(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体ケースに内装した駆動手段と、該本体ケースから延びる柄体と、前記柄体に設けたブラシヘッドと、前記駆動手段の出力軸の往復直線運動を、前記ブラシヘッドの往復回転運動に変換するヘッド側変換手段とを備えた電動歯ブラシにおいて、
前記ブラシヘッドは、ブラシヘッド本体と、それに植設した毛束とを有し、
前記ヘッド側変換手段は、前記出力軸とともに往復直線運動可能な連結棒と、前記連結棒とブラシヘッド本体間に配置されて、前記連結棒側の基部が前記柄体に回転自在に枢支された搖動レバーと、前記連結棒の往復直線運動を前記搖動レバーの往復回転運動に変換する第1変換機構と、前記搖動レバーの往復回転運動を前記ブラシヘッド本体の往復回転運動に変換する第2変換機構とを備えた、
ことを特徴とする電動歯ブラシ。
前記第1変換機構として、前記搖動レバーの基部に側方へ延びる長穴又は溝部からなる第1ガイド部を設け、前記連結棒の先端部に第1ガイド部に回転自在で且つ移動自在に嵌合する第1連結ピンを設けた請求項1記載の電動歯ブラシ。
前記第2変換機構として、前記ブラシヘッド本体の背面側に半径方向に延びる長穴又は溝部からなる第2ガイド部を設け、前記搖動レバーの先端部に第2ガイド部に回転自在で且つ移動自在に嵌合する第2連結ピンを設けた請求項1又は2記載の電動歯ブラシ。
前記柄体の先端部に、前記ブラシヘッド本体の背面側に配置されるヘッド支持部を設け、前記ヘッド支持部の前面側に貫通孔を有する支持壁部を設け、前記ブラシヘッド本体は、ヘッド支持部の前側に配置される植毛台と、前記植毛台の背面側に突出形成されて、前記支持壁部の貫通孔に内嵌される嵌合軸部と、前記支持壁部の背面側へ延びるように、前記嵌合軸部の端面に外方側へ突出状に設けた抜け止め部とを備え、前記嵌合軸部に溝部からなる前記第2ガイド部を設けた請求項3記載の電動歯ブラシ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の回転式の電動歯ブラシでは、替えブラシとして、出力軸の往復直線運動をブラシヘッドの往復回転運動に変換するヘッド側変換手段を備えていない替えブラシを用いることで、回転式の電動歯ブラシをスライド式の電動歯ブラシとして利用できる。このため、回転式の電動歯ブラシとスライド式の電動歯ブラシとで駆動装置を共用でき、電動歯ブラシの製作コストを安くしたり、替えブラシを交換することで、利用者の好みに応じてスライド式と回転式とを使い分けたりすることができるという利点を有している。
【0007】
しかし、連結棒及び出力軸の往復直線運動のストロークを短くすると、ブラシヘッドの最大回転角度が小さくなるので、清掃性を十分に確保するためには、連結棒及び出力軸のストロークを現状よりも小さくすることが困難であった。
【0008】
また、クランクアームのうちの植毛台とは反対側の後面側に凹部を形成し、該凹部にジョイントの先端の屈曲部を嵌合連結しているので、ブラシを除くヘッド部の厚さが、少なくともジョイントの直径分だけ厚くなり、大臼歯の裏側の清掃性が低下するという問題があった。
【0009】
一方、特許文献2記載の電動歯ブラシでは、2つの運動変換機構を用いることでヘッド部を薄型に構成できるが、この電動歯ブラシは、回転式専用の電動歯ブラシであり、替えブラシの交換によりスライド式の電動歯ブラシに切り換えることができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、回転式とスライド式とに切り替え可能に構成しつつ、清掃性を低下させることなく消費電力を低減でき、しかもヘッド部を薄型に構成可能な電動歯ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、連結棒及び出力軸の往復直線運動のストロークを短くできれば、これらの部材を移動させるための運動エネルギを低減できるとともに、移動時における摩擦エネルギを少なくでき、またブラシヘッドの近くに搖動レバーを設けることで、往復直線運動のストロークを短くしても、ブラシヘッドの往復回転運動の角度を十分に確保して、清掃性の低下を防止できるとの発想を得て、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)本体ケースに内装した駆動手段と、該本体ケースから延びる柄体と、前記柄体に設けたブラシヘッドと、前記駆動手段の出力軸の往復直線運動を、前記ブラシヘッドの往復回転運動に変換するヘッド側変換手段とを備えた電動歯ブラシにおいて、前記ブラシヘッドは、ブラシヘッド本体と、それに植設した毛束とを有し、前記ヘッド側変換手段は、前記出力軸とともに往復直線運動可能な連結棒と、前記連結棒とブラシヘッド本体間に配置されて、前記連結棒側の基部が前記柄体に回転自在に枢支された搖動レバーと、前記連結棒の往復直線運動を前記搖動レバーの往復回転運動に変換する第1変換機構と、前記搖動レバーの往復回転運動を前記ブラシヘッド本体の往復回転運動に変換する第2変換機構とを備えたことを特徴とする電動歯ブラシ。なお、往復回転運動とは、ブラシヘッドが正転方向に一定角度だけ回転した後、逆転方向に同じ角度だけ回転するという回転運動を繰り返して行う運動を意味する。また、ブラシヘッドの往復回転の最大回転角度は、大きすぎるとヘッド側変換手段の構成が複雑になり、小さすぎると清掃性が低下するので、40°〜85°の範囲内に設定することが好ましく、45°〜80°の範囲内に設定することが更に好ましい。
【0013】
この電動歯ブラシは、駆動手段の出力軸の往復直線運動を、ブラシヘッドの往復回転運動に変換する電動歯ブラシなので、ヘッド側変換手段を備えていない替えブラシを用いることで、ブラシヘッドを往復直線運動させることもでき、替えブラシの交換により回転式とスライド式とに切り替え可能な電動歯ブラシを実現できる。また、柄体に対して回転自在な搖動レバーを連結棒とブラシヘッド間に設けることで、ブラシヘッドの最大回転角度を従来の電動歯ブラシと同様に十分に確保しつつ、連結棒及び出力軸の往復直線運動のストロークを小さくできる。このため、ブラシヘッドの最大回転角度を十分に確保して、清掃性を十分に確保しつつ、連結棒及び出力軸の往復直線運動のストロークを小さくして、連結棒及び出力軸を往復直線運動させるための運動エネルギを少なくできるとともに、連結棒及び出力軸と柄体との摩擦エネルギを少なくして、電動歯ブラシの消費電力を低減できる。なお、搖動レバーを設けると、それを往復回転運動させるための運動エネルギが余分に発生する。しかし、該運動エネルギは、連結棒及び出力軸のストロークが短くなることによる運動エネルギ及び摩擦エネルギの減少よりも小さいことから、電動歯ブラシ全体としては消費電力を低減できることになる。
【0014】
(2)前記第1変換機構として、前記搖動レバーの基部に側方へ延びる長穴又は溝部からなる第1ガイド部を設け、前記連結棒の先端部に第1ガイド部に回転自在で且つ移動自在に嵌合する第1連結ピンを設けた(1)記載の電動歯ブラシ。
【0015】
(3)前記第2変換機構として、前記ブラシヘッド本体の背面側に半径方向に延びる長穴又は溝部からなる第2ガイド部を設け、前記搖動レバーの先端部に第2ガイド部に回転自在で且つ移動自在に嵌合する第2連結ピンを設けた(1)又は(2)記載の電動歯ブラシ。
【0016】
(4)前記柄体の先端部に、前記ブラシヘッド本体の背面側に配置されるヘッド支持部を設け、前記ヘッド支持部の前面側に貫通孔を有する支持壁部を設け、前記ブラシヘッド本体は、ヘッド支持部の前側に配置される植毛台と、前記植毛台の背面側に突出形成されて、前記支持壁部の貫通孔に内嵌される嵌合軸部と、前記支持壁部の背面側へ延びるように、前記嵌合軸部の端面に外方側へ突出状に設けた抜け止め部とを備え、前記嵌合軸部に溝部からなる前記第2ガイド部を設けた(3)記載の電動歯ブラシ。この電動歯ブラシでは、支持壁部の貫通孔内に配置されるブラシヘッドの嵌合軸部に溝部からなる第2ガイド部を形成しているので、搖動レバーの先端部を抜け止め部の厚さ方向の形成範囲内に配置させることが可能となり、引用文献1記載の電動歯ブラシよりもヘッド部の厚さを薄くできる。このように、ヘッド部の厚さを薄くできるので、口腔内におけるヘッド部の操作性を向上して、例えば大臼歯の裏側の清掃性を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電動歯ブラシによれば、回転式とスライド式とに切り替え可能に構成でき、しかもブラシヘッドの最大回転角度を十分に確保して、清掃性を十分に確保しつつ、連結棒及び出力軸の往復直線運動のストロークを小さくして、連結棒及び出力軸を往復直線運動させるための運動エネルギを少なくできるとともに、連結棒及び出力軸と柄体との摩擦エネルギを少なくして、電動歯ブラシの消費電力を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、ブラシヘッド側を上側にし、毛束の植設側を前側にして、電動歯ブラシを縦向姿勢に配置した状態を基準に、上下方向及び前後左右方向を定義して説明する。
【0020】
図1、
図2に示すように、電動歯ブラシ10は、持ち手を兼ねる本体装置11と、本体装置11に着脱自在に取り付けた替えブラシ30とを備えている。
【0021】
≪本体装置≫
本体装置11は、
図1〜
図3に示すように、手で把持可能な本体ケース12と、本体ケース12の上部に内装した駆動手段13と、本体ケース12の下部に内装した一次電池又は二次電池からなる電池14とを備えている。電池14として、一次電池を用いる場合には、電池14を本体ケース12に対して交換可能に内装することになり、また二次電池を用いる場合には、本体ケース12の下端部内に誘導コイルを内装し、本体装置11を充電器にセットすることで、無接点で誘導コイルに誘導電流を発生させて、電池14を充電できるように構成することもできる。
【0022】
<駆動手段>
駆動手段13は、
図3に示すように、上下1対のガイド部材15に沿って上下方向に移動自在に設けた出力軸16と、出力軸16の下方に設けたモータ17と、出力軸16とモータ17間に配置されて、モータ17の回転軸18の回転運動を出力軸16の上下方向の往復直線運動に変換する駆動側変換手段20とを備えている。
【0023】
<駆動側変換手段>
駆動側変換手段20について説明すると、モータ17の回転軸18には駆動ギヤ21が固定され、回転軸18の上方には回転軸18と直交方向のギヤ支軸22が設けられ、ギヤ支軸22には駆動ギヤ21に噛合するリングギヤ23が支持されている。リングギヤ23にはギヤ支軸22の中心から一定の偏心距離Eだけ偏心させた位置に中心を有するカム軸24が突出状に形成され、出力軸16の下端部にはカム軸24が内嵌する長穴25aを有する従動部材25が固定されている。そして、モータ17の回転軸18が回転すると、駆動ギヤ21を介してリングギヤ23が回転し、カム軸24が従動部材25の長穴25a内においてギヤ支軸22を中心として偏心回転し、カム軸24の回転時における上下方向の成分のみが従動部材25に伝達されて、カム軸24の中心とギヤ支軸22の中心間の偏心距離Eの2倍のストロークで、出力軸16が上下方向に往復直線運動することになる。
【0024】
なお、本体装置11としては、出力軸16の往復直線運動のストロークを、本発明に適合するように調整可能な構成のものであれば、ストロークを変更するための構成以外は、周知の構成のものをそのまま採用することが可能である。前述の本体装置11に関しても、ギヤ支軸22の中心とカム軸24の中心間の偏心距離Eが小さくなるように構成した以外は、従来のスライド式の電動歯ブラシの本体装置と同様に構成されている。このように、本発明では、本体装置11の大幅な設計変更や製造設備の変更が不要となるので、容易に且つ安価に本発明を実施できる。また、駆動手段13としては、出力軸16を往復直線運動し得るものであれば、任意の構成のものを採用することができる。例えば駆動手段13として、コイルと永久磁石とを有するリニアアクチュエータを備えさせ、コイルに交番電流を流すことで、出力軸16を往復直線運動可能に構成したリニア式の駆動手段を採用することもできる。
【0025】
≪替えブラシ≫
替えブラシ30は、
図1、
図2、
図4〜
図7に示すように、本体ケース12から上方へ延びる柄体31と、柄体31の先端部に設けたブラシヘッド40と、駆動手段13の出力軸16の往復直線運動を、ブラシヘッド40の往復回転運動に変換するヘッド側変換手段50とを備えている。
【0026】
<柄体>
柄体31について説明すると、
図4、
図5に示すように、柄体31は、中空筒状の柄本体32と、柄本体32の下端部に外嵌固定される連結筒33とを備えており、柄本体32の上部の後面側は着脱可能な蓋部材34で構成され、この蓋部材34を取り外してヘッド側変換手段50やブラシヘッド40を組み付けることができるように構成されている。
【0027】
図4〜
図7に示すように、柄本体32の下端部には内嵌筒部32aが形成され、内嵌筒部32aには連結筒33が外嵌されている。内嵌筒部32aには1対の係止爪32cが設けられ、連結筒33の内周面には係止爪32cが係合可能な係合凹部33aが形成され、内嵌筒部32aに対して連結筒33を外嵌装着することで、係止爪32cが係合凹部33aに係合して、連結筒33が柄本体32に対して回転不能で且つ軸方向に脱落不能に取付けられている。
【0028】
図2に示すように、連結筒33の外周面の下端部には周方向に間隔をあけて1対の爪部33bが外方へ突出状に形成され、本体ケース12の上端部には連結筒33を外嵌するカバー筒35が固定されている。カバー筒35の内周面には縦溝と縦溝の下端部から周方向に延びる横溝とからなる1対の係合溝36が形成され、柄体31は、連結筒33の爪部33bをカバー筒35の縦溝に嵌合させて、連結筒33をカバー筒35内の奥部まで挿入し、この状態で連結筒33を柄本体32とともに一定角度回転させて爪部33bを横溝に係合させることで、出力軸16の軸方向に対して移動不能に本体ケース12に着脱可能に取付けられている。
【0029】
<ブラシヘッド>
ブラシヘッド40は、
図4〜
図9に示すように、柄体31の先端部に回転自在に設けたブラシヘッド本体41と、ブラシヘッド本体41の植毛台42に植設された複数の毛束43からなるブラシ部44とを備えている。
【0030】
ブラシ部44は、合成樹脂製の複数本のフィラメントを束ねてなる毛束43を、植毛台42に1乃至複数個植設固定した周知の構成のものである。
【0031】
ブラシヘッド本体41は、板状の植毛台42と、植毛台42の後面側に突出状に設けた嵌合軸部45と、嵌合軸部45に半径方向外方側へ突出状に設けた1対の抜け止め部46と、1対の抜け止め部46間において嵌合軸部45に形成した溝部からなる第2ガイド部47と、嵌合軸部45の後端面の中央部から後方へ突出する軸受部48とを備えている。
【0032】
柄本体32に対するブラシヘッド本体41の取付構造について説明すると、柄本体32の先端部にはブラシヘッド本体41の後面側(背面側)に配置されるヘッド支持部32bが設けられ、ヘッド支持部32bの前面側には植毛台42の略厚さ分だけ後方へ段落ちした支持壁部37が形成されている。支持壁部37の中央部には嵌合軸部45が内嵌する貫通孔37aが形成されるとともに、貫通孔37aから上下方向に延びる1対の切欠部37bが形成され、ブラシヘッド本体41は、1対の抜け止め部46を1対の切欠部37bに挿通させるとともに、貫通孔37aに嵌合軸部45を装着した状態で、ブラシヘッド本体41を回転させることで、抜け止め部46が支持壁部37の後面に係合して、一定角度の範囲内において、柄本体32に対して回転自在に抜け止めされている。なお、ブラシヘッド本体41の取付構造としては、ブラシヘッド本体41を柄本体32に対して往復回転運動可能に保持できる構成であれば、上述した以外の取付構造を採用することもできる。
【0033】
柄本体32の蓋部材34には前方へ突出するヘッド支軸49が固定され、蓋部材34を柄本体32に組み付けた状態で、ブラシヘッド本体41の軸受部48にはヘッド支軸49が回転自在に装着され、ブラシヘッド本体41がヘッド支軸49を中心に回転することで、ブラシヘッド本体41の回転が安定するように構成されている。
【0034】
<ヘッド側変換手段>
ヘッド側変換手段50は、
図6〜
図9に示すように、出力軸16とともに往復直線運動可能な連結棒51と、連結棒51とブラシヘッド本体41間に配置されて、連結棒51側の基部が柄体31に回転自在に枢支された搖動レバー52と、連結棒51の往復直線運動を搖動レバー52の往復回転運動に変換する第1変換機構53と、搖動レバー52の往復回転運動をブラシヘッド本体41の往復回転運動に変換する第2変換機構54とを備えている。
【0035】
(連結棒)
連結棒51について説明すると、
図6〜
図8に示すように、柄体31内には柄体31の下端部から上端側へ延びる連結棒51が上下移動自在に内装され、連結棒51の下端部には出力軸16を着脱可能に外嵌する嵌合筒部55が形成されている。嵌合筒部55の下半部は、上下方向に延びる1対のスリット56により半筒状の分割筒55aに分割構成され、分割筒55aの内面の下端近傍部には内側へ突出する係合突部57が形成され、出力軸16の上端部を嵌合筒部55に内嵌させると、分割筒55aの素材の弾性により係合突部57が出力軸16に形成した係合溝16aに係合して、連結棒51が出力軸16に対して軸方向に相対移動不能に連結されるように構成されている。
【0036】
柄本体32内において連結棒51を上下方向(長手方向)に往復移動自在に案内するため、嵌合筒部55の外周面には連結棒51の長手方向に延びる複数の突条55bが突出形成されている。連結棒51の先端部には大端部58が設けられ、大端部58の前面側には長手方向に延びるガイド溝58aが形成され、柄本体32の前壁にはガイド溝58aに上下方向に相対移動可能に嵌合するガイド突起32dが後方へ突出状に形成されている。柄本体32の左右の側壁には、大端部58の左右両側部に上下方向に相対移動可能に当接して、大端部58を柄本体32の左右方向(幅方向)の中央部に案内する左右1対の側部突起32eが形成されている。
【0037】
(搖動レバー)
図6〜
図9に示すように、蓋部材34の下部の左右方向(幅方向)の中央部には前方へ延びるレバー支軸60が固定され、蓋部材34を柄本体32に組み付けた状態で、レバー支軸60の先端部は柄本体32の前壁部の軸受部32fに嵌合され、レバー支軸60は蓋部材34と柄本体32の前壁部間に架設状に固定され、レバー支軸60の途中部には上方へ延びる搖動レバー52がその基部において回転自在に枢支されている。ただし、搖動レバー52の枢支構造としては、柄本体32に対して前後方向の軸で搖動レバー52を回動自在に枢支し得る構成であれば、任意の構成の枢支構造を採用できる。
【0038】
(第1変換機構)
第1変換機構53について説明すると、搖動レバー52の基部には側方へ延びる連結部52aが設けられ、連結部52aの基端部には左右方向に細長い長穴からなる第1ガイド部61が形成されている。なお、第1ガイド部61として、側端部を開口させた左右方向に細長い切欠部を形成したり、左右方向に細長い長溝を形成したりすることもできる。また、連結部52aは側方へ突出するアーム状に形成することも可能である。
【0039】
大端部58の一側部(左側部)には上方へ延びるアーム部58bが形成され、アーム部58bには第1ガイド部61に回転自在で且つ第1ガイド部61に沿って移動自在に嵌合する第1連結ピン62が固定され、連結棒51が上下方向に往復直線運動することで、搖動レバー52がレバー支軸60を中心に往復回転運動するように構成されている。ただし、第1変換機構53としては、連結棒51の上下方向の往復直線運動を、搖動レバー52における前後方向の軸心回りの往復回転運動に変換し得る構成のものであれば、任意の構成のものを採用できる。
【0040】
(第2変換機構)
第2変換機構54について説明すると、両抜け止め部46間における嵌合軸部45の後端面の下半部における周方向の中央部には半径方向に延びて外端を外方へ開口させた溝部からなる第2ガイド部47が形成され、搖動レバー52の先端部には第2ガイド部47に回転自在で且つ第2ガイド部47に沿って移動自在に嵌合する第2連結ピン63が前方へ突出状に固定され、搖動レバー52がレバー支軸60を中心として往復回転運動することで、ブラシヘッド40がヘッド支軸49を中心に往復回転運動するように構成されている。ただし、第2変換機構54としては、搖動レバー52のレバー支軸60を中心とした往復回転運動を、ブラシヘッド本体41のヘッド支軸49を中心とした往復回転運動に変換し得る構成のものであれば、任意の構成のものを採用できる。
【0041】
ここで、ヘッド支軸49とレバー支軸60と第1連結ピン62と第2連結ピン63とは平行に配置されている。ただし、任意の組み合わせで角度を付けて配置することも可能である。
【0042】
ヘッド支軸49を中心としたブラシヘッド40の最大回転角度αは、嵌合軸部45の半径をR1とし、レバー支軸60と第2連結ピン63の中心間距離をR2とし、レバー支軸60とヘッド支軸49の中心間距離をLとしたときに、次のような数式(1)で求めることができる。なお、ブラシヘッド40の最大回転角度αは、第2連結ピン63が第2ガイド部47から半径方向外方側へ抜け出さない範囲に設定する必要があるので、第2連結ピン63の中心が嵌合軸部45の半径R1に配置されたときをブラシヘッド40の最大回転角度として求めた。
【0043】
α=cos
−1(c)=acos(c)・・・・(1)
なお、余弦定理から、cos(α)=(L
2+R1
2−R2
2)/(2・L/R1)となるので、c=cos(α)とすると数式(1)のようになる。
【0044】
例えば、L=10mm、R1=4mm、R2=7.45mmに設定すると、α≒81.7°となる。
【0045】
また、ブラシヘッド40の回転角度θと連結棒51のストロークSとの関係は、レバー支軸60と第1連結ピン62の中心間距離をPとすると、次のような数式(2)で求めることができる。
sin(θ/2)=P/S
θ/2=asin(P/S)・・・(2)
【0046】
例えば、P=2.2mm、S=0.57mmに設定すると、θ≒30°となる。
【0047】
図6、
図9(A)に示す、最大回転角度αと、嵌合軸部45の半径R1と、レバー支軸60と第2連結ピン63の中心間距離R2と、レバー支軸60とヘッド支軸49の中心間距離Lと、レバー支軸60と第1連結ピン62の中心間距離Pと、出力軸16及び連結棒51のストロークSは、次のように設定することが好ましい。
【0048】
最大回転角度αは、大きすぎるとヘッド側変換手段50の構成が複雑になり、小さすぎると清掃性が低下するので、40°〜85°の範囲内に設定することが望ましく、45°〜80°の範囲内に設定することが更に望ましい。
【0049】
嵌合軸部45の半径R1は、大きすぎると、ブラシヘッド40の直径が大きくなって、口腔内におけるブラシヘッド40の操作性が低下し、小さすぎると、ブラシヘッド40の回転トルクを十分に確保できないので、2mm〜5mm、好ましくは3mm〜4mmに設定することが望ましい。
【0050】
レバー支軸60と第2連結ピン63の中心間距離R2は、大きすぎると、ブラシヘッド40の回転トルクを十分に確保できなくなり、小さすぎると、ブラシヘッド40の最大回転角度が小さくなるので、4mm〜10mmに設定することが好ましいが、5mm〜9mmに設定することが更に好ましく、6mm〜8mmに設定することが最も好ましい。
【0051】
レバー支軸60とヘッド支軸49の中心間距離Lは、大きすぎると、ブラシヘッド40の回転トルクを十分に確保できなくなり、小さすぎると、ブラシヘッド40の最大回転角度が小さくなるので、4mm〜12mmに設定することが好ましいが、6mm〜12mmに設定することが更に好ましく、8mm〜11mmに設定することが最も好ましい。
【0052】
レバー支軸60と第1連結ピン62の中心間距離Pは、大きすぎると、柄体31の幅が広くなって、替えブラシ30の操作性が低下し、小さすぎると、ブラシヘッド40の回転トルクを十分に確保できないので、1.5mm〜4mmに設定することが好ましいが、2mm〜3mmに設定することが更に好ましい。
【0053】
出力軸16及び連結棒51のストロークSは、大きすぎると、消費電力の低減効果が少なくなり、小さすぎると、ブラシヘッド40の回転トルクを十分に確保できなくなるので、0.5mm〜3mmに設定することが好ましいが、1mm〜2mmに設定することが更に好ましい。
【0054】
この電動歯ブラシ10では、連結棒51が、
図9(A)に示す上限位置から、
図9(B)に示す中間位置を経て、
図9(C)に示す下限位置まで、矢印A1の方向へ下降すると、第1変換機構53の第1連結ピン62と第1ガイド部61とを介して、搖動レバー52がレバー支軸60を中心に矢印B1の方向へ回動し、第2変換機構54の第2連結ピン63と第2ガイド部47とを介して、ブラシヘッド40がヘッド支軸49を中心に矢印C1の方向へ回転し、
図9(C)に示す位置まで搖動レバー52及びブラシヘッド40が回転する。一方、連結棒51が、
図9(C)に示す下限位置から、
図9(B)に示す中間位置を経て、
図9(A)に示す上限位置まで、矢印A2の方向へ上昇すると、第1変換機構53の第1連結ピン62と第1ガイド部61とを介して、搖動レバー52がレバー支軸60を中心に矢印B2の方向へ回動し、第2変換機構54の第2連結ピン63と第2ガイド部47とを介して、ブラシヘッド40がヘッド支軸49を中心に矢印C2の方向へ回転し、
図9(A)に示す位置まで搖動レバー52及びブラシヘッド40が回転する。このため、連結棒51が上下方向に往復直線運動すると、搖動レバー52がレバー支軸60を中心に左右方向に一定角度だけ往復回転運動するとともに、ブラシヘッド40がヘッド支軸49を中心として一定角度だけ往復回転運動することになる。このように、搖動レバー52を用いたヘッド側変換手段50により、連結棒51の往復直線運動をブラシヘッド40の往復回転運動に変換するので、ブラシヘッド40の最大回転角度αを従来の電動歯ブラシ10と同様に十分に確保しつつ、連結棒51及び出力軸16の往復直線運動のストロークSを小さくできる。
【0055】
このため、ブラシヘッド40の最大回転角度αを十分に確保して、清掃性を十分に確保しつつ、連結棒51及び出力軸16の往復直線運動のストロークSを小さくして、連結棒51及び出力軸16を往復直線運動させるための運動エネルギを少なくできるとともに、連結棒51及び出力軸16と柄本体32との摩擦エネルギを少なくして、電動歯ブラシ10の消費電力を低減できる。
【0056】
また、ヘッド側変換手段50を備えていない周知の替えブラシ30を出力軸16に取付けることで、ブラシヘッド40を出力軸16とともに往復直線運動させることもでき、替えブラシ30の交換により回転式とスライド式とに切り替え可能な電動歯ブラシ10を構成できる。
【0057】
更に、嵌合軸部45に溝部からなる第2ガイド部47を形成し、この第2ガイド部47に第2連結ピン63を嵌合させているので、搖動レバー52の先端部と抜け止め部46とをブラシヘッド40の軸方向の同じ位置に配置させることが可能となり、ヘッド部の厚さTを、例えば特許文献1記載のような構成のヘッド部よりも、2mm〜4mmだけ薄肉に構成することができる。そして、このようにヘッド部の厚さを薄くできるので、口腔内におけるヘッド部の操作性を向上して、例えば大臼歯の裏側の清掃性を向上できる。
【0058】
次に、消費電力の評価試験について説明する。
本体装置として、ギヤ支軸22とカム軸24との偏心距離Eを変更して、出力軸16のストロークSを変更した以外は、
図1〜
図3に示す本体装置11と同一構成の本体装置11を用いた。表1に示すように、実施例では、ストロークSを1.14mmに設定した本体装置を用い、比較例では、ストロークSを3mmと4mmとにそれぞれ設定した2種類の本体装置を用いた。
【0059】
また、実施例では、替えブラシとして、
図4〜
図9に示す構成の替えブラシ30であって、嵌合軸部45の半径R1と、レバー支軸60と第2連結ピン63の中心間距離R2と、レバー支軸60とヘッド支軸49の中心間距離Lと、レバー支軸60と第1連結ピン62の中心間距離Pとをそれぞれ表1に示すように設定することで、ブラシヘッド40の最大回転角度αが70°と85°の2種類の替えブラシであって、植毛台42に毛束43を植設した替えブラシと、毛束43を植設していない替えブラシの計4種類の替えブラシを製作した。
【0060】
比較例では、替えブラシとして、特許文献1記載の替えブラシと同様に、搖動レバー52に代えてジョイントを設け、ブラシヘッドの抜け止め部の一方に凹部を形成し、該凹部にジョイントの先端の屈曲部を嵌合させて連結し、ジョイントの基端部を連結棒の先端部に傾動自在に連結してなる替えブラシであって、植毛台42に毛束43を植設した替えブラシと、毛束43を植設していない替えブラシの2種類の替えブラシを用いた。そして、前述のように出力軸のストロークを3mmに設定することで、ブラシヘッドの最大回転角度αを70°に設定し、ストロークを4mmに設定することで、ブラシヘッドの最大回転角度αを85°に設定した。
【0062】
そして、表2に示す8種類の電動歯ブラシに対して、外部電源にて1.5Vの電圧をモータに印加して、電流計にて消費電流をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
【0064】
表2から、実施例の電動歯ブラシでは、比較例の電動歯ブラシと比較して、ブラシの有無に関係なく、ブラシヘッドの回転角度が70°の場合及び85°の場合のそれぞれについて消費電流が少なくなっていることが分かる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。