224393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0244974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00
C08F 10/02
C08F 36/06
G01N 33/44
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子の100〜10質量%と可溶性溶媒0〜90質量%からなる溶液の貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G′、濃度換算G″についてX=G″/C=20,000Paになる時のY=G′/C(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(100%)/Y(30%)(但し、Y(100%)は高分子100質量%溶液の測定値から求められる値、Y(30%)は高分子30質量%溶液の測定値から求められる値である。)]から長鎖分岐の有無を判断する長鎖分岐構造解析方法。
【請求項2】
請求項1記載の高分子がポリエチレン又はポリブタジエンである長鎖分岐解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子の長鎖分岐構造解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子材料の様々な特性はその分子構造に強く依存することが知られており、合理的に有益な高分子材料を開発するためには、高分子の分子構造解析は重要な要素技術である。なかでも、高分子の長鎖分岐構造は高分子のフィルム成形、ブロー成形、発泡成形などの成形加工性と直接関連するため、その解析は精力的に行なわれてきた分野の一つである。古くからの長鎖分岐構造解析法として、希薄溶液物性や13C−NMRを用いる方法が知られているが(例えば、非特許文献1)、測定精度や検出限界などの問題が指摘されている。最近では、原子間力顕微鏡を用いた長鎖分岐構造解析方法が提案されている(例えば、特許文献1)。一方、粘弾性測定による長鎖分岐構造解析方法についても数多く提案されている。例えば、非特許文献2〜4。しかし、これまで提案されている粘弾性測定による方法は、高分子自体の複雑性に由来して、その解析方法は煩雑であり、より簡易な方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】福田猛、高分子実験の基礎、分子特性解析、高分子学会編、共立出版 (1994).
【非特許文献2】J. Roovers,Macromolecules,17,1196−1200(1984).
【非特許文献3】M.A.Hempenius,et al.,Macromolecules,31,2299−2304(1998).
【非特許文献4】R.N.Shroff,H.Marvidis, Macromolecules,32,8454−8464(1999).
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−2129公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一般的な粘弾性測定により、簡便に高分子の長鎖分岐構造の有無を判定できるだけでなく、その長鎖分岐構造の多少を判定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の事項に関する。
1. 高分子の100〜10質量%と可溶性溶媒0〜90質量%からなる溶液の貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G′、濃度換算G″についてX=G″/C=20,000Paになる時のY=G′/C(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(100%)/Y(30%)(但し、Y(100%)は高分子100質量%溶液の測定値から求められる値、Y(30%)は高分子30質量%溶液の測定値から求められる値である。)]から長鎖分岐の有無を予測する長鎖分岐構造解析方法。
【0007】
2. 上記項1記載の高分子がポリエチレン又はポリブタジエンである長鎖分岐解析方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一般的な粘弾性測定により、簡便に高分子の長鎖分岐構造の有無を判定できるだけでなく、その長鎖分岐構造の多少を判定する方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための態様は、
高分子の100〜10質量%と可溶性溶媒0〜90質量%からなる溶液の貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の角周波数依存性の測定から求められる、濃度換算G′、濃度換算G″についてX=G″/C=20,000Paになる時のY=G′/C(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(100%)/Y(30%)(但し、Y(100%)は高分子100質量%溶液の測定値から求められる値、Y(30%)は高分子30質量%溶液の測定値から求められる値である。)]から長鎖分岐の有無を判断する長鎖分岐構造解析方法である。
【0010】
上記のY(100%)/Y(30%)は、長鎖分岐構造の指標である。高分子中の長鎖分岐構造が少ない、つまり直鎖分子構造の濃度換算G′、濃度換算G″の関係は、可溶性溶媒濃度に依存しなくなる。つまり、Y(100%)とY(30%)の差は小さく、Y(100%)/Y(30%)は1に近くなる。一方、長鎖分岐構造が多いと、長鎖分岐構造に由来する緩和時間の増大に由来して、同一濃度換算G″における濃度換算G′の値は大きくなる。つまり、長鎖分岐構造を有する場合、Y(100%)/Y(30%)は大きくなる。
【0011】
(100%)/Y(30%)を求める方法については、実施例において具体的に説明する。
【0012】
ここで長鎖分岐構造とは、高分子において主鎖から分岐した分子構造のうち、その分岐分子構造中に絡み合い点が存在する構造を言う。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載されているポリエチレン及びポリブタジエンの絡み合い点間分子量は、それぞれ1250及び2900である。
【0013】
本発明の高分子とは、分子量が絡み合い点間分子量の2倍以上である重合体である。その中でも融点が室温よりも低く、溶液の均一性を保ちやすいため、ポリブタジエン等の合成ゴムが好ましい。特に特定はされないが、数平均分子量(Mn)は、好ましくは20000以上300000以下であり、より好ましくは50000以上250000以下であり、重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは300000以上700000以下であり、より好ましくは350000以上600000以下である。また、MwとMnの比は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは2.3以上であり、特に好ましくは2.5以上であり、好ましくは10未満であり、より好ましくは9.8以下であり、より好ましくは9.5以下であり、特に好ましくは9.2以下である。
【0014】
本発明のポリブタジエンは、特に特定はされないが、共重合体であってもよく、ブタジエンモノマー以外に、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の非環状モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状モノオレフィン、及び/又は、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等の他のモノマーを少量(例えば、10モル%以下の量で)使用して共重合してもよい。
【0015】
本発明の可溶性溶媒とは、使用する高分子を溶解できる溶媒であり、ポリブタジエンの場合はポリブタジエンを溶解できる溶媒であり、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒が好ましく、蒸気圧が低い流動パラフィンがより好ましい。
【0016】
本発明に用いる流動パラフィンは、特に限定されないが、常温・常圧において液状であることが好ましい。
【0017】
本発明の高分子と可溶性溶媒との割合は、高分子の100〜10質量%と可溶性溶媒0〜90質量%となる。高分子量が10質量%以下となると、絡み合いが形成されないことがあり、好ましくない。
【0018】
貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の角周波数依存性の測定とは、粘弾性測定装置を用いて、種々の温度において、角周波数100〜0.01rad/secにおける貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″を測定することである。貯蔵弾性率G′は、材料の弾性的性質であり、損失弾性率G″は粘性的性質である。
【0019】
濃度換算とは、可溶性溶媒により高分子が希釈されることによるゴム状平坦部の弾性率の補正を計算することであり、G′/Cとは溶液濃度CにおけるG′の濃度換算であり、G″/Cとは、G″の濃度換算である。
【0020】
本発明において、長鎖分岐の測定方法として、X=G″/C=20,000Paになる時のY=G′/C(但し、Cは溶液濃度を表す。)と定義されるYの比[Y(100%)/Y(30%)]を用いている。
【0021】
具体的に、Y(100%)/Y(30%)の(測定粘弾性測定)は、高分子を含んだ溶液に流動パラフィンを添加し、均一になるまで攪拌し、得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用いて真空乾燥する。
得られた高分子の100質量%溶液と30質量%溶液の貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の角周波数依存性をそれぞれ測定し、パラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は0℃〜200℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG′及びG″の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG′及びG″の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G″/C=20,000Pa(濃度換算G″)になる時のポリブタジエンの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G′)を求める。そして、高分子100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、高分子30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出する。
【0022】
また従来の粘弾性の測定から、長鎖分岐構造を評価する方法として、大変形応力緩和測定から求められるダンピング関数の歪依存性から評価することが知られている((社)プラスチック成形加工学会編 成形加工における移動現象(森北出版株式会社)、p65−66)。ダンピング関数は、試料にステップ状の歪印可をして、その時の緩和弾性率の時間変化から求められる。ダンピング関数はh(γ)=1/(1+αγ)で表され、理論的には直鎖状高分子のαは0.222であり、架橋ゴムではαは0となり、ダンピング関数は1となる。つまり、αの値を比較することにより長鎖分岐構造の多少を評価することが可能となる。因みに、イットリウム触媒を用いたポリブタジエン(製造例1)、UBEPOL BR150B、イットリウム触媒を用いたポリブタジエン(製造例2)の30wt%溶液の大変形応力緩和測定から評価したα値は、それぞれ0.061、0.075、0.107であり、本発明の評価結果の序列と一致する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ポリエチレン及びポリブタジエンの物性の測定・評価方法は以下の通りである。
【0024】
(ポリエチレンの評価)
数平均分子量(Mn)並びに重量平均分子量(Mw):ポリスチレンを標準物質としてo-ジクロロベンゼン(o-DCB)を溶媒として温度145℃で、GPC(Waters製)法により行い、得られた分子量分布曲線から求めた検量線を用いて計算し、数平均分子量並びに重量平均分子量を求めた。
【0025】
分子量分布:ポリスチレンを標準物質として用いたGPCから求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比であるMw/Mnによって評価した。
【0026】
(ポリブタジエンの評価)
数平均分子量(Mn)並びに重量平均分子量(Mw):ポリスチレンを標準物質としてテトラヒドロフランを溶媒として温度40℃で、GPC(株式会社島津製作所製)法により行い、得られた分子量分布曲線から求めた検量線を用いて計算し、数平均分子量並びに重量平均分子量を求めた。
【0027】
分子量分布:ポリスチレンを標準物質として用いたGPCから求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比であるMw/Mnによって評価した。
【0028】
ミクロ構造:赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス734cm−1、トランス967cm−1、ビニル910cm−1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
【0029】
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):JIS−K6300に従い、株式会社島津製作所製のムーニー粘度計を使用して100℃で1分間予熱したのち、4分間測定してゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)を求めた。
【0030】
トルエン溶液粘度(Tcp):得られたポリブタジエン2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS−Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
【0031】
上記、ムーニー粘度とトルエン溶液粘度から、Tcp/MLを求めた。Tcp/MLが小さい値ほど、長鎖分岐構造を多く含むと言われている。
【0032】
粘弾性測定(Y(100%)/Y(30%)の測定):
高分子4.5gをトルエン又はキシレン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン10.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60〜100℃で8時間真空乾燥した。得られた高分子の流動パラフィン30質量%溶液は15gであった。
得られたポリブタジエンの100質量%溶液と30質量%溶液の貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/secであり、測定温度は0〜200℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG′及びG″の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG′及びG″の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G″/C=20,000Pa(濃度換算G″)になる時のポリブタジエンの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G’)を求めた。そして、高分子100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、高分子30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出した。
【0033】
(製造例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込んだ。次いで、水素ガス0.04MPa/cmを導入した後、トリエチルアルミニウム(TEAL)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)1.25mlを添加した。次いで、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(5mmol/L)1.5ml及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.004mol/L)3.75mlを添加し、80℃まで昇温した。80℃で15分間重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液にエタノールを投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。重合結果を表に示した
【0034】
(製造例2)
内容量2Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込み、25℃で水素ガスを分圧で0.7kgf/cm2まで導入した。次いで、ジエチルアルミニウムヒドリド(DEALH)のトルエン溶液(2mol/L)0.4mlを添加した後、トリス[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド]イットリウムのトルエン溶液(10mmol/L)6mlを添加して4分間攪拌した。次いで、0℃まで冷却してトリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのトルエン溶液(0.43mol/L)0.28mlを添加して重合を開始した。0℃で90分重合後、老化防止剤を含むエタノール/ヘプタン(1/1)溶液5mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液をエタノールに投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。重合結果を表に示した。
【0035】
(製造例3)
内容量2Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込み、水を7μl(0.65mM)添加して30℃で30分間毎分500回転で攪拌して溶解させた。次に水素ガスをマスフローメーターで135SCC計量しながら圧入し、トリエチルアルミニウム(TEAL)のトルエン溶液(1mol/L)0.75mlを添加した。次にシクロペンタジエニルバナジウムオキシジクロリドのトルエン溶液(5mmol/L)0.8mlを添加した後、40℃まで昇温してトリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのトルエン溶液(2.5mmol/L)2.5mlを添加して重合を開始した。40℃で22分重合後、老化防止剤を含むエタノール/ヘプタン(1/1)溶液5mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液をエタノールに投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。重合結果を表に示した。
【0036】
宇部興産株式会社製、UBEPOL BR150B(Co系触媒を用いて重合されたポリブタジエン)の物性の測定結果を表1に示した。
【0037】
プライムポリマー社製、高密度ポリエチレン 5202Bの物性の測定結果を表1に示した。
【0038】
(実施例1)
粘弾性測定(Y(100%)/Y(30%)の測定):
製造例1のポリブタジエン4.5gをトルエン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン10.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60℃で8時間真空乾燥した。得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液は15gであった。
製造例1のポリブタジエン(100重量%)と得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は0℃、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G’’/C=20,000Pa(濃度換算G’’)になる時のポリブタジエンの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G’)を求めた。そして、ポリブタジエンの100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、ポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出した。
【0039】
(実施例2)
粘弾性測定(Y(100%)/Y(30%)の測定):
製造例2のポリブタジエン4.5gをトルエン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン10.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60℃で8時間真空乾燥した。得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液は15gであった。
製造例2のポリブタジエン(100重量%)と得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は0℃、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G’’/C=20,000Pa(濃度換算G’’)になる時のポリブタジエンの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G’)を求めた。そして、ポリブタジエンの100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、ポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出した。
【0040】
(実施例3)
粘弾性測定(Y(100%)/Y(30%)の測定):
製造例3のポリブタジエン4.5gをトルエン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン10.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60℃で8時間真空乾燥した。得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液は15gであった。
製造例3のポリブタジエン(100重量%)と得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は0℃、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G’’/C=20,000Pa(濃度換算G’’)になる時のポリブタジエンの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G’)を求めた。そして、ポリブタジエンの100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、ポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出した。
【0041】
(実施例4)
粘弾性測定(Y(100%)/Y(30%)の測定):
UBEPOL BR150B 4.5gをトルエン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン10.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、60℃で8時間真空乾燥した。得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液は15gであった。
UBEPOL BR150B(100重量%)と得られたポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は0℃、20℃、40℃、60℃、80℃、100℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G’’/C=20,000Pa(濃度換算G’’)になる時のポリブタジエンの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G’)を求めた。そして、ポリブタジエンの100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、ポリブタジエンの流動パラフィン30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出した。
【0042】
(実施例5)
粘弾性測定(Y(100%)/Y(30%)の測定):
高密度ポリエチレン 5202B 4.5gをキシレン200mlに溶解した。次いで、この溶液に流動パラフィン10.5gを添加し、均一になるまで攪拌した。得られた溶液を、PETフィルムを張ったステンレストレー上に注いだ後、真空乾燥機を用い、100℃で8時間真空乾燥した。得られた5202Bの流動パラフィン30質量%溶液は15gであった。
5202B(100重量%)と得られた5202Bの流動パラフィン30質量%溶液の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の角周波数依存性をそれぞれ測定した。測定は、直径25mmあるいは7.9mmのパラレルプレートを装着したTA Instruments社製ARESを用いて、窒素気流中で行った。測定周波数範囲は100〜0.01rad/sであり、測定温度は160℃、180℃、200℃である。J.D.Ferry著、“Viscoelastic Properties of Polymers,3rd ed.”(John Wiley & Sons,1990)に記載の温度−時間の重ねあわせにより、広い周波数範囲におけるG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを得る。
得られたG’及びG’’の周波数依存性のマスターカーブを用いて、X=G’’/C=20,000Pa(濃度換算G’’)になる時の5202Bの流動パラフィン溶液のY=G’/C(濃度換算G’)を求めた。そして、5202Bの100質量%溶液の測定値から求められるY(Y(100%))と、5202Bの流動パラフィン30質量%溶液の測定値から求められるY(Y(30%))の比(Y(100%)/Y(30%))を算出した。
【0043】
【表1】
【0044】
表に示すとおり、製造例2、3で得られたポリブタジエン及びポリエチレン5202BのY(100%)/Y(30%)は1.0〜1.1であり、製造例1およびUBEPOL 150BのY(100%)/Y(30%)はそれぞれ3.1及び2.4である。従来の製造例2、3のポリブタジエン及びポリエチレン5202Bには長鎖分岐構造がほとんど存在せず、製造例1およびUBEPOL 150Bには長鎖分岐構造が存在する。また、製造例1の方が、UBEPOL 150Bよりも長鎖分岐構造を多く有する。従来のTcp/MLとの結果とも一致する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、粘弾性測定により、簡便に高分子の長鎖分岐構造の有無を判定できるだけでなく、その長鎖分岐構造の多少を判定する方法を提供することが出来、産業上有用である。